Voicy「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」
オープニング
荒井沙織氏(以下、荒井):「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」をご視聴いただき、ありがとうございます。今回の放送の司会を担当します、荒井沙織です。この番組は、個人投資家、アナリスト、ストラテジストなどの方々へのインタビュー、対談などを通して、みなさまとともに投資の知見を深めていくための、ログミーFinance主催のラジオ番組です。
今回の「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」では、個人投資家のヘムさんをゲストとしてお招きし、ヘムさんご自身も実施されている増配期待銘柄への投資について、2回の放送を通してうかがっていきたいと思います。それでは、放送スタートです。
「増配期待株」とは
あらためまして、今回のゲストをご紹介いたします。個人投資家のヘムさんです。本日はよろしくお願いいたします。
ヘム氏(以下、ヘム):よろしくお願いします。
荒井:さて、ヘムさんの著書である『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』。こちらの書籍についてお話をうかがった回から引き続きのご出演ということで、今回もよろしくお願いいたします。
ヘム:お願いします。
荒井:さて、さっそく今回のテーマである増配期待銘柄への投資についてうかがっていきたいんですが、そもそも増配期待銘柄とはどういったものなのか、簡単にご説明をお願いします。
ヘム:はい。今回からちょっと具体的な話になってくるんですけれども、まず増配期待銘柄というのは、言葉そのままなんですが、増配を続けてくれる銘柄ということです。高配当株投資は今の高配当利回りに注目するんですが、増配株投資というのは、将来の高配当利回りに期待するという投資です。
例えば、株価が1,000円、今の配当金が30円とすると、今の配当利回りは3パーセントですよね。この企業が来年配当金を10パーセント増やすと、30円の配当金が33円になります。株価が変わらないと、配当利回りは3パーセントから3.3パーセントに増えます。
こんなふうに、今の配当利回り3パーセントが、4パーセント、5パーセント、6パーセントと長期にわたって増えていくことが期待できる銘柄のことを、増配期待株と呼んでいます。
荒井:ありがとうございます。
ヘム氏が考える増配期待銘柄への投資の4つの魅力
世の中にはいろいろな投資手法があるかと思うんですけれども、増配期待銘柄への投資について、ヘムさんご自身が考えている魅力を教えていただけますでしょうか?
ヘム:はい。4つありまして、1つ目が、毎年成長する配当をもらい続けられるということです。これは「雪だるまを転がす」みたいなイメージとか「階段を上る」みたいなイメージがあるんですけど、今年より来年の収入が増えるというのはすごくうれしいことだと思うので、これ自体が喜びにつながると思っています。
もう1つは、増配に応じて株価の上昇が期待できるということです。これがすごく大事なことなんですけど、増配を続ける銘柄の株価が上がらないということはないので。今、配当利回りが3パーセント(だったとして)、株価が変わらずに増配を続けると(配当利回りは)5パーセント、6パーセントになるんですけど、そんな銘柄を市場が放っておくわけがないんです。高利回りだとみんなが買ってくれるわけですよ。
結果として、株価が上がって含み益が増える。インカムゲインとして、配当として手元にもらえるだけではなく、株価の上昇も得られるというのが2つ目のメリットです。
3つ目は、2つ目の裏返しなんですけれども、株価の下落が少ないということです。これは配当利回りが下支えとかバッファーになるんですけれども、例えば1株当たりの利益が100円、配当が30円。この会社の来年の利益が、100円から80円に減ってしまったとします。こういうこともあるんですよね。その場合、30円の配当が20円に減ってしまう。つまり利益も配当も両方減ってしまうとなると、株価はむちゃくちゃ下がるんです。
ところが、「利益は100円から80円に減ったけれども、配当は30円から35円に増やしましたよ」っていうケースがあるんですね。こういう場合は株価の下落がぐっと抑えられるんです。これが(増配期待銘柄銘柄の)下値不安が小さいという理由、理屈になります。
4つ目ですが、受け取り配当に集中することで、暴落時の狼狽を防いでくれるという効果があります。株式投資を長期でやっていると、暴落は避けられないんです。株価が暴落している時に売るというのは、投資家として最悪の決断でして。株というのは、安く買って高く売るのが大原則です。暴落というのは、めちゃくちゃ株価が下がっている時なので、この時に売ることは絶対に避けたいわけですね。配当を重視していると、株価を売ると配当はゼロ円になってしまうので、それが寂しいんです。
僕はみなさんに「できれば配当の表とかグラフをつけてほしい」って言うんですけれども、(それは)毎月、毎年配当が増えていっているということを実感してほしいんです。表を作っていると、配当が減ることが嫌なので、暴落の時に売るのを我慢してくれる力があります。
あとは、株価が暴落している時に、例えば「株価が半分になりました」と。リーマン・ショックの時は60パーセントぐらい下がりました。でも配当はそんなに下がらないんです。2割から3割しか下がらないんです。
これで何が起きるかというと、株価が半分になって配当は2割、3割しか下がらないと、配当利回りが上がるってことなんです。つまり配当を増やすチャンス、その時に買い向かう勇気になるという。一番いいのは暴落の時に買い向かうことなので、それも後押ししてくれるというパワーがあります。
以上をまとめると、4つあります。1つ目は、毎年成長する配当をもらい続けられてうれしい。2つ目は、株価の上昇が期待できる。3つ目は、株価の下落不安が少ない。4つ目は、暴落時に売ることを防いでくれる、プラス買い向かうことを支えてくれるという4つの魅力があります。
今の話をもう少し数字に落とし込んで話をさせてもらうと、例えば株価1,000円の企業があります。この企業が配当金を35円出しています。配当利回りは3.5パーセントです。
この銘柄の年間増配率が9パーセントだとすると、8年後に配当は2倍の70円になります。複利だとそうなるんですね。株価が変わらないと、1,000円の株価に対して配当が70円になっているので、配当利回りは7パーセントです。
でも、そんな銘柄を市場は放っておくわけがないので、必ず株価は上がります。みんなに買い上げられます。そうすると(株価は)だいたい2,000円ぐらいになって、配当利回り3.5パーセントに落ち着くというのが最もありそうな話です。
とすると、この8年間の間に1,000円だった株価は2,000円になる。買い値に対する配当利回りは7パーセントになっています。すごく都合のいい状態になっているということです。
一方、この8年の間に配当を受け取っていて、受け取りの配当は全部で約340円になります。プラス、受け取った配当を再投資していると400円ぐらいになります。これをまとめると、もともと1,000円で買った株が8年後には2,000円になっていて、400円の配当を受け取っていて、合わせると2,400円の価値になっているということになります。
つまり、8年間で2.4倍になっているということになるんですけれども、これを年間の利回りにすると、11.56パーセント。11.56パーセントというような高い利回りで、これを36年投資すると資産は51.3倍になります。
例えば、30歳で元本500万円で投資をしていたとすると、66歳で2億5,650万円になるということです。これは追加入金なしでです。もともとの元本500万円が2億5,000万円になるということです。
夢のような状態だと思うんですけれども、ここで大事なことは、唯一の前提条件は、ポートフォリオ全体として長期で増配率9パーセントを達成するということです。この条件だけを満たせば、今言った、2億5,000万円みたいな金額に成長しているということです。
本当にそんなことが可能なのか。増配率9パーセント、ポートフォリオ全体として、ずっと維持することが可能なのか。この1点に注目すればいいわけです。結論的にはぜんぜん可能だと思っています。
僕の主要ポートフォリオの過去3年の増配率ですが、3期前が22.7パーセントです。2期前は15.2パーセント、前期は20.3パーセント。過去3年を平均すると19.6パーセントです。先ほどのノルマは9パーセントです。2倍以上ということで、ずいぶん余裕を持ってクリアしているということになります。
もう1つ特筆すべきことですが、この平均の増配率は、全部で254銘柄の平均です。254銘柄もあると運の要素は排除されていると考えていいと思うんです。つまり、この増配率は銘柄選定の力によって達成したということになります。
銘柄選定の8つのポイント
じゃあどんな銘柄選定をすればこんな増配率を狙えるのかということが一番大事になってくると思いますが、それを今から説明します。僕の今回の本では、この部分をかなり詳しく説明しているので、詳細は本をぜひ買って見ていただきたいんですが、今回はその項目を説明します。
全部でチェックポイントは8項目あります。順番にお話ししていきます。1つ目は、配当性向が低いこと。配当性向というのは、利益のうち何パーセントの配当を出しているかということです。これが低いほうが増配の余力があると考えられます。
2つ目は、PERが低いこと。収益面、利益に対して割安ということです。この2つは企業にどれだけ増配余力があるかを示してくれるポイントです。
次に3つ目、これは過去の配当推移が増配傾向にあるかということです。過去は未来を保証してくれませんが、一定程度の方向性を示してくれます。かつ、30銘柄とか50銘柄に分散すると、過去の推移と将来の推移はかなり一致します。過去は馬鹿にならないということです。
4つ目は、配当政策。配当政策というのは、「これからどんなふうに配当します」という企業の宣言なんですけれども、この配当政策に、DOEとか累進配当を採用している企業を選びましょうということです。DOEについては、ちょっと話が長くなるので、第4回のインタビューの時に詳しく説明したいと思います。
5つ目、日経連続増配株指数、日経累進高配当株指数に採用されているということです。この指数には、長期にわたって増配を続けているような銘柄が選ばれています。日本経済新聞社が組成した指数なんですが、選ばれていること自体が名誉なことなので、企業は多少減益になっても、意地でも増配を続けるという傾向にあります。なので、今後の増配確度が高いということになります。
今説明した3つ、過去の配当推移、配当政策、日経連続増配株指数や日経累進高配当株指数に採用されている。この3つは、企業に増配の意思があるかのチェックポイントになります。
次に、6番目と7番目と8番目を説明します。この3つは、企業に配当の原資があるかということの説明です。企業が配当をするのは、将来のことです。その原資は、今どれだけ企業の手元にお金があるかと、これから企業がどれだけお金を稼ぐかということです。
これをチェックするには、1つ目は今の足元として、キャッシュリッチである。お金がたくさんあるかということです。それに加えて、キャッシュの創出力がある。キャッシュを生み出す力がある。これを過去からチェックするということです。
7つ目は、企業の業績推移が安定している、または右肩上がりであるということ。特にリーマン・ショック期とか、コロナショック期に赤字になっていないかとか、一定程度の利益を確保しているかとか、このあたりをチェックします。これも先ほどの配当の話と同じで、過去は将来をある程度は示してくれるので、この考え方も重要です。
8つ目。これは一気に話の毛色が変わるんですが、これはその企業の将来の利益を予想するということです。そのためには、その企業の競争優位性だとか、参入障壁だとか、マーケット面から見た成長の余地があるかとか、このあたりを分析しないといけません。
1から7に比べると、この8つ目はめちゃくちゃ難しいです。これが投資家の実力と言ってもいいと思います。今までの投資手法だと、この8番のことをみんな一生懸命勉強していたわけです。でも、これには腕がいるんですね。腕がいるから、再現性がないんです。でも1番から7番には腕はいらないです。これは定量分析と言って、一定のルールのもとに分析すると、誰がやっても同じような結果を出せるということなんです。
この1番から8番、つまり8番の難しい分析も含めてすべてできると、僕の増配率みたいな19パーセントとか20パーセントとかにいけるわけなんですけど、8番は難しい。でも8番はだめでも、1番から7番ができたら10パーセントから15パーセントぐらいは狙えます。この投資手法のここが大事なんです。10パーセントから15パーセントの増配率を維持できたら十分なリターンになるので。
例えば(今の増配率が)13パーセントとすると、今は13パーセントでも、これから勉強して8番を鍛えていって、13パーセントを14パーセント、15パーセント、16パーセントと上げていけばいいということです。
再現性がある、誰がやっても真似をする意味がある。だから最初は1番から7番を勉強しましょう。8番は少しずつ時間をかけてやっていきましょう。1番から7番には教科書があるんです。その教科書の部分を僕の本では説明していますよというのが大きな特徴になっていると思います。
荒井:その8番の難しいところをやらないといけないと私なんかは思っていて。なので増配期待銘柄というと、何か未来予測のようにも思っていたんですが、初心者は1番から7番をコツコツやっていくことで可能になっていくということなんですね。
ヘム:おっしゃるとおりですね。最初はそこ(1番から7番)からやって、8番はちょっとずつやりましょう。1番から7番でも十分なリターンが狙えますよということです。
荒井:なので、ヘムさんのような経験値、そして積み上げがたくさんある方でない私のような人間でも、1番から7番をコツコツやっていけばいいということですね。
ヘム:そうです。それでも十分な結果が出せると思います。
荒井:はい、ありがとうございます。それではお時間になってしまいましたので、今回の放送はこちらで締めたいと思います。次回もヘムさんにお話をうかがっていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
ヘム:お願いします。
エンディング
荒井:今回は個人投資家のヘムさんをゲストとしてお招きし、増配期待銘柄への投資についてうかがってきました。みなさまいかがでしたでしょうか?次回の放送では、今後の増配に特に期待している銘柄について、具体的にうかがっていく予定ですのでお楽しみに。
なお、本放送については書き起こし記事も公開されますので、気になる方はログミーFinanceのWebサイトをぜひご覧ください。書き起こし記事内では、次の放送テーマや出演者の募集も行う予定です。「こんなテーマを聞いてみたい」「この人に出演してほしい」など希望がありましたら、ぜひご意見をいただければと思います。
それでは今回は以上になります。また次回の放送でお会いしましょう。さようなら。