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瀬戸口智氏(以下、瀬戸口):代表取締役社長の瀬戸口です。2025年11月期第2四半期の決算についてご説明します。よろしくお願いします。
本日は、エグゼクティブサマリー、決算概況、業績予想・3ヵ年中期経営計画の3つに分けてお話しします。
エクゼクティブサマリー
エグゼクティブサマリーです。当第2四半期においては、前年同期比で増収増益となりました。
主な要因として、ファインケミカル事業の開発受託が好調であったこと、HBC・食品事業における輸入化粧品の販売が好調であったこと、さらに医薬事業において高収益性製品の販売が好調であったことが挙げられます。また、一部の販管費が下期に後ろ倒しとなったことも要因と考えています。
通期業績については、7月11日に公開したリリースのとおり、売上高は640億円、営業利益は31億円を予想しています。営業利益は上期の業績の伸長に伴い、前年同期比での増加が見込まれています。
トピックとしては、すでに開示していますが、HBC・食品事業においてイワキ株式会社がM&Aを実施しました。スライドに記載のとおり、池田物産グループは主に化粧品原料をグローバルに販売しているグループです。
これにより、HBC・食品事業の化粧品原料部門において、製品・商品・顧客の拡充、情報量の増加、海外展開の拡大を進め、プラットフォーマーとしての地位を一層強固にしていきたいと考えています。
2025年11月期第2四半期 決算概況
第2四半期の決算概況です。スライドの上半分は先ほどお話しした内容と重複していますので、経常利益、純利益、EBITDAをご確認ください。いずれも増加という結果になっています。
2025年11月期第2四半期 セグメント別業績
セグメント別の業績です。ファインケミカル事業、HBC・食品事業、医薬事業はそれぞれ増収増益となりました。売上高は、ファインケミカル事業とHBC・食品事業が業績に貢献しました。営業利益はファインケミカル事業が大幅に伸長し、寄与しています。
ファインケミカル事業
各セグメントの詳細についてご説明します。ファインケミカル事業は増収増益となりました。
業績のポイントとして、医薬品開発エコシステム部門では、MicroED関連の受注を中心に新規案件が増加したことや、中分子原薬プロセス開発案件の受注が順調に推移したことが挙げられます。
医薬品原料プラットフォーム部門では、高付加価値品目の販売が提案型販売によって堅調に推移しました。一方で、事業拡大に伴う増員やオフィス移転により、費用が増加しています。
医薬品CDMO部門では、外用剤製造における2シフト制の導入により工場稼働率が上昇しています。市場における新薬開発の活発化に伴い、高品質な原薬の需要が増加したことが業績を牽引しました。
トピックとしては、医薬品業界で世界唯一の受託ビジネスを開始しました。これは、株式会社リガクが提供するMicroED実験専用機「XtaLAB Synergy-ED」を活用した受託ビジネスです。
この機器は、原子レベルでの結晶構造分析が可能な高い分解能力を備えており、有機化合物などの詳細な分子構造を明らかにすることができます。お客さまの新薬開発を、既存サービスと併せて総合的にサポートしていきます。
HBC・食品事業
HBC・食品事業は増収増益となりました。
業績のポイントとして、食品原料部門では市場が緩やかに回復したものの、需要の減少分を補えず、低調な推移となりました。一方で、食品原料プラットフォーム「i-Platto(アイプラット)」の登録者数が増加したほか、高付加価値商品の販売増加により新規獲得額が増加しています。
化粧品原料部門では、原材料費や人件費などの原価上昇により、低調に推移しました。一方で、企画機能やインサイドセールス機能の強化により、新規獲得額が増加しています。
ライフサイエンス部門では、需要が落ち着いたことに加えて市場縮小の影響もあり、低調に推移しました。一方で、営業リソースの最適化や提案機能の強化により、新規顧客は増加しています。
化粧品製販部門においては、韓国コスメの「Torriden(トリデン)」と自社企画製品「Pureal(ピュレア)」の販売が、引き続き好調に推移しています。一方で、化粧品企画開発ソリューションサービスの開始に伴う先行投資費用の増加により、販管費が増加しました。
トピックとしては、すでにお伝えしたとおり、池田物産グループの株式を取得しました。これにより、製品ラインナップおよび販売チャネルの拡充を通じて、化粧品原料部門と食品原料部門の機能を強化し、プラットフォーマーとしての地位をさらに強固なものとしていきます。
医薬事業
医薬事業は増収増益を達成しました。
医薬品部門では、選定療養品目となった後発医薬品の販売が好調に推移しました。一方で、薬価改定により先発医薬品と同等以上の薬価となった後発医薬品の販売が低調に推移しました。また、原料不足などにより一部製品の製造停止が継続しています。
美容医療部門では、医療機関専売化粧品「NAVISION DR(ナビジョンDR)」シリーズおよび「illsera(イルセラ)」シリーズの販売が堅調に推移しました。
トピックとして、2024年12月より、3Aimsから販売を承継した製品を「illsera」ブランドとして展開しています。これは皮膚疾患で敏感になった肌のケアを目的とした商品で、「illsera」という名称には、「illskin therapy」つまり「病気の肌の癒し」という意味を込めています。
化学品事業
化学品事業は減収減益となりました。
表面処理薬品部門では、市況の回復が見られず、業績は横ばいで推移しました。電子部品向け薬品は、海外での新規顧客獲得に成功したため堅調に推移しています。一方で、プリント基板向け薬品は日本を中心に販売低迷が続いています。半導体関連向け薬品も、EV需要の減速を受けて販売が低調です。
このような状況のもと、高付加価値製品である「微細配線形成用薬品」「受動部品向けめっき薬品」「半導体電極形成用薬品」の販売促進に注力しています。
表面処理設備部門では、顧客の設備投資が一巡したことで販売が大幅に減少しました。一方で、修理・メンテナンス案件や部品販売に注力した結果、設備販売案件以外の販売は過去最高となりました。
トピックとして、クリーンルーム内のUBMめっき装置の改修を行いました。これは、半導体市場におけるパワー半導体12インチウエハの需要に対応するための先行投資です。これにより、ニッケル、パラジウム、金めっき処理が可能となり、従来の8インチウエハ向けメルプレートUBMプロセスを12インチウエハにも対応できるようにしました。
ソーシャルインパクト事業
ソーシャルインパクト事業は減収減益となりました。
ヘルスケア部門では、「農業×ヘルスケア」というコンセプトのもと、「NAIA(ナイア)」ブランドの刷新を行いました。これに伴う先行投資により利益が減少しています。また、PR活動にも投資を行い、ブランド認知度向上に注力しています。
地方創生部門では、現地決済型サービス「ふるさとNOW」の導入件数が増加し、売上高および営業利益が順調に推移しました。サービスが全国各地へ広がり、経済活性化など地域社会への貢献につながっています。
トピックとして、この4月に能登発のネイチャー×サイエンスコスメ「NAIA」をリニューアルしました。リニューアルに先立ち開催したプレス発表会をきっかけに、北陸地方を中心にテレビ特集、新聞、ラジオ、雑誌など複数のメディアで取り上げられています。
同時に、能登地方の炭や酒粕を取り入れた新製品を発売しました。機会がありましたら、ぜひお試しください。
能登地域における地域共創型の取り組み
当社のソーシャルインパクト事業は、地域に新たな仕事を生み出し「稼ぐ力」を育て、「人の循環」を創出することで、都市と地域をつないで地域の持続性を高める、私たち独自の地域共生モデルを目指しています。
まずは、自社で農業に取り組むことからスタートしました。現地に赴いて担い手不足や高齢化などの課題を実感し、地域の農家・自治体・企業と連携して、持続可能な協同体制を築いてきました。
この一連の動きとして、珠洲市の農家を集約して自治体と連携し、2025年4月に地域全体で「オーガニックビレッジ宣言」を打ち出しました。これは、農業単体では導入が困難な技術や知見を地域ぐるみで導入することで、地域の農産物を高付加価値化することを狙いとしています。当社は、そのまとめ役や販路拡大の役割を担っています。
また、農業だけでは人口減少やライフスタイルの変化に対応できず、収益が限られてしまいます。この出口を増やすために農業とヘルスケアを融合させたのが、先ほどの新ブランド「NAIA」です。地域資源と科学的知見を活用し、社会に新たな価値を届けるとともに、農業副産物の出口戦略拡大による「循環型もの作り」にも取り組んでいきます。
さらには、「NAIA」を通じて能登を知り、能登を訪れる人を増やすことも目指しています。このように、自然の循環、物の循環、人の循環を促していきます。
2025年11月期通期業績予想・3ヵ年中期経営計画
2025年11月期の通期業績予想と、2027年を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画についてご説明します。
まずは通期業績予想についてです。2025年11月期の売上高は640億円を見込んでおり、前期比で約10パーセントの増収となる見通しです。営業利益は31億円、ROEは7.0パーセントと、いずれも従来の予想を上回る水準となっています。
背景には、主に2つの要因があります。1つ目は、ファインケミカル事業で付加価値の高い品目の受託製造および自社品製造が堅調に推移していることです。2つ目は、HBC・食品事業で輸入化粧品の販売が拡大していることです。
このような好調な動きは下期にも影響し、通期の営業利益を押し上げると考えています。
中期経営計画についてです。当社では、本年1月14日に公表した「中期経営計画のローリングに関するお知らせ」に基づき、2027年を最終年度とする3ヵ年の計画を策定しています。この計画では、2027年の目標として、売上高700億円、営業利益35億円、ROE8.8パーセントを掲げています。
主要事業の好調を背景に2025年11月期の業績予想を上方修正したことと、先ほどご説明した池田物産グループの株式取得により、この中期目標の達成可能性がより高まったと考えています。これは一過性のものではなく、特にホールディングス体制への移行後、各事業において構造改革が着実に進捗していることの表れだと認識しています。
ファインケミカル事業では、営業体制および受託体制の見直しを通じて業務の効率化を推進してきました。その結果、コスト構造の改善と収益性の向上を実現しています。
HBC・食品事業においては、幅広い販路を活用した販売機会の最大化と、池田物産グループの株式取得のような機動的なM&A戦略を通じて、事業基盤の強化を着実に進めています。
医薬事業および化学品事業では、ニッチ領域に特化した製品展開を通じて他社との差別化を図り、安定した事業構造を構築しています。
今後も持続的な発展を目指し、各事業の強みを最大限に活かしながら、取り組みを一層強化していきます。
中長期的な企業価値向上に向けて
今ご説明した中期経営計画の達成および中長期的な企業価値向上に対しては、「資本効率の向上」「事業成長戦略」「非財務施策」の3つの観点で推進していきます。これらの取り組みにより、収益性の向上と、みなさまに成長期待を強く持っていただくことで、持続的な企業価値の向上を目指していきます。
これらを着実に実行するために注力・投資すべきと考えているのが、人的資本です。当社は、多様な事業を支える「人」を最大の資本と位置づけています。また、創業以来受け継がれてきた「誠実・信用・貢献」の精神が、私たちの最大の強みです。
一方で、変化の激しい時代においては、自ら考え行動できる人材こそが競争力の源泉となります。柔軟性・革新性・自律性を備えた人材の育成に、組織的かつ計画的に取り組んでいます。
次世代リーダーを育成するトップマネジメントプログラムは、すでに2期目に入りました。また、グループワイドの研修体系の整理・充実化も進めています。
AIの活用については、リーダー以上を対象にリテラシー研修を実施しており、一般社員からエバンジェリストとして活躍するための専門研修の受講も進めています。
①資本効率向上
資本効率の向上についてです。先ほどお伝えしたとおり、当社が企業として持続的に成長するために最も重要な資源は「人」です。人を「コスト」ではなく「投資」として捉えています。人材の成長が促進されることで、より良いサービスや製品が生まれ、社会に新たな価値を提供することが可能になります。
また、収益を単なる「コストと利益の構造」として見るのではなく、スライドの図のように、仕入れなどの「外部支出」と、製品・サービスを通じて新たに生み出した「付加価値」に分類する視点を導入しています。
この付加価値部分が増加することで、人的資本へのさらなる投資が可能となります。同時に、株主のみなさまや地域社会を含むステークホルダーへの還元も拡大できる、良いサイクルを回していくことができます。
人的資本への投資については、金銭的な報酬に加え、ワークエンゲージメント、やりがいや成長実感といった無形の価値も含め、社員への支援強化を図ります。また、株式報酬制度や階層別育成体系を導入することで、モチベーションと成長を促進していきます。
これらの人的資本への投資を起点とし、付加価値の創出と分配を通じて、持続可能な成長の循環を実現します。そして、この循環をより大きく力強いものへと育てていくことを目指します。
当期の中間配当については、DOE1.5パーセントを下限とし、配当性向30パーセントを目安に実施する方針に基づき、当初予想どおり1株あたりの普通配当を9円とします。2025年11月期の期末配当も、1株あたり9円を予定しています。
②事業成長戦略
事業成長戦略についてご説明します。付加価値を継続的に創出するためには、事業活動を通じて安定的かつ十分な原資を生み出しながら、より高収益な事業へ挑戦していくことが不可欠です。
そのため、当社が掲げる3つの事業戦略を「安定」「価値創出」「高収益」の3つの戦略領域に再構成し、バランスの取れた企業価値の向上を目指しています。
安定収益基盤領域では、医薬品・食品原料のプラットフォーマーとしての機能を活かし、原料プラットフォームを構築します。また、ニッチトップ戦略に位置づけられる外皮用剤や表面処理薬品など、専門性の高い分野でも堅実な収益を確保していきます。これはまさに、グループ全体の経営を支える土台となるものです。
価値創出領域では、主にヘルスケア・ビューティケア分野において、原料取引から自社ブランド展開までを一貫して行う川下展開を進めています。「Torriden」「Pureal」「シルキーカバー」「NAVISION DR」「NAIA」など、多様なブランド展開を通じて豊富な顧客接点を築き、これらの接点を活かして幅広い顧客層にアプローチすることで、市場拡大を目指していきます。
また、地域資源を活かした製品開発や社会的価値の創出にも取り組んでおり、これらの事業全体が収益性と社会性を両立し、今後の企業価値向上に大きく貢献すると考えています。
高収益成長領域では、CDMO事業を軸に成長分野に注力しています。製造機能に加えて研究開発や設備投資を推進し、ROE向上を見据えた高収益ドライバーとして引き続き育成していきます。
このような3つの領域を戦略的に推進することで、各種計画の達成と持続的な発展を実現していきます。
③非財務施策
非財務施策とともに、当社が目指す未来についてご説明します。当社は2025年に、「存在意義を明確にし、社員の判断と行動をつなぐ軸」として「明日の『あたりまえ』を創り続ける」という新たなパーパスを策定しました。
パーパスの策定は、一貫性のある経営の意思決定やガバナンス強化の一環として位置づけています。組織としての方向性を明確にすることで、説明責任や透明性の向上にもつなげていきます。
多様な事業を展開する当社にとって、共通の価値観や判断基準を持つことは、経営の一貫性を保ち、中長期的な企業価値の向上に資すると考えています。今後このパーパスは、中期経営計画の遂行や人材戦略の方向付けなど、経営のさまざまな場面で意識して活用していきます。
また、IR活動の強化として、当社では「経営企画部 広報・IRグループ」という部署名でIR組織を設置しています。みなさまとの対話がより充実するよう努めていきます。情報発信機能としては「X」のアカウントを開設していますので、ぜひご覧いただければ幸いです。
7月11日にリリースした「統合報告書2025」では、パーパスに込めた思いや、付加価値の適正分配に関する考え方などを詳細にご紹介しています。ぜひご覧いただければと思います。
今後とも当社の歩みにご期待いただくとともに、変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
質疑応答:下期の見通しについて
質問者:下期について、上期比と前年同期比のどちらも大幅増収ながら利益が極端に下がるという予想を立てられています。上期から考えると下期で基調変化が起きるのでしょうか?
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