目次

藤井実氏:本日はお忙しい中、ご参加いただきまして誠にありがとうございます。ユニチカ株式会社代表取締役社長執行役員の藤井です。

本日のアジェンダです。まず、2025年3月期決算に関してご報告、ご説明します。その後、事業再生計画の状況について簡単にご説明します。

業績の概要(1)

2025年3月期の連結決算です。当期の連結累計の売上高は前期比6.8パーセント増収の1,264億円となりました。営業利益については、前期は25億円の損失でしたが、当期は59億円の利益となりました。

期末に急激に円高が進行したことにより、外貨建て資産の為替評価損約2億円を計上した結果、経常利益は47億円となりました。なお、前期は10億円の経常損失でした。

事業再生計画に従い、当社および当社グループが保有する固定資産ついて、将来の回収可能性を検討した結果、構造改善費用として固定資産の減損損失379億円を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失は243億円となりました。なお、前期は54億円の損失となっています。

営業利益変動要因分析

営業利益の変動要因についてご説明します。前期の25億円の営業赤字から、83億円の増益となりました。

要因別に見ると、まず、売値・商品構成で24億円の増加効果がありました。内容としては、東南アジアでのナイロンフィルムをはじめとした不採算販売の見直しによる増益効果が25億円程度と、各製品の販売価格や、価格改定や高付加価値品へのシフトによる効果が17億円程度あったと見ています。

販売数量については、国内においては食品包装分野、生活資材分野で市況が回復し、不採算販売の見直しによる減販もありましたが、全体では増販となり18億円の増益効果がありました。

コスト要因では、大きく分けると期中に減損損失を計上した結果、償却負担が減少した効果が約9億円あったほか、種々のコストダウン施策、生産量が回復したことによる原価の低減効果がありました。一方で、運送費などのコストアップがありましたが、全体としては20億円程度の増益効果がありました。

最後の原燃料価格変動は、全体では6億円のマイナス影響です。いずれもドル建て市況は横ばいか、やや下がっている状況ではあるものの、通期では前期と比較して円安が進みましたので、当社の調達コストとしては高くなります。

以上が、前期比プラス83億円の増益要因の内訳となります。

資産・負債・純資産/キャッシュフロー

貸借対照表とキャッシュフロー計算書です。243億円という非常に大きな当期純損失を計上したため、株主資本を毀損し、自己資本比率は19.7パーセントから10.4パーセントまで急激に低下しました。

後ほどあらためてご説明しますが、今期に入り4月30日に、第三者割当増資による約200億円の資金調達を実行しましたので、現時点においては3月末から200億円、資本が増強されています。

スライド右側のキャッシュフロー計算書ですが、当期の営業利益は前期比83億円の増益でしたが、これについては棚卸資産の増加分が、前期は大幅に減少していたことも影響しています。加えて、仕入債務の減少がマイナスに働き、営業キャッシュフローは前期比マイナス19億円の63億円となりました。

当期は設備投資を大幅に抑制しましたので、投資キャッシュフローは44億円改善し、フリーキャッシュフローは前期から25億円改善しました。これにより、期末の現預金残高は29億円増加しています。

セグメント別 業績の概要

事業セグメントごとの売上高、営業利益の状況についてご説明します。各セグメントの売上高、営業利益についてはスライドに記載のとおりです。

高分子事業の状況

高分子事業セグメントの状況です。原料価格が高止まりする中、販売量の回復により工場の稼働率が好転し、コストダウン施策の効果と合わせて製造コストが低減したほか、各製品において価格改定を実施したことで収益は改善しました。

フィルム事業では、主力の食品包装用途において期間を通じて市況が回復したことで、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルムともに販売が回復しました。

工業分野は、一部の半導体関連費用途は堅調でしたが、その他の工業フィルムの販売は伸びず、同分野全体の販売量は横ばいでした。一方、コストダウン施策の効果もあり、営業利益は増加しました。

海外においては、不採算販売の見直しにより収益は改善しましたが、安価製品との価格競争が継続しました。この結果、事業全体で増収増益となりました。

樹脂事業では、エンジニアリングプラスチックは自動車部品用途の販売が期間を通じ低調だったほか、電気電子部品の需要回復が遅れている影響で販売量が減少しました。売上高は微増にとどまりましたが、価格改定を実施した効果により、営業利益は大幅に改善しました。

機能樹脂は接着剤・コーティング用途において高機能製品の販売が伸長し、収益が大幅に向上しました。この結果、事業全体で増収増益となりました。

以上の結果、高分子事業セグメントは増収増益となりました。売上高は前期比8.5パーセント増収の554億円となり、営業利益は前期の6億円に対して、当期は60億円となりました。

機能資材事業の状況(1)

機能資材事業セグメントの状況です。前期に落ち込んでいた電子材料分野を中心とした販売量の大幅な回復により生産量が増加し、製造コストの低減につながりました。

各製品において価格改定を実施した結果、収益が回復し、前年の営業赤字から黒字に転換しました。

機能資材事業の状況(2)

活性炭繊維事業では、主力の浄水用途の販売は堅調でしたが、空気浄化用途のVOC除去シートの販売が低調で、売上高はやや減少しました。

ガラス繊維事業では、産業資材分野は建築資材用途の市況が好調で、不燃テント・シートの販売が伸長しました。

電子材料分野は、生成AIや関連するデータセンター向けの特定の半導体分野で好調が継続しています。一方で、汎用半導体市況は本格的な回復までに至らない中、当社商品は携帯端末向けのハイエンドメモリを中心に、半導体パッケージ基板向けに高機能ガラスクロスの販売が伸長し、事業全体で黒字回復となりました。

ガラスビーズ事業では、道路用途は道路工事件数の減少が続く中、海外競合品に対する競争優位性が受け入れられ、販売シェアを拡大した結果、売上高はやや増加しました。工業用途では、高精度ガラスビーズなどの高機能製品の販売が伸長し、増益となりました。

不織布事業では、フィルターやスキンケア用品向けを中心に、ポリエステル系スパンボンド、コットンスパンレースともに販売が回復しました。価格改定にも取り組んだ結果、収益が改善し、赤字が縮小しました。

産業繊維事業では、ポリエステル短繊維の販売は堅調でしたが、当期後半に販売が減少しました。ポリエステル高強力糸においても同様に販売が減少しました。一方、原料価格などのコストアップに対して価格改定を実施した結果、売上高が増加し、営業赤字が縮小しました。

以上の結果、機能資材事業セグメントは増収増益となり、売上高は前期比8.3パーセント増の370億円となりました。利益面では、前期は25億円の営業損失でしたが、当期は約3億円の営業利益となりました。

繊維事業の状況

繊維事業セグメントの状況です。衣料繊維事業では、主力のユニフォーム分野は官需の販売は好調、民需についてもおおむね堅調に推移しました。一方、一般衣料、寝装およびスポーツ衣料分野は期間を通じて需要が低迷し、販売は苦戦しました。

グローバル事業はデニム生地の輸出販売が回復しました。産業資材事業は、生活関連用品が堅調に推移し、電気電子用途の販売も好調でした。

この結果、繊維事業は増収増益となり、売上高は前期比2.8パーセント増の339億円となりました。営業利益は、3億5,700万円の営業損失となりましたが、前期の営業損失5億2,300万円に比べて、赤字幅は縮小しました。

その他の事業に関しては、売上高5,700万円、営業損失は8,200万円となりました。

2026年3月期 業績予想

2026年3月期の連結業績予想です。現時点では、構造改革対象事業における事業譲渡等の実行が確定していないなどの理由から、合理的な業績予想の算定が難しいため、連結業績の見通しは未定としています。

当社グループとしては、合理的な予想が可能となった段階で、速やかに次期の業績予想を開示します。

(株)地域経済活性化支援機構による再生支援の開始

ここからは、2024年11月に公表した、事業再生計画および株式会社地域経済活性化支援機構(以下、機構)による再生支援について、あらためてご説明します。

はじめに、2025年4月30日に実行した資本増強についてご説明します。従来発行していたA種種類株式、B種種類株式の無償取得と消却を実行しました。その後、新たにC種種類株式を発行し、全数を機構に割り当てました。機構からは、出資金として約200億円の資金払い込みを受けました。

これにより、資本金および資本準備金が増加しますが、同時に減資を実行し、資本金を1億円としました。

C種種類株式には議決権を付与しており、今回の増資により、総議決権の3分の2を超える66.76パーセントの議決権を機構が持ち、筆頭株主となりました。

第三者割当増資の実行と同時に、社内取締役4名と社内監査役2名が退任し、2025年2月7日の臨時株主総会で選任された取締役7名と監査役1名が新たに就任しました。

機構からは取締役、監査役の派遣を受け入れたほか、再生計画の実行をサポートいただく専門人材の派遣も受け入れました。また、メインバンクである三菱UFJ銀行からは、取締役の派遣を受け入れました。

以上を実行することで、機構による再生支援が正式にスタートしています。なお、取引金融機関からは、最大430億円の債権放棄を含む、金融支援について同意いただいたことも併せてご報告します。

事業再生計画の骨子と現状(1)

事業再生計画の基本方針として開示した、各施策の詳細と現在の状況についてご説明します。

1番目の施策は、構造改革による不採算事業の撤退および供給能力の適正化です。衣料繊維事業、不織布事業、一部を除く産業繊維事業から撤退し、2025年8月末までの合意を目標に、事業譲渡や生産移管の取り組みを進めています。

現在は、それぞれの事業について、譲渡先候補となる相手と協議を進めている段階です。個別の状況についてはご説明できませんが、一定の合意が得られ、開示すべき状況になりましたら、速やかに公表します。

2番目の施策は、コスト削減の完遂によるローコスト運営体制の確立です。代表的な施策として、スライドの4つを挙げています。1つ目に、エンブレムアジアにおける4号機の廃止については、ナイロンフィルムの大型機台である4号機の廃止をすでに完了し、現在は工場および設備の売却に向けた取り組みを行っています。

2つ目に、ポリエステルチップの外部調達への切替えについては、現在、岡崎事業所で生産しているポリエステルチップの生産を停止する方針のもと、外部からの調達への切替え作業を行っています。

ポリエステルフィルムと樹脂事業における機能樹脂製品が切替えの主な対象です。代替のめどが立った製品から、順次ユーザーへ切替品のサンプルを提供し、評価を行っていただいています。

3つ目に、配送ルートの見直し、発送ルールの変更、物流会社や倉庫会社との契約条件の見直し等による物流費の削減においては、事業部の垣根を越えた施策の検討を行っており、すぐに実行できる施策から順次着手しています。

4つ目に、その他業務の見直しや人件費の削減、効率改善によるオペレーションコスト等の削減については、今後、構造改革の進捗により、事業規模を縮小する中で、事業譲渡等の進捗と並行して本社機能の効率化を進めるべく、改善策を計画しています。

事業再生計画の骨子と現状(2)

3番目の施策は、付加価値の高い製品の販売拡大です。収益の核となるフィルムや樹脂を取り扱う高分子事業を中心に、高付加価値製品の開発と販売拡大に取り組みます。

また、活性炭繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ等の無機系素材事業においては、さらに高成長の可能性がある市場分野に経営資源を投入し、新たな用途展開等を進め、収益力の強化を図ります。

代表的な製品について簡単にご紹介します。ボイル・レトルト処理が可能な、透明ガスバリアフィルムである「エンブレムHG」は、ここ数年、2桁パーセントの成長を続けています。今後も、生産能力の増強などにより、さらに販売を増やしていきたいと考えています。

工業分野においては、シリコーンフリー離型フィルム「ユニピール」の半導体製造ラインなどへの採用拡大を進め、さらなる成長を目指していきます。

無機系素材に関しては、ガラス繊維事業におけるガラスクロスの販売拡大に重点的に取り組んでいきたいと考えています。ガラス繊維事業は、大きく分けて2つの分野で事業展開を図っています。

1つ目は、産業資材用途全般の事業展開です。その一例としてスライドに、透明不燃シートを挙げています。

商業施設向けの防煙垂れ壁において、国土交通省認定の不燃材料でありながら、透明かつ軽量で、地震による落下や破損のリスクが小さい点も評価されています。国内市場50パーセントを超えるトップシェアを確保しており、海外での採用も増えています。

もう1つは、半導体分野における事業展開です。配線の微細化やチップの小型化に伴い、基板材料であるガラスクロスの性能に対する要求はどんどん高まっています。世界トップレベルの極薄ガラスクロスや、熱的寸法安定性に優れた特殊ガラスクロスの供給を通じ、販売拡大を図っていきたいと考えています。

事業再生計画の骨子と現状(3) 今後事業化・拡大を目指す開発品

今後事業化を目指す開発品をスライドに載せています。これらの製品の事業化や販売拡大を通じて、中長期での成長を実現させたいと考えています。

詳細についてのご説明は割愛しますが、当社のコア技術を活かし、今後需要の拡大が期待される用途や分野に向けて、新しい製品の展開を図っていきます。

事業再生計画の目標と構造改革後の姿

事業再生計画における目標値についてご説明します。事業再生計画は、機構による再生支援期間が最長5年であることから、5年後の2029年度を最終年度としています。売上高は700億円、営業利益は65億円を目標にしています。

構造改革対象事業の撤退により売上高は減少しますが、高分子事業を中心に、将来にわたって高い収益性が期待できる事業ポートフォリオへと変革していきます。また、その先においても、新たな製品の拡大などを通じ、高い収益性を保ちながら、再び成長していきたいと考えています。

事業再生計画はまだ始まったばかりですが、本日ご紹介した各施策を着実に実行し、新生ユニチカを作り上げていきます。今後ともどうぞよろしくお願いします。

以上で、2025年3月期決算のご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。