【QAあり】ククレブ・アドバイザーズ、中期経営計画を発表 28年8月期に売上高120億円・営業利益32億円を掲げる
2025年8月期 決算サマリー
宮寺之裕氏(以下、宮寺):みなさまこんにちは。ククレブ・アドバイザーズ株式会社代表取締役の宮寺です。本日はお忙しい中、当社の決算と中期経営計画の説明会にお集まりいただき、ありがとうございます。
まずは2025年8月期の決算サマリーです。今回は初めての通期決算発表となります。売上高は25億5,500万円、営業利益は6億1,200万円、当期純利益は4億4,500万円での着地を見込んでいます。
第3四半期では2回目の上方修正を行いましたが、その際に予定していた売上の中で、仲介報酬が8,000万円程度の案件が期ずれとなりました。これがなければ修正計画を上回る着地となっていたと考えています。基本的にはマーケットが好調な中で、当社は順調に経営成績を達成できたと理解しています。
配当については、先般申し上げたとおり、上場記念配当2円を加えた1株当たり22円を実施する予定です。
ビジネスについても基本的には順調に進んでいます。
そのような状況を踏まえ、来期、2026年8月期(第8期)の業績予想として売上高47億円、営業利益11億円、当期純利益7億円を見込んでいます。配当については、1株当たり27円を予定しています。
本日最も重要なポイントかと思いますが、中期経営計画を策定しています。当社としては、不動産テックをさらに磨き上げ、不動産テックを起点としたCREソリューション事業を強化していく方針です。特に、当社の高い「質」および「成長性」を通じてビジネス展開を加速していきます。
今回、「CREプラットフォーマー」という言葉を掲げていますが、「CRE戦略といえばククレブ・アドバイザーズ」という地位を確立していくための3年間と位置づけ、中期経営計画を策定しました。
この中期経営計画では、最終期の2028年8月期に売上高120億円、営業利益32億円、当期純利益20億8,000万円を目指す計画を公表しました。詳細については後ほどご説明します。
2025年8月期 累計実績 エグゼクティブ・サマリー
エグゼクティブ・サマリーです。案件の期ずれがあったものの、基本的には順調な期であったと理解しています。
また、当社のエンジンであるマッチングシステム「CCReB CREMa(ククレブクレマ)」のユーザー登録数も着実に増加している状況です。
2025年8月期(第7期)については、上場後、最初の第1四半期で1回目の業績予想修正、第3四半期で2回目の修正を行いました。その修正の背景には、CRE案件のパイプラインが非常に増加している状況があり、この中で着実に案件を獲得していった1年だったと考えています。
2025年8月期 累計実績(損益計算書)
2025年8月期(第7期)の損益計算書です。詳細はスライドをご参照ください。売上高は、各ビジネスが好調に推移したこともあり、約2倍に拡大しました。
この要因としては、CREソリューションビジネスの寄与が非常に大きいと考えられます。当社のビジネスは不動産テックを起点としており、この不動産テックビジネスについても、前期比15パーセント増と堅調に伸びています。特にサブスクリプションサービスやデータ販売により成果を上げられた1年となりました。
営業利益率については、2024年8月期(第6期)は33.2パーセントでしたが、今期の着地は24パーセントとなりました。これは、当初計画にはなかったものの、取り組む意義があると判断した投資案件が影響しています。その結果、24パーセントの着地となりましたが、不動産業界の水準を上回る水準は確保できていると考えています。引き続き、高付加価値のある業務に注力していきます。
ご参考:2025年8月期 累計実績(損益計算書、四半期毎)
2025年8月期(第7期)における、四半期ごとの損益計算書です。通期が終了したため、第1四半期から第4四半期にかけての推移を記載しています。ご参考までに第6期のデータも含めています。
特に第7期については、IPOに向けた計画の達成が求められた1年でした。そのため、上期に数字を集中させる予算編成となっており、通常よりも上期偏重の傾向が見られた期だったと考えています。
一方で、当社のビジネスは企業の決算事情や戦略に影響を受けることがあります。今回、四半期の推移をご覧いただきましたが、当社は幸い8月決算であり、多くの企業が3月決算である中で、期がずれてもこの1年で吸収できるような決算編成となっています。
引き続き、案件計上のタイミングによる変動はあるものの、このようなかたちで数字を積み上げていく予定です。
2025年8月期 実績(貸借対照表)
貸借対照表についてご説明します。8月にプレスリリースで発表したとおり、北海道北広島市の不動産を借入を活用して取得したことにより、第4四半期末で資産・負債ともに増加しています。
自己資本比率は55.2パーセントですが、第4四半期の借入が大きく影響しています。
販売用不動産は第6期末時点で7億1,500万円でしたが、すでにすべて売却が完了しています。したがって、第7期末の14億7,500万円は、新たなストックであるとご理解いただければと思います。こちらがまた当社の売上につながっていく物件です。
固定資産については、第6期末で2億7,800万円ありましたが、一部入れ替えを行い、さらに追加をしたことで第7期末には3億2,000万円となりました。
これは販売用不動産になる前の賃貸収入であり、足元の収入を確保しつつ、将来的には販売用不動産へ切り替える予定です。そのような意味で、合計で約18億円のストックがあるとご理解いただければと思います。
借入金については足元増加しているものの、基本的には自己資本比率は依然として高く、後ほどご説明する財務レバレッジを活用して、さらなる成長が可能であると考えています。
2026年8月期 業績予想
2026年8月期(第8期)の業績予想です。当社の業績トレンドとして、第1四半期から第4四半期の数字が顧客となる企業側の事情に大きく左右される傾向があります。
第8期の特徴として、第3四半期に大型案件の売却が予定されています。この点については後ほど詳しくお話しします。
また、3月決算の企業や、いわゆる3月を越え4月に案件を実施したいというお客さまの仲介案件などが、当社の第3四半期に重なることもあり、今回は第1四半期から第4四半期までを均等に分けた数値ではなく、第3四半期に重点的に膨らむ予想となっています。
営業利益については11億円を見込んでいますが、営業利益率に関しては、25パーセントから30パーセントを目指していきます。なお、現時点で予測可能な数字を基に算出すると23.4パーセントとなります。
ただし第8期においても、急な仲介案件の相談やコンサルティング案件が発生する可能性があるため、ポートフォリオを組み立てながらこの利益率を達成する戦略はこれまでと変わりません。
主なパイプライン(CREソリューションビジネス)①
足元の事業進捗として、パイプラインを掲載しています。個別の説明は割愛しますが、結論として、パイプラインが大幅に増加しています。これはIPOしたことによる知名度の向上や、企業側における資本効率向上を目的とした不動産売却案件の増加といったマーケット環境の影響で、当社の仕事が非常に増加しているためです。
今期以降のパイプラインについて、まず表の1番と2番については、先ほど申し上げた第7期からの期ずれの案件です。1番はすでに決済が完了し、9月に売上計上しています。2番についても10月末に決済予定であり、今期の業績予想に反映されています。
また3番は先般、適時開示を行いましたが、北海道札幌市で取得した物件で地主株式会社から取得しました。同社とは今年5月に業務提携を開始しましたが、相互に案件供給が順調に進んでおり、今回は同社から投資機会をいただきました。この物件は固定資産として計上しています。4番は神奈川県横浜市鶴見で取得したもので、こちらは今後売却を予定しています。
このように、第1四半期は引き続き順調な滑り出しとなっています。新規案件が入ってきているほか、既存で追いかけている物件も含め、第1四半期については予定どおり計画を進めていきたい考えです。
主なパイプライン(CREソリューションビジネス)②
こちらのスライドで重要なのは、13番のB/S活用投資です。北海道北広島市における危険物倉庫プロジェクトがあり、そちらに当社も参画する旨のリリースを出しています。このプロジェクトでは、開発SPCへの土地売却が大きな売上を形成する要因となっています。
その他の案件についても、ポートフォリオの売却案件や産業施設の売却が進んでいます。現在、オリジネーター側が不動産をまとめて売却していく流れが出ており、その中で当社には20億円以下の細かな案件のご相談が増加しています。これが当社のパイプラインの拡大につながっています。
主なパイプライン(CREソリューションビジネス)③
危険物倉庫のプロジェクトについてご説明します。先般、マスターリースの新規事業として発表したところ、その後、非常に多くの相談案件が寄せられるようになりました。
今後は投資案件を厳選して取り組む方針です。今回の北広島市の危険物倉庫を皮切りに、現在並行して2件、3件のプロジェクトに関するお話をいただいており、それらを着実に進めていきたいと考えています。
このように危険物倉庫のマスターリース事業に関しては、引き続きパイプラインが積み上がっている状況です。
重要KPIの進捗 ユーザー数の推移と潜在案件数の拡大
重要KPIである「CCReB CREMa」のマッチング状況についてお話しします。ユーザー数と情報登録数は順調に伸びています。サブスクリプション開始前ほどの急激な伸びではありませんが、当社が意図していたユーザー数の増加と物件登録、いわゆる「いけす」の拡大につながっていると考えています。
マッチングの内訳については、「CCReB CREMa」にある物件を当社のビジネスでどのように活用できるかを示しており、仲介やアドバイザリーといった分野が非常に増加しています。
こちらは当社が得意とする産業用不動産だけでなく、商業系や住宅系の案件も含め、ポートフォリオの数が増加していることから案件が非常に多様化しており、マッチングの内訳にも変化が見られます。
重要KPIとして引き続きこちらを注視しつつ、当社としては「いけす(CCReB CREMaの情報登録数)」を大きくする、すなわち案件の幅を広げていくことに最も注力していきたいと考えています。
新規事業の始動
本日リリースした新規事業の始動についてご説明します。従前から北海道北広島市で土地を取得したというお話をしていましたが、こちらにおいてHAZMAT(危険物)倉庫の開発に参画しています。
今回、当社がファンド向けに土地を取得していますが、いわゆるTMK(特定目的会社)を組成し、この開発TMK向けに最終的に土地を売却します。この事業は、危険物倉庫8棟で構成される賃貸型の危険物倉庫事業であり、当社だけでなく事業法人2社と共同で着手しているものです。
今後、開発主体となるTMKへの土地売却を2026年3月に予定しています。当社はこのTMKからプロジェクトマネジメント業務を受託し、竣工後にはHAZMAT倉庫のマスターリース事業を展開していく予定です。
リーシングのプレヒアリング等を始めていますが、北海道エリアにおいては、危険物倉庫の一部老朽化などにより供給が必要であることから、すでに引き合いをいただいています。こちらも順次進めており、このようなかたちでマスターリースを開始する予定です。また、竣工後のREITまたは私募ファンドへの売却についても、並行して話を進めています。
このように新規事業に力を入れていく方針のもと、第1号案件として本日こうした案件への取り組みを公表しました。
不動産テックシステムの付加価値向上
現在、不動産テックシステムの付加価値向上を進めています。当社はCREプラットフォーマーとして、このシステムのアップグレードを推進しています。具体的には、既存のサブスクリプションサービス「CCReB AI(ククレブエーアイ)」において、AIを活用し売却や取得のロジックをさらに磨くため、大学の研究メンバーと共同研究を開始しました。
また、昨今の生成AIの進展を受けて「CCReB AI」においても、限られた情報の中で、例えばユーザーの利用利便性向上を目指した「壁打ち」と呼ばれるディスカッションを可能にする機能を開発するなど、付加価値の向上を図る取り組みを進めています。
「CCReB CREMa」についても、お客さまからのさまざまな声を取り入れながらバージョンアップを進めています。現在、金融機関の営業を含めて対応していますが、例えばメーカーの管財部門など、不動産を多数所有しながらうまく管理できていない企業などにも協力することで、このマッチングシステムのポテンシャルをさらに広げられると考えています。
さらに、「CCReB GATEWAY(ククレブ ゲートウェイ)」というポータルサイトについても、10月1日にリニューアルしました。このポータルサイトは、経営データなどを簡単に取得できる仕組みが特徴で、主に当社のお客さまである企業の経営企画部門や財務部門の方々にご利用いただける内容となっています。このサイトの魅力度をさらに向上させるべく、引き続き取り組んでいきます。
株主構成
最後に株主構成についてご説明します。上場後、2025年8月末現在の株主構成はスライドのとおりです。ここでお伝えしたいのは、機関投資家が株主として入ってきていることです。
当社は多くの個人株主の方々に支えていただいていますが、機関投資家も増加してきています。当社は多くのIR活動を行っており、その結果として個人株主のみなさまにも引き続き届くような事業戦略を実行し、長期的に保有いただける企業を目指していきたいと考えています。
中期経営計画 FY2026-FY2028
中期経営計画は2026年度から2028年度にかけて、「A Tech-Driven Platform Strategy」を掲げて実施します。これは、テクノロジーを基盤とした戦略です。
当社はCRE活動を行っており、企業の不動産売却動向や企業が保有する不動産の可視化に取り組んでいます。
このようなプラットフォームを通じて、ユーザーのみなさまをはじめ、多くの方々にCRE活動を進めていただくことを目指しています。そして、当社がプラットフォーマーとしての役割を果たすという、この3年間の想いを込めた中期経営計画となっています。
中期経営計画3か年の成長戦略
はじめに、3年間の成長戦略についてご説明します。不動産テックビジネスとCREソリューションビジネスが有機的に連携するという方針は、これまでと変わりません。
不動産テックビジネスについては、今後はM&Aを軸に、不動産テック関連企業とのアライアンスを目指していきます。具体的には、さまざまな案件の持ち込みや不動産テックシステムの販売、ないしは案件のEXITに関するご相談などが挙げられます。
ただし、単純にテック企業をM&Aするということではなく、当社にとって有益な連携が可能なアライアンスを組み、双方にとってプラスとなる関係を構築していきたいと考えています。
このように規模を拡大する上で、CREソリューションビジネスでは3つのポイントを重視しています。まず1つ目は「戦略的アライアンス」です。地主社と業務提携を進めていますが、これにとどまらず、今後さらに事業的強みやエリア的強みを持つ企業との連携を図ります。当社は少数精鋭で取り組んでいますので、そうした企業の力をお借りしながら、CREマーケットをさらに深掘りしていくことが目的です。
2つ目は「各サービスの更なる強化」です。当社が現在展開しているサービスをさらに深掘りしていく方向で、これからの3年間を進めていきます。
3つ目が、非常に重要なポイントである「CRE×M&A」です。スライド右側に「中堅・中小企業の経営環境を背景とした事業承継ニーズの加速」と記載していますが、これまでもさまざまな案件の申し込みが寄せられてきました。
その中でも特に、非上場企業の経営や事業承継に関するニーズが多く寄せられています。いよいよ当社も、これらの相談に応じる体制が整ってきたため、これからは当社らしいM&Aを推進していく意向です。
このような取り組みを掛け合わせることで、投資機会を逃さず、次の成長フェーズに進むことを目指しています。これが、3ヶ年の成長戦略となります。
中期経営計画 FY2026 - FY2028
中期経営計画のエグゼクティブ・サマリーです。不動産テックとCREソリューションの展開により、唯一無二のトップランナーを目指していきます。その中で、CREマーケットにおけるプラットフォーマーとしての確固たる地位を確立する3年間としています。
中計期間における「数値目標」は、売上高120億円です。引き続き、平均成長率60パーセント以上という高い成長率を目指していきます。
営業利益は32億円を目指しており、高付加価値のあるビジネスを組み合わせることで、営業利益率を維持していく方針です。あわせて当期純利益は20億円としており、EPSや配当金の成長を図る戦略です。
「マーケット認識・ポジショニング」についてご説明します。マーケット認識としては、引き続き潜在的ストックが非常に多いマーケットであると考えています。
また、東京証券取引所による資本効率向上の要請が非常に効いてきており、企業が不動産を所有する必要がないという認識が、多くの企業に浸透してきています。加えて、先ほど申し上げた非上場企業の売却などのニーズも増大しており、今後さらに拡大していくマーケットと考えています。
引き続き、当社の特徴であるコンパクトCRE、具体的には20億円以下の不動産にフォーカスする方針は変わりません。
「成長戦略」については、今お話ししたM&Aを含めた部分については、CREソリューションビジネスだけでなく、不動産テックビジネスも含めた領域においてM&Aを活用し、インオーガニックな成長の実現を目指していきます。
当社が最も重要視している「人的資本戦略」については、今後も優秀な人材の採用と業務フローのDX化を推進することで、引き続き少数精鋭の体制を維持していきたいと考えています。
また、本日公表した内容として、インセンティブ制度の充実等により社員のエンゲージメント向上を図ることを計画しています。この施策を踏まえ、2028年度末には現在の倍となる社員数30名を目標としています。
売上高・利益目標
中期経営計画の数値目標をグラフにまとめています。2028年8月に売上高120億円、営業利益32億円、当期純利益20億円に到達する計画です。
売上高の推移は平均67.5パーセントの成長率を見込んでおり、営業利益についても73.6パーセントの成長率、当期純利益も67.2パーセントの成長率を計画しています。
先ほども申し上げたとおり、CREマーケットにはまだ多くの案件があり、これを着実にプラットフォーマーとして取り込むことを目標としています。
CREマーケット認識① ~ 巨大市場における高い参入障壁を背景とした独自のポジショニング
スライドには当社のポジショニングを示しています。まずコンパクトCRE市場については、統計資料において約60兆円の巨大市場とされています。このような巨大市場に対して、当社のように細かいノウハウを持って挑戦しているプレイヤーは、現時点では非常に限られていると考えています。
これを当社の強みとして、個々のニーズを捉えながら、この巨大市場における高い参入障壁を背景に、独自のポジショニングを構築しています。
このようなCRE市場において、当社は今後も引き続き力強く戦っていきたいと考えています。
CREマーケット認識② ~ コンパクトCREマーケットにおける当社成長ポテンシャルの拡大余地
今までは、民間法人の保有額約524兆円と巨大な市場を構成していましたが、そこからさらに「コンパクトCREマーケット」として新たな枠組みを提示し、その規模を約60兆円と見込んでいます。
その内、上場企業の保有が約12兆円、非上場企業が約49兆円となり、合わせて約60兆円の市場規模となっています。この数値はシンクタンクの調査によるもので、いわゆるCREマーケットにおける年間取引額は約4兆円と推定されています。
その中で、現在「CCReB CREMa」におけるポテンシャルとして、当社が取り組めそうな案件の総額は約2,000億円と見積もっています。そして現在進行中のパイプライン案件は40億円規模となっています。
「CCReB CREMa」の情報登録数をさらに拡大させることで、まだまだ成長余地のあるマーケットであることをご理解いただければと思います。
CREマーケット認識③ ~ 上場企業における資本効率意識の高まり
こちらのスライドには、上場企業の資本効率意識の高まりを数字で示しています。東京証券取引所からの資本コストを意識した経営の要請前と要請後の各社の直近の中期経営計画において、資本効率や資産効率を経営戦略としている会社は、要請後には約85パーセントの会社がこのような危機意識を持っていることが見て取れます。
また「もの言う株主」ということで、アクティビストの台頭が非常に顕著となり、バランスシートに関連する議案が増加しています。
スライド右側には、どのような事案が提案されているかを記載しています。「不動産を十分に活用できていない」「簿価が低い資産を時価で実現したい」「賃貸不動産を保有するよりも事業への投資を優先すべきだ」という意見が含まれています。当社はこのような切り口からも、いわゆるコンパクト型と呼ばれる小規模な案件についての相談を実際にいただいています。
今後も、このようなアクティビズム事例として、企業が活用しきれていない不動産を売却する動きの中で、当社がお役に立てる場面がさらに増えるのではないかと考えています。
成長戦略 ~ CREソリューションビジネス① 『ネットワーク構築と拡大』
このような事業環境の中で、ネットワークの構築も進めています。これまでも大手デベロッパーやファンドとは、CREにおける戦略的提携を行っています。スライドには、その中のパートナー企業を抜粋しています。
例えば株式会社フィールド・パートナーズについては、当社が関わる産業用不動産で、土壌汚染は必ずと言っていいほど避けられません。そこで土壌調査だけでなく工事も行っていただくなど、プロフェッショナルな対応をしていただいています。また共同投資やブリッジなどの取り組みも行っていただいています。
エムエル・エステート株式会社は、みずほリース株式会社の100パーセント子会社であり、当社とは上場前から資本提携しています。同社は案件の紹介やブリッジ役を担うだけでなく、共同投資やテック技術の連携を開始するなど、多方面での協力を進めています。
株式会社シーアールイーについては、上場直前に資本提携を行いました。現在コンパクト型案件での連携や、人材の派遣といった取り組みを進めており、非常に深い関係を築いています。
ここに、本年5月に地主社が加わりました。案件紹介だけでなく、今後の共同投資についても話を進めています。また彼らの社内テックシステムの開発支援も始めています。
また東海道リート・マネジメント株式会社および北海道アセットマネジメント株式会社については、彼らの重点エリアで取り扱う物件をご紹介しています。
そのような取り組みを通じて、CREプラットフォーマーとしての地位を確固たるものにし、全国的な産業用不動産への対応を提携先と進めていくことが、当社の中期経営計画における成長戦略です。
成長戦略 ~ CREソリューションビジネス② 『拡大する投資機会の捕捉』
このような中で、企業からは資本効率やサプライチェーンの再構築という言葉が挙がっており、CRE対応のニーズの高まりを背景に、投資機会を継続的に捕捉していこうと考えています。
基本的には、いわゆる「ボリュームゾーン」である、5億円から20億円規模のコンパクトCREを引き続き狙っていく方針です。
これまで多くの案件に取り組んできましたが、最近特に顕著なのは、建築費が足元で非常に高騰しており、新築で建物を建設することが困難になっている点です。
そのような中、多くの企業が居抜きの案件を探されており、当社ではこれをマッチングシステム等でマッチングさせ、さらに流動化・販売につなげるチャンスがあると考えています。これらを「Re-born案件」と呼んでおり、今後3年間、こうした取り組みに注力する予定です。
また、REITや開発案件向けのブリッジファンド組成も継続して進めています。当社は体力もついているため、このようなものも組成していく方針です。
ただし、ボリュームゾーンを基準としながらも、実際には20億円を超えるような大規模案件も増えてきています。これらについては当社単独で進めるのではなく、先ほど述べたパートナー企業を含めた共同投資を実施していきたいと考えています。
この取り組みによって売上を拡大するとともに、CREファンド組成を行って投資家をプロジェクトに招聘する取り組みも推進することで、20億円を超える案件も、この3年間で数多く取り組む予定です。
5億円以下、特に1億円から5億円の規模については「CCReB CREMa」を活用してマッチングを行い、付加価値を付けて早期に売却することによる短期回転型の案件を進めていきます。販売用不動産の保有期間は、長くても2年、小規模案件については1年以内で回転し、当社の資本効率を向上させる方針です。
さらに、有形固定資産はおおむね2年から3年間保有し、その間に賃料収入を確保しつつ、最終的に販売用不動産に移行させる資金回転モデルを構築しています。
また、「いけす」ついても、イメージとして毎年20パーセント以上の増加を見込んでいます。この背景には、ユーザーの増加による案件登録数の増加がある一方で、上場企業が保有する非稼働資産の固定資産情報をデータとして蓄積している点も挙げられます。
例えば、「この会社が保有しているこの資産、あまり稼働してないね」のような情報をデータに入れていくことにより、そこにニーズマッチングする仕掛け案件を提案することも可能です。このように当社からもさまざまな情報を提供しつつ、提案案件を増やしていくことでマネタイズを図る計画です。このように「いけす」についても引き続き、さらなる成長が期待されると考えています。
成長戦略 ~ CREソリューションビジネス③ 『いけすの拡大を引き続き目指す』
スライドは、今回の目標を算出した根拠について示したものです。この3年間の数字は勢いで作成したわけではありません。当社は2020年から「CCReB CREMa」というマッチングシステムを社内で運用しており、ここ数年でトラックレコードがかなり蓄積されてきました。
スライドの表の見方について、一番左側に示すとおり、まず情報が登録されると、そこからマッチングが起き、照会が行われます。これにより入ってきた案件の約20パーセントから25パーセントがマッチングします。このマッチングしたところから商談の段階に進む割合は約6パーセントです。
そして実際に商談から成約に至る割合はさらに約20パーセントとなります。そこに1案件当たりの成約金額を掛け合わせることで、おおよその変動売上を算出しています。2026年以降の売上に関しては、このような根拠に基づいており、上記の流れにより変動売上の規模と固定売上を組み合わせています。
固定売上については、いわゆるサブスクリプションの固定収入と賃料収入となり、これらを基に算出された今回の中期経営計画の数値は、売上規模がFY2026末で47億円、FY2027末で77億円、FY2028末で120億円となっています。
この実現のため、当社としては「いけす」を拡大させる方針です。それを「いけす」から案件を取り上げていく営業人員の規模が非常に重要であり、これを拡大することで好回転のサイクルにつなげます。この2点をこの3年間を推進していくため、引き続き「いけす」の拡大を目指す成長戦略を掲げています。
成長戦略 ~ CREソリューションビジネス④ 『各サービスの更なる強化・推進』
各サービスのさらなる強化・推進についてです。まずCREアドバイザリー事業においては、よりコンサルティング型のアドバイザリーを強化していく計画です。すでに大手製造業や大手卸業のCREコンサルタントの受注を受けています。
今後、さらにコンサルティング型のアドバイザリーを伸ばしていきたいと考えています。このため「CCReB AI」や「CCChat(ククチャット、提案システムチャットボット)」といった提案システムをさらに強化し、質を高めることが、3年間の目標です。
また不動産仲介については、マッチング情報からの仲介件数が増加することが想定されており、これをきちんと処理していく体制を整えています。
加えて、マスターリースに関しては、先ほど示した北広島市の危険物倉庫のマスターリース事業が2027年度にスタートします。現在はこれに並行し、主要産業エリア、特に半導体やさまざまな技術関連の産業エリアで、2号案件、3号案件の検討を進めています。
さらに危険物倉庫にとどまらず、当社がマスターリースを行うことでCRE戦略を推進できるようなアセットを探索しているところです。
最後に、B/Sを活用した投資・プロジェクトマネジメントについて、ひとつは安定収益を確保するためにB/Sを活用して不動産を取得し、その賃料収入を安定的に享受する計画です。また管理物件の増加に伴い、いわゆるアセットマネジメントも強化する予定です。
さらに、プロジェクトマネジメントでは北広島市の案件でプロジェクトマネジメントを受託する予定であり、このようなプロジェクトを積極的に関与することで、この3つのビジネスを強力に推進し、この3年間で確実に成果を残す考えです。
成長戦略 ~ 不動産テックビジネス 『不動産テックの新たな価値創造』
こちらのスライドは、テクノロジー関連の内容です。この中でも「テック収入の多様化」が最も重要なポイントだと考えています。当社はサブスクリプションだけでなく、先ほどの地主社向けの社内DXや現在は製造業やメーカーの管財システムなどの管財部門からも依頼があり、彼ら用に若干カスタマイズしたマッチングシステムや管理システムの開発依頼を求められています。
このようなものに対して、当社はシステム開発受注を進めており、最終的にFY2028年には、テック収入の中で約3分の1を開発受託からの収入とすることを目指しています。
この分野では予想以上に高いニーズが確認されています。先ほどの不動産テック企業のM&Aとも関連しますが、当社でシステムエンジニアを採用していくというよりは、アライアンス先のシステムメンバーに発注する、もしくはその企業をグループ傘下に置く方針を検討しています。いずれにしても、そのように連携を進めながら、マーケットを大きくしていきたいと考えています。
また、データ販売についても取り組んでいます。現在、製造業や大学、コンサルタントなどにデータを販売していますが、個人的にはこの分野にもさらなるポテンシャルがあるのではないかと思っています。このようにテック分野において、サブスクリプション収入以外の収入も少しずつ伸ばしていくことを、この3年間で考えています。
成長戦略 ~ M&A領域におけるCREのポテンシャル
M&Aについてご説明します。まず現在の経営環境です。事業承継のニーズが非常に高まっている一方で、多くの企業が保有する不動産の稼働率が100パーセントには達していないケースが多くなっています。
スライドに「当社らしい事業再生と資産価値の最大化」と掲げている理由について、現在も相談を受けている案件で、ある企業が事業継続を希望しており、これは単純な不動産M&Aではなく、事業を継続する新たな担い手を探すという内容です。その際、不動産を調査すると、余剰敷地を抱えていたり、不動産を十分に活用できていないケースを目にすることがあります。
当社はこの分野を得意としており、例えば「CCReB CREMa」を活用して不動産価値を最大化しながら事業承継を進めさせていただき、最終的には事業自体を第三者に譲渡することを想定していますが、より不動産の価値を高めることで企業価値の向上が図れると考えています。こうした案件を戦略的に狙っている状況です。
したがって、M&Aが合意に至れば連結売上高に計上される可能性がありますが、いずれにしても単なるM&Aをやみくもに実施するのではなく、中堅・中小企業の中でも明らかに不動産の利活用が進んでいないといころを、うまく拾い上げたいと考えています。
このような課題に対応するための体制構築も作り上げています。本日発表しましたが、ファイブ・アンド・ミライアソシエイツという会社と業務提携を結びました。この会社はスモールM&Aの案件を幅広く手掛けている企業です。また、この案件のソーシングを担う専門スタッフを今年10月から採用しています。
成長戦略 ~ 新たな取組み 『CRE×M&Aの推進』
CREソリューションビジネスにおいては、不動産M&A、つまり単純に不動産しかない会社を買収するのではなく、眠った不動産の資産価値を引き出す戦略を、この戦略をアドバイザリー事業とB/S活用投資を通じて実施していきます。
不動産テックについては、この分野でビジネスを展開している方々とのアライアンスを構築しつつ、エンジニアの確保にも取り組みます。このような取り組みにより、両社のシナジーを生み出すビジネスを推進したいと考えています。
そのためにも、この「CRE×M&A」という観点から、ファイブ・アンド・ミライアソシエイツ社との提携を進めるとともに、内部管理体制の一環として、M&Aを検討する投資委員会を新設します。この委員会には外部の専門家も交えて、規律をもって実行していきます。
人的資本戦略
人的資本戦略です。少数精鋭体制については引き続き維持していきたいと考えています。そのためには、業務のDX化が必須だと認識しています。
当社は比較的DX化が進んでいるという自負を持っていますが、現在流行している生成AIの活用を全社員に拡大することや、営業部門においては契約のパターン化を進めることで、クロージングまでの時間を短縮したいと考えています。
また採用計画については、この3年間で倍増させる予定です。リファラル、スカウト、エージェントなどを活用した積極的な採用活動を進めており、この8月から10月にかけて採用・入社が進んでいる状況です。またFY2028以降は新卒採用も視野に入れる予定です。
それらを支えるために、今回併せてオフィスの移転を発表しました。来年9月には、東京建物株式会社が八重洲の再開発で手掛けた「TOFROM YAESU(トフロム ヤエス)」に入居する予定です。本店が千代田区から中央区に移ることになりますので、株主総会にて付議予定であり、ご承認いただける前提となります。この移転により社員が働きやすくなり、また採用活動をより有利に進められるようになることを目指し、本日リリースを公示しました。
財務運営と株主還元方針
株主還元方針です。こちらは特に方針の変更はありません。「なぜ今配当をするのか」というご意見もありますが、配当可能な成長を実現しつつ、投資家のみなさまに長く保有いただきたいという思いがあります。そのため、引き続き成長投資に重点を置きながらも、バランスを取りながら配当を行っていきたいと考えています。
財務運営については、ネットDEレシオを1倍程度を規律とする財務運営を目指していく方針に変更はありません。
質疑応答:2026年8月期の成長ドライバーについて
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