投資方針および目標4 現物フルポジを継続、レバレッジは資産比1倍を超えない
かぶ1000氏:みなさんはたぶんまだ信用取引などはできないと思います。ここの部分は、ちょっと先の話になってくるので、予習というかたちで聞いていただけるとありがたいです。私の場合、お金で資産を持たないというのをモットーにしています。
なぜかというと、現金はインフレに弱いアセットだからです。そういった意味で現物資産を活用しています。現物資産と言われてもピンとこない人もいるかもしれませんが、金(ゴールド)やプラチナなどの貴金属を現物資産の代表の例として挙げると、証券口座にある資金の範囲内で、フルインベストメント、要するに現物フルポジで持っています。
一歩先に行くと、金(ゴールド)などの現物資産の持分までもフルに活用するという意味で、例えば証券口座の中に1億円分お金があって、金やプラチナを1,000万円分持っている場合、その1,000万円分に限って信用取引を活用するというものもあります。
みなさん、金(ゴールド)やプラチナが今すごく上がっているというニュースを知っていますか? 金はすごく優秀な現物資産なのですが、1つだけ弱点があって、利息がつかないんです。例えば、銀行預金銀行に預金したり、国債を買ったりすると必ず利息がつきますよね。株もそうで、配当というかたちでもらえます。
金(ゴールド)やプラチナには、そういうものが一切ないんですよ。そこが最大の弱点なので、その弱点を克服するという意味でも、リスクを抑えながらも利息がつかない資産を有効的に活用することによって、パフォーマンスを上げていくというのが私の手法です。
レバレッジで買った分に関しては、時期を見て売却してもいいですし、その現物資産を売ってそのお金で現引きしてもいいし、あるいは株の配当で現引きしてもいいです。そういうかたちで手仕舞うことができるので、リスクを制限しながら、なるべく投資機会増やしていくというのを私はすごく大事だなと思っています。それによって選択肢も増えるし、機動力も高めることができるんじゃないかなと思っています。
投資方針および目標5 投資で得られた利益の50パーセントを目処にお金を使う
ここも私の特徴的なところだと思っていて、「投資で得られた利益の50パーセントを目処にお金を使っていく」に関してはいろいろとご意見もあると思います。これは私独自の意見なのですが、私はお金のスペシャリストになることを目指しているんですね。このスペシャリストが何かというと、例えば株式投資で運用して、どんどんどんどん儲けて、どんどんどんどん際限なく利益を積み上げていっても、私はあまり意味がないんじゃないかなと思っているんです。
投資家にとっては金を儲けるのもすごく大事なことだと思いますが、お金をどううまく使っていくかもすごく大事なことだと思うんですよね。投資家はお金に関して一番知識がなければいけないし、一番上手くなきゃいけないと私は自負しているので、やはり儲けることじゃなくて、どううまく使うかはすごく大事だなと思っています。
最初は資産も少ないと思うので、資産を築くことがすごく大事だと思いますが、一定程度の資産が築けたなら、次はその投資で得られた利益のうちの50パーセントぐらいは、投資以外のことに積極的に使っていくというのを私は目標にしてます。
企業で言うと配当ですよね。配当性向ってみなさんも聞いたことがあると思います。100億円利益が出た会社が50億円を配当に回すとすると、配当性向は50パーセントということになりますが、それと同じような感覚で、株式投資で得た利益を独り占めするのではなく、それを使っていくことが、実経済を活性化させる1つの要因にもなりますし、投資で得られたお金を使っていくことで、投資をやってきてよかったなと実感できるようにもなるので、そういった経験を積んでいってほしいなと思います。
投資家としてお金を儲けるのも使うのもスペシャリストでありたいですね。私の場合は、自分自身や家族、親戚、友人などお金の使い道がまだたくさんあるので、今はまだいいのですが、その後だんだん使う先がなくなってきたなという時は、やはりその財団法人を作ったり、寄付をしたり、社会貢献にお金を使っていけたら、投資家として少しは社会の役に立てるんじゃないかなと見ています。
投資方針および目標6 相場に対して常に謙虚に冷静に対処する
「相場に対して常に謙虚に冷静に対処する」もすごく大事です。やはり市場の流れには逆らわないことがすごく大事なんですよね。みなさんも経験されていると思いますが、株というモノは本当に自分の思いどおりには動いてくれないんですよ。
自分の思いどおりに動いてくれたら、みんな株で成功してみんなワーッてなると思います。でも実際はそういうことはなく、なかなか思いどおりにならないことが多いんですよね。その中で、「今こうなっているけど自分が正しいんだ」と意固地になってしまうと、チャンスを逃しちゃうこともありますし、他にもっといいチャンスの銘柄があるのにそっちに目が向かなかったりする。さらにそれが身を滅ぼすことにつながることもけっこうあるんですよね。
いいと思って買った会社が、実は粉飾決算やっていたということもないことはないんですね。そういう意味で、常に冷静に対処するという習慣を身につけるのはすごく大事なことだと思います。
例えば、プールで泳ぐのであれば波もないので普通に泳げますが、川の流れに逆らって泳ごうとするとぜんぜん前に進まなかったり、それですごく体力奪われちゃったり、下手したら溺れちゃう可能性もあるじゃないですか。
株も相場もまったく同じです。例えば日常生活で、事故しちゃったとか何かあった時にワーッてなっちゃうことがあると思いますが、それと一緒に冷静さを失っちゃうと、本当にいい結果を招かない行動を取ることが多いので、株の場合、冷静さを失った時は無理に動かないことがすごく大事じゃないんじゃないかなと思っています。
船で喩えるならば、株や資産を積み荷として積んで航海しているとイメージしてください。海が嵐になってしまった時に無理をして航海を続けてしまって、結局船が転覆しちゃって、荷物が全部海に流れてしまって資産がなくなってしまい、かつ自分の命も危険にさらされることになってしまっては、本末転倒です。市場が荒れている時は、いったん冷静になって何もせずに様子を見るのもすごく大事なことなので、資産を守るという意味でも、無理に動かないというのはすごく大事なことだなと思います。
常に謙虚に冷静に、を体の中にしっかり据えて、それをもとに株式投資を長く継続して運用していくのが私は一番いいんじゃないかなと思っています。
投資方針および目標7 自分の間違いをすぐに正すことができるような柔軟性を持つ
次に、「自分の間違いをすぐに正すことができるような柔軟性を持つ」、これもすごく大事です。投資は答えがあってないようなものなので、私もそうですが、間違うことがいっぱいあります。「間違ったなと思ったら、すぐに処理をすること」と「自分がやっていることが間違いじゃないかというのを早期発見できるかどうか」の2つの能力が株式投資においてはすごく大事です。
株式投資において、投資の判断を間違えることは数え切れないほどあります。私も本当に数え切れないほど失敗しています。そういう時に、柔軟に見直し修正ができるかどうかがすごく大事です。中でも、間違いに気づいた時にすぐにその間違いを正すことができるかどうかが本当に大事です。
なかなか自分の考えを変えることができないんですよ。お金が絡んでしまっているし、さらに損をしてしまってる場合は、損したくないという気持ちが出ちゃって、もしかしたら戻るんじゃないかみたいに自分の都合のいいように解釈することがけっこうあるんですよね。
そうなってしまうと傷が深くなってしまったり、立て直すのにすごく時間がかかっちゃうんですよね。例えば、スポーツ選手が怪我の治療をせずにほっておいてしまったから、治るのに余計に時間かかっちゃうということがけっこうあると思いますが、傷を負ったなら早く治すのがすごく大事で、それが運用成績に影響を及ぼすことにもつながりかねないんですよね。
やはり早期発見、早期処理、先送りするのはNGという、この3つを常に大事にして、自分の投資判断が間違っていないか、常に冷静な姿勢を貫くということがすごく大事なことだと思っています。
投資方針および目標8 割安な銘柄に執着しすぎないように心がける
次に、「割安な銘柄に執着しすぎないように心がける」とあります。投資スタイルはいろいろあると思いますが、私の場合はバリュー株投資という、割安な銘柄に投資するというのを1つの方針としてやっています。ここで大事になってくるのは、この一番上にもありますが、合理的な投資行動です。
バリュー株投資を主力にしてきた私にとって、割安な銘柄で自分のポートフォリオを構築するのは基本中の基本です。バリュートラップという言葉を聞いたことがある人がいるかどうかはわかりませんが、株価は割安だけど、結局買ってもぜんぜん上がらない銘柄はけっこうあって、そういうものをバリュートラップといいます。
そういう銘柄かな? と思っても躊躇なくこれまでは組み入れてきたんです。ただ、東証から資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応という要請があって、それ以降、その要請に対して対応を積極的に進める企業や、そうでもない企業、あるいはぜんぜん対応しない後ろ向きな企業が徐々に見えてくるようになったんです。
やはりやる気がない会社に投資するよりも、やる気がある会社に投資したほうがいいじゃないですか。そういった意味で、選別がすごくできるようになったんですよね。
合理的な投資行動をするのはすごく大事です。安物買いの銭失いということわざがあります。私の場合、これまでは安いから買っている感じだったのですが、もう52歳になったので、みなさんよりも残りの人生が短いわけです。そうなるとやはり時間効率がすごく大事になってくるので、時間効率を高める意味でも、合理的な投資行動を取ろうと心がけるようになりました。
投資方針および目標9 常に少数派に回ることを意識した投資行動を
9番目もすごく大事です。「常に少数派に回ることを意識した投資行動」とあると思います。少数の優位性というタイトルにしましたが、みなさんもやはり日常生活の中では、多数派にいたほうが安心感があったり、無難かなという考え方になったりすることがよくあると思います。投資の場合はまったく逆で、多数派のほうが良くないことが多いんです。
そのことについて今から説明していこうと思います。なぜ少数派に優位性があるのかをよく考えると、理由は簡単なんですよね。
株をやってると、良い材料、悪い材料が出ることがあります。材料が出た場合、みんなが持っている株よりもあまり持ってない株のほうが、同じ成果があった時に取り分がぜんぜん違ってきます。
例えば1億円でも1億人の人で分けたら1人当たり1円にしかならないわけですよ。でも100万円かもしれないけれど2人しかいなかったら1人当たりは50万円なるわけです。ここがすごく大事なところで、やはり多数派だとうまくいっても、1人当たりで割っちゃうとあまり儲からないということはけっこうあるんですよね。
一方で、悪いサプライズが起きた場合を考えた時に、多数派だとやはり我先に売ろうと出てくると思うんですよね。それがものすごく大きな売り圧力になって、株価もバンバンバンバン下がっていくということがけっこうあるんですよね。だから損失も大きくなっちゃう。
一方で少数派の場合、当然そういうふうに投げ売りする人も少ないので株価の下落も限定的になることが多く、相対的に損も少なくなることが多いんですよ。
要約すると、少数派に回ることによって損小利大の享受を受けやすくなるということです。人の行く裏に道あり花の山という投資相場格言があるのですが、株式投資の世界において利益を得るためには、多数派とは常に逆の行動を取ることを意識するということを頭の片隅に入れておいたほうが私はいいんじゃないかなと思っています。
(次回へつづく)