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清川甲介氏(以下、清川):株式会社コプロ・ホールディングス、代表取締役社長の清川です。たくさんの方にご参加いただき、誠にありがとうございます。これより2025年3月期の決算説明を始めます。

セクションとして、本日は1番から6番まで準備しています。6番は参考資料ですので、お手すきの際にご覧ください。

25年3月期 連結決算ハイライト

清川:2025年3月期の連結決算ハイライトです。スライドには、ポイントを1番から3番まで記載しています。

1つ目は、売上高および営業利益以下の各段階利益すべてにおいて、過去最高となる大幅な増収増益を達成しています。

2つ目は、中期経営計画最終年度の業績目標の達成の確実性が一部認められましたので、業績目標の達成を権利行使条件とするストック・オプションに係る株式報酬費用9,900万円を計上しています。

3つ目は、予算外の株式報酬費用や第4四半期に追加投下した採用費を吸収して、営業利益以下の各段階利益は予想を超過達成しました。

6つの指標は非常に重要ですので、読み合わせをします。グループ技術者数は4,861人、前期比プラス23.7パーセント、連結売上高は300億1,500万円、前期比プラス24.6パーセント、営業利益は27億6,300万円、前期比プラス29.1パーセント、Non-GAAP営業利益は33億2,800万円、前期比プラス36.5パーセント、経常利益は27億8,400万円、前期比プラス25.9パーセント、当期純利益は18億2,000万円、前期比プラス24.4パーセントと、すべての領域において過去最高を更新しています。

25年3月期 連結決算業績

清川:連結業績のP/Lは割愛します。

四半期 連結決算業績

清川:四半期の連結業績です。スライドには2023年3月期から記載していますが、右肩上がりで順調に技術者数と売上を伸ばしてきています。

25年3月期 子会社別業績

清川:2025年3月期の子会社別業績です。建設領域を行っているコプロコンストラクション、IT・機電・半導体領域を担っているコプロテクノロジーの2社の売上総利益、販管費、連結営業利益ですが、建設領域のコプロコンストラクションが大きく伸長しています。

一方、コプロテクノロジーは半導体技術者派遣の売上が寄与していますが、まだ課題がたくさんあります。建設領域で培ってきた我々の強み、経験をしっかりコプロテクノロジーにも横展開して、さらなる売上の飛躍につなげていきたいと考えています。

事業別KPIの推移

清川:事業別KPIの分析についてご説明します。まず、事業別KPIの推移です。

スライドには年間の採用数、退職数、期末ベースの在籍技術者数、定着率、稼働率、売上単価について記載しています。特に採用プロセスの見直し、歩留まりの改善を徹底的に行い、採用数が大きく伸びています。

退職の部分のポイントを挙げると、入社して1年、2年の方々を3年以降、5年以降にどのようにキャリアアップさせていくのかが今後の大きな課題だと考えています。定着率も73.7パーセントと、改善する余地があると認識しています。

稼働率は90パーセント以上ですが、技術社員(エンジニア)をすぐに教育・研修して送り出すためには、ある程度の余力をとっておかなければいけないという戦略で進めています。

(参考)建設技術者派遣事業

清川:建設技術者派遣事業については、先ほどグループ全体のご説明をしたため割愛します。スライドのポイント1にも記載しているとおり、外部の人材紹介会社に依存しない自社選考「ローコスト採用」がコプロの大きな強みになっています。この採用プロセス管理に磨きをかけたことにより、採用数は年間2,400名弱、前期比プラス17.5パーセントという結果につながっています。

この採用プロセスや面接官の面接力、採用力の強化にしっかりと磨きをかけ、アップデートしていきながら、さらに採用数を確保していきたいと考えています。

(参考)機電・半導体技術者派遣・請負事業

清川:コプロテクノロジー領域の機電・半導体技術者派遣・請負事業です。ポイント1として、2024年2月に新横浜に開設した半導体技術者研修センター「セミコンテクノラボ」で研修を修了した卒業生が、開設から11ヶ月で累計100人を突破しています。

このような方々に、半導体領域のお客さまであるキオクシアやイビデンなどの企業でご活躍いただいています。半導体技術者研修センターを高稼働でフル回転させていきながら、さらなるエンジニアの輩出につなげていきたいと考えています。

(参考)IT技術者派遣事業

清川:IT技術者派遣事業です。ITエンジニア向け紹介サイト「べスキャリIT」が軌道に乗ったことにより、応募者数は前期比プラス45.6パーセントを実現しています。

一方、営業力不足によって案件確保が追いつかず、技術者数は前年同期比プラス28.3パーセントにとどまっています。求職者、人材の集客が良いかたちでできている以上、今後は商流の浅い企業に対する案件確保が大きなポイントになると認識しています。

業界ナンバーワンの「プロ品質」を確立

清川:セクション3では事業の状況について、建設技術者派遣に特化してご説明します。

スライドにあるとおり、業界ナンバーワンの「プロ品質」を確立しています。営業力、採用力、エンジニアの教育研修力の3つのトライアングルで、真ん中にある「定着」をさらに改善していかなければいけないと考えています。

営業力については、新規開拓営業ではなく、既存の取引先に対する深耕営業を徹底的に進めていき、大手顧客企業を中心にシェアを拡大していきます。

また、定着に直結する部分では、同一現場へのチーム派遣、セット派遣をより推進していきたいと考えています。

採用力については、先ほどご説明したとおり、我々は外部の人材紹介会社に頼っていません。自社の「ローコスト採用」を徹底的に行っていくことでコストを抑えながら、コプロのチームに入ってもらえる将来有望なエンジニアの方々を自分たちの合格目線で採用していくことが大きな強みだと認識しています。

また、教育研修力に関しては、在籍1年目、2年目の若手技術者の定着率改善を今後の大きな課題として捉えています。若手技術者を3年目以降も継続させ、いかにキャリアアップさせていくかということが非常に重要で、大きく改善できればさらなる売上の拡大、在籍技術者の拡大につながっていくと考えています。

営業の戦略:深耕営業の強化

清川:営業戦略として、深耕営業を強化しています。

新たな企業を開拓するよりも、すでに取引している企業に対して複数の技術者を配属したいと考えています。コプロのベテラン社員が活躍している現場に、優先的に若手技術者を配属し、ベテラン社員に若手技術者の面倒を見てもらうことで定着率改善に努めます。

ポイント1は、ターゲット企業の配属比率をさらに高めていくことです。ターゲット企業の配属比率は90パーセント弱となっており、「この企業と取引していく」とターゲットを定めたスーパーゼネコン5社を筆頭に大手、準大手の企業に徹底的に深耕営業していきます。

ポイント2は、チーム派遣、セット派遣の推進です。今、チーム数は752チーム、チーム比率は50パーセント未満にとどまっています。

しかしながら、我々は中期経営計画が始まった3年前から営業改革を徹底的に推進してきました。

その頃と比べると17.8ポイント上昇しています。さらにチーム比率を高めていくことが、営業戦略として非常に重要だと考えています。

採用の戦略:当社の強み『ローコスト採用』の強化

清川:我々の大きな強みである「ローコスト採用」についてです。ポイント1、ポイント2に加えてご説明したいのが、2025年3月期第4四半期の採用数は525名、採用単価は68万4,000円までコストが上昇している点です。

ポイント1にあるとおり、2026年3月期第1四半期の採用数を高い確度で増加させることを目指し、先行的に採用費を投下しました。

68万4,000円と大きくコストが増えていますが、進行期でしっかりと採用につなげていき、コストを安定させていきます。

ポイント2は、採用数、未経験者採用の比率です。未経験者採用比率は77.5パーセントとなっています。今は特に経験者が採用しづらい時代に入っているため、未経験から建設領域で活躍できるエンジニアにしていくことが我々の存在意義だと考えています。

未経験の若手技術者にご入社いただき、我々が研修教育を行い企業に送り出していきます。さらに、6ヶ月研修、在籍1年研修などを、我々の「エンジニア応援プラットフォーム」としてしっかりと可視化して前に進めていきたいと考えています。

教育研修の戦略:在籍1〜2年目の定着率改善

清川:教育研修の戦略です。在籍1年目、2年目の定着率の改善が、1丁目1番地の課題だと認識しています。

ポイント1の図では、赤い折れ線グラフの在籍1年目、2年目の定着率が一番低く出ています。ネイビーは全体の定着率、グレーは3年目以降のエンジニアの定着率を示していますが、在籍1年目、2年目と3年目以上の定着率の差は5パーセント以上ありますので、在籍1年目、2年目の定着率を高めて3年目以降まで伸ばしていくための戦略として教育、研修が非常に重要になってきます。

ポイント2として、「エンジニア応援プラットフォーム」の構築を推進しています。1つ目は研修センター開設です。2025年4月、東京・品川エリアに研修センターを新規開設しています。今までは座学のみでしたが、この研修センターでは実物を用いた実技研修を行っています。例えば測量機を入れて、その場で見て触って測量を実技ベースで行っていくような取り組みによって、現場に配属された時の違和感や研修とのギャップを減らします。

2つ目は、研修プログラム・資格学習支援を強化しています。今までは入社後に研修を行い、送り出していくだけでしたが、これからはエンジニアの成長に合わせて6ヶ月研修、1年研修、2年研修などの教育を能動的に行い、学びながら定着していくことが非常に重要ですので、教育研修を我々の大きな強みにしていきたいと考えています。

26年3月期 通期業績予想サマリ

清川:セクション4は、2026年3月期の業績、配当予想のご報告です。2026年3月期通期の業績予想サマリをご説明します。

ポイントは2つあります。ポイント1は、コア事業の建設技術者派遣を中心に、採用費等の成長投資は継続して強化していき、業界平均を上回る成長率を目指します。売上高、各段階利益は過去最高の更新を予想しています。

ポイント2として、営業利益率は売上原価率の改善に加え、販管費率は株式報酬費用の計上を吸収して改善を見込み、前期比プラス0.8ポイント改善の10パーセントを予想しています。我々は今、社内の生産性も非常に重要なポイントとしています。何人体制でどれだけの売上をこなしていくのかという指標ですが、生産性をしっかり高めていくことによって利益率がさらに高まっていくと考えています。

重要な6つの部門についてご説明します。グループ技術者数は6,271人、前期比プラス29.0パーセント、連結売上高は380億円、前期比プラス26.6パーセント、営業利益は38億円、前期比プラス37.5パーセント、売上比率10パーセント、Non-GAAP営業利益は44億2,500万円、前期比プラス32.9パーセント、経常利益は38億円、前期比プラス36.5パーセント、当期純利益は24億7,000万円、前期比プラス35.7パーセントとなっており、すべての領域において過去最高を更新する予想です。

26年3月期 通期業績予想

清川:通期のP/Lについては割愛します。

26年3月期 事業別KPI(予想)

清川:今年度の事業別KPIについては、採用数、退職数、在籍技術者数、定着率、稼働率の計画を立てていますので、お時間がある時にご覧ください。

26年3月期 配当予想

清川:2026年3月期の配当予想についてご説明します。配当方針は非常に重要ですので、再度読み合わせをします。

当社は、経営上の重要課題の1つと位置づける株主還元においては配当を基本とし、中期経営計画「コプロ・グループ Build the Future 2027」の対象期間は減配を行いません。連結配当性向50パーセント以上を目途としながら、積極的な投資により達成される利益成長に応じて、安定的な配当を行うことを基本方針とします。

この基本配当方針のもと、2026年3月期は中間配当30円、期末配当50円、通期合計配当80円と、2025年3月期の60円から年間20円の増配を予想しています。

スライド右側は、年度ごとの配当金の推移、配当性向の推移のグラフですので、ご参考までにご確認いただければと思います。

中期経営計画(前半3カ年)の成果

清川:セクション5では、中期経営計画の上方修正についてご説明します。今は中期経営計画の4年目ですが、過去3年を振り返ります。

ポイントは、グループ採用数が870人から3.1倍の2,711人まで拡大していることです。何度もお伝えしているとおり、採用プロセスをゼロベースに戻してから再度作り上げ、歩留まりをしっかり設定して、どこにエラーが出ているのかを瞬時にしっかりモニタリングしていくという繰り返しが功を奏して、この採用数につながっています。

スライドのグラフで中期経営計画が始まった年度から直近までを見ると、在籍者数は2.2倍に増加しています。

中期経営計画(前半3カ年)の成果

清川:中期経営計画の前半3ヶ年の成果です。スライドには同業他社を記載していますが、ご覧のとおり、メイン事業である建設技術者派遣は業界平均を大きく上回る成長を実現しています。

左側のグラフですが、2022年3月期を100とした場合、約3年後の2025年3月期は218.1パーセントの成長を実現しています。

上場されている同業他社の伸びも記載していますので、ご参考までにご確認いただければと思います。

右側のグラフには上場企業4社の売上を記載しています。今までは業界3番手でしたが、直近の決算で業界第2位に上がっています。業界第1位の会社を目指して、オーガニックな成長をしっかりと実現していきたいと思います。

中期経営計画(前半3カ年)の業績進捗

清川:中期経営計画前半3ヶ年の業績進捗です。2023年3月期、2024年3月期、2025年3月期のいずれも、当初立てた中期経営計画目標から単年ベースですべてにおいてクリアしています。

最終年度(27/3期) 財務業績目標の上方修正

清川:中期経営計画後半2ヶ年、将来に向けてのお話です。2026年3月期と中期経営計画最終年度である2027年3月期の、財務業績目標の上方修正を行っています。本日付で適時開示しています。

今後も、ポイント2で掲げているEPS(1株当たり当期純利益)をしっかりと意識して経営を進めていかなければいけないと考えており、EPSは185円を目標に設定しています。持続的なEPSの積み上げに対する資本市場からの期待値向上を目指していきたいと考えています。

2026年3月期のサマリーは、先ほどご説明したため割愛します。

中期経営計画の最終年度である2027年3月期の財務業績目標を上方修正したことについて、細かくご説明します。当初、中期経営計画最終年度の目標として連結売上高400億円を設定していましたが、470億円に上方修正しています。

当初の目標値からは70億円の上積み、2022年3月期の比率から見ると売上3倍に到達するという指標です。

Non-GAAP営業利益は、中期経営計画目標の50億円からプラス12億円の62億円に上方修正しました。2022年3月期比で3.4倍です。EPSは、2027年3月期に185円を目指して会社経営を進めていきたいと考えています。

グループ技術者数に関しては、当初目標の6,271名に対し、今回8,000名に上方修正しました。

中期経営計画は3年前に経営陣でじっくり吟味し議論して作りましたが、今回最終年度の上方修正につながった大きな要因について、個人的な所感をお伝えします。

3年前に策定した中期経営計画では、2027年3月期で売上高400億円、Non-GAAP営業利益50億円、グループ技術者数6,200名という目標を立てました。個人的には非常にチャレンジングなハードルの高い数字だと認識して、中期経営計画が始まりました。

初年度から今までの営業スタイルを脱却して営業改革を進めつつ、採用プロセスおよび歩留まりの改善を徹底的に行ってきたことにより、大きな飛躍につなげられた3年間だと考えています。

また、非常に重要なこととして、経営陣あるいは社員一人ひとりが我々の理念に共感し、この戦略を地道に実行したおかげで、今回の中期経営計画における2027年3月期の大きな上方修正につながったと考えています。これに満足することなく、さらなる売上および利益の拡大につなげていきたいと考えています。

(ご参考)業績推移・目標サマリ

清川:目標サマリを参考として掲載していますので、ご確認ください。

(ご参考)株価推移

清川:こちらも株価推移を参考として掲載しています。2022年4月1日の終値は519円でしたが、昨日時点の終値は1,753円となり、この3年間で株価が約3.4倍上昇しました。

個人的な所感になりますが、さらに業績を向上させてみなさまの期待値に応えていくことを考えると、まだまだだと認識しています。ふんどしをしっかり締め直して、会社の企業価値向上に努めていきたいと考えています。

少しかいつまんだご説明になりましたが、2025年3月期通期の決算説明を終了します。

質疑応答:M&Aについて

荒井沙織氏(以下、荒井):「キャッシュが積み上がってきていますが、M&Aに対する方針をお聞かせください。M&Aがあるとしたら、時期などもお話しできる範囲でお願いいたします」というご質問です。

清川:キャッシュが積み上がってきていることにより、いかに次の投資に対してお金を使っていくのかという点は、経営判断としては非常に重要な部分だと認識しています。

我々は製造業のような業界と異なり、商品を持っているわけではありません。人にどのように投資していくのかが非常に重要になってきます。その一環でM&Aという手法があると認識しています。

M&Aに関しては、大中小のいろいろな規模感があります。常にいろいろなことを検討していきながら、「この会社に必要な会社なのか」「シナジーは生み出せるのか」「金額が高くないか、低くないか」といったことを見ていき、経営陣でしっかり話を進めている最中です。

M&A実施の有無や時期の話はこの場では控えますが、コプロ・グループの企業価値を高められる会社があれば、キャッシュもたまってきていますので、積極的にM&Aを進めていきたいと考えています。

質疑応答:ネットキャッシュの使い方について

荒井:「ネットキャッシュが膨らんでいます。例えば『QUOカード』の配布など、優待を付けて実質利回りを向上させる手はあり得るかと思いますが、いかがでしょうか? 有効な使い道の方向性について、今後の予定施策を具体的に教えてください」というご質問です。

清川:配当方針に記載しているとおり、株主還元は配当として還元していく基本方針を持っています。

ただし、ネットキャッシュが積み上がってきていることに対し、ご支援・応援していただいている株主のみなさまにいかに還元していけるのか、それを次の成長の果実にしていけるのかということは、しっかり考えていかなければいけない部分です。

株主のみなさまにコプロ・グループを応援していただいていることへの還元も含めて、「QUOカード」なども今後しっかり検討していきたいと考えています。

荒井:「例えば500株以上の保有で『QUOカード』2万円を配るといった優待があれば、間違いなく株価は上昇していきます」というご意見もありました。

清川:ありがとうございます。

質疑応答:増配について

荒井:「予想に対し業績が上振れた場合、配当方針に則り、上振れした利益について配当性向50パーセントを目途に増配を行いますか?」というご質問です。

清川:もちろん積極的に投資を行いながら業績拡大、利益拡大を行っていった時には増配を実施します。進行期の2026年3月期も、昨年から見ると20円の増配を本日発表しました。

株主および投資家のみなさまにとって、もちろん企業価値を向上させて、時価総額を上げていくところもそうだと思いますが、配当といった還元も非常に魅力的で大事な部分だと考えています。したがって、利益状況に応じて積極的に増配を目指していきたいと考えています。

質疑応答:建設技術者派遣事業のさらなる増収率拡大について

荒井:「発表資料の中で、『メイン事業の建設技術者派遣事業は競合他社を上回るペースで成長を実現している』というお話がありました。事業モデル上、例えば50パーセントや80パーセントなど、増収率をさらに拡大させることは難しいでしょうか?」というご質問です。

清川:結論からお伝えすると、難しい業界だと認識しています。先ほどお話ししたとおり、我々の業界は製造業のようにプロダクトを持っているわけではありません。

商品開発を行い、世の中に売り出していくことができる業界であれば、ヒット商品が生まれることで、今よりも大きな増収につなげることは可能だと思いますが、我々のビジネス領域は人材に特化しています。

丁寧に人に寄り添い、エンジニアのキャリアアップを応援していくといった愚直な姿勢が非常に重要です。マジックがかかったように増収率が一気に上がることを目指すよりも、足元をしっかり見ていきながら毎年安定的に増収させていくビジネスモデルだと認識しています。

質疑応答:株式流動性について

荒井:「株式の出来高が少ないようですが、流動性に関してどのように考えていますか?」というご質問です。

清川:ご指摘のとおり、個人的にも流動性が低い銘柄だと認識しています。今、創業者である私あるいは私の資産管理会社で、約58パーセントといった過半数以上の株式を保有しています。

このような会社がプライム上場企業として適任なのかという議論については、個人的にも認識しています。流動性を高めることで、多様な方々による株式の売買が活性化されて、出来高につながっていくことも認識しています。

したがって、しかるべきタイミングが来た時には、流動性を高めて株価上昇につなげていくという目的のために、個人的な部分の売り出しも行う必要があると考えています。

質疑応答:IT化・AI化による人材派遣事業への影響について

荒井:「IT化やAI化がもたらす御社の人材派遣事業への影響について、どのように考えていますか?」というご質問です。

清川:世の中では、ITやAI、あるいはIoT、デジタル化、DX化などについて、いろいろ言われています。人がどんどん少なくなってきているこの国の中で、いかに生産性を担保していくのか、さらに上げていくのかを考えると、もちろん非常に重要な技術力だと考えています。

一方で、我々が抱えている建設、製造業の機電、半導体の領域は、ロボットやAIが全部を担えるのかというと、そうではないと考えています。

生産性を高めるためには非常に重要な技術力だと考えていますが、我々がこれから支援していかなければいけない人、エンジニアにはそこまで影響は出ないと、楽観的かもわかりませんが考えています。

質疑応答:景気悪化局面に入った場合の影響について

荒井:「関税や円安の進行など、経済環境に大きな変化が起こりつつあります。もし景気悪化局面に入った場合、御社の事業にはどのような影響が出ると考えていますか?」というご質問です。

清川:我々が創業したのが2006年で、創業して間もなく、世界的な不況と言われているリーマン・ショックが起きました。その後は、直近では新型コロナウイルス・ショックを経験しています。

不況局面に一気に入っていくと、仕事が少なくなり人手が余るなど、需給バランスが崩れますので、我々のような人材派遣会社は解約されていくことを想定しています。

ただし、リーマン・ショックの時もコロナ禍の時もそうでしたが、重要なことは、この業界の中でお客さまから選ばれる会社のベストスリーに入っておくことです。これは、創業した2006年から考えていました。

ベストスリーに入り、「コプロはアフターフォローもきちんとしているし、エンジニアの研修もバックアップしているし、非常にサービスがいいよね」といった評価をいただくことで、派遣社員を切られにくくするといった企業努力が非常に重要になってくると思っています。

荒井:切られにくく、回復も早いということでしょうか?

清川:そのとおりです。例えば人材調整で10パーセントや20パーセントが解約になっていても、ベストスリーに入っていることにより、景気が右肩上がりになっていけば、まず真っ先に指名していただくことができ、需要が入ってきます。

質疑応答:コプロコンストラクションにおける営業戦略部移転の効果について

荒井:「事業子会社のコプロコンストラクションの営業戦略部を4月に東京に移したとのことですが、数値的な効果は出ていますか?」というご質問です。

清川:今はまだ5月を経過しているところで、数字的な経過がどうなのか、過去のデータからどうなのかはまだ検証できていません。今後しっかり検証していかなければいけない部分です。

日本国内では関東・東京というエリアが建設投資額が一番高く、再開発や官公庁の仕事、高速道路の改修工事などのプロジェクトが盛りだくさんであるエリアになります。

そのような意味で、コプロコンストラクションの社長を務めている越川を筆頭に、この4月から営業戦略部を東京に腰を据えて置かせることによって、東京の非常に大きなマーケットでまずはエリアナンバーワンを取っていきます。それが業界ナンバーワンに一番早く近づける道ではないかと考えています。

したがって、まずは東京という牙城で圧倒的なナンバーワンを目指し、我々の今の強みを大きく広げて取り組んでいきたいと考えています。

質疑応答:首都圏における取り組みの進捗について

荒井:「首都圏での基盤を拡大していく中で、首都圏におけるビジネスの取り組みについて具体的な進捗がありましたら教えてください」というご質問です。

清川:繰り返しになりますが、約3年前に始まった中期経営計画から戦略は変えておらず、営業改革、採用プロセスの再構築、歩留まりの改善を徹底してきたことにより、売上を上げていくための1つのストーリー、筋書きができたという手応えを感じています。

今まで取り組んできたことをあまり背伸びすることなく、品質を下げずに、東京で社長の旗振りの下でしっかり取り組んでいくことで、次第にマーケットは取っていけると考えています。

質疑応答:修正前の中期経営計画目標の達成見込み時期について

荒井:「中期経営計画の上方修正がありましたが、修正前の数字はどのあたりで達成見込みでしょうか? 今期中は現実的でしょうか?」というご質問です。

清川:中期経営計画最終年度のもともとの数字である売上高400億円、Non-GAAP営業利益50億円をなんとか1年前倒しできないかと、私を筆頭に経営陣で時間をかけて議論し、予算を作り上げました。ただし、今期にみなさまにお約束する数字としては、売上高380億円を設定して進めていくことになります。

投資家のみなさまからご指摘があったとおり、「今期に売上高400億円の達成は不可能ですか?」といったところについては、なんとも言えません。達成できる可能性はまだ残っていると考えており、我々は約束した数字についてはみなさまに必ず良い報告をしてきていますので、380億円を目指して取り組んでいきます。その先にどのような数字がついてくるのかも見ていきたいと考えています。

質疑応答:時価総額1,000億円の達成時期と必要な施策について

荒井:「株価1万円は現実的に目指せますか? 当面のターゲットである時価総額1,000億円は株価で言うと5,000円ですが、仮定の話で結構ですので、何年後に達成できるのか、もしくはどのような具体的なアクションが必要だと考えているかを教えてください」というご質問です。

清川:当面のターゲットが株価5,000円というのはまさしくおっしゃるとおりです。時価総額1,000億円について、しっかり頭の中に入れて、意識しながら経営を進めています。

「いつ頃に達成できますか?」「株価5,000円は達成できますか?」というご質問についてはこの場ではお約束できるものではありませんが、私の経営の期間の中で、必ず時価総額1,000億円を達成したいと強く思っています。

本日時点の終値が2,020円でしたので、5,000円までは2.5倍となりますが、十分可能な数字だと考えています。

アクションとしては、冒頭でお伝えしたM&Aだけではなく、足元を見ながらオーガニックな成長をしっかり実現させていくことが非常に重要になってきます。

M&Aで会社を買えたから売上が倍になったというのは、いつか崩壊すると私は思っています。したがって、足元をしっかり見ながら、自社でのオーガニックな成長で足場を固め、次の一手としてM&Aなどを検討し、グループの時価総額を上げていくことを考えていきます。

荒井:「株価1万円は現実的に目指せますか?」という声もありますが、分割方針について現時点ではどのように考えていますか?

清川:分割方針は、会社で明確にあるものではありません。個人的な考え方になってしまいますが、日本国民に投資家の層をさらに増やしていく必要があると思っています。その一環として新NISAも始まりましたが、個人投資家がさらに活性的に売買していこうと思うと、株式の最小ロットの購入額を下げていかなければいけないと考えています。

東京証券取引所では、100株を10万円以内で購入できるようにしていこうといった指標も出ており、その考え方は私も共感できる部分があります。

今までに株式分割を2回実施しました。今の株価水準では2,000円、2,500円が安定的になった時に、どこかで2対1で分割を行い、1,200円、1,250円、1,000円にいかに近づけていくのか、さらに個人投資家を呼び込んで売買を活性化させていくのかといったことは、個人的には重要なことかと考えています。

ただし、分割について大きな方針があるということではありません。

質疑応答:活況が収まった時の対応策について

荒井:「現在ゼネコン各社の業績も好調のようで、御社にも追い風が吹いていると思います。今後この活況が収まった時には、どのように成長を維持していきますか? 今の取り組みを変えるようなことはありますか?」というご質問です。

清川:もちろんサービスの品質をしっかり高めていくことや、新しいサービスを生み出していくこと、お客さまにどのようなアクションを起こしていくのかということは非常に考えていかなければいけません。現状に満足していてはいけないと考えています。

ご質問にあったとおり、不景気になるというよりは、日本の建設投資額は向こう10年、20年、さらに言えば50年は緩やかに右肩上がりになっていくと私は考えています。

一方で、日本は少子高齢化と言われています。働き手がどんどん減り、反比例になっている状態です。我々のような人材サービス業は、今後も引き続き社会から必要とされる会社になると考えています。

「業界が成熟した時、成長が止まるのではないか?」というよりは、仕事量が右肩上がりになっていきながら、圧倒的に下落していく人材需要を我々は1つの大きなビジネスチャンスとしてさらなるサービス提供につなげ、持続的な成長を図っていきたいと考えています。

質疑応答:米国への人材派遣について

荒井:「取引企業が米国などに工場等を移転した場合は、御社も米国へ人材を派遣するのでしょうか?」というご質問です。

清川:結論からお伝えすると、米国への人材派遣は考えていません。生産拠点が米国に移るというのは、今回のトランプ大統領の関税政策などによるいろいろな戦略であると思います。

一方で、日本国内で製造していかなければいけない分野や商品もありますので、そこに対してサービスを提供していき、内需サービスを徹底的に追求していくことが非常に重要だと考えています。

質疑応答:外国人の採用について

荒井:「現在、国内事業において外国人の採用は多いのでしょうか?」というご質問です。

清川:結論からお伝えすると、外国人の採用と活躍は非常に多くなってきていると認識しています。10年前の建設業界における人材派遣の様相から考えると、考えられないくらい外国人に対する需要が増えてきています。

我々もチャンスだと捉えていますので、外国人を採用してお客さまに送り出し、彼ら・彼女たちがしっかりキャリアアップしていけるような支援に努めていきたいと考えています。

質疑応答:現社長と後継者について

荒井:「株主から人気の高い清川社長ですが、万が一、社長が倒れてしまうことが最大のリスクと考える株主が多いのではないでしょうか? このリスクの対応への考えがありましたらお聞かせください」というご質問です。

清川:人気があるかどうかはわかりませんが、あるとうれしいです。ただし、会社を持続的に成長させていくところで、創業者の私が怪我や病気になることもあり得ないことではありませんので、重要なことは今の段階から誰に引き継いでいくのかだと思います。

私がいなくても、仕組みとしてしっかり回っていく組織にしていくことが非常に重要です。ありとあらゆる部分をしっかり仕組み化していきながら、あとは私に代わる社長が教育の中で上がってくれば、バトンタッチもできると思っています。

もちろん私は現在とても元気ですので、さらに取り組んでいこうと思っていますが、何かあった時のための人材育成、社内の仕組み作りに注力していきたいと考えています。

質疑応答:10年後の会社のありたい姿について

荒井:「清川社長が描く、10年後の会社のありたい姿を教えてください。その実現のために何が必要ですか?」というご質問です。

先ほど現中期経営計画設定時のお話もありましたが、ここからどのようなチャレンジングな姿を見ているのかを教えてください。

清川:私の夢と非常に重ね合わせられるようなお話だと思いますが、10年後、20年後、コプロ・グループの日本の中での立ち位置として、業界で圧倒的ナンバーワンを目指していきたいと考えています。

なぜ圧倒的ナンバーワンが必要なのかといいますと、我々がリーディングカンパニーになってお客さまに対する値交渉やチャージアップをリードしていきたいからです。あるいは、10年後には「コプロに入社すると、どの会社よりも1割も2割も給料が高いよね」といった口コミで自然と人やエンジニアが集まってくるような会社になっていきたいからです。

そのための取り組みとして、今の時点では戦略や仕組み、数字の話というよりは、社員一人ひとりがエンジニア一人ひとりにしっかり寄り添い、お客さまの価値を最大化することができるようになることが必要です。

このようなビジネスを行う以前の思考、考え方、思いを全社員としっかり共有していきます。エンジニアのために、お客さまのために、このような考え方で仕事をしていくことによって、10年後、私が目指したい姿になっていくと考えています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:リニア新幹線、国土強靭化など、今後ますます現場監督者の人手不足は深刻になっていくと見込まれますが、こうしたビックチャンスに対応できるだけの人財が確保できる体制は整っていますか?

回答:当社は顧客企業の人手不足に対応するため、人財確保の体制を一段と強化しています。従来の求人広告媒体に加えて、自社求人サイト「ベスキャリ建設」やリファラル採用を中心に、多面的な採用活動を展開中です。結果、25年3月期は前期比17.5パーセント増の2,379人を採用、26年3月期は前期比26.1パーセント増の3,000人予想と、さらなる拡大を見込んでいます。

<質問2>

質問:競争優位性の向上策を教えてください。

回答:コモディティ化が進む人材派遣業界においては、「いかに優秀な人財を安定的に確保できるか」が競争力の源泉になると考えています。

当社は、広告運用から面談、クロージングまで一気通貫で行う自社採用体制を構築しており、業界でもトップクラスの採用数を実現しています。しかし、当社が実現すべき本質的価値は、エンジニア一人ひとりが将来にわたって長く安心して働ける環境を提供し、業界に定着してもらうことにあります。

そのため、採用強化だけでなく、定着率の向上が見込まれる大手ゼネコン・サブコンへの深耕営業や、同一現場へのチーム派遣の推進等、営業面の取り組みのほか、研修センターの新設等、教育研修面の取組みを推進しています。

<質問3>

質問:建設技術者派遣について、決算説明資料17ページに記載の定着率(90パーセント台)と21ページに記載の定着率(25年3月期実績:73.2パーセント)の違いはなにかを教えてください。

回答:17ページには四半期(3ヶ月間)ごとの定着率の推移をグラフ化しています。

また、21ページには通期(12ヶ月間)および上半期・下半期の6ヶ月間の定着率を記載しています。

<質問4>

質問:中計最終年度の業績目標を上方修正されましたが、27年3月期の利益成長のドライバーはなんでしょうか。

回答:増収効果に加え、管理部門の業務効率化や仕組みの見直しにより、販管費の適正化、収益性の向上を図ります。

<質問5>

質問:大手企業を中心に賃上げが相次いでいますが、社員の給与に対する方針をおうかがいしたいです。

回答:当社は、物価上昇や労働市場の変化を踏まえ、優秀な人財の確保と定着のためにも、派遣するエンジニアはもちろんのこと、派遣元の管理社員に対しても給与や賞与の引き上げに積極的に取り組んでいます。今後も生産性向上に従い、従業員への還元を強化していく方針です。

<質問6>

質問:入社1、2年目の技術者の定着率が低いのはなにが原因でしょうか。

回答:主な原因の1つとして、現場配属後のいわゆるリアリティショックが挙げられます。この問題を解決するため、当社は、2025年4月に対面型の研修センターを東京の品川に新設しました。実物を用い、より現場に近い環境で研修を行うことで、スキルや知識の習得効果はもちろんのこと、配属後のギャップを減らす効果も得られるものと考えています。

<質問7>

質問:中途未経験者の採用は何歳がターゲットでしょうか。

回答:中途の未経験者採用は、20代の方が中心となっています。特に新卒で入社した企業からのキャリアチェンジを検討される方や、第二新卒層の方からの応募が多く、業界未経験でも意欲やポテンシャルを重視した採用を行っています。

<質問8>

質問:施工管理者は重たい建設資材の運搬など、重労働であることが退職の原因と考えられますか?

回答:重い建設資材を運ぶなどといった、いわゆる特定除外業務は労働者派遣法で認められていません。

<質問9>

質問:トランプ政策による事業環境への影響はありますか?

回答:国内景気への影響、ひいては国内建設投資への影響については注視する必要はありますが、現時点において当社事業に対する直接的な影響は想定していません。

<質問10>

質問:中間と期末での配当金額が半々でない理由を教えてください。

回答:当社事業はストック型ビジネスであるため、上期よりも下期の方が売上高・利益ともに高くなる特徴があります。そのため、配当金については配当方針に則りながら、利益のバランスと投資計画等を勘案して決定しています。

<質問11>

質問:業績達成に向けては技術者数が肝になると思いますが、過去2年、約900名ずつの増加に対して、26年3月期は約1,400名増の計画と野心的です。達成は可能でしょうか?

回答:25年3月期の在籍技術者数については計画未達となっており、この点は真摯に受け止めています。しかし、25年3月期におけるグループ採用数は2,711人と前期比22.0パーセント増の大幅増を実現しており、着実に採用力は高まっています。

また、26年3月期は前期比30.7パーセント増の3,544人を見込んでいます。採用数のさらなる拡大に向けて、自社求人サイト「ベスキャリ」やリファラル採用の活用をさらに推進するとともに、求人広告媒体ごとの効果を見直し、応募から入社までの歩留まり改善に注力します。

また、定着率の向上も在籍者数の確保において重要な要素と考えており、特に入社1、2年目の技術者に対しては、定期的なフォローや現場でのサポート体制の見直しを進めています。

<質問12>

質問:事業が好調ですが、社員のエンゲージメントを高めるために実施している施策を教えてください。

回答:エンゲージメント向上を目的に、マネジメント層をはじめとした階層別研修を継続的に実施しています。また、新卒社員には定期研修や面談を通じた成長支援のほか、技術社員に対しても3年間の技術基礎研修を前期から実施するなど入社後のサポート体制を強化しています。