バフェットの投資の約4分の3を占める「ビッグ4」

益嶋裕氏(以下、益嶋):これまでバフェットの考え方、繰り返し見てきたわけですね。このボードにまとめさせていただいた、定量的・定性的な調査・分析によって成長性を見極めると。そして現在割安か割安ではないかというのを判断をすると。見つけたならば長期的集中的に投資をすると。

これがバフェットの考え方なんですけれども、じゃあバフェットは今、現在どういう企業に投資をしているのかというのが、このご紹介になります。

これがちょうど(2014年)11月の中旬ぐらいに発表されました、バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイの最新のポートフォリオ。米国企業限定にはなるんですけれども、その最新のポートフォリオです。

これを見ていただきますと、後ほど詳細もご紹介いたしますが、ウェルズ・ファーゴという米国の銀行なんですけれども、それにこのバークシャー・ハサウェイ全体の4分の1近く、22パーセントぐらいを投資していると。

2つ目のコカ・コーラは15パーセントぐらい。IBMは12パーセントぐらい。アメリカン・エキスプレスも12パーセントぐらいということで、この4つで半分以上、6割ぐらいのポートフォリオの割合を占めていると。

銘柄数はすごく多いんですけれども、金額ベースに直しますと、4銘柄で全体の6割を超えていると。ものすごい大きな金額の6割を超えていると。

さらに、このウォルマート、プロクター・アンド・ギャンブル、P&Gですね、あとエネルギーのエクソン・モービルなんかを合わせますと、だいたいこれで全体の4分の3、75パーセントぐらいを占めているということがおわかりいただけると思います。かなり集中的に投資をしているといってもいいのではないでしょうか。

今ご紹介しました4つ、ウェルズ・ファーゴ、コカ・コーラ、IBM、アメリカン・エキスプレス、この4つをして通称「バフェットのビッグ4」なんていう呼ばれ方をしたりします。大きな4つ、ビッグ4ですね。

今日は、その4つはどういう企業なのかということをご紹介していきたいと思います。

ウェルズ・ファーゴの堅実経営

まず、ウェルズ・ファーゴ。あんまり聞いたことがないというお客さまもいらっしゃるかもしれませんけれども、これはまず米国の銀行なんですね。すごく堅実な経営で知られている企業でございます。

例えば、ゴールドマン・サックスですとかJPモルガンとか、投資銀行と呼ばれる、金融危機の前に、すごくレバレッジをかけて利益を取りにいくというような銀行もあったんですけれども。

ウェルズ・ファーゴというのは、本当に堅実な商業銀行でございます。堅実に堅実にビジネスをしていたので、金融危機の際にもそんなに大きく損失を被らずに、逆に弱った銀行を吸収する、買収するということをやっていた企業なんです。

この(スライド)左下の業績の推移をご覧いただきますと、2004年から昨年まで過去10年分の売上・利益・配当をご紹介しているんですけれども。この1株益という欄をご覧いただだくと、EPSと呼ばれるものですね。

だいたい2007年と2008年の境目が金融危機の前と後とお考えいただければと思うんですが。だいたい金融危機の前というのは、1株あたり2.0〜2.5ドルぐらい利益を稼いでいたわけですね。

ただ、いかに堅実なウェルズ・ファーゴとはいえ、金融危機の際には、金融危機前と比べると1株あたり0.7ドルもしくは1.7ドルぐらいまで利益が減ってしまったと。

利益が減ってしまったので、この金融危機の際、これは2008年以降のチャートなんですけれども、2008年以降〜2009年にかけて株価が非常に大きく下がっていると。一時は10ドルを割り込むような水準まで株価が下がったと。

ただ、このウェルズ・ファーゴというのは真に稼ぐ力をもっている企業であったということなんですけれども、その後利益がみるみると回復いたしまして、足元では3.9ドルぐらい1株あたり利益を稼いでいると。

これの大きなポイントは、金融危機前は2ドル〜2.5ドルぐらいだったんですね。それが今となっては、その時の倍近いような利益を稼ぐような企業であると。

つまり、本当に稼ぐ力があった企業であると。その企業が全体の危機に巻き込まれて一時的に利益は減ってしまったけれども、その後利益を取り戻していると。

じゃあ株価はどうだったんですか、というのが(スライド)右上のチャートなんですけれども。いったん利益を失って株価大きく下がったんですが、そこからは利益の伸びとともに右肩上がりのようなかたちで株価が上昇いたしまして、現在は54ドルぐらい。

一時10ドル割れるようなところまでいったものですから、その時と比べると5倍ぐらいまで株価が上昇していると。

まさにバフェットが先ほどご紹介してきたようなものを実践して、真に稼ぐ企業、力をもっている企業に投資をして、その企業は長期的な利益が増えていると。

金融危機の影響を受けないコカ・コーラ

続いて2点目。コカ・コーラ。これ、アルバイトの(話の)ところでも出てきたんですけれども、誰もが大好き……かどうかはわかりませんけれども、誰もが知ってるコカ・コーラでございます。

コカ・コーラ、これも業績のところをご覧いただきますと、だいたい10年ぐらい前というのは、1株あたり1ドルぐらいの利益を稼いでいたと。それが金融危機の時に、コカ・コーラはそんなに影響を受けなかったんですね。

それもそのはずだなと思うんですけれども、金融危機だからといってコーラをそんなに飲まなくなるかというと、そんなことはないと。多少減らすとか生活が苦しくなるということはもちろんあると思いますけれども、そんな劇的に減らすことはないと。

ということで、着々と利益を伸ばしまして、2ドルを超えるような1株利益が2010年ぐらいから起きていると。

金融危機の際というのは、利益は減ってないんですけれども、やっぱり市場全体が下がるので、このコカ・コーラでもいったん株価が大きく下がったと。ただ、そこから上昇する利益の伸びとともに上昇してきていると。

ただ、逆にコカ・コーラは足元ちょっと利益の停滞が見られるので、株価も少し停滞気味に推移しているかなというのが、やはり利益と株価の連動性ということが見られております。

アメリカン・エキスプレスの復活

では続いてビッグ4の3つ目ですね。アメリカン・エキスプレス。いわゆるアメックスといわれるクレジットカードの会社でございますけれども。

これも業績のところから見ていきますと、10年ぐらい前はだいたい1株2ドルぐらいだったと。それが金融危機の際は、やっぱり利益が少し減ってしまうんですね。ただ、金融危機が終わるとどんどん利益を伸ばして、足元では5ドル近い利益をあげる会社になっていると。

これも今までの企業と同じようなパターンで、金融危機の際というのはもう叩き売られると。赤字ではない企業でもかなり叩き売られて、これも同じく10ドル台まで株価が売られました。金融危機前は50ドルぐらいあったんですけれども、5分の1ぐらいになるようなかたちで株価が売られたと。

ただ、このアメックスというのはどんどん利益を増やす企業だったので、またまた右肩上がりに利益を伸ばして、足元で90ドル以上の株価をつけていると。底値からすると9倍とか、それぐらいまで来ていると。

このように、本当に稼ぐ力をもっている企業でも一時的に利益は失う、そして株価は下がる。ただ、そういう企業はそのあとに復活するという。これが事例として見られていると。

これは綺麗ごとというわけではないんですけれども、金融危機の際というのはもちろんみんなパニックに陥るわけですね。未来のことがわからないと。

なので、「アメリカ経済もうだめなんじゃないか」「アメックスだめなんじゃないか」と思って売るわけですので、今振り返ると簡単に言えるんですけれども、実際に投資行動に移すのは難しいというのは揺るぎない事実だとは思うんですが。

ただ、こういうことを知っておくことによって、今ご覧いただいているみなさまが、今後、金融危機に見舞われたときに、投資判断の1つの参考として、「あの時バフェットはこういうことをしてたんだな」ということとして思い出していただければいいかなと思います。

バフェットがIBMに投資した理由

そしてビッグ4の4つ目、IBMでございます。実はこのIBMという会社にバフェットが投資をした時はかなりざわつきました。

というのも、バフェットはこれまで、冒頭にもやりましたけれども、自分のわからないビジネスを行っている企業には投資をしないという方針がありましたので、IT関連企業にはまったく投資をしてこなかったんですね。そのバフェットがIBMに投資をしたので、ざわざわしたということなんですけれども。

ただバフェットは、IBMについて「やっと自分で理解ができた」と。「すごくIBMについて調べて調べて調べて、やっと理解できるようになったから投資をしたんだよ」と、買ったあとに言ってますので、その投資の原則から外れて買ったわけではございません。

このIBMなんですけれども、これまでの例と同じようにずっと利益を増やし続けている企業でございます。10年前には4ドルぐらいだった1株益が、金融危機の最中というのもあまり関係なく利益を伸ばし続けて、足元で15ドル近くまで利益を伸ばしていると。

ですので、そんな企業でも金融危機のときには売られると。これを見ますと70ドルぐらいまで売られたようなんですけれども、それがどんどん利益をまた伸ばしているので、上に上がってきていると。

ただ今、足元で少し業績が不調と。この前の決算がちょっと悪かったので足元は少し下がってるんですけれども、これをどう捉えるかというのが投資家のみなさまの判断次第ということにはなってまいります。

2014年7-9月期に買った株・売った株

ということでバジェットのビッグ4をご紹介してまいりましたけれども、実はこの7−9月期にバフェット率いるバークシャー・ハサウェイが買い増した株、そして売った株がポートフォリオで明らかになっておりますので、簡単にご紹介します。

けっこうこの7−9月期のたくさんの銘柄を買い増ししておりまして。新しく買ったのがこの一番上のエクスプレス・スクリプツということで、あまり知られていない企業です。

ビジネスとしては、薬剤給付のところですね。患者と病院とか、あとは薬剤師などの間に立って、それを安く効率的に仲立ちをして、効率的に行うというビジネスを行っている企業なんですけれども、今回そこに新たなに投資をし始めたことが明らかになっております。

逆に売却した企業というのは、このようになっております。エネルギー企業、コノコ・フィリップスとナショナル・オイルウェル・バーコとかフィリップス66とか、このへんのエネルギー企業ですね。エネルギー企業を少し売ったのかなというのが、私の印象としては残っております。