個人投資家向け説明会
松本成一郎氏(以下、松本):常務執行役員の松本です。推しキャラクターは「ハンギョドン」です。よろしくお願いします。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):よろしくお願いします。さっそくテーブルにもキャラクターが並べられていますね。
松本:当社の推しキャラクターである「ハローキティ」と、今年50周年を迎える「マイメロディ」、20周年を迎える「クロミ」が一緒に映っています。
坂本:私は「KIRIMIちゃん.」が好きですが、月島さんはいかがですか?
月島あみ氏(以下、月島):私は「エスプレッソ」が好きです。
坂本:耳がくるくるしている、「シナモロール」のキャラクターですよね?
月島:はい。「シナモン」のお友だちが好きです。
松本:サンリオの売りはやはりキャラクターが多いところですので、みなさまそれぞれに違う推しがいるのがよいと思います。
坂本:そのような話もうかがっていきたいと思います。よろしくお願いします。
松本:スライドの表紙には、先ほどご紹介した「マイメロディ」と「クロミ」を載せています。サンリオは毎年順番にアニバーサリーのキャラクターに注力しており、今年は「マイメロディ」と「クロミ」を前面に押し出しています。昨年は「ハローキティ」が50周年でした。このように、推しキャラクターが毎年変わるのがサンリオの特徴です。
ちなみに、こちらは5月の決算説明会でも使った表紙ですが、決算内容よりも表紙のほうが「X」上でバズりました。その様子を見て、我々も3ヶ月に1回の決算発表時には表紙を毎回変えようと社内で話しているところです。
坂本:私もこの資料をいただいた時に、とてもかわいいと思いました。
松本:次は8月に第1四半期の決算発表があります。また表紙を変える予定ですので、楽しみにお待ちいただければと思います。
目次
松本:本日はスライドのとおり、会社概要、事業内容、サンリオの強み、長期ビジョン、業績・株主還元の流れでご説明します。
会社概要
松本:はじめに会社概要です。「サンリオ」と聞いて思い浮かべるイメージはそれぞれ異なると思いますが、まずはキャラクターを想起すると思います。一方で、どのように売上が成り立っているかについてはほとんど知られていないのではないかと思います。
スライド左側の物販事業とテーマパーク事業がみなさまのイメージだと思います。サンリオショップが物販事業、「サンリオピューロランド」がテーマパークですが、実は売上の半分以上はライセンス事業になります。
ライセンス事業では、我々が何か商品を作って売るのではなく、食品メーカーなど他業種のお客さま・パートナーが作る商品に我々のキャラクターを使ってもらい、そこからライセンスフィーをいただきます。
お客さまの売上の何パーセントかが我々のライセンスフィーとして売上に計上されますが、こちらの営業利益率は他事業とまったく異なります。物販事業やテーマパーク事業の営業利益率は10パーセントから20パーセントほどですが、ライセンス事業は60パーセントから70パーセントになります。
すべての事業を合計した現在の営業利益率は35パーセントほどですが、ライセンス事業の売上が増えれば増えるほど、サンリオの利益が伸びるという仕組みになっています。
坂本:大変わかりやすいと思います。売上構成比もスライドに記載されていますが、この構成比は変化していますか?
松本:少しずつライセンス事業の比率が上がっています。物販事業やテーマパーク事業は基本的に国内事業になっており、日本でもライセンス事業はありますが、海外はほとんどがライセンス事業です。
現在のサンリオは、中国やアメリカでのライセンス事業が大きく伸びています。それに伴って全体のウエイトのうちライセンス事業の売上比率がどんどん上がり、営業利益率も上がっていく仕組みとなっています。
Sanrio at a Glance
松本:サンリオの設立は65年前の1960年で、2025年6月3日の時価総額は約1.6兆円、2025年3月期の売上高は1,449億円となっています。我々の売りはなんといってもキャラクター数で、450以上と本当にたくさんいます。これがサンリオの強みだと思っています。
沿革
松本:沿革です。今年で66年目となります。創業者は現在サンリオの会長を務める辻信太郎で、今も元気です。現社長は孫の辻朋邦です。スライドに写真を載せていますが、2020年に社長になりました。36歳と若いですが、彼が社長になってからサンリオは劇的に変わりました。
現在のサンリオは業績が良く、株価もこの数年でかなり上がっていますが、2015年以降は業績が下がり続けていました。2020年の社長交代がきっかけとなり業績がV字回復しています。経営チームを大きく変え、我々のマーケティング戦略や個別のキャラクター戦略を変えたことで、業績が劇的に良くなりました。
そこへ推し活需要やインバウンド需要などのいろいろなポジティブファクターが加わり、今の業績ができているというのが最近のサンリオです。
坂本:創業のきっかけや、御社の代表的なキャラクターである「ハローキティ」誕生の流れなども教えていただけたらと思います。
松本:1960年に創業した辻信太郎は、学生時代に戦争を体験しています。その戦争体験をきっかけに、彼は「みんなが仲の良い世界を作りたい」と思いました。そこで、「何か物をあげた時にはすごく喜ばれる。ギフト事業を始めれば笑顔が増えて戦争がなくなるのではないか」と考えたのが創業のきっかけです。
「ハローキティ」が生まれたのは約50年前ですが、もともとは名前すらありませんでした。ギフト事業で「ハローキティ」のデザインで商品を売っていたところ、そのキャラクターのデザインのものだけ非常によく売れたのです。
そこで名前を付けることになり、後から「ハローキティ」という名前になりました。以降、現在に至るまで50年以上ずっと愛されています。
企業理念とビジョン
松本:我々の企業理念は「みんななかよく」です。こちらは非常に大事な概念で、いくつかのポイントがあります。
新卒採用や中途採用を行う時に、「みんななかよく」に共感できない人は採用しません。したがって、サンリオの社員は本当に良い人ばかりで、仲良く仕事をできるのが強みの1つだと思います。笑顔を届ける仕事ですので、社員が笑顔でなければお客さまに良いものを届けられないと考えています。
また、事業を進める時も、「みんななかよく」に反する事業は行わないと決めています。例えば、昨年からゲーム事業を立ち上げてゲーム開発を進めていますが、シューティングゲームで人を殺し合うようなゲームは絶対に作らないと決めています。
このように、社員を採用する時も事業を行う時も「みんななかよく」の精神にのっとっています。すべてにつながるコンセプトで、非常に大事な概念となっています。
坂本:松本さんも良い人だということですね。
松本:そのように信じています。
サンリオ時間
松本:我々は、「みんななかよく」というのは笑顔が多くなることだと捉え、笑顔をどのように定量化するか考えました。投資家から指標を作るべきだという指摘を受け、社内で考えて作ったのが「サンリオ時間」です。
サンリオ時間は、スライド左側の「寄り添い時間」と右側の「夢中時間」という2つの概念で構成されています。寄り添い時間は、例えば女性がサンリオキャラクターのアクセサリーをつけるなど、サンリオ商品がそばにいる時間、夢中時間はサンリオのテーマパークで遊んだりゲームに熱中していたりする時間のことで、この2つの合計を「サンリオ時間」と呼んでいます。
時間としては、やはり寄り添い時間のほうが圧倒的に長くなります。ただし、本当に熱狂的なファンを作るには夢中時間が大事だと思っています。寄り添い時間で量を稼ぐことはできても、コアユーザーや熱狂的なファンを作るには、質という意味でも夢中時間を増やすことが大切だと考えています。
坂本:サンリオ時間はこの1年でどちらも増えていますが、これにはどのような背景があるのでしょうか? 当然ながらキャラクター数が増えればサンリオ時間も増えると思いますが、おそらく何らかの用途や地域などが増えたのではないかと見ています。
松本:答えは明確で、海外で売上が大きく伸びているために、サンリオ時間も連動して増えています。特に、アメリカや中国で我々のキャラクターを使っていただくことが増えており、その結果がサンリオ時間の増加につながっています。
坂本:世界で増えた分も加味されているということですね。
松本:おっしゃるとおり、世界中のサンリオ時間をカウントしています。
物販事業
松本:事業内容をご紹介します。まずは物販事業です。いわゆるサンリオショップとして店舗でビジネスを行っていますが、スライド右上のようなオンラインショップも強化しています。
坂本:国内の店舗は直販とFCのどちらになりますか?
松本:今は日本国内で約140店舗を展開していますが、半分ぐらいが直営です。フランチャイズは行っていないため、残りは販売委託というかたちになります。一部では百貨店にも展開しています。
坂本:アパレルでたまにある委託運営のイメージでしょうか?
松本:そのとおりです。
サンリオグループ共通の会員サービス
松本:サンリオショップに行った時に、みなさまはおそらく「Sanrio+」というサービスも使っていただいていると思います。「Sanrio+」とはサンリオグループ共通の会員サービスで、こちらでお客さまの購買動向を把握し、次のマーケティングや物販戦略につなげています。
ライセンス事業(商品)
松本:冒頭で営業利益率が非常に高いとお話ししたライセンス事業についてご説明します。ライセンスにもいくつかの種類があり、そのうちの1つが商品化ライセンスです。
スライドに載せているようなお弁当箱やバッグ、日焼け止め、「カルピス」などの商品にキャラクターを使っていただいた時に、事前の契約に基づいて、実際に売れた金額に対してライセンスフィーをいただく事業となっています。
サンリオの特徴は、キャラクターが好きだからその商品を買うというよりは、「サンリオのデザインを身に着けているとかわいくなる」「『ハローキティ』は特に好きではないけれど、かわいいから買う」などの心理や行動につながりやすいところです。
月島:私は昔からサンリオキャラクターが好きです。先ほどお伝えした推しキャラクター「エスプレッソ」のグッズはなかなかありませんが、「シナモン」も好きなので、目につくと買ってしまいます。新作のグッズ情報などを知っている場合はもちろんですが、たまたま見つけた時でも、かわいいので推しではなくても手に取ってしまいますね。
松本:まさに狙いどおりです。
月島:サンリオファンではなくても、サンリオのキャラクターはかわいいと感じると思います。
松本:ありがとうございます。企業の商品が同じ味でもパッケージを変えることがあり、これは企業側にもメリットが生まれると考えています。スーパーなどに置く際に、いろいろなカラーがあると目立つと思いませんか?
坂本:目立ちますね。
松本:それにより、さまざまなパッケージで陳列棚を面で抑えることができ、企業側にもマーケティング効果が生まれます。その結果、我々はお客さまを助けることができますし、お客さまの売上が伸びることで我々にもポジティブな影響があります。
サンリオの強みは、とにかくかわいいデザインを持っていることと、キャラクターの種類が豊富でいろいろなキャラクターを使ってもらえることです。
坂本:色のバリエーションもかなり広いですよね。
松本:おっしゃるとおりです。キャラクター数も450以上あります。
ライセンス事業(商品)
松本:他にもさまざまな商品があります。例えば、ゲームやスタンプなどにも商品化ライセンスを使っています。
ライセンス事業(広告宣伝)
松本:他社であまり取り組まれていないところでは、広告宣伝のライセンスがあります。芸能人を使ってテレビCMを流すようなイメージです。スライドにはクレジットカードに使っていただいた例を掲載しています。
テレビで、芸能人ではなく我々のキャラクターを使って食品や水の販促キャンペーンを展開するなど、このような用途でもサンリオはよく使っていただいています。
ライセンス事業(空間)
松本:その他のライセンスとしては、空間ライセンスがあります。カフェの空間をデザインした時に手数料をいただくようなイメージです。スライド下段の写真は、パソナグループが運営している「淡路島ハローキティスマイル」です。ここでいろいろな施設を作り、その空間デザインなどにより売上をいただく仕組みとなっています。
坂本:ライセンス商品に関しては、ライセンス先や代理店から御社に使用許可の依頼がくるパターンが多いのでしょうか? それとも、御社に専門の営業部隊のようなものがあり、御社から営業をかけるパターンが多いのでしょうか?
松本:どちらもありますが、国内は9割ほどがリピーターのお客さまになります。過去にサンリオを一度使っていただいたお客さまが、「またキャンペーンをやりたいので使いたい」というケースです。
また、特に大きなお客さまを我々は「メガクライアント」と呼んでいますが、そのようなクライアントに対しては、例えば「ハローキティ」を使っていた方に、「次は『シナモロール』を使いませんか?」と、ローテーションするかたちで別のキャラクターをご提案しています。
または、「最初はこの商品で使っていただいたので、今度は別の商品で別のキャラクターを使いませんか?」とご提案することもあります。リピーターが多いことに加えて、我々から新しいものをご提案することもあり、双方向で案件が成り立っています。
テーマパーク事業
松本:テーマパーク事業です。スライドのとおり、東京に「サンリオピューロランド」、大分県に「ハーモニーランド」があります。
「サンリオピューロランド」は屋内型、「ハーモニーランド」は屋外型で、明確にコンセプトが異なります。夏の大変暑い時期は、「ハーモニーランド」はどうしてもお客さまの数が鈍化しがちですが、屋内型の「サンリオピューロランド」は暑さ対策という意味では強みを持っています。
坂本:テーマパークについて、国内での増設や海外展開などの構想はあるのでしょうか?
松本:国内については、「サンリオピューロランド」は施設がほぼフルで入っており、周りにも開発用の土地がないことから、大きくするのは難しいと思っています。
一方で、「ハーモニーランド」は大分県にあり、周囲のスペースにもまだ余裕があります。そのため、我々は「エンタメリゾート化」と呼んでいますが、パートナー企業などと一緒にこの地域を盛り上げられないか、いろいろな施策に取り組んでいます。
例えば、現在は空港の名前が「大分ハローキティ空港」となっています。このようなかたちで、パートナーと一緒に「ハーモニーランド」周辺を開発しようと思っています。
この2つ以外に、日本で新しいテーマパークを作るプランは今のところありません。一方で、海外展開はできればもっと取り組みたいと考えています。ライセンスを使ったテーマパークは海外にいくつかありますが、自分たちでお金を出して世界観を作り込むことも重要だと思っています。
そのため、今後10年間くらいの少し長いスパンで、海外の、できればアメリカのような大きなマーケットにテーマパークのようなものをパートナーと一緒に低予算で作りたいと構想しています。ただし、まだ具体的なところまでは進んでいない状況です。
北米事業
松本:海外事業についてご説明します。今伸びているのはアメリカと中国ですが、アメリカで伸びている理由の1つに、SNS戦略がうまくいっていることが挙げられます。
スライド左上には、YouTubeチャンネル「HELLO KITTY AND FRIENDS」の登録者数をグラフで示しています。今年3月の登録者数は320万人ほどでしたが、直近では400万人ほどと非常によく伸びています。
「ハローキティ」の知名度は海外でも以前から高いのですが、「ハローキティ」の知名度が圧倒的過ぎることから、我々は他のキャラクターの知名度も上げたいとずっと考えていました。そこで、「HELLO KITTY AND FRIENDS」チャンネルを作ったという経緯があります。
いろいろなキャラクターが出てくるため、「ハローキティ」を知っている人がこのチャンネルを見ると、自然に他のキャラクターも好きになり、売上も上がっていくという戦略が的中しました。
スライド右側はアメリカのキャラクターポートフォリオです。10年前は約99パーセントが「ハローキティ」でしたが、現在は6割程度まで下がり、他のキャラクターも使われるようになってきています。
坂本:この棒グラフの見方について教えてください。「ハローキティ」「複数キャラクター」「その他」で分けられていますが、具体的にはどのように区分されているのでしょうか?
松本:複数キャラクターは、例えばTシャツに3つのキャラクターが一緒に載っているようなケースを指します。パッケージに「シナモロール」だけ載っているようなものは、その他個別キャラクターとしています。
中国事業
松本:中国事業についてです。中国も伸びていますが、伸び方は他の国と少し異なります。基本的に海外での売上はほとんどがライセンスですが、中国は物販事業にも力を入れて取り組んでいます。売上の半分近くを、現地物販事業と、中国で製造したものを日本に持ってくる商品製造事業で占めており、他国の構成比とは異なる特徴があります。
中国のキャラクターポートフォリオは日本と似ており、「ハローキティ」が24.3パーセントと非常に低いです。なお、日本は20パーセントほどです。アメリカは60パーセントですので、中国ではいろいろなキャラクターが使われていることがわかります。
中国で特に強いのは「クロミ」で、「ハローキティ」と「クロミ」の売上はほとんど変わりません。きっかけは、3年から4年前に、あるインフルエンサーが「TikTok」で「『クロミ』が好きだ」と発信してくれたことです。
そこから人気が広がったのですが、いきなり売上が上がるわけではないため、人気が出た後に我々からも「今は『クロミ』が人気だから作りましょう」と営業をかけました。その後「クロミ」の商品がどんどん世の中に増えていき、人気が出たタイミングから少し遅れるかたちで売上がどんどん上がっていきました。
その結果、昨年や一昨年ぐらいから「クロミ」が劇的に伸び、中国では今いろいろなキャラクターが人気になっています。
サンリオキャラクター
松本:ここからはサンリオの強みをご紹介します。繰り返しになりますが、サンリオの強みはキャラクター数がとにかく多いことです。サンリオでは毎年キャラクターの人気投票を行っています。
坂本:ショップで買い物をして、ピンクのチップを入れていくのですよね?
松本:そのとおりです。同じタイミングで開催する「サンリオフェス」というイベントでキャラクター大賞を発表しているのですが、毎年人気のあるキャラクターが変わるため、ランキングを参考にしながらマーケティング戦略を変えています。時代の変化に合わせて注力するキャラクターを変えられることがサンリオの強みの1つだと思っています。
月島:先ほど「ハローキティ」誕生のきっかけについてお聞きしましたが、450を超えるキャラクターはどのような企画から誕生するのでしょうか? 例があれば教えてください。
松本:いくつかありますが、直近では「NEXT KAWAII PROJECT」というプロジェクトを行いました。当プロジェクトでは、いくつかの新規キャラクターデザインを出し、人気投票に応じてデビューさせるキャラクターを決めました。
これはアイドルオーディションでよくあるものですが、我々もその仕組みを数年前に取り入れています。それにより、2023年12月に「はなまるおばけ」というキャラクターがデビューしました。
海外では違う方法でキャラクターを企画しています。日本人が「LINE」でスタンプを送り合うように、中国人は「WeChat」上でスタンプを送り合います。現在そのスタンプ用のキャラクターをたくさん開発しており、その中で人気のキャラクターを強化するプロジェクトを中国で進めています。
このように、時代の変化に合わせて我々のキャラクター開発方法も変わっていきます。
月島:人気を測っているというお話でしたが、どうしても人気がなくなってしまうキャラクターも残念ながらいると思います。そのような場合、みなさまの心の中には残りますが、公式にそのキャラクターをなくすこともありますか?
松本:ファンの方が信じてくれている限り、ずっといると思います。
坂本:「サンリオピューロランド」に行って久しぶりに会ったキャラクターなども意外といますからね。
松本:最近も、20年から30年前に人気になったキャラクターが再ブレイクした例があります。ファンのみなさまが信じてくれていれば、なくなることはありません。
坂本:逆に、例えばスポンサーから「このキャラクターを使いたいのですが」と引き合いが来て、ライセンスとして復活することもありますか?
松本:ないとは限りません。ただし順番的には、ユーザー人気が出て、キャラクターの人気投票などを見ながらスポンサーが使う流れとなるため、まずはファンのみなさまの熱意が大事だと思っています。
様々なキャラクターの活用
松本:スライドのグラフは、先ほど北米事業や中国事業で説明したキャラクターポートフォリオにおけるグローバル全体の数字です。10年ほど前は約7割が「ハローキティ」に依存していましたが、今は35パーセントほどになっています。したがって、足元ではさまざまなキャラクターを世界中で使っていただいています。
坂本:ここ数年で「ハローキティ」の割合が増えてきているのは、50周年が影響しているのでしょうか?
松本:昨年は「ハローキティ」50周年のイベントが世界中で大ヒットしました。これにより、「ハローキティ」の売上が一気に上がっています。また、10年前と比べて「ハローキティ」の売上が下がってきていたわけではなく、他のキャラクターの人気が高まることで全体の売上が大きく上がり、相対的に「ハローキティ」の比率が下がっていったということです。
他社コンテンツとの協業
松本:その他の強みをご紹介します。サンリオは、「競合はどこですか?」と聞かれると困ってしまいます。なぜかというと「みんななかよく」しているからです。
例えば、日本ではアニメーションから出てきたIPやキャラクターが数多くいますが、我々はたくさんコラボしています。そのため、「どれが競合か」とはあまり考えておらず、基本的にはみなさまと一緒にキャラクターの世界を盛り上げていきたいと思っています。
スライド左上の『ドラえもん』については「I'm Doraemon」シリーズで協業していますし、右上の『ハイキュー!!』や下段の『ブルーロック』など、いろいろなコラボをさせてもらっています。基本的には、みなさまと仲良くしていきたいと考えています。
坂本:そのような考えなのですね。最近では『ちいかわ』とのコラボもありました。
松本:『ちいかわ』とはまさに先月コラボさせてもらい、爆発的人気により一瞬で売り切れてしまったため、今は受注生産となっています。それくらい「みんななかよく」という会社の理念を大切にしています。
デジタルコンテンツによるタッチポイント
松本:ユーザーとのタッチポイントについても、リアルなタッチポイントとデジタルのタッチポイントをどちらも持っていることは大きな強みだと思います。最近生まれた他社のキャラクターは基本的にデジタルで、SNSだけに強いことが多いのですが、サンリオは日本中にサンリオショップがあり、テーマパークも2つ運営しています。
このように、リアルなタッチポイントと、デジタル上のSNSで常にいろいろなコンテンツを出すという合わせ技が、サンリオの強みなのではないかと思っています。飽きられないように、常に人気をキープするような仕掛けを作っています。
将来的に目指す姿:IPプラットフォーマーの“灯台”
松本:ここからは、戦略についてご紹介します。サンリオには以前から3年間の中期戦略はありましたが、10年間の戦略は5月に初めて公表しました。
「10年後、サンリオは何を目指すのですか?」と聞かれたら、「灯台を作ります」と真剣に言っています。スライドに灯台のイメージ図を掲載しています。縦が事業のカテゴリです。今我々が取り組んでいるのは、図の下から、ライセンス、物販、LBEです。LBEは「Location-Based Entertainment」の略で、テーマパークを指します。
このような既存事業だけでは、やはりお客さまの満足度をすべてカバーできないため、映像、ゲーム、スポーツなど、さまざまなジャンルに縦に広げていきます。
加えて、かなり画期的な話をしますと、灯台に窓がたくさんあるのがわかると思います。「ハローキティ」「ポムポムプリン」などが顔を出していますが、顔が「?」になっているピンクのキャラクターが覗いています。
これはサンリオのキャラクターではなく、関連のない他社のキャラクターです。それらも我々が預かり、そのキャラクターを世界中に広めていく取り組みも進めていきたいと思っています。今までは基本的に自社のキャラクターしか展開していませんでしたが、他社のキャラクターも伸ばしていきたいと考えています。
先ほど他社とのコラボについてお話ししましたが、なぜコラボしていただけるかというと、サンリオがデザインを変えるとかわいくなり、グッズ化しやすくなるためです。したがって、他社にとっても非常にメリットがあります。
一緒に行うとそのキャラクターを世界中に伸ばせる可能性があるため、我々は他社のキャラクターも今後扱っていくことを大方針として掲げました。これは従来との大きな違いになります。
長期で目指す水準感
松本:10年後の姿について、数字面での目標も掲げています。スライドに記載のとおり、現在の時価総額約1.6兆円から、10年後には5兆円を目指します。これは投資家にとって一番わかりやすいメッセージかと思います。
この実現のために、冒頭でご紹介したサンリオ時間を増やしていきます。世界中で笑顔を広げた結果、売上も利益も上がり、時価総額が上がるという仕組みです。
具体的には、北米市場シェア10パーセントが重要ポイントです。我々はキャラクターマーケットのシェアを計算していますが、日本やアジアは10パーセント以上あります。アメリカは現在3パーセント程度しかありません。したがって、3パーセントを10年後に10パーセントにすることが、業績上非常に大きな目標であるということをメッセージとして出しています。
中期経営計画の目標
松本:10年後だけではなく、今から約2年後の2027年3月期の営業利益目標も出しています。終わった2025年3月期は518億円と最高益でした。そこからさらに増益させて、2027年3月期に650億円以上を掲げています。
坂本:中期経営計画最終年の目標に加え、10年後の未来図も出していますが、2035年3月期の売上と営業利益については、単純に10パーセントをかければよいのか、どこかで伸びる時期があるのか、イメージがあれば教えてください。
松本:絶対値を出さなかったのにはこだわりがあります。10年後の時価総額や営業利益の平均成長率などのうち、時価総額だけは具体的な数字を出しましたが、営業利益の平均成長率は「10パーセント以上」とぼかしています。なぜかというと、業績の変動性が高い会社だと思われているサンリオを、安定化させたいと心の底から思っているためです。
坂本:ライセンスビジネスに振っていくことで、それが可能ですよね。
松本:おっしゃるとおりです。加えて、我々はマーケットから高いと見られている成長率を維持したいと思っています。そのミニマム値が、平均して2桁成長、すなわち10パーセント以上だと考え、我々はここだけを対外的に公表しました。
したがって、絶対値は重要ではありません。高い成長率を10年間安定的に維持した結果が、利益率や成長性なども含めて時価総額に反映されます。例えば、営業利益が同じ1,000億円でも、会社によって時価総額はまったく違います。会社に対する期待など、すべてが時価総額に反映されるためです。
我々は単純に営業利益などを大きくしたいのではなく、時価総額を最大化させるために、営業利益を安定化させて、高い成長率も維持していきます。このような考え方により、あえて売上や営業利益の絶対値を出していません。
坂本:瞬間的に前倒しで達成する可能性もありますよね。10年後に5兆円ではなく、成長率が高ければ早めに数年の成長を先取って5兆円に達することもあり得ると思います。
松本:現在の時価総額は約1.6兆円ですが、数年前に「10年後くらいに時価総額1兆円にしたいな」と言っていたのが数年で達成してしまいました。もちろん前倒しできればよいのですが、やはり安定化させていくことが今回のこだわりですので、長めの10年スパンで考えています。
中期ロードマップ
松本:投資家の方はイベントを非常に重視していると思います。我々はロードマップを明確に開示しており、どの年にどのようなイベントがあるか公開しています。
坂本:安定して成長するための布石を打っているということですね。
松本:そのとおりです。イベントがあまりない年は安定化しないため、ずっと何らかのイベントがあるようにしたいと思っています。
坂本:450以上のキャラクターがいれば、何かできるということですね。
松本:毎年注力するキャラクターも変えています。また、この中でいくつか大事なイベントがあります。例えば、スライドにピンクで示しているゲームのイベントです。ゲーム事業は昨年立ち上げましたが、2027年3月期に初めてのゲームを2本程度出そうと考えています。
緑で示しているアニメーションについては、2025年7月「Netflix」で「My Melody & Kuromi」のアニメーションが放映されます。また、アリババグループのアリフィッシュとも一緒に作ったり、自社制作アニメも2028年3月期に放映する予定です。
黄色で示している映画も大事なイベントです。投資家の方が一番注目しているのはワーナー・ブラザーズの映画です。サンリオキャラクターが出てきますが、公開時期は未定です。まだタイミングはわかりませんが、こちらが公開されれば、特にアメリカなど海外では非常にポジティブに影響するのではないかと思っています。
坂本:映画を公開するには、最低でも2年から3年はかかりますからね。
松本:タイミングについてはノーコメントですが、それとは別に、我々も自分たちでお金を出して映画を作ろうと考えています。こちらは主に国内向けで、2027年3月期から先を予定しています。このようなイベントに注目していただければと思います。
業績推移
松本:最後に、業績について簡単にご説明します。売上高と営業利益は劇的に伸びています。
坂本:2021年3月期の赤字の原因は何ですか?
松本:キャラクターの人気自体がやや停滞し、ずっと右肩下がりだったところに新型コロナウイルスの大打撃が加わったためです。
坂本:そこから社長が代わり、テコ入れを行ったということですね。
松本:そのとおりです。
貢献利益の推移
松本:国別の推移については、営業利益ではなくこちらの「貢献利益」をご覧ください。海外でライセンスの売上が上がった時に、その半分程度を日本に戻さなければいけないという税制上の決まりがあります。そのため、実態ベースでどの国で稼いでいるのかを貢献利益として換算して出しており、サンリオの実態に近い数値です。
水色で示す米州はアメリカがメインで、緑で示すアジアは中国がメインです。アメリカと中国が明確に業績のドライバーになっているのがわかります。
配当
松本:配当です。2024年4月に株式を3分割したため、時系列上はわかりにくいのですが、今年の2026年3月期は年間54円を予定しています。配当のポリシーとして配当性向30パーセント以上を掲げており、業績に連動して今後も変わっていくかたちです。
株主優待
松本:株主優待です。我々は個人投資家を特に大切に考えており、ファンのみなさまにいろいろな経験・体験を届けたいと思っています。そのため、スライド左側に記載のとおり、テーマパークの優待券や商品を購入する時の優待券を株主のみなさまにお渡ししています。
さらに、長期の優待制度もあります。限定アクリルスタンドのほか、たくさんの株を保有している方にはぬいぐるみや、オンラインでのグリーティング、懇談会を実施しています。
坂本:オンラインでのグリーティングや懇談会は6,000株以上ですね。
松本:かなり大変です。
坂本:でも、なんだかいいですね。
松本:このような優待を工夫して実施しています。
質疑応答:M&Aや設備投資を実施する可能性について
坂本:売上高や営業利益が急成長する会社は日本にもありますが、多くはM&Aを実施してシナジーを出すことで成長しています。御社はオーガニックの成長を遂げており、おそらくこのまま進むのだと思います。国内テーマパークの新設はないというお話でしたが、M&Aや設備投資など、大きな投資の可能性について教えてください。
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