決算概要

片山ゆき氏:取締役上席執行役員管理本部副本部長の片山です。2025年12月期第2四半期決算概要についてご説明します。

四半期ごとの業績です。オレンジ色の列が4月から6月までの第2四半期3ヶ月間の実績です。売上高は189億9,600万円、営業利益は47億1,100万円となりました。直前の四半期である1月から3月までと比較すると、売上高は34.5パーセント増加し、営業利益は64.9パーセント増加した結果です。

前年同期である昨年4月から6月と比較すると、売上高は32.1パーセント増加、営業利益は44.7パーセント増加しました。直前四半期および前年同期のいずれの比較においても、30パーセント以上の増収増益という結果となっています。

決算概要

第2四半期累計の決算概要についてご説明します。オレンジ色の列が、1月から6月の累計実績です。売上高は331億2,000万円、営業利益は75億6,900万円となりました。

段階利益について、経常利益は73億9,400万円、親会社株主に帰属する中間純利益は47億4,700万円です。

前年同期比を表の右側に記載しています。売上高は前年同期比で26.6パーセント増加、営業利益以下の段階利益については、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する中間純利益がいずれも27パーセントから30パーセントの増加率、つまり、前年同期比で1.3倍の増加という実績となりました。

販管費は前年同期と比較して20億円増加しました。主な増加要因は、将来投資に係る研究費や顧客向けのサービスサンプル費の増加です。その他、製品保証引当金や業績還元、人件費の増加も含めています。

5月13日に開示した業績予想に対しては、製品ミックスの影響による出荷売上計上のシフト前倒しにより、売上高は15億2,000万円の増加となりましたが、一方で営業利益は1億3,000万円減少しました。最終利益としての親会社株主に帰属する中間純利益は5億2,500万円減少となりました。

為替に関しては、1月から6月の実績レートが約148円でした。後ほど長谷川からご説明する2025年通期業績予想では、想定レートを147円としています。通期業績に係る対ドル1円の為替インパクトは、約2,000万円と試算しています。

2025年12月期第2四半期決算の要点

2025年12月期第2四半期決算の要点をご説明します。プローブカード事業においては、メモリ向けプローブカードの売上高は、一部製品の前四半期からシフトしたことに加え、第3四半期からの前倒しにより、DRAM向けを中心に過去最高を達成しました。

一方、受注高は減少しています。これは、プローブカードの長納期化に対応した発注タイミングの見直しによるものですが、HBM(高性能メモリ)向けの需要は引き続き堅調です。

ノンメモリ向けプローブカードの売上高は前四半期比で横ばいとなりました。一方で、セグメント利益はDRAM向けプローブカードの好調な販売を背景に、前四半期比で改善しています。

TE事業においては、売上高は半導体テストソケットが堅調に推移し、前四半期比で横ばいとなりました。セグメント利益については損失を計上しました。

四半期業績推移

四半期の業績推移です。スライドのグラフでは、全社ベースで過去の四半期ごとの売上高、営業利益、営業利益率の推移を示しています。

当第2四半期の売上高は189億9,600万円と、四半期ベースで過去最高の実績を更新しました。 営業利益率は24.8パーセントを記録し、2023年第4四半期以降、すべての四半期で20パーセントを超える水準を維持しています。

四半期業績推移(セグメント別)

セグメント別の業績推移です。スライド左側にあるプローブカード事業について、当第2四半期のセグメント利益率は31パーセントとなり、引き続き高い収益力を維持しています。

スライドの右側がTE事業です。直前四半期比で売上高は横ばい、セグメント利益は1億7,200万円でした。

受注/売上/受注残高 四半期推移

受注、売上、受注残の四半期推移です。スライド左側はプローブカード事業の受注高を示しており、当第2四半期の受注高は109億5,500万円となりました。前四半期と比較すると80億円の減少となっています。これはプローブカードの長納期化に伴い、お客さまが発注のタイミングを精査したことの影響を受けています。

一方、足元の受注状況については、引き続き高い需要が継続しています。受注残高は263億8,400万円と高い水準を維持し、後ほどご説明する通期の業績見込みに、この受注残高が反映されています。

スライドの右側はTE事業に関するもので、受注高、売上高、受注残高のグラフとなっています。ご参照ください。

四半期売上高(製品別)

四半期ごとの製品別グラフです。左側はプローブカード事業を示し、メモリとノンメモリのベースで分けて表示しています。当第2四半期において、メモリ製品の割合は92パーセント、ノンメモリ製品の割合は8パーセントという結果となりました。

メモリ向け製品については、前四半期比で48億円増加しています。一方、ノンメモリ向け製品の売上高は14億円となり、前四半期比でほぼ横ばいの推移を示しました。

スライドの右側はTE事業に関する内容で、検査機器、テストソケットの売上が増加しています。

地域別売上高 四半期推移

地域別売上高の推移です。スライドの左側は、売上高ベースの数字を示しています。当第2四半期の売上高189億円の内訳をご覧ください。

直前四半期比で見ると、一番下の日本向け売上高は7億円減少した一方で、下から2番目の韓国向けが49億円増加、下から3番目の海外向けは4億円増加しています。

スライドの右側は売上高の比率を示しています。当第2四半期の韓国向け売上高は60.2パーセントとなりました。半期上期の6ヶ月累計ベースでは、韓国向けの売上高比率が54パーセント、台湾向けの売上高比率が30パーセントとなりました。

貸借対照表

こちらは貸借対照表の実績数字です。スライドの左側が資産の部にあたります。当第2四半期の総資産合計は816億円で、そのうち現預金は164億5,800万円、総資産に占める現預金の割合は20パーセントとなっています。

後ほどご説明するキャッシュ・フローをご覧いただくとわかりますが、当四半期は設備投資の支払いが継続している影響でキャッシュポジションが減少しています。一方、高水準な売上高を背景に、売掛金が前期比で15億円ほど増加しています。

有形固定資産は主に機械装置などを中心に、前期比で22億円増加しました。また、投資その他資産は7億円増加しており、これは投資有価証券の増加が主な要因です。当社が保有する投資有価証券の残高は23億円で、総資産に対する保有割合は約3パーセントとなっています。

スライド右側は負債純資産の部です。高水準の受注残を背景に、直前比で買掛金が10億円増加しました。長短有利子負債の残高は66億円となり、有利子負債比率は8パーセントの水準です。

昨年から今年にかけて、設備投資に係るシンジケートローン250億円を組成しましたが、そのうち60億円を使用しています。純資産は520億円で、自己資本比率は63.7パーセントとなりました。

投資等/キャッシュフロー

投資等キャッシュフローの状況です。スライド左側の投資等には、研究開発費、設備投資、減価償却費を四半期ごとに示しています。研究開発費に関しては、四半期ベースで継続して15億円を投資しており、計画どおりの数字です。

設備投資については、第2四半期に32億円を投資しました。直前四半期比では減少していますが、上期では78億円を投資しており、こちらも計画どおりの投資水準です。

減価償却費は、当四半期で13億5,000万円を計上しています。投資の増加に伴い、減価償却費が増加しています。

スライド右側のキャッシュフローに関して、当第2四半期の営業キャッシュフローは44億4,200万円となりました。一方、投資キャッシュフローは87億4,600万円です。半期累計ベースでは有形固定資産の支払いに係るキャッシュアウトが140億円となり、そのうち4割に相当する60億円がシンジケートローンの調達によるものです。

2025年の当社見通し

長谷川正義氏(以下、長谷川):代表取締役社長の長谷川です。私からは業績予想についてご説明します。

スライドは2025年の当社の見通しです。生成AIが牽引するメモリ半導体の市場成長を背景に、2025年通期業績は前年同期を大きく上回る見通しです。棒グラフでお示ししたとおり、第3四半期と第4四半期も、第2四半期に匹敵する売上の見通しを立てています。

世界経済については、米国の関税政策による貿易摩擦の再燃や成長鈍化の懸念が存在しています。欧州の金融政策は緩和を継続していますが、米国は利下げに慎重であり、日本は利上げに慎重な姿勢を示し、まだら模様というところです。

このように各国の政策は一様ではありませんが、最近2日間で米国の利下げ基調がやや強まってきたことが、日本の株価にも大きな影響を及ぼしているようです。

半導体市場については、生成AI向け半導体であるGPUやHBMなどの需要が好調であり、まさに市場を牽引している状況です。車載や産業用途向け半導体市況は、関税の影響を受け軟調な動きを見せています。

業績予想

第3四半期の業績予想についてです。売上高は500億円で、前回開示の5月13日時点と比較し10億円の減少となっています。プローブカード事業では496億円の予想に対して487億円、TE事業については14億円に対し13億円を見込んでいます。

営業利益は124億円に対して111億円で、13億円の減少となっています。経常利益は122億円に対して108億円で、14億円、約11パーセントの減少を予想しています。

親会社株主に帰属する四半期純利益は68億円で、5月13日に報告した数値よりも17億円のマイナスとなっています。原因については後ほどあらためてご説明します。

業績予想

1月から12月の通期予想のご報告となります。第3四半期にマイナスとなる主な理由は記載のとおりです。メモリ向けプローブカードの既存工場の一部設備に不具合が生じ、製品出荷に遅延が発生しました。

そのため、第3四半期および第4四半期の売上高に、現状想定される影響を織り込みました。不具合については、すでに原因を特定し、再発防止策も講じています。

このような結果となり、当社に注目していただいている投資家のみなさまには、残念なお気持ちを抱かせてしまったことと思っています。しかし、この件を教訓とし、新たな製品作りにしっかりと活かしていきたいと考えています。

次に、1月から12月の売上高についてご説明します。売上高は、前期である第54期の556億4,300万円に対し、689億円となりました。プラス132億5,600万円、プラス23.8パーセントの計画です。

プローブカード事業については、昨年の売上高535億2,600万円に対し、プラス135億円の671億円、プラス25.4パーセントの予想を立てています。

TE事業については、残念ながら昨期21億1,600万円に対しマイナス3億1,600万円の18億円と、マイナス15.0パーセントの計画です。

営業利益については、前年同期比12億円増の138億円を計画しています。経常利益についても、前年同期比10億円増の133億円を計上しています。親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比3億8,800万円増の92億円を計画しています。

配当予想は72円で、2円の増配を計画しています。

設備投資、研究開発投資

設備投資および研究開発投資についてです。中長期の需要拡大を先取りした積極的な投資や、半導体の技術革新を見据えた研究開発は引き続き継続していきます。

青森工場新棟への設備投資は、積極的に進めていきます。また、ノンメモリ向けおよびメモリ向けプローブカードの次世代技術開発についても、引き続き積極的に投資を行います。

TE事業における半導体関連の新製品開発やアプリケーションの拡大も推進します。TE事業の新製品については、後ほどお話ししますが、55期となる2025年の計画としては、前期を大きく上回る設備投資計画を掲げています。全体で178億円の計画です。

すでに上期では、約78億円の金額を使用しました。それに伴い、減価償却費も増加し、今期は60億8,000万円を計画しています。主に新棟へ導入される装置に対する投資が大きく増加した状況です。

先ほどからお伝えしているように、HBMの需要が非常に拡大しています。こちらに対応するため、当社は設備投資に前倒しで取り組みながら、継続的に投資を行う考えです。

研究開発費は約70億円を計画しています。半期では約31億円と、前年同期よりも多い数値を見込んでいます。

また、TE事業で開発してきたテスタやその他の製品に関して、いよいよ実機が出てくる段階となり、今回は研究開発投資を少し多めにしています。

中長期の事業環境

中長期の事業環境についてご説明します。半導体市場の中長期的な予測として、生成AIがPCやスマートフォンなどのローカル環境で動作するエッジAIへの移行が加速すると考えています。

つまり、これまではAIが主に設備投資関係に多く利用されていましたが、今後はPCやスマートフォンへの移行が進むと見通しています。また、自ら目標を設定し、自律的にタスクを実行するエージェント型AIの普及も、長期的な成長要因になると考えています。

このようなAIデバイスに使用されるHBMの検査を得意とするのが当社のプローブカードです。この分野に積極的にビジネスを展開していきたいと考えています。

また、AIの進化と投資の加速により、関連製品の需要が半導体市場の成長を牽引すると見込んでいます。カスタムHBMや特定用途向けASICの普及、さらにGPU市場の拡大を予想しています。

プローブカードの需要予測については、HBM需要の拡大が継続することで、DRAM向けプローブカードの市場も拡大していくと予想しています。ノンメモリにおいては、GPU市場の成長がプローブカード市場の成長を牽引すると予想しています。

スライド左側のグラフは半導体市場の予測です。こちらはGartnerリサーチをもとに作成しています。2029年頃までは途中で踊り場はあるものの、基本的には右肩上がりで推移すると見込まれています。

中長期の事業環境

プローブカード市場の予測についてお話しします。プローブカード市場の年平均成長率は、2026年までに14パーセントの成長が予測されています。

前回の予測では20パーセントと、AI向けデバイスのプローブカード需要の高まりを受けて過熱気味の数値でしたが、7月に発行された市場のさまざまな機関の報告資料などをもとに当社として見直したものです。

AI関連半導体市場の拡大が、プローブカード市場全体を牽引すると考えています。また、HBMの世代進化によって、DRAM向けプローブカードの需要も拡大すると予想しています。

事業の概況

事業の概況についてまとめます。プローブカード事業では、メモリ向けにおいてHBM需要の拡大が継続しており、DRAM向けの需要は好調であると考えています。青森工場の新棟は計画どおり稼働を開始しました。また、次世代HBMに対応した技術開発を推進していきます。

ノンメモリ向けについては、車載向けを中心に、垂直プローブカード「MEMS-V」や「MEMS-SP」による新規顧客の開拓を進めていきます。垂直型プローブカードの新製品開発に注力したいと考えています。

市場は車載向けに対して非常に厳しい状況が続いていますが、当社の後発製品である「MEMS-V」や「MEMS-SP」は高く評価されており、これらの製品の売上は今後も伸びると期待しています。

TE事業については、半導体市場向けの新型テスタおよび新型マニュアルプローバの商談が進行中です。新型テスタのアプリケーション拡大開発を進めていきたいと考えています。新型テスタについては、今年度から積極的に拡販を開始しました。評価段階においてお客さまの新たなニーズを発見し、アプリケーション拡大に取り組んでいます。

テストソケットの販売強化に向け、アジアを中心とした海外拠点のサポートを強化していきたいと考えています。

成長への取り組み

TE事業の新しい装置についてご紹介します。当社では今回、新しい名前をつけました。左側に掲載されているのが、プローバの写真です。「Excellent」と「Analyze」を複合させた言葉として、「Excelyze(エクセライズ)」と名付けています。この装置は高い操作性を備え、高精度な解析が可能な、クオリティの高いエンジニアリング用プローバです。

当社ではこれまで、ラインナップに200ミリ向けのマニュアルプローバが存在しませんでしたが、この新型「Excelyze」を導入することで、すべてのウェーハの開発に役立てていただけるものと考えています。

右側に掲載されているのがテスタです。「Tester」プラス「All in one」の意味で、「Testalio(テスタリオ)」という名前をつけています。ユーザーのニーズに応じて、オールインワン型の4モデルを用意し、机の上で検査が可能なポータブルタイプから、大型のフルスペックタイプまで揃えています。PIN数に応じた幅広いデバイスの最適テストに対応していきます。

FV26進捗状況

FV26の進捗状況についてお話しします。プローブカード市場の成長予測は、2023年から2026年にかけて、従来の20パーセント成長から14パーセント成長に修正しました。ただし、当社の売上数値は見直さず、2026年12月期の最終目標として、売上高800億円、営業利益200億円、営業利益率25パーセント、ROE23パーセントを目指していきます。

売上高・営業利益ともに、最終年度の経営指標の達成に向けて推移しています。今回、さまざまな問題を引き起こしており、必ずしも順調とは言えませんが、数字的には売上や利益を伸ばしていると考えています。

設備投資や研究開発投資に関しても、最終年度に向け計画どおりに進捗しています。しかしながら、HBM向けプローブカードの用途に対する需要が非常に高い状況です。また、みなさまにお話ししているように、現状では標準納期を上回るような納期対応も行っています。そのため、投資計画は可能な限り前倒しで進めたいと考えており、最終年度の総額は膨らむのではないかと考えています。

私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:メモリ向けプローブカード工場の設備不具合の影響期間について

質問者:メモリ向けプローブカード工場の設備不具合について、この影響がいつまで続くと見込まれていますか?

長谷川:影響に関して、大きなものは第3四半期にかかってくると思われます。ただし、お客さまの要求などの見直しを現在進めている最中であり、場合によっては一部が年を越す可能性もあります。基本的には、第3四半期もしくは第4四半期の早い段階で調整をつけたいと考えています。

質疑応答:不具合の内容と修繕・改造の進捗状況について

質問者:不具合とは具体的にどのようなものだったのでしょうか? その原因が判明したとのことですが、工場や現場ではすでに問題の解決が完了しているでしょうか?

長谷川:本事象は7月に発生したもので、第3四半期に入ってから起きたものです。工程が非常に複雑で機密性も高いため、どのような工程や場所かについての回答は控えます。ただし、原因はすでに突き止めており、装置の修繕や改造について着手済みです。今回のようなことが二度と起こらないよう、再発防止に努めていきます。

また、同様の機能を持つ装置が他にないか、すべての工程を再度見直しています。現時点では発見されていませんが、もし見つかった場合には、同様に修繕や改造を進める方針です。

質問者:修繕・改造を行った装置で実際に量産を試し、問題がないことを確認済みという理解でよろしいでしょうか?

長谷川:おっしゃるとおりです。

質疑応答:プローブカード事業の受注減少と今後の見通しについて

質問者:プローブカード事業の受注高についてです。受注高は109億円となっていますが、QonQで大幅に落ち込んでいます。「標準納期を上回るような納期対応」というご説明がありましたが、この入り繰りについてご説明いただけますか。

また、7月から9月以降に百数十億円、さらには200億円近い受注に戻る可能性があるかどうか、そのあたりも教えてください。

長谷川:お客さまは最終製品において、すでに取りかかっている製品よりも、Aという製品のほうが納期的に重要度が高い場合があります。

これらについてお客さまと協議しながら、少し後ろ倒しになる予定の製品であっても、なんとか標準納期に対応できるようにといったご要望など、さまざまな試行錯誤を重ねています。現在もその調整を行っています。

品種が多岐にわたるため、メーカーごとに慎重に調整を行っています。これを今期中に終わらせて、第4四半期には200億円近い売上に近づけたいと考えています。ただし、現在の業績予想で報告している数字では少し厳しい状況ではありますが、なんとか200億円を達成したいという思いで取り組んでいます。

質問者:製品の入り繰りや前倒し、後ろ倒しといったことは常に起きているものだと思います。それが4月から6月までで受注高がプローブカードのセグメントだけで109億円と、ここまで急速に減速している要因は何なのでしょうか?

例えば、4月から6月に来るはずだったものが、ユーザーが既存製品を延命したことでまったく来ていないなど、ユーザー側の生産品目に関連する話なのでしょうか? ここまで金額が変動するとなると、通常の入り繰りにとどまらないように思います。もう少し具体的にご説明いただけると助かります。

戸田繁樹氏(以下、戸田):当社のプローブカードは現在、非常に長納期となっており、通常の倍程度の納期をいただいています。この中で、受注残において納期の変更、具体的には遅いものを早く出荷したり、早いものを遅らせたりする製品の出荷調整が頻繁に発生しており、業務が煩雑になっている状況です。

また、お客さま側でも同様に発注から出荷までの時間が長いため、こうした変更の頻度が増えています。そのような中で、製品の優先度が高いものを優先して発注するというお客さまの方針が第2四半期中に変更されました。その結果として、この第2四半期中の受注が一時的に減少しました。

ただし、第2四半期中に発注しなくても、納期を急ぐ重要な製品については第3四半期中の発注でも通常の納期で生産が可能です。このため、第2四半期では急ぎの製品を優先してご発注いただくかたちとなりました。

第3四半期以降については、第2四半期中にある程度の調整が行われたこともあり、通常の当社の生産能力どおりの注文数に戻ると見込んでいます。

質問者:7月から9月に関して、現在の青森工場の立ち上げで発生している不具合もあり、今のキャパシティが我々には把握しづらい状況です。

例えば、7月から9月が青森工場のキャパシティに見合うかたちで稼働するとするならば、現時点では150億円が順当で、10月から12月については180億円ほどが順当と見込まれます。そして、それを上回る受注があれば200億円に届く可能性があるというように、どのような見込みでしょうか?

戸田:現状の業績予想は、生産をフル稼働している前提で試算しています。そのため、プローブカード事業の売上高予想が、当社の生産キャパシティと考えていただいて問題ないと思います。したがって、その生産キャパシティに見合った受注はいただけるのではないかと想定しています。

質問者:そうすると、150億円から160億円ぐらいのキャパシティということですか? 昨年の第4四半期の売上を見込んでいるということでしょうか?

戸田:そうですね。第4四半期は170億円から180億円ぐらいの売上高を予想しています。生産キャパシティとしてもその程度はあると考えています。

質問者:不具合そのものは7月に起きたわけですが、4月から6月の受注にはその影響がまったくなく、7月から9月にかけてそのくらい注文が戻ってくるということでしょうか?

この不具合によって御社の評判が落ちているとか、「納期が長くなるなら、他社にお願いしたい」といった御社が起因する話ではなく、あくまで顧客の優先度合いによって、御社への受注の変動が大きくなったという理解でよろしいでしょうか?

戸田:起因は、当社だけではないと思います。受注残が各プローブカードメーカーでかなり多くなっているため、どこのメーカーでも納期が非常に長い状況が起きていることが、1つの要因であると考えています。

質疑応答:来期以降の需要見立てと事業計画について

質問者:受注の話はややこしいのですが、この需要の見立てについておうかがいします。市場の伸び率が先ほど20パーセントから14パーセントに下がったというお話がありましたが、御社の事業計画において、今期はさておき、来期に向けてどのようになっていくのかが一番の関心事です。

装置メーカー各社は現在、HBMの既存製品を増産し、一部では投資を遅らせたりしている状況です。そのため、新しいデバイスの立ち上がりがどうなるのか、非常に注目されています。

一方で、御社の今年の設備投資計画は増額されています。また、先ほどのご説明でも来年の投資について膨らむ可能性が示唆されました。そのため、もともと中期経営計画で描いている来年度の売上目標である800億円に対して、上振れする可能性が出てきたようにも見えます。

そこで、主に今後の需要増加と、その需要の確からしさや伸び方、さらに技術の世代交代について、どのように見ているのかをご解説いただければ幸いです。

長谷川:はい。当社の売上は、現在HBM向け製品とDDR5を中心として構成されています。HBMに関しては、いよいよどのお客さまに限らずHBM4向けのプローブカードの注文が入り始めています。

受注動向について、お客さまからの受注額全体では若干のアップダウンはありますが、意欲的な注文をいただいています。ただし現在、当社の場合、標準納期の倍程度かかっており、お客さまからすれば必要なものを必要なタイミングで当社に発注したいということもあります。そのあたりは今後も大きな動きがあると考えています。

当社としては、標準納期に近づけるために、現状では生産キャパシティを増やしていくしか方法はないと考えています。この問題は当社に限らず、特にMEMS型でメモリ関連のプローブカードを手掛けている大手メーカー各社に共通している状況と思われます。

特に、メモリが主戦場になっている一方で、GPUや生成AI向け製品に関して強いプローブカードメーカーは、忙しい状態が続いていると思います。先日、米国競合の決算発表がありましたが、関係する半導体企業の影響もあり、業績が芳しくなかったようです。

しかし、他の競合については売上・利益ともに非常に強い状況が続いています。こうした状況からも、市場におけるプローブカードに対するニーズは非常に強い状態が続くと考えています。

質問者:ご商談の納期タイミングが通常の約2倍として、だいたい半年近く先というイメージです。現在では来年の春先や年初の納入案件のご商談が真っ盛りというイメージでしょうか?

長谷川:そのとおりです。

質問者:そこまではよいのですが、そのあとの持続性や世代交代について、例えば既存世代が延命してしまう可能性などを、リスクとしてはあまり感じられていないでしょうか?

長谷川:今のところはまだ見えていません。なぜかと言うと、これまでの注文の傾向として、「とにかくキャパシティを確保したいから」というようなかたちが多かったように感じています。

しかしながら、現在では「必要なタイミングで適切なプローブカードを注文したい」ということで、毎週のように注文状況が変わる環境の中で対応しています。このため、非常に回答しにくいところです。

延命したとしても、あまり大きな影響はないかと思います。むしろお客さまに対して標準納期で供給するための体制を、当社としても整えることができると考えています。

質問者:つまり、今しばらくの状況として、今回の受注残高こそ減ったものの、次の四半期から売上に見合った受注が再び来るとなると、受注残高があまり減らなくなる状況になるということですね。逆に、このレベルが続き、生産能力が向上し、いずれは通常の納期に戻ってくれると良いといったイメージでしょうか。

長谷川:そうですね。おっしゃるとおりです。

質疑応答:来期に向けたシェア展開と攻勢の可能性について

質問者:来期に向けてのシェアに関しておうかがいします。現時点でも能力が限界で余力がないというご説明でした。主要なお客さま以外のお客さまへの今後のシェアの展開について聞かせてください。

ようやく青森工場新棟が軌道に乗ってきました。不具合については余計でしたが、各種パーツの生産能力や組み立て能力が着実に向上していることが見通せます。その結果、商談についても半年先以上の動向が見えてくるようになり、お客さまとも共有できるようになると考えています。

そうした時の御社のシェアについて、これまでの1年から2年は、かなり防戦一方だった状況かと思いますが、もう一度攻めに転じる局面を期待することは可能でしょうか?

長谷川:そうですね。納期が合わないことで失注しているケースもございます。そのあたりは日本国内のみならず、海外も含めて同様のことが言えると思います。

質疑応答:設備投資の増額理由と進捗状況について

質問者:設備投資の金額増額について確認です。やはり急いでキャパシティを上げなければお客さまのご要望に対応できないという背景があり、来期の中期計画のオリジナルの計画よりも増額しているという理解でよろしいでしょうか?

戸田:そのとおりです。前倒し気味で進めているため、今期の設備投資額も増額になっています。また、来年を見据えた投資を下期に行っていく予定ですので、中期計画の最終年度の経営目標数値を見据えたかたちでの投資に変わりはありません。

質問者:そのわりには、研究開発や設備投資の上期の進捗が当初予算よりも少なかったように思います。

戸田:そうですね。2月の時点で上期の投資目標と研究開発投資の数値について報告しましたが、それに比べると若干下回っています。ただし、計画自体は順調に進んでいますので、実績値がやや下回った程度のものと考えています。

質問者:わかりました。あと、償却費の見積もりが62億円から60億8,000万円に少し下がっていますが、こちらについてはいかがでしょうか?

戸田:第1四半期の時点で、すでに1億円ほど見込みよりマイナスで着地しており、通期でもその影響が出ています。

質問者:投資の進捗も、少し金額ベースで遅れが生じたということですね。

戸田:金額ベースではそのとおりです。

質疑応答:受注額減少と競合によるシェア奪取について

戸田:「今回の不具合を経て、競合にシェアを奪われているでしょうか? その結果、受注額が減少したのでしょうか?」というご質問です。

長谷川:まず、今回の受注額減少は、競合にシェアを奪われたためではありません。また、「今回の不具合を経て、今後競合にシェアを奪われるのでしょうか?」というご質問ですが、なにもしなければ間違いなく奪われてしまうと思います。

しかし、そうはならないように全社員一丸となって、お客さまの納期対応や生産体制のバックアップのため、お客さまのご要求に応えるべく現在まさに対応しています。この取り組みにより、競合にシェアを奪われないよう、当社として全力を尽くしていきたいと考えています。

質疑応答:主要取引先や発注タイミングの変更について

戸田:「発注タイミングが変わったのは、DRAMの3社すべてでしょうか? 貴社と関係が深い1社のみでしょうか?」というご質問です。

こちらについては、社名をお答えするのが難しいため回答は控えます。ただし、基本的には主要取引先となります。

長谷川:3社に限らず、また、DRAMに限らず、その他の製品についても同様のことが言える状況だと思います。したがって、発注のタイミングが変わったのは1社だけではないと思っています。

質疑応答:プローブカード市場予測引き下げと中期見通しについて

質問者:今回、プローブカード市場の予測見通しを引き下げた背景について教えてください。年平均成長率20パーセントの見込みを14パーセントに引き下げた理由について、「過熱気味だった」というコメントがあったかと思いますので、そこについて教えてください。

あわせて、その中でも御社の売上高予想や中期見通しが変わっていない理由についても、可能であれば教えてください。

戸田:市場見通しの変更については、私からご回答します。前回の中期経営計画でCAGR20パーセントの成長を示した中で、11月に公表した経営見通しと比較すると、市場見通しが約6パーセント下がっています。

この背景として、それ以前の市場データではAIを中心にかなり成長するという市場予測が複数のリサーチメーカーから寄せられ、当社独自の予測も同様の数値を出していました。しかし、直近で見直しが行われ、数量ベースでは引き続き伸びていくものの、金額ベースではやや市場規模が縮小するとの半導体市場予測が出ています。

これを受け、プローブカード市場の予測についても金額ベースではやや減少する見通しとなっています。特に、プローブカードにおけるノンメモリ市場が縮小傾向を示しており、市場見通しがCAGRで6パーセント下がる要因となっています。

一方で、メモリ市場については、昨年11月に20パーセントと見込んでいた規模と比べ、ほぼ変動がないか、DRAMについては若干の成長を見せています。したがって、当社の業績への影響は大きくないと判断し、中期経営計画の経営指標となる数値は今回変更していません。

質疑応答:不具合による短期的なコストについて

質問者:短期的な視点として、トラブルによる逸失売上や部品などの廃却損といった金額を教えていただけますでしょうか。

戸田:不具合に関する金額ベースの詳細については、恐れ入りますが回答を控えます。ただし、業績予想は第4四半期における不具合コスト等を見込んだ上で設定しています。

質疑応答:海外メーカーの投資ペースへの見解について

質問者:長期的な観点で、海外競合メーカーの投資ペースを御社では脅威と捉えているのか、それともむしろシェア拡大に向けたチャンスと見ているのかについておうかがいしたいです。

長谷川:現状としては、当社のみならず、競合も生産能力を拡張していく動きが見られると思います。実際、米国の競合はテキサスに新しい生産拠点を設ける予定であり、日本の競合に関してはすでに熊本で新しい棟を建設している状況です。

現時点で当社としてはそれを脅威とは考えていません。当社としても、増産体制をしっかりと整え、当社の「QDCCSS(クダックス)」ではありませんが、現在は「Quality」で問題を抱えているものの、「Quality」「Delivery」「Cost」といった3つの言葉を重視し、これらはプローブカードを製造する上で非常に重要な要素であると認識しています。今後は「Delivery」を整え、お客さまの手元に確実に届けていきたいと考えています。