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溝本俊哉氏(以下、溝本):和田興産株式会社代表取締役社長の溝本です。本日は、当社の決算説明会においでいただき、誠にありがとうございます。
本日の決算説明会では、当社の会社概要・事業内容、2025年2月期決算の概要、2026年2月期計画と基本戦略、中期経営計画の進捗について、スライドに沿って順にご説明します。
会社概要 企業理念
まずは、当社の会社概要から簡単にご紹介します。当社は1899年の創業から126年の歴史があるとともに、法人設立から第60期を迎えることとなりました。
もともとは創業家である和田家が現在の神戸市兵庫区周辺の大地主であり、いわゆる大家業を営んでいたものがルーツです。
主力事業については、新築分譲マンションをはじめとするデベロッパー事業を中心に、賃貸事業などのエンドユーザー向けの事業が大半でしたが、最近は個人の富裕層や法人向けに収益アパートの販売、さらには、後ほど中期経営計画の進捗状況においてご説明しますが、高齢者向け住宅施設の開発や蓄電所への投資等、新たな分野へも進出しています。
事業内容 分譲マンション事業
スライド5ページから8ページに、セグメント別の事業内容を記載しています。分譲マンション販売事業をはじめ、戸建て住宅事業、その他不動産販売事業、不動産賃貸事業の4つのセグメントになります。
主力の分譲マンション販売では、「ワコーレ」のブランドで、神戸市、明石市、阪神間の地元地域を中心に、大阪府や兵庫県姫路市までエリアを拡大中です。
マンションの規模では30戸から50戸程度の中・小型物件が多く、年間20棟前後を供給し、神戸市では供給棟数27年連続第1位、2024年は近畿圏においても供給棟数第2位となっています。
販売に関しては販売会社に委託していますが、現在常設のマンションギャラリーを14ヶ所配置し、地域密着ならではの独自の販売戦略を講じています。なお、マンションギャラリーの配置等は、スライドの38ページに記載しています。
事業内容 戸建て住宅事業
また、これまで培ってきた用地情報のネットワークを有効に活用し、開発物件の出口の多様化を図るため、「ワコーレノイエ」のブランド名で木造戸建て住宅事業を展開しています。
事業内容 その他不動産販売
加えて、鉄骨や木造等のアパート販売事業も、年間15棟程度を販売するまで拡大しています。
事業内容 不動産賃貸事業
不動産賃貸事業では、収益の安定性を高めるため、主としてワンルームマンション等のレジデンス系を中心に店舗・事務所、駐車場等も運営し、賃貸収入を得ています。
2025年2月期決算 決算概要
2025年2月期決算の概要についてご説明します。分譲マンション販売事業およびその他不動産販売事業が好調に推移したことにより、増収増益となりました。
具体的な計数では、売上高は401億3,000万円、前期比13億400万円増です。売上総利益は97億5,600万円、前期比12億6,700万円増です。営業利益は52億8,500万円、前期比7億5,700万円増です。経常利益は45億200万円、前期比6億8,200万円増です。当期純利益は、前期比4億8,300万円増の31億2,200万円となり、4期連続で過去最高益を更新しています。
2025年2月期決算 決算ポイント
決算ポイントについてご説明します。まずは前期対比です。分譲マンション販売は、引渡戸数は減少したものの、戸当たり販売価格の上昇と利益率の向上により、増収増益となりました。
その他不動産販売は、販売用収益物件の売却が好採算で進捗し、大幅な増収増益となりました。
不動産賃貸収入は、新築物件の稼働に伴い増収となりましたが、保有物件の大規模修繕工事等の増加により、利益率が低下しました。
続いて計画対比です。分譲マンションの契約が順調に進んだことで、引渡戸数は計画比12戸上振れし、さらに利益面でも計画を上回りました。
その他のセグメントについても好調な市況を反映し、特に販売用収益物件の利益率が想定より上振れしたことで、計画を上回ることができました。
一方で、戸建て住宅販売は引渡戸数が計画を下回り、売上・利益とも未達となりました。
2025年2月期決算 セグメント別売上高・粗利益
セグメント別の売上高・売上総利益です。各セグメントの売上高については、先ほど決算ポイントでご説明したとおりです。
各セグメントの売上総利益・売上総利益率についてはスライドのとおりです。特に分譲マンション販売では、好採算プロジェクトが多く、売上総利益率が前期比1.2ポイント向上しました。
戸建て住宅販売の引渡戸数は未達となりましたが、売上総利益率は維持しています。また、その他不動産販売では、昨年マンションプロジェクトの一部敷地の評価損を計上した反動や、決算ポイントでお伝えした要因もあり、利益率が大幅に改善しています。
不動産賃貸収入では、先ほどお伝えしたとおり、修繕工事の実施により利益率は低下しました。
2025年2月期決算 営業利益の変動要因
営業利益の変動要因です。営業利益は前期比7億5,700万円増加しましたが、内訳等についてはスライドに記載のとおりです。
前のスライドでご説明しましたが、分譲マンション販売およびその他不動産販売の利益増加が主な要因となっています。また販管費は、分譲マンションにかかる販売経費等の増加に伴い、前期比で約5億円増加しています。
2025年2月期決算 貸借対照表
貸借対照表です。総資産は1,106億5,500万円となり、対前期末で約94億円増加しています。棚卸資産については、次のスライドで詳しくご説明しますが、仕掛販売用不動産は、分譲マンション用地の仕入が大型物件を含めて進捗したため、約70億円増加しています。
固定資産は308億8,300万円、うち有形固定資産が285億6,300万円で、賃貸物件への新築投資等により約18億円増加しています。
負債については、前期末竣工物件の建築費の支払い等により、仕入債務が11億8,600万円増、さらに今期の3月に引き渡した物件の販売代金回収等に伴い、前受金が11億1,500万円増、借入金総額は短期・長期等合算で573億5,600万円と、対前期末比で約47億円増加しています。
純資産は、当期純利益の計上等により22億7,000万円増加し、329億2,900万円となりました。なお、自己資本比率は29.8パーセントとなっています。
2025年2月期決算 棚卸資産
棚卸資産の明細です。販売用不動産の内訳については、分譲マンションは、未引渡物件の増加により、対前期末比で2億7,900万円増加し9億3,800万円となりました。
戸建て住宅は、対前期末比2億7,700万円増加し5億5,800万円に、その他のうち、収益物件は鉄骨アパートの販売進捗に伴い微減となりました。
仕掛販売用不動産の内訳については、分譲マンションは、対前期末比で約72億円増加し480億2,100万円となりましたが、これは貸借対照表の中でご説明したとおりです。
戸建て住宅は、対前期末比で5億円減少し10億1,200万円でした。収益物件を含むその他は、鉄骨アパート等の竣工等により収益物件は6億円減少しましたが、新たな取り組みである高齢者向け住宅施設や大型の賃貸マンションの開発等により、3億5,400万円増加しています。
2025年2月期決算 キャッシュフロー
キャッシュフローについては、貸借対照表でご説明した内容と重複するため省略します。
事業環境
2026年2月期の通期計画と基本戦略についてご説明します。まず、当社を取り巻く事業環境についてご説明します。最初に、マクロ環境についてです。円安を契機としたインフレ基調に転換する中、春闘において賃金改善が進むとともに、インバウンド需要も定着しており、経済活動の活性化が期待されています。
一方、人手不足が深刻化する中、それを補うためにデジタル化の促進や脱炭素に向けた設備投資が活発化する動きも現れています。
ただし、日銀の政策転換に伴う金利上昇やトランプ関税の影響も懸念され、先行きの不透明感が払拭できない状況にあると認識しています。
続いて、不動産・住宅市況です。2025年3月に公表された地価公示では、景気が緩やかに回復している中、地域や用途により差があるものの、全国全用途平均で4年連続の上昇が見られており、地方圏でも上昇が継続しています。
また、金利上昇の要因はあるものの、引き続き金利が低位であること等から、住宅需要は底堅く推移しています。
一方、建築コストは、資材価格の高止まりや労務費等の高騰により、引き続き高水準で推移しています。なお、建築費の動向については、スライドの59ページから64ページもご参照ください。
当社の営業地盤である近畿圏、神戸市・阪神間のマンション市場動向については、発売戸数は、神戸市は大幅増、兵庫県はほぼ横ばいとなっています。
価格は、平米単価ベースで見れば上昇傾向にあります。これらは年間3,000戸強の投資用ワンルームマンションが統計に含まれていることも要因の一つとなっています。なお、詳細については、スライドの53ページ、54ページに全体の動向をまとめており、後ほどご覧いただければと思います。
マンション市場動向(発売・契約率)
マンション市場動向です。2024年の契約率は、近畿圏では好不調を分ける70パーセントのラインを若干上回っています。
一方、首都圏では2023年下期より70パーセントを下回る実績となっています。次のスライドでもご説明しますが、価格面の上昇に関して、一部の好立地の高額物件は好調を維持しているものの、全般的には販売面で陰りが現れてきていると思われます。
また、販売価格が右肩上がりで推移している中、各デベロッパーとも供給戸数をコントロールしており、首都圏、近畿圏とも減少傾向が継続しています。
マンション市場動向(平均価格・単価)
新築分譲マンションの価格推移を時系列で表したグラフです。近畿圏ではグロス、単価ともに上昇トレンドが継続しています。また首都圏では、東京都心の超高額物件の供給が全体の水準を大幅に引き上げています。
2026年2月期 通期計画
今期の通期計画です。売上高410億円、営業利益45億円、経常利益35億円、当期純利益25億円としています。前期比増収減益となりますが、今年度の利益目標が計画どおり達成されると、中期経営計画における3期間の利益目標に対して大幅に上振れすることとなります。
セグメント別の内訳で見ると、分譲マンション販売は、引渡戸数は減少しますが、戸当たりの平均価格が前期比で上昇するため、売上高は増加する見通しです。
一方、2025年2月期は売上総利益率が30パーセントを超える大型の好採算物件が含まれていましたが、今年度は個別物件のラインナップから見て利益率が3ポイント程度減少する見通しであり、減益となります。
戸建て住宅販売は、おおむね横ばいを見込んでいます。その他不動産販売は、単価の低い木造収益物件の販売が増加し、開発用地の素地売りが減少するため、減収減益の見通しとなります。
不動産賃貸収入は、販売用収益物件の売却等の要因も踏まえ、微減の見通しとなります。さらに今年度は、大型物件を含め分譲マンションの供給が増えるため、販促費の増加を見込んでおり、金利上昇に伴う支払利息の増加も加わり、減益となる見通しです。
2026年2月期計画 分譲マンション事業 (戸数実績/計画)
ここからは、事業別にご説明します。分譲マンション販売事業の戸数実績と計画です。前期の引渡戸数は642戸と期初計画に対して12戸の上振れとなりました。今期については、通期600戸の引渡予定で前期より減少しますが、戸当たり平均価格は約5,500万円となり700万円程度上昇します。
前期のその他の戸数実績については、発売戸数は737戸、契約戸数は639戸、仕入戸数は696戸となりました。
仕入戸数については、第1四半期に大型物件2棟で約300戸の仕入が進んでからは、先行きの相場観を踏まえやや抑制気味に進みました。子育て世代に人気の高い兵庫県明石市や北摂地域のギャラリーとして使用していた千里マンションパビリオンの土地部分をマンション用地として所有者から買い取ったことなどにより、実績が積み上がりました。
今期の計画については、発売戸数は770戸、それに応じて契約・仕入戸数とも650戸となっています。仕入については、販売価格の状況をにらみながら、採算面に留意して活動を進めていきたいと考えています。
なお、今期の竣工予定物件14棟594戸のうち、前期末時点で479戸を契約し、進捗率は80.6パーセントまで進んでいます。契約済未引渡戸数は、2027年2月期引渡物件も含め687戸となっており、2024年2月期並みの契約数を獲得しています。なお、金額ベースでは約52億円増加の387億円となっています。
スライド右下の表には、地域別の仕入済未発売プロジェクト数の内訳を記載しており、各地域合計で36棟、1,650戸の未発売戸数を有しています。
2026年2月期計画 分譲マンション事業 (売上高)
分譲マンション販売事業の売上高です。2025年2月期の売上高は約306億円となり、前年同期比で6億8,700万円増加しました。今期は引渡戸数が減少するものの、販売単価が700万円程度上昇することで、売上高は約22億円増加することになります。
スライド右側に、今期の販売単価上昇の要因の1つである、神戸・阪神間における高額エリアでのプロジェクト事例を掲載しています。建築コストが上昇する中では、販売価格の上値が追求できる高級住宅街でのプロジェクトも進めていきたいと考えています。
2026年2月期計画 戸建て住宅事業
戸建て住宅事業です。前期の実績については、引渡戸数は42戸、売上高18億5,000万円となります。売上総利益率も用地取得時の想定より上振れしており、ようやく軌道に乗りつつあります。
戸建て住宅については、立地に応じた価格面での訴求力が不足していたこともあり、売れ筋の価格帯で供給できるよう、ここ数年、地域の選別や用地費の精査を徹底した結果が出たと考えています。引き続き、仕入用地の厳選に努めていきます。
2026年2月期通期計画 その他不動産販売
その他不動産販売の実績は、売上高43億円と好調な結果となりました。内訳としては、木造や鉄骨アパートなどの販売用収益物件の引き渡しが15プロジェクトで、売上高は31億1,900万円と大幅に増加しました。また、開発用地等の関連では、売上高11億8,100万円となりました。
今期は概ね前期並みとなる販売用収益物件18プロジェクトで200戸を販売する計画です。開発中の物件としては、稼働済みのものを含め、木造収益物件7プロジェクト、鉄骨収益物件51プロジェクト、RC収益物件1プロジェクト、合計59プロジェクトの827戸となります。
販売面については、相続対策や資産運用のニーズを有する富裕層などの高属性の方々を対象としており、引き合いも多くなっています。賃貸収入の底上げも含め、収益向上に資する事業セグメントに成長しています。
2026年2月期計画 不動産賃貸事業
不動産賃貸事業です。前のスライドでご説明した木造や鉄骨アパートの売却までの期間に得られる賃貸収入は、当該セグメントに含まれています。前期の売上高は、販売用収益物件の稼働化や高稼働率の維持等により、増収を確保しています。
2025年2月期第4四半期の稼働率は97パーセントと高水準を維持しています。また、保有戸数は固定資産で2,054戸となり、2,000戸を超える水準まで増加しました。さらに資産価値も増加しており、簿価と時価の差額として約60億円の含み益を有しています。
2026年2月期計画 資金調達
資金調達です。金融機関からの借入金については、2024年3月の100戸を超える大型物件をはじめとする用地仕入が順調に推移したこと等から、約47億円増加の573億5,600万円となりました。
日銀の金融政策転換に伴い、金利のある世界へと移行しており、今後、資金調達コストが若干増加する見通しです。ただし、足元の調達環境については大きな変化は特にありません。大型プロジェクトへの対応も含め、当社に対する金融機関の融資姿勢は積極的であり、円滑な資金調達環境は継続しています。
2026年2月期通期計画 配当政策
配当政策です。株主の方々に対する還元策は、安定配当の継続を基本的な考え方としています。2025年2月期の増益決算を踏まえ、期末配当は期初計画の39円から5円増配の44円とし、年間では70円とすることを、2025年5月28日に開催予定の株主総会に付議する予定です。
なお、2026年2月期については減益決算の見通しですが、減配なしの累進配当となる、前年度実績据え置きの年間70円の配当を予想しています。
中期経営計画 (2024年2月期~2026年2月期)
2024年2月期から2026年2月期までの中期経営計画の進捗状況についてご説明します。中期経営計画のテーマや目標を記載しています本スライドについては、これまでの決算説明会等にて説明したものと同内容のため、説明は省略します。
重点戦略における進捗状況
重点戦略の具体的な進捗状況です。まず、分譲マンション販売事業においては、新規エリアへの進出を進めています。また、戸建て住宅事業においては、既存供給物件を対象にリフォーム事業を開始しています。その他、蓄電池事業については、すでに系統用蓄電所が完成し、2025年7月より運用が開始される予定です。さらに、当社初となる高齢者向け住宅施設が竣工するなど、新たな取り組みについても順調に進んでいます。
人的資本投資への取り組みの一環として、首都圏の不動産会社や神戸市に社員の出向を行うとともに、ベースアップを含めた賃金の引き上げも3年連続で実施しています。
次に、参考資料の40ページから43ページに記載のとおり、サステナビリティ経営の実現に向けて基本方針を策定し、機能区分ごとに9つの重点課題、いわゆるマテリアリティ(重要課題)を設定しています。引き続き、持続的な企業価値創出に向けた対応を進めていきます。
数値計画と進捗状況・KPI
数値計画の進捗状況です。利益目標として3ヶ年合計で営業利益118億円、経常利益94億円、当期純利益64億円を掲げています。2年経過した段階で、営業利益ベースは83パーセント程度の進捗、当期純利益は90パーセントの進捗となっており、3ヶ年の利益計画は十分達成可能な水準まで到達しています。
また、KPIに関しては、収益性・効率性の観点からROE8パーセント以上を目標とし、健全性・安全性の面からD/Eレシオを2倍以内としています。2025年2月期末の実績では、ROE9.8パーセント、D/Eレシオ1.7倍と、目標を上回る結果となっています。
以上、2025年2月期決算の概要、2026年2月期計画と基本戦略、中期経営計画の進捗状況についてご説明しました。ご清聴、ありがとうございました。
質疑応答:用地の仕入の方針について
質問者:今後の用地の仕入の方針についてです。先ほど建築費の状況や地価の動向に注意しつつ進めていくと伺いましたが、そのような状況下で一定の粗利率を確保するためには、販売価格もある程度順調に推移する用地であることが必要だと思います。
神戸市のような比較的大規模な商業地エリアを中心にしていくのか、もしくは従来どおり住宅地で比較的御社のブランドが十分に浸透しているエリアを中心にしていくのか、今後の用地の仕入の方針について教えてください。
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