目次
平林卓氏(以下、平林):みなさま、こんにちは。日本システム技術(以下、JAST)の財務、IR担当の平林です。本日はご多忙の中、また非常に暑い気候の中、当社の決算説明会に足を運んでいただき誠にありがとうございます。
早速、ご説明に入りたいと思います。本日のコンテンツです。これまで、当社の説明会にご参加いただいた方からすると、流れにはそれほど大きな変化はないと思いますが、目次の4点目に長期ビジョン「JAST VISION 2035」を組み込んでいます。新たな体制ということもあり、3月末日にこのVISIONをリリースしました。
同日に代表取締役社長の交代についてもリリースしました。まだ内定段階ですが、一応私が就任する予定です。来週の株主総会で正式に決定するかたちになるだろうと思っています。
それに伴い、体制も新しくするため、これまでは財務経理部長と2名体制で対応していたところを、今回は現場本部の執行役員2名も同席します。現場とコーポレート部門も非常に密接な関係で、よく連携していますので、そのあたりも踏まえて全体で取り組んでいきたいと思っています。それでは、よろしくお願いします。
主要財務指標(過去同期との比較)
まずは、2ページ目です。今期の主要な財務指標を掲げています。5月14日に決算短信を発表していますので、すでにご確認いただいているかもしれませんが、売上高は約293億円、経常利益は約32億円で着地しています。対前年で増収増益です。 収益性は、売上高が14期連続増収・12期連続最高値更新、営業利益も10期連続増益・6期連続最高値更新と、非常に堅調に推移しています。それに伴い、財政状態も引き続き盤石な状態で、無借金の状態を続けています。資本の効率性もスライドに記載のとおり、非常に高い水準の数値を維持しています。
セグメント別ダイジェスト
セグメント別のダイジェストです。4つの事業セグメントを展開しています。
まず、主力のDX&SI事業です。ここ数年、新規のお客さまが増え、大型のプライム案件も急増しており、好調を維持しています。加えて、最近では高単価な案件が増えており、案件ごとの収益性も非常に高まっている状況です。対前年で増収増益という結果になっています。
次に、パッケージ事業です。大学向けの「GAKUEN」と金融機関向けの「BankNeo」の2つをご用意しています。「GAKUEN」はスライドに記載のとおり、EUC及び導入支援サービスが堅調に推移し、「BankNeo」もプロダクトのほうが堅調に推移したため、対前年で増収増益に落ち着いています。
続いて、医療ビッグデータ事業です。本業のレセプト点検、あるいは分析サービスなど付加価値サービスが好調に推移しましたが、2024年1月にケーシップ社を買収しました。そちらのほうに医療ビッグデータ事業のメンバーを投入し、立て直しを図っています。もともと債務超過の会社でしたので、そちらをサポートするところも織り込んでいました。最終的には、増収減益という結果になっています。ただし、こちらは当初から見込んでいた結果ですので、織り込み済みとなります。
ケーシップ社についても、昨年度はもともと赤字の着地を見込んでいたのですが、医療ビッグデータ事業のサポートもあり、早期の黒字転換という結果に落ち着いています。
最後は、グローバル事業です。中間期にご報告したとおり、これまで業績のけん引役であったマレーシアのVirtual Calibre社の主力顧客は同国内のエネルギー関連の公企業でしたが、そちらのほうの業績低迷に伴い、情報化投資の抑制、単価の下落、入札形式の変更などネガティブ要素が重なりました。
加えて、オフィスの移転や案件獲得のための営業力の強化といったコスト増によって、最終的には営業損失6,100万円という結果となってしまいました。
トピックス(2024年7月以降)
トピックスです。冒頭でお伝えしましたが、3月31日に代表取締役の交代とグループビジョン「JAST VISION 2035」についてリリースしています。それ以外は、ブランド系が中心です。
スライド上段、事業活動の上から4つ目は「GAKUENシリーズ」です。旧帝国大学の東北大学さまにご導入いただき、昨年の後期から本稼働をスタートしています。こちらは、国立大学では非常に珍しいパターンです。まったくのノンカスタマイズで、一切トラブルが出ておらず堅調に稼働しています。
また、大学向けアルムナイサービスの「ALUPA」という新しい製品を投入しました。こちらもリファレンスが十数校入っており、堅調に推移しているかたちです。
スライド下段、業務提携・出資の1つ目はエクソソームです。細胞から分泌される物質のエクソソームについて研究しているリジェネソーム社に対して、8,000万円ほど出資しました。
最後の4つ目は陸上養殖です。沖縄で陸上養殖ビジネスを推進しているLand Aqua Culture Innovation社は、陸上養殖の技術やノウハウの提供、それらの販売等を担っている会社です。同社に2億円ほど出資しています。
連結損益計算書
次に、業績概況です。6ページ目は連結損益計算書です。冒頭でご説明したとおりですので、上期、下期に分けたかたちで、数字を展開しています。
研究開発費が5億5,300万円で、前期比56.6パーセント増です。いろいろなブランド事業を抱えているため増えていく一方ではあるのですが、利益率については、営業利益率も経常利益率も11パーセント前後で2桁をキープしています。
連結貸借対照表
連結貸借対照表です。業績堅調に伴い、大きな変化はないのですが、上から4つ目、投資その他の資産が、前期比で66.4パーセントアップしています。ここ数年、財政状態が盤石であり、手元資金が潤沢にある中で、一部運用商品を購入しました。コーラブル性の預金や社債への投資と、先ほどお伝えしたリジェネソーム社と Land Aqua Culture Innovation社への投資を行ったため、このようなアップ率となりました。
連結キャッシュフロー
連結キャッシュフローです。投資キャッシュ・フローは19億4,100万円という結果になっています。内訳は、先ほど連結貸借対照表のパートでご説明したとおりです。
セグメント別売上高推移
セグメント別の売上高推移です。ここ数年、4つのセグメントが非常に堅調に推移していましたが、先ほどご説明したとおり、2025年3月期のグローバル事業のみ対前年で減収したかたちになっています。
セグメント別営業利益推移
セグメント別の営業利益推移です。グローバル事業については、先ほどご説明したとおりです。
それ以外のセグメントは、医療ビッグデータ事業はケーシップ社の件がありましたが、堅調に推移しています。2024年3月期の販管費は19億3,100万円と、前年度と比べ増えていましたが、これには大阪本社の増床という特殊事情がありました。2025年3月期の販管費は、通常の事業活動により発生した販管費となっています。
最終顧客業種別売上比率
最終顧客、エンドユーザーの業種別売上比率です。個々に見ていくと入れ替わりはあるのですが、特段大きな特殊要因はありません。それぞれの業種が、その年度の案件に応じて、順調に推移しているかたちです。
パッケージ事業:GAKUEN事業売上構成
こちらのスライドは、パッケージ事業の「GAKUEN」の売上構成に焦点を当てています。それぞれのサービスにおいて、年度ごとにパーセンテージが変化しているところはあります。
例えばEUC開発では、2024年3月期は20パーセント、2025年3月期は26パーセントとパーセンテージが上がっています。こちらは昨年、「GAKUEN」製品群の全項目において販売単価を見直し、値上げしました。EUC開発に関してはその効果が早速出ており、単価上昇の結果として、売上比率が上がっています。
顧客グループ・業種別の売上比率
顧客グループ・業種別の売上比率です。当社の説明会にご参加いただいたことがある方は、区分けが変わっていることにお気付きだと思います。これまでは、一番上の枠に長期優良顧客グループを記載し、その下に各グループを記載していました。今回は、売上比率の順に記載の仕方を変えました。
プライム取引(一般企業)とは、ここに記載している本田技研工業さん、ダスキンさん、それ以外のいわゆるプライム取引です。個々の顧客名に「*2」と付けているものも、プライム取引と識別しています。
一番上のプライム取引と「*2」を全部足したもの以外にも、一部プライム取引が混在しています。すべて足し合わせると、プライム比率は大体65パーセントと捉えています。
当社と日経平均の株価推移性
株価の推移です。こちらも毎回お示ししている資料ですので、特段大きな変化はありません。直近は、1,900円から2,000円前後を推移しているかたちです。
2026年3月期業績予想
次に、進行期の予想と直近の取り組みです。2026年3月期の業績予想です。5月14日リリースの決算短信にも記載していますが、売上高はグループ全体で320億円、営業利益は35億9,000万円、経常利益は36億6,000万円を見込んでいます。売上高は前期比で9.1パーセントアップ、各利益指標も、前期比で12パーセントから13パーセントの増益幅とみています。
2026年3月期業績予想に対するフィジビリティ分析
業績予想に対するフィジビリティ分析です。2025年3月期の営業利益31億8,800万円、今期予想の営業利益35億9,000万円に対して分析すると、売上拡大や収益性向上といったプラスに働くところは、従来どおりの数字で計算しています。
費用面としては、まずオフィス移転費用です。トピックスのスライドには記載していなかったのですが、来年度の秋頃に、東京本社は品川から高輪ゲートシティへの移転を予定しています。その移転費用を見込んでいます。
次に、研究開発投資の増加です。1億5,000万円ほどの増額を見込んでおり、今期も積極的に研究開発投資を進めていきます。
最後は、一番大きく7億2,000万円相当です。こちらには、昨今のいろいろなベースアップ、労務費のアップに加え、現状、DXとして社内システムの刷新を進めていますので、そのようなシステム費用も含まれます。そこに、通常の広告宣伝費、事業活動に伴う費用を合計すると、大体7億円強となります。最終的には、35億9,000万円の営業利益をめざしたいと考えています。
受注残高と売上高の推移
受注残高と売上高の推移です。こちらも、毎回お馴染みのグラフとなっています。当社と業界の特性として、期中で受注残高がどんどん積み上がり、期末の3月で売上になって受注残が減るというのがこれまでの大きな流れでした。
ただし、DX&SI事業は最近、長期の大型案件が増えてきています。そのため、3月に仕掛かりというかたちで残るケースや、期末の段階でまだ作業に入っていない受注もけっこう増えてきています。最近の傾向としては、期末の3月でも最終的に受注残が減らないケースが出てきています。
パッケージ事業は、これまでどおりの流れで、大学業界など3月末で売上に変わるところが多くありますので、受注残としては3月に下がります。
医療ビッグデータ事業も同じような傾向です。ただし、表上の数字は前期比で111.5パーセント増と、かなりの伸びを示しています。2024年3月期は受注残高が5億6,100万円ですが、この年はデータヘルス計画という3年周期の大型案件が入っていました。それが3月末で売上に化け、受注残高が下がりました。
その後、ケーシップ社がグループインしています。ケーシップ社の受注残高も昨年9月に積み上がっており、最終的には期末で売上に化け、数字的には下がっていますが、対前年という意味ではケーシップ社の分も含め、非常に伸びたかたちです。
研究開発費の推移
研究開発投資の推移です。フィジビリティ分析のパートで増加の額をお示ししたとおり、今期の研究開発費の予算は7億円を見込んでいます。スライドでは、それぞれのセグメントの傾向を矢印で示しています。
研究開発テーマは、スライド右側の枠内でご説明しているとおりです。DX&SI事業では、昨今出てきている生成AIや、メガソリューションに対応する人材育成、ローコードなど、そのようなDX人材の育成投資が増えてきています。
パッケージ事業では、現行の「GAKUEN」RXシリーズの新バージョン「RX2.0」を今年度10月、11月にリリースしようと研究開発を進めています。卒業生向けアルムナイサービスの「ALUPA」も、今リファレンスで提供していますが、機能拡充に向け研究開発を進めています。「BankNeo」も現行製品が少し古くなってきていますので、製品の強化や、新たな製品群の創製に研究開発費を充てているところです。
医療ビッグデータ事業は、スライドに記載のとおりです。やはりAIが出てきますので、AIを取り込んだ新しいサービスの展開です。その他は、これまでのセグメントに代わる新しいビジネスの創出に焦点を当て、研究を進めていくかたちでみています。
DX&SI事業
直近の取り組みです。こちらは、前回まで長期成長戦略として展開していたスライドです。大きな変更はありませんが、直近の傾向をお伝えするためにお示ししました。
まず、DX&SI事業です。スライド左側の円グラフをご覧ください。これまで、いわゆるシステム・インテグレーションサービス、SI事業を創業以来、技術的に培ってきました。今回、期末の数字として比率は60パーセント近くありますが、今後のことを考えると、SI事業はシュリンク傾向にあるとみています。
それに代わって、円グラフ上段に高付加価値と書かれている、いわゆるサービスやソリューションにシフトしていこうと進めており、DX&SI事業の中の事業ポートフォリオの再定義を図っているところです。
これまでSI事業で培ってきたアセットサービスをデータ分析に使ったり、メガソリューションと言われるSAPやセールスフォースと組み合わせたり、いわゆるコンサルテーションのほうに中長期的には重きを置いていきたいと考えています。
ただ、SIビジネスそのものは、これからも続くとみています。「GAKUEN」や「BankNeo」は、SIサービスから派生して出てきた新たなブランド製品群です。次の「GAKUEN」「BankNeo」につながる新しいブランドをSIから生み出していくところは、これまでの流れと変わりません。
パッケージ事業:GAKUEN
パッケージ事業の「GAKUEN」です。導入校実績は約450校近くありますが、まだまだホワイトスペースがあります。先ほどご説明した東北大学さまは、サブスクリプションかつノンカスタマイズで運用に踏み切ったところに大きな反響をいただいています。この結果、ほかの旧帝国大学さま、あるいは地方の国立大学、関東、関西の大手の私立大学からも多くの引き合いをいただいている状態です。
これまでの流れからすると、パッケージ機能的にはいろいろあるのですが、学校の業務に合わなければEUCで埋めることが、主流といえば主流でした。
Fit&Gapの中で、そのような分析をしていくのですが、東北大学さまは職員も2,000名、3,000名いる大規模な大学でありながら、まったくカスタマイズもせずに運用に入りました。いわゆるFit to Standard、「GAKUEN」がデファクトスタンダード的な位置づけで捉えられたところが、非常に大きな流れを生み出したように思います。この流れをしっかりと掴みながら、これから新しいところに展開していきたいと思います。
昨年価格改定を行っていますが、価格改定で離脱されたお客さまはほとんどいません。これまでは、「GAKUEN」は大学部向けに展開してきましたが、初等教育には小中高があり、大学卒業後の卒業生、社会人、あとはリタイアされた方にも生涯学習があります。小学校から大学を卒業し、定年後の生涯学習まで、ビジネスチャンスはまだまだあると捉えています。そのようなところも、これからの展開に加えていきたいと考えています。
パッケージ事業:BankNeo
パッケージ事業の「BankNeo」です。これまで地方銀行、信用組合、信用金庫をターゲットに、ニッチなところを展開してきました。銀行は勘定系が確立されていますので、情報系、あるいは営業担当者の生産性向上や業務効率化などに視点を置き、それらを埋める製品を当社が開発し、提供してきました。
直近では、保険支援業務や相続支援など、新しい製品もリリースしています。これまでに好評をいただいていた「BankNeo 預り管理」という製品も、メガバンク2行にご導入いただいています。こちらは、リリースしてすでに7年から8年経ちますので、次のバージョンの新しい製品を作っていくところも、先ほどの研究開発に含めています。
メガバンクも含めた広いフィールドで、新しい製品、スマート、ニッチなところを、これまでのコンセプトをキープしながら展開していくことに焦点を置くかたちにしています。
医療ビッグデータ事業 (1/2)
医療ビッグデータ事業です。こちらも、基本路線は変わりません。レセプトの点検からスタートしますので、月間800万枚から1,000万枚のレセプトを処理し、そのデータを蓄積していくことで、ビッグデータとしての価値を帯びてきています。
さらに点検数を増やしていくことで、ビッグデータの価値を高めていくところは、これまでどおりです。以前からお話しているとおり、この業界はある特定分野ではアライアンスや協業でお客さまと組んでいる一方で、別の分野ではコンペティターとなっており、相変わらず非常に混沌とした状態が続いています。そのようなところも視野に含めながら、アライアンス、あるいはM&Aをにらんでおり、今後も進めていきたい方向性は基本的に変わりません。
医療ビッグデータ事業 (2/2)
医療ビッグデータ事業の変遷です。2010年3月期のスタートはレセプト点検でしたので、売上はレセプト点検のみでした。そこから、いろいろなビッグデータの価値を使ってデータヘルスやデータ利活用等、新しいサービスがどんどん派生し、より高収益なサービスができました。
こちらもDX&SI事業と同様に、レセプト点検が源泉となります。ビッグデータの価値をどんどん高め、新たな高付加価値、高収益なサービス品を作っていくところにつなげるかたちで進めていきたいと考えています。
未来共創Lab
未来共創Labです。基本的には医療ビッグデータを活用します。大学やいわゆる専門研究機関にそのようなデータをご提供して、アライアンスを組み、共同研究や共同開発をしていくところです。
「健康体質に向けた社会貢献を進めていこう」というのが、このLabのもともとのメインテーマとなっています。引き続き、新たなビジネスにつながるような、新たなシーズを発掘するところは、これまでどおり進めていきます。
グローバル事業
最後はグローバル事業です。先ほどはネガティブな話が続きましたが、業績のけん引役だったマレーシアのVirtual Calibre社の主要顧客が、同国のいわゆる公企業に偏っていた部分がありました。
この先、それのみでは業績が不安定になっていくため、拠点をインド、UAE(ドバイ、アブダビ)と西の方に展開し、マレーシア一本足打法ではなく、そのようなところでカバーしていきます。
マレーシア以外にも、タイ、中国、シンガポールで、それぞれHRMやERP、PMS、生産管理などの製品を持っていますので、グローバルの中で協力しながら各国に合ったシステム、ソリューションの展開を今後も続けていきたいと考えています。
M&A/グループ拡大戦略
M&A/グループ拡大戦略です。グループビジョンは出しましたが、それぞれの事業体で「プッシュ型のM&Aを進めていこう」という基本路線をこれまでどおり掲げています。
今期は中期経営計画の最終年度です。業績予想のパートでお伝えしたとおり、2026年3月期の売上高は320億円を計画しており、スライドのグラフには薄い色で示しています。これを達成するためには、今年度あるいは次年度、将来的なところも含めて、M&Aが不可欠になってくるだろうと捉えています。引き続き、各事業体で積極的にM&A戦略を詰めていきたいと思っています。
資本コスト経営 (1/2)
資本コスト経営です。PBRとROEの推移を折れ線グラフで示しています。PBRは昨年度に比べると若干下降傾向ですが、一応3倍をキープしています。ROEもここ数年横ばいの状態が続いていますが、一応17パーセント台をキープしており、基準値の8パーセントは超えていると捉えています。
資本コスト経営 (2/2)
ROICと投下資本についてです。ROICも先ほどのROEとほとんど似た傾向で横ばい状態にありますが、WACCは超えていると捉えています。NOPATと投下資本も、スライドには「利益の成長速度が投下資本の拡大速度を上回っている」と記載していますが、直近の数字を見ると若干緩やかになりつつあると捉えています。今後は、資本の活用、還元について非常に注視していかなければならないと捉えています。
株主還元策
株主還元です。昨年度、配当方針を見直しました。スライドに記載している配当性向30パーセント、あるいはDOE4パーセントを目安として、配当を検討しています。今期の配当予想は1株当たり35円です。これによって配当性向が31.2パーセント、DOEが5.35パーセントとなり、当社が掲げている配当方針はクリアしていると思います。
ただし、配当性向30パーセントも、昨今の状況をみると決して高い数字ではありません。こちらについては、今後30パーセント以上をめざしていかなければならないと検討しています。30パーセントは、これまでずっと掲げてきた1つの目標ですので、いったんクリアしたら、次の目標として数値を上げていくところを意識していきたいと思っています。
キャッシュアロケーション
キャッシュアロケーションです。昨年度から、アロケーションの方針を資料として組み入れています。無借金ということで、手元の資金がかなり潤沢に増えてきて、投資家のみなさまからもいろいろとご指摘をいただいています。
去年と大して代わり映えはしないのですが、当社と業界の特性としては、費用が先行で支出していくというキャッシュアウト先行型の事業になります。キャッシュ・インがなかったとしても運転していける最低資金は確保した上で、株主還元も意識しながら、それを差し引いた、スライドに青色で示した4つを成長投資枠と捉えています。
この中のM&Aや、DXの人材開発投資、研究開発を進めていくところです。M&Aについては先ほどお伝えしたとおり、戦略のところでまださまよっていますが、これを実施することが成長につながると捉えています。
人的資本を高める活動
人的資本を高める活動についてです。これまでも同じような資料を展開していましたが、当社の場合はヒト、社員が資産、財産です。健康経営を推進しており、健康優良法人の5年連続認定と、人間ドック等の100パーセント受診は、ここ数年ずっと変わっていません。
DX人財育成についても、いろいろとリスキリングなどがありますが、SAPやローコード、DXの最先端につながる人材の育成に投資しています。また、ホワイト化推進として、有給休暇取得はどんどん推進しているところです。育児休暇の取得率も男性が90.5パーセントとなり、休みの期間はいろいろありますが、育児休業の制度を使うところは、男性、女性ともに浸透してきていると当社も捉えています。このようなことが、当社の離職率低下につながっています。
私たちの業界は10パーセント、20パーセントという離職率2桁が当たり前の世界ですが、当社の場合、昨年の離職率は5.8パーセントです。このような取り組みが、社員にも評価されているのではないかと捉えています。
サステナビリティへの取り組み (1/3)
SDGsの取り組み状況です。スライドには当社ホームページに掲げている内容をそのまま抜粋していますので、昨年度とほとんど同じようなかたちで展開しています。当社はIT業界ということで、「産業と技術革新の基盤を作ろう」という9番目の項目が、基本的にほとんどのところに適用されます。
サステナビリティへの取り組み (2/3)
新しいところでは、上から3つ目の「ICTを活用した陸上養殖システムへの貢献」です。トピックスでご説明した陸上養殖の実際の展開がSDGsにもつながっていると捉えており、ここに組み入れました。
サステナビリティへの取り組み (3/3)
こちらのスライドもぜひご覧ください。
PURPOSE
最後は「JAST VISION 2035」、冒頭にご説明した長期ビジョンについてです。当社は創業から52年経っていますが、今回のような長期ビジョンを策定したのは初めてです。当然のことながら、外部に公表したことももちろんありませんので、まったく初めてのことです。
ただし、これも先ほどお伝えしましたが、今年度が現行の中期経営計画の最終年度となります。この長期ビジョンに基づいた中期経営計画は、実質2026年度からのスタートになります。そのため、この2025年度は今の中期経営計画の結果、あるいは過程を踏まえて、新しい長期ビジョン、中期経営計画につなぐ年度、準備期間と捉えています。
これからご説明する内容には、あまり数値的なところが展開されていませんので、本日ご参加いただいているみなさまからすると、物足りないかもしれませんが、中期経営計画が準備できたら、それをまたあらためてリリースしたいと思っています。
まずは、PURPOSEです。文字ばかりで恐縮ですが、当社は先ほどお伝えしたとおり、創業して52年経っています。50年前は、まだハードウェアが主流で、ソフトウェアがほとんど見向きもされない、価値も全然認められないような時代からスタートしています。
当時の創業メンバーは、「ソフトウェアがこれからの時代に変革を起こす」と、熱い思いを持ちながら、胸に刻みながら、この「情報化を創造し、提供することにより、社会に貢献する」という企業理念を掲げ、52年間突っ走ってきたと捉えています。
MISSION・VISION・VALUES (1/2)
MISSIONとVISIONです。MISSIONには、「社会の課題解決にひたむきに取り組む」を掲げています。お客さま第一志向で、お客さまに寄り添って取り組んでいくことが当社の姿勢です。それに伴い、お客さまにご満足いただける技術力もどんどん積み重ねてきました。
この「ひたむきに」というワードは、最近ではなかなか使わないかもしれませんが、これは当社が過去からずっと積み重ねてきた姿勢を表すのに最適な言葉ということで、「ひたむきに取り組む」を採用しました。
VISIONは、「誰もが知る課題解決企業へ」です。これまでは、お客さまに寄り添って取り組んでいたのですが、BtoBの世界ですので、お客さまの中でも知る人ぞ知る企業であり、なかなか認知度、あるいは評価をいただけていなかったところがあります。
これからは、社会課題の解決をめざし、より社会のみなさまにJASTの取り組み等を知っていただきたいという思いから「誰もが知る課題解決企業へ」というVISIONを掲げています。
MISSION・VISION・VALUES (2/2)
次に、VALUESとして3つ挙げています。これはJASTのアイデンティティそのものです。経営理念については、これまでもお話ししています。社員一人ひとりがきちんと理解して、浸透して、社員の心の拠り所になっているところが、当社の一番の大きな強みです。ここは、絶対外せないところです。
JAST DNAも、「困ったお客さまを見過ごせない思い」は、これまでずっと続けてきています。そのような姿勢がお客さまからもご評価いただいているところです。不易流行も、当社の経営理念の基本精神です。時代によって変えなければいけないもの、あるいは堅持しないといけないもの、そこを切り分けて取り組んでいくところは、これまでどおり変わりません。
自社の置かれている環境
自社の置かれている環境です。外部環境と内部環境がありますが、今、日本が抱えている大きな問題としては、少子高齢化が挙げられます。これが地方創生にもつながっていきますし、日本の社会課題は、今後全世界的にも広まっていくだろうということで、この社会課題の先進国は日本だと捉えています。そこに私たちの資産をうまく活用し、組み込んで、課題を解決していきたいという思いがあります。
スライド右側は、これまで当社が50年近く掲げてきた基本精神を挙げています。これらを基に「JAST VISION 2035」を達成していきたいと捉えています。
めざすポジショニングと変革の方向性
めざすポジショニングと変革の方向性です。こちらも先ほどお伝えしたとおり、従来のBtoB仕様だけではなく、より一層コンシューマーを意識して、対話の機会を設けていきたいと捉えています。
私たちの業界には、最近テレビCMで頻繁にアピールされている会社さんもいらっしゃるのですが、当社の場合は、いわゆるメディアなどの媒体で名前だけを知ってもらうのではなく、どのような社会課題に向き合い、解決策を提供できるのかを認識してもらい、知名度を獲得していきたいと捉えています。
戦略ドメインの定義
戦略ドメインの定義です。縦軸に市場・顧客、横軸に製品・サービスを示し、それぞれ既存、新規という区分けで展開しています。
青色の部分が既存のサービスと、これまで培ってきた技術力をベースにして展開していこうというところです。これまで培ってきた製品・サービスの知見を最大限に活かす考えです。
新しい市場が、スライド右下の赤色の枠内に多角化と記載している戦略ドメインです。こちらの新しい市場や産業分野に垂直的にサービスを展開していくことで、多岐にわたったサービスを展開していけると捉えています。今よく問題にされている農業の問題や地方の過疎化、そのような課題がここに分類されてくると捉え、これから当社がそれを解決するということで、戦略ドメインと定義して進めていきたいと思っています。
目標とする事業規模
目標とする事業規模です。ここでようやく数字が出てきます。まずは2035年の最終到達点として、グループ全体で、売上高1,000億円をめざしたいと思っています。青色の部分に700億円から800億円と記載していますが、これは現業領域の延長線上で達成できるだろうと捉えています。
1,000億円に向けて、200億円から300億円足りませんので、先ほどの戦略ドメインという新しい領域で、これから作っていきたいと考えています。現業で今期320億円の売上高を狙っていますので、それと同等クラスの売上が出せるようなドメインを作っていく上で、社会から認知されるところをめざしていきたいと捉えています。
Appendixは、当社の事業概要や会社全体の概要をご説明している資料となります。各事業体の説明資料が、今まで配布していたものから刷新されていますが、時間の都合により、こちらのご説明は割愛します。またお時間のある時にご覧いただければと思います。
平林氏からのご挨拶
「JAST VISION 2035」は、実は1年ほど前にJASTの次世代を担う幹部候補生たちを一堂に集め、膝を突き合わせて、各メンバーのいろいろな思いや夢をぶつけ合いながら策定したVISIONです。
今年度はそのVISIONを中期経営計画に、より具体化・詳細化して、落とし込んでいく年度にしたいと思っています。新しい次世代の若い幹部候補生たちと一緒に中期経営計画を作り、最終的には2035年の売上高1,000億円に到達することをめざして、第二の創業の年にしていきたいと思っています。今後のJASTにぜひとも期待していただきながら、温かく見守っていただければと思います。
駆け足となり申し訳ありませんが、以上でご説明を終了します。ありがとうございました。
質疑応答:グローバル事業の展望について
質問者:26ページのグローバル事業について質問します。国内の業績は本当に絶好調ですが、どうしてもグローバル事業が若干足かせになっている気がします。前期は売上も落ち、営業損失だったようですが、ここは実際、例えば今期以降、本当に立て直していくのでしょうか? 先ほど、インドやUAEなど外に広げていくお話もあったと思いますが、このあたりを深掘りして、例えば今期は黒字にしていくのか、次の中期経営計画に向けてグローバル事業をどうしていくのか、このあたりを新社長からおうかがいしたいです。
既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。