代表メッセージ
俊成誠司氏(以下、俊成):インテリックス代表取締役社長の俊成です。
決算説明に入る前に、株主のみなさま、ステークホルダーのみなさまに感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。当社インテリックスは今年7月17日に30周年を迎えます。これもみなさまのご支援があってこそです。本当にありがとうございます。
30年前、中古マンションは、マンションを購入される方にとっては室内や設備がどうしても古く、修繕履歴がないことからリフォーム業者にとっても不安があり、さらには住宅ローンが利用できないといったマイナス面が多い状況でした。そのため、新築信仰の強い日本では、中古マンションの流通市場があまり整備されていませんでした。
当社は、中古マンション流通を整備するために、新築よりも住みやすい間取り、最新の設備機器、修繕履歴の開示、住んだ後でも安心できるアフターサービス保証、さらには金融機関とのリノベーション物件用の住宅ローンの開発などを行い、住宅選びの選択肢としてリノベーション物件という新たなカテゴリを創出してきました。
これは画期的な取組であり、創立30周年を迎えるにあたり、今期は自分たちのコアバリューをあらためて振り返り、実行に移してきました。
当社のコアバリューは、仕入から内装、販売後のアフターサービスに至るまでの一気通貫した現場力、そして事業期間を自ら律することで、市場の変化にスピーディかつ柔軟に対応することです。このコアバリューが、これまで事業の継続性を支えてきました。
一方で、これからはさらに人手不足や環境問題など、数々の課題が目の前に現れてきます。これらは不動産・建築業界だけでなく、社会全体が抱える問題です。このような課題に対して、当社は事業を通じて試行錯誤を重ねてきました。
例えば、省エネリノベーションにより室内環境を整え、より健康的な生活ができる空間を作ることや、「FLIE(フリエ)」を通した住宅価値のオープン化によって業界の省力化と透明性を向上させることです。これらは、当社のコアバリューである現場力があるからこそ実現できます。
リノベーションが中心となる時代を迎えるにあたり、私たちは足元をしっかりと見据え、コアバリューを原動力として、12月にホールディングス化を実現し、さらにスピーディで自立的な経営を目指していきます。
INDEX
決算説明に入ります。1部から6部までご説明します。
1-1 2025年5月期 サマリー
2025年5月期の決算概要です。
当期は、経常利益および当期純利益ともに過去最高益を達成しました。これまでの既存事業の深掘りと新規事業の開拓が着実に進んでいます。
2025年5月期のサマリーとしては、各事業の業績改善、業容拡大のための積極展開、それを支える組織体制の3点が挙げられます。
リノベーション事業分野においては、主軸である「リノヴェックスマンション」の業績改善と周辺事業の業容拡大が成果を上げています。
また、ソリューション事業分野では、長期保有していた一棟収益物件の売却により、大幅に利益を押し上げました。さらに、ホテル事業や再生住宅パートナー事業においても着実に収益を上げています。
このように収益体質が改善されている中で、さらなる成長を目指し、積極的な仕入を進めています。リノヴェックスマンションの仕入では、高額帯を含めて物件数を増やし、仕入金額を前期の1.5倍、収益物件では前期の2.4倍に積み上げています。
リースバック物件についても、固定資産としてコンスタントに取得を進めた結果、バランスシートの総資産は500億円規模を超えてきました。
また、事業規模の拡大を支えるために盤石な事業体制の強化を進めています。スピード感を持った経営と今後の持続的な成長を実現するべく、ホールディングス化の準備に着手しました。
重点施策である人的資本経営の推進、本社移転、人事制度の見直しなどを通じて、当社グループ社員のエンゲージメント向上に向けた取組を進めてきました。
1-2 連結業績の概況
連結業績の概況です。
「リノヴェックスマンション」販売の売上高は、前期の厳選仕入の影響により、前期比2.1パーセント減となりました。一方、1件当たりの販売価格は2,940万円で、前期から5パーセント増の140万円アップしました。1件当たりの利益額も増加しています。
また、リノベーション請負事業などその他事業の拡大により、リノベーション事業分野の売上高は前期比1パーセント増、粗利額は22.8パーセント増と大幅に増加しました。
一方、ソリューション事業分野では、一棟収益物件の売却に加えて、収益物件共同事業やホテル事業の寄与により、売上高は前期比22.2パーセント増、売上総利益は61.5パーセント増と大きく増益となりました。
営業利益は販管費の14パーセント増を吸収し、前期比1.5倍と大幅な増益となりました。経常利益は2.5倍となりました。なお、当期純利益には、本社移転に伴う補償金3億円強が特別利益として計上されています。
1-3 連結貸借対照表の概況
貸借対照表の概況です。
積極的な仕入の結果、販売用不動産が前期比で40パーセント、80億円増加し、285億円となりました。また、長期保有収益物件はリースバック物件を含めて前期比で22億円増加し、138億円となっています。
一方で、物件の増加に伴い、有利子負債も増加した結果、自己資本比率は前期末比で3.7ポイント減少し、25.4パーセントになりました。
2-1 2026年5月期 業績予想
2026年5月期の業績予想についてご説明します。
今期は、事業ポートフォリオの拡充を進めることで、さらなる増収および営業利益の増益を目指します。
まず、リノベーション事業分野の売上についてです。「リノヴェックスマンション」販売は、販売件数1,047件、販売平均価格3,305万円となり、前期比11.2パーセント増の売上高346億円を見込んでいます。
また、同事業分野では、リノベーション内装請負事業において24億円の売上を計画しています。
一方、ソリューション事業分野では、一棟収益物件などの売却で61億円、SPC組成を含むリースバック事業で34億円、不動産小口化商品「アセットシェアリング」シリーズの販売で17億円、ホテル事業で13億円、再生住宅パートナーによる収益物件共同事業で35億円の売上を見込んでいます。
これらにより、連結売上高は前期比25.9パーセント増の564億1,500万円、売上総利益は前期比7.4パーセント増の85億6,300万円を計画しています。
販管費については、物件販売に伴う仲介手数料の増加や人的資本経営の推進による人件費の増加などにより、前期比8.6パーセント増を見込んでいます。これらのコストを吸収し、営業利益は前期比4.7パーセント増の24億9,800万円を計画しています。
経常利益は、積極的な仕入による保有物件の増加と金利上昇を踏まえた営業外費用の増加(前期比10.2パーセント増)を計上しており、前期比7.4パーセント減の20億600万円を計画しています。
当期純利益については、前期に特別利益として計上した移転補償金3億1,800万円を剥落するため、前期比19.3パーセント減の13億4,600万円を計画しています。
2-2 株主配当予想
株主配当予想についてです。
今期の配当方針としては、投資家のみなさまに目先の利益変動による配当金のぶれを少なくし、中長期的に安心して株式を保有いただきたいと考えています。
具体的には、配当性向30パーセント前後を目指しながら、安定した形での配当を行っていきたいと考えています。
2025年5月期の期末配当金については、好調な業績結果を踏まえ、普通配当金として1株当たり22円、創立30周年記念配当として7円、合わせて29円とします。その結果、1株当たりの年間配当は46円となります。
2026年5月期の配当予想については、当期純利益の業績予想が前期を下回るものの、グループ全体の事業収益力が着実に向上していることを踏まえ、配当方針に基づき、1株当たりの年間配当を46円とする予定です。配当性向は27.7パーセントを見込んでいます。
3-1 中古マンション市場が新築市場を継続して上回る
中古マンション市場の動向についてご説明します。
スライドのグラフは、首都圏における中古マンションの成約件数と新築マンションの供給戸数を比較したものです。公益財団法人東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)のレインズデータをもとに作成しました。
2016年から2024年までの9年間、中古マンションの取引件数が新築を上回っています。また、2024年の実績では、新築マンションの供給戸数が2万3,003戸、中古マンションの成約件数が3万7,222戸となっています。
建築コストの高騰が影響し、新築と中古の供給戸数の差はますます広がっていくと予想されます。
3-2 新築と中古のマンション価格ギャップが拡大
スライドのグラフは、首都圏の新築マンション販売価格と中古マンション成約価格の推移を表しています。両者の価格差は2012年には2,040万円でしたが、2024年には2,930万円と、価格ギャップが1.4倍に拡大しています。
直近の2025年5月時点では、新築マンションの平均価格は9,396万円(前年比25.5パーセント増)となっており、特に東京都23区では平均価格が1億4,049万円(前年比36.1パーセント増)と大幅に上昇しています。一次取得の方が都心の新築マンションを購入することが困難な状況となり、価格上昇の波は周辺部にも広がってきています。
3-3 中古マンション市場の動向(前年比)
スライドのグラフは、首都圏の中古マンションにおける成約件数と在庫登録件数の前年比を表しています。
青の線で示される成約件数は、2024年11月以降、7ヶ月連続で前年同月を上回っています。一方、グレーの線で示される在庫は、2024年5月以降、13ヶ月連続で前年水準を下回っています。
総じて、中古マンションの需給が好調であることを示しています。
3-4 中古マンション市場の動向(在庫件数の実数)
在庫と成約の状況をさらに詳しく見ていきます。
スライドのグラフは、首都圏の中古マンション在庫件数をエリア別に表しています。
ゴールドの線は東京23区の在庫数、ブルーの線は周辺エリア(千葉、埼玉、横浜、東京23区以外の東京エリア)の在庫数を示しています。
ゴールドの線で示される東京23区では、2023年6月の在庫が2万3,383戸に対して、2025年5月には1万9,720戸と約15パーセント減少しています。ただし、直近では在庫減少が横ばいの傾向にあります。
一方、ブルーの線が示す周辺エリアでは、2023年6月の2万2,489戸の在庫に対して、2025年5月は2万4,594戸と約9パーセント増加していますが、最近では少しずつ在庫が減少しています。
2023年以降、都心部の住宅に資金が集中する傾向が続いているものの、直近では都心部の価格高騰の影響も見られます。特に都心3区では、タワーマンションを中心に在庫が増加しつつあります。
3-5 中古マンション市場の動向(成約件数の実数)
スライドのグラフは、毎月の成約件数の推移を示しています。水色の線で示したとおり、2025年1月から5月までの累計では前年同期比で26.4パーセント上回り、成約件数は過去数年に比べて大きく増加しています。
新築マンションの高騰の影響もあり、中古マンションの需要は引き続き堅調に推移する見込みです。
4-1 2026年5月期 重点方針
2026年5月期の重点方針についてご説明します。当社は2026年5月期において、「持続的成長に向けた経営基盤の構築と事業の拡充」を重点方針として掲げています。
具体的には、事業ポートフォリオの拡充、積極仕入による規模拡大、人的資本経営の実践を中心に取り組みます。
これら3つの重点方針を着実に実行するため、本年12月にホールディングス化を行います。ホールディングス化の実現後、中期経営計画を公表する予定です。
4-2 ホールディングス化の目的と移行概要
当社は創立30周年を迎えるにあたり、次の10年、そしてさらにその先を見据え、より機動的な経営の実践、強固なガバナンス体制の構築、そして次世代の育成を推進するため、持ち株会社制への移行を予定しています。
これにより、経営資源配分の最適化を図り、当社グループ全体の価値向上と持続的な成長を実現します。
4-3 事業ポートフォリオの拡充を目指す
ホールディングス化を進めることにより、当社グループ各事業が採算性を強く意識した体制作りを推進します。
かつての「リノヴェックスマンション」販売が中心だった収益構造から、複数事業の収益の柱を強化し、ポートフォリオの拡充を図ります。
今期予定している各事業の売上の増減率は、スライドに記載のとおりです。多くの事業で売上拡大を見込んでいます。
4-4 人的資本経営の実践
当社の次なる成長に向けて、次世代の育成と従業員エンゲージメントの向上が不可欠です。今期も、引き続き重点方針の柱の一つとして、人的資本経営を推進していきます。
4-5 人的資本経営の推進状況
中長期的な人材確保に向けて、2024年より新卒の積極的な採用を開始しました。来年入社予定の2026年卒、そして2027年卒の採用も継続して進めていきたいと考えています。
多くの優秀な人材を確保するため、新卒の給与を引き上げることを決定し、来年度の新卒採用から適用していきます。
それに伴い、今期は、既存社員に対してもベースアップを実施し、とりわけ若年層に手厚い対応を進めていきます。あわせて、新たな人事制度の設計にも今後着手したいと考えています。
4-6 本社オフィス移転によるエンゲージメント向上
今年2月に本社オフィスを渋谷サクラステージへ移転しました。新オフィスでは社内コミュニケーションの活性化や業務効率化を推進し、多様な人材を積極的に採用していきます。
5-1 リノヴェックスマンションの取引状況
リノベーション事業分野の取組についてご説明します。
スライドのグラフは「リノヴェックスマンション」の仕入と販売状況の推移を半期ごとに示しています。2025年度は方針を転換し、積極的な仕入スタンスへ移行しています。仕入は順調に進んでおり、今期の収益拡大に寄与する見込みです。
5-2 事業期間と粗利益率の相関性
スライドのグラフは、在庫回転と収益性の関係を示しています。
2025年度は、前期における事業期間の長期化の原因を分析し、仕入から内装、販売までの全工程を徹底的に見直しました。その結果、事業期間の短縮化と利益率の改善を達成しました。
引き続き、事業期間を常に意識しつつ、最大限の収益を上げていきます。
5-3 リノベーション協議会へ登録商標「エコキューブ」を譲渡
省エネリノベーションの取組状況についてです。
今年2月に、「エコキューブ」の登録商標をリノベーション協議会へ譲渡しました。これを機に、「エコキューブ」を業界統一の省エネリノベーション基準とすることで、「住宅価値のオープン化」が進むことを期待しています。
5-4 省エネリノベーションの新工法開発
当社の省エネリノベーションにより、エアコンの効きが向上し、光熱費の削減につながることで、これまで以上に快適な暮らしを実現できます。さらに、住宅ローン減税など国の後押しもあり、省エネリノベーションは今後さらに拡がっていくと考えています。
当社物件だけでなく、業界全体に導入することで、新たな市場を創造していきます。
5-5 不動産売買プラットフォーム FLIEの概要
こちらは、不動産売買プラットフォーム事業を展開する「FLIE」の提供サービス「FLIE ONE」についてです。
「FLIE ONE」は、不動産業界の業務フローを一新するDX支援パッケージです。このサービスは、不動産売買および仲介会社向けに、物件管理・内見・販売支援までをオールインワンでサポートし、不動産売買ビジネスを次のステージへ引き上げます。
5-6 不動産売買プラットフォーム FLIEの展開
「FLIE ONE」サービスのリリース以降、業界から大きな反響をいただき、現在では大手不動産会社をはじめ、サービス導入が進んでいます。
「FLIE ONE」の導入により、物件販売のプロセスをシームレスにし、売主がより仕入や販売に集中できる環境を整えることが可能となります。
6-1 ソリューション事業分野の取組
ソリューション事業分野の取組についてです。
この分野では、多様な事業ポートフォリオを構築し、収益機会の安定化を推進しています。
リースバック事業では、累計取得実績が1,000件を超え、着実に推移しています。今期は不動産信託受益権による流動化を計画しています。
6-2 アセットシェアリング・シリーズの状況
アセットシェアリングでは、これまでに98億円の組成を行っており、10シリーズ目の「アセットシェアリング札幌Ⅱ」は現在募集中です。今期もさらなるシリーズを予定しています。
6-3 再生住宅パートナーによる共同事業が急成長
グループ会社である再生住宅パートナー株式会社の事業についてご説明します。
こちらは、パートナー企業との共同事業です。パートナー企業が得た物件情報をもとに、再生住宅パートナーが物件を取得し、共同で商品化を進めることで収益を分配し、双方の利益最大化を実現しています。
この共同事業は、2022年の事業開始以来急成長を遂げています。2025年5月期の売上高の実績は、前期比165パーセント増の37億円でした。2026年5月期の売上高は、前期比31パーセント増の48億円を見込んでいます。
6-4 ホテルはインバウンド需要もあり高稼働で推移
ホテル事業の運営状況についてです。
コロナ禍を経て、国内外で宿泊需要が徐々に回復する中、当社が運営するホテルも安定した稼働を維持しています。
2026年5月期の重点方針および各事業分野の取組については以上です。
【循環型リノベーションモデルの実践】
最後になりますが、この30年でリノベーションは当たり前の存在となりました。新築が建てづらい時代だからこそ、リノベーションの重要性はますます高まってきます。
リノベーションに求められるものも変化する中で、当社も組織体を柔軟に変化させながら、さらなる発展を目指していきます。
質疑応答:ホールディングス化の目的と中期経営計画について
司会者:「ホールディングス化についてご説明がありましたが、もう少し詳しくうかがえますか? また、中期経営計画の予定についても教えてください」というご質問です。
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