目次
谷本淳氏:みなさま、こんにちは。本日はお忙しい中、株式会社オーバルの決算説明会にお越しいただき、誠にありがとうございます。代表取締役社長の谷本淳です。
本日は目次にあるとおり、会社概要、2025年3月期の決算概況、今年3月で終了した中期経営計画「Imagination2025」の総括、そして今年4月から新たにスタートした新中期経営計画「Imagination2028」の概要を、順にご説明します。
会社概要
株式会社オーバルについて簡単にご紹介します。当社は1949年に、オーバル機器工業株式会社として創業しました。おかげさまで今年、創業76周年を迎えることができました。
東京都新宿区に本社を構え、資本金は22億円、東証スタンダード市場に上場しています。連結子会社は国内4社・海外7社の計11社、従業員数は約700名です。
社名の由来:オーバル歯車
オーバルという社名の由来ですが、創業社長の加島淳が日産自動車の2代目社長であった村上正輔氏よりオーバル歯車の特許を譲り受け、このオーバル歯車を流量計として事業化したことが始まりです。
このオーバル流量計は高い精度と信頼性を誇り、モデルチェンジを繰り返しながら、現在も当社の主力製品として活躍しています。
経営理念、中長期経営ビジョン
経営理念として「確かな計測技術で、新たな価値を創造し、豊かな社会の実現に貢献します」を掲げ、中長期経営ビジョンとして「アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニー」を目指しています。
事業部門概要
当社の事業は、大きく3つの部門に分かれます。中心となるのがセンサ部門で、流量計をはじめとする計量計測機器および付属機器・関連機器の製造販売を行っており、当会計年度の全売上高に対する売上比率は63.1パーセントでした。
次にシステム部門です。流量計を中核とした出荷・検査・分析などの流体計測制御システムの設計および施工を行っており、売上比率は17.1パーセントでした。
サービス部門は、製品の修理・メンテナンス、校正事業などを行っており、比較的安定した事業です。売上比率は19.8パーセントでした。
当社の強み:幅広い流量計ラインアップ
会社四季報などでは「流体計測機器の専業最大手」と紹介されていますが、当社の強みとして幅広い製品のラインアップが挙げられます。
流量計も測定原理別に、容積流量計を筆頭にコリオリ、渦、超音波、熱式、タービンの6種類におよびます。この幅広い製品群で、液体・気体・蒸気などの各種流体、微小流量から大流量まで、さまざまな流量計測の需要に応えています。
当社の強み:流量計を中核としたシステム・サービス
流量計のみならず、流体計測制御システムから、信頼性を担保するメンテナンス・校正まで、幅広く総合的に対応できることが当社の強みです。
当社の強み:標準供給を担うJCSS (計量法校正事業者登録制度)
さらに、当社はJCSS(計量法校正事業者登録制度)登録事業者です。石油・水・気体の3種類の流量のJCSS登録を持つ唯一の事業者であり、特に石油の校正可能流量は国内最大を誇ります。標準供給を担うJCSS登録事業者としての社会的使命から、自社製品のみならず他社製品に対しても、校正サービスを積極的に提供しています。
Summary
2025年3月期の決算概況です。全体的なサマリーとして、当会計年度は増収減益となりました。前期のAnton Paar社とのライセンス契約に伴う契約一時金の反動で減益となりましたが、この要因を除けば増益基調となっています。
後ほどご説明する中期経営計画「Imagination2025」最終年度の目標値は、すべて達成することができました。
システム部門は、受注高・売上高・受注残高いずれも大幅増となりました。また、徹底したコスト管理から収益性も改善し、業績に大きく貢献しました。
2026年3月期の業績予想では、関税問題等もあり経営環境は一段と先行き不透明な状況となりましたが、売上高は過去最高水準を想定しています。ライセンス契約に伴う契約一時金の計上、システム部門の大口受注等、原材料費・人件費の増加を見込む中でも、営業利益・経常利益は増益を見通しています。
業績ハイライト
業績ハイライトです。好調なシステム部門がセンサ部門の落ち込みを補い、売上高は前期比4.9パーセント増の150億4,800万円となりました。営業利益は、前期のような契約一時金の計上がない中でも前期水準を確保することができました。
事業部門別受注高・受注残高
事業部門別の受注高・受注残高の状況です。センサ部門は、国内の半導体関連業界向けが前期の前倒し受注の影響で低迷しました。海外では、中国・韓国での電池関連業界向けが低調に推移した影響が大きく、受注高・受注残高ともに減少しました。
システム部門は、受注高・受注残高ともに大幅増となりました。石油業界向け大口受注など、国土強靱化やエネルギー安全保障にも貢献しました。
サービス部門は、保全サポートサービスや他社製品校正受託等、受け身のサービスから攻めのサービスへの展開で堅調に推移しました。また、人件費・材料費の上昇も踏まえ、一部商品の値上げも実施しました。
事業部門別売上高(センサ部門)
センサ部門の売上高は、ここ数年右肩上がりで推移してきましたが、半導体関連業界向け、中国・韓国の電池関連業界向けの減速が影響し、前期比4.5パーセント減となりました。ただし、化学関連業界向け・石油関連業界向けは、引き続き堅調に推移しています。
事業部門別売上高(システム部門)
システム部門は、国立研究開発法人産業技術総合研究所向け・食品関連業界向けなど、国内大口案件の売上を計上し、売上高は前期比49.5パーセント増となりました。海外は、前期の受注減の影響が続く中で持ち直しの動きが出てきました。
事業部門別売上高(サービス部門)
サービス部門は、石油業界の再編や脱炭素化社会に向けた動きなど、激しい市場環境の変化の中、長年の経験とノウハウを活かして攻めのサービスを展開し、かつ一部商品の値上げを実施した結果、売上高は前期比11パーセント増となりました。
出荷元の国別売上高
国別の売上高はスライドのとおりです。海外向けの売上比率は20.8パーセントとなりました。海外では、中国・韓国・シンガポール向けが海外売上の74.9パーセントを占めています。今後もアジアを中心に事業を展開していきます。
営業利益分析
営業利益の増減分析です。主力のセンサ部門が減速しましたが、地道なコストダウン、一部製品の値上げ、システム部門の収益性改善などにより、前期比3.6パーセント減の14億2,200万円と、前期のライセンス契約に伴う契約一時金の反動を最小限に収めることができました。
キャッシュフロー
キャッシュフローの推移です。営業活動によるキャッシュフローは19億8,700万円の収入、投資活動によるキャッシュフローは8億4,400万円の支出、フリーキャッシュフローは11億4,300万円となりました。詳細は決算短信をご覧ください。
減価償却費、研究開発費、設備投資
減価償却費、研究開発費、設備投資の推移です。当会計年度の研究開発費の売上高に対する比率は3.3パーセントとなりました。今後も研究開発には積極的に投資をしていく方針です。
設備投資については、中国子会社での新工場建設、本社の空調設備の更新、横浜事業所の複合加工機ターニングセンタの更新などを実施しました。ちなみに、2021年3月期は、石油用校正装置パイププルーバーの更新、基幹システムのサーバー取得などにより、大きな設備投資額となっています。
連結貸借対照表
連結貸借対照表です。流動資産の売掛金については、期末において工事進行基準の大口売上が計上され、前期比7億6,500万円増となりました。
資産合計は、前期比10億4,200万円増の244億9,300万円です。純資産は、利益剰余金が7億1,600万円増えたことなどにより、前期比9億5,600万円増の163億2,000万円となりました。
2026年3月期 通期連結業績予想
2026年3月期の連結業績予想です。Anton Paar社とのライセンス契約に伴う契約一時金の計上や、好調なシステム部門の大口受注等により、売上高は過去最高水準を想定しています。
コスト上昇や半導体市場の落ち込みなども見込んでいますが、営業利益・経常利益は増益を想定しています。新中期経営計画「Imagination2028」の初年度として、各戦略のKPIをしっかりと達成する覚悟です。
株主還元
株主還元についてです。配当の予想ですが、2026年3月期は前期から4円増配しました。1株当たり配当金は過去最高を更新し、年間20円を予定しています。
今後も、配当は株主のみなさまへのもっとも重要視すべき利益還元であると認識し、経営基盤の確保と将来の事業展開に備えた財務体質の充実を総合的に勘案し、決定していく方針です。
オーバル 中長期経営ビジョン
今年3月で終了した中期経営計画「Imagination2025」を総括します。まず、オーバルの10年後のあるべき姿として、中長期経営ビジョン「アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーへ」を掲げ、バックキャスティングとして、その達成に向けた最初の3年間を構造改革期と位置づけ、中期経営計画「Imagination2025」を策定しました。
中期経営計画「Imagination2025」 基本戦略
基本戦略として、成長戦略と経営基盤強化戦略の2本柱の下に、それぞれ4戦略、計8戦略を掲げ、毎月の経営会議でPDCAを回しながら進捗を管理してきました。
中期経営計画「Imagination2025」 成果
各戦略の成果についてです。センサ事業成長戦略では、特に半導体市場、電池関連市場が好調で、売上高の計画値を前倒しで達成することができました。また、いくつかの画期的な新製品もリリースしました。
サービス事業成長戦略では、M&Aによる事業領域拡大により、売上高の計画値を前倒しで達成することができました。
システム事業成長戦略では、大口案件を多く受注し、売上高の計画値を大幅に上回りました。また、管理の強化などにより収益性が改善されました。
新事業創出戦略では、社内ベンチャー制度を新設し、第1号としてケムシェルパ(含有化学物質調査)調査の代行事業を開始しました。また、既存技術を応用したローリー車マンホールロックシステムを開発し、一部顧客に販売を開始しました。
中期経営計画「Imagination2025」 成果
製造BCL戦略では、内製化の推進により売上原価率の低減を図りました。また、グループ内サプライチェーンの明確化および中国子会社での生産能力向上のため、新工場の建設を開始しました。
人事財務強化戦略では、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の分析によるキャッシュフローの改善、事業部門別の収益性の分析を進めました。
DX推進戦略では、DX推進体制を構築し、経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定を取得しました。 顧客接点DXでは、デジタルマーケティングの導入と活用を進めました。オリジナルキャラクターとSNSの活用により顧客との接点を増やし、認知度を向上させるとともに、マーケティングオートメーションの利用により、お客さまのさまざまなデータを蓄積、分析することで、効果的な営業活動につなげています。
さらに今後はAIを活用し、お客さまの行動を予測し、最適なタイミングで商品のご提案ができる仕組みを構築していきます。
サステナビリティ推進戦略では、全部門の責任者へのヒアリングや若手社員を中心に開催したワークショップにより、マテリアリティ(組織にとっての重要課題)を特定し、当社ホームページ等で公表しました。
特定したマテリアリティの1つである「従業員のウェルビーイングの追求」の中で、健康経営の一環として「健康優良企業『金の認定』」を取得しました。
また、サステナビリティ推進に関連する社内の取り組みを取材し、オウンドメディアにて発信しました。
中期経営計画「Imagination2025」 業績
中期経営計画「Imagination2025」の業績の推移です。市場環境の影響もありますが、受注高、売上高ともに前中期経営計画期間の水準を大きく上回ることができました。コロナ禍の経済危機も乗り切ることができました。
中期経営計画「Imagination2025」 業績
営業利益、経常利益、当期純利益の推移です。特に近年は収益性の高い製品の売上が伸び、収益性が大きく改善しました。
中期経営計画「Imagination2025」 総括
中期経営計画「Imagination2025」の業績目標として、各戦略が順調に推移したため2023年8月に目標値を上方修正しましたが、その上方修正した目標値もすべての項目で達成することができました。
オーバル 中長期経営ビジョンとPHASE2の位置づけ
今年4月からスタートした新中期経営計画「Imagination2028」の概要について説明します。「Imagination2028」は、「PHASE 1 構造改革期」に続く次の3年間である「PHASE 2 成長期」の位置づけとなります。
好調に推移してきた背景から、3年前に計画した中長期の目標値を見直し、あらためて上方修正しました。
中期経営計画 「Imagination2028」 基本戦略
「PHASE 1 構造改革期」で掲げた計8つの戦略は好調に推移していること、また将来の方向性にもぶれはないことから、「PHASE 2 成長期」の基本戦略として引き継ぐことにしました。
基本方針
「PHASE 2 成長期」のミッションとして「確かなはかる技術と新しい価値でサステナブルな取り組みを加速」を掲げ、成長戦略としては新製品、アジア市場、新規事業、経営基盤強化戦略としては1人当たりの営業利益、カーボンニュートラル、従業員のエンゲージメントなど、それぞれのキーワードにKPIを設定し、各取締役のリーダーシップのもと推進していきます。
そして、新たに資本政策を重要視し、ROE向上、そして株主還元策にも積極的に取り組んでいきます。
業績計画
中長期経営目標となります。3年後の売上高は170億円、7年後の売上高は200億円と事業拡大を進め、ROEについては優良企業といわれる10パーセント以上を目指していきます。
センサ事業成長戦略:新製品・リニューアル製品の売上拡大
これらの目標を達成するための戦略についてご説明します。
スライド左側のコリオリ流量計、オーバル流量計、渦流量計は当社の主力製品です。いわゆるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)においては花形製品といえます。高い品質と収益性を誇りますが、市場動向や時代の流れに乗って、今後も積極的にモデルチェンジを進めていきます。例えば、AIを活用した自己診断機能などが今後注目をされるのではないかと考えています。
また、スライド右側は新製品の一例として前期にリリースした液体用電池駆動式クランプオン形超音波流量計「UC-1」です。かつてない機能を持ち、お客さまからも大変好評で、幅広い市場から多くの引き合いをいただいています。
これらの新製品およびリニューアル製品の売上高は対2025年3月期比30パーセント増を目指していきます。
センサ事業成長戦略:水素・アンモニア関連事業の拡大
そして、引き続き脱炭素社会の構築に向け、水素・アンモニア計測用の流量計の拡販を積極的に進めていきます。
前中期経営計画では、売上高161.3パーセント増と目標値を大幅に超えることができました。そして、新たに2028年3月期の売上高は対2025年3月期比50パーセント増を目標に掲げています。
サービス事業成長戦略:水素・アンモニア関連事業の拡大
水素計測流量計の拡販のため、横浜事業所に水素実ガス校正設備を建設中です。これにより、取引用途など、より高精度で信頼性の高い水素計測流量計を供給することが可能となります。
国内では水素実ガス校正を請け負う機関がほとんどないため、他社の流量計の校正も積極的に受け入れる計画です。
システム事業成長戦略:エネルギー安全保障への貢献
一方で、国土強靱化やエネルギー安全保障への貢献、そして計量標準を支える高度な技術力など、長年培ったノウハウを活かし、例えば高精度の石油・天然ガス流量計測制御システムをグローバルに提供することで、アジア市場での売上高を対2025年3月期比15パーセント増とする目標に貢献したいと考えています。
新事業創出戦略:自社保有技術を活用した新たな取り組み
既存の技術を応用し、また経営資源を有効に活用した新事業も積極的に展開していきます。前中期経営計画では2件の新事業を立ち上げました。
1件目は、世界に広がる製品含有化学物質規制に対応するケムシェルパ調査代行事業です。2件目は、プラスチックごみ問題や過重労働対策などの社会問題にも貢献するローリー車マンホールカバー封印管理システム「Lock‘nLorry」です。
これらの事業は、時代の流れの中で大きなビジネスに育て上げ、経営理念でもある「豊かな社会の実現」に貢献していきたいと考えています。そして、これらの事業を含め、新規事業の売上高は17億円を目指していきます。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてです。利益率の向上、総資産回転率の向上、財務マネジメントの強化、そして積極的なIR等により、2032年3月期におけるROE10パーセント以上、PBR1倍以上の実現を目指していきます。
株主還元
株主還元として「PHASE 2 成長期」として位置づける中期経営計画「Imagination2028」では、2028年3月期のROE7パーセント必達に向け、総還元性向は期間中の平均70パーセント以上、DOE2.7パーセント以上を目指し、機動的な自己株式取得の実施も予定しています。
株主還元 - 配当
具体的な配当については、2028年3月期は28円、2032年3月期は40円を目標としています。
キャピタルアロケーションの方針・投資計画
キャピタルアロケーション、いわゆる資本配分の方針と投資計画についてです。「成長投資」「株主還元」「財務体質の健全化」のバランスを確保の上、経営資源を配分していきます。
BS戦略、IR戦略
資本効率を改善するために、BS戦略としてバランスシートを重要視した経営スタイルを目指し、資産の最適化、負債の管理、資本構成の最適化を進め、ひいては持続的な企業価値を創造していきます。
また、IR戦略として、本日の説明会を含め、株主・投資家のみなさまとの積極的な対話、そして統合報告書などによる非財務情報の積極的な開示も進めていきます。
質疑応答:海外戦略の展開について
質問者:売上高は、2025年3月期の150億円から2028年3月期には170億円に増加する計画とご説明がありました。海外戦略はどのように展開していくのか、ご説明をお願いします。
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