ブロードマインドのビジネスモデル

守屋秀裕氏(以下、守屋):株式会社Cocores代表の守屋です。本日はブロードマインドについていろいろうかがいたいと思います。まず、ブロードマインドがどのような方に何を提供している会社なのかをお聞きします。

伊藤清氏(以下、伊藤):ブロードマインド株式会社、代表取締役社長の伊藤です。世の中には、超富裕層から富裕層、準富裕層、中間層とさまざまな方がいます。超富裕層や富裕層の方は、税理士やプライベートバンカーがついていることが多く、情報も含めてアドバイザーがいるという印象がありました。

準富裕層から中間層の方たちは、情報量が少なく、金融リテラシーがあまり高くないため、対策を講じることができません。間違った方向に行っても気づかないこともあります。

そのような状況を多く見てきた中で、私たちは、健康に楽しく100年時代の人生を過ごしていただきたいと思っています。そのような方たちのさまざまな悩みや相談にアドバイスを行い、金融リテラシーを上げながら、将来の人生を安心して楽しく過ごしていただければと思っています。

その中の1つにライフプランニングがあります。これを作成し、自分の将来への目標や目的、課題を可視化して解決していくことが我々のお仕事です。

守屋:そのような意味では、中間層の方たちに向けて、より良い人生を進んでいただくための金融商品を提供しているのですね。

伊藤:おっしゃるとおりです。

金融業界の課題

守屋:少し大きな話になりますが、個人に向けた金融商品サービスの提供に関して、この業界・領域における課題にはどのようなものがありますか?

伊藤:2つあると思います。1つは顧客側、もう1つは販売業者側の課題です。

顧客側の課題は、金融リテラシーが十分ではない点です。業者との「情報の非対称性」が非常に大きな業界のため、顧客が「自分には本当にこの商品が合っているのか」「このような考え方で合っているのか」「自分は何のためにお金を貯めなければいけないのか」「何のために保険に入らなければいけないのか」という明確な目標が持てない課題があると思います。

一方、販売業者側の課題として、まずそれぞれの顧客において「将来どのような資金的リスクがあり得るか」や「どのように生きていきたいか」などの目的や目標が異なります。販売業者は、ただお金を増やすだけではなく、ここを意識して商品を提供できているかというと疑問符がつきます。

お金は貯め続けなければいけませんが、あくまで健康で、就業不能も事故も病気も何も起こらないという前提で話している販売業者が非常に多いと思っています。

それも大切なことですが、途中で万が一のことが起きた時でもリスクヘッジできるように意識して、お客さまに商品やサービスを提供している販売業者の数は少ないのではないかというのが、私の考える課題です。

守屋:ユーザーは自分に適したものを自分自身で選ぶことが難しく、一方それを手助けするはずの販売事業者も、なかなか本質的に寄り添ったかたちになりづらいため、それらが領域としての課題になっているのではないかということですね。

ブロードマインド創業の背景

守屋:今のお話も踏まえて、ブロードマインドを創業した時の経緯をうかがえますか?

伊藤:正直に言うと、私はもともと保険が大嫌いでした。今でもこのような方に出会うことがありますが、独身男性が3,000万円や4,000万円の保障に入っていることがあります。「これは誰にあげるのですか?」と聞くと、キョトンとした顔で「勧められたから」と答えるのです。

金融リテラシーの低い購入者側と販売業者の両方の問題があるとは思いますが、そのような世界が非常に嫌いでした。

私の出身企業のソニー生命保険は、商品ありきではなく、そのお客さまの環境を含めた情報を得た上で、最後にソニー生命保険の中でのいい商品の組み合わせを提供するという考えでした。この考え方に私は非常に感銘を受け、これならば保険業界も少し変えられるのではないかという思いで入社したのです。

ソニー生命保険時代は、「何のためにこれをやらなければいけないか?」というスタンスを大切にしていました。住宅ローンの金利などいろいろな話を聞いているうちに、住宅ローンにもアドバイスができたらいいなと思うようにもなりました。

私は棚卸しと言っていましたが、いきなり商品を提案するよりは「今入っている保険商品は本当にあなたが思っているものなのか?」を含めて考えて、その中でソニー生命保険の商品で何とか解決できないかと考えていたのです。

今でこそ乗合代理店は当たり前にありますが、当時はそのようなものはありませんでした。しかし、多くのお客さまと接していろいろな保険商品を見ていると、やはりソニー生命保険より優れた商品もたくさんありました。

おかしな話ではありますが、我々はそれでもどうにかして自社の商品を顧客に当てはまるように説得しなければいけないというスタンスのため、私はそこに大きなストレスを感じたのです。

その頃、ヨドバシカメラやヤマダデンキが登場しました。昔は電化製品と言えば、ソニーショップやナショナルショップ、日立ショップのようにメーカー専属の電気店で購入するのが当たり前でした。それがある時、電気業界でも1つの店舗でいろいろな商品が選べるようになりました。

そこで、保険業界でもそのようにできないかという考えが生まれたのです。お客さまのリスクや金利も含めて、どこの商品とどこの商品を組み合わせれば一番良いのかがわかれば、お客さまのためになります。さらに、私自身のストレスやジレンマもなくなると考えてこの会社を作りました。

また、保険だけではなく、住宅ローンでも「なぜこの方はこれほどまでに金利が高い住宅ローンを払っているのだろう」ということがあります。不動産や住宅ローンなども含め、すべての情報を提供して総合的にプロデュースできる企業がありませんでした。

何が正しくて何が正しくないかをはじめ、どのような組み合わせがいいのか、あるいは「あなたの場合は保険で賄うのはこの部分で、ここは投資信託がいい」というように、全体を見てアドバイスできる人がいなかったため、企業のビジネスとして展開していきたいという思いで設立しました。

守屋:個人の方に最適な金融商品を届けようとするとライフプランニングが必要ですが、ライフプランニングだけでは不十分で、それにより可視化されたニーズに適した商品を世の中から集めて提供しなければなりません。しかし、それまでの仕組みの中で行うのは難しかったということですね。

そのため、お客さまに本当に良いものを届けるためには起業するしかない、お客さまの満足とご自身の満足を達成しようと思ったら起業だと自然に決まっていったということですね。

伊藤:おっしゃるとおりです。当時は、起業してどうしたいかという目的はありませんでした。

経営理念

守屋:そのような経緯で起業して、現在の理念や行動・行為とどのように結びついていったのかを教えてください。

伊藤:私がソニー生命保険に入社した時は、同期入社が98名いましたが、5年後には5名程度しか残らず、これが保険業界の問題だと感じました。一番の問題は、フルコミッション制度という出来高制度です。これは経費を自分で払わなければいけませんし、見込み客も自分で作らなければいけません。スタートは順調に見えても、途中からそれが途切れてくるのです。

そうすると、経費がかかる上に食べられなくなっていきます。結果的に、せっかく契約したお客さまを残して自分が辞めてしまいます。当時「私が一生あなたを守る」と言っている方がよくいましたが、だいたい5年以内にいなくなっていたわけです。これは1つの問題だと思っています。

そのようなことも含め、私どもの会社はフルコミッション制度ではなく、保険業界の人間ではない未経験者の中途採用から始めました。そのような方たちに私の考え方を理解してもらっています。

その中の1つが「本当にお客さまのために商品提供ができているのか」「背景にこだわって提案しているのか」、つまり「本当にあなたのためを考えているという情熱のようなものがあるか」です。

保険会社もメーカーですから、どうしても自分たちの商品を売らなければいけないという理由はわかります。しかし、自分たちの勧めたい商品が本当にお客さまのためになっているのかという意味で、金融に対する倫理を強く訴えたいのです。

お客さまに対して何のために商品を提供するのかを含めて正しく理解し、わかりやすく説明した上で、お客さまに前向きになってもらい、将来のライフプランを実現してもらうことが我々の目的です。

そのような部分で、将来的にはお客さまが当社を通して学ぶ金融スクールも実施したいと考えています。お客さま自身がさらにリテラシーを持って、自ら考えて商品を選択し、最後に本物のアドバイザーに「この考えは合っているか?」と相談できることが私の理想です。

これを行うことで、当社のパーパスである「金融の力を解き放つ」につながると思っています。

守屋:最終的には自分で最適なものを選べるところまでいってほしいですが、一足飛びではいけないため、伴走したりいろいろな情報提供を行う役割が必要なのですね。それを行うにはいろいろな仲間を集める必要があるため、会社を作られた。そして中途の方を集めて、伊藤さんの考えを理解してもらって、少しずつ輪を広げているのですね。

伊藤:おっしゃるとおりです。我々は、ただの付き合いで保険に入ることを「義理・人情・プレゼント(GNP)」と言っています。最近、金融庁も言い始めていますが、そのようなかたちで保険に入ることは、おそらくできなくなってくると思います。

保険金額を決める時には根拠が必要です。保険がなぜ必要かというと、社会保障で賄えないところで保険が必要になってくるためです。当社の場合は、まず社会保障をしっかり理解するところから徹底的に教育しています。

当社のコンサルタントがお客さまと接する時は、社会保障制度などの周辺知識も含めてしっかりとご説明します。また、お客さま自身も、我々と関わることによって金融リテラシーが上がってきているのではないかと思っています。

守屋:確かに、商品のことだけを知っていても、土台となる社会保障などを理解していないと、全体像を十分に理解して安心することは難しいですね。

同業他社との相対的な競争優位性

守屋:事業の中身と競争優位性についてお話をうかがいます。まず、ブロードマインドの競合他社はどのようなところですか?

伊藤:当社は他社と比べていろいろな特徴があります。そのような中でも、現在は保険代理店や来店ショップ、IFA事業者が挙げられます。幅広い商品ラインナップからいろいろなサービスを提供するという意味では、銀行も競合に入ってくると思います。

それから、最近はモバイル系の会社が決済サービスや保険、証券などに踏み出してくるというお話も聞いています。そのあたりも競合と言えるのではないかと思っています。

競争環境と差別化ポイント

守屋:そのような意味では、大手金融機関を含め、いろいろな競合がいると思います。その中で、ブロードマインドは具体的にどのような立ち位置で事業を展開していますか?

伊藤:まず銀行や大手金融機関については、現在は超富裕層や富裕層にターゲットをシフトしている感覚があります。中間層を無視しているというわけではありませんが、当社は準富裕層や中間層を救いたいという会社です。そのようなマーケットの違いはあるかと思います。

また、他社の代理店も含めた競合に対する我々の優位性というのは、ただお金を増やしたり保険商品を提案するのではなく、ライフプランニングが大きいと思います。

もう1つ重要なのは、途中で就業不能になったりリストラに遭ったりするリスクです。同じローンを組むパワーカップルの場合、どちらかが働けなくなった時にどうするかという問題もあります。

このようなリスクに対し、我々のライフプランシミュレーター「マネパス」を活用して、具体的にどのような課題があるのか、いくら貯めなければいけないのかを明確にしていきます。

我々は、中長期の視点を含めて目的・目標を作り、将来に万が一があろうとなかろうと安心して暮らせることを目的としています。この実現が我々の目標のため、いろいろな保険・証券を見てライフプランを作成し、今加入しているものが適切であれば、安心してこのまま続けてくださいと言うスタンスをとっています。

なかなかパーフェクトなものはありませんが、お客さまの将来で起こり得るリスクを含めても、将来安心して楽しく暮らせることの実現を考えて、前向きな提案を行います。このスタンスがまず大きな違いではないかと思います。

守屋:資産規模といった顧客層や、お客さまに対してどのようにアプローチするのかにより、ポジショニングを差別化しているということですね。

自分の万が一は考えたくない部分もあるため、ライフプランは1人では考えづらいですよね。また、賢いお金の使い方や投資の仕方も自分で情報を集めるのは難しいことです。そのような意味で、御社のようなところと一緒にプランニングを行うのは、個人にとって意味がありますね。

伊藤:おっしゃるとおりです。やはり我々の良いところは、偏らずに提案できるところです。強いて言うと、保険会社は一般的にはフルコミッション制の出来高制ですが、当社はすべて給与制を導入しています。契約を取ることが生活に直結するわけではないため、まんべんなく偏らずに提案できる環境が整っていると思います。

成長余地を掴むための競争優位性

守屋:競争優位性についておうかがいします。今までのお話では、課題がある大きな市場の中で、非常にユニークなポジショニングを確立しているということでした。そうすると、今後の成長余地も非常に大きいのではないかと思います。

この成長余地を掴んでいくための競争優位性について、もし端的にわかるような指標などがあれば、併せて教えてください。

伊藤:まず、生産性の高さだと思っています。当社は、業界でも生産性が非常に高いと言われています。我々にはいろいろな指標がありますが、その中でも単価の高さは業界の中でも倍近いため、そこは強みだと思います。

理由は、先ほどから繰り返しお伝えしているとおり、単なる商品提供ではなく、「なぜそのお客さまがそのように思うのか」という目的や課題を明確に抽出して、わかりやすくご説明しながらお客さまと一緒に一つひとつ理解し、大きな目標をはっきりさせて進めているためです。

毎月の支払いに関しても、お客さまが明確に目的を理解できているため、非常に提案への納得感が高いです。これが、単価が高い大きな要因だと思っています。

もう1つは、教育システムだと思っています。当社は、業界では珍しく約8割以上の社員が新卒採用です。金融はもちろん、右も左もわからない人材を採用してイチから育てます。その中で、社会保障のあり方や周辺知識、また何のためにこれを行うのかといったわかりやすい説明の仕方などをトレーニングする教育システムが非常に有効です。

現在は毎年40名程度採用していますが、教育コンテンツのデジタル化により、効率よく育てられていると思います。

さらにもう1つの大きな項目が、離職率および定着率です。業界では一般的に、新卒3年以内の離職率がだいたい三十数パーセントと言われています。先ほどお話ししたとおり、ソニー生命保険では5年で98名から5名に減りました。その中でも、当社の新卒3年以内の離職率は10パーセント程度と、非常に定着率が良いと言えます。

この1つの理由としては、入社後に「このようなはずじゃなかった」と考える五月病のようなものが当社にはないことです。当社は他社に比べ、数多くの社員と非常に綿密に面接を行い、当社で働くイメージを作った状態で入社してもらいます。したがって、入社後のギャップが少ないことから定着につながっているのではないかと思っています。

また、フルコミッション制や外交員の場合は個々で動いていますが、当社の場合はチームで動くことに加え、社員同士で教え合うナレッジ共有の文化もあります。そのような部分も、定着率が高い要因の1つではないかと考えています。

さらに、フルコミッション制ではなく固定給制度であることに加え、会社としてマーケティングを行い、お客さまが相談を受けられる仕組みを作ることを意識してきました。

現在では、例えば大手カード会社やフィンテック企業、官庁の福利厚生なども含めいろいろなところからお金にまつわる相談を受けるサービスを、当社がアウトソーシングで受ける提携ビジネスモデルができています。

保険外交員やフルコミッション制の方たちは、自分で見込み客を発掘することに9割以上の力を注ぎ、残りの1割でどうにか契約を取ることに必死です。

当社の場合はコンサルタントがそこに力を注ぐ必要がないため、案件が来た段階でお客さまのコンサルティングに100パーセント集中できる環境を作れているというのは、大きな強みかと思っています。

他社と違うところは、お客さま対応について約80パーセント以上をオンラインで行っていることです。「ブロードトーク」というオンライン面談システムを活用した対応をコロナ禍前から始めており、コロナ禍でも非常に活用できたと思っています。全国の保険代理店の中でも、ここまで積極的にオンライン対応を進めている会社は当社だけだと思っています。

さらに、当社独自のライフプランシミュレーター「マネパス」を「ブロードトーク」のオンラインシステムの中で活用することにより、受注率およびお客さまの満足度を上げているのではないかと思います。

守屋:優位性やいろいろな要素についてお話しいただきました。単価や生産性の高さ、教育の仕組みや定着率の高さ、またビジネスモデルの優位性といったものがすべてつながっており、それがお客さまに対してベストなサービスを提供することにもつながっています。

さらに、社員の方たちが生き生きと働けることにもつながっているなど、全部がうまく回るような仕組みになっているという印象を持ちましたが、そのような理解でよろしいですか?

伊藤:私はそう信じています。

今後の成長戦略

守屋:今後の成長性についてお話をうかがいます。現在公表している中期経営計画においては、売上高15パーセント以上の成長、純利益20パーセントの成長を掲げています。どのような要因が牽引役になるのかを教えてください。

伊藤:いくつかありますが、まずは現段階のコンサルティングサービスです。現在、月に約2,000件のご相談をいただいています。実は、提携先からもう少し送客をしたいというお話をいただいていますが、当社では人数がそこまで追いついていません。

つまり、当社のコンサルタント数が増えれば間違いなく純増することがわかっています。これまで新卒採用は15名程度でしたが、2年前から40名採用しており、今年度も入社しています。来期となる4月もすでに入社が決定している状況です。

この増強で、現在の主力であるコンサルティングサービスの売上等は確実に上がっていくと想定しています。人数が増えているため、どれだけのスピード感を持って損益分岐につなげられるかが重要だと思っています。

また、新領域のデジタルを使ったサービスも大きく牽引していくのではないかと思っております。

さらに、我々のコンサルティングサービスの中の多数のお客さまに対する追加提案やLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を含め、非常に短い時間で収益が上がることがわかったため、このあたりの部隊を組織化して積極的に広げていきたいと思っています。

守屋:既存顧客に対する追加的なサービス提供は、新規のお客さまに対してサービス提供していくよりも、効率面ではかなり良いということでしょうか?

伊藤:そのとおりです。新規のお客さまの場合、ニーズなどを聞きつつ最初からお話ししていくため、それなりの時間をかけてご契約いただくことになります。

一方で既存のお客さまは、当社の「マネパス」にライフプランのデータがすでにあります。お客さま自身も、いつ家を買いたいかなどの自分のライフプランを見られるようになっています。

「転職したら」「子どもが生まれたら」などのデータを入れると我々にも共有される仕組みになっているため、スピーディかつ、ニーズをダイレクトに、ハズレなく対応できます。すでに契約者であることから信用度もあるため、時間と生産性を考えると非常に効率が良いと思っています。

新領域への挑戦

守屋:中期経営計画をけっこう長い期間でとられていますが、期間の後半部分については、先ほどおっしゃっていた新領域の貢献をかなり見込んでいるかと思います。具体的に、新領域の部分はどのような絵を描いているのでしょうか?

伊藤:当然デジタルを使うものですが、一般者向けの金融教育サービスや、最近依頼がきているプロ向けの教育、また今後のことも考えるとオンラインも含めた教育などが考えられます。

例えば、プロ向けは「マネパスWith FP」と教育をセットにすることで使用料をいただくなどといったお話をいただいています。

「マネパスWith FP」の何が良いかというと、これから先、保険の話だけではなかなか説得できないと思っています。したがって、「NISA」や「iDeCo」、いろいろな投資信託を含めたシミュレーションが必要だと考えています。

保険会社では保険のシミュレーションができ、証券会社では投資のシミュレーションができます。当社の場合は、保険と投資が同時に設計できるシミュレーションが可能であることから非常に説得力があるため、成約率や単価を上げられる1つの要因になっています。また、社会制度も含めて教育しているため、本当のプロに対して提供できるというところがあります。

当社が近々立ち上げる金融スクールについても、どこかのスペースに集めて教育するというよりは、コンテンツを提供して勉強していただくかたちになります。

お客さまの中には、そこで一般的な知識を得たい方もいれば、先々が不安だから手に職をつけたいという方もいらっしゃるかもしれません。したがって、一般的な知識を持てるコースから副業ができるコース、もっとがんばりたい方向けのプロコースなどを用意することも考えています。

これから新入社員をどこまで採用し続けられるかというのもありますが、スクールを卒業した方が将来当社の仲間やFCになるなど、そのようなかたちで増やしていくのもありかと思っています。

例えば専業主婦だった方も金融の知識を得て、当社を通してお客さまに喜ばれながら自分でお金を稼げる仕事をしていただけたらと思っています。また人生100年の中で、60歳、65歳で定年退職を迎えた後も、そのようなかたちで仕事をしていただければと考えています。

雇用の再生も含め、我々の考えに共感した方たちに外に出ていただければ日本の金融リテラシーの向上にもつながるため、ぜひ進めていきたいと思っています。

守屋:今の新領域のお話は、個人的に非常におもしろいと思いました。テクノロジーを使っていくところと、自社とお客さまとの関係性で閉じずに、領域の中に存在している他の事業者や、そこで働いてみたいという方たちも巻き込み、新しいエコシステムを作っていくということで、ビジネスモデルがさらに拡張していくようなイメージを持てました。

長期投資家から見た事業リスクの指摘

守屋:ブロードマインドの今後の成長性について、非常にエキサイティングなお話をうかがえたかと思っています。長期で御社の株を保有したいという方が気になるだろうというポイントがいくつかありますので、私から率直にお聞きできればと思っています。

まず1つ目は、今後の成長の中で営業員を増やしていくと、その分売上が増えていくという部分があったと思います。見込み顧客の情報の入手という意味では、かなり効率的な仕組みができていると前段でおうかがいしました。

一方で、社員は増えたものの見込み顧客の情報が十分に得られず、生産性が下がってしまったり、期待していたような成長ができないといったリスクはないのでしょうか?

①見込み顧客の獲得

伊藤:当社の提携先は、数百万人から数千万人の会員組織を持っているところがほとんどです。「さらに送客したい」というお話をいただいているものの、まだ当社のキャパシティとして応えられていないことを考えると、まだまだ余地があるのではないかと考えています。

どのように処理していくかというと、おそらくしばらくは人を増やしていかなければなりません。当社の場合は、当然ですが新卒固定給であり、「ブロードトーク」でガバナンスのチェックもできるという点も含めて信用が非常に高く、生産性も高いです。

当社がきちんとライフプランを作っているという意味でお客さまの満足度も高く、生産性も含めて考えると、おそらく他の代理店に優先的に振られることはしばらくないと思っています。

守屋:会員を抱えている方たちからすると、ブロードマインドではなく、他の金融商品の販売を行っているところに情報を流すメリットはあまりないということでしょうか?

伊藤:保険だけではなく、投資信託や劣後債、「NISA」、「iDeCo」、住宅ローンなどあらゆる相談を受けているのは実は当社くらいしかなく、ほとんどの提携先が保険代理店です。保険の相談だけを受ける保険代理店に比べると、当社は圧倒的に相談の幅が広いため、十分な顧客数が得られるのかと思います。

②外部環境の変化への対応

守屋:現状、売上に占める保険の販売手数料の比率が比較的高いように思います。保険の販売手数料はいろいろな外部要因で決まってくるものであり、御社が決めることはできないものだとは思いますが、外的な要因でリスクとなり得るようなことは起こるのか、もし起こる可能性があるとすればどのような対応が可能なのかを教えてください。

伊藤:最近では、保険では一時払商品というものがあります。銀行預金にしているある程度まとまったお金が、しばらく用途がない場合に銀行金利より高い金利がつき、プラス保障もつくという保険商品です。これを移し替えるというものが、我々だけではなく業界全体で非常によく売れています。

販売手数料を一括ではなく分割で払うなど、いろいろな動きが見えています。実際のところ売れ過ぎているため、販売者側もそれを当たり前のように販売している可能性があります。本来の姿としては、ライフプランニングをするなどの目的意識をきちんと持って商品を提供することが必要です。

現在は、「銀行より金利がよく、さらに保障がつくからいいですよ」というお話です。しかし、一時払い商品は30年間持ち続けないといけないということではありません。どこかで保障が切れてしまうため、そこはそこで相談をしますが、やはりきちんとしたライフプランから目的を作って販売していくことが金融庁からも推奨されており、非常に大事です。

一時払いの手数料率が少し下がった時、そればかり販売しているところはおそらく影響があると思います。ただし、我々はすでに平準払いのプランニングにシフトしてきています。例えば、きちんとライフプランの中から目的を持ち、変額保険で毎月の支払いで貯めていくというものです。

一時的には影響はあるかもしれませんが、そのような部分では本来の販売方法を目指さなければいけない時代が近々来ると見込んでいるため、我々にとっては良い方向に向かっていると思っています。

守屋:お客さまにとってベストな商品を提供するためにライフプランニングをするという基本的なビジネスモデルの部分が、外部環境の変化に対する優位性、あるいは耐性のようなものになるということですね。

伊藤:そのとおりです。一番大事なのは、商品を知るというよりも明確な目的を作ることです。例えば、住宅購入の頭金にするのか、老後の資金にするのかなど、いろいろな目的があると思いますが、テーマによっておそらく最適な商品は変わっていきます。

目的がはっきりしないにもかかわらず、ただ増やすだけでは続きません。なぜなら、目的もないまま今から30年間毎月1万円を貯めても、いつでも解約できるような状態だったら、特に日本人の場合は途中で下ろしてしまう可能性が高いからです。そうすると、最終ゴールに辿り着けません。

したがって、きちんと課題を見つけ、その課題を理解した上で目的を作ることが非常に大事だと思っています。

守屋:ここまでいろいろなお話をうかがってきましたが、最初にお話しいただいた「お客さまにベストなものを提供できる会社を作りたい」「そしてそれができる業界にしたい」という想いを愚直に追求されていることがわかりました。

また、デジタルやテクノロジーを介し、新たに生まれてきている事業機会もしっかり取りにいこうとしている事業理念と、外部環境の変化を踏まえてビジネスを紡いでいる様子を強く感じました。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

伊藤:ありがとうございました。