【QAあり】小松製作所、全世界62拠点の開発・生産体制で同一品質を実現 鉱山機械が伸長、アフターマーケット事業の強化を推進
目次

古賀智氏(以下、古賀):みなさま、こんばんは。株式会社小松製作所経営管理部IRグループGMの古賀智です。本日は株式会社小松製作所の説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。
これより、コマツの概要、中期経営計画の概要、業績および株主還元等についてご説明します。本日ご説明する内容は、スライドに記載のとおりです。
コマツの歩み

古賀:最初に、コマツの概要についてご説明します。コマツは、1921年に竹内明太郎によって創業されました。みなさまには、この名前はあまり馴染みがないかもしれませんが、創業者の実弟が戦後に首相を務めた吉田茂(実兄と説明しているが、正しくは実弟)であり、彼のことはご存知かもしれません。
竹内明太郎は、コマツの他にも日産自動車の前身となる会社を設立するなど、多方面で活躍した実業家でした。コマツの前身となる会社は、竹内明太郎が石川県で銅山を経営する際に、そこで使用する機械を自ら製作・修理するために設立した小松鉄工所という会社です。当初から、海外への雄飛や品質第一といった、現在のコマツの基盤につながる理念を掲げていました。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):コマツの沿革についてお話しいただきましたが、1955年に輸出を開始し、1967年には初の海外現地法人を設立されています。早い段階での海外展開へとつながったきっかけは何だったのでしょうか?
古賀:創業の精神についてお話ししましたが、建設機械・鉱山機械の市場規模が世界的に大きいという点が1つあります。また、創業者の竹内氏が当時海外を視察した際、高い技術力を目の当たりにし、それに対抗していこうという志を持ったことも理由です。
坂本:輸出が始まった当初に製造していたのは、鉱山機械だったのでしょうか? それとも、建設機械だったのでしょうか?
古賀:輸出の第1号はモーターグレーダーでした。その後、ほかの機械も輸出を開始し、1975年にはブラジルでの現地生産も始まりました。
コマツの概要

古賀:スライドには、現在のコマツの数字的な概要が示されています。売上高は2025年3月期で4兆1,044億円となり、その91パーセントが海外での売上です。営業利益率は16パーセントです。社員数は6万6,697人で、うち7割が海外在住となっています。
主要商品(建設機械・車両)

古賀:コマツの主要商品についてです。コマツといえば、一般建設機械(以下、一般建機)である油圧ショベルやブルドーザーを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際には鉱山機械や林業機械、フォークリフトなども生産しています。
2025年3月期の建設機械・車両部門では、鉱山機械が50パーセントを超えており、一般的にイメージされるコマツの主力商品とは少し異なるかもしれません。
主要商品(鉱山機械:採掘工法別)

古賀:スライドは、鉱山機械がどのような場所で使用されているかを示した図になります。主に、石炭や軟らかい鉱物を掘る「ソフトロック」と、火山由来の銅や金など硬い鉱物を掘る「ハードロック」と、鉱物によって工法が異なるため、それぞれに適した商品ラインナップを揃えています。
坂本:主力商品は鉱山機械とのことですが、おそらくスライドの写真のような場所で使用されるものだと思います。売上は建設機械・車両部門の半分ほどということでしたが、利益は全体のどのくらいを占めていますか?
古賀:利益についての現状は明確にはお示ししていません。この点については、後ほどアフターマーケットビジネスに関連してご説明します。
坂本:保守やパーツも含まれるのですね。
古賀:全体的にアフターマーケットビジネスの収益性が高く、鉱山機械ではアフターマーケットビジネスの割合が高いことから、売上に占める割合は半分ですが、鉱山機械のほうが高い利益を生み出しています。
坂本:その点を踏まえた上で、次に産業機械・その他についてご説明をお願いします。
主要商品(産業機械・その他)

古賀:産業機械・その他の分野についてご説明します。この分野で生産・販売している商品は、主に半導体産業向けと自動車産業向けに分かれています。半導体産業向けでは、半導体露光装置に使用されるエキシマレーザーや、半導体製造用の温調機器などを製造・販売しています。
自動車産業向けでは、大型のACサーボプレスやトランスファーマシンなど、自動車メーカーやそのサプライヤーで使用される製品を生産・販売しています。この分野においても、コマツは業界トップシェアを誇る商品群を展開しています。
事業別売上高(2025年3月期実績)

古賀:事業別売上高についてです。建設機械・車両部門が全体の92.3パーセントを占めており、産業機械およびその他の部門、リテールファイナンスが残りの7.7パーセントを占める構造になっています。
「建設機械・車両」地域別構成と売上高推移

古賀:スライドは、先ほどご説明した全体の92.3パーセントを占める建設機械・車両部門における地域別構成と売上高推移、そして一般建機と鉱山機械の内訳を示しています。
左側の円グラフは、建設機械・車両部門の地域別売上高構成を示しています。ご覧いただくとおわかりのように、日本よりも海外が占める割合が非常に大きく、地域の分散がかなり進んでいる状況です。北米が最も大きく、次いで中南米となっています。
右側のグラフは、一般建機と鉱山機械の売上高を年度別に金額で分類したものです。先ほどお話ししたとおり、2024年度では鉱山機械が一般建機を上回る状況です。
この背景には、2017年にアメリカの鉱山機械メーカーであるジョイ・グローバル社を買収したことが大きな要因となっています。また、現在はAI関連需要や金・銅などの需要が非常に高まっていることで、鉱山機械自体が成長していることも寄与しています。
コマツの特⻑①:グローバル開発・生産体制

古賀:ここからは、コマツの特徴についていくつかご説明します。1つ目は、開発と生産の体制です。コマツは全世界で62ヶ所の生産拠点を持ち、生産活動全体の約6割を海外の工場で行っています。
建設機械については、後ほどお話しするキーコンポーネントも含め、基幹部品を日本で生産し、その後各地で組み立てを行っています。また、需要が大きな地域を中心に工場を建設し、生産を行っています。この体制は、お客さまに迅速に機械を届ける機能を果たしています。さらに、後ほどお話ししますが、現地で開発体制を持つということも含まれています。
もう1つは、マザー工場制度です。商品開発機能を持つ生産拠点のことで、同じ工場で商品開発をしっかりと行うことで、生産と開発が一体となった品質管理を実現する機能を持っています。

坂本:世界の工場と生産体制についてお話しいただきましたが、中国に関しては、個人投資家からよく聞かれる質問なのではないかと思います。スライド10ページの円グラフを見ると、中国の売上高の比率は現在は2パーセントほどしかありません。以前はもう少し高かったような印象があります。この推移について教えていただきたいです。また、スライド11ページによると、現状では中国にはマザー工場がなく、生産拠点も少ないため、近年は縮小しているのでしょうか?
古賀:中国の売上高についてですが、ご指摘のとおり、2010年頃は建設機械や車両部門の売上が全体の約20パーセントを占めていました。現在2パーセントほどになっている理由としては、中国のマーケット規模が小さくなったこと、また競争が激化し、中国ブランドのシェアが非常に高まったことが挙げられます。
さらに、先ほどご説明したように、鉱山機械の全体に占める割合が増加したことで、中南米やオーストラリア、オセアニアを中心とした他地域の伸びが顕著なことも理由の一つです。
現在の中国についてですが、最終製品を組み立てる工場が2ヶ所あり、これらは中国向け生産だけではなく、東南アジアを中心とした地域への輸出拠点としても活用されています。また、中国は鋼材価格が他国と比較して安価であることから、コスト競争力が依然として高い状況にあります。そのため、中国国内市場向けだけでなく、他地域向けの生産にも利用しています。
コマツの特⻑②:キーコンポーネントの自社開発・自社生産

古賀:2つ目の特長です。先ほども少し触れましたが、キーコンポーネントの自社開発・自社生産は、コマツの重要な強みの1つです。コマツでは、機械の性能や品質を決定的に左右する重要な部品をキーコンポーネントと呼び、自社で開発・生産を行っています。独自の技術を開発・生産過程に織り込んで、開発段階からキーコンポーネントを作り込むことによって、最終製品の性能や品質において絶対的な差別化を図っています。
もう1つの特長は、日本で一極生産を行うことで、世界中の工場に同一品質のコンポーネントを安定的に供給できる点です。また、これは後ほど説明するアフターマーケットビジネスにも関連しますが、コンポーネントを自社生産することで、その交換部品の需要が当社の売上や利益に貢献しています。さらに、リマンビジネスと呼ばれる、交換にとどまらず重要部品を再生する事業も展開しています。
コマツの特⻑③:環境変動に強い生産・調達体制

古賀:3つ目の特徴です。需要や環境変動、為替を含む変動に対して強い生産・調達体制を構築しています。コマツのサプライチェーンの特徴は、リスクを最小限に抑えることを重視しています。
世界各地の複数の工場で同じような製品を製造し、それを世界各地に供給する体制を整えています。また、調達に対しても同様の体制を導入しており、これを「グローバルクロスソーシング体制」と呼んでいます。
一方、「調達マルチソース体制」は、地政学的リスクや災害などのリスクが大きくなっている現在において、ある1つの国や地域の工場に重要な部品の供給を依存すると、その供給が寸断された際に全体がストップしてしまうというリスクが生じます。そのため、同一の部品を必ず2つ以上の工場や地域から調達できる体制を整えています。
コマツの特⻑④:業界に先駆けたイノベーション

古賀:4つ目の特長は、業界に先駆けたイノベーションです。これはコマツが常に業界に先駆けて開発を進めてきたことを示しています。1つ目として、スライド左側にある「Komtrax」です。2001年から建設機械への標準搭載を開始しました。具体的には、建設機械に搭載されたGPSなどの機器を活用して、機械の状態を常に把握できる体制を構築しています。
これにより、さまざまな機械の状況を把握し、サービス向上にも活用しています。さらに、お客さまの機械のライフサイクル全体を通じて、当社がサポートする体制を整えています。
2つ目は、真ん中の「AHS」というもので、超大型ダンプトラックの無人運行システムです。これはコマツが2008年に業界で初めて商用導入を開始し、現在では約940台(2025年9月末時点)が稼働しており、もうすぐ1,000台に達する状況です。
無人運転の導入により、事故の減少が期待できるほか、運転者の人件費削減、人が運転した際の荒い操作が減ることで部品への負荷も軽減されるという、非常に大きな効果を発揮しています。
3つ目が、一番右側の「スマートコンストラクション」で、2015年からサービスを開始しています。「スマートコンストラクション」は1つの概念で、日本を中心にこれから人手不足が進む中で、建設現場をどのようにスマートに運用するかを、デジタルトランスフォーメーションやIT機器を活用して解決しようとするものです。
コマツの特⻑⑤:コマツウェイ

古賀:5つ目の特長が「コマツウェイ」です。私たちはコマツの創業者から脈々と受け継いできたさまざまな企業文化を築き上げてきました。その企業文化を日々の業務にどのように活かしていくかを明文化したものが、この「コマツウェイ」です。
つまり、価値観や心構え、会社内での行動様式を、グローバルに共有するために明文化しています。これは日本語だけでなく、さまざまな言語に翻訳されたものを作成し、みなさんに読んでいただくことで共有化を図っています。
コマツの存在意義:私たちの存在意義・価値観・ブランドプロミス

古賀:2025年度から始まった新しい中期経営計画についてご説明します。まず、中期経営計画における「コマツの存在意義」についてお話しします。スライドに示しているのは、私たちの会社が100周年を迎えた2021年にさかのぼります。
その際、そもそもコマツとはどのような会社であり、何のために存在しているのかをあらためて定義し直し、それを明文化・言語化したものがこちらのスライドです。
スライドには、「挑戦する」「やり抜く」「共に創る」「誠実に取り組む」と記載されていますが、これが私たちの共通した価値観だと再定義しました。その中で、「『品質と信頼性』を追求し、企業価値を最大化する」という経営の基本は変わらず、社会的責任をどのように果たしていくかを併せて再検討し、持続的な成長につなげていきたいと考えました。
2025年の中期経営計画は、この存在意義を基盤に、新たな活動を検討したものです。
ありたい姿の再定義

古賀:今回の中期経営計画において、まずあらためて「ありたい姿」とは何かを定義しました。それが、こちらのスライドです。我々はこの「ありたい姿」を「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」として再定義しました。
これまでのご説明のとおり、人手不足やデジタル化、機械の高度化といった社会の動きが進む中で、私たちはお客さまと共に、安全で生産性の高いクリーンな現場を実現していきたいと考えています。
中期経営計画(2025〜2027年度)

古賀:重点的な成長戦略として、「イノベーションによる価値共創」「成長性と収益性の追求」「経営基盤の革新」の3つを掲げています。この3本柱を基に、新しい中期経営計画を策定しました。
次のスライド以降で、成長戦略の3本柱に基づき、それぞれに対してどのような活動を行うのかをいくつかご説明します。
カーボンニュートラルへのロードマップ

古賀:1つ目は、カーボンニュートラルに対してどのように取り組んでいくかという点です。コマツは、2050年を目標にカーボンニュートラルを達成しようという目標を掲げています。
我々がカーボンニュートラル達成に向けて最も重要だと考える点は、当社のCO2排出量のうち90パーセントが、私たちが生産する製品から発生しているため、その部分をどう減らすかということです。
さまざまなテクノロジーを駆使しながら、製品に適した動力源を探るトライアルを繰り返しています。スライドで示している図は、現行のディーゼルエンジンがどのようなものに代替されるかを示したものです。
また、スライド右側には「コトによる改善」と記載されていますが、これはDXなどを活用することで改善し、CO2排出をどのように削減できるかをイメージ化したもので、たくさんの施策を進める必要があることがわかります。したがって、開発面では全方位で展開しています。
カーボンニュートラルに向けた商品開発

古賀:カーボンニュートラルに向けた取り組みはかなり時間がかかりますが、このスライドでは、現在開発している具体的な商品を示しています。
比較的小型のものについてはバッテリーを使用することで置き換えが可能ですが、大型のものについては、バッテリーでは重量が重すぎたり、コストが高すぎたり、あるいは充電方法に課題があるため、それだけでは解決できません。そのため、水素エンジンや、スライド右下に記載されているディーゼルトロリー式といって、鉱山で使用されるダンプトラックで、ディーゼルエンジンとトロリー、つまり電車のように架線から電気を供給する仕組みの導入も開始しています。
スマートコンストラクション

古賀:スマートコンストラクションについてです。お客さまの現場を見える化し、仕事の効率化を図る取り組みです。工事現場全体をデジタル技術を活用して可視化した上で、その後吸い上げられたデータを読み込みます。
例えば、機械が図面を読み込み、そのとおりに施工を行ったり、オペレーターがモニターに映った画面を見ながら施工を行ったりすることが可能です。そのため、熟練のオペレーターがいなくても工事ができるようになり、結果的に生産性や安全性の向上につながります。
また、先ほど「コトによる改善」について申し上げましたが、スマートコンストラクションの取り組みはエネルギー削減やCO2の低減にもつながるのではないかと思っています。
コマツ初のSDV建機

古賀:SDV建機についてです。これは、テスラが打ち出した「Software-defined vehicle」といった機械を指します。これまで、建設機械はハードウェア中心だったのに対し、ソフトウェアの進化に対応して機械が適切に動作するものを「SDV」と呼んでいます。我々も2024年12月から、SDVタイプの建設機械を日本市場で販売開始しました。
例えば、スライドに「3Dマシンガイダンス」と記載されていますが、これは3D画像を機械が読み込む仕組みです。オペレーターの方は、その3D画像を機械上で見ながら、画面に映る図面に基づいて施工ができるようになっています。
また、さまざまな新機能が搭載されており、「ジオフェンス」というバーチャルフェンスを空間に設定して、それより先の空間に機械が動かないようにすることで事故が起こりにくくなっています。このような機能を多数備えたSDVタイプの建設機械を販売しています。
では、どこがSDVなのかというと、お客さまが進化した機能をどの程度まで使用するかを選択できるメニュー方式を採用している点です。ソフトウェアのアップデートにより、サービスレベルを調整できる仕組みとなっています。
鉱山機械の自動化、遠隔操作化

古賀:鉱山機械の自動化と遠隔操作化についてです。先ほど少しご説明しましたが、特に超大型ダンプトラックについては、無人化がほぼ標準となっています。すべてが無人というわけではありませんが、大型のダンプトラックについては、ソフトウェアにレトロフィットキットを装着することで無人化が可能なものがほとんどを占めています。
スライドに記載している数字は昨年のものですが、全世界で862台が稼働している状況でした。現在では、940台程度にまでさらに増加しています。
また、スライド右上にある「自動化」の項目について、超大型ダンプトラックにおいては、さらなる効率性の向上や生産性の改善を追求しています。現在は中央管制センターのようなところで集中的にコントロールしていますが、今後は機械が自律的に考え、動くような仕組みを目指し、さらなる改善を進めようと考えています。
坂本:AHS(無人ダンプトラック運行システム)の稼働台数は年々増加していますが、現在、どのくらいの割合が無人ダンプトラックになっているのでしょうか? 現場ごとに適用の可否があると思いますが、将来的にはどの程度まで自動化が進むと想定していますか?
古賀:現状、出荷されている超大型のものはほとんどが無人化されています。ただし、世の中で稼働しているものの中には、まだ無人化されていないものも多く存在します。
将来どのくらいの割合になるかは明確にはわかりませんが、過去の推計では、大型鉱山機械の約4割が無人ダンプトラックになると言われています。この割合をさらに高めるために、スライド右上に記載の鉱山機械向けダンプのSDV化に取り組んでいます。
先ほどお話しした中央管制システムの場合、動かせる台数が限られており、また、ある程度まとまった台数でなければ効率が良くならないという課題がありました。台数が少なすぎると導入が難しく、多すぎると制御が困難になるのです。その解決策として、SDV化が必要なのです。比率については現時点では申し上げられませんが、今後さらに増加していくと考えています。
アフターマーケット事業の強化

古賀:アフターマーケット事業の強化についてです。これは非常に重要な点です。当社では、建設機械本体以外の部品やサービスの売上比率が昨年は51パーセントでした。つまり、新車の販売よりも部品サービスの売上のほうが多い状況になっています。
この51パーセントという数値は、一般建機と鉱山機械を合わせた数字ですが、鉱山機械だけに限ると、この比率は65パーセントから70パーセント程度となります。したがって、新車販売に比べ、部品やサービスの売上が2倍程度あるという状況です。これがなぜ重要かというと、先ほどお話ししたように、アフターマーケット事業は収益率が高いからです。
もう1つは、アフターマーケット事業は、新車販売とは異なり、需要の変動が比較的少なく、安定した収益源となり得るためです。
この事業を強化するための具体的な施策として、一般建機のお客さま向けに、品質の高い純正部品の提供を行っています。当社はキーコンポーネントを内製化しており、部品の品質に自信があることから、メーカー保証期間の延長に関する契約をお客さまと締結し、それを通じて純正部品の売上拡大を図る活動を行っています。
さらに、リマニュファクチャリング事業にも注力しています。これは、鉱山機械の重要部品はコストが高く、なかなか調達が難しいため、お客さまの使用済みの重要コンポーネントを当社で分解、洗浄、再組立することで再生品を製造するという事業です。お客さまにとって大きなメリットがあり、部品を有効に活用することでESGにも貢献するもので、非常に意義のある取り組みとなっています。
坂本:アフターマーケットについて、売上が伸びているということですが、伸びた理由としては、御社の営業が努力されているということが当然あると思います。また、システムが入っていますので、適切な使用時期を把握して顧客に交換を促されていると思います。
一方で、建機の分野では、消耗品については従来からサードパーティの製品があり、新興国や、先進国のコストを気にする顧客の間ではかなり利用されていると思います。しかし、鉱山機械は大型で、なかなかサードパーティが部品を製造できないのではないかと思います。また、部品が電子化などで高度化してきているため、サードパーティの製品に不安があり、純正品を使うという考え方もあると思います。この辺の背景について教えてください。
古賀:特に鉱山機械においてアフターマーケットビジネスの割合が高いと先ほどお話ししましたが、それは我々からすればイミテーションとなるサードパーティ製の部品がないことが大きな要因です。
世界全体の需要を見た場合、一般建機は年間約50万台から60万台程度であるのに対し、鉱山機械は年間約5,000台しかないという状況です。そのため、鉱山機械はニッチな市場であり、サードパーティによる参入障壁が非常に高くなっています。
坂本:規模が大きく、コストに見合わないということですね。
古賀:おっしゃるとおりです。そのため、お客さまとしては基本的にメーカーが供給する専用部品を使用する傾向があります。我々も品質には自信がありますし、鉱山機械は24時間稼働するため、お客さまの考え方としては、イニシャルコストよりも長期的な観点でのライフサイクルコストを重視されています。
林業機械事業

古賀:続いて、林業機械事業についてです。林業機械事業は、現在セグメントとしては建設機械・車両部門に含まれています。この事業は、もともと2004年に買収を通じて得たものです。
事業環境として、世界人口の増加に伴い木材生産も増加しています。これまで林業機械は比較的ニッチなマーケットであり、あまり機械化が進んでいませんでした。
しかし、これからは機械化を進めるとともに、サステナビリティの観点から、単に伐採するだけでなく、森林を再生するニーズも生まれており、そのような事業に取り組むことも必要だろうと考えています。当社としては、林業機械事業を建設機械、鉱山機械に次ぐ第3の柱と位置づけ、循環可能なビジネスとして推進していきたいと考えています。
AIの活用

古賀:AIの活用についてです。これは、多くのみなさまが非常に関心を持っている分野ではないかと思います。もちろん、さまざまなオフィスでの効率化にも活用していますが、スライドに挙げている2つの特徴的な活用例をご紹介します。
1つ目は予防保全への活用です。「Komtrax」を通じて機械の状況を把握し、その情報を基にAIが故障などを予測し、それをサービスに活かすという取り組みです。
もう1つは、生産現場での活用です。現在、最適な生産計画などは主に人間が立てていますが、それをさらに高度なAIに担わせる活用を検討していきたいと考えています。
中⻑期的な事業ポートフォリオの方向性

古賀:中期的な事業ポートフォリオの方向性についてです。スライド左側の図では、現状の事業ポートフォリオの構成と、将来どのように動いていくのかを、収益性と成長性を組み合わせて示しています。
全体として、どのビジネスも少しずつ拡大しつつ、利益率を向上させていきたいと考えています。その中で、比較的小規模なビジネスについては、成長性や収益性の改善が比較的高い水準で見込まれると考えています。
林業機械に関しては、成長性が比較的高いと見込んでおり、軸となるのは鉱山機械と一般建設機械ですが、第3の柱として育成していきたいと考えています。
また、自動車産業向けの産業機械についてよく質問をいただきますが、他の事業との直接的なシナジーというよりも、当社の建設機械や鉱山機械のビジネスが自動車産業や半導体産業などと関連性を持つ事業であるため、こうした分野とお付き合いをしていくことは重要性が高いと考えています。
経営目標

古賀:今回の中期経営計画で掲げている経営目標についてお話しします。表の上半分が財務目標、下半分が非財務目標となっています。売上高や収益性については、「業界水準を超える」という少し定性的な表現を採用しています。
従来からこのような表現をしていますが、その理由は、為替の影響や需要の変動要因が多いためです。先ほどアフターマーケットビジネスが拡大すれば需要はあまり影響を受けないとお話ししましたが、新車の需要はある程度変動するため、前提条件を明確にせずに数値目標を設定するのは難しいという背景があります。
一方で、今回の経営目標では、フリーキャッシュフローについて、3年累計でM&Aを除き、1兆円を生み出すという新しい目標を掲げています。
ROEについては、10パーセント以上を掲げています。「10パーセント以上」という表現に対して「もう少し高くてもいいんじゃないの?」というご意見もよくうかがいますが、あくまで最低目標として設定しています。
また、新しい点として、リテールファイナンス事業のネットD/Eレシオについて、従来の中期経営計画では5倍と設定していましたが、今回は6倍に拡大しました。
これは、特に一般建機の販売を拡大するにあたり、現在は需要がそれほど大きくない地域、例えば中近東やアフリカなどへの展開を図る上で、リテールファイナンスの拡大が重要だという考え方です。
坂本:いきなり新車を購入できる資金がない顧客のために、ファイナンスを提供するというビジネスですか?
古賀:おっしゃるとおりです。
また、株主還元については従来の方針に大きな変更はありません。配当性向は40パーセント以上を継続しています。自己株式の取得については、財務の健全性や株主資本比率などを総合的に考慮しながら、適時に実行する方針です。
実際のところ、財務の健全性はすでに十分に担保されています。フリーキャッシュフロー1兆円を目標とし、M&Aを優先しますが、大規模なM&Aの案件がない場合には、このフリーキャッシュフローは基本的に株主還元に回すというのが当社の方針であるとご理解ください。
非財務の部分については、2030年までにCO2の自社排出量を半減し、2050年にはカーボンニュートラルを達成するという、非常にチャレンジングな目標を掲げています。
社会課題解決に向けて主なテーマとKPI

古賀:経営目標の非財務区分の社会課題解決として、いくつかのKPIを設定しています。今後3年間の目標として、女性管理職比率を全世界で14パーセント以上にすることを掲げています。
AHS、これは無人ダンプトラック運行システムですが、その累計導入台数については1,000台以上を目標としています。アフターマーケット事業の売上高の伸び率は、3年間で為替の影響を除いたベースでプラス15パーセントを目指します。
また、CO2削減については、生産部分で2010年度比マイナス39パーセント、製品稼働部分では2010年度比マイナス32パーセントとすることを目標としています。
年間業績推移

古賀:業績と株主還元についてです。業績についてですが、2022年から2024年までの3年間は過去最高の売上高と利益を記録しました。しかし、2025年については円高を織り込んだ影響や、直近のインドネシア需要の減少もあり、前年に対して減収減益となっています。
2025年度の業績見通し

古賀:2025年度の業績見通しを数字に表したものです。4月の見通しに対して最新の見通しは若干上方修正しています。為替の影響などが大きかったかたちです。
2025年度の各セグメント売上高と利益の見通し

古賀:セグメントごとの状況はスライドのとおりです。前年比で見ると、建設機械・車両部門が円高の影響やインドネシアでの需要減少の影響を受け、減収減益となりました。一方、その他のセグメントでは減収増益または増収増益となっています。
<建設機械・車両>2025年度の地域別売上高(外部顧客向け)の見通し

古賀:アジア地域については、インドネシアでの需要減少の影響が大きく、前年比で大きなマイナスとなっています。
配当方針 配当金および配当性向の推移

古賀:配当についてです。配当性向40パーセント以上を維持し、継続して安定的な配当に努めています。また、過去2年は連続して1,000億円規模の自己株式取得を行い、総還元性向は最新では85パーセント程度となっています。このため、現状では利益の大半やフリーキャッシュフローのほとんどを株主のみなさまに還元している状況です。
坂本:2年連続で自社株買いを実施されている中で、フリーキャッシュフローの使い方についてもお話しいただきました。基本的には、M&Aがない場合や目標である1兆円のフリーキャッシュフローを超過した分について、株主還元の手段として配当ではなく自社株買いを選択する方が機動的というイメージでしょうか? 配当と自社株買いのバランスについてお話しいただけますか?
古賀:それは、その時々の状況によって決定されるものだと思っています。
コマツの株価推移

古賀:最後に、株価の状況についてご説明します。これは非常に長期的な視点で捉えた株価の状況ですが、過去25年ほどを振り返ると、2000年頃には株価が400円から500円程度だったものが現在は5,000円になっており、過去25年間で12倍になりました。過去25年間で12倍という数字が良いのか悪いのかは議論の余地がありますが、長期間株を保有していただいていれば、価値が相当大きくなったということは確かです。
また、過去5年間のトレンドだけを見ると、その前の期間はあるボックス圏で上昇と下落を繰り返していましたが、COVID-19以降は一時的な下落はあったものの、その後持ち直して右肩上がりで上昇している状況が見られます。
こうした背景には、鉱山機械の需要増加や鉱物価格の上昇との関連があるのかもしれません。最近ではトレンドが変わり、直近で上場来高値を記録しています。我々としては、株価が企業価値のすべてを示しているかどうかはわかりませんが、市場価値と企業価値の双方を高めていきたいと考えています。
ご説明は以上となります。
質疑応答:鉱山機械と一般建機の中長期的な展望について

坂本:「成長のイメージを描くために、新中期経営計画で注力する事業領域と重点施策を今一度教
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