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コロンビア・ワークス株式会社146A

東証スタンダード

不動産業

中期経営計画ーPL

水山直也氏(以下、水山):コロンビア・ワークス株式会社、取締役CFOの水山です。よろしくお願いします。

Ken氏(以下、Ken):1UP投資部屋のKenです。御社は直近で、決算と同時に中期経営計画も発表されました。今回はそれらについて、いくつかご質問します。

御社はもともと高い成長率を示されていましたが、中期経営計画では営業利益CAGRを25.9パーセントと設定されています。大前提として、ビジネスモデルが霞ヶ関キャピタルに似ていると感じますが、差別化されている部分やファンド比率の違いを教えてください。

ファンド型開発スキーム

水山:投資家のみなさまとお話しすると、「霞ヶ関キャピタルに似ていますね」とよく言われます。類似点としては、例えば当社は開発時に自社のB/Sを使わず、ファンド内のB/Sの中で開発を進め、竣工後に売却することで売却益を得ています。そのようなところは似ているかと思います。

ただし、大きく違うところとして、霞ヶ関キャピタルはアセットタイプを比較的絞っており、冷蔵・冷凍倉庫やホテルなどに注力されています。

一方、当社はそれぞれの立地において、「何が一番付加価値を高められるか」という観点で開発を行っており、その結果、住宅やオフィス、ホテル、物流も手掛けています。このように、アセットタイプが豊富で多様にあるところが大きな違いの1つです。

また、霞ヶ関キャピタルの場合は、手掛けるプロジェクトのほとんどで自社のB/S外で開発を進めるという特徴があります。しかし、当社はバランス取りながら、同じようにファンドを利用して開発を進めるものもあれば、自社内のB/Sを使うものもあります。

数としては少ないものの、他のデベロッパーとともにそれぞれの長所を活かし、共同で開発するタイプも豊富に持っているところも違いといえます。

Ken:例えば、冷蔵倉庫などの特定の開発では場所が絞られることもあるかと思います。御社の場合は、ある程度いろいろな場所でさまざまなものを開発できるため、そこが強みとなってくるということでしょうか?

水山:アセット自体の対象は広く取っており、特にレジデンスを中心に津々浦々で開発しています。

Ken:今回の中期経営計画に関しては、最終的なファンド比率40パーセントを目指し、自社開発は6割というバランスが、御社にとっては良いということですね。

水山:率直に言うと、自社開発する場合の当社の強みとして、「この場所でこのようなアセットを作ると、最も付加価値が高まるのではないか」という提案を行っています。その結果、非常に大きな開発利益を確保できています。

理論的には、すべてを自社開発にすれば利益成長は大幅に拡大します。しかし、会社経営においては財務バランスなども考慮する必要があります。

そこで投資家のみなさまに参画いただき、開発利益を分配しながら、開発速度をさらに上げていきたいと考えています。今回の戦略では案件数の増加を目指しており、ファンド型を増やすことで当社が携われる開発数を2倍、3倍に拡大していくことが狙いです。

Ken:ファンド型は自社開発よりも効率が悪いという見方もありますが、投資家の参画や借入によるレバレッジなどの効果によって、より多くの案件を手掛けられるということでしょうか?

水山:例えば、自社開発であれば利益をすべて獲得できるものを、投資家に参画いただくことで分配する必要が生じるため、P/L上では利益率などが若干低下する傾向はあると思います。

ただし、おっしゃるとおり、同じ期間で進められる案件数が2倍や3倍に増えることでフォローできるため、効率は良くなっていくと考えています。

Ken:中期経営計画では営業利益CAGR25.9パーセントを目標としていますが、ここ4年ほどを見ると48.4パーセントです。

こちらの目標設定について「今後も大きく伸ばしていくのか」という見方と、「もっと高い目標を設定できるのでは」という見方があると思います。そのあたりの考え方について教えてください。

水山:営業利益CAGRは当社が最も大切にしている経営指標で、過去の実績は40パーセントを超えています。

今回の25.9パーセントという数字は、中期経営計画として投資家のみなさまに約束するために設定したものですが、社内ではより高いCAGRを目指していくことを、日々のオペレーションで意識しています。

これは昨年IPOを行った際に「保守的すぎるのではないか」とよく指摘されました。しかし、達成できない約束をして落胆されるよりも、確実に実現できる範囲で約束しつつ、より高いCAGRを目指すのが当社のカルチャーです。

Ken:社内の目標としては、もう少し高い数字を見据えているということでしょうか?

水山:少し言い訳のように聞こえるかもしれませんが、当社のような業種業態では、不動産開発は仕入から始まり、プロジェクト完了までに2年半から3年ほどかかります。

その中で業績管理を行いながら「目標を上回れる」とは思いつつも、2年後、3年後、そして5年後、10年後の成長を見据え、安定的な発展を実現するためにどの指標を成長させていくべきかを常に検討しています。

今のプロジェクト単体ベースでいえば、より高いCAGRは目指しているものの、今期の業績のみ良くて来期は悪化するような経営は、永続的な企業としては適切ではないと思います。したがって、長期的なバランスを保ちながら事業を進めていきたいと考えています。

Ken:来期、再来期も見据えてコントロールしながら、まずは中期経営計画の数字を確実に達成していくということでしょうか?

水山:おっしゃるとおりです。

事例:バリューアップによる賃料収入UP

Ken:御社の場合、テーマ型開発が1つの特徴だと思います。こちらのスライドはバリューアップの事例ですが、テーマに沿って開発する上で、競合の進出状況や脅威になりそうな点について教えてください。

事例:テーマ型不動産開発による周辺相場より高い賃料プレミアム

水山:当社は土地を開発できるような情報を得ると、そのエリアの住民特性や利用者層、関心を持つ人々など、徹底的なエリアマーケティングを行います。

その結果、例えば、健康意識が非常に高くランニング人口が多い地域や、スポーツジムが周辺に多いエリアだとわかれば、入居者全員が使い放題のスポーツジム併設型マンションを開発します。

特にレジデンスではわかりやすいですが、創業以来、入居者の健康維持のためのサービスを付加価値として提供できる物件作りを続けています。

当社は一つひとつをオーダーメイドで、「この場所にはこのようなものが適しているのではないか」という観点からレジデンスにサービスを付加しています。これはホテル開発においても同様です。

単に作るだけでなく、「海外のお客さまは日本のこのような点に関心を持っているのではないか」という視点から、例えば「アート作品の中に泊まる」というコンセプトで現代アーティストに1部屋丸ごと作ってもらったこともあります。

2013年の創業以来、当社はこのようなアプローチを12年間ほど続けてきました。約3週間前に三菱地所がペット共生マンションを作ることを発表するなど、大手もテーマ型開発に参入し始めていますが、我々はこれを非常にポジティブに受けとめています。

Ken:そうなのですね。

水山:現在はさまざまなメディアが幅広く浸透した結果、特色あるマンションを開発して入居者を募集すると、SNSを通じて入居していただくケースが多々あります。

一方、従来の住居探しでは、駅からの距離や賃料といった条件が中心でした。しかし、大手や競合が多く参入し、テーマ型商品を数多く作ることで、「ペットと一緒に住めるマンション」といったより詳細な条件での検索が容易になります。

我々だけの力ではスピードに限界がありますが、競合他社も同様の商品を展開することで、選ぶ側もより積極的に自分に合った住まい方を真剣に探すことも起こり得ます。

そのため、大手デベロッパーをはじめ、テーマ型開発や特色ある住まい作りへの参入は大歓迎です。もちろん、当社がこれまで培ってきた知見を活かし、より良い商品開発を続けることが前提となります。

質疑応答:ファンド型開発の収益モデル、求めるパートナー像について

荒井沙織氏(以下、荒井):「ファンド活用型の開発スキームの収益モデルと、想定しているパートナー像を教えてください」というご質問です。

水山:現在進めている不動産開発型ファンドへの出資者は、比較的事業会社が多いです。特色あるホテルやレジデンスを開発するなど、当社と比較的近い領域を本業とする企業が中心となっています。

そのような企業からは「このような開発をしてくれたら、すごくおもしろいのに」という視点で出資いただくことがあります。また、開発利益が見込めるため、不動産運用の一環として参加する投資家もいます。主に事業会社やインフラ系企業が開発に参画するケースが多いと考えています。

荒井:収益モデルについてはいかがでしょうか?

水山:基本的には、当社が土地や既存の建物を取得し、「この立地ではこのような開発が付加価値を高める」という観点で自社のB/Sで進めていた開発がそのままSPCに移ります。取り組み内容自体はあまり変わりません。

ただし、B/Sの見え方は大きく変わっています。自社のB/Sを使って開発する場合、建物を完成させて他社に売却する時点で初めて売上・利益が計上されます。

一方、ファンド型開発では、当社が土地を取得し、エリアマーケティングを実施して付加価値の高い企画を立案し、建設を行うゼネコンなどを全部セットアップした上で、そのままファンドに移します。そのタイミングで、土地と企画の売上・利益が立ちます。

期間としては、土地購入から1年以内にファンドへ移行するため、自社開発の2年半から3年ぐらいかかるプロジェクトに比べ、大幅に時間が圧縮されます。

ファンド移行後も、当社がプロジェクトマネジメントを担当します。例えば、土地を掘ってみると、地中から瓦礫が出てくるなどの現場でよく起こる問題にも対応します。SPCに移行後も、開発期間中は当社がプロジェクトマネジメントを継続し、その対価を業務委託費(コントラクションマネジメントフィー)としてファンドからいただくモデルです。

ファンド移行時も、単に売り切ってプロジェクトマネジメントだけを請け負うと信用問題が生じるため、オフバランス可能な限度まで出資しています。具体的には、100億円のプロジェクトであれば5億円までは出資します。

Ken:5パーセント程度ですね。

水山:その割合で出資し、共同開発を行い、売却時には出資分の配当を受け取ります。収益は期初の土地売却益、期中のコントラクションマネジメントフィー、そして竣工後または売却時の開発利益として分散化されるモデルとなっています。

質疑応答:高利益率の要因、今後の維持強化策について

荒井:「業界平均を上回る高い利益率の要因と今後の維持強化策について教えてください」というご質問です。

水山:一番の源泉は開発企画力だと思っています。定量的に言うと、例えば「四谷エリアでマンションを作ると、坪賃料はだいたいこのくらい」といった相場感は一般的に把握できるものです。

我々はそこからさらに踏み込み、実際にこのエリアに住む人々が何を求めているのかを考えます。例えば住民がジムに通っていたり、テレワーク用にワーキングスペースを借りていたりする傾向があれば、それらの機能を居住スペースに組み込んでしまいます。

これにより入居者は外部で同様のサービスを利用するよりコストを低減できる一方、当社は通常の住居より高い賃料を設定できます。このようなバランスを基に、当社は企画を提案しています。

結果として、通常の賃貸物件より周辺相場を上回る賃料設定が可能となり、これが当社の企画力の大きな強みとなっています。そのため売却時にも、不動産収益率が高くなるところが当社のコアな部分です。

Ken:他の物件よりも賃料を高く設定できる背景には、マーケティング力もかなりあるということでしょうか?

水山:おっしゃるとおりです。

質疑応答:テーマ型開発市場のシェア獲得シナリオについて

質問者:コモディティ市場が約210兆円の規模を持つ中で、テーマ型開発はその10パーセントにあたる20兆円と想定されています。御社はそのうちの10パーセントを獲得することで、運用資産2.1兆円を目指すとのことです。この2つの「10パーセント」について、それぞれの考え方やシナリオを教えてください。

水山:現状、オフィス・賃貸住宅・ホテルにおいて、約210兆円規模の収益用不動産の売買が繰り広げられています。先ほどお伝えしたとおり、テーマ型開発には大手も参入してきましたが、海外ではウェルビーイング不動産やそれに近いテーマで、ニューヨークやロンドンでも開発が進んでいます。

そのような市場はCAGR15パーセント程度の速度で成長しています。日本国内においても、約20兆円規模のテーマ型開発市場が存在していると思います。そのうちの10パーセントは、目標設定として十分にクリアできる数字だと考えています。

当社は創業当初からこの市場に取り組んできました。先駆者利益というわけではありませんが、このマーケットの10パーセントのシェアを獲得できると自信をもって言えます。

質疑応答:資金調達を実行する可能性について

質問者:営業キャッシュフローのマイナスが続いており、短期借入金も増加していますが、今後、公募増資などを行う可能性はありますか?

水山:営業キャッシュフローが常に赤字になっている要因は、当社のビジネスモデルに起因しています。成長を続ける不動産企業では、棚卸資産に2年半から3年ほどかかるものが滞留するためです。

ある程度成長が落ち着けば別ですが、成長を続けようとすると、どうしても営業キャッシュフローが赤字になってしまうことは構造上の問題だと思っています。こちらについては、「できれば黒字のほうがいい」という気持ちはあるものの、特に危機感は抱いていません。

また、ご指摘のとおり、成長を続ける限り、ファイナンスの制限の中で自己借入の割合が増加しています。これは問題だと認識している反面、バランス次第では自社での借入を増やして大きく投資することで、利益成長がさらに加速します。

本来であれば、自己資本比率を多少犠牲にしてでも積極的に借入を行い、成長を加速させたいという思いがあります。ただ、銀行がどこまで対応してくれるかという懸念もあります。

そこで施策として、先ほど説明したファンド型開発の比率を高めていくことにより、投資家のみなさまからのご支援をいただき、開発件数を2倍、3倍と増やして成長を加速したいと考えています。このように、自己資本はなるべく抑えつつも、成長を継続するための対策を講じています。

一方、エクイティファイナンスによる自己資本比率向上という観点では、今のところそれを前提とした計画はありません。

中期経営計画でもご説明していますが、「25パーセントと言わず30パーセント、さらには40パーセントの成長を達成したい」というのが本心です。そこまでの利益成長を成し遂げるには、どうしてもその元手となるキャッシュが必要になります。

より大きな成長につながる投資機会を見つけた際には、エクイティファイナンスという選択肢も排除できないと考えています。

質疑応答:テーマ型不動産開発の強みについて

質問者:ファンド型の不動産商品は新しいものではないと思いますが、テーマ型不動産開発における御社の強みをお聞かせください。

経営陣の経歴を拝見すると不動産出身の方が多いようですが、テーマ型不動産開発の投資において他社よりも優位性を持てる理由は何でしょうか?

水山:経歴に基づいてお話しすると、代表の中内も私も、もともとオリックスという会社に勤めており、そこから独立・創業しました。特に中内は、当社設立前の最後のキャリアとして、オリックスグループの審査部門でグループ全体の不動産アセットの審査を担当していました。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、オリックスグループは多岐にわたる事業を展開しており、アセットタイプも住宅のみでなく、さまざまな事業に投資を行っていました。

私は主に商業施設の開発を手掛けていましたが、そこで各事業の綿密な事業分析を徹底的にたたき込まれました。不動産そのものの価値だけでなく、そこから生み出される売上高や事業構築における事業計画の精査は、当社の設立後も引き継がれている強みです。

単に不動産を購入して開発するのではなく、テナントなど現場で事業を行う方々に、どの程度の賃料負担率が求められるのか、サービス提供のための建物設計の工夫によって、売上高をどこまで向上できるのかという観点で開発しているところは、テーマ型開発に特化できる自信と強みになっています。

質問者:他社にはその強みがないということでしょうか?

水山:おっしゃるとおりです。

質疑応答:付加価値のあるマンション賃料設定について

質問者:プラス30パーセントの賃料ということは、付加価値のあるマンションを販売されているのだと思います。

例えば目黒マンションの場合、坪賃料が2万2,200円で、37平米で約11坪のワンルームマンションだとすると、月額で24万4,200円になります。そのうちの30パーセント、つまり7万3,260円が、目黒周辺の一般的なマンションより高い部分ということになるかと思います。

先ほど資料ではさまざまな付加価値のある不動産が紹介されていました。私の田舎の近くにも「車と一緒に住む」不動産があります。御社は趣味やヘルスケアに特化したマンションなどを展開されています。確かに付加価値はあるものの、東京の感覚はわかりませんが、個人的には7万3,260円の追加負担は高いと感じます。

これは借り手や買い手にとってリスクではないでしょうか。賃料の上乗せ率を20パーセント程度に抑えれば、より多くの方が検討するのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

水山:必ずしも一律で30パーセント高く設定しているわけではなく、プロジェクトによって幅があります。付加価値に応じて、周辺相場よりも20パーセントから30パーセント高い賃料が実現できるということです。

当社では同等のサービスを受けられる代替手段との比較を重視しています。特に東京では、便利な外部のサブスクリプションサービスなどが多数あります。

そこで、「一般的な住宅に安い賃料で住み、プラスで趣味に合ったサブスクを外部から選んだ場合」と比較調査し、その結果「それらを足しても、当社の物件のほうが合計金額が安くなる」という、入居者にとってもメリットのある商品を提供しています。

質問者:私は千葉県の田舎に住んでいますが、近くに似たような物件があります。車が室内に入るわけではありませんが、マンションのカーポートが非常に凝っていて、それぞれが好きな車を見せるようなコンセプトのマンションが最近できました。

このような事例を見ると、ジムなど一部の施設は都会でも家の中にあっていいと思いますが、車のように場所を取る趣味に特化した場合、「交通の便利が良ければ、田舎のおしゃれなマンションも選択肢になる」と考える人もいるのではないでしょうか。

そのような潜在顧客に対し、どのようにアピールされているのですか? すべてが30パーセント増しではないとのことですが、それでも賃料としてはかなり高額になると思います。

水山:確かにさまざまな要素があります。例えば、本当に「車を眺めたい」という趣味だけのための住まいであれば、おっしゃるとおりだと思います。当社も世田谷に「愛車と住めるマンション」を開発していますが、この物件の魅力は駅から5分程度という非常に好立地にある点です。

例えば、港区などにお住まいで、車が趣味で2台、3台と複数所有されている方向けに、当社が用賀に開発した物件では、平置きで車を2台置け、それを眺めながら暮らせるようになっています。交通の便も良いため、アクセスしやすく、なにかあった時にも趣味としても使うことができます。

質問者:23区内ということですね。

水山:物件によって異なりますが、今回開発したコンセプトでは、利便性の高いエリアでの開発こそ価値があるという考えに基づき、マーケティングを行いました。

質疑応答:短期借入金の長期固定化の可能性について

質問者:短期借入金を長期に固定化することは考えていないのでしょうか? もしそうであれば、その理由も教えてください。

水山:借入金の多くはプロジェクトに紐づくかたちで調達しているため、短期借入金として計上されているものは、売却が1年以内で決まっているものであり、長期借入金は1年以上先の借入金に紐づいているものとなっています。

長期借入が短期に変わっていく、つまり売却が早期化されるケースはありますが、逆に短期借入金を長期に移行させると、いわゆる繰延べのかたちで資産を後ろに固定化させることになるため、そのような方針は考えていません。

質疑応答:各テーマ型不動産開発のシリーズ化について

質問者:テーマ型不動産開発が非常にすばらしいと思います。私もいつか余裕ができたら車と一緒に住める物件に住んでみたいです。

このような物件をシリーズ化する予定はありますか? パイプラインにしても、もう少し宣伝すれば御社の知名度も上がります。また、「ここに住みたい」と思う人は必ず増えると思います。

現在の開発チームの人数や今後の人員拡大計画など、これからの展開についても教えてください。

水山:我々も1つのプロジェクトを終えるたびに「この企画は良かった、横展開したい」という思いに駆られますが、新しい物件を見ると「この場所なら別のコンセプトのほうがいいのではないか」と、また違う展開で開発してしまうことが多くあります。

実は、スライドに掲げているテーマ以外にも、社内では常にディスカッションをベースに「このようなテーマで作ったらおもしろいのでは」というアイデアが100件ほど挙がっており、「あれも開発したい、これも手掛けたい」となっている状況です。

おっしゃるとおり、「車と一緒に住む」というテーマの横展開も、適した場所であれば積極的に進めていきたいと思っています。一方で、当社は常に立地特性を掛け合わせて検討しているため、結果的に違うテーマになることも多々あります。

現在、投資部隊として、約20人でこのようなテーマ型開発を遂行しています。そして、2027年までの中期経営計画では、1件あたりの規模拡大を最も重視しています。

一昨年ぐらいまでは1件あたり10億円前半だったものが、今年では約20億円まで成長している状況です。着実に1件あたりの規模は拡大しており、今後は30億円、40億円規模を目指しています。

そのため、人員拡大によって売上を伸ばしていくというよりは、1件あたりの単価を上げることに注力しています。人数については、現状維持というわけではありませんが、大幅な増員は考えていません。

補足として、当社には不動産開発以外にも長期的な経営目標があります。具体的には、今年から始めたアセットマネジメント事業や賃貸管理事業など、開発物件の運営ビジネスの拡大も計画しています。

この運営部門はかなり人手を要するビジネスのため、グループ全体では人員がある程度急増することになりますが、その大部分は不動産運営事業に関わる採用になる見込みです。

質疑応答:自社開発とファンド型開発の仕分けについて

質問者:先ほど自社開発とファンド型開発の2通りがあるとお話しされていました。この最初の仕分けについて、最初にファンド側からの需要があってそれに合わせて開発するのか、それとも一度自社で土地などを仕入れてから自社開発かファンド投資かを判断されるのでしょうか? 明確な判断基準があれば教えてください。

水山:まず、自社開発であってもファンド化であっても、当社グループが行う作業自体は変わりません。

判断基準としては、工期の長さや、他に仕入れるべき案件などの要素を考慮しながら、財務バランス等を見て決めているケースが多くなっています。「この物件だから」という特定の理由があるわけではありません。

最近の傾向としては、ホテル開発案件などは開発期間が長いこともあり、ファンド開発型で進めるケースが増えています。

質疑応答:事業者や投資家への提案方法について

質問者:ファンドへ投資される方は事業会社が多いとおっしゃっていましたが、定期的に投資される投資家をすでに確保されているのか、それとも案件ごとに声をかけているのか、教えていただけますか?

水山:基本的には現在は案件ごとに声をかけているというほうが正確です。ただ、結果的に「もう1件投資したい」というかたちで、2件目、3件目と投資される投資家の方も出てきています。

当社は今のタイミングでは多くの投資家に参画していただきたいと考えているため、幅広い方々に積極的に提案を行っている状況です。

質疑応答:土地の仕入れ方法について

質問者:土地の仕入れについての質問です。ホテルと賃貸業、また規模によっても違うと思いますが、最近は良い立地の物件を取得されている印象があります。仕入れ方法にはさまざまな手段があると思いますが、現在の仕入れ方法の内訳があれば教えてください。

水山:現在の土地・物件の取得はほとんどが仲介会社経由です。「ここが売りに出されるようです」という情報をキャッチして取得するケースが多くなっています。

特殊な仕入れルートは年間で数件程度にとどまります。例えば、過去に取引のあった地主さまから「近隣に売られているものがありますよ」といった情報をいただくこともあります。ただ、大半は銀行系仲介会社からの情報提供によるもので、銀行顧客の売却情報も含め、大手仲介会社経由での仕入れが中心です。

水山氏からのご挨拶

水山:本日はありがとうございます。当社の理念は創業以来一貫しています。住まい方が多様化しているにもかかわらず、不動産の選び方は紋切り型で、いまだに間取りや賃料だけで語られる状況を変えたいと考えています。当社は不動産そのものを通じて、人々の自己実現に貢献するような開発を目指しています。

この方針は当社が存続する限り変わることはありません。どのようなアセットタイプであっても、働き方、住まい方、レジャーのあり方など、あらゆる場面で不動産デベロッパーとして一助になりたいと考えています。

投資家のみなさまのご支援があれば、我々は新しい時代を作っていくことができると確信していますので、ぜひご協力をよろしくお願いします。

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