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株式会社INPEX1605

東証プライム

鉱業

中東紛争影響と当社の対応

上田隆之氏(以下、上田):株式会社INPEX代表取締役社長の上田です。本日はお忙しいところ、また大変暑いところ、お集まりいただき心より感謝申し上げます。上半期の決算と今後の見通しについて、私から概況をご説明します。

はじめに、中東紛争が当社にどのような影響を与え、我々がそれをどのように捉え、今後どうなるのかについてお話しします。

ホルムズ海峡の閉鎖状況が長期化しているため、当社のアブダビにおける販売にはかなりの制約が生じているのは事実です。しかし、中東が持つ重要な意味を鑑み、引き続きアブダビにおける事業を継続していきたいと考えています。

まずアブダビ事業の状況についてです。スライドに記載のとおり、アブダビの生産量はほとんど減少していません。しかしながら、販売量は当社の場合、前年同期と比較して3割程度減少しています。

なぜかと言うと、アブダビはホルムズ海峡内に加え、外部にフジャイラという港があり、陸上で生産される原油のほとんどがフジャイラから輸出されているため、陸上油田は大きな影響を受けていません。

一方、海上油田はホルムズ海峡が出口となっているため、生産そのものにある程度の影響を受けており販売量も約3割減少しています。

通期の見通しとしては、2026年5月時点の見通しから約3割の減少が見込まれています。この見通しは、ホルムズ海峡が10月頃に正常化し、元の状況へ戻ることを前提としており、それに基づいて通期では販売量が約3割減少する見通しです。

スライド右側に記載していますが、当社の収益という観点では、アブダビでの減益を上回る収益を上げることが可能であると考えています。これは「ポートフォリオの勝利」と言えるものであり、当社のポートフォリオはアブダビが1つの重要な要素ではありますが、オーストラリア、アジア、ヨーロッパ、さらには国内事業と多様化しています。

このようにポートフォリオが多様化しているため、ホルムズ海峡閉鎖の影響はそれほど大きくありません。むしろ「イクシスLNGプロジェクト」(以下、イクシス)のオペレーションが非常に順調に進んでいることや、中東情勢を背景に油価が比較的高水準で推移していることなどから、全体的に見ると、アブダビで予想されていた利益の減少を上回る利益をその他のプロジェクトで確保することができました。なお、上期の利益は過去最高を記録しており、通期見通しも過去最高を見込んでいます。

エネルギーを取り巻く状況についてですが、一言で言えば、これまでのエネルギーシステムは効率性を非常に重視していました。しかし、効率性に加えて、エネルギーのセキュリティやレジリエンスなどを重視するシステムへと徐々に移行しているように思われます。

具体的には、スライド右側にいくつか記載されていますが、ホルムズ海峡への依存度の低下がその一例です。ホルムズ海峡のリスクがここまで意識される中で、例えばUAEは現在、同海峡の外にあるフジャイラ港に向かうパイプラインを1本保有していますが、これを数年内に3本に増やす計画を示しています。

3本になれば、ほとんどすべての原油をホルムズ海峡外の港から輸出することが可能となります。サウジアラビアでも、紅海に面したヤンブー港について、同様の取り組みが進められているという動きが見られます。

もう1つは、調達多様化の動きです。現在、多くの企業がアメリカやメキシコからの原油輸入に注目しています。ただし、これらの国から輸送する場合、どうしてもコストが上昇するという課題があります。

中東からの原油輸送は、VLCCという非常に大きなタンカーを利用して約20日間で日本に到着します。一方で、アメリカやヨーロッパ、アフリカから輸送する場合は、航海日数がその3倍となり、50日から60日ほどかかります。そのため、輸送コストの増加が問題となっています。

もう1つは、サステナビリティの動きです。例えば最近再びEVが注目されていますが、「ガソリンだけでは不十分なのではないか」という考え方が広がっています。

非常に興味深いのは、EVやガソリン以外にも、重油に代わる船の燃料としてアンモニアや再生可能エネルギーなど、これまでクリーン燃料とされていたものが、実はセキュリティの観点からやや見直しの動きがある点です。

これらを総合的に見た場合、エネルギー全体がセキュリティ重視の方向に向かっているように感じます。ただし、その一方で課題も存在します。例えばパイプラインを整備する場合やアメリカから輸送する場合など、多くの場合コスト増が避けられません。

セキュリティは無料ではなく、レジリエンスを含めた対策にはコストが伴います。そのため、中長期的にはエネルギーコスト全体の上昇が予想されます。

需要家の方々には「セキュリティの高いエネルギーが欲しいが、値段は今のままでお願いしたい」と言われているケースがまだ多いと思いますが、このようなエネルギー問題が中長期的な世界全体の課題になるのではないかと考えています。

INPEXそのものの対応は、スライド下部に記載のとおりです。原油については、アブダビの競争力や重要性は変わらないため、引き続きアブダビでの増産投資に積極的に取り組んでいきたいと思います。

また、ガスについてはすでに多様化が進んでおり、最近ではイクシスや「アバディLNGプロジェクト」(以下、アバディ)といったプロジェクトがあります。加えて、これらのガスプロジェクトはホルムズ海峡というチョークポイントを経由しないため、このようなセキュリティの高いポートフォリオをさらに拡充していくことを1つの方向性としています。それが最近の全体像です。

2026年度 上期ハイライト及び通期予想

上期のハイライトです。詳細は後ほど山田よりご紹介しますが、上期の当期利益としては、過去最高となる2,631億円を記録しました。通期予想として、利益は過去最高となる5,100億円を見込んでいます。

営業キャッシュ・フローは約1兆円です。アバディは2027年にFIDに達することを目指しており、その開発準備資金の積み上げに努めてきました。今期末には7,700億円強の準備資金が積み上がる予定です。

投資キャッシュ・フローは、通期で8,590億円を見込んでいます。これは、さまざまな成長投資を含んでいます。アバディやイクシスについて、詳細は後ほどご説明しますが、それ以外にもアバディの生産開始前に収益に貢献するプロジェクトへの投資も行っています。

具体的な例として、マレーシアにおける権益の取得、南西カスピ海石油(ACG鉱区の権益を保有)の株式の追加取得などがあります。これらはすでに生産が開始されているか、近々生産を開始する予定のプロジェクトです。

このようなアセットを取得することで、1つのアセットにつき毎年数十億円以上の利益を見込んでいます。このような取り組みを通じてアバディの生産開始の前後においても、当社は成長していきたいと考えています。

還元については後ほど詳しくお話ししますが、1株当たりの年間配当金は前年度比12円増の112円、自己株式取得は1,400億円を予定しています。総還元性向は、約53パーセントとなります。

ピア比での着実な成長実績と将来成長見通し

こちらのスライドは、INPEXがどのような会社であるかについて視点を広げた内容です。これは、我々が過去10年間で取り組んできたことを図としてまとめたものです。

スライド左側は、ドル換算した営業キャッシュ・フローおよびネット生産量のCAGR(年平均成長率)を示しています。このCAGRは、2015年から2025年までの過去10年間の数値を基に算出しています。

図の縦軸が営業キャッシュ・フロー、横軸が生産量となっており、メジャーおよび準メジャーと比較した図です。ご覧のとおり、INPEXの位置が示されています。

この位置が何を表しているかというと、営業キャッシュ・フローの過去10年間の平均成長率が、メジャーや準メジャーを大きく上回っていることを示しています。

横軸は生産量を示しており、トップとはいきませんが、真ん中あたりに位置しており、メジャー企業よりも高いレベルに達していると考えられます。過去10年間でINPEXは着実な成長を続けてきたと思います。

次に、将来を示した図がスライドの右側にあります。これは生産量を表しており、63万Boedという数値です。この数値は、アバディの生産開始以降には80万Boedに達し、営業キャッシュ・フローは現在の1兆円から1兆5,000億円程度になると想定しています。

これまでの10年間、そして今後2035年まで、INPEXは基本的に着実な成長を維持することを念頭に置き、日々の業務に取り組んでいます。

アバディLNGは2027年のFIDに向け大きく前進

個別のプロジェクトの進捗について、特にアバディとイクシスの状況を詳しくご説明します。まずアバディに関してですが、一言で述べれば非常に順調に進んでいます。

2025年から継続して進めているFEED(基本設計作業)は順調に進行しており、2026年秋には完了する予定です。また、これと並行してEPC(設計・調達・建設業)のTender(入札作業)を2026年7月から開始しています。

このTenderについて、すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、現在、FPSOとOLNGについてはデュアルFEEDという2つのコンソーシアムが競うかたちでFEEDを進めています。最終的にはこの2つのコンソーシアムの中から1つを選定し、そのコンソーシアムが建設作業を担当することになります。この選定作業はEPCの入札作業として進められており、すでに開始されています。

マーケティングに関しても非常に順調に進行中です。アバディプロジェクト全体ではLNG生産を年間950万トン見込んでいます。

このうち一部については長期契約を行わず、スポット販売する方針です。長期契約分は全体の約800万トンを計画しており、すでにその約600万トンについては「キー・タームシート」と呼ばれる価格と数量を含む基本条件をバイヤーと合意しています。この合意を2026年5月に結びました。

具体的には、BPやシェルというスーパーメジャー、そしてインドネシアの国営電力会社や国営ガス会社と、長期契約のベースとなる「キー・タームシート」に合意しています。

多くの買主がアバディプロジェクトに関心を寄せており、中東紛争との関係から、アジアにおける中東リスクのないLNGへの関心が非常に高い状況にあります。

そのため、実際にマーケットの関心は非常に高く、好評を得ています。マーケティングについては、問題なく進むのではないかと考えています。

アバディLNGにてGroundbreaking Ceremonyを実施

具体的な作業を今年から始めなければなりません。インドネシアにおけるアバディLNGプラントは、ヤムデナ島のサムラキというインドネシアの地方に位置する場所で建設される予定です。

これから、LNGプラント周辺にフェンスを張る作業や、迂回道路(ダイバージェントロード)の建設をすぐに始めなければならない状況です。この作業には地元の協力が絶対に必要であり、そのためインドネシア政府にも働きかけ、「Groundbreaking Ceremony」を実施することとなりました。

具体的な作業開始前に、地元の協力をしっかり要請するため、約1ヶ月前にヤムデナ島を訪問しました。ヤムデナ島へは、ジャカルタからチャーターフライトで片道4時間、往復で8時間かかりますが、今回は日帰りで行ってきました。

スライドにはその時の写真を掲載しています。この訪問では非常にすばらしいセレモニーが行われました。インドネシア側からは、バフリルエネルギー大臣の他、3名から4名の閣僚に出席いただいた他、プラボウォ大統領もぜひ参加したいとの要望がありました。最終的には遠隔地のためオンラインで参加いただきました。

なお、大統領はオンライン参加でありながら、スピーチの際に限定して参加されたわけではなく、セレモニーの最初から最後まで大統領宮殿にてご覧いただきました。このことから、インドネシア政府が我々に対して非常に強い期待とサポートを寄せていることがうかがえます。

現在、FEEDおよびEPCテンダーを進めており、マーケティングも順調に進んでいます。また、インドネシア政府からの強い期待とサポートを受けているのが現状です。

もちろん「FEEDが終われば経済性はどうしていくのか?」という議論はまだ残されているものの、アバディが2027年中頃までにFID(最終投資決定)に達する可能性は非常に高まっていると考えています。

事業活動トピックス(1)

イクシスについてです。カーゴ出荷については現在のところ、オペレーションが非常に順調に進んでいます。ストライキが発生し、さまざまなご心配をおかけしましたが、このストライキは実は4年に一度の「Enterprise Agreement」という労働協約の改定作業に関連するものです。

労働党政権のもとで労働法が改定され、オーストラリアでは組合の力が非常に強くなりました。その中で初めて協定の改定が行われたため、労働組合は非常に強気な姿勢を示しました。

その影響で若干のストライキが発生しましたが、操業への大きな影響はなく、当社の収益にも大きな影響はないと考えています。これにより、今後4年間の労働協約が成立したことになります。その結果、操業は比較的順調に進んでいます。

イクシスでは、2026年の春にオーストラリアの陸上にあるビータルー(Beetaloo)堆積盆地に関する重要な動きがありました。この地域は巨大なシェールガスの埋蔵量が期待されており、当社はその中の3鉱区の権益をDaly Waters Energy LP社から一部取得しました。

スライド右側の写真にあるように、広大な森林と平地が広がるこの地域で、現在パイロット生産プロジェクトが進められています。2026年9月頃からこのプロジェクトが開始され、一部のガスは北部準州に販売する予定です。

2027年から2年ほどかけて、この地域にどれほどの埋蔵量があるのかを把握するため、探鉱作業を継続して行います。このプロジェクトには非常に大きな期待が寄せられており、オーストラリア政府からも強い期待を受けています。こちらが順調にいけば、新しいイクシスのTrain3のガスの基盤となるものと考えています。現時点では非常に順調に進捗している状況です。

アブダビにおける生産は順調ですが、販売は依然として課題が残っています。しかし、アブダビという国は引き続き重要であると考えており、上部ザクム油田への投資を継続していきます。

陸上鉱区Bab油田については、「ガスキャップ」という油の上側に存在するガス層があり、その開発に関して、先日合意に至りました。その他、アゼルバイジャンにおいて、ACG鉱区の権益を保有する南西カスピ海石油の株式を政府から取得しました。また、マレーシアではサラワク沖2E鉱区の権益を取得し、インドネシアでも鉱区を取得しました。

このように、アバディ前後においてもアジアを中心に収益に直結する事業を進めていきたいと考えています。

事業活動トピックス(2)

CCS(CO2回収・貯留)、クリーン水素、アンモニアといった、いわゆるクリーンエネルギーの領域についてです。

水素に関しては2025年、すでに新潟県柏崎市にある水素プラントが稼働しており、これから本格的な実証段階に入ります。また、メタネーションもプラントが稼働しており、当社のパイプラインにおいて、クリーンなメタン、つまりメタネーションによって生成されたメタンの供給を一部開始しました。

最近、大きな話題となったのは、首都圏CCSプロジェクトです。これは、東京湾岸から発生するCO2を集めて千葉県九十九里沖に埋める計画です。この計画に伴い、2026年7月から試掘作業を開始し、掘削リグを用意しました。

スライド右側の写真は、陸上から撮影した海上のリグの写真です。こちらのリグを使用して2坑を掘削します。1坑目は約1,900メートルの深さまで掘り、千葉県九十九里沖でのCCSプロジェクトにおけるインジェクターアビリティ、つまりCO2がどの程度注入可能かを確認する作業を実施する予定です。

株主還元

株主還元です。本日は還元の考え方についてお伝えしたいと思います。還元の数字は先ほども述べましたが、1株当たり過去最高の112円、自己株取得は1,400億円、総還元性向は当期利益5,100億円を基準とすると約53パーセントとなります。

2020年から現在まで配当を24円から112円まで、5倍近く増やしてきました。今年の総還元額は過去最高の水準としました。

2026年の還元を社内で議論する際に、現在の株価を当社としてどう評価するべきかという議論がありましたが、私自身、現時点の当社の株価は、当社の成長力が市場に十分評価されていない状況ではないかと考えています。やや割安であると判断し、今年の還元においては、むしろ自社株の取得に重点を置かせていただきました。

個人株主も大きく増えており、配当を期待されている方も多いと思います。そのため、配当は112円という水準にしましたが、今回は当社の株価の状況を踏まえ、むしろ自社株買いに力を入れたいという思いで還元政策を考えました。

現在の株価は当社の成長性を反映しきれていない

なぜそのように考えたかというと、スライドのグラフをご覧ください。左のグラフのグレーの線は油価、ブルーの線は株価を示しています。

当社の株価は油価に連動していると言われることが多かったのですが、ご覧のとおり、中東紛争の前までは成長戦略の影響もあったのか、油価よりも株価が上回る状況が続いていました。

しかし、中東紛争が始まると、株価と油価が再び連動するようになり、緊張が高まると油価が上がり、それに伴って株価も上昇する、逆もまた然りという状況で大きな乱高下が見られました。

結果として現在の状況を見ると、スライドにある数字のとおり、紛争直前の2月末時点で油価は73ドル、株価は3,800円でした。一方、紛争開始後の6月末のデータでは、同じ油価73ドルの際に株価は3,265円となっています。

そして、本日の株価と油価を見てみると、油価は少し上昇し約83ドルとなりました。2月末の油価73ドルと比べて約10ドルの上昇ですが、現時点で株価はおおよそ3,500円です。

私自身としては、もしも我々の会社の成長戦略が頓挫していたのであれば、それも1つの評価としてあり得るかと思います。しかしながら、当社は着実に成長戦略を実施してきました。代表例としてアバディがありますが、イクシスについても、Train3具体化に向けて着実に歩みを進めています。

油価は10ドル上がったものの、株価は2月末の3,800円から現在の3,500円程度に落ち込んでいます。これは私にとってあまり喜ばしいことではありませんが、もちろん市場が考えることであり、我々がどうこう言えることではないと思います。また、エネルギー産業に対するさまざまな思いもあるでしょう。

当社は着実な成長と還元を続けていくことがモットーであり、私自身もその考えを常に持っています。そのため、本日の状況を考えると、油価が83ドル、株価が3,500円というのはやはり割安ではないかと感じています。むしろ、これだけ成長戦略が具体化しつつある現状を踏まえれば、中東紛争前と比較して、株価がさらに上昇していても不思議ではないとすら考えます。

したがって、「やはり当社の株価は少しアンダーバリューされているのではないだろうか」というのが、当社としての株価に対する認識です。

そして「株価が安い時には自社株買いをすればいいのではないか」という意見も多く、自社株買いを積極的に進めたというのが、今回の還元ポリシーに関するご説明となります。

決算ハイライト

山田大介氏(以下、山田):取締役専務執行役員財務・経理本部長の山田です。私から、中間決算と通期見通しについてご説明します。先ほど社長の上田がお話ししたとおり、半期決算は当期利益2,631億円と史上最高益となり、通期見通しも5,100億円と過去最高を見込んでいます。また、還元も過去最高となり、まさに三冠王と言える決算となっています。

まず、中間決算のハイライトです。期中平均油価は70ドルから87ドルへと上昇し、期中平均為替も円安に推移しました。売上収益は若干減少しましたが、親会社の所有者に帰属する中間利益は2,631億円と過去最高益を達成しました。中東情勢の影響を色濃く受けた決算であったと言えます。

原油の販売量は大幅に減少しましたが、油価の上昇により原油・LNGの海外平均単価は上昇しました。さらに、イクシスでは2026年上期の好調な生産により天然ガスの生産量とキャッシュ・フローが増加しました。それに関連してTAリサイクリングの収益を得ることができています。

また、アブダビでは課税所得の減少に伴い、法人税が大幅に減少しました。これらの要因により、中東情勢のマイナス面とプラス面を総合すると、プラスの側面が大きく、このような決算結果となっています。

2026年5月にお話しした際にも、中東情勢がプラスに作用する可能性を示唆しましたが、決算にもその結果が反映されているかたちとなっています。

主要な製品別売上収益

スライドは製品別売上収益についてです。表の上部が原油、下部が天然ガスを示しています。原油の売上収益は、前期の7,801億円から今期は6,949億円と、851億円減収しています。

販売量は、アブダビ産原油の販売が大きく減少し、1,781億円減収しました。一方、販売単価は油価の上昇を背景に上がり、また、為替の円安の影響もあり増加しています。

一方、天然ガスは前期の2,514億円から今期は2,719億円と、205億円増収しました。販売量については、イクシスの好調な生産も寄与し、国内ガスの影響も若干含まれていますが、85億円の増収となりました。

販売単価は「下落」と記載していますが、実際にはほぼ横ばいでした。海外の平均単価は上昇しましたが、国内では下落したため、全体としてはこのような結果となっています。為替の影響も加わり、2026年12月期の天然ガスの売上収益は2,719億円となりました。

親会社の所有者に帰属する中間利益 実績分析 (2025年12月期中間期 vs. 2026年12月期中間期)

スライドはフローチャートです。左側が2025年12月期中間期の親会社の所有者に帰属する中間利益で2,235億円、スライド右側が2026年12月期中間期です。あわせて約400億円の増益となっています。

スライド左側は売上収益を示しています。これは何度もお話ししましたように、販売量の減少などにより、売上収益が483億円減少しました。一方、スライドの右側から3番目と4番目は持分法損益とその他損益ですが、これが指しているのはイクシスです。

イクシスは生産が好調であり、年後半には連動油価の上昇が見込まれます。その結果、下流の利益が100億円程度増加し、さらにTAリサイクリングによる増益が貢献しています。イクシスのキャッシュ・フローが増加したことで、有償減資を大幅に実施できました。その結果、400億円の増益となっています。

スライド右側には、アブダビの課税所得の減少に伴い法人税が戻ってくることが示されています。この収益構造により、売上収益が500億円減少した一方で、イクシス関連で500億円増加、法人税で500億円の戻りがあり、合わせて約400億円のプラスという決算内容となっています。

中東情勢にはマイナス面とプラス面がありますが、プラス面が優勢であると読み取れる決算です。

2026年12月期 業績予想

2026年12月期の業績予想についてご説明します。ブレント原油価格については、第3四半期を80ドル程度、第4四半期を70ドル程度と見込んでおり、若干の原油価格の下落を見ています。5月時点の予想に比べて約2ドルの価格下落を想定しています。為替については、第3四半期および第4四半期ともに160円で見込んでおり、若干の円安を予想しています。

上期の決算とほぼ同じ傾向ではありますが、通期では減収ながらも増益となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,100億円を見込んでいます。ついに5,000億円を超えました。ROEについても、今回10パーセントを超える見通しとなり、好決算を見込んでいます。

一方で、ネットD/Eレシオがやや高めになっていますが、先ほど上田がお話ししたとおり、アバディ開発準備資金を大幅に積み立てるためです。

なお、当社の方針として、アバディ開発準備資金はネット有利子負債残高にネットしないかたちで計算していますが、ネットした場合は0.2ほどとなります。財務体質的には特に問題ないと考えています。

親会社の所有者に帰属する当期利益 増減要因分析 (5月発表予想vs. 8月発表予想)

スライドは、ウォーターフォールチャートです。4,500億円という数値は2026年5月の見通し時におけるアップサイドケース、大きいほうのケースを表しています。

この時は7月頃にアブダビの販売が正常化すると見込んでいました。今回の見通しでは5,100億円となり、600億円の増加となっています。アブダビの販売正常化を10月頃と見立ててこの数値を作成しました。

スライドの左側半分には外部環境要因が記載されています。これは中東情勢が反映されているとご覧いただいて問題ありません。また、為替も中東情勢の影響を受けて若干円安となっています。

油価の影響について、ここだけは少し変則的な動きが見られます。従来、通期予想や決算発表の際には感応度を用いて計算していましたが、今回は5月の見通しと比較して油価は下がっているものの、油価影響はプラスとして計上されています。これはLPGなどでプレミアムが大きくつき、増益方向に動いた結果です。特に中東情勢の影響で、通常とは異なる動きをしていると言えます。

また、「マイナス175億円」とあるのがプロジェクト要因です。こちらについては、これまでお話ししてきたように、アブダビの販売量減少がそのまま影響を及ぼしています。また、プロジェクト要因のセクションに「Profit Booster」と記載されていますが、ここにはTAリサイクリングの増益効果が含まれています。

Profit Boosterについては、TAリサイクリングと投資インセンティブ効果と合わせた年間影響額をおおよそ950億円と見積もっています。為替・油価・PJ要因の3つをまとめて外部環境要因としており、今回はマイナス要因が増えたものの、それを上回るプラス効果が生じています。

結果として、5月時点の見通しよりも107億円ほど増加している状況です。「中東情勢によってプラスになった」と聞くとあまり響きが良くありませんが、結果的にこのように業績予想に反映されている状態です。

それから、その他のポイントとしては、イクシスの販売量が従来の見通しである年間平均で月間10カーゴ程度を年間合計で数カーゴ上回る見込みで好調に推移しており、169億円ほどの増益となっています。

スライド右側はOne-off P/L(一過性損益)を示しています。減損・ARO等の計上・戻入で約200億円のプラスを織り込んだ結果、5,100億円となっています。

こちらは10月のホルムズ海峡再開を見込んだ数字ですが、情勢がまったく不確定であり、確定的なことは言えません。「仮に年内に正常化しなかったらどうですか?」とよく質問をいただきますが、その時の試算も行っています。

仮に正常化が2027年になった場合、約70億円から80億円ほどの減益となる可能性があります。しかし、生産量や油価が現状と変わらないことを前提とすると、減益額は100億円には達しないと考えています。その場合、当期利益は5,000億円程度となる見通しです。

キャッシュ・フロー 内訳

スライドはキャッシュ・フローについてです。スライドの一番上にあるように、営業キャッシュ・フローは1兆円を超えています。投資キャッシュ・フローは8,590億円となり、2026年5月の見通しに比べて600億円ほど増加しました。ただし、スライド下部に記載の成長投資は減少しています。

減少の理由として、アブダビの投資がほとんど横ばいではあるものの若干落ちている点と、1,000億円規模の1つの大きな投資で期ずれが発生した点が挙げられます。当初は12月末までに実施予定だったものが、2027年1月以降にずれ込むかたちとなりました。そのため、これまでお示ししてきた投資計画の内容そのものに変更があったわけではありません。

投資キャッシュ・フローが増加した理由については、「その他」の項目にあります。スライドには1,830億円と記載されていますが、アバディの開発準備資金がこの部分に反映されており、今回約2,000億円を積み増した結果です。

先ほど上田も述べたとおり、2026年12月期末における残高の見込みは7,700億円ほどとなっています。2026年5月時点では中東情勢の関係もあり積み増しは難しいと考えていましたが、今回、約2,000億円を追加したことで、現在のようなかたちとなっています。

投資キャッシュ・フローの内訳及び見通し

スライドは投資キャッシュ・フローについて示しています。スライド左側に記載されているとおり、投資キャッシュ・フローは8,590億円です。

アバディの開発資金については、2026年5月の見通し時点では積み立てを織り込んでいなかったものの、今回それを織り込み、合計で8,590億円となっています。

2,000億円のアバディ開発準備資金については、スライド上部に記載されているとおり、2026年12月末時点で残高が7,700億円強となる見込みです。これにより、上流の手元資金が1年前倒しで積み上がる見通しです。

2027年12月末時点の残高として6,000億円から8,000億円を積み立てる想定としていますので、1年前倒しでここまで到達できたということです。また、成長投資額は中期経営計画の想定である3年累計1兆9,000億円に対してオントラックとなっています。

スライド右側には、公表済みの案件について、投資規模と利益貢献時期が記載されています。これらのとおり、アバディが生産を開始するまでの間の成長を実現するための投資を行っている状況です。

セグメント別ROIC

スライドは、セグメント別のROICです。後ほどご覧ください。

以上が私からのご説明です。

質疑応答:アバディプロジェクトのハードルと進捗について

質問者:アバディについてお聞きします。今回スライド7ページで、時間軸とパーツごとの進捗についてご説明いただき、大変クリアになってきた状況かと思います。スライドにも記載のとおり、このプロジェクトは「Equity IRR10パーセント台半ば」の経済性を確保すると以前からご説明されていました。

本日のご説明を踏まえると、非常に順調に進んでいるように感じます。特にマーケティングの進捗については、早い段階から条件面でかなりの合意が進んでいることがわかり、非常に順調と捉えています。

そのような中で、Equity IRR10パーセント台半ばの経済性を確保していく上で、最大のハードルはどこにあるとお考えですか? 現在の進捗状況について、どのように捉えているかを教えてください。

スライドに、「インドネシア政府と協議を行い」とあります。最終的にはインドネシア政府との条件面や税制面が重要なポイントになるのではないかと想像していますが、Equity IRRの目標を達成する上で最大のハードルは具体的にどのようなところなのか、あらためてご解説ください。

さらに、待機資金を一年前倒しで7,700億円まで確保できたというお話がありました。これにより、上流部分で必要となる資金は確保できていると評価してよいのかについてもご教示いただけるとありがたいです。

上田:1点目の、アバディについてEquity IRR10パーセント台半ばを確保するための最大のハードルは何かというご質問ですが、私としては、大きく2つの要素があると考えています。

まずはインドネシア政府とのインセンティブ交渉がうまく進むかどうかという点です。ただし、より重要なのは、プロジェクトのコストダウンをどこまで実現できるか、という点だと思います。

現在、FEEDを実施していますが、コストは単純に一度に提示されて終わるというものではなく、その後、我々とコントラクターの間で「ここをもっと削れないか」「このスケジュールをこう変更できないか」といったさまざまな交渉が続きます。

例えば、ローカルコンテントを少し低くすることでコストが下がる場合もあり、単にコストダウンと言っても多様な方法が存在します。

当社にとって、プロジェクトを成功させるには経済性が重要です。そのため、インセンティブの前に、まずコストダウンを徹底的に、さまざまな手段を用いて追求する必要があります。

コストとは単純に決定されて終わりではなく、むしろ「生き物」のようなものであると言えるかもしれません。このコストダウンを最大限図ることが、大きなハードルの1つだと考えています。

その上で、それでもなお経済性が十分でない場合には、インドネシア政府となんらかのインセンティブ交渉を行いたいと考えています。この2つの要素が、大きなハードルであると言えます。

アバディプロジェクトのために7,700億円強まで積み増した資金が、上流投資に十分であるかについては、プロジェクト全体のコスト、すなわちCAPEXがどれくらいになるかに大きく依存するため、明確にはお話しできません。

しかし、過去を振り返ると、アバディのCAPEXは2019年にPODを決定した際に約20ビリオンドル(約200億ドル)と見積もられていました。

その20ビリオンドルのコストに加え、CCSを導入することにしたため、コストがおそらく5パーセントほど上乗せされる見込みです。これらは2019年ベースの数値ですが、その後、2026年のベースに換算した上で、インフレなどによる大幅なコスト増加が見込まれるため、それを考慮した数字が最終的なCAPEXとなります。

その具体的な金額は、コストダウンの取り組みやその他の要因にも大きく影響されるため、現時点では詳細を把握することは困難です。FEEDやEPCの入札プロセスを通じて、徐々に明確になるものと考えています。

そして、2019年ベースの数字から30パーセントから40パーセント程度のコスト増が発生していたとしても、個人的にはそれほど驚くべきことではないと考えています。

それは上流と下流をすべて含んだCAPEXとなります。まず、INPEXの持ち分は現時点で65パーセントです。

その上で、上流および下流のLNGプラントに資金を配分します。下流部分、つまりLNGプラントについてはトラスティ・ボローイング(Trustee Borrowing)というかたちで、お金を借りて債務保証する仕組みを用いるため、上流部分でキャッシュが必要となります。

この上流部分には、先ほどお話しした7,700億円程度のお金が積み上がっています。この資金で十分か否かについては、正直なところまだはっきりしていませんが、100パーセントには達していないと思われますので、さらなる努力が必要であると考えています。

質疑応答:アブダビ投資の収益貢献について

質問者:スライド21ページにて、投資案件と利益貢献時期についてご説明いただきましたが、あらためてお聞きします。直近では既存案件の中で投資が多いと見られる、アブダビ関連の増産効果や収益貢献に関してです。

スライドに記載のとおり、アバディの生産開始前に貢献が可能とのことですが、アバディの生産前における重要な利益成長ドライバーであるアブダビについて、収益貢献のタイミングなどについてご説明いただけますか? 国の方針に沿ったかたちでかまいませんので、具体的にお話しいただける部分があればお願いします。

上田:アブダビの増産効果についてですが、アブダビとの間にConfidential Agreementがあるため、生産量など具体的な内容についてはお話しできません。この点はご了承ください。

その前提で、21ページの表をご覧ください。アブダビについては2つ記載があります。1つ目は、上部ザクム油田の追加開発です。アブダビ全体では現在400万バレル・パー・デイ程度の生産を行っていますが、2027年までに原油生産能力を500万バレル・パー・デイ程度に増やす計画があります。その増産に寄与するプロジェクトの1つが上部ザクム油田の追加開発となります。当社は今後数年で数千億円規模の投資を行い、数年後には一定の収益貢献ができると考えています。

次に、アブダビ陸上鉱区のBab油田のガスキャップ開発ですが、これは油田の上にたまっているキャップガスを開発するプロジェクトで、現在はFEED作業を進めています。2026年中に投資決定を行うことを目指しており、生産開始はおそらく2029年頃になる見込みです。この時期から利益貢献を見込むことが可能だと考えています。利益貢献は数十億円規模を想定しています。

質疑応答:アバディLNGの長期契約拡大余地について

質問者:アバディについてです。ご説明の中で、長期契約販売について、約800万トンのうち約600万トンのベースの契約が完了したとのお話がありました。

引き合いも非常に好調とのことでしたが、中長期的な利益を安定化させるため、長期契約の部分を増やす可能性や計画はあるのでしょうか?

上田:アバディに関して、長期契約の割合を拡大したらどうか、という内容と認識しました。

基本的には可能ですが、あまりそれを進めようとはしていないというのが答えです。アバディでは、950万トンのLNGと、150MMSCFのパイプラインガスという構成になっています。

LNG契約に関しては、イクシスの時には若干の教訓がありました。イクシスでは当初、生産能力の90パーセント以上を長期契約としており、ファイナンス面などでは非常に良かったのですが、トラブルが発生した際に、バッファが不足する問題がありました。

その反省を踏まえ、アバディでは一定のバッファを確保するというポリシーを採用しています。具体的には、950万トンのうち約150万トンをバッファとして確保し、残りの約800万トンを長期契約に充てる方針です。

約800万トンは、基本的にすべてを長期契約とすることを目指して交渉を進めています。日本や海外の買い手からの引き合いが非常に強いため、さらに増やすことも可能です。ただし、先ほど述べた理由から、長期契約部分をこれ以上増やすことはあまり考えていない状況です。

質疑応答:株主還元のさらなる拡充について

質問者:株主還元についてです。今回の株主還元では、自社株買いに重点を置いた点が非常に強いメッセージ性を持っていると考えています。

一方で総還元性向が53パーセントというのは、「総還元性向50パーセント以上」という方針の範囲内に収まっているようにも見えますが、強い意志があるのであれば、総還元性向をさらに引き上げることも考えられるのではないでしょうか?

また、待機資金を1年前倒しで達成する見通しであることを踏まえると、キャッシュの観点からも、さらに強いメッセージを発信することが可能ではないかと思いました。還元を促す意図はないことをあらためて申し添えた上で、それに対するご見解をお聞かせください。

上田:「メッセージはわかったが、よりメッセージ性があるような還元をしてはどうか」という強いメッセージと受け取りましたので、こちらをしっかりと参考にします。

当社のポリシーは、無理に還元を増やすのではなく、成長しながらその果実を還元していくことを基本方針としています。おっしゃるとおり、今回の総還元性向は約53パーセントの見通しです。

この水準を維持しつつ、成長を実現し、適切な還元を行っていくというポリシーを着実に実行すると、現在の数字となったとご理解いただければと思いますが、今のご指摘は真摯に受け止めます。

質疑応答:アバディのEquity IRRについて

質問者:質問に先立ち、御社の株価やROE、収益性の改善について、5年前と比べて大きく向上しており、個人的に非常にうれしく思います。この調子で進んでいただければと願っています。

特に、アバディの収益性をどこまで信頼できるかという点については難しい課題であることを理解していますが、可能な限り現状の調子で開示を充実していただければ幸いです。

また、インフレの影響で投資額の増加や投資の遅延があるかもしれませんが、そのような状況下でも収益性向上に努力していただければと思います。

ご質問ですが、アバディのEquity IRRが10パーセント台半ばである場合の、現時点での原油価格のイメージについてお聞かせいただけますか?

無茶なことを言いますが、「ブレント50ドルでもEquity IRR10パーセント半ばを目指せる」というようなコメントをいただけると議論がしやすくなると思います。

現状ではお答えが難しいかもしれませんが、「FID(Final Investment Decision)」の際にでもお話しいただけるとありがたいです。

上田:アバディのEquity IRR10パーセント台半ばと油価をどう考えるかという点ですが、これについては今後のインドネシア政府との議論となるため、明確なことをお話しするのは難しいです。

2019年に議論していた当時は、概ね65ドルを念頭に置いて話し合っていました。ただし、当時の話ではありますが、65ドルで未来永劫フラットと仮定していた部分には、実態との乖離があると考えています。したがって、油価をどのように見ていくかは今後の議論になると思います。

質疑応答:ROE目標について

質問者:ROEについてです。御社の中期経営計画資料で、私が特に注目しているグラフはROEと成長率に関するものです。本日発表された成長率に関するグラフも非常に優れていると思っており、私自身も参考にしたいと思っています。

現在のROEは10パーセントの水準にあり、自己資本が約5兆円、そして今年度は純利益5,000億円となっており、大変すばらしい成果だと思います。

お話ししたいのは、中期経営計画資料の中で、成長率とROEの観点から見ると、ROEに関してはヨーロッパのメジャーに劣るという課題が明記されており、課題を認識し、それを資料に載せている姿勢を高く評価しています。

2035年目標として掲げられているROE10パーセント以上というのが現状の目線だと理解していますが、アバディへの投資を続けながら、さらに原油価格が現状水準で推移すると仮定した場合、「Profit Booster」の第2弾、第3弾を期待してもよいのでしょうか?

山田:当社のROEはおおよそ10パーセントで、メジャーと比較するとやや低い水準にあります。これはご承知のとおりです。

当社のポートフォリオをご覧いただくと、その中心はオーストラリア、アブダビ、そして日本となっており、極めてカントリーリスクが低い地域で構成されています。アメリカのメジャーに関して言うと、ChevronとExxonMobilは類似したポートフォリオを持っています。

一方で、ヨーロッパのメジャーは、もう少しカントリーリスクの高い分野を含むポートフォリオを持っています。このような状況で比較した場合、リスク調整後のROEという概念があるとするならば、我々のROEは決してヨーロッパのメジャーに劣っているわけではないと考えています。

リスクが低いにもかかわらずROEが10パーセントということは、競争上そこそこの水準であると言えます。今年はたまたま5,000億円を超えたことで10パーセントを上回りましたが、歩を緩めるつもりはありません。引き続き前進していきます。

また、「Profit Booster」についてお話しすると、2025年にご説明した際には、為替が円安であることを前提としつつ、10年ほどこの水準が続く可能性が高いと見ていました。

第2弾、第3弾は簡単には出てこないかもしれません。しかし、当社のバランスシートは8兆円以上あり、IFRSを採用しているため、前期と今期のバランスシートの差額が収益となる構造です。

このように大規模なバランスシートを持つため、油価、金利、為替が少し動いただけでも、会計上や税務上の含み損益が大きく変動します。

この変動をしっかり見極め、前期と今期のバランスシートの差額がPL(損益計算書)に反映されるというIFRSの考え方を踏まえた運用を行っています。

これにより、「Profit Booster」のような成果を常に得られるとは限りませんが、余地はあると考えています。このため、財務上の管理に日々注力しています。

現在「こうです」とお伝えできないのは残念ですが、可能性として十分にあると考えています。なにしろ8兆円のバランスシートを持ちながら、グローバルにポートフォリオを展開しており、油価や為替の変動が大きい中で、バランスシートの含み損益は必ず発生するものと思います。

こちらに目を光らせながら、収益の下支えとなるよう財務面やタックス面で適切にオペレーションを行うことを計画しています。

質疑応答:オーストラリアのイクシス事業のカントリーリスクについて

質問者:イクシスに関してです。オーストラリアのカントリーリスクについてどのように見ているか、あらためて整理していただけますか? 特に、昨今ではガスの国内供給義務といった話題が散見されます。

今回のストライキのような事案を例に挙げると適切ではないかもしれませんが、それほど気にしなくてもよいものなのでしょうか? ナショナリズム的な要素も意識しておく必要があるのか、どのように見ているかをお聞きしたいと思います。

上田:イクシス、オーストラリアのカントリーリスク、そしてガスの国内供給義務に関する認識や、ナショナリズムの影響については、懸念があるというのが率直な見解です。

実は、1ヶ月ほど前に私はオーストラリアのキャンベラを訪問し、財務大臣をはじめ、さまざまな政治家とお会いして議論を行いました。個別の課題としてはいくつかありますが、その中で特に議論されているのが、ガスの国内供給義務(Domestic Gas Reservation Scheme)の導入に関する方向性です。

国内供給義務とは、LNG輸出量の20パーセント相当を国内に供給する制度であり、これを実施しようという議論が行われています。背景には、オーストラリア国内、特に東海岸地域でガスが不足している事情があります。そのため、「輸出せず、国内にきちんと供給しよう」という政治的思惑も絡み、この議論が進んでいるのです。

しかし、我々から見ると、「それは本当だろうか?」ということです。この政策を実行すると、輸出量の20パーセントを国内供給に回すことで、国内では供給過剰が発生し、ガス価格が著しく下がる可能性があります。

その結果、オーストラリア国内にガスを供給しているエネルギー事業者が非常に厳しい状況に追い込まれることになります。

また、輸出業者についても、輸出量の20パーセントを国内供給に振り分けなければならないため、さまざまな課題や懸念が出てきます。

我々の言葉で表現すると、「問題は輸出にあるのではなくて、投資不足である。オーストラリアにはガスがたくさんあるため、より投資して生産すればいい。それをしないで、海外向けの輸出業者に国内供給を義務付けるということは、かえってビジネス環境の予見可能性を失わせ、投資家のマインドセットを非常に低下させるものである。そうすると、将来的に投資不足になる可能性がある。そのようなことよりも、むしろ投資をしっかりと行うことが真の解決である」ということです。現在、この点についてオーストラリア政府と議論を続けています。

一方で、オーストラリア政府としては国内事情もあるため、この問題は容易に解決できるものではありません。現在、オーストラリアの最大の課題はCost of living、すなわち物価高による生活の厳しさであり、これが国内議論の焦点となっています。物価対策のために、海外事業者からさらなる税収を求めようという意見も多く聞かれます。

このような中で、オーストラリア政府は「ガスは重要であり、日本との関係も非常に重要だ」としつつも、国内政治の問題も考慮せざるを得ないという立場を示しています。さらに、Domestic Gas Reservation Scheme以外にも、外資への税率引き上げなど、多様な議論がオーストラリア国内で展開されています。

このような状況の中で、オーストラリアのビジネス環境が悪化していること(Business Environment Deterioration)に対して、我々は率直に懸念を表明している他、我々自身もこの状況に危機感を抱いています。

質疑応答:株主還元方針と業績見通しについて

質問者:株主還元についてです。現在は第2四半期決算の状況ですが、原油価格の動向次第で通期の純利益が5,100億円から変動する可能性があると考えています。

このタイミングで利益の50パーセントを超える還元を宣言したということは、多少油価が変動しても、この純利益の水準に十分対応できるといった自信の表れとして捉えるべきでしょうか? それとも、純利益には変動の可能性があるものの、株価水準が割安とされる点が、今回の還元方針の背景により強くあるという理解でよいですか?

原油価格の変動を考慮した利益計画に対してどの程度の自信をお持ちなのかについてもお聞きしたいと思います。

滝本俊明氏:取締役副社長執行役員経営企画本部長の滝本です。株主還元の水準については、社内でもさまざまな議論があります。本日社長から説明があったとおり、今回は比較的自己株買いに重点を置き、総還元性向53パーセントというかたちで第2四半期に発表しました。

この方針が期末までに変動する可能性についてのご質問かと思います。ご承知のとおり、我々の純利益の70パーセント程度を占めるイクシスのLNG価格は、数ヶ月から半年程度前の原油価格を参照して決定される仕組みになっています。

すでに7月末までの原油価格が決まっていますので、長期契約しているLNGについては、12月末までの販売価格とそれに基づき一定程度の収益が出ることが見えてきている状況です。

余剰カーゴが発生するとスポット販売が可能となり、上振れの余地もあります。一方で、ホルムズ海峡の正常化が遅れると、アブダビでは若干のマイナス影響が出る可能性もあり、振れ幅がある状況です。

ただし、収益の柱であるイクシス事業のLNG販売価格が8月の段階である程度見えてきているため、この時点で総還元性向を53パーセントとすることをお約束するのは無理のない判断であると考え、今回決定しました。

質疑応答:イクシスTrain3の進捗について

質問者:現在のオーストラリアに関連して、イクシスのTrain3に向けて、現時点で数量としてどの程度の見通しが立っているのかについてです。今回、Beetaloo堆積盆地については非常にポテンシャルがあるというお話がありました。

一方で、残念ながら「ブラウズLNGプロジェクト」については投資が実現しなかったとのことです。Train3についてどの程度の見通しが立っているのか教えてください。

上田:イクシスのTrain3に向けた目途がどの程度ついているかですが、数量的な目途といったものは、現時点ではまだ明確に立っているとは言えない状況です。

イクシスに関しては、AC/RL7鉱区(Cash Maple)など、すでに周辺のガス資源の開発を検討しています。これらはイクシスのプラトーを長期的に維持するためにある程度の目途を持っていますが、Train3には新たに相応の規模を持つガスソースを確保しなければなりません。

Beetalooについては、アメリカのパーミアンにも匹敵する埋蔵量があるとの意見がある一方で、そこまで多くないのではないかという意見もあり、さまざまな見解があります。ただし、埋蔵量についてはかなり期待できるものの、現時点では確定的な段階には至っておらず、実際にそこまで行けるかどうかは未知数です。

今後数年かけてDaly Waters Energy LP社(DWE社)とともに探鉱作業を進め、どれくらいの埋蔵量があるかを明確にしていく予定です。

仮に十分な埋蔵量がある場合、Beetalooは陸上に位置していますが、そこからイクシスまでパイプラインを結び、イクシスのTrain3につなげる可能性を検討しています。この点については、まさに今後の探鉱作業次第だと理解いただければと思います。

質疑応答:来期業績見通しについて

質問者:少し気が早いのですが、来期の業績に関してです。今期ではアブダビの税金負担の軽減やプレミアム効果、中東情勢のポジティブな影響が作用した部分がありますが、来期に向けてその反動減が予想されるかと思います。

それ以外の増益要因として、数量増など期待できる部分や、先ほどお話ししたネガティブな要因を考慮しなくてもよいという前提であれば、それについてもあわせて教えてください。

山田:2027年については、現時点では確たることをお話しするのは難しいですが、油価と為替の動向次第で大きく変動する可能性があります。

2026年の油価と為替については、油価がやや高い水準にありますが、その程度の水準で推移した場合、為替を160円程度と想定すると、イクシスについては若干のシャットダウンがあるにせよ、それほど大幅に落ち込むことはないと見ています。

2026年は5,000億円を超えることができたため、不確定要素はありますが、今後も同じぐらいの水準を目指すことが可能であり、収益水準が引き上がっているのではないかと考えています。

このように、5,000億円を達成できれば、自己株取得を進めつつ自己資本のコントロールも可能となり、10パーセントのROEを継続することも視野に入れられるのではないかと見ています。ただし、あくまで何も起こらなければという前提です。

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