2025年3月期決算および経営計画説明会
新井聡氏:野村不動産ホールディングス株式会社グループCEOの新井です。本日は、まず2025年3月期決算について、その後、本日開示した経営計画について、ご説明します。
連結決算概要
決算の概要をお伝えします。2025年3月期の連結業績については、売上高7,576億円、事業利益1,251億円、親会社株主に帰属する当期純利益748億円と、いずれも過去最高となりました。前期と比較し、事業利益は114億円、10.1パーセント増加、親会社株主に帰属する当期純利益は66億円、9.8パーセントの増加です。
部門別決算概要
部門別では、住宅部門において2025年3月期からグループ入りしたUDS社の貢献や住宅分譲の粗利益の増加、海外部門でベトナムにおける計上戸数の増加、仲介・CRE部門で売買仲介取扱高が増加したことなどが、事業利益の主な増加要因です。
都市開発部門は前年同期比で売上高と利益が減少していますが、これはグループ全体として業績が好調に推移したために、収益不動産の売却粗利額を減少させたことによるものです。
2026年3月期 通期業績予想
2026年3月期の業績予想については、売上高9,400億円、事業利益1,350億円、親会社株主に帰属する当期純利益750億円と、いずれも過去最高を見込みます。事業利益の主な増加要因としては、住宅分譲が好調であることや、住宅・都市開発部門での収益不動産売却の増加を見込んでいることがあります。
なお2026年3月期は、「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER N」着工に向け、既存建物の解体に着手する想定をしており、一時的な費用や損失の可能性を見込んでいます。
住宅部門:部門別業績
住宅部門です。分譲住宅の平均価格上昇や2025年3月期からUDS社が加わり、ホテル事業が貢献したことにより売上高が伸びました。なお、収益不動産の売却金額が減少しているのは、分譲住宅事業やホテル事業が好調に推移したため、売却を減少させたことによります。
2026年3月期は収益不動産売却の増加等により、増収増益を想定しています。
住宅部門:分譲(売上高/粗利益率、関連指標)
先ほどご説明したとおり、平均価格の上昇により粗利益率は26.9パーセントと高い水準となりました。
なお2026年3月期の粗利益率は、24パーセント台を想定しています。
住宅部門:分譲(25/3期 用地取得/用地ストック)
用地取得については、厳しい環境の中でも順調に進捗しています。当社が注力している高額商品を中心に取得し約2,000戸、売上高にして約4,500億円相当の用地を確保できました。
2028年3月期までに計上予定分の用地は、概ね取得が完了しました。
住宅部門:収益不動産(賃貸住宅等)の売却と賃貸住宅の開発状況
賃貸住宅の開発状況としては、スライド右側中段に記載しているとおり、7棟分、総投資額で188億円分を取得しました。その結果、36棟、1,158億円分のストックを確保しています。
都市開発部門:部門別業績
都市開発部門では、収益不動産の売却が前年同期比で減少したことにより、前年同期比で減収減益となりました。これはグループ全体の業績が好調に推移したために、収益不動産の売却を減少させたことによるものです。
2026年3月期は収益不動産売却を増加させることで、増収増益を見込んでいます。
都市開発部門:収益不動産売却と用地取得
都市開発部門でも、収益不動産の用地取得は順調に進んでいます。2025年3月期は物流施設を中心に12件、2,640億円相当を取得しました。その結果、収益不動産のストックは、1兆円を超えることとなりました。
直近3ヶ年では、粗利益相当額で年間約300億円から約350億円分の売却を行ってきましたが、今後3ヶ年では、より売却を増加させていくことを見込んでいます。
都市開発部門:空室率、賃貸可能床面積
スライド左側の空室率のグラフについて、これまでと計算方法を変更しています。「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER N」のように竣工後1年を経過しておらず、安定稼働が始まっていない物件については、空室率の計算には含めず、竣工後1年を経過した物件の空室率を記載しています。
その基準で見ると、固定資産として保有する賃貸資産の空室率は、全エリア平均で3.9パーセントとなり、3ヶ月前と比較すると0.7ポイント低下しました。
賃貸可能床面積は、3月に竣工した「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER N」の影響で大きく増加し、当社の賃貸資産ポートフォリオは大きく強化されました。
海外部門:決算概要
海外部門においては、ベトナムでの分譲住宅の引き渡しが順調に進み、売上高、事業利益ともに増加しました。
海外部門:海外事業の拡大(参画案件)
スライド左側には2026年3月期の計上プロジェクト、右側には総事業費を掲載しています。2026年3月期も引き続き、ベトナムにおける計上が収益に寄与する計画です。
なお当四半期は、米国シアトルと英国ロンドンでの賃貸住宅案件など、新たなプロジェクトへの参画を決定し、総事業費のストックは約500億円増加しました。結果、総事業費で約7,600億円分の事業案件を確保しています。
次に、株主還元についてお話しします。
株主還元、株式分割
4月1日に株式分割を実施したため、スライド左側のグラフの1株当たり配当金の2024年3月期以前の数値は、分割を実施したと仮定した数字を掲載しています。
2025年3月期の年間の配当は34.00円となり、配当性向は39.2パーセント、総還元性向は45.9パーセントとなります。
2026年3月期については、年間の配当は36.00円、配当性向は41.2パーセントとなり、14年連続の増配を予想しています。
決算に関するご説明は以上です。続いて経営計画のご説明に移ります。
当社グループの現在の立ち位置
それでは、今回策定した新たな経営計画についてご説明します。まず今回の計画策定の前提となる、私たちのこれまでの状況や足元の環境、当社グループの独自性等についてご説明します。当社グループは1957年の創業からいくつかの段階を経て成長してきましたが、ここでは2000年以降の状況を確認しておきます。
2000年から2010年頃までは、住宅の「PROUD」や、オフィスの「PMO」、物流施設の「Landport」の事業を開始し、現在につながる事業基盤を構築した時期でした。
その後2010年から2020年頃までは、海外やホテル、シニア住宅事業へ進出し、総合型のREITである野村不動産マスターファンド投資法人を設立するなど、事業基盤をさらに拡大させてきました。
そして現在の私たちは、「価値創造の転換期」に位置していると捉えています。2022年に2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」を掲げ、以降の3年間、私たちは従来型の不動産デベロッパーからの進化を図っています。
振り返り
このように事業基盤を拡大してきた結果、足元の業績は好調に推移しており、3年前に掲げた財務目標はすべて達成することができました。国内外の事業でお客さまのニーズに応える商品やサービスを提供してきたことで、成長を続けることが出来たと考えています。
振り返り(外部環境認識)
確かな成長を続けてきた一方で、お客さまや社会のニーズ・価値観やマクロ環境は大きく変化しています。スライドに記載しているように、事業環境はより不確実性、不透明さを増しており、私たちはこれらにしっかりと対応していく必要があります。
当社の独自性・競争優位性
事業環境が不確実、不透明な中で、経営計画の策定にあたり、私たちは改めて当社グループの独自性・競争優位性を見つめ直しました。
私たちはこれまでも、スライドの左側にあるような強みを活かしてお客さまの価値観を起点にしたアプローチを行うことによってお客さまの幸せを増やし、それにより街や社会の豊かさを高めることに取り組んできました。本計画においては、この取り組みをさらに強化することを主眼に策定しました。
経営計画の設定期間の変更
今、申し上げたような取り組みを強化していくために今回の計画策定において、計画の設定期間を変更しました。
長期的に一貫した方針を持ちながら、変化の速い事業環境に即した戦略を構築・対応していくために、これまでは、9年間の中長期経営計画を3年ごとに見直してきましたが、今回から「長期経営方針」と「3ヶ年計画」に分けて策定することに変更しました。
長期経営方針 - 2030年ビジョンの深化
先ほど申し上げたとおり、私たちは「自分たちの目の前にいらっしゃる個人や法人といったお客さまに幸せと豊かさをお届けする」というアプローチによって、街や社会全体を良くすることを目指しているグループであるとあらためて確認しました。
その考えに基づき、2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developer」に到達するための道筋として、「幸せと豊かさを最大化するグループへ」を掲げて、役職員全員でお客さまに幸せと豊かさをお届けする取り組みを強化していきます。
そのような取り組みを行っていくことを、当社グループの長期経営方針とします。
長期経営方針 ~ 価値創造手法の進化・変革
長期経営方針を進める上で、私たちは従来進めてきた価値創造の手法を、スライドにあるように進化・変革していきます。
いずれも、個々のお客さまに対してさまざまなアプローチで価値を提供していくものになっており、これまでも取り組んできたものですが、これらをさらに進化させていきます。
長期経営方針 ~ 長期事業方針
長期経営方針に基づいて、各部門においては、スライドにあるような方針で事業を推進します。各部門の具体的な事業の取り組みについては、後ほど、3ヶ年計画の中でご説明します。
長期経営方針 ~ 財務指針
2026年3月期から2030年頃までの財務指針としては、以下を掲げます。
①資産、資本効率として、「ROA5パーセント以上」「ROE10パーセント以上」
②利益成長として、「事業利益の年平均成長率8パーセント水準」
③健全な財務状況として、「自己資本比率30パーセント水準」
④株主還元として、「総還元性向40パーセントから50パーセント」「年間配当金DOE4パーセント下限」
先行きが不透明ですので、バランスシートコントロールを図りながら、高い利益成長を目指していきます。
長期経営方針 – 非財務目標
当社が掲げるマテリアリティはスライドに記載のとおりです。各項目についてこれまでと同様に着実に推し進めていきます。
長期経営方針 – 「森を、つなぐ」東京プロジェクト
当社の代表的なプロジェクトである「森を、つなぐ」東京プロジェクトを紹介していますので、ぜひご覧ください。
3か年計画 – 3か年計画の概要
3ヶ年計画の基本方針は、グループ全体で事業量の拡大を図り、持続的な成長を実現しながら、バランスシートを適切にマネジメントし、高い利益成長と高い資本効率を両立することです。
それに向けて、国内トップクラスの事業量となる分譲住宅と、オフィスを基幹事業と定義し、これらの事業においては商品企画力とサービス力の向上により、確固たるポジションを構築します。また持続的な成長に向けて、5つの領域に注力します。
3か年計画 – 利益計画
3ヶ年で、事業利益の年間成長率は年平均8パーセントを目標とします。2028年3月期には前中計の事業利益目標であった「1,400億円以上」を上回る「1,600億円」の実現を目指します。部門ごとの目標はスライドに記載のとおりです。
3か年計画 – 投資/回収計画
今後3ヶ年の投資、回収の計画をご説明します。
本計画期間では、2兆500億円の投資を計画しています。内訳としては、基幹事業への投資を継続して進めることに加え、成長事業である、賃貸住宅・ホテル・シニア住宅・物流施設への投資を拡大する計画です。
一方で、賃貸資産ポートフォリオの見直しなどを通じた、収益不動産売却の増加により、回収額は1兆7,000億円を計画しています。
このように、事業方針に沿った投資を行いながら、資産効率を見極めながら売却も行うことで、①中長期的な成長に向けた事業機会の確保②3ヶ年での着実な利益成長を両立させる計画です。
3ヶ年計画 – 基幹事業のポジション構築
分譲住宅事業においては、好調なマーケット環境を踏まえ、国内トップクラスの計上戸数となる3,500戸から4,000戸の計上を継続し、直近3ヶ年と同等の粗利益率を実現します。
また今後の成長に向け、最上級クラスの商品企画による都心エリアでの高額分譲マンションや都心型戸建て等を、商品ラインナップに加え、事業拡大に取り組みます。
3ヶ年計画 – 基幹事業のポジション構築
オフィス事業においては、シェアオフィスの「H1T」やサービス付小規模オフィスの「H1O」などの幅広いアセットに、テナント企業で働く方をサポートするサービス「NOMURA WORK-LIFE PLUS」などのサービスを掛け合わせ、顧客満足度の向上を図ります。
また新たな事業として、多様な分野のお客さまの研究開発に対応できる、高機能な「ラボオフィス」の開発を拡大していきます。
3ヶ年計画 – 注力領域① 成長分野における重点的な投資
成長分野の賃貸住宅とシニア住宅では、投資を拡大し、今後3ヶ年で約1,000億円を投資します。従来型の商品に加え、コリビング型賃貸レジデンス「TOMORE(トモア)」等、ラインナップを拡充します。「シニア住宅」も同様に、コンパクト型や高額型など、ラインナップを拡充します。
3ヶ年計画 – 注力領域① 成長分野における重点的な投資
インバウンドニーズの拡大が見込めるホテルでは、約1,000億円の投資を計画します。当社直営ブランドや、UDS社の運営受託ブランドに加え、新たなタイプのホテルへの投資を計画します。
物流施設は引き続き大規模な投資を行い、約3,000億円を投資します。エリアを限定せず投資を行い、また、倉庫内オペレーションの助けとなる立体自動倉庫を開発するなど、ソフト面でのサービス提供による価値創造を図ります。
3ヶ年計画 – 注力領域② 開発事業、賃貸事業における投資家資金の導入
開発事業においては、投資家資金を導入する予定です。開発案件へ投資したい投資家と共同投資を行うことで、事業機会の拡大や資産効率の向上を図ります。
当社グループの特徴である「賃貸バリューチェーン」においては、既存の投資家層に向けた物件の開発・売却を行うことに加え、海外投資家や個人富裕層等、新たな投資家層のニーズを満たす物件開発の拡大も、今後検討していきます。
3ヶ年計画 – 注力領域③ グループ内連携、野村グループとの連携の強化
当社グループの大きな強みである、お客さまニーズを軸にしたグループバリューチェーンは今後もさらに強化していきます。2025年8月には「BLUE FRONT SHIBAURA」に本社機能を移転し、個人とチームのパフォーマンスの最大化を通じて、グループ内の連携をより強化していきます。
また当社の独自性である、野村グループとの連携についても、住宅分譲や不動産仲介、私募ファンド運用等の事業を中心に協業を進めており、今後もより連携を強めていきます。
3ヶ年計画 – 注力領域④ 海外事業の将来収益拡大に向けた取り組みの強化
海外においては、国内で培ってきた商品の企画力や改善力を活かして、各国で付加価値の高い事業を展開し、お客さま満足度を向上させながら、社会課題の解決にも貢献していきます。ベトナム・フィリピン等アジアの成長国と、英国・米国等の先進国に展開することで、安定的な利益拡大を目指します。
3ヶ年計画 – 注力事業⑤ 戦略投資(M&A)による成長の加速
「幸せと豊かさの最大化」を進める上では、戦略投資により、成長をさらに加速させることが不可欠です。3ヶ年で戦略投資を約1,000億円行い、既存事業の枠組みを超えた成長を目指します。
最後に
以上が、私たちの新たな経営計画です。本計画の下、当社グループの強みである「お客さまの価値観を起点にしたアプローチ」を通じ、人々の「幸せ」と社会の「豊かさ」を最大化していくことによって、持続的な成長を実現して参ります。
以上で、ご説明を終わります。