会社概要 (2025年4月30日現在)

菅原雅史氏(以下、菅原):みなさま、こんにちは。インスペック株式会社代表取締役社長の菅原です。これより、2025年4月期決算概況と中期経営計画についてご説明します。

はじめに会社概要です。インスペックは、超ハイエンドの精密電子基板の外観検査装置、精密フレキシブル基板の検査装置、半導体パッケージ基板のレーザーリペア装置を主力製品として事業を行っています。

本社は秋田県仙北市角館町にあります。創業は1984年、東京証券取引所のスタンダード市場に上場しています。

2025年4月期 業績ハイライト

2025年4月期業績ハイライトです。売上高は22億3,700万円です。期初に発表した計画の23億円には少し届かなかったものの、営業利益と経常利益はともに1億円を超え、計画を達成しています。

当期純利益については、今年3月に発表したように、以前から取り組んでいた露光装置関連事業からの撤退を決断し、その撤退損を計上した関係で、マイナス1億4,200万円という結果です。

受注高及び売上高推移

受注高及び売上高推移についてご説明します。期中に受注状況を何度か発表していますが、非常に順調に伸びています。その結果、当期においては1年間の受注額が30億円を超え、過去最高を記録しています。

大型受注獲得

期中に発表した大型受注の獲得についてです。主力製品である半導体パッケージ基板検査装置と、ロールtoロール型検査装置の2つが主な受注案件です。特に半導体パッケージ基板は、生成AIが発表されて以降、その技術は加速度的に進歩しています。それに伴い、巨大データセンターの構築に大きな投資が続いています。

そのようなデータセンター向けの半導体が、私どもが検査しているパッケージ基板の市場とつながっている影響で、ハイエンドのパッケージ基板の商談案件が徐々に増えてきている状況です。昨年の受注高のうち、半導体パッケージ基板検査装置の受注金額がおよそ7割を占めています。

ロールtoロール型検査装置についても、今後はいわゆるHAI(Human-Agent Interaction)と呼ばれる、データセンターで処理するだけでなく端末側でAIを処理するスマートフォンがますます出てくると言われています。

そのようなハイエンドのスマートフォン向けのフレキシブル基板の検査装置の引き合いも、徐々に出始めている状況です。

製品別売上高

製品別売上高です。スライドの棒グラフの一番右側が当期の結果です。この期は、ロールtoロール型検査装置が売上高の約半分を占め、次いでフラットベッド型検査装置となっています。こちらは半導体パッケージ基板が主なターゲットです。

この2つで売上の大半を占めていますが、先ほど触れたように、現在の受注状況を含めると、フラットベッド型検査装置がおよそ7割を占めます。今後もこの傾向はおそらく続いていくだろうと考えています。

要約貸借対照表

要約貸借対照表です。主なところでは現預金が大きく減少しています。こちらは仕入れが先行していること、長期・短期の借入金の返済が進んだことと関連付けられます。

要約キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書です。営業活動によるキャッシュ・フローが前期と比べて大きく増えていますが、こちらは売上代金の回収が順調に進んでいるためです。また、財務活動によるキャッシュ・フローが大きくマイナスになっています。こちらは、返済が大きく進んだことに関連付けられています。

研究開発費

研究開発費についてご説明します。当期は合計で3億5,800万円、対売上比で16パーセントという大きな研究開発投資を実行しました。このうちの約1億円が露光装置関連事業に向けた投資でした。露光装置関連の開発投資は、事業からの撤退により今期以降はなくなります。

一方で、半導体パッケージ基板の技術革新が非常に速いテンポで進んでいます。次世代のパッケージ基板の技術的な要求スペックが非常に高いものになっていくことが、ロードマップで示されています。

スペックが上がっていくことに併せ、市場も非常に大きくなっていきます。その需要拡大を確実に取り込むことをターゲットとし、基板検査装置関連事業に対する開発投資に今以上に力を入れて取り組むため、年間売上高の比率で12パーセントから14パーセントの研究開発投資を継続したい考えです。

2026年4月期 通期業績予想

第38期となる2026年4月期の業績予想です。売上高23億円、営業利益1億2,000万円、経常利益7,000万円、当期純利益6,000万円の業績を実現すべく、すでに今期のスタートを切っています。

主力の半導体パッケージ基板分野の技術革新を伴った中期的な市場拡大が見込まれますが、その次の世代の半導体パッケージ基板の市場拡大も徐々に始まっています。これは、2026年後半から2027年頃にかけてが大きな変化点だろうと言われています。

その大きな変化点を逃さずに確実に捉えるべく、当社はこの第38期及び第39期に、思い切った研究開発投資に加え、生産能力の拡大という大きな課題に取り組むため、いろいろな手を打ち始めています。

当社は検査装置というものづくりの企業である以上、受注が増えれば生産も増えていきます。これに対応するためには、生産能力の増強に先んじて取り組む必要があります。第38期及び第39期は大きな増強を成し遂げていく考えで進んでいます。

市場の拡大

何度か「市場の拡大」と繰り返したように、2022年の暮れから2023年にかけて世に出た生成AIは、わずか2年ほどの間に加速度的な技術進歩と市場拡大が続いています。今後もそのニーズはますます高まっていく一方だろうと思います。

したがって、これを処理する巨大なデータセンターは、ますます拡大していかなければなりません。さらには、半導体の高精度化も進める必要があります。そのような状況の中で、スライドに掲載したチップレットという技術が、今一気に広がり始めています。

今まではシリコンチップ1個の中に、演算する頭脳となるCPU部分、記憶するメモリ部分、外部と通信する通信機能がすべて入って、1つの半導体になっていました。

しかし、微細化の限界が近づいてきたため、それぞれの機能を分割したシリコンチップを別々に作り、それらを精密なパッケージ基板に実装することにより、さらに高性能な半導体を実現するという流れが一気に加速しています。

考えてみるとすぐおわかりになると思いますが、今まで半導体はシリコンチップ1つですべての機能を果たしていましたが、今後は半導体パッケージ基板に実装されて初めて1つの半導体として機能するということです。この半導体パッケージ基板の役割が、今までとは次元の違う重要な役割を持つようになります。

従来は、半導体パッケージ基板の製造はパッケージ基板の専門メーカーが行っており、これは日本メーカーが強い分野でした。しかし、今やこの半導体パッケージ基板を自社で内製するために、半導体の前工程であるCPUの大手メーカー、あるいはファウンドリの世界最大のメーカーが、すでに多額の投資を始めています。半導体パッケージ基板という市場が、今後一気に拡大していくことが、目に見えて進み始めたという状況です。

このような、前工程の大手メーカーが量産レベルで製造できるようになるのが、2027年前後からだろうと言われています。したがって、先ほどお伝えしたように、大きな変化点がいずれ来ます。その変化点を必ず捉えることが、インスペックの今の最重要課題であり、これに取り組んでいるところです。

国内外で積極的にPR活動を展開

そのような環境の変化を背景に、当社は日本の大きな展示会のみならず、中国やタイ、その他アジア地域で、力のある代理店と連携し多くの展示会に出展しています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてです。基本方針として、ROE15パーセント以上を1つの数値目標に定めて取り組んでいます。

振り返りと見直し

ここからは中期経営計画についてご説明します。第37期の結果は先ほどご説明したとおりですが、この第37期をスタートとする3ヶ年計画を発表した2023年当時は、我々は次の大きな市場拡大のターゲットとして、電気自動車のマーケットを目指していました。

そのようなことも背景に、露光装置についても、電気自動車の中に多く使われる長尺のフレキシブル基板という製品をターゲットに開発してきましたが、1年半くらい前あたりから、電気自動車の市場が急速にスローダウンし、先行きが非常に見えにくくなってしまっています。

一方で、生成AIが一気に進化を遂げています。このような大きな変化に我々自身も速やかに対応していく必要があります。露光装置については、いずれは我々が狙った市場が必ず出てくるという考えは変わりませんが、いつになるのか、我々はそれまで先行投資を継続できるのか、あるいは継続すべきなのかを検討してきました。

生成AIがますます進化し、半導体パッケージ基板の市場の広がりが言及され、実際に商談が増え始めているという背景があります。露光装置関連事業は、約5年間にわたり開発チームが全力を挙げて取り組みましたが、この先我々が力を入れるべきは、やはり半導体パッケージ基板の市場拡大であるという結論に至りました。

半導体パッケージ基板の市場は単純な拡大ではなく、今までニッチであった市場のプレイヤーが一気に増え、おそらくマス市場になっていくと思っています。我々から見て相当に規模の大きな市場になると見据え、意思決定したという経緯です。

当然ながら、当社が取り組む内容が大きく変わるため、3年間の取り組みを新たに策定し今月発表しました。

パーパス

その基本として、インスペックはスライドで示したパーパスをベースに事業を行っていきます。中期、さらには長期にわたり成長を遂げていくという、自らの目標に向かう覚悟を表す意味で、「確かな技術とあくなき挑戦で、創造社会を切り拓く」をパーパスに定めています。

スライド中央には、今まで開発に挑戦してきた製品群を掲載しました。上段は今商品として世に販売している製品です。半導体パッケージ基板検査装置や、ロールtoロール型検査装置などが成功し、製品として事業を支えています。

その影には、残念ながらビジネスとして花開かなかった製品も多くあります。このような取り組みで培ったさまざまな技術やノウハウが土台となり、現在の製品に活きています。その意味では、今回の露光装置の取り組みで得たものも多く、今までインスペックにはまったくなかったレーザー技術を代表に、新しい技術を習得しています。

それが次世代のパッケージ基板の検査に、いよいよ必要になってきました。一言で言うと、まさに「失敗は成功のもと」です。この言葉を胸に刻んで取り組んでいます。

持続的成長へ向けて

これらをベースに、持続的成長を実現していくためのミッションを「変化を先取りし、革新的な製品を生み出す」と掲げています。また、製品を生み出すために、インスペックの社員全員で共有する価値観である「勇気と挑戦」「信頼と感謝」「学びと成長」をバリューとしています。このようなミッションとパーパスを土台に、新たな中期計画を立てています。

経営方針

経営方針は、「①高い競争力を持つ最先端の製品を開発し、業界をリードする」「②収益性の高い、競争力のある事業構造を再構築する」「③アジアを中心としたグローバル市場の進出を拡大する」「④人的資本に積極投資し、持続的成長を支える組織力を強化する」「⑤働きがいが生み出す力で、社会の繁栄と発展に貢献する」としています。

外部環境・事業環境認識

経営方針をもとに、今の外部環境を見直しました。すでに何度か触れたように、まず当社が半導体パッケージ基板で関わる半導体市場について、現在、半導体全体が活況かといえば、必ずしもそうではありません。生成AIという新しく生まれた世界において、それに関わるさまざまな分野で非常に大きな変化を目指しています。

インスペックは、その最も近いところで事業を行っている1社であるという認識のもと、この変化をチャンスとして確実に捉えることが、中期及び長期の大きな1つの柱になっていくと考えています。

マクロ経済的には、不確実性の高いさまざまな出来事が起こっており、先を見通すのが難しい状況です。そのような中で、やはり変わらない動き、変わらない変化があると思っています。特に技術の進化は後戻りしないと考えると、ターゲットをしっかり定め、ぶれることなく進んでいくことが大事だろうと考えています。

そのようなことを背景に、「持続的成長と企業価値創造」「確かな技術で競争力の高い製品を生み出し、社会の発展に貢献」というミッションの実現に向け、この3年間で何をすべきかを議論し中期経営計画を立てました。

中期経営計画の概要

中期経営計画の概要です。持続的成長で営業利益率15パーセント、ROE15パーセント以上を目指します。

スライドの赤枠内に記載しているのは、第38期2026年4月期を1年目とする3年間の計画です。先ほど触れたとおり、この3年間のうち今期と来期は、それ以降に大きく成長していくための土台作りと考えています。

圧倒的な競争力を持てる製品開発、ますます増えていく商談や受注をしっかりこなせる生産体制の増強という土台をこの2年でしっかりと構築し、3年目以降に大きな成長を実現していきます。そのような位置づけで、第38期にすべきことを明確に定めてスタートを切っています。

事業戦略 -基板検査装置関連事業

事業戦略について、3ヶ年のインスペックの重要課題として取り組む内容をご説明します。社内で「SXシリーズ」と呼んでいる、当社の主力製品かつ最も標準的な製品である半導体パッケージ基板検査装置についてです。

ハイスペックなプリント基板や、配線の幅が10ミクロンを切るほどの非常に精密なパッケージ基板から、さらに次世代の、まだ試作段階で世にまったく出ていない、配線の幅がわずか1ミクロンのパッケージ基板まで対応できるスペックをすでに持っています。今後も、当社の中心となる製品の性能をしっかりと上げていきます。

また、当社が競争力を持っている全自動化システムについては、一番標準的な検査装置を複数台並べて、完全無人化・全自動化した検査ラインを1つのシステムとして提供します。このようなお客さまからの要望が、数年前から非常に増えています。

スライドに記載のとおり、AIサーバーの拡大により高性能なCPU及びGPUが急増しています。それを検査するシステムとして、新しい工場ではこのような全自動化システムの導入を判断するお客さまが増えつつあり、すでに2桁システム以上の納入実績を持っています。

スライド右上に記載した、FPCの需要拡大への対応についてです。こちらはまさに生成AIのエッジAIシステム、つまりデータセンターでAIを処理するだけではなく、スマートフォンの中でAI処理を行うような非常に性能の高いスマートフォンが、これからどんどん普及していきます。

それにより、精密なフレキシブル基板は生産量が今以上に増えてくると考えられます。まさにそのような市場で、私どものロールtoロール型検査装置は最も得意とする分野として、今も活躍していますし、これからも活躍していきます。

これらの製品群を軸としながら、製造業としての基盤強化を行い、今後の持続的な成長を着実に実現していきます。これがインスペックが重要課題として取り組む内容です。

事業戦略 -基板検査装置関連事業

その中で最も成長が期待できるのが、やはり半導体パッケージ基板の分野です。現在は、配線パターンはまだ10ミクロン前後のものが量産されている状況です。当社内部では、すでに2ミクロンあるいは1.5ミクロンレベルのものについて、お客さまからの要望に応じて検査を評価する環境をすでに整えています。

そのようなものをベースに、さらに先のハイスペックのものに対応できる製品を確実に開発し、市場の要求に速やかに応えられるように進めていきます。

キャッシュ・アロケーション

キャッシュ・アロケーションについてです。将来の持続的成長を確実にしていくために、この3年間で研究開発費として10億円、人的投資・設備投資として7億円を投下する考えで進めていきます。

人材戦略

当社では、人材育成が今後の成長に極めて重要な取り組みであるという位置づけのもと、さまざまなセミナーを行っています。今までは単発で行っており、体系立ててできていたかというと、必ずしもそのようなかたちになっていませんでした。今年度からは、男女問わず若年層からベテラン層までを対象に、いろいろな分野の学びの場を設けます。

一般的な会社のマネジメントに関わることやリーダーシップに関わること、また、当社は技術力で勝負している会社ですので、例えばソフトウェアや機械工学などの専門分野の技術プログラムも体系立てて、学びの場を作っていきます。それら全体的な年間計画のもと、プログラムをスタートしています。

全社員平均で1年間、1人約50時間の学習時間を継続的にとっていきます。そのようなかたちで、人的資本への投資をかたちにしてスタートしている状況です。

CG強化

CG(コーポレート・ガバナンス)の基本方針については、スライドの青枠内に記載のとおりです。

当社は、経営の透明性の向上とコンプライアンスを徹底するため、CG強化に取り組んでいます。今後も企業価値を継続的に高めていくため、経営上の組織体制や仕組みを整備し、必要な施策を実施していくことを経営上の最も重要な課題の1つと位置づけています。

SDGsの取り組み

SDGsの取り組みについてです。持続可能な社会の実現に貢献するという考えのもと、SDGsに取り組み始めてしばらく経ちますが、少しずつ活動の範囲を広げています。SDGs目標の7番の取り組みとして、今年4月に再生可能エネルギー100パーセントを提供している会社と契約し、実現しています。このようなことを含めて、積極的にSDGsに取り組んでいます。

以上で、インスペックの2025年4月期決算及び2026年4月期(第38期)を初年度とする3年間の中期経営計画の説明を終了します。ご清聴いただき誠にありがとうございました。

質疑応答:露光装置関連事業から撤退した経緯について

司会者:「露光装置関連事業からの撤退について、経緯を教えてください」というご質問です。

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