中間期 業績の概要(1)

上埜修司氏(以下、上埜):本日はお忙しい中、ご参加いただきまして誠にありがとうございます。ユニチカ株式会社代表取締役社長執行役員の上埜でございます。本日は、2025年3月期中間期決算と11月28日に公表した事業再生計画に関して、ご報告およびご説明します。

はじめに、当社の中間期連結決算についてご説明します。本中間期は、主力の食品包装用途や、半導体関連分野を中心とした電気電子用途の市況が回復したことから、各製品の販売が前年同期より回復しました。また、価格改定を実施した効果や取り組んだコストダウン諸施策の効果もあり、収益の改善が進みました。

この結果、当中間期の連結累計売上高は、前年同期比35億円増収の616億円となりました。営業利益は22億円で、前年同期比40億円の増益で営業黒字になりました。前期末との比較で円高が進んだ影響で、外貨建て資産の評価損を中心に為替差損を9億円計上したため、経常利益は前年同期比11億円増益の12億円となりました。

また、インドネシアの連結子会社であるエンブレムアジア(P.T.EMBLEM ASIA)が保有する固定資産に対して107億円の減損損失を計上した結果、親会社株主に帰属する中間純利益はマイナス98億円となり、前年同期比94億円の減益で、最終赤字の結果となりました。

なお、この減損損失の計上は生産能力適正化の検討によるものですが、今後の費用負担を軽減することとなり、将来的にはローコスト運営による事業効率の改善につながるものとなります。

営業利益変動要因分析

前年同期比で営業利益が40億円増益となった要因についてご説明します。主に円安を要因とする原燃料価格の高騰により5億円の減益影響を受けましたが、価格改定による売値の上昇と高付加価値品の販売増の効果で打ち返し、20億円の増益効果がありました。

また、販売数量の増加とコスト削減施策の実現による効果を合わせて、前年同期比40億円の増益となりました。

セグメント別 業績の概要

事業セグメントごとの売上高、営業利益の状況についてご説明します。

高分子事業セグメントは、各用途分野の市況が回復したことにより販売が回復しました。また、販売増に伴い生産量が増加し、製造コストが下がりました。市況回復による販売数量の増加に加え、各製品の価格改定の効果や、ハイバリアナイロンフィルム「エンブレムHG」をはじめとした高付加価値品の販売増が大きく影響しました。

これらにより、高分子事業セグメントの売上高は前年同期比21億円増収の281億円、営業利益は26億円増益の27億円となりました。

機能資材事業セグメントは、電気電子用途分野を中心に、幅広い用途分野で販売が回復しました。これに伴い生産量が増加し、製造コストが下がりました。コストダウンの効果に加えて各製品の価格改定効果が表れ、増収増益となり、前年同期の営業赤字から黒字に転換しました。

売上高は活性炭繊維事業を除く4つの事業で増収でした。営業利益はそれぞれの事業が増益となりましたが、不織布事業と産業繊維事業は営業赤字が継続しました。これらにより、機能資材事業セグメントの売上高は前年同期比19億円増収の184億円、営業利益は16億円増益で2億円と黒字転換しました。

繊維事業セグメントは、衣料繊維事業でユニフォーム分野の官需が堅調でしたが、それ以外は全般的に低調でした。産業資材事業は、分野により状況が異なりますが、全体での販売状況は横ばいでした。グローバル事業は、デニム生地の輸出販売が回復しました。利益面では円安の進行によるコストアップの影響が大きく、価格改定による効果をコストアップが上回りました。

これらにより、繊維事業セグメントは減収減益となり、売上高は前年同期比4億円減収の150億円、営業利益は1億円減益で6億円の営業損失となりました。

2025年3月期 業績予想に対する進捗

2025年3月期の連結通期業績予想についてご説明します。当中間期に減損損失を計上したことを踏まえ、2024年5月14日に発表した通期連結業績予想を修正し、売上高1,200億円、営業利益30億円、経常利益14億円、親会社株主に帰属する当期純損失103億円と予想しています。

中間期決算に関するご説明は以上です。

はじめに (株主・機関投資家の皆様へ)

ここからは、11月28日に公表した事業再生計画についてご説明します。この度ユニチカグループは、2024年11月28日付で、株式会社地域経済活性化支援機構(以下、REVIC)に対して事業再生計画を提出し、再生支援の申し込みを行いました。同日、REVICより再生支援決定の通知を受けました。

本再生計画は、繊維事業からの撤退をはじめとした大規模な構造改革を伴う内容であり、株主のみなさまをはじめ、金融機関、お客さま、取引先を含めた多くのステークホルダーのみなさまに多大なるご負担をおかけします。

当社としては、ユニチカグループが生まれ変わる最後のチャンスをいただいたと受け止め、生き残りをかけて本事業再生計画を実行し、しっかりとした収益を上げられる事業体制を構築することで、企業価値向上に結び付けたいと考えています。

株主のみなさま、機関投資家のみなさまにおかれましては、本事業再生計画に対しご理解を賜り、構造改革の実行にお力添えをいただきますよう、何卒よろしくお願いします。

再生支援要請に至った背景

当社が再生支援を要請するに至った背景についてご説明します。当社はこれまで、構造改革を行ってもなお、抜本的な構造改革の完遂には至らず、また昨今では新たな経営課題にも直面したことで、本事業再生計画の実施を決断しました。

2014年からの構造改革では、ノンコア事業の売却などにより、一時的に業績は回復したものの、収益性の低下や硬直化したコスト構造など、潜在的な課題がある事業まで踏み込んだ改革ができず、継続的な赤字事業が残ってしまいました。

2018年以降は、減価償却費を上回る投資を実施しましたが、売上や利益の減少を食い止めることができず、逆に現預金の減少要因となりました。

また、収益の核であるフィルム事業では、インドネシアにおいて積極的な投資を行いましたが、生産能力が過剰となり、事業収益力が大幅に低下するという新たな課題が発生し、2023年度は連結で営業赤字となりました。

当社の現状は、収益力の低下に伴い資金創出力が失われ、足許では自助努力による資金繰りの維持が困難な状態です。また、課題事業を残したままでは借入金の返済が困難であり、高分子等の将来性ある事業への投資が限られ、事業継続や発展が見込み難く、抜本的な構造改革が必要と判断しました。

事業再生計画の概要

本事業再生計画では、強固な事業ポートフォリオの構築に向け、事業の「選択と集中」に取り組みます。

1つ目は、構造改革による不採算事業の撤退及び供給能力の適正化です。今後、採算改善が困難と判断した衣料繊維事業、不織布事業、中空糸膜などの一部を除いた産業繊維事業から、当社としては撤退します。対象となる事業については、できる限り事業譲渡に取り組んでいきます。

2つ目は、コスト削減の完遂によるローコスト運営体制の確立です。大きなアクションとしては、インドネシア子会社のエンブレムアジアにあるナイロンフィルム製造ラインの4号機を廃止し、生産能力の適正化と固定費負担の軽減を図ります。

また、国内子会社の日本エステルで生産しているポリエステルチップの自社生産を停止し、外部調達に切り替えることでコストダウンを図ります。このほか、配送ルートの見直しなどによる物流費の削減をはじめとしたコストダウン施策に取り組みます。

3つ目は、付加価値の高い製品の販売拡大です。収益の核となる高分子事業において、これまで以上に高付加価値品の開発と拡販へ力を入れていきます。また、ACF(活性炭繊維)、ガラス繊維、ガラスビーズなどの無機系素材事業においては、高成長が見込まれる市場分野に経営資源を投入し、新たな用途展開や拡販を推進します。

4つ目は、組織運営体制の強化です。REVICから取締役、監査役、経営管理などの専門性を持った職員の派遣を受けるほか、三菱UFJ銀行からも役員を受け入れることで、事業再生計画の迅速な遂行、ガバナンス体制の強化を図ります。

REVICによる再生支援

ここまでご説明した大規模な構造改革の実行には財務基盤の強化が必要となるため、外部スポンサーの招聘にあたり、多くの選択肢について検討しました。その結果、スライドに記載の4つの機能を有することから、REVICの再生支援を受けることが最善であると判断し、メインバンクである三菱UFJ銀行と協議の上、REVICに再生支援を申し込むこととしました。

1つ目は、公的な機関による事業再生の側面を有し、構造改革実行における事業価値の棄損を最小限に抑えることが可能である「信用力補完」機能です。2つ目は、事業再生の専門家による支援のもと、大規模な構造改革を含む本事業再生計画を断行することが可能である「事業再生支援」機能です。

3つ目は、新規借入や公募増資が困難である中、本構造改革費用に必要な資金として、資本の出資及び融資が可能である「出融資」機能です。4つ目は、収益力に比して過大な借入債務を負担しており、財務体質の改善には大規模な金融支援が必要となる中、金融機関の利害調整などが可能である「金融機関調整」機能です。

REVICによる再生支援ストラクチャー

今回、当社が受ける予定の再生支援についてご説明します。11月28日の支援決定以降、金融機関に対して金融支援の要請を行い、現在調整中です。金融支援の内容としては、最大で430億円の債権放棄、現在発行しているA種およびB種種類株式約227億円の当社への無償譲渡、メインバンクによる90億円の融資枠設定などです。

その後、REVICから第三者割当による出資約200億円と150億円の融資枠設定をいただきます。また、金銭面だけでなく、人材面でのサポートとして、構造改革を支援してくださる経営人材を受け入れます。

今回の再生支援は株式の希薄化を伴うスキームとなっており、株主のみなさまにはご負担をおかけしますが、資金調達や金融支援を受けることで財務体質の改善が見込まれ、大規模な構造改革の実施が可能となります。

そして、大規模な構造改革を経て、高収益体質の企業へと生まれ変わることができます。今回の構造改革が企業価値向上のための最善策であると、当社は考えています。

なお、今回の事業再生スキームにおいては、東証プライム市場への上場は維持されるものと考えています。

構造改革後の姿

構造改革後の姿についてご説明します。本事業再生計画において、衣料繊維事業、不織布事業、一部を除く産業繊維事業から撤退し、計画の最終年度である2029年度には、売上高700億円と約半分強まで縮小します。

その一方で、将来性のある高分子事業や無機系素材の機能資材事業で構成されるポートフォリオへと変革していきます。これにより収益性は向上し、営業利益は65億円を目指す計画です。

構造改革と並行して、収益性が高く今後の成長が見込まれる事業や製品の販売を伸ばします。本事業再生計画終了後は、営業利益率10パーセント以上を視野に入れながら売上規模を拡大し、継続的に安定した収益を上げられる企業体を目指していきたいと考えています。

注力事業の成長戦略① (高分子事業)

今お話しした注力事業の詳細についてご説明します。当社のフィルム事業では、食品などの包装フィルムと、剥離フィルムや保護フィルムなどの工程フィルム、電子部品などに使われる工業フィルムを扱っています。

包装フィルムでは、食品包装用ナイロンフィルムの工業化を世界で初めて成功して以来、トップシェアを守り続けています。国内トップの供給能力をバックグラウンドに、引き続き高いシェアを維持していきます。

同時に、近年2桁パーセントの成長を続けているハイバリアナイロンフィルム「エンブレムHG」を中心に、多彩なガスバリアフィルムの販売を拡大し、収益性の向上を図ります。

工業フィルムでは、独自の技術を駆使し、ニッチ領域で存在感を発揮する方針です。電気電子用途において販売量を伸ばしているシリコンフリー離型フィルム「ユニピール」や、近年採用実績を増やしている高耐熱ポリアミドフィルム「ユニアミド」など、優れた競合優位性を備えた製品の開発に成功しています。これらの販売規模を拡大し、収益に貢献していきます。

樹脂事業では、工業フィルムと同様に、独自の製品を数多く展開しています。スライドには、一例として、高い強度や耐熱性を持ちながら塗装なしでメタリック色が得られる特殊なナイロン樹脂「ナノコン」と、水系のコーティング剤や接着剤に使われる変性ポリオレフィン樹脂エマルジョン「アローベース」を紹介しています。

どちらも溶剤の使用量を減らして環境負荷の低減に貢献できるため、環境材料の側面も持っています。このほかにも独自製品を展開していますが、一つひとつの規模はまだまだ小さく、成長の余地は大きいと考えています。

注力事業の成長戦略② (無機系素材・機能資材)

無機系素材を中心にご紹介します。ガラス繊維事業では、建設資材などで使われる産業資材用途と、主にプリント基板材料に使われる電子材料用途があります。

産業資材用途では、ガラス繊維の特徴である不燃性や耐熱性などの機能を活かし、テント材料や防煙垂れ壁などに使われていますが、今後はこれらの建築用途だけでなく、断熱材や耐熱フィルターなど幅広い用途への展開を図ります。

電子材料用途では、絶縁性や寸法安定性などの特徴を活かし、独自の加工技術で製造される超薄型ガラスクロスを、ハイエンドメモリなどの半導体パッケージ基板向けに展開・注力していきます。

活性炭繊維事業では、繊維状活性炭に特有の高い吸着性能を活かし、きれいな水やきれいな空気を求める世界的なニーズ拡大の機会を捉え、グローバルに展開していく方針です。

ガラスビーズ事業では、道路用などで使われているガラスビーズをさらに高機能化した製品を開発・展開し、ニッチ用途での採用拡大を目指します。

中空糸膜では、耐溶剤性に優れたナイロンを原料とした中空糸膜フィルターで、環境に優しい溶剤リサイクルの分野でのシェア獲得に注力します。

現在の溶剤リサイクルは蒸留法が主流ですが、エネルギー消費が大きいという課題があります。中空糸膜フィルターを使用した方法では、エネルギー消費を大幅に減らすことが可能なため、勝算は十分にあると考えています。

中長期で事業拡大を目指す開発品

まだ研究開発段階ですが、今後の事業化が期待される開発品についてご紹介します。スライドに挙げたものは代表例ですが、今後の中核をなす高分子事業においては、着々と新しい製品開発が進展しています。

高表面積ハイエントロピー合金について簡単に触れます。こちらは5種類以上の金属を混合し、独自の技術で非常に表面積の大きな合金材料を作製するというものです。触媒として使用した際に、化学反応を非常に速く進める効果が認められたため、触媒材料としての応用を目指しています。

本年4月に研究内容を公表後、複数の研究パートナーと事業化に向けた共同研究を進めています。事業化まではまだ時間を要する見込みですが、将来のユニチカを背負う製品に育てていきたいと考えています。

事業再生計画において、ローコスト運営体制の構築を進めていきますが、有望な研究開発テーマについては引き続き推進し、中長期的な収益拡大への種まきを行っていきます。

最後に

あらためて、私からみなさまにお願い申し上げます。本事業再生計画の実行にあたっては、大きな痛みを伴い、達成は必ずしも容易ではないと考えています。

しかしながら、当社グループは本事業再生計画を必ずやり切り、新しいユニチカに生まれ変わるという強い信念を持って構造改革に取り組んでいきます。本事業再生計画を遂行した暁には、当社の経営理念である「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」ことを通じ、安定した高収益を継続して上げることで、企業価値を向上できると確信しています。

株主のみなさまや機関投資家のみなさまにおかれましては、何卒ご理解とご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。以上で私からのご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。