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田鎖郁夫氏:本日は、オンラインIR説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。株式会社エヌ・シー・エヌ代表取締役社長の田鎖郁夫です。2025年3月期第3四半期決算の内容および会社概要、連結業績ハイライト、トピックス、今後の成長戦略、株主還元の方針についてご説明します。
会社の目標
会社概要です。当社は、「日本に安心・安全な木構造を普及させる」「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる」という2つの目標に対して業務を行っています。
日本の木造住宅の課題①
一般的に、安心・安全な構造というのは多くのハウスメーカーが掲げていますが、当社の場合は課題感が違います。
1つは、日本の木造住宅には耐震性がない点が挙げられます。当社は1996年に設立されましたが、その前年である1995年に阪神・淡路大震災という大変不幸な出来事が起き、多くの木造家屋が倒壊しました。
倒壊した約24万棟の建物を調査する中で、大きな問題点に気づきました。日本の木造住宅は構造計算がされていないという事実です。
日本の建築基準法では、すべての構造物に構造設計を行うというルールになっていますが、木造の2階建て以下や、500平方メートルよりも小さな建物については、構造計算をする義務がありません。
したがって、多くのハウスメーカーや工務店は、義務がないため構造計算を行っていませんでした。その中で、法律にはなくてもしっかりと構造計算を行い、耐震性を確保する会社が必要であると考えました。
SE構法で課題を解決
問題解決のため、木造ではこれまで構造計算の仕組みがありませんでしたが、当社はその構造計算システムを開発しました。
鉄やコンクリートと同様にしっかりと安定した強度を出せる集成材という、科学的に品質が保証された木材を使用し、接合部にはSE金物を付けることにより、鉄骨と同じような強度をもつ木造を「SE構法」と名付け販売しています。
日本の木造住宅の課題②
もう1つの大きな課題は、日本の木造住宅は中古住宅になると資産価値が計算できないという点です。
アメリカでは、新築住宅よりも中古住宅のほうが一般的に高い価格で流通しており、それは珍しいことではありません。しかし、日本では中古住宅になると取り壊し費用がマイナスとして計上されてしまいます。その仕組みを変えないと、日本はいつまでたっても豊かになりません。
「35年かけて住宅ローンを返し終えた建物が資産になる仕組みを作る」という思いで、この2つの事業を行っています。
資産価値維持のための課題解決
資産価値を維持し、中古になっても価値を落とさないためには、構造計算書や断熱材などの性能を、建てる前にエビデンスとしてしっかりと残しておく必要があります。それを、当社独自の性能保証書を用いて保証しています。
さらに、現在ではデジタルデータとして半永久的に保存し、データが失われないような仕組みを構築しています。
エヌ・シー・エヌは木造の課題を仕組みで解決する会社
エヌ・シー・エヌは住宅会社だと思われがちですが、実は木造の課題を仕組みで解決するために作られた会社です。
時代のニーズとともに成長する4つのセグメント
その取り組みは約30年前に発想された仕組みですが、時代のニーズが徐々に追いついてきました。当初は構造材の販売が中心でしたが、徐々に木造の非住宅と呼ばれる大きな建物にも利用されるようになりました。
そして、環境問題が叫ばれている今、省エネルギー性能の設計は非常に重要です。加えて、DXの推進にも取り組んでおり、これら4つの分野で売上を構成しています。
住宅分野
住宅分野では、全国の工務店と一緒に「SE構法」を使った建物を販売していく仕組みを作っています。スライドにある「重量木骨の家」というブランドは、現在、モダンリビングと連携し、高級住宅としてブランディングしています。このような住宅事業も行っています。
大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築分野です。カフェや教会などの大きな建物に加え、3,000平米を超える大規模店舗でも「SE構法」で実施されています。
また、「SE構法」だけではなく、「在来工法」と呼ばれる木組みで作るものや、パネルで作るアメリカの「2×4工法」についても構造計算を可能にし、木構造デザインという別会社を設立して構造設計を行っています。
木造はますます大規模化しており、一般的な加工場では作れないものも増えています。そのため、翠豊という技術力と施工力の高い会社を買収して、実現しています。
環境設計分野
環境設計分野は、約15年前からスタートしています。省エネルギー性能をすべてシミュレーションするシステムを持っており、住宅のみならず、マンションのリノベーションや、店舗などに太陽光発電をつけた場合のエネルギー消費量などをシミュレーションする仕組みを提供しています。
DX・その他の分野
データを保存するためのBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)というシステムがアメリカを中心に世界各国で活用されています。当社は、これを木造建築にいち早く取り入れ、その実現を可能にしてきました。
現在では、このプレゼンテーションシステム、3Dのシミュレーションシステムとしても販売しています。
他に類を見ない木造建築プラットフォーム
エヌ・シー・エヌは、ハウスメーカーや工務店を仲間とし、デジタル化、構造設計、省エネ設計、資材供給という技術のプラットフォームを構成する、非常に稀な形態の企業です。
NCNグループは木造建築業界にこれまでなかった“仕組み”を生み出しています。
エヌ・シー・エヌは、全国のハウスメーカーや工務店とともに、1社ではできない仕組みを構築し、提供しています。
NCNグループ
現在、グループ企業は9社あります。「SE構法」を販売する会社は「SE構法登録施工店」と呼ばれており、現在621社に達し、毎年増加しています。
MUJI HOUSE
「無印良品の家」や、SE住宅ローンサービスのような住宅に付随するその他事業も、グループ会社として展開しています。
「MUJI HOUSE」は、無印良品ブランドを展開する良品計画とともに住宅事業を行う会社として設立されました。現在、「無印良品の家」として全国30拠点で販売しています。
また、URと連携してリノベーション事業も行っており、業績は順調に伸びています。
昨年は、無印良品の店舗も「SE構法」により建設しました。
株式会社翠豊
今年大きく売上を伸ばしている翠豊です。大規模なビルディングや、どのように作っているのか仕組みがよくわからないような建物など、難しい施工を行うことができる翠豊という会社も当社グループにあります。
N&S開発(Sanu)
住宅を建てるだけではなく、「どのように利用するか」「ライフスタイルをどのように変えていくか」という視点から、サブスク型でセカンドハウスを提供するSanuという新しい会社と合弁会社N&S開発を設立し、エヌ・シー・エヌとSanuの事業会社として、写真のような宿泊施設を運営しています。
NCNグループ
当グループは、木造建築プラットフォームから生まれた新たな付加価値を、関係会社とともに伸ばしていくグループを形成しています。
2025年3月期第3四半期累計 連結業績
2025年3月期第3四半期の業績ハイライトです。当第3四半期の売上高は63億9,200万円となり、前期比で約3億円増加しました。
一方、利益はようやく回復し、営業利益は2億800万円で前年同期比で大幅に増加しました。経常利益も同様に、昨年の2024年3月期第3四半期では赤字でしたが、しっかりと回復を果たしました。
2025年3月期第3四半期累計 グループ会社の状況
売上高躍進の要因は、グループ会社の成長にあります。エヌ・シー・エヌは、「SE構法」の販売を主体として、昨年よりも若干の利益増となりました。
グループ会社は、収益体制をしっかりと整え、大きく売上・利益ともに貢献しています。
事業セグメントとセグメント売上高
4つの事業のセグメントについて先ほどご説明しました。木造耐震設計事業は「SE構法」を中心とした木造の耐震性を確保する事業で、売上高は前期比3.8パーセントの増加となっています。
住宅分野においては、依然として前期比マイナス約3パーセントですが、非住宅分野が大きくカバーしている状況です。また、環境設計分野の省エネルギー計算サービスや、長期優良住宅のサポート事業は2桁以上の成長を遂げています。
DX・その他の分野における住宅のデータ化やBIMのサービスは、大きく売上を伸ばしています。
第3四半期決算の総括
それぞれのセグメントについてご説明します。住宅分野は、「SE構法」の出荷数増加により、今後の売上増加が期待できると考えています。
木造の非住宅分野は、第3四半期に行われた翠豊による大型案件の引き渡しにより、売上高は大幅に増加しました。
環境設計分野、DX・その他の分野においても、時代の流れを順調につかんで成長しています。
住宅分野
住宅分野です。当第1四半期まで売上高は継続して低下していました。しかし、構造計算棟数の回復に加え、一般の工務店やネットワークパートナーの尽力により、第2四半期、第3四半期と大きく売上を回復させました。「SE構法」の出荷数の増加からも、その様子がわかると思います。
大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造分野です。スライドのグラフは第3四半期までの3年間の推移です。毎年着実に棟数と売上高を確保し、成長していることがわかると思います。
環境設計分野
環境設計分野です。今年度はやや変化が見られ、マンションの大型リノベーションにおいて、省エネルギー設計の必要性が高まっています。
その流れをいち早く捉え、大規模リノベーションにおける省エネ設計の受注を増やした結果、昨年よりも棟数が伸びています。
[DX・その他の分野]BIMによるプレゼン提案件数
前第2四半期でも発表しましたが、3次元データを作成し保存する事業は、プレゼンテーションにも活用できます。スライド左側の事例は写真のように見えますが、実際は当社の3次元建築データを用いたプレゼンテーションシステムによるものです。このシステムで動画の作成も可能であり、現在このサービスの拡充を進めています。
翠豊による大型案件の進捗
第3四半期のトピックスです。大きく売上高を伸ばした翠豊による万博案件が、徐々に引き渡しになってきました。
万博では、環境が大きなテーマとなっています。木造による大規模なドーム建設には、翠豊の高い技術力が不可欠です。このような案件が徐々に引き渡しになり、翠豊の売上・利益に大きく貢献しました。
NCN×MAKE HOUSEによる新コンテンツの提供
先ほどご説明した3次元データの利用に関連し、BIMを生成販売する当社の100パーセント子会社である「MAKE HOUSE」と、エヌ・シー・エヌが展開する「重量木骨の家」のブランド提携により、バーチャル展示場をスタートさせました。
昨今、高品質で高付加価値の住宅が需要を伸ばしています。その中で、展示場を建設して公開するよりも、さまざまなパターンの住宅をすべての工務店がバーチャル空間で提供できるサービスがいよいよ開始されました。
ご視聴のみなさまも、スライドのQRコードを読み取っていただくことで、バーチャル展示場を体験することができます。ぜひ、お試しください。
各分野の成長戦略
今後の成長戦略についてです。住宅分野、大規模木造分野、環境分野についてご説明します。
建築基準法の改正によりNCNの優位性が拡大
2025年4月に建築基準法が大幅に改正されます。すべての新築住宅において、省エネルギー基準を満たさなければいけません。つまり、省エネ基準適合義務化が一番大きな変更点です。
また、当社設立以来の悲願である、構造審査、確認申請も変更されます。建築物を建てる前に役所や民間の審査機関で確認申請という手続きを行いますが、木造でも構造審査が必要となります。
さらに、1年後の2026年4月に仕様規定の大幅な変更があることが発表されています。
全ての木造建築に省エネルギー基準の適合を義務化
国土交通省は、すべての建築に省エネルギー基準の適合を義務化することを発表しました。これまで大きな建物しか義務ではなかったものが、300平米未満の小規模なものも、すべて省エネルギー設計が必要となります。当社が15年間行ってきた省エネルギー性能報告書は、任意ではなく義務になります。
法改正により構造計算義務の範囲が拡大
これまで2階建てで500平米未満の建物は、確認審査において構造審査は行われず、構造計算の義務もありませんでした。しかし、法改正により、2025年4月からは300平米を超える100坪程度の建物すべてに構造計算の義務が課されます。
そして、それ以下の面積の建物についても、仕様規定を厳格に守っているかどうかの審査が行われることになりました。
この改正により、新たに構造計算が義務化される住宅は約4,300棟になると見込まれています。
法改正に対応できる仕組みと実績
法改正による義務化以前からこれらの業務を行っていた会社は非常に少なく、当社は省エネ計算を累計約2万7,000件、構造計算は約3万件を実施してきました。このような実績が大きな信頼となり、受注増加が見込まれます。
木造非住宅の市場拡大
木造非住宅分野です。大規模木造の市場規模は年々拡大しています。建物の着工棟数は減少傾向に見えますが、鉄骨から木造へ移行するケースが増え、大規模な建物が次々と木造に変わることにより、市場規模は拡大している状況です。
大規模木造における競争優位性
大規模な建物を木造で建設するには、インフラや設計をはじめ、さまざまな準備が必要です。当社には、これまでに3万棟以上構造設計を行ってきたスタッフと今までの経験があります。
また、全国に広がる提携プレカット工場では「SE構法」を確保できる体制を整えており、人手不足が叫ばれる中でも、施工店のネットワークは600社以上あります。木造の非住宅事業を推進するために必要なものをすべて揃えているのが、当社グループです。
SE構法の供給体制
「SE構法」の供給体制は、北海道から九州まで全国に広がっています。これほど連携できているのは、当社をおいてほかにはないと考えています。
無印良品の店舗の上棟風景
スライドは、無印良品の店舗の上棟風景です。人がかなり小さく見えますが、約6メートルの高さでこのような大規模建築物を作れる技術やインフラを備えている企業はなかなかありません。
木造建築のトータルソリューション
当社は、木造建築を約30年にわたってプラットフォームとして育成してきました。「SE構法」という構造の設計技術、環境設計、データ化、さらに特殊な加工や難しい施工を行うことができる翠豊、このサイクルにより、トータルにソリューションを提供できる唯一の会社となっています。
環境設計分野のサービス拡大
今後、環境設計分野において、省エネルギーのニーズはますます高まります。パリ協定で決められた目標達成のタイムリミットが2030年に迫る中、日本の建築物にはより高い省エネルギー性能が求められます。したがって、高い技術による省エネルギー計算や設計が、成長する原動力になると考えています。
建設業界を取り巻く環境
建築業界を取り巻く環境において、今まであった矛盾の是正、建築基準法の厳格化、脱炭素社会に向けたSDGsに取り組みます。
他に類を見ない木造建築プラットフォーム
そして、デジタル化・AI化などを工務店やハウスメーカーが単独で行うのではなく、プラットフォームとして全体で解決していく中で、当社の確実な成長が見込まれるのではないかと考えています。
NCN各事業部門は時代のニーズによって成長する
今後も大地震が予想され、耐震建築のニーズはより高まっていきます。その中で、エヌ・シー・エヌは、確実にシミュレーションを行い、都市の木造化、脱炭素社会に向けた動き、省エネ設計を携えて、社会のニーズにしっかりと応えて成長していく、そのような会社の成長戦略を描いています。
株主還元の方針
株主のみなさまへの還元の方針です。グラフのとおり数パーセントの誤差はあるものの、当社は上場以来、年間配当性向40パーセントを基準として継続的かつ安定的に実施する方針のもと、継続して実行しています。
昨年の2024年3月期に少し売上利益を落としましたが、また成長軌道に戻っていることから、このような配当をしっかりと株主のみなさまにお約束できると我々は考えています。
以上が、エヌ・シー・エヌの業績、そして成長戦略のご説明でした。
本日も最後までご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。エヌ・シー・エヌはこの29年間、構造計算義務化のない中でしっかりと培ってきたノウハウを、いよいよ2025年4月から本領発揮して、しっかりと業績を伸ばしていきたいと考えています。ぜひ、今後ともご指導と応援をよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。