「地域の多様性で活性化する」持続可能な地域経済の条件とは? 画一的ニュータウンから混ざり合う街へ
~新morichの部屋 Vol.23 株式会社フューチャーリンクネットワーク 代表取締役 石井丈晴氏~
森本千賀子氏(以下、morich):株式会社morich代表取締役社長の森本です。
福谷学氏(以下、福谷):株式会社コミクス取締役の福谷です。morichの部屋、始まりましたね。
morich:はい。始まりました。
福谷:今、外ではチャイムが鳴っていますね。
morich:ちょうど、いい感じに流れていますね。
福谷:はい。温かい感情になりました。
morich:今日もとても暑かったですね。
福谷:暑かったですよね。
morich:もう、梅雨は過ぎてしまいましたか?
福谷:「梅雨、ありましたっけ?」というような感じですね。
morich:今年はあっという間でしたね。
福谷:そうですよね。今日もカラッとしていて、「天気もいいな」と思っています。「今日の森さんもおきれいだな」と思いながら、チャイムも鳴りました。
morich:あはは(笑)。私の大好きな夏がやってきたのですよ。夏ですよ、夏!
福谷:そうですか。夏がお好きなのですね。
morich:大好きですよ! 私の時代がやってきました(笑)。
福谷:なるほど。夏が好きな方って、けっこうパワーがありますよね。
morich:そうですね。
福谷:そうですよね。ということで、今日もmorich の部屋が始まりました。なんと、23回目です。
morich:23回目ですね。続きましたね。
福谷:いろいろと奥深いですね。
morich:私は3回目くらいで終わってしまうのではないかと、本当に思っていました。
福谷:本当にそうですよね。確かにおっしゃっていましたよね。
morich:ここまで来たら、「徹子の部屋」を抜きます。
福谷:「徹子の部屋」って、何回やられているのでしたっけ? 何回とかではないですよね。
morich:何回とかではないですよ。
福谷:何年ですものね。
morich:聞いたことがありましたが、それこそ1,000回とかなのですよ。
福谷:もっとではないですか?
morich:もっとですね。毎週やっていますものね。
福谷:何十年ですものね。
morich:そうですよね。今度、調べておきます。リサーチ不足ですみません。
福谷:なるほど。わかりました。ありがとうございます。今日も「シャワー」を浴びたのですか?
morich:浴びまくりです。「note」を読みまくりました。すごくいいことが書いてあって、私はうるっときたので、みなさまに読んでほしいです。
福谷:なるほど。そのあたりもご紹介いただけるということですね。
morich:そうです。もちろんです。
福谷:わかりました。今日も楽しみにしています。ありがとうございます。それではさっそく、ゲストをお招きします。
morich:ご紹介します。株式会社フューチャーリンクネットワーク代表取締役の石井丈晴さんです。よろしくお願いします。
福谷:よろしくお願いします。
石井丈晴氏(以下、石井):よろしくお願いします。
morich:共通点があります。
福谷:共通点があるのですか?
morich:はい。「元リク(元リクルート)」です。
福谷:「元リク」ですか。なるほど。どうでしょうか? 怖いような、うれしいような、明るいような。
morich:おそらく、「元リク」はこれまでで初めてではなかったかと思います。意外といそうで、今までいなかったのですよ。
福谷:確かに、いらっしゃらないかもしれないですね。お仕事を一緒にされた時期もないのですか?
morich:ないです。
福谷:ないのですね。
morich:ないのですが、やはり「元リク」というだけで、0.1秒で同志という感じですよ。
福谷:なるほど(笑)。いいですね。
morich:そうなのです。今日も楽しみにしていました。
福谷:よかったです。ありがとうございます。
morich:よろしくお願いします。
石井:よろしくお願いします。
石井社長の自己紹介
morich:最初に、簡単に自己紹介をお願いします。あとで深掘りしていきますので、さらっとお願いします。
石井:石井丈晴と申します。1973年生まれです。
morich:1973年ということは?
石井:51歳です。
福谷:見えないですね。
morich:50代に見えないですよね。
石井:ありがとうございます。お世辞で喜ぶ歳になってしまいました(笑)。
福谷:ここに来る社長は、本当にみなさま若いです。
morich:本当に若いです。見えないです。
福谷:「何しているのだろう?」という感じです。教えてほしいです。
morich:本当です。教えてほしいですよね。
石井:ありがとうございます。大学を出てリクルートに入り、やりたくもない人事部に配属されました。本当は営業をやるはずでした。
morich:そうですよね。普通はほとんどが営業です。
石井:ですが、人事を一生懸命がんばって「地域活性」のテーマに出会い、「今やらなければ後悔する」と思いました。リクルートは大好きだったのですが、飛び出して、2000年に創業して、今に至るという感じです。
morich:これほどまでにさらっと言っていますが、簡単ではないですよね。
福谷:確かにそうですよね。
morich:実は今回、いろいろと調べて「シャワー」を浴びてきたのですが、幼少期のことがさらっと書いてありました。千葉でお生まれですよね?
石井:千葉です。
morich:千葉のお生まれで、どのような幼少期というか、少年だったのですか?
石井:おそらく社長はみんなそうだと思いますが、今で言う「落ち着きのない子ども」でした。注意欠如・多動症(ADHD)でしょうか? 典型例です。ちゃんと座っていられず、怒られても直らないですし、好奇心の塊だったのです。
morich:非常に好奇心があったということが、どこかに書いてありましたね。
石井:そうです。母親はしょっちゅう学校に呼び出されていました。
morich:そうですか。やんちゃだったのですね。
石井:やんちゃでした。ドリルが苦手でした。ドリルって今でもあるのですか?
福谷:あります。
石井:反復練習に意味を感じなかったのです。
morich:私の息子もそうです。
福谷:大丈夫ですよ。私のように生きていけます。
morich:大丈夫ですね。社長になれるかもしれません。
石井:ドリルがあまりに嫌で、「石井くん、ドリルやらないなら走っていらっしゃい」と言われたら、「行きます」というような感じでした。
校庭を走っていると、みんなに注目されるではないですか。校庭一周ごとに服を1枚ずつ脱いでいくと、校舎中から注目を浴びるわけですよ。最後になったら、先生が羽交い締めにしに来ました。
morich:一応、パンツは履いていたのですか?
石井:体操着の上を脱いで一周して、次に靴下を脱いで一周していました。
morich:それはお母さん、呼び出されますね(笑)。
石井:あれが小学校低学年の、私のハイライトでしたね。
morich:でもこの時代はおそらく、げんこつなどで先生が厳しいのではないですか。
石井:そうですね。完全に体罰でした。
morich:今はできないですね。それでも「やりたくない」という感じだったのですね。
石井:リフレインはどうしても嫌でした。したがって私は今、字がとても個性的なのです。
morich:そうですか。
石井:はい。私の字はかなり汚いのですが、ドリルをやらなかった弊害です。当時は「こんなのは、いずれ要らなくなるだろう」と思っていたのですが、一周回って、今は字が上手いほうがかっこいいではないですか。
morich:そうですよね。
石井:「失敗した」と思いました。
morich:サインとかしますからね。しかし、そもそも勉強はできていたのですか? 「読書は好きだ」とどこかに書いてありました。
石井:読書は好きでしたね。司馬遼太郎の本を読んでワクワクしていました。
morich:徳川家康のシリーズは23巻ですよね。
石井:そうです。そこまで見ていただいたのですね。
morich:もちろんです。チェックしました。
石井:私はあれを見て、やはり「いつかは社会に役立つスキームを作りたい」というのと、「長く続く仕組みを作らないと世の中を変えられない」と思ったのです。良くも悪くも、経営の考え方の癖かもしれないですね。
morich:それ、孫正義さんもそうなのですよ。
孫さんが人事に指示を出し、例えば新王朝とか、「何百年、何千年と続く組織を調べろ」というお題を出されて、「そこには必ず共通点があるはずだ」という考えです。孫正義さんと同じ思考です。
石井:そう言われると恐縮ですが、うれしいですね。
morich:そうなのですね。スポーツはなにかやっていたのですか?
石井:スポーツは小さい頃からいろいろとサッカーをやったり、野球をやったりしていました。高校の時は水球をやっていました。
福谷:水球ですか。
石井:マニアックなスポーツです。
morich:でも、水球は「逆三角形でかっこいい」というような風潮がありますよね。
福谷:確かに。
石井:やっている時はそうですよね。
morich:なるほど。
石井:やっている時はハードで、しかも「モテるからおいでよ」と言われて入ったのですが、水球の帽子って、見たことがありますか? 致命的にかっこ悪いのです。
morich:「あれをやりたくないから入らないという人もいる」と聞きました。
石井:そうなのです。プールの中で行う水中の格闘技なのですが、ボールを待っている瞬間って、頭だけ出ているのです。特徴的な帽子をかぶって頭だけ浮いている図って、圧倒的にモテません。
morich:確かに(笑)。そもそもパーツが良くないと、苦しいものがありますよね。
石井:パーツは良くても、あの帽子はなかなかしんどいと思いますね。
morich:なるほど。
石井:このような感じで、「モテる」と勧誘されて入ったのですが、ただただしんどいだけでやっていました。
morich:「おかしいな」と。しかし、慶応義塾大学に入られて、どのあたりから芽生えたのですか?
学びの芽生え
石井:中学生で、数学の証明問題がありましたね。「この三角形の面積が同じであることを証明せよ」とか。
morich:ありましたね。
石井:今でも覚えているのですが、あれで初めて勉強がおもしろいと思いました。
morich:そうですか。
石井:「これはおもしろい」と思ったことが、1つのきっかけかもしれないですね。
morich:理系が得意だったのですか?
石井:理系が得意でした。ですが、文系の仕事に就きたいと思っており、理系の学問のほうが得意でしたが、結局、文系に進んでしまいました。
morich:なるほど。高校時代は、「将来ちゃんと大学に入って」のような、そのような設計だったのですか?
石井:そうですね。やはり大きい仕事をやるためには、選択肢が多いほうがいいなと思ったので、就職活動もそうですが、ノンポリシーで選んでしまいましたね。「絶対に慶應に入りたい」とかではないです。
morich:その当時、「将来どうなりたい」というような目標は、特になかったのですか?
石井:「起業」という言葉はなかったのですが、漠然と、「何か社会に大きなインパクトを起こせるような仕組みを作りたい」という概念がすごくありました。
福谷:なるほど。
morich:そうですか。それはすごくないですか?
福谷:すごいですね。
morich:福谷さんは、高校時代はどうしていましたか?
福谷:自分もそうですね。どちらかという独立精神が高かったです。
morich:あったのですね。
福谷:ありました。
石井:歴史小説を読み続けたのが大きかったかもしれないです。歴史小説を読むことで、なにか仕組みを作るなど、そのようなことが非常に好きでした。
morich:そうですか。あのような武将に憧れましたか?
石井:武将でも、政治家でもです。
morich:政治家でもですか。それで、「どうすれば世の中に影響を与えられるか」ということですか?
石井:はい。なんとなく「お金のためだけじゃがんばれない」というのが、当時からあったのかもしれないです。うちは裕福でも貧しくもなかったのですが、経営者になる貧しい人は、それをハングリー精神で行っていました。
morich:ハングリー精神ですね。
石井:そのような経営者には、いまだにコンプレックスを感じるのです。
morich:なるほど。
石井:そのようなストーリーがあまりないのです。ですが、「仕組みをやりたいな。何か社会に役立つ仕組みだったら燃えそうだな」というのが、漠然とあったのかもしれません。
morich:そうですか。なるほど。そこからの大学生活で、なにか石井さんなりにトピック的なものがありますか?
石井:大学に入って1つ特徴的なことがあったとすると、非常に円高でした。『深夜特急』という本を知っていますか?
morich:はい。読みました。
円高を味方に、世界中を放浪
石井:あれにとてもはまって、「陸路で国境越えをしたい」と思って、大学に入ってからは、ほとんどサークルなどに行かずに、海外に放浪旅行ばかり行っていました。
当時、地球の歩き方社が原稿を買ってくれたのですよ。
morich:え!? そうなのですか?
石井:「ここに、こんなゲストハウスがある」とかいう情報を載せて、1原稿採用されると5,000円ほどもらえました。
morich:旅コンテンツですね。
石井:そこで、自分がバックパックで行って、バックパッカーブームよりも前だったので、自分が行った旅の情報を地球の歩き方社に送って、それでお金をいただきました。
morich:バイト代ですね。
石井:円高で旅券を取って、海外に行っていましたね。
福谷:すごいですね。
morich:100円を切った時ですか?
石井:1ドル80円代の頃もありました。
morich:だから回れたのですね。ちなみに、どのようなところに行かれましたか?
石井:アフリカ南部以外はほとんど行っています。
morich:え!? 本当ですか?
石井:アフリカの下半分は行ったことがありません。
morich:行ってしまったら、当分帰ってこないですか?
石井:日本で取ると時間がかかるので、たいてい、まずジョージタウンとか、第三国にいったん飛んで、そこでビザを用意して、中東へ行ったり、南米へ行ったりしました。
morich:1人でですよね?
石井:1人で行っていましたね。
morich:危ない目にあわなかったのですか?
石井:あまり言えないのですが、危ない目にはいっぱいあいましたね。
morich:本当ですか。それでもやはりトラウマにはならず、興奮というか、「楽しい」と思うことが多かったのですか?
石井:そうですね。トラウマになりかかったことはありますが、それ以上に見られた景色がすばらしくて。
morich:では、もう何十ヶ国ということですよね。
石井:そうですね。40ヶ国から50ヶ国、60ヶ国、もっと行っているのかな。
morich:もうパスポートはいっぱいというような感じですか?
石井:いっぱいになっています。
morich:英語は話せたのですか?
石井:身振り手振りと片言の英語ですが、英語も通じない国もほうが多かったので問題なかったです。
morich:そうですか。泊まったのは、野宿もありましたか?
石井:野宿したり、ゲストハウスに泊まったり、仲良くなって泊めてもらったりという感じでした。
morich:そうなのですか。そこでなにか感じたことはあったのですか?
石井:最近は変わっているかもしれないですが、アジアとかに行くと戦争の記憶があって、「お前のことは泊めてやるけど、日本でこんな目にあったのだ」と、タイの南部の山岳民族の村で言われたりとか。
morich:え!?
石井:「ここでそんなことを言われるのか」というのがあったりしました。
morich:そのあたりで知り合った方のお家に行ったりもしたのですか?
石井:仲良くなると「泊まらせてあげるからおいでよ」と言われ、それで危ない目にあったこともあります。
福谷:そうですよね。ありそうですね。
石井:散々ありますが、泊めてもらって本当にいい経験をさせてもらったこともあります。
morich:なかなかできないですね。では学生生活のほとんどは、海外で生活をしていたのですか?
石井:大学時代は一番真面目に勉強していたので、ふだんはちゃんと授業に出て、長期休みの度に、すぐにチケットを取って行ったという感じでした。
morich:それは、景色としては本当に広がりますね。
石井:広がりますね。本当にすごくいい学びでした。
morich:そうですか。やはり各エリアに思い出がありますね。
石井:そうです。
morich:でも、インターネットなどがまだない時代ですよね。
石井:なかったですね。
morich:情報はどうしていたのですか?
石井:自分が行って取るしかなかったため、私は地球の歩き方社に原稿を買ってもらえたのです。
morich:『地球の歩き方』がないエリアだったわけですね。
石井:そうです。
morich:すごくないですか?
福谷:確かに。
石井:おそらく、『地球の歩き方』は最初は東南アジアだったのですが、『地球の歩き方』のラオスの初稿とか、ほとんど私の記事でした。
morich:え!? 本当ですか?
石井:はい。
morich:『地球の歩き方』にないエリアに行って、いろいろ本当に歩いて情報を集めて、本当に今のビジネスの原体験という感じです。
石井:そうですね。直接的には結びつかないのですが、ただやはり「その地域、町単位で、すごく知らないことってあるな」と思ったし、どこに行っても学びがあったので、すごくいい経験でした。
morich:私も『地球の歩き方』を見ながら「こんなマニアックなお店とか、誰が行っているのだろう?」と思っていたことがありました。それは石井さんの記事かもしれないですね。
石井:そうですね。やはり今でも、知らない町に飛び込んでお店に行くのが好きですね。
morich:そうなのですね。では本当に、まったく情報がない中で、その日暮らしではないですが、行きたい方向に行くということですか?
石井:地図を見ながら、そのような感じでした。
morich:すごいです。それで4年間を過ごしたのですね。
石井:そうです。
就職氷河期の中での就職活動
morich:就職活動はしたのですか?
石井:就職活動はしました。就職活動は就職氷河期の始まりだったのですが「とにかく大きなことをするには大きな会社行ったほうがいい」と、それだけしか考えていなかったです。
morich:そう思ったのですね。なるほど。単純な感じですね。
石井:なので、商社を上位3社という、すごくなめた就職活動をやっていました(笑)。
morich:それは、なめていますね(笑)。
石井:ビッグマウスなわけですよ。語弊を恐れずに言うと、大企業の人事部の人も、自信がない人は、ビッグマウスな学生に弱かったのではないでしょうか。
morich:そうです。印象に弱いのですよ。「この人はできそう」というような感じですね。
石井:そうです。それだけで内定をいただいている時に、たまたまリクルートが、大きな声では言えないような水面下の採用活動をやっていました。
morich:青田買い的な感じですか。
石井:青田買いです。それにかかっていました。本当は商社に行くことを決めて就職活動は終わっていたのです。
morich:ほぼ決めていたのですね。
石井:はい。決めて、青田買いのプロセスに報告に行ったら、ある日突然、「石井くんそれでいいの?」という揺らしが始まりました。
morich:「note」に、言われた良い言葉が書いてありますよね。
石井:「リクルートで偉くなったってしょうがないじゃん」という一言を聞いて、「かっこいいな」と思いました。
morich:リクルートを利用したのですね。
石井:そうです。「社会を実現する」という話を聞き、その言葉に惹かれて、リクルートに入ったということですね。
morich:では、商社は辞退したのですね。
石井:辞退しに行って、「本当にすみません」と言いました。
morich:親御さんとか周りの反応はどうでしたか?
石井:周りは驚いていましたね。「何、何? え?」というような感じでした。
morich:「何、何?」という感じですよね。おそらく私の時代も、まだやはりリクルートと言っても、今ほどの影響力がある会社でもなかったですし、おそらく4年後ということは、リクルートが大借金時代の時ですよね。
石井:そうです。
morich:けっこう過酷な感じの環境下でした。
石井:そうです。しかも、何をやっている会社かよくわからなかったのですよ。
morich:そうですね。
石井:昔は「24時間働けますか?」というリゲインのCMで、商社に行こうと思ったくらいでした。「リクルートって興味ない?」と何度か聞かれたのですが、「ゼクシィとかそういうチャラいのはあまり興味がないですね」くらいの感じでした(笑)。
morich:さほど情報収集もせず。
石井:はい。人が好きというだけで、リクルートに行ってしまいましたね。
morich:4年後なので、おそらく、ダイエーの傘下の時代とか、そのような時ですね。
石井:そうです。まだ、ダイエーの傘下でした。
morich:だからまだ混沌としていたというか、今ほどキラキラしていない時代ですよね。
石井:そうです。混沌としていました。同期も100人いたかいないかくらいでした。
morich:そうですか。1,000人採用の時代もあったのですよ。ちょうど暗黒というか、大変な時代に、逆に入社されたということですよね。
石井:はい。
morich:そのような意味では、それも勢いですよね。
石井:勢いですね。しかし、今考えても、「本当にいい会社に入ったな」と思っています。あの時は良かったなと思っています。
morich:そして入った先が、営業と思いきや、人事だったのですね。
石井:そうです。ここだけは心配でした。結果は良いのですが。
morich:ちなみに入社して、研修がありますよね? そこでなにか希望とか聞かれますよね?
石井:研修というか、人事で内定者バイトをしていました。私は一生懸命、せかせか真面目にやっていて、「石井、ちょっといい? 希望の部署とかある?」と言われて、「僕はいつか起業するので、営業をやりたいですね。」などと言っていたわけです。
「そうなんだ。行きたくないところある?」と言われて、「人事部です。本当にすみません。『ひとごと』としか読めないので、興味ないですね」と言ったら、「そうなんだ。ふーん」と言われました。
morich:言っていたのですか?
石井:はっきり言いましたね。「配属地、興味ある?」と言われて、「彼女もいますし、大きいから東京がいいですね。」と言いました。それで「他は希望しないのね?」と言われて、「だって、あまりそういう事例はないですよね」と言って、聞いてくれたのに、人事部で、しかも関西配属だったのです。リストラかと思いました。
morich:それはやめてくれという話ですね。
石井:びっくりしましたね。
福谷:確かに。
morich:真逆ですね。
石井:まったく興味がなかったので、びっくりしました。
morich:そうですか。それも関西ですし、縁もゆかりもない感じですよね。
石井:縁もゆかりもないです。
福谷:確かに。
希望は営業、配属はまさかの人事部
morich:そこにいきなり。しかし、それはなんとか受け入れたのですか?
石井:行くしかないので行きました。
morich:「はい」か「イエス」ですね。
石井:「イエス」しかないです。
福谷:「はい」か「イエス」ですか?(笑)
morich:リクルートは、「はい」か「イエス」か「おかげさま」、「ありがとう」など、そのような感じです。
福谷:なるほど。
石井:でも、内定者にそれを言われても、困るではないですか。
morich:はい。
石井:「とりあえず梅田に行け」と言われて、梅田に行こうと思うのですが、新大阪駅に着いたら、路線マップに梅田がないのです。当時、「ウメダ」と呼んでいました。
梅田という駅は大きいと聞きましたが見当たらず、今聞いたら恥ずかしいのですが、「『ウメダ』はどこですか?」とたくさん聞いていたら、怪訝な顔をされました。
morich:向こうも、「『ウメダ』と言われてもな、どこだろう?」となりますね。
石井:「それは大阪駅に行けばいいんだよ」と、よくわからない説明をされるわけです。
morich:「あれ?」となりますね。
石井:そして大阪駅に行くと、地下街が広く、案内も親切ではないという初日でした。
morich:余談ですが、本当にあそこは親切ではないですよね。そこに初めて行かれたのですね。
石井:行って、「『ウメダ』、『ウメダ』」と言っていたら「梅田や!」と怒られるというスタートでした。
morich:関西は、どうでしたか?
石井:今はけっこうヒューマンで、いい思い出しかないですが、最初はしょうもないことで突っ込まれるし、「お前、慶応、慶応って、セーター掛けてたんとちゃうん?」とか、よくわからないことを言われたりします。
morich:関西弁は、さすがにすぐにはマスターできませんでしたか?
石井:マスターできなかったですね。
morich:そうなのですね。では、その関西支社の人事ということですね。
石井:関西支社の人事だったのですが、間接部門がまだ小さかったので、総務のお手伝いなどをしながら人事の仕事も振られ、「U7」の雑用全部という感じでした。
morich:そうですか。とても大変でしたね。
石井:とても大変でした。
morich:人事も、採用から育成ですか?
石井:新卒採用は千本ノックで、当時リクルートは「京大か阪大か神大しか採るな」と言われていました。それで「何人採れ」と言われて、私は一刻も早く人事から出たかったので、「人事から出たいのですが」と言ったら、「結果を出してから言え」と言われたのです。
morich:そうなのですよ。リクルートって、いろいろなことを発言するにも、結果を出していないと、ぜんぜん聞いてもらえません。
石井:そうです。この嫌な人事から一刻も早く営業で活躍するためには、結果を出さなくていけませんでした。「京大、阪大、神大しか採るな」と言われたので、振られる雑用の合間を縫って、出町柳駅の京大の門に行ってナンパする、要は3年生にアポを取るという感じでした。
morich:なるほど。
石井:しかも、「何年生?」と聞いたら通じないのですよ。関西では、「何回生」と言うではないですか。
morich:関西は「回生」ですね。
石井:「何年生?」と聞いたら怪訝な顔をするため、そこだけは関西弁を習得し、「自分、何回生?」と聞きました。
morich:いい感じです(笑)。
石井:「3回生です」と言ったら、「今こういう会社でモニターバイトをやっているからどう?」と言って、自分が一番嫌だったモニターで釣るという手法をやっていました。
morich:1日1万円ですか? そういった高いものですよね。
石井:はい。学生も千本ノック状態になりながら、「タイムカードが壊れた」と言われたら修理に行き、総務のお手伝いもしていました。
morich:「電球を替える」などもやり、京大・阪大に行っていたのですね。
石井:本当に「何なんだこれは」といった生活でした。挙句の果てには「『U7』のビルの防災マニュアルを作れ」と言われるような時代でした。
morich:いろいろ経験してきたのですね。1年半ですか?
石井:関西にいたのは1年半です。
morich:きちんと採用も達成したのですか?
石井:そうです。
morich:すごいですね。
福谷:すごいですね。
morich:その人たちも今、活躍しているのではないですか?
石井:活躍しています。かなりキーマンの人間です。説明は差し控えますが、今でもいろいろな人間がかなりがんばっています。
morich:本当ですか。では、石井さんのおかげで今のリクルートがあるような感じですね。
石井:リクルートは、「あれオレだ、あれオレだ」と言いたがりますよね。
morich:そうです。
石井:「あれオレ詐欺」の宝庫ですからね。
morich:50万人くらいいるのですよ。
石井:私もいっぱい「あれオレ」がありますよ(笑)。
morich:「Hot Pepper(ホットペッパー)」もおそらく500人くらいが作っていますよね。
石井:「『Hot Pepper』はオレが作った」って人が、いっぱいいますね。
morich:そして、そこから営業に行けたのですか?
石井:行けません。東京の人事になりました。
morich:東京の人事ですか。
石井:「え!?」と思いました。
morich:それは相当な嫌がらせですね。
石井:私は、何人か部長を捕まえて、「僕はかなりやると思うので、僕を抜いてください」と言っていました。住宅情報の部長で岩崎さんという人がいたのですが、「お前が来てくれるならいいから、俺が人事に言っておくよ」と言われて、「やった!」となりました。
住宅情報は不人気部署だったので、不人気部署に行って、まずは住宅情報で結果を出したら異動しようと思ったのです。
morich:「そこなら行けるかも」と思ったのですね。
石井:しかし、異動シーズンになっても、私に内示が来なかったのです。岩崎さんに聞いたら、「ごめん、お前はアンタッチャブルだったわ」と言われて、「どういうこと?」と思いました。
morich:そうなのですか。結果営業には行けずに、気がついたら東京の人事だったということですね。では、リクルートの時代は人事のみだったのですか?
石井:もう、人事部しかやっていないです。
福谷:そうなのですか。
morich:営業は経験していないのですか?
石井:経験していないです。もちろん、営業研修はトップがいっぱいいて、営業研修は受けましたが、営業はやっていないのです。
morich:名刺獲得ですね。
石井:はい。だから私は、売上をもらう方法がわからないまま起業しています。人事部しか経験がありません。
morich:「リクルート=営業」という感じにみなさま思いますよね。
福谷:そう思いますよね。
石井:そうなのです。
morich:ではもう「辞めてやる!」という感じだったのですか?
石井:そうではなくて、テーマに出会ってしまって、本当に泣きながら辞めました。
morich:では、「辞めたくない」という感じだったのですね。
石井:そうですね。
morich:ちなみに、そのテーマというか、きっかけは何だったのですか?
石井:今でいう「地域活性」です。いろいろなエピソードがありますが、人事なので、けっこうどこへでも出張に行きます。
morich:学生ハンターですか?
石井:学生ハンターです。
福谷:なるほど。
石井:出張に行くのですが、やはりどこへ行ってもだんだんチェーン店ばかりになっていくのです。
morich:飲食店などですね。
石井:九州に行っても時間がないので、「サイゼリヤでご飯を食べて、ワタミで飲む」のような流れでした。悪くないのですが、これがどんどん進むと、だんだん九州に行く意味がなくなるのではないかな、と感じるのが1つです。
morich:地場のお店とかが良いですね。
消えゆく地元の店を救いたいという想い
石井:はい。2つ目は、私は関西に行って、寂しい思いをするのです。行きつけの定食屋があって、「おふくろの味」と書いてあるのに親父の定食屋なのですが(笑)。「まあいいや」と思って、よく食べていました。
そこのお店はとてもおいしかったのですが、宣伝も下手ですし、近くにファミレスができて、お客さまが減ったことがありました。
「何とかならないかな」と思っていました。当時、プロバイダー契約をするとホームページ容量がついてきたので、友人がおらず時間があったこともあり、そのお店のメニューをホームページで作ってあげたのです。
morich:作ってあげたのですか。
石井:メニューだけです。「かつ丼はいくら」とか、「お腹が減ったらこちらへアクセス」と、電話番号やホームページアドレス等の情報が書いてあるページを作って、チョキチョキ作りました。土日が暇だったためです。
morich:友人がいないので(笑)。
石井:はい。当時できたインターネットマンションに忍び込んで、「どんなものかな」ということで、ポスティングしました。
morich:ご近所の会社とかですか?
石井:近所です。そのお店がなくなるのは私にとって困るので、親父が「最近お客さまが減った」とか「もう無理なんだ」と言い始めたら、「せめて俺が大阪にいる間だけでも、もってもらわなくては」と思って、やったのです。
morich:なるほど。
石井:私が東京出張に行って帰ってきたら、親父が「石井くん、何してくれたの? マンションからお客さまが来てくれるし、注文が来るようになった」と言って、結局そのお店は息子さんに継いで今も残っています。
morich:石井さん、すごい功績ではないですか!
石井:それで何がわかったかというと、あのマンションを買った人も、終の棲家と思っているわけで、チェーン店があっても馴染みの店って欲しいではないですか。
morich:欲しいです。
石井:「地域に馴染みって欲しいよね」のような。インターネットがちょうどできたばかりだったのですが、インターネットの出現の意味は、資本とか関係なく、オリジナリティのある情報が流通できることなのではないかと思いました。
「Hot Pepper」はそうですが、画一的なクーポンマーケティングで値引き勝負するよりは、むしろ「ビールが500円高いかもしれないけれど、この店で飲む」というような感じにしていけばおもしろくなるし、日本の経済にとってもいいだろうなとか、そのようなことを考え出したら止まらなくなってしまったのです。
morich:「これは僕の生きる道だ」ということですね。
石井:「今やらなければ後悔するな」と思って、飛び出してしまった感じです。
morich:では、やることを決めて起業したのですね。
石井:「地域活性をするのだ」までは決めていたのですが、何を売って、何で儲けるかがノープランだったので、このあと地獄が待っているのです(笑)。
morich:ビジネスモデルまでは至っていないのですね。なるほど。しかし「こういうことをやろう」と思ったのですね。
石井:そうです。
morich:起業したのは1人でですか?
石井:1人です。
morich:そうですか。ではもう1人起業ですね。
石井:1人起業だったのですが、おそらく、私はリクルート史上初の副業です。
morich:そうですか。
石井:おそらく。記録になかったです。
morich:いながらですか?
石井:「僕はもう創業するから」と言ったら、私の上司が「登記してしまえばいいじゃん」と言ったのです。おそらく、本当にやるとは思わなかったのです。それで、登記してしまいました。ところが私は当時、「キャリアウェブ」というのを作っていたのです。
morich:異動ができるという制度ですね。
石井:「『キャリアウェブ』がやっとできたのに、君が辞めたら誰も運用しないよ」と言われました。確かに、私以外に運用する人はいなかったのです。「キャリアウェブ」をせっかく作ったのに、誰にも使われないままなくなるのは困るので、「キャリアウェブ」を運営して社員として残りながら、創業準備をしている時期が半年ほどありました。
morich:そうだったのですか。では、在職しながら会社を作り、起業したということですね。
石井:そうです。
morich:でも「やはりこっちをやっていこう」と思ったのですよね。
石井:やっていくと決めて、あとは退職準備です。有給消化ゼロのまま引き継ぎをして辞めるのですが、それまでにインターネットで地域のお店を紹介したいので、『ホームページの作り方』という本を買ってきました。
morich:「もしや」と私も思ったのですが、今までの経験の中で、そのようなWebサイトを作るとかはなかったなと思っています。
石井:なかったので、作り方を書いて、「MY PLACE♪MY PLEASURE」という名前を付けました。今考えるとダサくて恥ずかしいページを作り、カラー印刷をして、お店に飛び込むというところからの始まりですね。今も基本は変わっていないです。
morich:そうですか。しかし「こういうふうに儲けよう」という目標のようなものがあったのですか?
石井:「月1,000円にしよう」というのを考えました。なぜ1,000円にしたかの理由として、いろいろなお店に聞いていく中で、雑貨屋さんがありました。このような雑貨屋さんこそ載せてほしいと思って、「いくらなら払えますか?」と聞いたら、雑貨屋さんは利益率が低いから、どれほどがんばっても1,000円だと言われたのです。
読んだ本で見て「マーケットインってこういうことか」と思い、「1,000円でできるサービスを考えよう」と言い、売り出しました。本当に月1,000円のサービスを1人で飛び込んで売り歩くという、今考えると思い切っています。
morich:「何件やったら10万円になるのだ」という感じですよね。
石井:そうです。そのようなスタートでした。
morich:1,000円を軸とした料金体系としながらも、サービスはけっこう豊富ですよね。
石井:「月額1,000円でお店の情報を出せますよ」とは言っても、インターネットを見てもらわなければ仕方がないのです。
そのため、閲覧者を増やすために、夜は夜で「おたふくさん」という定食屋の経験、成果を見て、「地域の情報はここに載ってます」というカードを作り、毎夜マンションに飛び込んではポスティングし、昼は昼でお店に飛び込んで、取ったら取ったで情報を作ってと、ひどかったですね。
morich:ポスティングも、おそらく昨今ではなかなか入れないのではないですか。
石井:忍び込むのです。本当に目を盗むようなかたちです。しかし、それだけでは足りないため、当時はラオックスで展示されているパソコンがあったため、閲覧者を増やせると思ってブックマークを「まいぷれ」にしていました。
営業の合間にラオックスに行っては、展示されているパソコンのブックマークを全部「まいぷれ」にして帰っていました。心が折れてしまうため「正」の字をつけて「今日もちゃんとノルマ20台やった」などと管理していました。思考停止ですよ。
飛び込んでも必ずしも営業はできないため、数は100件と決めて、昼はラオックスのパソコンのブックマークを変えて、夜はマンションに飛び込んでいました。
morich:今、YouTubeを通じて視聴している方の中でも、「これから起業しよう」という方がたくさんいらっしゃると思います。そのような方々も、「上場会社の社長はどれだけ戦略的にビジネスを考えているのか」と思っていると思います。
石井:私よりはマシだと思いますね。末期は、ラオックスの店員が私を見て見ぬふりして、「またあいつが来てる」というような感じでした(笑)。
morich:「頑張れよ」という感じですね。そのような中で、ターニングポイントはあったのでしょうか?
石井:本当に、名刺を10箱撒いて1件も受注できませんでした。1,000件は飛び込んでいます。お金はみるみる減っていきます。
「何やってんだろうな」と思いながら雨に打たれて、カラー印刷した「まいぷれ」の案内もくちゃくちゃになって、心が折れかかった記憶があります。
morich:覚えているのですね。
石井:昨日のことのように覚えています。
morich:そこから、どのように挽回したのですか?
地域に“馴染み”を生むインターネットの力
石井:たまたま私が飛び込んだ先で出会ったのが、ご主人が早稲田大学の出身の奥さまです。「学習塾を家でやりたいんだ」「進学塾ではなくて、勉強についていけない子どもに教えたいんだ」とおっしゃる、佐野さんという方です。
チェーンの早稲田アカデミーではなく、「ご主人の出身が早稲田大学なので『早稲田アカデミー』として塾をやりたいんだ」ということで、「インターネットに効果があるならチラシは撒けないからやりたい」と言っていただきました。
私から「絶対に佐野さんの顔を出したほうが良いので、佐野さんの写真を撮らせてほしい」とお願いして、「嫌だ」と言うのですが撮らせていただき、思いを込めた原稿を作りました。
それを見て、生徒ではなくて大学生から「そのような塾でお手伝いをしたい」という電話を受けたと佐野さんが連絡をくれました。「石井くん、嘘みたいだけどあなたの『まいぷれ』を見て連絡くれたの」と言われ、本当にうれしかったです。
morich:そうですか。佐野さんもとても喜んでいたのですね。
石井:喜んでいました。やはり、このようなかたちで、お客さまに喜んでいただいた実例が1個できると、「間違っていなかった」となりますね。
morich:心が折れそうになっていた時に、確信が持てたのですね。
石井:そこから1件、2件、5件、10件、20件と、お客さまが増えていきました。
morich:コンセプトは間違っていなかったということですね。
石井:あれはギリギリでしたね。あの時、佐野さんが電話をくれていなかったら、心が折れて終わっていたかもしれません。
morich:そこでピボットしていたか、サラリーマンに戻っていたかということですよね。その時は社員もいたのですか?
石井:いませんでしたが、ある時、外資のコンサルにいた高校の同級生と「何やるの?」「俺はこういうことをやりたい」というやりとりがあり、「君の事業ビジョンはやばそうだけど、おもしろそうだから5年だけ手伝う」と言ってもらい、途中の5年間は手伝ってくれました。
morich:外資のコンサルと言えば、なかなかの人物ではないですか。
石井:おっしゃるとおりです。提案書がみるみるうちに立派になっていき、明らかに質が変わりました。しかし、それはそれで、彼の提案書を見せた人には「横文字ばかりで詐欺師みたい」と言われて、「地域ってこうだよな」などと思いました。
morich:いろいろな学習をしながら、その方と一緒に働いたのですね?
石井:「5年だけ手伝う」と言って、本当に5年間で去ってしまいました。
福谷:すごい方ですね。
morich:5年間は、着実に成長したのですね。
石井:はい。成長して、また1人、2人と増えていくような感じですね。
「まいぷれ」誕生から今へ
morich:ビジネスモデルとしては今につながっているのですね?
石井:今でも、地域の事業者の経営を支援して、情報発信を手伝ってサブスクリプション型でお金をいただくというビジネスモデルは同じです。値段帯もサービスも変わりましたが、そこは変わっていないです。
morich:いろいろなエリアがあったと思いますが、石井さんの中で思い出深い地域などはありますか?
石井:私たちは起業も本社も船橋なのですが、全国にお役立ちをしようと考え、船橋のために起業したわけではありません。したがって、フューチャーリンクという会社が全国に営業所を作っていくのは「何かダサいな」と思いました。
多様性を花開かせたいのだから、やはり各地域の運営者も多様性があって良いと考えた時に、今で言うフランチャイズのようなモデルがベースになっています。
そのため、本当は「フューチャーリンク」で起業しようと思ったのですが、運命共同体のような組織が良いと思い、後で「ネットワーク」を付けて「フューチャーリンクネットワーク」になりました。
パートナー1号目は島根県出雲市なのですが、やはり出雲での最初の出会いはすごく大きかったです。
morich:出雲に「パートナーをやりたいです」という方がいたのですか?
石井:当時、私が雑に作ったシステムも、それなりにこなれた地域情報システムになっていました。最初は彼らも、「地域を活性化したい」と言うことで、地域からお金を集めて、それを買いに来たのです。
提示されたお金は魅力的でしたが、「これは売り物ではない」「全国で運命共同体を作っていくから、運命共同体になるなら良いよ」という話になり、彼らが「よし、じゃあこの『まいぷれ』に乗るから」と言ってくれて、パートナー1号目となりました。千葉県以外の初めての地域でした。
彼らとの出会いも大きかったですし、かつ島根県は人口減少が大きな問題になっており、観光地と言ってもみな出雲大社までバスで来て、バスで帰ってしまいます。
そこの問題意識に付き合わせてもらうことで、我々の中で事業レベルも跳ね上がり、私の問題意識もよりクリアになった感じがしました。
morich:島根県に住んでいる方で、本当に地元を盛り上げたいという方々だったのですね。
石井:おっしゃるとおりです。地元でお金を集めて、「まいぷれ」のための会社を作ってくれて、パートナーとしてはもう10年以上です。
morich:ノウハウを提供し、上がった収益から何パーセントぶんが入ってくるということでしょうか?
石井:はい。「売上の一部をいただきます」という関係が各地域に広がっています。
morich:どれくらいの地域に広がっていますか?
石井:今は運営パートナーが160社で、各地の約900市区町村で展開しています。
morich:出雲の方のような、本当に地元を盛り上げたいという方もいれば、おそらくいろいろな温度感の方がいらっしゃると思いますが、そこはどのように開拓していったのですか?
石井:昔は1軒1軒飛び込んでいました。宣教師のつもりで電話でアポを取って、ローカル線を乗り継いで訪ねていき、「こういう事業で地域を変えるから、一緒にやりませんか」と口説き倒していました。
morich:今でこそオンラインがありますけどね。
石井:やはり、会いに行かないとわからないこともあります。
morich:私もコロナ禍前などは、地域から講演依頼があったら絶対に断らないと決めていました。秋田県の秘境のようなところから呼ばれて行くと、片道だけで7時間はかかります。ローカル線を1本逃したら3時間くらいは来ないというような大変さでしたが、そのような感じですよね?
石井:そのような感じです。昔の偉い人が言った「想像力は移動距離に比例する」という話は、本当にそうだなと思います。
何度も乗り継いで行って、今考えると非効率だとは思いますが、そのぶん学びもあったと本当に思います。
morich:そのようなかたちで、パートナーを増やしてきたのですね。
石井:1軒1軒、愚直に増やしてきました。
morich:パートナーが自分のエリアの情報を集めてくるのですか?
石井:ただ、自発的に動いてくれるほど甘くはありません。時には喧嘩し、時にはお尻を叩き、文句を言われるというかたちです。
morich:クオリティの差も出て来てしまいますね。
石井:ちょうど明日は、パートナーの代表者たちが集まる全国パートナーサミットという会議があります。
morich:パートナーにはどのような方がいらっしゃるのですか? 何か事業をされているのですか?
石井:それぞれが地域の事業を営んでおり、「建設業をやっているけどなかなか厳しいので、新規事業を探していた」「インターネットビジネスをやりたかった」などですが、基本は各地域で新規事業を始めて地域を元気にしたいという方が多いです。
最近では新規創業も多いです。3割くらいは新規創業で、UターンやIターンで地元で起業したいという人が多いです。
morich:そのような、ゼロイチでの立ち上げも支援されるのですか?
石井:します。
福谷:やりたい! 立ち上げたいです。
morich:やりたいですよね(笑)。福谷さんはチャンスじゃないかと思いました。地元は福井県ですよね。
おそらく今は、UターンやIターンで地元のために何かしたいという方がとても多いのではないかと思っています。そのような方でも「何をすれば良いかわからない」と言います。
石井:そうですね。ただ、この「まいぷれ」の事業構想自体が、基本的に愚直を前提としているため、「本当に愚直で簡単じゃないですよ」「楽しいし、意味はあるけど、大変ですよ」ということは必ず言うようにしています。
morich:今は、掲載料は1,000円から少し上がったのですか?
石井:もちろん、1,000円のままでは物理的に無理ですので、上がっています。今はいろいろなプランもあります。
morich:そちらがメインの事業になっていますね。その他には何があるのでしょうか。
石井:地域の活性化には、自治体との連携が必要だなと考えています。人口が減る以上は職員の数も減らさざるを得ず、税収も減るはずですが、国民や市民の要求が下がることはないですよね? そのような時に、官民協働は絶対に定着すると思っています。
したがって、川崎市と結んだ提携をきっかけに、現在の「まいぷれ」の体制を使って、国や自治体のお手伝いをするという官民協働は、もう1つの軸足になっています。
morich:例えばふるさと納税の支援でしょうか?
石井:おっしゃるとおりです。今、売上比率が一番多いのがふるさと納税の裏側支援です。寄付サイトの裏側から地域通貨や防災など、できることをいろいろ手がけていきます。
morich:リクルート時代の防災マニュアルもありますしね(笑)。
石井:そうですね(笑)。
morich:ふるさと納税では商品設計の支援などもするのでしょうか?
石井:はい。もともと、私たちは地域を足で歩いて情報発信するため、お店の情報だけではなく、他にも発信できるものはないかと思っていました。
そのような中でふるさと納税ができて初めて、茨城県行方市から「ふるさと納税を始めたいのだけど、どんな産品があるか、『まいぷれ』さんは地域を回っているから知っているでしょ?」「手伝って」と言われたことがきっかけです。
私たちがその地域の農家を回って、「このメロンは絶対ふるさと納税に出したほうが良いですよ」と声をかけます。
それまでみなさまはJAにしか出したことがなく、自分たちでは発送方法もPRの仕方もわからないので、私たちが取材して「楽天ふるさと納税」や「ふるさとチョイス」に載せて、出荷の方法を教えて、「寄付があったらここに送ってください」と指示をするような裏側業務を行っています。
福谷:いい仕事ですね。
埋もれた地域の宝を日の当たる場所へ
morich:確かに、地元にいると当たり前になってしまい、何に価値があるのか、意外と客観視できないことはありますよね。
石井:おっしゃるとおりです。とても価値があるのに今までは埋もれていたもの、例えばオカリナや竹ぼうきなどを作っている人はたくさんいます。これをふるさと納税に出すことで、日の目を見られれば良いですよね。これは価値がある仕事だなと思っています。
「残念」と言って良いのかわかりませんが、現状は寄付金集め合戦、通販合戦になっているため、やらせてもらっている以上、お仕事はきっちり行いますが、ロマンチックではないですよね。
morich:わかります。やはり私はエモいのが好きなので、その地域で育っているものなのかどうかしっかり調べます。このふるさと納税の支援が、本業の「まいぷれ」と連携できているということですね。
石井:そうですね。付加価値情報と呼んでいますが、やはり地域の情報を拾って、流通させて、地域を活性化したいということが、根底にある哲学です。
morich:これは本当にすばらしいですね。私も地元の人がどんどん少なくなって、小学生もいなくなってしまって、そのような意味では、本当に活性化させる何か手立てをしなければいけないというのは、みんな思っていることだと思います。
石井:絶対に地域活性化をしたほうが良いと思っていますよ。東京に集まっていたほうが効率的ではないかという文脈で「東京一極集中」「日本四大都市」と言われることがありますが、あれは間違っていて、例えば安全保障上の問題も1つにはありますが、マクロ経済学的に言っても、人口が減るのだから値引き競争をしている場合ではなくて、付加価値を増やしていかなければ駄目ではないですか。そのように考えると、分散して多様化しておいたほうが絶対に良いはずなのです。
したがって、地域活性化には経済合理性からも意味があって、何となく「お涙頂戴的な文脈」ではないはずなのです。
morich:将来のビジョンの中で言うと、例えばどのようなプロセスを考えていますか?
石井:やはり私たちは、いかに多様性のある街を作れるかだと思っています。学生からは「活性化する地域とそうではない地域の違いは何ですか」ということをよく聞かれるのですが、多様性があるかないかだと思っています。
例えば、これもたまに怒られるのですが、今でもけっこうニュータウン開発をしていますよね。今まで誰も住んでいなかったところに水道を引いて、道路を敷いて、新しい住宅を造ります。
不動産ディベロッパーが若い夫婦と子どもが手をつないだチラシを撒いて、典型例でペルソナを作って、みんなワーッと買います。
そうするとだいたい同じような収入層の、同じような年齢層の、同じような家族層が入居してきます。そして何が起こるかと言うと、小学校の入学時期になると小学校が足りなくなるのです。次は中学校が足りなくなります。人口が減っているのに小学校や中学校を作っているからです。
高校生になると外の地域に出るから良いのですが、その頃には小学校が余り始めるようなことも起きてきます。
入居したばかりの時は、若い親が多いため、お祭りなりなんなりで盛り上がりますが、みんな同じような収入、同じような職業だから、人の入れ替わりがなく住人が全員老けていきます。そうすると、作ったお祭りの引き継ぎ人がいなくなり、だんだん寂しくなっていきます。
morich:子どもたちが違うエリアに行ってしまうから。
「多様な人が集まる街」が持続する理由
石井:一気に街が老け込んでいきます。「画一性の弊害」です。一方で、高円寺のような街には多様性がありますよね。さまざまな人たちがいるし、汚いビルも新しいビルもあって、おそらく少し行けば畑があります。このような街のほうが持続性があります。
例えば、丸の内周辺の大きなビルでは、テナントも大規模な資本力のあるお店ばかりです。あのようなところで、小規模な「腕を磨いたからイタリアンのお店を作ろうぜ」というのは難しいと思いますが、高円寺のような街ではできます。
今度は、そのような人たちが活躍しやすいような情報流通の仕組みを作ったほうが良いと思います。「Hot Pepper」は古巣ですが、「お金があるほうが情報がたくさん出せる」ではない世界観を作っていかないと駄目だなと思っています。
morich:そのような意味での多様性ですね。
福谷:だんだん政治家の方とお話をしているような感覚になってきました。
morich:本当ですね。将来は政治家になるのではないでしょうか?(笑)
ビジネスの先には、やはりルールを作るほうに回らないと、結局は限界があるということをおっしゃる方はいますね。それはやはり、地域を元気にする上でも同じことだと思います。
福谷:政治家を目指されていますか?
石井:ぜんぜん目指していないですよ。それは向き不向きもありますが、私はやはり日本が好きで、日本と世界をつなげて、この少子高齢化のモデルは輸出していきたいです。
morich:同じような課題を中国も抱えています。
石井:そこにわくわくしますね。
morich:シナジーと言うか、横展開しなければいけないエリアがまだたくさんありますよね。
石井:すべき仕事がたくさんあります。
morich:今後はパートナーも500人、1,000人と増やしていかなければいけませんね。おそらく、地域でがんばる方々はたくさんいますが、それでもまだ知らない方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
石井:おっしゃるとおりです。やはり「地域を活性化する」という話から、ボランタリーの文脈が抜けきっていないのです。儲けないと続けることができません。
morich:サステナブルではないですね。自治体と連携はしますが、助成金だけで活動しては駄目ですね。
石井:助成金だけでは駄目ですね。ビジネスとしてしっかり便益を提供して、自治体からも対価をいただく関係にして、対等ではないと続けられません。
morich:例えば、石井さんが関わったことで、大きく変化したエリアなどはありますか?
石井:多かれ少なかれ変化は起きていますが、例えば1号目の出雲は変わった気がします。船橋も変わったと思います。
morich:やはりそこには、先ほどおっしゃったように、共通点として志高いパートナーがいたり、活性化するノウハウがあったりするのでしょうか?
石井:まずは、その街が危機意識を共有しているかどうかは大きいと思います。そのため、東京23区内はまだ人口が増えている自治体もあり、「地域活性化」という感じはありませんよね。
私は常々、「日本には山手線の内側とそれ以外の2種類がある」と話します。山手線の内側は活力があっても、外へ出たら、もう明らかに人が減っていっています。
その時に何が必要なのかという問題意識があって、そこにきちんと道筋を示せる、あるいは動けるプレイヤーがいるかどうかが重要なのだと思います。
morich:まさに多様性ということですが、コンテンツもバラバラですからね。石井さんには今後の夢のようなものはありますか? 会社としても、プライベートとしても。
福谷:とても気になりますね。
海外展開への挑戦、次世代へバトンを渡す決意
石井:まず1つは、海外での展開です。少子高齢化で日本経済には未来がないと言っているような経済学者が嫌いでした。私もおじさんになってしまったので、そのような日本を若者に引き継ぐのは無責任だと思っています。少子高齢化の先進国として、日本には輸出できるノウハウがあると思っています。
もう1つは、まだまだ元気ではありますが、徳川家康に憧れがあるのか、フューチャーリンクネットワークの次世代にバトンを渡していくことです。
morich:いつかは、起業家や創業者の次なる仕事になりますね。
石井:そうですね。まだまだやりたいことはたくさんありますし、引導を渡されるようにバトンを渡して、悔しがりながら追い出されるのは寂しいですが、かえってそれくらいのほうが、死ぬ時に「嬉しいな」と思いそうだなと感じます。
morich:ちなみに、海外についてはどのエリアという具体的なものはありますか?
石井:あります。少子高齢化に悩んでいるということ、加えて、英語・スペイン語・ポルトガル語が「母国語ではない国」ということが対象になります。
morich:経済合理性を考えると、英語の国となりそうですが、違うのですね。
石井:我々が日本のノウハウを活かせるのはそのような国かと思っています。そのようなところにはソリューションが行き渡っていないと思います。
例えば、日本で提供されるアプリでも、最近は日本語版がないアプリもありますよね? そのような画一化が進んでいますが、言語ごと、あるいは文化ごとに伝承もあるわけです。
まずはそのような国から、我々が培ってきたノウハウを提供して、展開していければと思って狙っています。
morich:確かに、国によってはどんどん人口が減っているところもありますね。今後の夢については、海外への展開と、バトンを渡すことなのですね。
石井:あとはAIでしょうか。
morich:バトンを渡すことについては、組織作りに関わるところで、リクルートにて人事もされていましたし、今すでに社内で行っていることはありますか? これだけテンションも高くいらっしゃるので、他の社員の方々がどのようなカルチャーになっているのかは気になるところです。
石井:わかりませんが、私はみんな元気に明るく楽しく働いてくれていると思います。
morich:何かのメディアに、とても優秀な社員を確保して、育成しているというようなことが書いてありました。
石井:それはそのとおりです。私は優秀だと思っていますし、「優秀だ」と言い続けていますが、裏は取っていません。彼らが本当に優秀かどうかはわかりませんが、私の仲間は全員優秀だと思っています。
morich:理念をしっかり伝えて、この「地方創生」的なビジネスに共感する方たちであれば、温度感は一緒ですよね。
石井:そうですね。ただ、働き方やコミュニティ、生き方に関する共感はあっても、地域活性化に対して入社の時にどこまで興味を持っているかは、けっこうまちまちだと思います。実際に、笠原も地域活性化に興味はなかったと思います。
morich:本当ですか。そのようなものなのですね。
石井:地域活性化というテーマはあまりにも魅力的なので、入ってきてくれたら興味を持ってもらえる自信はあります。ただ、入口の部分では、「この環境で仕事をしたい」「このようなコミュニティでチャレンジしたい」という人がいても良いと思っています。
morich:逆に、それが会社の中での多様性で、「地域活性化やりたいです」という人たちばかりだと、思考が画一的になってしまいますよね。
石井:志望動機に対する考え方もリクルートと同じです。リクルートも、志望動機関係なく優秀だと思ったら引っこ抜きますよね。それと同じです。今気づきました。
morich:逆に「リクルートに入れればいい」という考えが強い人ほど落とされますよね。
石井:そうですね。今、初めて自分で気づきを得ました。
morich:実はリクルートのことをよく調べていて、本当に志望動機が完璧というような人ほど落ちてしまいますね。
石井:そもそも志望動機は聞きませんからね。
morich:「リクルートのこと知らない」というような人が入社していますよね。
福谷:それでは、いったい何を見ているのですか?
石井:当社ではやはり地頭と、あとはモチベーションの自家発電能力があるかどうかが大事だと考えています。「モチベーションがないんです」と言われても、「それは自分で何とかしてよ」という話です。
morich:リクルートでも「自走する」などと言いますよね。
石井:加えて、やはり私たちは、哲学や社会的正しさのような「職業倫理感」とでも呼ぶべきものを求めます。この3つでしょうか。
morich:チーム作りの部分で、何か大事にしていることはありますか?
石井:フューチャーリンクマインドセットというものがあって、当社のコミュニティではこれをルールにしています。例えば当社の社是である「利益がなければ生きられない、理念がなければ生きる価値がない」は、もともとは私が飲んでいる時に言っている言葉でした。
morich:そうなのですね(笑)。
理念をずらさない自信はあったのですが、どちらかと言うと当社は、利益をおざなりにして儲からない時期が長かったのです。「理念がなければ生きられないのはそうですが、利益がなければ生きられませんよね」と、そのつもりで書きました。両輪が必要ではないですか。
例えば、フューチャーリンクマインドセットとして「自由と個人の責任」「明るく楽しく元気よく働く」というような、私たちが最低限守らなければいけないルールは紙に書いてあるのですが、逆に言うとそれ以外は自由みたいなものです。
morich:自由ということの意味は、先ほどの「自走する」ということでしょうか。
花束理論 多様性を束ねるチーム哲学
石井:私の造語のためまだ流行っていないのですが、花束理論というものがあります。花束はいろいろな花があって、まとまっていてきれいで、もらうとうれしいのですが、あの花束がなぜきれいなのかと言うと、きちんと束ねてあるからだと思います。
あの束がなくなったら単なるカオスではないですか。したがって、やはり多様性を花開かせるためには、花束を結束するバンドが必要だと思っていて、「花束理論」を流行らせようと思っています。流行らなくても良いのですが。
morich:ロジック的には確かにそうで、ひときわ背の高い花もあれば、いろいろな種類の花があるからこそ、きれいな、唯一無二の1つの花束になるわけですね。
石井:そのため、フューチャーリンクマインドセットには本当に少しのことしか書かれていなくて、私は基本的に自由が好きですし、自由なコミュニティが良いと思うので、「そのぶん、結束バンドはお互いに確認し合っていこうね」ということです。
morich:とても良い会社ではないですか。一緒に仕事をしたくなってしまっている方も多いのではないでしょうか。個人としての、ご自身の夢はどうですか?
石井:私の夢は、やはり死ぬ時に「良い人生だったな」となりたいなと思っています。そのような歳ではないですが、やはりお金のためだけではもうがんばれないと思っています。
しかしながら、お金がなければ何ともなりませんし、社員のみなさまにもっと還元したいと思っているので稼ぎたいものの、「お金のためではがんばれないな」と思ってしまいます。
もちろん、ファクトベースでしたいこともあるし、いつかフューチャーリンクネットワークを追い出されたら、「もう一回起業してやろう」とは思っています。
morich:なるほど。「これをやる」ということはありますか?
石井:あと数年で海外展開をしたいとか、バトンを渡したいというのはあります。
morich:その時その時を、今を本当に大事にしていくということですね。スティーブ・ジョブズの考え方ですね。
福谷:お話を聞いていたら、もう1時間経ってしまいましたが、ここでもう一度パワーをいただきたいと思っています。今日の冒頭に「若さがある」というお話もさせてもらったのですが、これの答えが見つかりました。やりたいことがあって、没頭して、がんばっている人たちは若いです。
morich:やはり「やりたいこと=WILL」をきちんと持って、それを愚直にやり切ることですね。
福谷:大切だなと思います。「悩んでいる暇なんてないぞ」と。ずっとお話をされていたので、ビールを飲まなくて大丈夫かなと心配でした。喉ガラガラでしたから(笑)。
morich:やはり熱いです。私も、地方は本当に元気になってほしいなと思っており、自分の生まれ育った故郷でどんどん人が少なくなって、商店街がなくなっていて、デートをしていた場所がなくなって本当に寂しいので、石井さんがんばってください。
福谷:非常に勉強になりました。
morich:もう大応援ですね。これは、応援の証は投資でしょうか?(笑)
石井:そうですね。今、激安ですので、ぜひ買ってください。
morich:いくらで買えてしまいますか?
石井:絶対にお得です(笑)。
morich:この番組に出ていただくと、もれなく株価が上がるというジンクスがあります。
石井:今、客観的に私が私ではなかったら、絶対に購入しています。
福谷:それは大事ですよね。
morich:これの説得力はとても大きいですよ。やはり地方を元気にしたい、自分の故郷を元気にしたいと思った時に、自分でできることはすぐにはないと思うので、ふるさと納税で浮いたお金をここに、ということですね。
石井:そうですね。もちろん理念はありますが、これからは利益も爆上がりしていきます。フューチャーリンクネットワークの株を買えるみなさまがうらやましいです。
morich:そうですよね。それが今日のお礼ということで、買います。
福谷:本日もあっという間の1時間でした。いろいろと学びもあり、刺激もいただき、我々も明日からまたがんばろうと思いました。本日はお越しいただき本当にありがとうございました。
石井:ありがとうございました。
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