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五十棲丈二氏(以下、五十棲):みなさま、本日は弊社決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。株式会社FUJI代表取締役社長の五十棲丈二です。

2026年3月期第1四半期決算について、まずは第1四半期決算概要、次に通期業績予想の順でご説明します。

2026年3月期 第1四半期 業績

第1四半期決算の概要です。スライドの表の青枠内をご覧ください。売上高は415億円、前年同期比で33.7パーセント増加しました。営業利益は51億円、経常利益は56億円、当期純利益も56億円と、いずれも前年同期比で増加しています。市場の本格回復により、大幅な増収増益となりました。売上高は四半期実績として過去最高額となりました。

受注高は前年同期比76.1パーセント増の436億円で、2024年第4四半期から引き続き400億円超えを維持しています。

営業利益増減分析

営業利益の増減分析です。スライド左側をご覧ください。2025年3月期第1四半期の営業利益32億円を基準に、順を追ってご説明します。

まず、粗利の増減は前期比プラス24億円となりました。プラスの要因について、販売数量の増加により、49億円増加しています。操業度は、主力機種2機種同時生産の影響もあり、9,500万円の増加にとどまりました。部材費は、コストダウンにより3,900万円の増加が見られました。

マイナス要因について、製造固定費は前期比マイナス13億円です。これはベースアップ(ベア)などに伴う労務費の増加が主な要因です。売価のマイナス13億円は、中国・その他アジアの割合が増加したことによるものです。

次に、販管費の増減は、前期比マイナス4億円です。要因として、人件費の増加によりマイナス2億円、研究費の増加によりマイナス1億円です。その他のマイナス1億円は、売上増に伴う荷造運賃などの増加によるものです。その結果、営業利益は前年同期比で19億円増加し、51億円となりました。

B/Sサマリー

B/Sサマリーです。スライドに記載のとおり、資産合計は13億円増加しました。主な要因は、受取手形及び売掛金の増加です。負債合計は34億円増加しました。その主な要因は、支払手形及び買掛金の増加です。一方、純資産は20億円減少しました。その主な要因は、自己株式の取得によるものです。

ロボットソリューション事業 業績

セグメント別の業績についてご説明します。まずはロボットソリューション事業の業績です。受注高は前年同期比で186億円増加し、406億円となりました。増加率は84.8パーセントです。

売上高は384億円、営業利益は61億円です。中国・アジア地域を中心とした活況な設備投資により、前年同期比で大幅な増収増益となりました。詳細については、次ページ以降で地域・業種ごとにご説明します。

ロボットソリューション事業 地域別売上高

地域別売上高について、前第4四半期との比較でご説明します。一番右側の棒グラフをご覧ください。まずは中国です。比率としては10ポイント上昇しました。堅調な投資が続くローカルのスマートフォン市場に加え、車載における旺盛な設備投資がありました。

他アジアの比率は4ポイントアップしました。生産拠点の多角化により、引き続き投資が増加傾向にあります。特にインド向けの投資が旺盛で、他アジアの約4割を占めています。一方、日本、北米、ヨーロッパでは、全業種において厳しい状況が続いています。

ロボットソリューション事業 業種別売上高

業種別売上高について、こちらも前第4四半期との比較でご説明します。まず、通信の比率は約3割となっています。これはインドで、中華ブランドに加え、米系スマートフォン向けに大型の設備投資があったためです。中国においても、ローカルスマートフォン向けが堅調に推移しています。

コンピュータは、ベトナムにて大型の投資がありました。サーバーは、主に中国・他アジア向けであり、多くがAIサーバー関連です。

一方、黄色で示した車載は、欧米で引き続き厳しい状況が続いていますが、中国のEV向けで複数の投資があり、増加しました。半導体関連(FUJI)は66パーセントが中国向けでした。半導体関連(FFT:ファスフォードテクノロジ)においては、メモリー市場が依然として低迷しています。

その上のグレーで示した「その他」には、サーバー向けの電源、家庭用蓄電池関連、電子タグなどが含まれています。

ロボットソリューション事業 機種別売上高

機種別の売上高です。下から2つ目の、水色で示した高速装着機「NXTR」をご覧ください。「NXTR」はユーザーによる設備認証数が増加し、「NXT」から「NXTR」への切り替えが本格的に加速しました。売上全体に占める比率では、「NXTR」と「NXT」が同比率にまで伸びてきています。

マシンツール事業 業績

マシンツール事業です。受注高は24億円で、前年同期比1.4パーセントの増加、売上高は26億円で、前年同期比8.7パーセントの増加、営業利益は1.2億円で、前年同期比255パーセントの増加となりました。

組織体制の刷新をはじめとする構造改革により、引き続き利益を確保していきます。

マシンツール事業 地域別売上高

マシンツール事業の地域別売上高です。米国は、関税政策の影響もあり伸び悩みましたが、日本及び中国では一定程度の自動車関連設備投資がありました。

業績予想

通期の業績予想についてです。2025年5月13日に公表した連結業績予想値を一部変更します。中国・アジア地域にて大型案件が増加・回復したことを受け、受注高を80億円、売上高を60億円上方修正します。

一方、営業利益は、比較的売価が高い欧米地域の需要が、当初の想定よりも低い状態であるため、期初に示した前期比約3割増の見込みを維持します。

セグメント別 受注・売上通期予想

セグメント別の内容については、スライドに記載のとおりです。

配当金

最後に、配当金についてご説明します。今年度の配当は、通期で1株当たり80円を予定しています。

私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:需要環境の詳細と今後の見通しについて

質問者:需要環境の詳細と今後の見通しについてお聞きします。第1四半期は、その他アジアの中でインドが非常に高い水準だったということでした。これについて、米系スマートフォン向けの大きな投資があったというコメントがあったかと思います。第2四半期以降への継続性は、どのように考えればよいか、教えてください。

五十棲:第1四半期においては、スマートフォンをはじめとするICT分野が非常に堅調に推移しました。確かに大型案件では一時的な投資が若干ありましたが、案件数は依然として多い状態を維持しています。

設備投資については、毎年第2四半期はやや落ち着く傾向が見られますが、案件数自体は引き続き安定しています。また、グローバルのスマートフォン分野においては、インドが堅調な設備投資を進めており、また中国のローカルメーカーも案件を継続しているため、需要は第2四半期以降も継続していくと見ています。

質疑応答:中国EV市場や車載関連設備投資の動向について

質問者:中国での車載関連の投資について、特に今後のEVの動向はどのように考えていますか?

五十棲:車載関連についてですが、EVに偏った設備投資ということはなく、自動運転関連やインフォテインメントを含め、EVでも内燃機関系でも、車載関連の一定の設備投資は堅調に続いています。

ユーザーは中国のEV市場において淘汰され、変化が起きるものの、全体的に車載関連は堅調に推移しています。また、欧州や米国における車載関連では顧客からの問い合わせが出始めており、底を打った気配が感じられます。

したがって、車載全体としては安定して推移し、中国においても堅調に推移していくと見ています。

質疑応答:「NXT」から「NXTR」への置き換えと生産性の見通しについて

質問者:「NXT」から「NXTR」への置き換えの動向についてお聞きします。売上比率は、第1四半期の数字からも順調に上がってきていることが確認できていますが、一方で2機種を生産することにより、操業度への効果が削がれる部分もあるのではないかと見ています。

下期にかけて、置き換え比率が高まると見込まれているかと思いますが、生産性の改善など、第2四半期以降はどのような見通しでしょうか?

五十棲:まず、第1四半期では、「NXT」と「NXTR」が非常に堅調に推移した結果、生産量が大幅に向上しました。その中で「NXTR」については、一定の量産体制が確保できたことで「NXTR」単体での操業度の向上が見られ、今後も生産性の改善が進む見込みです。

これまで500台体制を敷いていた新工場棟の「NXTR」生産体制において、今年度は2倍の体制を構築する予定です。これに加え、「NXT」がいよいよ終焉を迎えることから、リソースを集中できる環境が整います。

結果として、「NXTR」の生産性の改善が期待できるほか、部材費も、第1四半期における初期ロットの高価格部材の使用が概ね終了したため、コストダウンが見込めると考えています。

質疑応答:通期営業利益の見方について

質問者:通期予想の売上高が上方修正された一方で、営業利益は修正されませんでした。その理由として、米国や欧州の下期需要への懸念を挙げられていましたが、これはある程度保守的な見方なのでしょうか? その考え方について、教えてください。

五十棲:ご指摘のとおり、欧米の回復をどのように見るかだと思いますが、現時点での数値を基に、ある程度慎重な見方をしているのは事実です。

米国の関税についてもまだ変化が多い状況で、欧米がどのように回復するのかを慎重に見ていますが、欧州では問い合わせが増加傾向に転じてきています。ただし、どの程度回復してくるのかは予測が難しいため、現時点では現状を基にした数値だとご理解ください。

質疑応答:製品ミックスと地域ミックスが営業利益に与える影響について

質問者:製品ミックス、地域ミックスという観点で、車載向けのマージンが高く、大口スマートフォン向けのマージンが低いというイメージがあります。

営業利益分析のスライドでも売価が下がっているように見えますが、その要素も営業利益に影響しているのでしょうか?

五十棲:製品ミックスについて、欧米に限らず、中国、その他アジア、インドを中心に、比較的売価の低い量産型スマートフォン市場が一定の堅調さを示しているのは事実です。

一方で、車載関連や欧米市場の回復によって、利益が大きく変化するのはご承知のとおりです。その中で、当社の「NXTR」ならではの価値、特に自動化要素の部分については、売価改善を狙った提示が受け入れられるケースがかなり増えてきています。

中国市場が増えれば売価が下がるとは限りませんが、欧米市場の回復は価格改善に大きく寄与します。

質疑応答:ファスフォードテクノロジの第1四半期の業績及び通期予想について

質問者:ファスフォードテクノロジについて、第1四半期の受注、売上高、営業利益の実績と、御社の社内予想に対しての進捗、通期の予想に修正があるかどうかを教えてください。

加納淳一氏:第1四半期の受注高は18億円、売上高は16億円でした。この売上高に対する営業利益は、マイナス4億円程度です。

今期の通期目標は、受注高・売上高ともにそれぞれ100億円を見込んでいます。昨年度の実績は受注高が70億円、売上高が88億円であったため、それよりも高い目標を立てています。

なお、この予想は5月にアナウンスしたものから変更はありません。昨年からは、やや回復基調にあると捉えています。

質疑応答:売価の考え方と地域・製品別の変動要因について

質問者:売価の考え方について、中国系スマートフォンのお客さまが大口値引きを求めてくることが多いかと思います。第1四半期の減益要因は、従来どおり中国スマートフォン市場のお話だけですか? それとも中国市場で他業種にも広がり、価格が低下しているのでしょうか?

五十棲:中国市場ではスマホ・車載・サーバーなど複数分野に進出する顧客が増え、業種間で売価差をつけにくく、全体的にやや低めに推移する傾向があります。ただし「NXTR」のような新機種では可能な範囲で値戻しを実施しています。グローバル顧客は値戻しが難しい一方、欧州など単体案件では価値を価格に反映しやすいこともあります。地域性、製品、業種、さらにはグローバルユーザーといった組み合わせによって価格が変動するというのが実態です。

質問者:「NXT」の従来機種での値引きについては、おそらく変わっていないと思います。新製品である「NXTR」での大口での値引きは、「NXT」と同じという見方でよいでしょうか?

五十棲:「NXT」での値引きを「NXTR」で継続することは、まずありません。「NXTR」という価値によって、すべての案件に対して値戻しを行っています。ただし、同じラインを構築する際に、「NXT」か「NXTR」を選択する場合、無条件で高値での提案が通ることはありません。

例えばスマートフォンの生産においては、「NXTR」の中でも1ロボットタイプや2ロボットタイプなど、いくつかの種類があります。このモジュールに応じて、値引くところと高値をキープするところを戦略的に立て、できる限り値引きの影響が少なくなるよう、「NXTR」で値戻しを行っています。

質問者:営業増減益分析の資料には、「NXT」から「NXTR」への切り替えによる値戻しの影響は反映されていますか?

五十棲:売価下落にすべて含まれています。もちろん、中国スマートフォン関連が増加するとマイナス幅は広がりますし、欧米関連が増加すると、プラスになります。ただし、この中には、「NXTR」に置き換えることができ、そこで価格改善が起きたことによってプラスに働いている要素も含まれています。

質問者:「NXT」のみであれば、売価の下落幅はより大きかったということでしょうか?

五十棲:おっしゃるとおりです。

質疑応答:欧米の車載市場の動向と増加要因について

質問者:欧米の車載市場について、今後の投資増加には何かきっかけがあるのでしょうか?

五十棲:継続的な設備投資を凍結していた企業において、車載関連の仕事をしていたユーザーからの問い合わせが出てきている気配はあります。ただしそれは、「車載関連が動いたから投資が始まった」と言えるほど明確なものではないため、特に大きな要素は見えておりません。

とはいえ、投資検討に対する案件が、車載関連を手掛けていた欧州のユーザーからいくつか出てきています。比較論にはなりますが、このような話のなかった地域やユーザー層に、一部動きが見られるようになってきました。

質疑応答:関税率の決定による設備投資への影響について

質問者:さまざまな国で関税率が決まりつつある中、社長が風向きの変化を感じるものはありますか? これまで停滞していた設備投資ですが、米国に限らず、さまざまな地域で話題にのぼる可能性があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

五十棲:関税率が明確になって方向性が見えたことで、「投資を進めるぞ」というポジティブな流れを感じています。

例えばマウンター市場において、米国が非常に大きな市場であるならば、また違った傾向が見られるかもしれません。しかし、米国市場がそれほど大きくない中では、米国への納入分に対する価格転嫁をユーザー側が受け入れ、先に進めています。

一方で他の地域では、それほど関税を気にしていたわけではありませんが、関税率がクリアになり、動き出すべき設備投資が進み始めているという印象を持っています。そのため、少なくとも我々の業界においては、関税が設備投資を停滞させる要因にはなっていないと感じています。

質問者:ここから下がるリスクがなくなり、今の状態が続くか、増えるかの2択に絞られ、風向きとしては上がる可能性が増えてきているのでしょうか?

五十棲:そのとおりです。ただし、この動きがいつ始まったのかは、はっきりわからない部分があります。日本では、関税率が決まったという実感がありますが、そこまで気にしていなかった国や地域においては、すでに設備投資が始まっているように感じます。

ここから急激に上がるのか、すでに上がっているものが継続するのかについて、見解はさまざまです。現時点では、特段ネガティブな印象を感じる理由はないと思っています。