明豊エンタープライズ、前年比で大幅な増収増益を達成 今期は「エルファーロ」「ミハス」37棟前後の引渡しを予定
2025年7月期決算及び中期経営計画説明
山田幸美氏(以下、山田):キャスターの山田幸美です。今回お話をうかがうのは、株式会社明豊エンタープライズ代表取締役会長兼社長の矢吹満さんです。
まずは、明豊エンタープライズの歩みを簡単にご紹介します。1968年に現在の株式会社明豊エンタープライズが創業され、2004年に東証JASDAQ市場へ上場しました。
2014年に賃貸アパートメントブランド第1号物件「MIJAS(ミハス)池上」を竣工し、2019年には、新築1棟投資用賃貸住宅シリーズ第1号物件「EL FARO(エルファーロ)練馬」を竣工しました。
2022年には、東証の市場区分再編に伴い、東証スタンダード市場へ上場しました。また、建設会社である株式会社明豊エンジニアリングを設立しました。そして2024年には、台湾に明豊現地法人を設立しました。
それでは、御社の経営理念について教えてください。
矢吹満氏(以下、矢吹):「企業を通じてよりよい社会を建設しよう」という経営理念のもと、一生涯のお付き合いを大切にし、みなさまとの信頼を築き、未来を切り開くパートナーであり続けたいと考えています。
山田:具体的な事業内容についてもご紹介ください。
事業戦略 商品の規格化
矢吹:当社は投資用賃貸不動産の開発・販売を中核とする総合不動産デベロッパーです。東京23区の特に入居者の人気が高い城南・城西エリアを中心に、これまでに200棟を超える新築1棟投資用賃貸住宅を供給してきました。
主力事業は、新築1棟投資用賃貸住宅シリーズ「EL FARO(エルファーロ)」と「MIJAS(ミハス)」の開発です。いずれもスペインの地中海をコンセプトに、魅力的なデザインと最新トレンドを押さえた上で、上質な設備・仕様を採用し、2025年7月時点で平均稼働率は97パーセントを維持しています。
これは、城南・城西地区の投資住宅が将来にわたり高稼働・高収益を維持することにもつながり、資産防衛や相続税対策にも有効な安定的投資用商品として、多くの投資家から支持されています。お客さまの中には、数物件を購入したりリピートしたりする方も見られます。
明豊エンタープライズグループ
矢吹:グループ会社として、不動産を開発する明豊エンタープライズ、その開発した不動産を賃貸管理する株式会社明豊プロパティーズ、さらにその物件の設計・建設を行う株式会社協栄組、加えて海外の不動産販売を主に手がける、台湾にある現地法人等があります。
井上哲男氏(以下、井上):コメンテーターの井上哲男です。スライドに記載のグループ組織図には、デベロッパー、賃貸管理、設計・建設を行うことが示されています。海外の現地法人についてうかがいます。台湾に設立された現地法人に関しては、海外の不動産を販売するのではなく、日本の物件を台湾の投資家へ販売するための現地法人と考えてよろしいでしょうか?
矢吹:そのとおりです。
山田:続いて「Performance Overview」として、明豊エンタープライズの業績についてうかがいます。まずは前年度、2025年7月期通期業績の振り返りからお願いします。
PLサマリー
矢吹:本来の通期計画と比較して、売上高は290億円に対し、102.7パーセントを達成しました。営業利益は当初の計画である26億円に対し、129.7パーセントの達成率です。経常利益は20億円に対し、134.1パーセントを達成しました。純利益は14億円に対し、135.2パーセントの達成率となっています。
井上:非常に好調な状況ですね。表の並べ方については、中央左側が2024年7月期、左端が2025年7月期、中央右側が前期比の増収増益の状況という解釈でよいでしょうか?
矢吹:おっしゃるとおりです。
井上:売上も利益も40パーセント程度増加したということですね。
矢吹:そのとおりです。
井上:1つ確認したいのですが、増収増益のパーセンテージについても同じような感じでしょうか?
矢吹:おっしゃるとおりです。
井上:期初の通期予想と比較して、売上高はほぼ予想どおりですが、利益が大きく伸びています。この要因は何でしょうか?
矢吹:それはまさに、生産性が向上して筋肉質な体質になったことが要因です。売上高よりもその内容、経常利益や営業利益が非常に上回る結果となりました。
井上:その結果、増収増益のパーセンテージがほぼ同じレベルになったということですね。
矢吹:そのとおりです。当社は非常に筋肉質な収益体質の会社になっています。
山田:それでは、売上高の推移についてご説明いただけますか?
売上高推移
矢吹:2022年に比べて、この頃は通期で111億6,000万円でした。しかし、1年後には通期で152億4,700万円、さらに2年後の2024年には205億6,200万円となり、2025年7月期には297億9,600万円と右肩上がりで成長し、44.9パーセント増を達成しています。
井上:2023年7月期ですが、2023年5月には新型コロナウイルスが5類に移行しました。それ以降はやはり伸びていますね。これは、工事をするにしても、またデベロッパーとして外を回るにしても、お客さまの動きが変わったからでしょうか?
矢吹:そうですね。コロナ禍においては、ホテルや商業施設、オフィスといった施設では、人々が自宅で「Zoom」を利用する、会社に出勤しないといった動きが見られ、コロナ禍の影響を受けていました。
一方で、当社が手がけているのはレジデンス、すなわち住居ですので、コロナ禍においても東京から引っ越すような動きはなく、稼働率は非常に高いままでした。そのため、お客さまの動きや当社が建設する物件に関して、コロナ禍の影響はそれほど大きくありませんでした。
山田:さらに詳しく、セグメント別に解説をいただけますか?
セグメント別 決算概要
矢吹:グループ全体の構成としては、81.8パーセントが不動産の開発事業です。これは、土地を仕入れ、建設し、販売する事業で、売上の中でも最も大きな割合を占めています。
また、建設については、当社が自社で開発した土地の建設・施工を100パーセント請け負っているわけではありません。30パーセントから35パーセント程度は自社で建設していますが、それ以外の部分は、外部の建設も取り入れています。
それによって競争力を高め、すべてを自社で行うことによる競争の排除を避けるため、外部からの競争も積極的に受け入れています。このようなかたちで建設部門の売上も生じています。
また、賃貸に関しては、サブリースや賃貸管理の売上も決して小さくないものの、母数が約300億円と大きいため、割合としては低くなっています。
山田:2026年7月期の通期業績予想についてはいかがでしょうか?
2026年7月期 業績予想
矢吹:2025年の実績は297億9,600万円でしたが、2026年は376億円のプラス26.2パーセントを計画しています。営業利益については、2025年の33億7,300万円に対し、2026年は38億円のプラス12.6パーセントとしています。
経常利益については、2025年の26億8,300万円に対し、2026年は30億円のプラス11.8パーセントを見込んでいます。親会社株主に帰属する当期純利益についても、2025年の18億9,300万円に対し、2026年は20億円のプラス5.6パーセントを目標にしています。
井上:今期の業績予想ですが、「EL FARO(エルファーロ)」「MIJAS(ミハス)」の37棟前後の引渡しを前提としており、8月末時点で22棟の契約が完了しているとのニュースがありました。この時点で半分以上の契約が終わっている状況で、非常に順調なスタートを切ったと感じます。
個人的には、売上高は問題なく利益の伸びがやや控えめに見える印象です。しかし、現在の状況を見ると、これからさらに契約数を上積みし、計画に近づけ、あるいはそれを超えていくことを目指していると理解してよろしいでしょうか?
矢吹:そのとおりです。
山田:株主還元について、どのような方針をお持ちでしょうか?
Appendix 株主還元方針
矢吹:当社は今年8月に配当方針を変更し、累進配当の導入を宣言しました。以前から累進配当の方針を維持してきましたが、これをより明確にするために発表しました。
また、主に個人投資家の方々に焦点を当てた結果、株主還元策として株主優待制度も追加しました。還元利回りを意識しながら、当社の認知度を向上させ、個人投資家の方々に当社のファンになっていただきたいと考えています。
株主優待の内容は、1,000株以上を保有されている株主さまを対象に、10月末日と4月末日の年2回を基準日とし、各8,000円分のデジタルギフトを進呈するものです。
井上:累進配当の方針を今年8月26日に明確にされたということですが、御社の累進配当とはどのようなことでしょうか?
矢吹:もともと累進配当を維持してきたのですが、配当の維持または増配を毎年行うことを、あらためて宣言しました。
井上:「減配はしない」という決意を基本方針として出されたのですね。これまでも5円、8円、9円、11円、12円、13円と累進配当を維持してこられましたが、今回ここで宣言したことで「もう戻れないぞ」ということですね。
先ほど株主優待制度についてもご説明がありましたが、保有株式1,000株ということは、10単元以上をお持ちの株主が対象になるのでしょうか?
矢吹:おっしゃるとおりです。
事業戦略 エリアへのこだわり
山田:ここからは「Focus」として、明豊エンタープライズの強みについてお聞きします。御社事業の強みについて教えてください。
矢吹:まず、東京23区でも特に立地の良い城西・城南地区を中心に物件を提供しています。地勢を含めて高い稼働率と収益の実現が見込める不動産投資戦略をプランニングしています。
特に、当社が投資家向けに販売する新築の鉄筋コンクリート造マンションと鉄骨造アパートメントは、利回りが5パーセント前後と同業他社よりも若干高く、日本で特に人気の高い東京の城西・城南地区で駅から10分以内という好立地のため、売却時にキャピタルゲインも期待できる点が評価されています。
東京23区内の城西・城南エリアに特化したロケーションでの開発を通じ、不動産投資家に対し、高いリターンと高稼働率を実現しつつ、将来的な陳腐化や収益力低下のリスクが小さい投資用不動産を提供する事業モデルです。
販売商品は、地上3階建てから5階建ての建物で、3億円から10億円規模の投資物件となっています。投資回収期間は18ヶ月から19ヶ月となっており、この開発を高回転させることで、同じ資金量でより多くの商品を供給することを目指しています。
当社は、大手デベロッパーのような、回収期間が長い大型物件(24ヶ月から36ヶ月)とは距離を置いています。こうした点が当社の強みだと思います。
Appendix ビジネスモデル -垂直統合戦略-
矢吹:当社では、土地の取得から企画・設計、建築、販売、管理、修繕までを自社内で一貫して行い、高品質と高収益の両立を実現しています。仕入れた土地に対して企画・設計を行い、自社施工によって外部に流出する利益を取り込んでいます。また、仲介会社を経由しない直接取引により、仲介手数料の削減を図っています。
さらには、長期契約による賃貸管理料などの安定収益を確保しており、そこから派生する修繕工事などにも取り組んでいます。
これらにより、非常に高い利益率を垂直統合戦略で実現しています。
Appendix リスク要因と対応策
山田:現状の経営課題はどのような点になるでしょうか?
矢吹:まず1つ目として、外部環境の変化による影響があります。特に不動産の高額商品であることから、景気動向や金利、地価、建築費などの変動により、収益性が左右される可能性があります。
対応策としては、短期間で資金を回収できるビジネスモデルを採用することで、環境変化への柔軟な対応力を確保しています。
2つ目は、土地取得の進捗リスクです。競合の増加や人員負担により、予定どおりに土地取得が進まず、成長に影響が出る可能性があります。対応策としては、重点エリアにおける情報収集力の強化と、社内業務の効率化によって取得スピードの維持を図っています。
3つ目は、業績の年度間変動があることです。物件販売のタイミングによっては売上計上が年度をまたぎ、一時的な業績変動が生じる可能性があります。これについては、単年度での変動はあるものの、販売物件は翌期以降に反映されるため、中期的な成長には大きな影響はありません。
事業戦略 基本戦略
山田:ここからは「Next Actions」として、明豊エンタープライズの成長戦略を中心にうかがいます。今後の事業展望についてどのようにお考えでしょうか?
矢吹:まず、これまでは垂直統合戦略としてご説明しましたが、垂直統合戦略からさらに一歩深化し、垂直統合・水平展開戦略へと舵を切りました。
垂直統合モデルは、土地の取得から企画・設計、建築、販売、管理、修繕までを自社内で一貫して行い、高品質と高収益を両立する仕組みです。さらに、水平展開を取り入れることで、確立した事業モデルを他地域や他分野へ横展開し、成長機会を拡大していきます。
垂直統合で築いた強みを水平展開で複数市場に適用し、収益の安定化と企業価値の最大化を目指します。
当社は9月11日に、今期からの3ヶ年中期経営計画を発表しました。とりわけ、円安メリットを享受可能な海外投資家への販売拡大など、水平展開を活用することで、収益の安定化と企業価値の最大化を図ります。
ビジョン 計画数値
山田:数字の部分について、達成目標を教えてください。
矢吹:2020年の構造改革から8年間で、営業利益を10倍にする計画です。60周年を、新たな成長ステージの起点としたいと考えています。中期計画の3年後にあたる2028年(60期)には、売上高を450億円とし、営業利益は2020年(52期)の実績である5億円から52億円へと10倍にする計画です。
事業戦略 新商品
山田:成長スピードを緩めずに業績をさらに拡大していくとのことですが、具体的な戦略や施策について教えてください。
矢吹:商品拡充の一環として、新ブランド「LOS ARCOS(ロスアルコス)」を展開します。海外販路を通じて顧客の多様化に対応し、超富裕層や機関投資家向けに資産価値を持続的に高める新たな選択肢を提供します。
「LOS ARCOS(ロスアルコス)」に関しては、構造はRC造の4階建て以上で共同住宅となっています。立地は東京都23区内の最寄り駅から徒歩10分以内です。価格は10億円から15億円で、設備にはエレベーターやバルコニーが完備されています。
井上:これまでの賃貸マンションである「EL FARO(エルファーロ)」との違いは、どのような点でしょうか?
矢吹:「EL FARO(エルファーロ)」に関しては、基本的に4階建てまでの物件で、エレベーターが設置されていません。
エレベーターがない分、その空間をより広い部屋として設計することが可能です。また、エレベーターには年間の維持管理コストがかかりますが、これが不要になることでコストを削減でき、利回りの向上につながります。
しかし、4階以上となると、エレベーターがない場合は5階や6階に上がることが非常に負担になるため、「LOS ARCOS(ロスアルコス)」ではエレベーターを設置し、その代わりに上層階の階数を高くした点が「EL FARO(エルファーロ)」との違いです。
事業戦略 不動産分譲事業
山田:そして、先ほどのお話にもありましたように、投資家層も広げていくということですね。
矢吹:これまで築いた首都圏での実績を基盤に、国内外の幅広い投資家層とのネットワークを拡大し、多様な販路と資金調達の機会を広げていきます。
グローバル営業の推進についてですが、国内にとどまらず、海外の投資家や富裕層を取り込むことで販売ルートを広げています。具体的には、台湾に明豊現地法人を設立し、台湾在住の富裕層を対象に販路の海外拡大や資金力の強化を進めています。
また、海外機関投資家を開拓するにあたり、大口投資家と連携して長期安定資金を確保し、その資金をもとに持続的な成長を図っています。
さらに、フィービジネスの導入においては、プロジェクト管理や販売サポートを通じて役務収入を得ることで自己資金を使わずに利益につなげています。この役務収益により、安定的な成長が期待されています。
特に海外投資家に関しては、金額が小さいとファンドや機関投資家は購入しません。彼らは最低でも10億円以上の金額がないと購入しないため、「LOS ARCOS(ロスアルコス)」については10億円以上という条件を満たしており、このような海外機関投資家の開拓を進めていきたいと考えています。
井上:台湾に現地法人を設立されましたが、ファンドとしては、香港やシンガポールにも不動産に関するファンドが多数存在します。そのような地域も視野に入れているのでしょうか?
矢吹:おっしゃるとおりです。実際には、台湾に現地法人を設立しましたが、販売の営業活動については、香港や上海、深圳、シンガポール、バンコクまで展開しています。そのため、海外の現地法人の社員は英語や北京語を含む多言語に対応できる優秀な人材が揃っています。台湾はあくまでも現地法人の拠点であり、活動範囲はアジア全域に広がっています。
矢吹氏からのご挨拶
矢吹:当社の経営理念に立ち戻ると、社会貢献に努め、誠実に事業を展開し、お客さまとの関係を継続させる企業であることを理解していただきたいと思います。その上で、将来にわたってしっかりと成長できる企業であり続けることを信じています。当社は、高成長ながらもボラティリティの激しい企業ではなく、株主を裏切ることなく、コツコツと成長を重ね、安定的に伸びていく企業を目指しています。
ビジネスモデルの特性上、事業がある程度長期化するため、中長期的な視点で業績や株価形成をご覧いただければ幸いです。
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