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K&Oエナジーグループ株式会社1663

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サマリー

八代伸彦氏:取締役経理部長の八代です。2025年12月期中間決算の概要をご説明します。

2025年12月期中間決算は、前年同期比で売上高は0.6パーセント減少の485億3,600万円、営業利益は17.8パーセント増加の66億600万円、経常利益は20.3パーセント増加の71億3,400万円、親会社株主に帰属する中間純利益は48.6パーセント増加の54億9,600万円となりました。前年同期と比較すると減収増益となりました。

また、通期予想はスライド中央にある「通期収支見込」に示しています。

2025年8月12日に発表した中間期の決算短信に記載のとおり、前期との比較では、売上高が1.9パーセント減少の907億円、営業利益が2.0パーセント増加の90億円、経常利益が1.7パーセント増加の100億円、親会社株主に帰属する当期純利益が16.7パーセント増加の72億円となり、前期に比べて減収増益となる見通しです。

2025年12月期の1株当たり配当金は前期と比べて8円増加し、今年2月14日に発表した配当予想と比べて2円増加の50円を予定しています。

2025年中間決算 【売上高】

ヨウ素事業やその他事業の売上は増加したものの、販売量の減少などによりガス事業の売上が減少しました。この結果、前年同期比0.6パーセント減の485億3,600万円となりました。

2025年中間決算 【営業利益・経常利益・中間純利益】

営業利益は、主にヨウ素販売量の増加などにより、前年同期比17.8パーセント増の66億600万円となりました。経常利益は、主に営業利益の増加などに伴い、前年同期比20.3パーセント増の71億3,400万円となりました。

親会社株主に帰属する中間純利益は、経常利益の増加に加えてガス関連設備の移転に係る補償金収入の発生などにより、前年同期比48.6パーセント増加の54億9,600万円となりました。

【参考】グループガス事業ネットワークについて(イメージ図)

当社グループのガス事業は大きく分けて、千葉県産の天然ガスを主体とした「県産ガスネットワーク」と、気化したLNGを輸入事業者から購入し、ガス導管を通じて供給・販売する「LNGネットワーク」の2種類があります。

県産ガスネットワークは、国産天然ガスが中心であるため、為替相場やLNG価格の変動の影響を受けにくく、急激な価格変動が少ないことが特徴であり、強みとなっています。

LNGネットワークは、主に発電事業や大口工業用の都市ガスとして供給・販売しています。ほとんどのお客さまに対しては、LNG購入価格の変動分を販売価格に転嫁できる契約となっているため、売上の増減ほどは利益への影響は少なくなっています。

これらの主な2大ネットワーク以外では、小規模ながら大多喜ガスが外部からLPガスを仕入れ、主に一般家庭向けに販売しています。

【参考】グループガス事業ネットワークについて(特徴)

千葉県産天然ガスを主体としたネットワークは家庭向けなど一般のお客さまが中心となっており、お客さま件数全体の99.9パーセント以上を占めています。ただし、販売量については全体の約3割に留まっています。

一方でLNGネットワークは、お客さま件数に占める割合は全体の0.1パーセント未満ですが、発電事業者向けなどの大口工業用を含むため、販売量は全体の約7割を占めています。

2025年中間決算 【ガス事業:販売量】

ガスの販売量は、家庭向け中心の県産ガスネットワークが気温の影響などにより1.8パーセント増加しましたが、発電事業者向けのLNGネットワークが7.4パーセント減少したことなどから、全体では4.4パーセント減少し、4億7,000万立方メートルとなりました。

2025年中間決算 【ガス事業:売上高】

ガス事業の売上高は、県産ガスネットワークにおいて一部の都市ガス事業者向けガス卸価格の上昇や、期初に気温が低めに推移した影響による販売量の増加があった一方、LNGネットワークにおける発電用途向け販売量の減少に加え、LNG-CIF適用価格の低下に伴う販売価格の低下が影響し、売上高は前年同期比5.4パーセント減の366億8,600万円となりました。

2025年中間決算 【ヨウ素事業:生産量・販売量】

ヨウ素の生産量は、ガス井戸に隣接するヨウ素吸着設備の新設などにより、前年同期比7.9パーセント増の898トンとなりました。生産量の増加に伴い、販売量は7.4パーセント増加して902トンとなりました。

2025年中間決算 【ヨウ素事業:売上高】

ヨウ素事業の売上高は、前年同期比12.1パーセント増加の73億6,500万円となりました。これは販売量の増加に加え、為替相場が円高で推移したものの、輸出建値の上昇に伴い販売価格が上昇したためです。

2025年中間決算 【その他:売上高】

器具販売事業の売上高は減少しましたが、建設事業では地熱井の掘削工事をはじめとする全体的な受注の増加により、売上が増加しました。電力事業も販売量の増加などによって売上が増加した結果、その他セグメント全体では前年同期比28.8パーセント増の44億8,400万円となっています。

2025年中間決算 【営業利益】

ガス事業のセグメント利益は、製造費用や供給販売費が増加したものの、一部県産ガスの卸売価格の上昇や県産ガスネットワークの販売量増加などにより、前年同期比1,600万円増加の35億3,000万円となりました。

ヨウ素事業のセグメント利益は、販売量の増加および販売価格の上昇などにより、5億9,000万円増加の43億1,600万円となりました。

その他のセグメント利益は、器具販売事業で売上の減少や建設事業で一部工事の利益率低下があったものの、建設事業と電力事業の売上増加により、1,500万円増加の3億1,400万円となりました。

連結調整額は、主に地熱調査費など一般管理費が減少したことにより、利益が3億7,600万円増加しました。これらの結果、営業利益は前年同期比17.8パーセント増加、9億9,900万円増加の66億600万円となりました。

セグメント別の営業利益の前期比較については次のページに記載しています。

2025年中間決算 【セグメント別営業利益等】

こちらのスライドが、セグメント別営業利益の前期比較表です。

2025年中間決算 【経常利益・中間純利益】

経常利益は、営業利益の増加に加えて受取配当金の増加などもあったことから、前年同期比20.3パーセント増加、12億400万円増加の71億3,400万円となりました。

親会社株主に帰属する中間純利益は、一宮川流域の河川改修に伴うガス関連設備の移転補償金が発生したことなどから前年同期比48.6パーセント増加、17億9,700万円増加の54億9,600万円となりました。

2025年中間決算 【貸借対照表】

2025年6月末現在の貸借対照表は、資産の部で投資有価証券が増加したことなどにより、資産合計は2024年12月末時点に比べて28億1,700万円増加し、1,222億6,400万円となりました。

負債の部については、ガス買掛金の減少などによって負債合計が23億5,900万円減少し、176億8,000万円となりました。純資産は、利益剰余金の増加などにより51億7,700万円増加し、1,045億8,300万円となりました。

この結果、総資産は2024年12月末と比べて2.4パーセント増加、28億1,700万円増加の1,222億6,400万円となりました。

2025年業績予想 2025年収支見込【8/12通期収支見込値修正】

8月12日に、通期業績予想を修正しています。以下は修正した予想と2月14日に発表した予想との比較です。

2025年の通期業績は、主に輸入エネルギー価格低下の影響によるガス販売価格の低下が見込まれるため、売上高は1.3パーセント減少、12億円減少の907億円となる見込みです。

営業利益はヨウ素販売価格の上昇が見込まれることから16.9パーセント増加、13億円増加の90億円、経常利益は16.3パーセント増加、14億円増加の100億円、親会社株主に帰属する当期純利益は16.1パーセント増加、10億円増加の72億円となる見通しです。

2025年業績予想 【売上高】

売上高については、その他セグメントにおいて建設事業の増加が見込まれる一方、輸入エネルギー価格の影響によるガス販売価格の低下に加え、大口工業向けのガス販売量の減少が見込まれるため、前期比1.9パーセント減少の907億円となる見通しです。

2025年業績予想 【営業利益・経常利益・当期純利益】

ヨウ素販売量の増加や販売価格の上昇に加え、建設事業の売上増加などを見込むことから、営業利益は前期比2.0パーセント増加の90億円、経常利益は前期比1.7パーセント増加の100億円を見込んでいます。

親会社株主に帰属する当期純利益については、特別利益としてガス関連設備の移転に伴う補償金の発生があり、前期比16.7パーセント増加の72億円となる見通しです。

2025年業績予想 【ガス事業:販売量】

ガス事業の販売量は、県産ガスネットワークの販売量は気温の影響などにより増加を見込んでいる一方、LNGネットワークにおける発電用途向けの販売量が減少する見込みであることから、前期比2.9パーセント減少の9億1,200万立方メートルとなる見通しです。

2025年業績予想 【ガス事業:売上高】

輸入エネルギー価格が前期に比べて低めに推移する見通しから、ガス販売価格の低下を見込んでいます。さらに、発電用途向けガス販売量の減少を見込むことから、売上高は前期比6.3パーセント減少の676億円となる見通しです。

2025年業績予想 【ヨウ素事業:生産量・販売量】

ガス井戸に隣接したヨウ素吸着設備を新設したことなどにより、ヨウ素の生産量は前期比7.6パーセント増加の1,766トンを見込んでいます。また、ヨウ素およびヨウ化カリウムの販売量は前期比4.5パーセント増加の1,801トンを見込んでいます。

2023年期末の在庫分を2024年に出荷・販売したため、販売量の増加率は4.5パーセントと、生産量の増加率7.6パーセントに比べて低くなる見通しです。

2025年業績予想 【ヨウ素事業:売上高】

販売量の増加に加え、ヨウ素の輸出建値上昇の影響などにより、売上高は前期比7.2パーセント増加の145億円となる見通しです。

2025年業績予想 【その他:売上高】

器具販売事業においてガス器具販売の売上減少はあるものの、建設事業で地熱井の掘削工事の増加などによる売上の増加を見込んでいることから、売上高は前期比27.4パーセント増加の86億円となる見通しです。

2025年業績予想 【営業利益】

ガス事業のセグメント利益は、一部県産ガスの卸売価格の上昇や県産ガスネットワークの販売量が増加するものの、製造費用や供給販売費の一部で費用増加が見込まれるため、2億9,100万円減少し、48億円となる見通しです。

ヨウ素事業のセグメント利益は、製造費用の増加があるものの、販売量の増加や販売価格の上昇などの影響により4億4,300万円増加し、80億円となる見通しです。

その他のセグメント利益は、器具販売事業で売上の減少はあるものの、建設事業および電力事業の売上増加などにより3億4,900万円増加し、8億円となる見通しです。

連結調整額は、主に一般管理費の増加を見込むことなどから、3億2,300万円減少となる見通しです。

以上の結果、営業利益は前期比2.0パーセント増加、1億7,900万円増加の90億円と予想しています。セグメント別の営業利益の前期比較は次のページに記載していますので、ご確認ください。

2025年業績予想 【セグメント別営業利益等】

こちらのスライドが、セグメント別の営業利益の前期比較となります。

2025年業績予想 【経常利益・当期純利益】

経常利益は主に営業利益の増加により、前期比1.7パーセント増加、1億6,900万円増加の100億円を見込んでいます。

また、親会社株主に帰属する当期純利益については、上期に一宮川流域の河川改修に伴うガス関連設備の移転補償金の発生があったことなどから、前期比16.7パーセント増加、10億3,200万円増加の72億円となる見通しです。

配当金

当社では、グループ会社を通じて、貴重な国産資源を長期的かつ安定的に生産・供給するコア事業への投資と、新たな事業領域での成長を目指した未来事業への投資のバランスを取りながら、中長期の連結業績やフリー・キャッシュフロー等を総合的に勘案し、継続的な安定配当による株主還元の充実を目指すことを基本方針としています。

このような考え方に基づき、今期の業績見込みの修正も踏まえ、安定的な配当を継続しつつ、1株当たり配当金の増額を行うこととします。

1株当たりの期末配当金を前回予想の24円から2円増額し、26円とする予定です。この結果、年間配当金は前期比8円増加の50円となる見通しです。

【補足資料】 売上高の推移

こちらのスライドは、2021年から2025年までの売上高の推移を示しています。

【補足資料】 生産量・販売量の推移

こちらのスライドは、ガスの生産量および販売量、ヨウ素の生産量および販売量の推移を示しています。

ガスの生産量と販売量に差があるのは、輸入LNGなど外部からの購入があるためです。また、ヨウ素の生産量と販売量は2021年から2025年にかけておおむね増加しています。年度ごとの数値については、スライドのグラフをご確認ください。

【補足資料】 ヨウ素関係資料

スライドのヨウ素販売量は、当社グループの数字です。また、ヨウ素の輸出価格については、当社グループの実際の販売価格ではなく、輸出の通関統計価格をもとに当社が算出したドル建ての算定値です。

また、折れ線グラフに示しているようにヨウ素価格は2023年以降高止まりしており、2025年も高水準を維持すると見込んでいます。

【補足資料】 利益の推移

こちらのスライドは、2021年から2025年までの経常利益、営業利益、および親会社株主に帰属する当期純利益の推移を示しています。

【補足資料】 指標の推移

こちらのスライドは、2021年から2025年までの売上高経常利益率、自己資本当期純利益率、および株主資本配当率の推移を示しています。

【補足資料】 設備投資額・減価償却費の推移

各年度の設備投資の内訳については、スライドのグラフに記載のとおり、2024年はガス・ヨウ素開発投資が11億円、老朽設備更新が21億円、ヨウ素製造設備の増強工事が10億円、その他が15億円、合計67億4,800万円となりました。

2025年の見通しについては、スライド右下の赤い囲みに記載されているとおり、ガス・ヨウ素開発投資が22億円、老朽設備更新が21億円、ヨウ素設備の増強工事が14億円、その他が20億円、合計91億3,200万円の設備投資を見込んでいます。

ガス・ヨウ素開発が大きく伸びているほか、その他の設備投資も増加しています。その他の主な内訳は、ガス関連設備の移転補償金工事などです。

2025年の業績予想見込みについての説明は以上です。続いて、トピックスについて緑川よりご説明します。

【トピックス】カーボンニュートラルへの挑戦 ~首都圏CCS(株)を設立~

緑川昭夫氏(以下、緑川):代表取締役社長の緑川です。当社に関する最近のトピックスを2点ほどご紹介します。

まず1点目は、カーボンニュートラルへの挑戦として、「首都圏CCS株式会社」を設立したことについてです。

当社グループ会社である関東天然瓦斯開発は、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の委託事業である「首都圏CCS事業」の事業化に向けた調査・設計を加速させるために、INPEXさまと共同で「首都圏CCS株式会社」を設立しました。

「首都圏CCS事業」は千葉県外房海域の深部塩水層に貯留する構想の事業です。首都圏CCS株式会社は輸送・貯留を担い、本事業の中核会社として位置付けられています。今後も地域のみなさまや自治体、国および関係機関のご理解とご協力を賜りながら、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

スライドのフロー図には「分離回収」「輸送」「貯留」と記載されています。この中でINPEXさまと関東天然瓦斯開発は「輸送」と「貯留」の部分を担当しています。現在、首都圏CCS株式会社では陸上パイプラインや昇圧設備などの設置場所を検討しており、千葉県内を横断するCO2輸送パイプラインに関する調査を進めている最中です。

【トピックス】千葉県産天然ガスを利用した水素・炭酸ガス事業が始動!

2点目のトピックスは、カーボンニュートラルへの貢献が期待される水素と炭酸ガスの事業会社を設立したことです。

関東天然瓦斯開発とエア・ウォーター・グリーンデザインさまは、水素・炭酸ガスの製造・販売を目的とした合弁会社「エア・ウォーターK&O株式会社」(以下、AW K&O)を、当社本店所在地である千葉県茂原市に設立しました。関東天然瓦斯開発が生産する天然ガスを原料として、AW K&Oは低炭素水素と炭酸ガスを製造し、エア・ウォーター・グリーンデザインさまが販売を担います。

低炭素水素は水素需要に対応するとともに、ご利用いただくお客さまのCO2排出量削減に貢献します。また、そこから生じる炭酸ガスはドライアイスの原料として活用し、需給が逼迫している炭酸ガスやドライアイスの安定供給にも寄与します。

千葉県産天然ガスの生産地域における新たな産業創出を通じて温室効果ガス削減に貢献するだけでなく、地域経済の発展や持続可能な社会の実現にも貢献していきます。

スライドの下部に簡単なフロー図を示しています。天然ガスを原料として水素の製造を行います。当社の天然ガスはメタン(CH4)が主成分であり、そこから水素を分離することで、残った炭素は炭酸ガス(CO2)として回収します。

この炭酸ガスは効率的に活用できるように運搬し、エア・ウォーター・グリーンデザインさまでドライアイスの製造・販売に活用されます。

また、水素は運搬され、水素需要に応じて販売されます。現時点では水素も炭酸ガスも需要が非常に旺盛であり、これらを安定的に供給していきます。

なお、水素ガスの製造と炭酸ガスの回収には電力を使用しますが、その電力もできるだけ再生可能エネルギーを活用し、低炭素水素として販売していきたいと考えています。

簡単ですが、トピックスを2点ご紹介しました。ありがとうございました。

質疑応答:発電用途のガス販売量が減少した理由、来期以降の見通しについて

司会者:「発電用途のガス販売量が減少した理由を教えてください。需要家の事情による一時的な変動と理解すればよいでしょうか? 来期以降の見通しはいかがですか?」というご質問です。

緑川:発電用途のガス販売量について、発電をされるお客さまは電力の市況に合わせて発電を行っています。電力の市況は非常にボラティリティが高いため、各発電事業者さまの考え方によって異なりますが、今年は販売量が少し減少する予想が出ています。

電力市況がボラティリティの高い市場であると申し上げましたが、この市況をどのように捉えるかについては事業者さまごとに考えが異なるため、一概に一時的だと断定することは難しい状況です。しかし、私どもの見立てでは短期的に大きな影響を受けるものではなく、一時的なものだと理解しています。

質疑応答:ヨウ素事業における来期以降の設備増設予定の有無について

司会者:「ヨウ素事業について質問です。吸着設備の新設により今期の生産量は増加しているとのことですが、増産に寄与する設備増設は来期も予定されているのでしょうか? 生産能力拡大余地についての見解を教えてください」というご質問です。

緑川:ヨウ素事業の増産に寄与する設備増設については、もう少し続ける予定です。こちらは井戸元吸着設備と呼ばれるもので、まだヨウ素を採取していないかん水がいくつかあるため、それらを少しずつ増やしながら生産能力を拡大していくというものです。

ただし、かん水のくみ上げ量を急に増やすことは難しく、かん水を少しずつ増量して生産していくかたちになります。そのため、生産能力を拡大する余地はあるものの、大規模な能力拡大は難しいと考えています。

質疑応答:ヨウ素事業の成長戦略と今後の成長機会について

司会者:「ペロブスカイト太陽電池によるヨウ素の需要増加が期待されるかと思いますが、ヨウ素事業の成長戦略についてご教示ください。ペロブスカイト太陽電池の普及は、御社にとって大きな成長機会になるというご認識でしょうか?」というご質問です。

緑川:ペロブスカイト太陽電池で使用されるヨウ素の需要については、世界レベルで普及が進めばヨウ素の需要が非常に伸びるだろうと考えています。そのため、ペロブスカイト太陽電池が普及した場合、私どものヨウ素事業は大きく伸びる可能性があります。

しかし現時点では、ペロブスカイト太陽電池がシリコン型太陽電池に取って代わるほどの段階には至っていません。政府も非常に期待を寄せていますが、国内でのペロブスカイト太陽電池の普及による影響は、さほど大きくはないだろうと考えています。

また、ペロブスカイト太陽電池に関連しない場合でも、ヨウ素の需要は当面の間は年間で約2パーセントから3パーセント程度伸びると推定しています。そのため、ヨウ素需要は着実に成長していくと考えられ、その成長に応じて私どもの生産量も増やしていきたいと思っています。

さらに、ペロブスカイト太陽電池が世界的な潮流となる場合、別用途のヨウ素事業に関しても可能性があるかもしれませんが、現時点ではまだ具体的には考えていません。

質疑応答:ヨウ素市場の中長期的な展望について

司会者:「ヨウ素の国際市況が堅調ですが、この高止まり、もしくは市況上昇はしばらく続きそうか、中長期的な展望をお聞かせください」というご質問です。

緑川:大変難しいご質問ですが、中長期的な展望については正直に言えばなかなかわからないというのが現状です。

ヨウ素の需要は堅調に2パーセントから3パーセント伸びていくと予想しています。ただし市況については、供給側が急に増えると一気に価格が下がる可能性があります。そのため、市況の上昇が続くかどうかは国際価格を形成するチリの動向に大きく左右されるため、見通しは難しいと考えています。

しかしながら、需要が着実に伸びる中で日本のヨウ素は非常に安定して供給されており、世界のお客さまから高い信頼を得ています。

このような状況を鑑みると、堅実に成長していけると見込んでいます。ただし、市況の状況を中長期的に正確に見通すことは難しいというのが現状です。

質疑応答:首都圏CCS事業に期待する効果について

司会者:「首都圏CCS事業について、CO2を貯留する副次的な効果として、御社事業やかん水(ガス・ヨウ素)の生産性向上・増産につながると期待できますか?」というご質問です。

緑川:おそらく地下資源の採掘に非常に詳しい方からのご質問かと思いますが、直接的につながるものは現時点ではありません。

ただし、アメリカではCO2を石油井に注入して石油を増産する「EOR」という手法があります。同様に、在来型の天然ガス井戸ではCO2を注入してガスを増産する「EGR」という手法も存在します。

今回の首都圏CCS株式会社設立に伴い、それらが期待できるかという点については、現時点では検討していませんが、可能性が完全にゼロというわけではないとも考えています。

ただ、現時点ではCO2を地下に注入する技術によって天然ガスやヨウ素を回収する取り組みは、スコープには含まれていません。

質疑応答:首都圏CCS事業の戦略、展望、収支計画について

司会者:「首都圏CCS事業は、御社のどのような強みを活用して展開する事業なのでしょうか? また、今後の展望・収支見込みのプラン・イメージを教えていただけますか?」というご質問です。

緑川:当社の強みは、当該地域で最も「南関東ガス田」の井戸を掘っていることにあります。また、地質に関する知見を最も有しているのが、当社グループの関東天然瓦斯開発です。

その知見を活かし、地下の貯留層にボーリングを行うことが可能です。地層に関する知見を豊富に持つ私たちの強みを最大限に発揮できるのではないかと考えています。

今後の展開・収支見込みについては、現在受託している事業そのものであり、これから具体的に作り上げていく段階かと思います。

こちらは、CO2の価格が収益を支える水準であれば、当然ながら事業として成り立つと考えています。この点については、現在行っている首都圏CCS事業の調査を通じて明らかになっていくのではないかと思っています。

質疑応答:ヨウ素事業の生産工程増強による生産・売上への影響度について

司会者:「直近の『会社四季報』に『ヨウ素事業の製造工程大幅増強』と記載がありますが、今後の生産・売上に対するインパクトはどのようなものになるのでしょうか?」というご質問です。

緑川:ヨウ素事業の製造工程の大幅な増強についてご説明します。ヨウ素を製造する際には、かん水から中間物を作る、いわゆる「前半工程」と、中間物からヨウ素を精製する「後半工程」があります。実は先日、従来のものより比較的大きな「後半工程」の新設備を立ち上げました。

かん水から採れるヨウ素の量は一気に増やすことができないため、少しずつ増やしていくものの、「後半工程」の設備を増強することで、中長期的な見通しで量を増やしていっても設備として耐えられるほどの、従来の「後半工程」と比較して大きな設備を導入しました。

今後の生産および売上に対するインパクトについては、短期的な影響はそれほどないと思います。とはいえ、長期的には安定して増産を実現するための設備を構築したということです。

質疑応答:県産ガスの卸売価格上昇の理由について

司会者:「都市ガス事業者向けの県産ガスの卸売価格が上昇したとのことですが、なぜでしょうか? LNGの価格指標等に連動するわけではないのですか?」というご質問です。

緑川:県産天然ガスの販売価格は、いわゆる国際指標であるJKM(注)等の輸入価格に連動していません。お客さまごとに個別契約を結んでいますが、人件費や物価の上昇に伴い、関東天然瓦斯開発で卸売先と交渉し、ご理解をいただきながら価格を上昇させています。

県産ガスは国際価格とは連動しておらず、個別の契約内容となるため、詳細については差し控えますが、総額として卸売価格が上昇したことによる影響が若干出ています。

注:
・北東アジア地域(日本、韓国、台湾、中国)向けの液化天然ガス(LNG)の「スポット価格(輸送費込み)」を示す指標であるJapan Korea Markerの略。

質疑応答:ヨウ素の生産量急増の可能性、および需要増加の理由について

司会者:「チリがヨウ素の生産量が急増する可能性はあるのでしょうか? 技術的に難しいのでしょうか? また、ヨウ素の需要増加の理由の1つとして、造影剤向けの輸出増があると思いますが、なぜ需要が伸びているのかについて教えてください」というご質問です。

緑川:チリでのヨウ素の生産について、短期的に急増する可能性はあまりないと考えています。チリでヨウ素を製造するには水が必要であり、新たに水を供給する設備が整えば一気に増産となる可能性はあります。

しかし、チリでは標高1,000メートル近い高所でヨウ素採取が行われているため、生産に必要な水を供給する設備を整え、生産量を急増することは容易ではありません。

設備を建設すれば増産の可能性はありますが、現状では難しく、短期で増産が実現する可能性は低いと思われます。ただ増産しようと思えば、数年後には急増する可能性がゼロではないと考えています。

また、ヨウ素の需要増加の理由の1つとして挙げられている造影剤向け輸出の増加は、私どもが非常に期待しているところです。

造影剤とは端的に言えば血管造影剤で、通常の健康診断で行う肺のレントゲン撮影などでは使用しませんが、人間ドックの受診や診断が難しい病気にかかった際、レントゲンやCTを撮る際に使用されます。

現状、どちらかと言えば途上国などでCTを利用する患者さまは少ないと考えられます。しかし途上国の1人当たりGDPが上昇すれば、より高価な医療設備を使用するようになると考えられ、造影剤の需要はさらに伸びていくだろうと考えられています。

現在、造影剤は主にヨーロッパやアメリカ等の先進国で使用されていますが、途上国の方々がCTなどを利用する機会が増えれば、需要はさらに拡大するだろうと期待しています。

質疑応答:首都圏CCS事業のEGR採用について

司会者:「首都圏CCS事業は、EGR(注)を狙って進めたほうがいいのではないでしょうか? そうなれば、LNGネットワークからの調達割合を減らせると思います」というご質問です。

緑川:EGRが狙えるのであればそうしたいのですが、技術的な困難が非常にあります。さらに、JOGMECさんから受託しているものにはEGRのスコープがまだ含まれていません。提案できれば良いのですが、技術的なハードルはかなり高いだろうと考えています。

特に「南関東ガス田」の地質構造から見て、従来型のEGRの手法では困難だと思われます。可能性はゼロではないものの、そう簡単な話ではないと考えています。

注:
・CO2の圧入等により、産ガス量の増加を図る技術。天然ガス増進回収法 Enhanced Gas Recoveryの略。

質疑応答:水素・炭酸ガス事業のマージンの改善について

司会者:「水素・炭酸ガス事業について、通常のガス販売と比べて、マージンの改善は見込めるのでしょうか?」というご質問です。

緑川:水素・炭酸ガス事業について、現時点での水素の需要は、半導体産業や鉄鋼などの分野で大きなものがあります。また、最近では水素を燃料としたボイラーや、水素社会に向けたさまざまな試験設備が多くの場所にあります。

このような場面でさまざまな分野で水素の需要が見られますが、現在、世の中に供給されている水素のほとんどはメタンから生成されたものです。

そこで当社では、このメタンから生成される水素に伴って排出されるCO2を回収し、ドライアイスとして活用する取り組みを進めています。

ドライアイスの需要は依然として旺盛であり、食品や飲食店などの流通においても広く利用されているほか、炭酸ガス自体にも一定の需要があります。このような中で、炭酸ガスとして再利用が可能な点から、GHG排出量の観点では従来の水素よりも低炭素な水素を供給することができます。

さらに、「グリーン水素」といわれる再生可能エネルギーを用いて水を分解して生成する水素と比較すると、かなり低コストで生産が可能です。

「低炭素である水素をお客さまにどのくらい価値として認めていただけるか」という条件次第では、マージンを確保することも可能性として考えられるのではないかと思っています。

現時点では具体的なことは申し上げられませんが、通常の水素ガス販売と比較しても、収益性を向上させる余地があるのではないかと考えています。

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