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原田典子氏(以下、原田):みなさま、こんにちは。AI CROSS代表取締役の原田です。本日は、当社の2025年12月期第1四半期の決算、事業等についてご説明します。第1四半期の業績についてのハイライト、KPIのサマリー、ビジネスライン、トピックス、株主還元についてお話しします。
FY2025.1Q業績ハイライト(2025年1月1日~3月31日)
原田:第1四半期の業績ハイライトです。売上高は9億3,000万円、営業利益は1億3,900万円、経常利益は1億4,100万円、四半期純利益は8,100万円で着地しました。営業利益は、四半期ごとに上場来最高益を更新し続けています。今回も更新し、好調に推移しています。それぞれについて、四半期ごとに順を追ってご説明します。
売上高(四半期毎推移)
原田:売上高の四半期ごとの推移です。スライドのグラフでは、濃い青色と薄い青色に分けて示しています。濃い青色が、国内のお客さまの売上高です。現在の収益のうち、大きな部分を占めるのがショートメッセージの配信です。
ショートメッセージの配信は、DtoCのお客さまがCのコンシューマーに対して、いろいろな用途でSMSを送るビジネスモデルです。1ヶ月に何通送ったのか、そして1通当たりいくらかに応じて、当社はそのお客さまから売上をいただいています。
国内の収益が最も伸びています。みなさまも、例えばなにか買い物をした時に、本人認証のために携帯にパスワードが送られてきたご経験があると思います。SMS市場は、このような本人認証と呼ばれるもので急拡大してきました。
本人認証は、実はGAFAMのような外資系企業が多くのユーザーを抱えています。約2年前までは、当社も外資系企業経由での売上が半分を占めていました。しかし、急激にこのような企業の売上が伸びてきた結果、配信数を増やすことに伴うボリュームディスカウントが発生しました。
その結果、配信単価が下がり、配信数が大きく伸びても、売上高・利益ともに下がっていきました。国内のお客さまの本人認証以外の使われ方としては、最近では、例えば美容室やレストランを予約すると、予約のリマインダーがショートメッセージで送られてきます。
当社は、このような使われ方を積極的に開拓することによって、配信数とともに配信単価を上げられるような国内のお客さまに注力してきました。その結果、今回の第1四半期も、国内のお客さまが当社の売上高の86.9パーセントとなっています。国内のお客さまによって、売上を伸ばしていくのが今の戦略です。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):先ほどのお話では、売上高に季節性があるということでした。よりイメージを湧かせるために、背景を教えてください。
原田:今お話ししたようなレストランの予約や、小売りなどのECで買い物をした時のキャンペーンの案内のような用途が広がってきています。特に11月や12月は、年末キャンペーンを打つお店が多いので、その時期に伸びる傾向があります。
坂本:国内要因が伸びてきた要因は、そこに含まれますか?
原田:含まれます。
営業利益(四半期毎推移)
原田:営業利益も順調に伸ばしています。2023年に海外で大きく減益しましたが、国内のお客さまに力を入れるようにした結果、継続して順調に伸ばしてきている状況です。昨年の第4四半期は、株主優待や人件費の一時的な採用コスト、ボーナスといった季節性のあるものの影響で非常に下がっていますが、それ以外のところでは順調に利益を伸ばしてきています。
経常利益(四半期毎推移)
原田:経常利益も同様の推移をしています。
四半期純利益(四半期毎推移)
原田:四半期の純利益も同等の推移をしています。子会社にCVCを持っており、有望なスタートアップ、特に当社と事業シナジーの高い会社に投資しています。今回、そのスタートアップで700万円の有価証券の減損が発生しましたが、経常利益が上がったため、前年度に比べて12パーセントの成長で着地しています。
四半期毎 販売費および一般管理費推移(四半期毎推移)
原田:四半期ごとの販売費および一般管理費の推移です。当社では、人件費が一番大きな部分を占めています。人件費、広告宣伝費、研究開発費、その他販管費となっています。
人件費は継続して微増しています。今後も、営業のソリューションに特に注力しています。このような人材、データサイエンティスト、エンジニア、開発といった人材を増やす採用計画を持っていますので、それを受けての微増です。
広告宣伝費について、メインのメッセージング事業に関しては、主にはマーケティングチームや人材に投資をしています。そのため広告は、AIのサービスなど新しく作ったソリューションのSEO対策など、費用対効果の高いデジタルマーケティングに特化しています。
研究開発費は、この四半期は微減しています。新しいプロジェクトに、研究開発という位置づけで継続して投資するためです。サービスとしてリリースするのはいったん落ち着いて、原価のほうに計上されるため、この四半期だけで見ると落ちたという結果になりました。
その他販管費は、一時的な支払いや採用フィーなどです。株主優待や採用の一時的な費用の影響で、前四半期に比べると大きく落ちています。
井上綾夏氏(以下、井上):今後、販売費および一般管理費について、一時的を含めてでも、増える可能性がある項目は現段階でなにかありますか?
原田:すでに開示しているとおり、第2四半期と第4四半期に株主優待コストが発生するため、今年もあと2回、一時的に増えます。
FY2025業績予想進捗
原田:第1四半期を終えて、業績予想の進捗についてです。売上高は、通期業績予想の43億円に対して、21.65パーセントです。営業利益、経常利益、四半期純利益はそれぞれ35パーセントから40パーセントというあたりで推移しています。
売上高はおおよそ例年通りです。各段階利益に関しては、少し上振れしているように見えますが、第2四半期と第4四半期には株主優待がありますので、こちらも順調に予算どおりに推移しているとお考えください。
坂本:株主優待は、今期の業績予想に織り込まれている状況なのか確認させてください。
原田:昨年の実績をベースに織り込んでいます。
坂本:これから株主数が増えると、上振れする可能性はまだあると思います。ある程度、バッファーを取っているのでしょうか?
原田:余裕をもってバッファーを取っています。株主数からおおよそ予測できるものですので、そこは見込んでいます。
KPIサマリー(四半期状況)
原田:KPIのサマリーです。KPIとして、メッセージングの取引社数、SMSの配信数、メッセージングサービスのARPUを開示しています。それぞれの四半期ごとの推移をご説明します。
メッセージングサービス取引社数
原田:メッセージングサービスの取引社数について、スライドのグラフでは色を分けて示しています。濃い色が直販、薄い色が販売パートナー経由です。今回も、販売パートナー経由での取引者数が増加しました。
国内でも、特に人材業界や金融業界、最近では不動産業界等といった業界に特定して、メッセージングを広げていく戦略です。このような業界にすでに顧客を持っている販売パートナー、もしくはソリューションを持っている販売パートナーと積極的に提携しています。販売パートナー経由で当社がサポートをして事例を展開し、新規開拓をしていった結果、取引社数が増えました。
坂本:販売パートナーが大きく伸びている要因や、販売パートナーを伸ばすために行っている施策を教えてください。
原田:人材業界等、特に伸びている販売パートナー向けに特定の営業を強化しています。営業のサポートを強化したことで、事例の横展開がしやすくなりました。既存のパートナー経由が大きく伸びたのが今回の要因です。
坂本:どのような営業スタイルで直販を行っていますか?
原田:直販の新規のお問い合わせは、Web経由で多くいただきます。そこに対して、業界や用途に応じて、過去の事例があるものはそのままご提案します。大手や見込みの高いお客さまに関しては、ソリューションのフィールドセールスがいます。お客さまの課題を聞いて、その用途や業界ごとの使い方も含めて提案して、提供するスタイルです。
SMS配信数
原田:SMSの配信数です。スライドのグラフについて、濃い青色が国内です。国内が一貫して伸びている状況です。先ほどもお話ししたとおり、海外の単価が下がっても、全体の配信数は伸びるという状況です。
四半期で見ると、海外が減った結果、全体の配信数は少し落ちていますが、国内は順調に伸ばしています。引き続き、国内を伸ばすことによって全体の配信数を伸ばしていく方法で、今後も売上高に直結させて、増やしていきたいと考えています。
坂本:国内が大きく伸びていることは、成長の1つの要因だと思います。国内のどのような業種が最近伸びているのでしょうか? 特徴があれば教えてください。
原田:特に伸びているのは、金融業界と人材業界です。客単価が高く、SMSの単価が下がりづらい金融や人材、今後は不動産などの業界をあえて狙っています。
坂本:セキュリティなどが絶対に必要だからですね。
原田:おっしゃるとおりです。今も、販売促進などが伸びています。
メッセージングサービスARPU (顧客平均売上高)
原田:ARPUについてです。ARPUは、海外・国内を含めた全体で出しています。海外に引っ張られた結果、例年よりも落ちています。メッセージングの単純なSMSだけを使っている既存のお客さまにAIを売るなど、クロスセルを行ってARPUを上げていく施策を打っています。
メッセージングサービスのサービス戦略
原田:第1四半期のビジネスラインの状況をご説明します。スライドに、メッセージングサービスの戦略を記載しています。スライドの図を、青色とピンク色に分けています。青色がプラットフォームを提供するビジネスです。
スライド左下は、既存のお客さまに対するSMSの配信プラットフォームです。SMSを送った配信数掛ける単価、というシンプルなビジネスモデルです。繰り返しお伝えしてきたとおり、客単価の高いところに継続して注力していきます。
少し前にリリースしたSMSというのはテキストしか送れません。今後は、デフォルト端末の動画・画像がRCSというものに変わってきます。当社では、これに対応したものを「絶対リーチ!RCS」としてリリースしています。
それによって、月額固定をさまざまなプラットフォーム利用で取れたり、単価が上がっていったりします。引き続き、既存のお客さまも含めて提供していく戦略です。今後は、このプラットフォームを新しい新規顧客に売っていくところを強化していきます。
先ほどお話しした業界には、まだリーチできていない大手のお客さまがいらっしゃいます。業界の大手を狙って、直販で取っていきます。市場では、マーケティングオートメーションのようなSMSを、業務利用やセキュリティ目的で使っているのが大多数です。
マーケティング利用は、これからの伸びしろが大きい分野です。マーケティングオートメーションのようなプラットフォームを抱えているパートナーに、デフォルトでつけていくところを強化していきます。
スライド右側のピンク色の部分は、ソリューションです。「リピカム」は、SMSを単純に送るだけではなく、既存の掘り起こしのソリューションです。今、人材業界では、本当に人が足りません。新しい人を開拓するよりも、人材会社が過去にコンタクトを取ったことがあり、データベースを持っている人材を掘り起こしていくという考え方です。
過去のデータベースに連絡先を持っていますので、その電話番号に送っていきます。どのようなメッセージを、どのようなタイミングで送ればいいのか、ということを当社がBPOで受けて、「何人送客したら料金はいくらになります」というかたちで、ソリューションを提供しています。
単純にSMSの送信単価掛ける重量ではなく、ソリューションでお客さまの課題を解決していくものも、パッケージで出しています。SMSしか送っていない既存のお客さまに、「リピカム」や「絶対リーチ!」とAIを組み合わせて、パッケージで提供しています。
例えば、BtoCの企業がどのような人に対して不動産や金融の案内をすると、最も確度が高いのか、コンバージョンが上がるのかを当社のAIで予測します。既存のお客さま全てには、ソリューション展開をリーチできていませんので、これから強化していきます。
戦略的に、スライド右上のソリューションを新しいお客さまに展開していきます。特に、金融、人材、保険、不動産のような業界も開拓の余地があります。そちらにソリューションを提供していくのが現状の戦略です。
AIサービス「Deep Predictor」 サービス 戦略
原田:AIサービスの戦略マップです。メッセージング事業でもAIを提供していますが、AI単体サービスで需要予測のプラットフォームを持っています。需要予測は、製造、卸、小売などの業界で多く求められます。売上を予測することによって最適な在庫を仕入れて、無駄をなくしたり、業務効率をあげたり、在庫の最適化を行うというようなソリューションです。
今は、スライド右上のお客さまが一番多いです。スライドの図は、上に行くほどサービスの単価が高く、下に行くほど低くなります。右に行くほど、お客さまの中に1名でも2名でもデータサイエンティストやAIの知見のある方がいらっしゃいます。左に行くほど、レストランのような業界など、AIがわかる方がいないというように戦略マップを分けています。
AIがわかる方が1名や2名はいらっしゃるお客さまのデータに合わせて、当社のコンサルタントがお客さま独自のモデルを作り、提供するというのが最も精度が上がります。製造業であれば、過去のデータに基づいて、どのようなものを入れたらいいか、どのような外部データを入れるのが最も精度が上がるかを当社が検討します。
これまではデータは使わず、専門家が過去のさまざまなものを参照して「では、これぐらいで」と予測して在庫を決め、仕入れていました。精度が上がるのか、人はもっと減るのか、そもそもオペレーション回るのか、といったような業務の効果検証を「PoC(Proof of Concept)」といいます。これを約半年かけて行い、事例が出てきている状況です。
対して、データサイエンティストがいないお客さまに「一定の予測はできますよ」と、例えば5万円で提供しているパッケージがスライド左下のシンプルプランです。
今期の下期頃に、スライド右下のアシスタントプランをリリース予定で、データサイエンティストが手厚く入ります。コンサルティングは不要だけれど「このデータを使ってなにかしてほしい」「もう少し安く簡単にできませんか?」というニーズがけっこうあります。それを簡単に実現できるパッケージです。
UIを簡単にしたもので、AIのチャットボットで当社のアバターと会話していくと、自動的にお客さまのデータを用いて予測ができるものをリリース予定です。
AIサービス「Deep Predictor」の導入実績
原田:今お話しした「Deep Predictor」による需要予測のプラットフォームの事例です。スライド上部がカスタムプランやSMS配信を組み合わせたものです。下部に記載したシンプルプランの事例も積み上がっています。トピックスのところで、あらためてご説明します。
ノーコードAI 『Deep Predictor』: 売上予測スピードを6倍に
原田:トピックスを2つご説明します。1つ目が、AIの「Deep Predictor」をアルファクラブ武蔵野社に導入した事例です。アルファクラブ武蔵野社は、冠婚葬祭の事業を行っている会社です。最近の冠婚葬祭では、家族葬のようにミニマムに行いたいというニーズがあり、小型店舗の出店を加速されていました。
小型店舗ですので、これまでは専門家の方が物件を見て「この地域だと、この程度の売上が出るだろう」と予測していたので属人的でした。また、年齢や平均年収などを見ながら予測するのに1時間もかかっていました。これをすべてデータに基づいて、誰でも簡単に10分で予測できるものにしました。
それによって、業務効率が上がり、専門家の方が高齢化になって辞めても大丈夫になったと、非常に喜ばれた事例です。良い物件は取り合いになることも多い中、出店の判断が早くできるようになり、機会ロスを防ぐことができたという点でも、お客さまに非常に喜んでいただけています。
「絶対リーチ!RCS」:美容サロンの実来店率を10%向上
原田:2つ目のトピックスは、「絶対リーチ!RCS」です。RCSは、メールと比べても、コンバージョンや見てもらえる率が非常に高いということで広がってきました。このご時世、画像や動画で見ることが当たり前になってきていますので、いよいよiPhoneやAndroidといったキャリア側のデフォルトの端末に、動画・画像が送信できるものが入ってきています。
海外ではすでにスタートしていますが、日本では携帯会社が対応しないと見ることはできませんでした。しかし、つい先日、KDDIがRCSにいよいよ対応したことで、日本のiPhone端末にもじわじわ広がっています。
それにより企業は、iPhoneやAndroidを持っている方に対し、RCSを使って動画・画像を送ることができます。「絶対リーチ!RCS」は当社で端末のRSC対応状況を見極めて、画像・リンク付きメッセージを送ることが可能なプラットフォームになっています。
スライドは、メンズ脱毛サロンのお客さまの事例です。過去は、SMSやLINEで来店を促すようなメッセージを送信していました。導入後の効果を比較してみると、コンバージョンがSMSやLINEよりも良くなっています。今は、KDDIしか送信できないことだけが少しネックになっていますが、今後はもっと積極的にRCSを使っていきたいと非常に喜ばれています。
数字的には、実来店率が10パーセント増加し、コンバージョンは最大2倍に向上しました。非常にRCSのポテンシャルを感じる事例です。
2025年6月末日現在の当社株主様向け株主優待について
原田:株主還元についてです。昨年12月末日時点の株主名簿に記載された方にも、株主優待を提供しました。同様の内容で、2025年6月末日時点で株主名簿に記載された株主のうち、当社株式を300株(3単元)以上持っている方に対し、1万5,000円分の株主優待を提供します。引き続き、QUOカードもしくはデジタルギフトから選んでいただけます。
私からのご説明は以上です。
質疑応答:株主還元について
坂本:株主還元について、こちらの商品にした理由も含めて、株主還元を設定された理由を教えてください。
原田:当社は、まだグロースでも時価総額100億円未満の会社であり、株主もほとんどが個人のみなさまが多い状況です。その中で、これまでのようなIRに加えて、もっと多くの新しい株主のみなさまにも入っていただくことで、出来高を増やしていきたいと考えています。
そのような優待目的で入っていただいても、当社やその事業を知ることによって、長期の株主になっていただくなど、これまでリーチできていなかった投資家のみなさまに対して、幅広くリーチしたいという思いがありました。他の施策等を含めて検討した結果、今の状況に合っていると考えて設定しています。
坂本:現状として優待の経費のついては、バッファーは取って業績予想に組み入れているというお話でしたが、さらに知名度が上がり人気化した場合、株主数は増えてくると思います。その場合、その年は無理かもしれないですが、販管費のキャップなどにより、今後ある程度コストがかかり過ぎたら変更する可能性はありますか?
原田:現状は、特に販管費がいくらといったキャップは設けていません。しかし、発行済み株式数からMAXが読めていますので、今のところは引き続き行っていこうと思っています。ただ、株主還元施策に関しては、状況によって何がベストかが変わってくるため、その都度判断していきたいと思っています。
坂本:成長のステージが変わったら、配当になるかもしれないということですね。
原田:おっしゃるとおりです。
質疑応答:上場基準変更への対応や施策について
坂本:「東証からグロース市場の上場基準の変更案が出ましたが、御社の対応や施策などがあれば教えてください」というご質問です。
原田:変更後の上場維持基準としては、2030年までに時価総額100億円以上ですが、私たちはもっと上を目指しています。直近では、中期経営計画を開示しましたので、そちらをご覧ください。
中期経営計画をきちんと達成していけば、上場維持基準は問題なくクリアになっていくと思っています。経過措置で100億円を目指すよりは、企業価値、業績ともに、もっと上を目指していきたいと考えています。
質疑応答:競合他社と比較した際の強みについて
井上:「SMSの国内法人市場は8社程度ありますが、他の会社もSMS市場に参入している中で、御社の強みを教えてください」というご質問です。
原田:競合他社は、それぞれいろいろな特徴があります。当社は、特にAIについて力を入れています。2018年ぐらいから研究開発含めて取り組んでいるため、社内にデータサイエンティスト、AIコンサル、AIエンジニアが在籍しています。
国内に注力したきっかけは、SMSの配信単価、付加価値を上げていくことだとお伝えしました。AIやソリューションを組み合わせることで、付加価値を上げられるキャパを持っているところが一番の強みになっています。
井上:社名の「AI CROSS」は、やはり「AI」に由来していますか?
原田:おっしゃるとおりです。2018年に上場する前、私たちの企業理念は「Smart Work, Smart Life」であり、1人1人の生産性を上げていきました。業務効率を上げ、企業の生産性を上げていく中で「今後はAIが必須になってくるだろう」と考え、AIに新規参入したと同時に、社名も変更しています。
質疑応答:RCSサービスについて
坂本:スライド22ページの最近の導入例でご説明されていた、メッセージで動画をみることができるサービスについて、もう少し詳しく教えてください。これは、SMSのメッセージに動画がくっつくようなイメージで合っていますか?
原田:例えば、iPhoneであれば、メッセージングアイコンにSMSが来るかと思います。そこに、そのままアプリのように、動画・画像が届くイメージです。「個人 to 個人」のビジネス相手の場合、LINEではなく、ショートメッセージを送ることもあるかと思いますが、この時に画像送信をできるようになります。
坂本:SMSはテキスト中心で、キャリアが違うと長文が難しいなど、意外と運用が厳しいと思います。RCSは、LINEのようなかたちで、SMSがもっと拡張的に使えるようになるイメージで合っていますか?
原田:おっしゃるとおりです。LINEのような感じで、電話番号さえわかれば、カルーセルができたり、動画を見たりすることができます。これが広がってくれば、かなりいろいろな用途に広がっていきます。
坂本:おそらく開封率も高くなると思いますし、日常使いがもっと盛んになると思います。
原田:LINEは個人的に近い方とのやりとりですが、こちらはもう少し幅広く利用できます。
坂本:LINEはIDを聞かないといけないので、電話番号だけでやり取りができるのが良いと感じます。SMSはできるのですが、長文で送れなかったり、なにか障害があったりすると「LINEのほうが楽だな」と感じます。これからは、RCSがもっと発展していくのでしょうか?
原田:最近のSMSは、振り込め詐欺が広がっているなど、スパムの問題があります。RCSにおいて、動画・画像送信以外の特徴として企業に喜ばれているのが、送信元を変えることができない点です。
これまでは、「○○会社」「○○銀行」といった名前だけでなく、電話番号なども偽ることができてしまったため、詐欺が横行していました。それが「○○銀行」と正式な名前が取れることで、金融機関などには非常に期待されています。
坂本:よくある詐欺的Eメールでは、ドメインのサイトが微妙に違ったりするものがあります。どちらが正しいかを見なければいけないのが非常にストレスでした。
原田:おっしゃるとおりです。そこに対して、お墨付きが付くということです。
坂本:それはキャリアなどでお墨付きが付くのでしょうか?
原田:私たちのような業者で、きちんとキャリアに企業登録として登記簿謄本まで提出しなければいけないとなっています。
坂本:マークかなにかはわからないですが「これはここの会社から来ましたよ」と明確になるのですね。それは非常に安全ですね。
原田:おっしゃるとおり、マークが付きます。これによって、詐欺SMSのようなものをどんどんなくしていきたいと思っています。
坂本:非常に意義がありますし、使いたい会社が多いサービスだと思います。
質疑応答:不正ログインや不正取引の対策と影響について
井上:「最近、ネット証券各社で不正ログインや不正取引が相次いでいます。2段階認証などの対策も早急に取り組んでいるところだと思いますが、御社にはどのような影響がありますか?」というご質問です。
原田:SMS認証は、多要素認証の中で、非常にバランスの良い認証方法です。顔面認証などのいろいろな認証方法がありますが、セキュリティはコスト削減でもなければ、売上アップでもないため、一定の自社のポリシーに合ったレベルで、コストを最適なレベルで抑える点においては、SMS認証のほうがバランスが良いため広まってきました。
今も「多要素認証をやらなければいけない」「まったく対策していなかった」と取り入れるところが増えてきていますし、お客さまによっては、どんどんオプションが増えていきます。ただ、本人認証はパスコードをきちんと送れればいいので、競合他社と非常に差別化の付きにくいものでもあります。
そうすると、「100万通コミットするから」というように、ギリギリまで価格勝負になりやすい側面があります。私たちとしては、マーケティング利用など、もっと新しい業界で、お客さまと企業のエンゲージメントを高めるようなところを、どんどん開拓していきたいと考えています。
質疑応答:社内風土や人材育成方式について
坂本:「人材採用は順調とのことですが、特色のある社内風土や育成方式などはありますか?」というご質問です。
原田:中期経営計画達成の3つの柱のうちの1つは、1人当たりの売上高を上げることと、社内のAI利用を促進することになっており、社員全員が「ChatGPT」などのAIサービス有償版を使用できる環境です。
社内では、AIエバンジェリストがしっかりと研修にも対応しており、社員のAIリテラシーは非常に上がっています。新しく入ってくる社員も「有料版をこのように教えてもらえ、使えるようになるのですね」と、キャリアアップになることを大変喜んでいます。
社員のスキルアップに使った費用のうち、理由を問わず、上限までの金額を補助するスマートスタディ制度もあります。これから、何が不要になり、必要になるかは非常に早いスピードで変わっていきます。このような社員のリスキリングに対しては、会社としてもできる最大限をサポートしており、社員に大変喜んでもらっているサービスです。
坂本:採用は、新卒と中途のどちらが多いですか?
原田:新卒は若干名を入れているところで、まだ中途が多いです。
井上:利益面の説明で人件費増とあったのですが、中途採用が多いと、やはり採用の経費もかさんでくるのですか?
原田:おっしゃるとおりです。ただ、売上や業績の伸びに対しては抑えられているほうで、今までどおりです。仲介会社経由などがありますが、リファラルが多いという特徴があります。社内のリファラルはけっこう出しているので、特に新しく入ってきた人は元同僚をよく引っ張ってきます。
井上:自分の友人や同僚を紹介したくなるような会社ということですね。
坂本:それは良いことですね。
原田:私たちからすると、リファラルフィーも人材紹介会社よりもけっこう安いです。
井上:そこで費用を抑えられているのですね。今後の採用の状況、計画人数の進捗はありますか?
原田:ほとんど終了し、あと数名がソリューション営業に入ってきます。
井上:ソリューション営業だと、営業の経験がないとなかなか難しいところかと思います。どのように人材を育てているのでしょうか?
原田:AIについては、他業界から来ているなど、AIの人材が社内で育つのが特徴的だと思っています。先ほどご紹介した「Deep Predictor」は専門的な知識がなくても、データがあれば、それを見ていくことで、一定のAIモデルが作ることができます。これにプロジェクトで営業、プリセールス、AIコンサルとして1年ぐらい携わると、けっこうな人材に育っていきます。
例えば、社内でAIの新しいプロジェクトを行う時に「スキルアップもするし、普段の業務とは別で、特別なプロジェクトに参加しますか?」といった社内公募をすると、多くの応募があります。もともとはインフラに携わっていた人間にAIの知識が増えるといったこともあります。
特に若い方たちは、学ぶ意欲が旺盛です。AIのスキルを持っていることは、今後の人材価値も上がっていくため、このような流れは非常に良いと思っています。
質疑応答:2027年の売上・営業利益目標について
坂本:「中期経営計画で、2027年に売上73億円、営業利益18億円の目標を掲げていますが、今期のイメージからするとけっこうハードルが高いと感じます。これは、M&Aも含めた数字なのでしょうか?」というご質問です。
原田:M&Aも積極的に行おうと思っています。私たちは7,000社を超える顧客基盤があるため、ここに対するソリューションを持っている会社などを考えています。また、マーケティング領域に進んでいきたいと思っているため、その際に広告代理店のような会社や、シナジーの高い会社を積極的にM&Aしていくことは考えています。
ただ、M&Aも人材と同じで売り手市場のため、あまり大きく積んでしまうとぶれていきます。売上よりも利益が比較的伸びる計画にしているのは、メッセージング事業が国内に振り切っていることで、ソリューション比率をどんどん上げていくという点があります。
今は、お客さまのAIに対するリテラシーやニーズも高まっています。AIサービスはまだ赤字ではありますが、黒字転換していくために、ここでしっかり取っていき、社内のAI化、業務効率化といった3つの柱で注力していきたいと考えています。
もちろん、M&Aも少しは見込んでいますが、M&A頼みにすると、到達できない目標になってしまうため、このような既存の積み上げで出した計画になっています。
質疑応答:今後のサービス展開について
坂本:AIの活用は、今後もどんどん発展してくると思います。あらためて、御社のサービスとAIの絡みについてうかがいます。「ここにAIを組み込むと、もっと会社が伸びますよ」など、今考えているAIを含めた発展の計画について教えてください。もともとのお考えのお話でもいいですし、製品のお話などをお伝えいただければ、おそらく投資家も意欲がわくと思います。
原田:まず1つは、事例が出ている、メッセージングを使っているお客さまに対して、どのようにAIで効率を上げていくかです。ここは、非常に伸び代が高い分野です。
私たちのサービス分野であるターゲティングでは、SMSを既存会員のみなさまにどんどん送っています。これを誰から積極的に送っていくかの順番を変えたり、メッセージ内容を変えたりすることによって、お客さまからすると無駄打ちが減っていきます。
AIもどんどん事例を出して「この業界、このような属性、このようなお客さまに対しては、どのようなターゲットに絞って送ったらいいか」というサービスは、既存のお客さまの中で伸び代が高い分野になっています。
私たちの月の問い合わせから見ても、需要予測は非常にニーズが高い分野です。これだけ世の中でAIと言っていても、5,000人以下の中小企業ではまだ進んでいません。まだ、リテラシーも人も足りない状況です。
今、私たちは九州の福岡県の地方開拓をしていますが、ここも人材がまったくいません。最初からデータを集めるのに、どのようなデータがよいかといったコンサルを含め、そのあたりをパッケージ化したかたちで提供しています。ここの伸び代も非常に高いと感じています。
坂本:非常によくわかります。しかし、AI人材がいない会社だと、実際にはお任せというパターンが多いと思います。キャパについて、まだ受けられる状態なのかをおうかがいしたいです。
原田:すべてお任せになると、お互いに非常にコストが高くなってしまいます。超大手のお客さまが、日立コンサルティング、富士通、アクセンチュアといったコンサル会社にすべて投げた場合「それはできません」となってしまいます。しかし、私たちの「Deep Predictor」を使うと、もう少しコストが抑えられて、当社もそこまで稼働がかかりません。
すべてをゼロから作るよりは、ある程度できたAIモデルの上に、お客さまの業務などを入れるという方法をとることで、初期費用が数百万円、月額数十万円で抑えられ、それほど当社も稼働がかかりません。そこまで人を抱えているわけではないので、中小の人手不足と、私たちの稼働がかからないところがうまくマッチし、ニーズに応えられています。
坂本:「1から作って欲しい」というようなところでは、御社のソフトを使って作るかと思います。パターンによっては、すべて1から作るのではなく、ある程度既存のものを使っていけるのでしょうか? AI革命の1つとして、核になるソフトがある程度発展したからこそ、一気に広がっているのだと思います。
原田:おっしゃるとおりです。いろいろなAIモデルが中に溜まっている状況ですので、いろいろなパターンを入れていくことで出来上がり、最後に社内のデータサイエンティストが「このデータも入れよう」とアジャストしていくイメージです。