logmi Finance
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ナイス株式会社8089

東証スタンダード

卸売業

目次

津戸裕徳氏(以下、津戸):みなさま、こんにちは。ナイス株式会社代表取締役社長の津戸です。本日は当社の決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。当社の事業内容や成長戦略などについてご理解いただければ幸いです。よろしくお願いします。

本日は4点お伝えします。当社の事業概要、「中期経営計画Road to 2030」、2026年3月期第2四半期の連結業績、通期の業績予想および株主還元についてです。

すべてのステークホルダーの皆さまへ

津戸:はじめに自己紹介をします。新卒からナイス株式会社に入社しました。最初の配属先である人事部で採用を担当した後、建築資材流通の営業に携わりました。

建築資材流通の営業では、直接のお客さまは木材・建築資材の販売店です。その販売店とともに、地域で住宅を供給する工務店やビルダーに対し、さまざまな商材の提案や、受注を獲得するためのお手伝いなどの営業活動を行ってきました。

私は、地域で良い家づくりをする工務店はたくさんあると考えています。広告宣伝費もかけず、お客さまに喜んでいただけるすばらしい家づくりをする、腕のある工務店が数多くありました。

そのような方々にどんどん家を建てていただき、結果として、その家に住む方々が幸せになる、これが一番あるべき姿だと考えています。それこそが流通業の役割だと認識して携わってきました。

当社には、建築資材の流通と住宅不動産の販売の2本柱があります。この2本柱において、なくてはならない会社になるためには相互信頼が必要です。取引先の信頼を勝ち取るには誠実に取り組むことが大切だと考え、私の経営方針の一丁目一番地には「誠実」という言葉を掲げています。

ナイス株式会社 概要

津戸:当社の概要です。当社は1950年に創立し、おかげさまで今年75周年を迎えることができました。本社は横浜市鶴見区で、箱根駅伝の走路となる国道15号線沿いにあります。グループ会社を含め、連結従業員数は2,800名を超える規模となっています。東京証券取引所における上場区分はスタンダード市場です。

1950年創業

津戸:当社の祖業です。当社の事業は、横浜市鶴見区にて木材の「市売り」を行ったことからスタートしました。

市売りは、市場の中で木材を競り売り形式で販売する事業です。いくらで売れるかわからない競り売りで、製材所のみなさまから木材を預けていただくためには、やはり相互信頼が必要だったと考えています。

企業理念

津戸:創業当時から大切にしている「信頼」は、創業から75年経た今でも当社の企業理念に明記し、大切な言葉として位置づけています。

当社の企業理念は、「私たちは信頼を礎に豊かな住まいと暮らしを実現します」というものです。この理念には、ステークホルダーのみなさまから信頼され、期待される企業であり続け、企業として成長し続けていくという思いを込めています。

ナイスグループのあゆみ

津戸:その後、取り扱いの商材を木材から建材・住宅設備機器などへ広げてきました。1970年代からマンションや一戸建住宅の供給、不動産仲介などの住宅事業も開始し、現在では建築資材事業と住宅事業の両輪で事業を展開しています。

また、その他の事業として物流や建設、ケーブルテレビ事業など、幅広いサービスを提供するグループへと成長してきました。

売上規模(2025年3月期経営成績)

津戸:前期2025年3月期の売上高は2,430億円、営業利益が46億円となっています。

マンションや一戸建て住宅を供給しているエリアの方々には、当社を住宅会社として認知していただいているケースが多いのですが、売上の4分の3は、BtoB事業である建築資材事業が占めています。

拠点展開

津戸:グループ全体の拠点展開は、首都圏・関東を中心に全国で179拠点となっています。

拠点一覧

津戸:ここからは、建築資材事業、住宅事業の具体的な取り組みについてご紹介していきます。まずは、建築資材事業です。建築資材事業では、住宅を建てるために必要な部材を全国に供給しています。営業所や物流センター、工場などを含めて119拠点あります。

ビジネスモデル

津戸:スライドは商流のイメージ図です。木材・建材・住宅設備機器のメーカーから商品を仕入れ、全国の販売先に供給しています。仕入れ先が約4,600社、販売先が約4,000社におよびます。

建材・住宅設備機器の流通

津戸:建材・住宅設備機器の仕入れ先は多数ありますが、スライドに記載のようなメーカー各社から、キッチンや洗面所、浴室などのさまざまな建築資材を仕入れて販売しています。

木材の流通

津戸:木材の仕入れについては、これまで培ってきた調達ネットワークによって、国内外から木材製品を安定的に調達しています。

約4年前に、世界的な木材価格の高騰や供給不足に陥ったウッドショックが発生しました。この時は我々も海外から輸入する木材の供給量が減りましたが、その分を国産材の調達で鋭意対応し、多くの需要に対応することができました。

47都道府県の認証材を調達

津戸:スライドの画像は国立競技場です。こちらの軒庇(のきびさし)は当社で材料を調達しました。47都道府県の認証材を使用し、当社で加工から取り付けまで担当しました。

施工にあたっては、方向に応じて各都道府県の木材がきれいに配置できるような工夫が施されています。

原木生産・製材

津戸:木材に関して、当社グループでは川上における事業にも取り組んでいます。一部では社有林から原木を切り出しているほか、徳島県と和歌山県に製材工場を持ち、そちらでスギ・ヒノキを中心とした国産材の製材も行っています。

プレカット加工・躯体供給

津戸:また、プレカット機能を保有しています。国内6ヶ所のプレカット工場で、家づくりに使用する土台や柱、梁などを工場で加工し、全国の工務店やビルダーの建築現場に納材しています。

自社の6ヶ所の加工工場では、各エリアで提携するプレカット工場と連携し、全国のビルダーの建築ニーズに対応しています。

当社オリジナルの「パワービルド工法」は、全棟で自動的に構造計算を行うソフトを兼ね備えており、住宅をはじめ、店舗や教育施設などの非住宅物件においても採用事例が増加しています。

拠点一覧

津戸:続いて、住宅事業についてご説明します。住宅事業は、首都圏を中心に、仙台、新潟、宇都宮、豊田、浜松など地方の中核都市で49ヶ所の拠点を展開し、住宅の供給を手がけています。

分譲マンションの供給

津戸:まず、分譲マンションの供給です。当社は、「住まいは命を守るものでなければならない」という思いを持っています。その思いのもと、地震に強い家づくりを推進しています。

マンションにおいては、地震の揺れを軽減する免震構造を推進しており、神奈川県、栃木県、宮城県では免震マンション供給棟数ナンバーワンの実績を持っています。

また、エントランスなど共用部の木質化も施しています。高級感のあるデザイン、落ち着きのある空間でお客さまから好評をいただいています。

1971年以降に供給したマンションの累計戸数は約5万5,000戸となっています。

一戸建住宅の供給

津戸:続いて、一戸建住宅の供給です。当社が分譲する一戸建住宅では、構造躯体などの建物の主要部分において、国産材を100パーセント使用した家づくりを行っています。

性能面にもこだわり、建築基準法で定められている耐震強度の2倍超の耐震性能や、高い断熱性能を標準規格としています。

取り組みを始めた1972年以降、一戸建住宅の累計供給戸数は3万戸を超えています。

不動産仲介事業

津戸:不動産流通事業を手がける「ナイス住まいの情報館」では、住宅や土地の購入・売却のほか、賃貸、リフォームなど住まいに関する相談にワンストップで対応しています。

菊池建設(株)

津戸:また、グループ会社の菊池建設では、伝統的な和風住宅や社寺仏閣の建築なども手がけています。

中期経営計画をアップデート

津戸:今年5月に策定した「中期経営計画Road to 2030」についてご説明します。

当社は2023年に「中期経営計画2023」を策定し、その中で長期目標として2030年に売上高3,000億円の目標を掲げていました。

その後、新築マンション供給の減少や木材相場の下落など事業環境の変化を受け、あらためて今期を初年度とする5ヶ年計画として、「中期経営計画Road to 2030」へとアップデートしました。

今回の計画のポイントは、人口減少などの影響で住宅マーケットが縮小していく中でも、伸びゆくマーケットをしっかりと見極め、その分野において当社の強みや競争優位性を発揮して成長していく方向性であるということです。

新設住宅着工戸数推移

津戸:前提となる市場環境についてです。新設住宅着工戸数は、スライドのグラフが示すとおり、今後の人口減少に伴って減り続けると予測されています。一方で、そのような環境の中でも今後成長が予測されている市場もあります。

成長市場 -木造建築物-

津戸:スライドは、住宅建築物の着工床面積と木造率の推移を表したグラフです。緑色の棒グラフは建築物全体の着工床面積を表しています。

全体として、着工床面積は近年徐々に減少傾向ではありますが、折れ線グラフで表している建築物の木造率は上昇傾向にあります。木造建築物全体を見ると横ばいから微増で推移していくものと考えています。

成長市場 -国産木材-

津戸:こちらのグラフは、建築物に使用する木材の自給率の推移です。ご覧のように輸入材も含めた木材利用量全体では若干減少傾向に見えますが、棒グラフの濃い緑色で示す国産材の比率は年々上昇していくことから、国産木材の市場は今後も安定的に推移していくものと見込んでいます。

成長市場 -リフォーム-

津戸:リフォームマーケットです。コロナ禍の2022年から2023年に需要が急増しました。その後一部反動があったものの再び拡大に転じており、今後も堅調に推移すると見込んでいます。

成長市場 -中古買取再販-

津戸:中古住宅買取再販市場も成長が見込まれます。現在、新築マンションと新築一戸建住宅は価格が高止まりしています。新築と比較して相対的に割安な中古住宅の需要は今後も増えていくと予測しています。

成長市場 -マンション管理・修繕-

津戸:また、ストック産業として増加が予測されるマンション管理市場、共用部修繕工事市場も拡大が見込まれています。

成長ドライバー

津戸:これら成長が見込まれるマーケットの中で、当社の競争優位性を発揮して業績を拡大させていくために、スライドに記載の7つの事業を成長ドライバーと位置づけています。7つの成長ドライバーを個々にご説明します。

国産木材の供給

津戸:1つ目は「国産木材の供給」です。当社グループ会社のウッドファースト徳島製材工場の敷地に、新たに第2工場を建設しました。新工場建設により、工場全体の年間原木消費量が従来の3万6,000立方メートルから9万立方メートルとなる想定です。

国産木材の供給

津戸:2023年5月には、農林水産省と建築物木材利用促進協定を締結しました。この協定のもと、建築物への国産材の積極的な利用の推進などに取り組んでいます。

協定で掲げた2027年度の年間国産材取扱量目標は、65万5,000立方メートルとなります。

国産木材の供給

津戸:スライドの画像は、創立75周年記念で実施した社内公募による新規事業提案で出されたアイデアで、国産材100パーセントの木造ユニットハウス「MOK UNIT(モクユニット)」です。

これは一般の住宅向けではなく、リゾート施設や災害公営住宅、建設現場の仮設事務所など、さまざまな用途の展開を検討しています。国産材の新たな需要創造の場として、現在製品化を目指して進めています。

国産木材の供給

津戸:また、国産材の利活用拡大の中で、現在、木造ハイブリッド免震マンションを計画しています。スライドの建物は賃貸マンションをイメージしたものですが、下の5層が鉄筋コンクリート造で、その上に木造の4層が乗るハイブリッド構造です。

内外装の木質化も予定しており、地元の地域産材を積極的に活用するなど、地域の行政との連携も図っていきます。

非住宅木造建築

津戸:成長ドライバーの2つ目は「非住宅木造建築」です。昨年6月に、飛島建設と合弁でウッドエンジニアリングを設立しました。当社の木造調達ネットワークや木造化のノウハウと、飛島建設の技術力を融合させ、4階建てから6階建ての中層の非住宅の木造化・木質化を推進していきます。

木造化によって、現在建築コストが高騰している鉄筋コンクリート造よりも、場合によってはコストを抑える効果も想定されることから、今後木造化の需要が増えていく見込みです。スライドのパース(完成予想図)は、現在、川崎市で建設中の木造4階建ての高齢者施設です。

中古マンション買取再販

津戸:成長ドライバーの3つ目は「中古マンション買取再販」の取り組みです。先般、木質化のリノベーションブランドとして「RIZ WOOD(ライズウッド)」を発表しました。

国産材による木質化を中心とした内装提案で付加価値を高め、他社の中古マンション買取再販との差別化を図っています。

現状で当社の中古マンション買取再販の実力は150戸程度ですが、これを2030年3月期には500戸まで伸ばしていく計画です。

また、一棟収益マンションの買取も積極的に推進しています。購入後リノベーションを施して付加価値を高め、利回りを上げて再販するスキームに現在取り組んでいます。

マンション総合管理

津戸:成長ドライバーの4つ目は「マンション総合管理」です。グループ会社のナイスコミュニティーでは、サービスの向上と適正な管理手数料の設定、大規模修繕工事への対応などを着実に進めながら、管理戸数10万戸体制を目指していきます。

賃貸管理

津戸:成長ドライバーの5つ目は「賃貸管理」です。2025年10月1日に、新井商事ビル管理の株式を取得し、当社グループに加わっていただきました。

新井商事ビル管理は、東京都足立区で圧倒的なブランド力を持った会社です。約3,500戸の賃貸物件を管理しており、今まで当社が川崎、横浜で中心に行っていた管理事業と合わせ、グループで1万1,000戸超の管理体制となりました。

顧客基盤として東京都足立区が加わります。足立区のエリアでは、約3,500戸の賃貸管理に加え、住宅事業としても新たな事業基盤を構築していきます。

スライドの画像は、当社が横浜市鶴見区に所有する築30年以上の賃貸マンションの内外装を木質化リフォームしたものです。いったんすべて退去された後に木質化リフォームを実施し、新たに貸し出しました。

木質化による効果の検証

津戸:賃料設定を築浅の物件とほぼ同等に設定して賃貸募集を行ったところ、かなり早い時期に満室稼働となりました。

この結果を、東京大学で木材加工学を専門としている井上先生に興味深い事例として提供したところ、さまざまな分析をしていただきました。その結果、この物件に関しては、住宅の内装木質化が賃料に与えた影響が、1平方メートルあたり288円程度認められるという推計値が出されました。

1LDK程度では40平方メートルで換算すると1万1,000円強、50平方メートルでは1万5,000円ほどの推計値となります。

これまで木の持つ効能というのは、香りが良い、落ち着くなど、「なんとなくいいよね」という曖昧な評価でしたが、今後はこのように具体的な経済価値として明確に示すことができる事例を積み重ねて木質化の提案を強化していきます。

エネルギー関連商品の供給

津戸:成長ドライバーの6つ目は「エネルギー関連商品の供給」です。昨年10月に、中京圏を中心にサッシ・エクステリアなどの住宅用建材の販売・施工を手がけるセレックスがナイスグループに加わりました。

セレックスは、特にサッシの供給に強みを持っており、年間6,000棟の供給実績を誇るなど業界トップクラスの位置づけにあります。グループのシナジーを発揮してサッシ供給に関するサービスエリアの拡充を図っていきます。

物流

津戸:成長ドライバーの7つ目は「物流」です。当社グループの建築資材の流通に関する業務はもちろんのこと、荷主企業に代わって物流業務を受託する3PL(サードパーティロジスティクス)事業の拡大を図るなど、業界の垣根を越えた物流の取り組みにチャレンジしていきます。

成長ドライバーによる業績貢献

津戸:今お伝えした7つの成長ドライバーを着実に事業として組み立てて実行しながら、今回の中期経営計画の期間中に売上高550億円増、営業利益30億円増を作り出していきます。

『人的資本経営に対する取り組み』

津戸:これらの成長ドライバーを通じた事業成長を実現するためには、人材育成も非常に大事だと思っています。専門スキルの拡充やキャリア採用など、人材戦略にもしっかりと取り組んでいきます。

さらに、従業員エンゲージメントの向上や、DE&Iの推進、健康経営の推進など、人的資本経営の取り組みも加速させていきます。

スライドの画像は、当社グループ会社の社員が年に1回全国から集まって経営方針を共有し、我々の理念を伝えて思いを1つにする基本方針発表会にて撮影したものです。

この発表会の場で、1年間の経営方針、中期経営計画、各事業における具体的な施策や取り組み、活躍している社員のみなさまの取り組み事例や成功事例をお伝えし、グループ一丸となって活動する体制作りを目指しています。

連結業績 概要

津戸:ここからは、今期2026年3月期第2四半期の業績をご説明します。はじめに連結業績の概要です。建築資材事業、住宅事業ともに増収増益を達成し、売上高は前年同期比13.5パーセント増の1,196億円と、中間期としては過去最高の水準となりました。

営業利益は、M&Aなどによるのれん償却費が増加したものの、それを上回る売上総利益が実現し、増益となっています。

親会社株主に帰属する中間純利益については、投資有価証券の売却益が一部含まれています。

セグメント別売上高

津戸:セグメント別売上高です。いずれのセグメントにおいても、前年同期比で10パーセント以上の増収を実現することができました。

セグメント別売上高 増減要因(前年同期比)

津戸:セグメント別売上高の増減要因です。建築資材セグメントでは、サッシ・エクステリアの販売に加えて、新規取引先の増加などにより、前年同期比でおよそ102億円の増収となりました。

住宅セグメントについては、新築マンション、中古マンション買取再販の計上戸数が増加し、賃貸管理事業も堅調に推移したほか、一棟収益物件の売上計上などにより、25億円程度の増収となりました。

その他セグメントについては、建築工事事業並びにケーブルテレビ事業が堅調に推移して増収となりました。

セグメント別営業利益

津戸:セグメント別の営業利益です。いずれのセグメントも前年同期比で30パーセント以上の増加率となりました。

セグメント別営業利益 増減要因(前年同期比)

津戸:セグメント別営業利益の増減要因です。どのセグメントにおいても、前年同期比で2億円以上の増益となっています。

営業利益の推移

津戸:過去10年間の中間期の営業利益の推移です。当社は、今までは新築分譲マンションの計上が第4四半期に集中するなど下期偏重の利益構造となっていました。しかし、昨今は利益計上の平準化を推し進めており、その成果が徐々に出始めていると考えています。

2021年3月期以降は、中間期の黒字化を継続しています。

連結貸借対照表 概要

津戸:貸借対照表です。詳細についてはスライドをご覧ください。販売用不動産・未成工事支出金の増加は、新築分譲用地の取得、中古マンション買取再販の仕入などによるもので、事業化に向けて今着実に手を打っているところです。

2026年3月期 連結業績予想(概要)

津戸:今期の連結業績予想と株主還元についてお伝えします。まず、2026年3月期の業績予想です。現時点において発表済みの連結業績予想から変更はありません。

利益の進捗率が若干遅れているように見えますが、下期に計上予定のマンション・戸建ての契約が順調に進んでいます。最終的には、おおむね計画どおりに推移していくものと予測しています。

住宅セグメント 契約戸数・売上計上戸数

津戸:住宅セグメントの契約戸数・売上計上戸数の状況です。

住宅事業については、お客さまに物件を引き渡した段階で売上計上されます。当中間期に計上した物件が193戸に対して、スライドの表の一番右側に示している、すでに契約済みでこれから引き渡す物件が386戸あります。

合わせるとほぼ前年並みの進捗を確保できているということで、通期に関してはある程度予定どおり推移すると考えています。

株主還元

津戸:配当についてです。当社は累進配当を導入しており、今期中間配当は予定どおり28円となります。また、中期経営計画の期間中は毎期7円の増配を継続し、2030年3月期は1株当たり100円を計画しています。

株主還元(株主優待制度)

津戸:昨年6月から株主優待制度を導入しています。年に2回、保有株式数と継続保有期間に応じて、緑の募金への寄付金付きの「おもいやりQUOカード」を贈呈しています。なお、継続保有期間の基準日は、毎年3月末と9月末になります。

この寄付金は、国内の森林整備や子どもたちへの森林環境教育、災害復旧支援などに活用されるため、当社の取り組みと親和性が高いということで採用しました。

木を知り、暮らしを支える。

津戸:最後に、企業ブランディングの一環で作成したキービジュアルをご紹介します。

「木を知り、暮らしを支える。」は、木に携わってきた人々の思いを知る当社グループが、笑顔あふれる暮らしを支えているというメッセージです。

また、森林と住まいの2つのシーンを木でつなげることで、建築資材と住宅の両輪で事業を展開する当社グループを表現しています。

当社グループの全体像や目指すべき姿をしっかりとお伝えすることで、企業価値の向上につなげていきます。引き続きご支援賜りますよう、よろしくお願いします。

質疑応答:新設住宅着工戸数減少への対策について

荒井沙織氏(以下、荒井):「新設住宅着工戸数が長期的に減少しています。特に持家が過去最低水準で推移するなど、市場が縮小傾向にありますが、どのように克服するのでしょうか?」というご質問です。

津戸:ご指摘のとおり、新設住宅着工戸数は減少していきます。先ほどご覧いただいたスライドのグラフのとおり、やはり人口減少が確実な未来となっている中では、やむを得ない状況だと考えています。

これに対する主な対策は2つあると思っています。まず1つ目は、我々はさまざまな建築資材を販売していますが、まだまだ納めきれていない商材があります。先ほど成長領域のところでお伝えしたサッシやエクステリアです。これらは我々の取り扱いが後発になりますので、納材の拡大が図れると考えています。

これらの事業、周辺領域を拡充することにより、着工戸数は減少しますが、1棟当たりの納材シェアを拡大していきたいと考えています。

もう1点の切り口としては、やはり新築住宅が減っていく中では、成長していく分野にどれだけ我々が携わることができるかが重要だと思っています。

津戸:先ほどお話ししたとおり、スライドに示したような成長領域があると考えています。まだまだ国産材は増えていきます。非住宅分野や住宅ストック数も増えていきます。いろいろな領域がまだまだ増えていきますので、キーワードは非住宅、国産材、住宅ストックだと考えています。

新築住宅は減りますが、このようなところでまだまだ拡大する分野を探して、我々の競争優位性を発揮していけば、まだまだ活躍できるフィールドが増えていくだろうと思っています。

したがって、しっかりと取り組みながら成長領域に打って出て、着実に実行していきたいと考えています。

質疑応答:木材価格や為替変動のリスク管理について

荒井:「木材価格や為替変動などの外部環境に対して、どのようなリスク管理を行っていますか?」というご質問です。

津戸:まず、為替変動についてご回答します。直接的に我々が対応していることは、輸入に関する契約に関して、一定割合に先物為替予約を活用することで、為替の急激な変動が経営成績に及ぼす影響の軽減に努めています。

一方で、為替のリスクヘッジを行ったとしても、どうしても為替変動の影響を受ける部分があります。海外から輸入しますので、例えばヨーロッパ・北欧から日本に持ってくると、順調にいって3ヶ月から4ヶ月かかります。

例えば、スエズ運河のところで紛争が起こったりすると、アフリカの喜望峰を回ったりして来ますので、場合によっては半年ほどかかってしまうことがあります。北米も1ヶ月から2ヶ月程度かかります。この期間があると、木材価格は相場によってけっこう変動します。

期間が長くなればなるほど、木材の相場の変動リスクは避けられません。これはやむを得ないことです。

このように、輸入材は発注してから届くまでの期間が長いです。一方で、国産材に関しては、期間はそれほど長くなく、発注すれば遠方の九州だとしても数日で届きます。したがって、発注から納入までのリードタイムの少ない国産材を活用することにより、木材の相場の変動幅を抑えていくことができると思っています。

質疑応答:国産材の供給安定性への対策について

荒井:「国産材の活用について、供給安定性の課題をどのように捉えていますか?」というご質問です。

津戸:約4年前にウッドショックがありました。当時は、我々も確かに輸入材の数量が少なくなりました。国産材の仕入でカバーしたとお伝えしましたが、我々には全国に約600社の製材所と呼ばれる木材の仕入先のネットワークがあり、創業以来75年、長きに渡ってのお付き合いがあります。

これらの仕入先とのパートナーシップをより強固にし、我々が定期定量で安定的に調達することに加え、ストック機能としての木材市場もありますので、このようなインフラも活用しながら供給安定性をしっかりと担保していきます。

万が一、ウッドショックのようなことが起こっても、国産材の調達でしっかりと需要に応えていきたいと思っています。

質疑応答:国産材の認証制度対応について

荒井:「国産材の活用について、認証制度対応の課題をどのように捉えていますか?」というご質問です。

津戸:ナイスグループとしては、木材調達の基本方針を定めており、法令・法規を遵守して、合法かつ信頼できる木材の調達に努めています。違法伐採を行ったことが明らかな木材は、取り扱わないようにしています。

また、森林認証材については、我々はいろいろな拠点がありますが、各拠点でCoC認証を取得しており、認証材の供給体制を整えています。

先ほどお話しした国立競技場の軒庇も、47都道府県のすべての認証材を集めており、実績もあります。また、合法性が確認された木材を取り扱うためのクリーンウッド法の事業者登録も行っています。きちんとした認証材の流通のため、しっかりと責任を果たしていきたいと考えています。

質疑応答:他社との違いや競争優位性について

荒井:「他社との違いや競争優位性をどのように発揮していく方針ですか?」というご質問です。競合はいるのかというところも併せて教えてください。

津戸:いろいろご質問いただく中で、「競合はどこなの?」というご質問をいただきます。お伝えしたとおり、我々は建築資材の流通でいろいろなアイテムを扱っています。そして、BtoCの住宅事業も、マンション、戸建て、仲介などいろいろな事業を行っていますので、1つ1つの事業に対して競合があります。

他社に類を見ない多角的な事業ポートフォリオこそが当社の強みです。事業ごとに競合は存在しても、すべての事業領域を一社でカバーしている競合他社はなかなか見当たりません。このユニークな立ち位置が、当社独自の価値を創出していると考えています。

このユニークさをどのように発揮できるかということですが、例えば我々はBtoCの住宅事業を展開しています。ここでは常に施主さまと触れ合っていますので、最近の施主さまの住宅購入におけるトレンド、購買層の方々の収入、求められる家の総額などをいち早く察知することができます。

住宅事業で得た知見を、資材流通事業の取引先である工務店、ビルダーにフィードバックします。

あるいは、「現在流行っている住宅づくりを行うには、このような材料を使うといいですよ」とご提案することもできるかと思っています。

さらに、住宅事業は新しい事業でどんどんチャレンジしており、現在はマンションの中古買取再販事業をスタートしています。こちらは、まだまだ展開できていないエリアの方々がいらっしゃいます。

例えば、地方中核都市の建築資材のお客さまも「マンションの買取再販をやりたいが、知見がない」といった場合に、我々の住宅事業をご覧いただいたり、お越しいただいたりして、建築現場でのポイントをレクチャーできます。

また、販売にあたっての注意点などを情報共有しながら、みなさまの住宅資材流通事業の拡大のご提案もできているかと思っています。

住宅資材流通事業と不動産住宅事業のいろいろな良さを掛け合わせることにより、新たなビジネスの創出にも取り組んでいきたいと思っています。

また、今は自然素材を使った温かみのある住宅が求められる傾向にあります。木材をしっかりと住宅会社にご提案できる会社も今はなかなかないと思っています。

そのような意味では、今ブームでもありますし、みなさまに活用が求められている木材をご提案できる会社であることも大きな競争優位性だと考えていますので、今後もしっかりとご提案していきます。

質疑応答:PBR・PERの向上施策について

荒井:「PBRが大きく1倍を割って、PERも同業界内で下位に位置している中、今後どのような対策を考えていますか? 買収のリスクもあるのではないかと心配です。今後の方向性について教えてください」というご質問です。

津戸:ご指摘いただいたとおり、現状の株価が非常に低位で推移しており、もちろんこのまま放置してはいけないと深く認識しています。マーケットのみなさまのご期待に十分応えられていないところに関して、真摯に受け止めて改善を図っていきたいと考えています。

先ほど「当社の事業はユニークだ」とお話ししましたが、ユニークさがある反面、わかりづらい点もあるかと思っています。今まで、当社の事業をしっかりとご説明する場が不足していたと反省しているところです。

いろいろな事業があることによってわかりにくくなる、コングロマリット・ディスカウントが発生しているとも考えられますので、IR活動の強化を図りながら、市場との対話をしっかりと深めていきます。

津戸:また、我々が評価いただけなかった点として、営業利益も要因の1つだと考えています。スライドに示した10年間の営業利益の推移をご覧ください。これは我々の反省点でもありますが、かつては3月の期末に新築マンションや戸建ての引き渡しが集中しており、中間期でなかなか営業利益が出ていませんでした。

第4四半期で大きく利益が上がり、通期で見ると利益が出ているということが多く、なかなかみなさまに収益の期待感を感じていただけなかったり、不安に思うことが多かったりしたかと考えています。

今後は引き渡し物件の平準化等を行いながら、安定的に収益が上がる体制を確保していきたいと思っています。

いずれにしても、PBRを上げていくためには収益性を高めていかなければならないと考えています。現在打ち立てている中期経営計画を確実に実行し、収益性の拡大を目指していきます。また、資本コストを考えた経営を行い、さらなる企業価値の向上をしっかりと図っていきます。

津戸:最後に、株主還元方針を先ほどご説明しました。こちらも株価に影響があると考えています。現在方針として累進配当を打ち出しており、中期経営計画の期間中は毎期7円増配を目指しています。

今期が72円の予想ですので、7円ずつ増配し、2030年には100円を計画しています。これを確実に実行していきたい考えです。

荒井:とても楽しみです。

質疑応答:新築マンション価格の高騰について

荒井:「新築マンション価格の高騰について、どのように考えていますか?」というご質問です。

津戸:報道でもいろいろ出ていますが、新築マンションの価格が高騰しています。お求めになりたい方すべてになかなかお届けできていないことは、事業者としても忸怩たる思いがあります。

価格高騰の背景には、土地価格の上昇に加え、資材価格の高騰があります。特に、建築コストに占める人件費・労務費の上昇幅が最も大きい状況です。

働き方改革の中で、建設作業労働者の方々もしっかりと週休2日で4週8閉所するという国の指導もあり、建築期間が長くなっていることも労務費の高騰につながっているかと思っています。

このままデフレから脱却してインフレ傾向になり、賃金が徐々に好循環していく中において、さらに人口減少によって働く方々が少なくなり増えていかないことを考えると、建築コストがこれから下がっていく見込みは低いと考えています。したがって、マンションの価格高騰はしばらく続くと思っています。

価格が高騰するなか、その価格で購入できる需要層はそうそういらっしゃいません。そのような意味では、少ない供給に対してお求めになる方のバランスは取れている状況と思っています。

我々の新築マンションの供給は多くはありませんが、今需給バランスが良い均衡になっていますので、売れ行きは順調に推移していると考えています。

一方で、高過ぎる新築に対して、昔の建築コストで建った中古物件は、まだ割安で流通することができると思っています。

中古物件の住まい心地をさらに良くするリノベーションをしっかりと施しながら、お買い求めいただける価格帯でなんとか提供できるように取り組んでいきます。さらに住み心地を良くするための木質化も施して、今後しっかりと展開していきたい考えです。

荒井:スライドに写真が掲載されていますが、素敵ですよね。

津戸:当社の設計スタッフが「どこに木質化を使うとよいか」をいろいろと考えており、さまざまなプランがあります。

一方で、マンションは内装に不燃材料を使わなくてはいけなかったり、防火性能の制限もあったりします。「適材適所」とよく言いますが、言葉どおり「適材」を「適所」に使っていきます。今ご覧いただいている部屋も、全部を木で貼ってしまうと、それはそれで落ち着かない空間になってしまいます。

荒井:意外と圧迫感が出てしまうのかと思います。

津戸:そのとおりです。

荒井:写真を拝見して、あらためて素敵だと思いました。

津戸:実は「木をどれくらい使うと一番落ち着くか」も、慶應大学の先生と一緒に実験を行って、使用割合を求めたりしています。そのような実験データも使いながら、お客さまにより快適にお過ごしいただけて、購入できる価格で提供できる事業をしっかりと展開していきたいと思います。

荒井:やはり木質化が進んだリノベーションは、パンフレットでも引き合いが多かったり、リアクションも良かったりするのでしょうか? 

津戸:我々はBtoCの事業も行っていますが、BtoBで不動産会社にもご提供しています。不動産会社からも「ナイスの物件は中古が良いよね」「販売しやすいから、ぜひうちに紹介してほしい」というお声もいただいています。

そのような意味では、業界のみなさまからもご評価いただいており、マーケットのみなさまにも住み心地をご評価いただいているということで、設計時にさらにいろいろな提案が出るように今、発破をかけています。

入社1年目、2年目の設計陣もけっこう良いプランを提案してくれており、彼ら・彼女たちが企画したものも、実際に物件として出してご好評をいただいています。若い力、若いアイデアもどんどん取り入れていきたいと思っています。

質疑応答:従業員の働きがい向上のための施策について

荒井:「従業員の方々の働きがいを高める取り組みについて教えてください」というご質問です。

津戸:従業員のやる気やモチベーションは非常に大事だと考えており、彼らの発想・アイデアは本当におもしろいものが多くあると思っています。

私が社長に就任したのは、約1年半前の昨年4月です。私は、「社長の能力の限界を会社の成長の限界にしたくない」と考えています。そのため、いろいろなアイデアを事業に取り入れたいと思っていますし、若い発想を新たな事業展開に結び付けたいと思っています。

彼らから声が上がるためにどうすればよいかを考えて、最初に行ったのが、「さん」付けで呼ぶことです。少しでも話しかけやすい状況にしたいと思い、「さん」付け活動を行って、すぐに定着しました。

その後、社員の声をどんどん引き出そうとしたのですが、待っていてもなかなか引き出せませんので、やはり取りに行こうと考えました。取締役メンバーが手分けして、すべての事業所で「オープンコミュニケーションミーティング」を開催し、ダイレクトコミュニケーションの場を設けました。全123回実施し、ここで出てきた社員の意見・提案は1,100件を超えました。

荒井:どのような声がありますか? 

津戸:「人事制度を改定してほしい」「こんな新しい事業を行ったらどうか」から始まり、役員に対して物申すなど、みんなけっこう素直に言ってくれます。さっそくいくつかは人事制度の改定や新規事業につなげていきました。

まだまだ実現しきれていないものもたくさんありますので、事業化に向けてこれからも活用していきたいと思っています。

また、やはり新たな次世代の経営層を作らなければいけないと思っています。次世代の経営陣に向けた教育・研修、社員のキャリア自律を促すための仕組み作りなど、今いろいろなことに取り組みながら、社員のマインドを高めているところです。

津戸氏からのご挨拶

津戸:当社グループは、住まいと暮らしを通じてすべての人々のあふれる笑顔を作り出していきたいと考えています。

私が社長に就任して約1年半になります。このビジョンを実現するとともに、企業価値向上に向けて今後しっかりと取り組んでいきたいと思います。

引き続きご支援賜りますよう、よろしくお願いします。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日登壇者に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:仕掛販売用不動産124億円は過去と比べてどれくらいの水準なのでしょうか?

回答:当社グループの販売用不動産の分類について簡単にご説明します。当社グループでは、建物が完成しているものを「完成販売用不動産」、建築着工済みで未完成のものを「仕掛販売用不動産」、そして未着工の土地を「開発用不動産」として管理しています。

過去の水準との比較では、2000年以降で販売用不動産総額のピーク時は約630億円でした。その際、仕掛販売用不動産は約270億円でしたので、全体の約4割を占めていました。

これに対し、現在の水準は販売用不動産全体で約300億円、そのうち仕掛販売用不動産は124億円となっています。全体に占める仕掛販売用不動産の構成比は約4割と、比率としては当時と同程度で推移しています。

この水準は、「中期経営計画 Road to 2030」の計画どおり順調に事業が進捗している状況であると認識しています。

<質問2>

質問:仕入れ、販売用不動産が順調だと思います。仕入れ競争になっているところもあると思いますが、この辺りの詳細を教えてください。

回答:ご指摘のとおり、用地取得環境においては、大手デベロッパーを含めた競争が激化しており、土地価格も上昇傾向にあります。

そのような環境下において、当社グループが安定的に仕入れできている最大の要因は、「創業の地である横浜・神奈川エリアをはじめ、特定の重点エリアに絞り込んだ仕入れ戦略」を徹底している点にあります。

こうした長い歴史の中で培ってきた、地域の地主さまや金融機関さま、そして土地の仲介を行う不動産会社さまとの間には、一朝一夕では築けない「厚い信頼関係」があります。この信頼関係があるからこそ、情報が一般の市場に出回って価格競争になる前に、「まずはナイスに」と、相対でのご相談や特命での案件持ち込みをいただいています。

競争が激しいからこそ、闇雲にエリアを広げるのではなく、こうした「地の利」があり、確実な情報網を持つエリアに経営資源を集中させることで、他社との競合を避け、適正な価格で良質な土地を仕入れることが可能となっています。

今後もこの地域密着のネットワークを活かし、重点エリアに特化した仕入れを行っていく所存です。

<質問3>

質問:戸建・マンション分譲・中古流通・リフォーム等を手掛けていますが、在庫リスク・販売スピード・価格下落リスクなどが内在していると思います。在庫回転率や平均販売期間、価格下振れリスクへの備えをどのように管理されていますか?

回答:住宅の事業における仕入れからお引き渡しまでの期間、いわゆる事業期間の観点でご説明します。

新築マンションについては、物件の規模等にもよりますが概ね3年程度、新築分譲戸建については概ね1年程度となっています。また、中古マンションの買取再販事業についてはさらに回転が速く、概ね6ヶ月程度、年間で約2回転するサイクルで事業を行っています。

「価格下振れリスク」についてのご指摘は、最も事業期間が長く、市場変動の影響を受けやすい新築マンション事業におけるリスクであると承知しています。当社では、土地の取得後、許認可が下り次第即時に販売を開始できる体制を整えており、販売期間を可能な限り短縮しています。加えて、免震構造の採用や共用部の木質化等、商品自体に強い競争力を持たせることで、早期完売を実現しています。

こうした取り組みの結果、現時点において新築マンションの「完成在庫」はゼロとなっており、在庫リスクは適切にコントロールできているものと考えています。

<質問4>

質問:建築資材流通事業と住宅・不動産事業という2本柱を持たれていますが、今後3年から5年で重点を置く事業(あるいは新規事業)はどちらですか? また、売上高は建材が大半を占める一方で営業利益は住宅セグメントが一番大きいですが、今後売上・営業利益比率をどのような方向で進めていく想定でしょうか?

回答:今後の事業ポートフォリオの方針についてお答えします。セグメント別の構成比については、これまで売上高は「建築資材事業が約7割、住宅事業が約3割」、営業利益に関しては、長らく建築資材事業がリードしていましたが、直近では住宅事業が回復し、建築資材事業を上回るまでになりました。

今後については、双方のコア事業の深化を行うとともに、周辺事業にも果敢にチャレンジし、「中期経営計画 Road to 2030」の成長ドライバーに沿って変化させていく方針です。

具体的には、建築資材事業においては「住宅用途から非住宅用途へ」、住宅事業においては「新築中心から既存住宅(ストックビジネス)へ」と、木材利用の拡大を図りながら、注力する領域をシフトさせることで、市場環境の変化に対応しながら収益性を高めていく計画です。

<質問5>

質問:大株主に銀行が並んでいます。銀行による政策保有株縮減の動きから売却依頼はないのでしょうか?

回答:ご指摘のとおり、昨今のコーポレートガバナンス・コードの改訂等を含め、上場会社を中心として政策保有株式縮減の流れがあることは認識しています。

具体的な売却依頼の有無については個別の事案となりますので回答を控えますが、大株主さまにおかれましてもそれぞれのご判断やお考えがあるかと存じます。当社グループとしては、大株主さまとは日頃より様々なかたちで適切なコミュニケーションを図っており、引き続き良好な関係を維持しながら対話を続けていく所存です。

<質問6>

質問:四季報に森林を多数保有と記載されていますが、森林を多数保有することにどのような優位性があるのか教えていただきたいです。

回答:社有林における競争優位性と環境貢献についてご説明します。当社グループは、森林を持つことで、森林の保全・育成から、伐採等の素材生産、製材、流通、加工、そして最終的な建築物への利用に至るまで、一貫して携わることができています。さらに、使った分を植林・育林で森に還すという、国産材利用における「循環型サプライチェーン」を自社グループ内で構築できている点が強みです。

具体的な事例としては、徳島県において社有林から素材を生産し、伐採後の跡地に再造林を行うなど、サプライチェーンの最上流(川上)での取り組みを強化しています。この実績が評価され、徳島県、香川県、および大倉工業株式会社さまとの4者で「徳島県及び香川県産木材の利用促進に関する建築物木材利用促進協定」を締結しました。複数の都道府県にまたがる協定締結は全国初の事例であり、こうした自治体連携においても社有林の存在が大きな信頼につながっています。

また、環境面においても、全国に保有する2,428ヘクタールの社有林を通じて、年間約1万1,000トンの二酸化炭素を吸収しています。これにより、社有林による吸収量が自社の排出量を上回る「カーボンマイナス」の状態を2期連続で維持しており、脱炭素社会における企業価値向上にも大きく寄与しています。

<質問7>

質問:中期経営計画の進捗について、重点を置いている事業領域と成長ドライバーを教えてください。

回答:「中期経営計画 Road to 2030」における成長戦略についてお答えします。国内の新設住宅着工戸数が減少傾向にある厳しい市場環境下において、今後も成長が見込める事業領域に経営資源を集中しています。

具体的には、「国産木材の供給」「非住宅木造建築」「中古マンション買取再販」「賃貸管理」「マンション総合管理」「エネルギー関連商品の供給」、そして「物流」の7つを成長ドライバーとして定めています。

これら7つの重点分野を推進することで、既存事業の落ち込みをカバーするだけでなく、中期経営計画の期間中に、これらの分野だけで売上高550億円、営業利益30億円を創出することを目指し、着実に施策を実行していきます。

<質問8>

質問:4号特例の見直しは御社にどのような影響がありますか?

回答:4号特例の見直しは、これまで審査が省略されていた木造2階建てなどの小規模建築物に対し、構造や省エネ関連の厳格な審査が義務化されることで、住宅の安全性と品質が向上する一方、確認申請の長期化や、工期の遅れが生じています。

当社グループにおいても、今年度の上期は、新築一戸建て住宅において影響を受けましたが、今後は、徐々に平準化していくと考えています。

また、当社のパワービルド工法では、構造計算書発行期間の短縮化を図ることもでき、スムーズな流れで確認申請手続きを行うことが可能となります。こうした環境変化を事業機会と捉え、積極的な提案を行っていきます。

<質問9>

質問:中古マンションの買取再販や賃貸管理が順調に伸びていますが、「収益性が特に高い」「改善余地が大きい」と考える事業領域を教えてください。

回答:収益性が高いと考えている事業領域は、中期経営計画「Road to 2030」で挙げた7つの成長ドライバーとなります。

7つの成長ドライバーは、それぞれが有機的シナジーを発揮することで、今後の市場拡大を見据えた飛躍的な成長が見込める事業領域だと考えています。

また、建築資材セグメントにおける一棟あたりの納材シェアは、まだまだ改善の余地があると考えています。これまで取り扱っていなかったサッシ・エクステリアをはじめとして、当社グループとして周辺事業領域となる取扱商品の拡充と、さらなる提案営業を行っていきます。

<質問10>

質問:建築資材事業では新規取引先が増えているとのことですが、新規先が伸びた背景と、今後強化したい販路についてうかがいたいです。

回答:新規取引先が伸びた背景としては、当社グループの木材調達力や、物流機能、施工機能を含めた総合提案を差別化要素として、積極的な開拓営業を行ったことが挙げられます。

今後は、新たにグループに加わったセレックスの機能の活用や、周辺事業領域への展開等を通じて、販路拡大を図りたいと考えています。

<質問11>

質問:買収防衛策を廃止する考えはありませんか?

回答:当社は、株式を上場している以上、買収提案に応じるか否かは最終的には株主のみなさまのご判断に委ねるべきと考えています。

しかしながら、当社の企業価値や株主のみなさまの利益を明らかに損なうような提案や、強圧的な買収行為に対しては、取締役会として必要かつ適切な対抗措置を講じ、みなさまの利益を守り抜く方針です。そのため、現時点において買収防衛策の廃止は検討していません。

<質問12>

質問:住宅事業では免震マンション供給や国産材100パーセントの一戸建てなど特徴的な取り組みがありますが、顧客から特に評価されている点や差別化ポイントを教えてください。

回答:住宅事業において、お客さまにご評価いただいている点をいくつかご紹介します。

1点目は木質化提案です。

新築マンション事業における共用部の木質化、中古マンション買取再販事業における内装の木質化は、「木の温かみがある」「自然を感じられる」「快適性が高い」「高級感がある」等と大変ご評価いただいています。また、一戸建て住宅における国産材100パーセントの家づくりもご評価いただいています。

2点目はモノづくりのプロセスです。

一般的なデベロッパーですと、企画部門が建物の仕様を固めてから営業担当者に情報が下りてくるケースが多いと聞いていますが、当社では、土地仕入れの検討段階から、最前線の営業担当者が会議に参加しています。

マンション・一戸建ともに、土地を購入する前の段階から営業担当者が議論に加わり、「この場所で、本当にお客さまが求めている住まいを提供できるのか」という視点で徹底的に意見交換を行います。現場の声をダイレクトに反映させるこの体制によって、顧客ニーズに合致した商品づくりを行っている点は、お客さまにご評価いただいています。

3点目は家づくりの理念です。

「住まいは命を守るもの」という考えのもと、新築マンションにおいては免震構造および、耐震強度1.25倍の強耐震構造を採用し、一戸建て住宅においては2倍超耐震を採用するなど、当社の家づくりそのものに対する理念に共感いただき、ご評価いただいています。

<質問13>

質問:物流DX・共同配送などを含む物流領域の強化が示されていますが、物流が利益成長に与えるインパクトと、今後の投資方針をうかがいたいです。

回答:物流事業は、当社グループの流通に関する業務はもちろん、3PL(サード パーティ ロジスティクス)事業の強化を図ることで、新たな建築資材の販路拡大を図ることが可能となるため、グループ内でのシナジーを発揮させながら、成長させていきたいと考えています。共同配送、ラストワンマイル物流の強化など、業界の垣根を超えた物流にチャレンジしていきます。

なお、成長ドライバー個々での利益成長に与えるインパクト、投資方針は現在公表していませんが、みなさまにお知らせすべき内容がありましたら、速やかに公表します。

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