登壇者の紹介

司会者:みなさま大変お待たせいたしました。本日はお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日、東京証券取引所プライム市場に上場したことに伴いまして、記者会見を行います。本日の登壇者を紹介いたします。みなさま向かって右側が代表取締役社長の山村明義です。

山村明義氏(以下、山村):山村です。よろしくお願い申し上げます。

司会者:同じく左側は、執行役員経営企画本部経営管理部長IR室担当の大井康弘です。

大井康弘氏(以下、大井):大井です。よろしくお願いいたします。

司会者:申し遅れましたが、私は、本日司会を務めます広報のカセと申します。よろしくお願いいたします。それでは代表取締役社長山村晃明義よりご挨拶申し上げます。

山村:社長の山村です。本日は記者会見に先立ちまして、一言ご挨拶を申し上げます。当社は、先ほど、東京証券取引所、プライム市場に新規上場いたしました。謹んでみなさまにご報告申し上げたいと思います。

日ごろからみなさま方にはご支援、ご高配を賜っておりますことを心より感謝申し上げます。当社グループはグループ理念である、東京を走らせる力の実現に取り組むことにより、首都東京を中心とした首都圏交通ネットワークの中核にネットワークを持つ鉄道事業者として、お客さまの安全を第1に事業に取り組んでまいりました。

今後も、たゆみなき安全とお客さま視点に立った質の高いサービスを念頭に、お客さまの安全を第1に、お客さまに安心していただけることを最優先に仕事をしてまいりたいと思います。

また継続的、持続的な企業価値向上に取り組み、お客さまをはじめ多くのステークホルダーのみなさまに信頼され、選択され、支持される企業グループを目指してまいります。みなさま方には、今後もご支援、ご理解を賜りますことをお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

質疑応答:初値の受け止めについて

質問者:今日、東京証券取引所に上場するにあたって、初値が1,630円ということで、公開価格の1,200円から35パーセントほど高いところで初値を付けました。それに対しての受け止めをうかがいたいなと思っています。

あと、今回の売り出しに当たって、海外機関投資家さんの需要倍率は35倍を超え、個人投資家さんは10倍、国内機関投資家は20倍超の需要が集まりましたが、これに対しての受け止めも併せてうかがえたらと思っています。

山村:多くのみなさまに評価いただいた結果だと思っており、あらためて感謝を申し上げたいと思います。今後も株主のみなさまの期待に応えられるように、すべてのステークホルダーのみなさまから信頼され、選択され、支持される企業グループを目指していく所存です。

倍率も、そういう意味では、ご評価あるいはこれからのご期待があろうかと思いますので、これからの経営をしっかりやっていきたいと感じています。

質疑応答:海外ビジネスの位置づけと具体的な数値目標

質問者:多くの投資家のみなさんが成長戦略に注目されていると思いますが、御社の海外鉄道ビジネスの位置づけであったり、具体的な数値目標などがあれば。あとは、意気込みを聞かせていただけますか?

山村:海外ビジネスは、大きくコンサルティング事業と、教育事業と、それからO&M事業に分類しています。主に取り組んできたのはコンサルティング事業で、ベトナムはハノイ、ホーチミン、それから、フィリピンのマニラとインドネシアのジャカルタ、こういったところでコンサルティング事業を実施してきました。

多くはJICAの事業を通じての協力です。教育事業に関しては、海外投資における鉄道経験がまだない都市交通があるので、そこにどういう運営会社を作るとか、社員の鉄道に関するノウハウを形成するにはどうしたらいいのかなど、ハノイ、ホーチミン、マニラで協力しています。

それから鉄道オンライン講座ですね。コロナ禍で始めたもので、ハノイの鉄道会社さんが東京メトロの経験に学ぶところがあればということで始めたものですが、運輸、技術、車両など、そういった分野についてノウハウを提供するオンライン講座も教育事業でやっています。

あと、O&M事業はまだ検討中ですが、オペレーションとメンテナンスの協力に関しては、海外都市のニーズがかなり高いので、実際の需要と私どもの提供できるノウハウとの合致して、ビジネスとしての有効性があるところには、展開をしていきたいと考えています。

質問者:日付や目標はありますか?

山村:まだ数値的な目標は持っていませんが、日本の東京で築き上げたノウハウを、ぜひいろいろなところで活用していただければと考えていますし、国際ビジネス部という名前をつけて、ビジネスとして展開できるという意気込みでおりますので、今後、数値目標もできれば検討していきたいと思っています。

質疑応答:コロナ禍における定期収入の減少について

質問者:旅客運輸事業で、今、定期収入が83パーセントほどということですが、コロナ禍の定期収入の減少に連動して流通事業にも何か影響があったのか、また、事業上の気づきなどがあればおうかがいしたいです。

山村:定期収入は、テレワークの影響がかなり強く出ています。ただ、コロナが分類替えしてから、徐々に実質勤務に移り変わっている様相があります。例えばデータとしては、大手町駅と溜池山王駅がビジネス街なため、定期収入の回転が非常に遅かったのですが、今年に入ってから経営改革が顕著です。

なので今後、定期収入は徐々に長い時間をかけて戻りを示すだろうと見ています。ある一定のところは、育児、出産、育児、介護などのライフステージに応じると思うので、まったく元には戻らないとは思いますが、ある程度のトレンドで徐々に回復していくと思います。

これが流通事業に影響を与えたかですが、コロナ禍ではやはり人流がガッと落ちてお客さまの数も落ちたので、流通はかなり収入減になりました。

不動産はそれほど影響を受けなかったのですが、現段階ではお客さまの回復とともに、流通事業も回復の様相を見せています。気づきとしては、やはり人手をかけて、駅構内で商業や店舗展開をやる中で、何か大きなコロナのようなことがあると、なかなかビジネスとしては難しい面があるので、無人化をけっこう志向しています。暑い夏なんかだと案外ジュースの自動販売機で商品がけっこう売れます。

それから、コインロッカーですね。インバウンドの来訪が盛況なので、コインロッカーの利用もかなり堅調です。そのため人手をかけないで駅構内のスペースを活用するというのが、コロナ禍に教訓として得たものです。

質疑応答:私募REITの概要や規模感について

質問者:来年以降、私募REITを作って不動産業はそちらで、というお話が個人説明会でもあったと思います。私募REITの概要や規模感など、現時点でお話できる範囲でうかがえればと思います。

山村:簿価で700億円、時価に換算すると600億円の含み益があるので、賃貸用不動産で保有している物件を私募REITのほうに提供していこうと思っています。合わせて1,300億円ベースの資産がありますので、これを数年は数百億円規模の運用規模でやっていきたいと思っています。

2024年度から私募REITのほうに実質売却を始めようと思っています。売却で得た資金を当社の不動産事業に活用して、また大きな物件を取得したり、当社が実施している不動産事業に投入したりして、ビジネスとして循環型で大きくしていくということを考えています。

質疑応答:鉄道事業、不動産事業における上場のメリット活用について

質問者:今回、初値が1,600円近くになっていますが、上場に際してこの増資はないので、今回メトロさんに売却益が入ってるわけではありません。上場にはいろいろなケースがあると思いますが、上場のどういうメリットを鉄道事業、不動産事業でどうやって生かしていくかということがあれば、おうかがいしたいです。

山村:おっしゃるとおり、売却益そのものは当社に入ってきません。上場の目的そのものは大きく2つあります。以前から行政改革の一環で、特殊法人整理合理化計画の中で営団地下鉄は民営化をしていくという方向性が付けられていること。それから、株式会社法においても、保有する株式はいずれ完全に売却して、完全民営化を目指すこと。こういういわば大きな流れが1つあることと、当社自身は一層の経営改革を実現していくための基盤作りだと思っています。

上場を成し遂げることによって、新たなステージに入っていく。それは1つには、経営の自立性、透明性を高めていくこと、あるいは一層の創意工夫をしていくこと、あるいはスピード重視の意思決定。あるいは経営規律を意識した経営規律。資本コストなどを意識した経営規律の強化。さらにはガバナンスの向上、我々は大きな意味でこれらを経営改革として目指すべきだと思っています。

もう1つは、社員も、そうした経営の見える化が進むと、こういうことをやるとこういうことが評価される、あるいは株価の数字として表れるということが実感できると思うので、士気が上がる、あるいはエンゲージメント、モチベーションが上がることもあるかと思います。また、上場企業として人材確保に有利に働くことはあると思います。

あるいはすでに始まりつつありますが、さまざまなパートナー企業さんから声がかかるようになってきていて、いろいろな連携が始まることもあると思います。これからも、企業価値向上にそういったことを役立てていかなければならないと思っており、これがIPOの1つの目的です。

質問者:そうすると、具体的に何々事業にこれでというものがあるわけではない感じですね?

山村:そうですね。東京メトロの強みは、東京の首都圏の交通ネットワークの中核にいることとお伝えしましたが、さまざまな移動の目的地としてのハブの効果を発揮していると思うんですね。つまり移動の中心にいることが鉄道事業の強みの1つだと思っています。

ただ、コロナ禍を経験した経営者として、鉄道1本足だと運輸収入がかなり痛んで、運輸収入が激減すると経営のかじ取りが難しくなってきたので、鉄道事業以外の柱を持っているべきだということを痛感しています。

したがって、ちょうど時期は同じになりますが、鉄道事業以外の柱をきちんと作っていく。都市・生活創造事業と言っていますが、非鉄道の事業を強化していく。具体的には不動産や流通などを上場を契機として強化していくことが必要だと思っています。

そういうことに、先ほどの社員の創意、工夫など、いろんなパートナーとの協業が効果を発揮していくように努めていきたいと思っています。

質疑応答:残り半分の株式の保有について

質問者:今、半分株式を売却していますが、残りの半分は、早くに売ったほうがいいのか、それとも2021年の交通政策審議会で答申では、延伸計画の整備を確実なものとする観点から、当面保有し続けるみたいな文言がありましたが、キープし続けて、お互いに影響を持ちつつ延伸計画を進めていくほうが望ましいということなのでしょうか?

山村:今、新線建設を行っていますが、この新線建設期間中は新線建設の実行を確実なものとするために、国と都は2分の1はこういうふうにするんだという位置づけになっていると思うんですね。

新線建設期間中の遂行、実行を確実なものにするという意味ですが、建設費は2路線合わせて4,000億円あって、うち6割が補助金です。残りの4割が都市鉄道融資という融資で、いわば公的融資です。比較的利率が低くて、長期の返済が可能ということで有利です。

こういった公的助成の観点が充実していることが、地下鉄建設を継続していくことの前提だと思いますので、建設期間中は公的主体がある程度持っているという意味合いで、2分の1の保有が位置づけられていると思います。

私たちとしては、この趣旨に則り、2分の1保有が建設期間中は続くんだなと認識していますし、公団には、その後の売却については国と東京都で協議をしていくとあるので、この協議の状況を私どもも注視させてもらうということが、今の枠組みかなと考えています。

質疑応答:不動産業における戦略について

質問者:おうかがいしたいのは、不動産です。やはり鉄道の収入が全体の8割、9割を占めている中で、今後、例えば何年間で、その割合のどれぐらいを目指されるのかという目標が、現時点であったらおうかがいしたいと思います。

併せて、御社の不動産の拡大を拝見していると、地上に必ずしも広大な土地をお持ちなわけではないという事情がある中で、他社との連携がけっこうあると思いますが、このあたりの拡大の仕方、戦略をうかがえたらと思います。

山村:鉄道以外の強化をしていかないと、やはり経営としての安定性が十分じゃないという認識を持っています。そして不動産は、おっしゃるとおり、土地をあまり保有はしていません。

過去、渋谷マークシティは東急と京王と3社でやりました。あそこは比較的大きく4割を持っていたのですが、渋谷の飯田線の車両基地の上空を開発してます。それから、渋谷スクランブルスクエアや渋谷ヒカリエの保有土地は、全体に占める割合は少ないです。

道路下を地下鉄が通っているということから、保有土地があまりないのですが、今、ビジネスのスタイルとして考えていることが、いくつかあって、まず実直に、保有している土地の開発を進めていくというものです。

例えば、これも共同事業になりますが、昨年度は東急不動産さんと明治神宮前で「ハラカド」をオープンしました。それから家族住宅で使っていた旗の台の土地を、高齢者施設に展開したのは今年度ですかね。

それから旧研修訓練センター、研修用の施設を新木場に集約したので、中野富士見町にあった土地を賃貸マンションに活用しました。今申し上げた2つは独自です。そういうふうに、保有する資産で展開可能なものはどんどんやっていく。

2つ目は、成長の種になる土地を取得することです。取得も比較的前から進めており、バリアフリー法ができてから、エレベーターを1ルート作らなきゃいけないということで、地上にエレベーターの用地を確保しようという取り組みを進めてきました。

地上にエレベーター用地を作る時に、少し大きめに用地を買って、不動産事業にも合わせて、エレベーターを作る不動産としても展開していくという試みを以前から進めており、そういう目的で取得した土地の活用をこれから進めていきます。

具体的には表参道地区や銀座のエリアで、これから取得した土地の資産化、不動産活用を進めています。

3つ目はREITですね。REITは3つ目で、もう2つありますね。もう1つは成長投資です。成長投資は、だいたい今、年1,000億円の設備投資を予定しています。1,000億円のうち、30パーセント弱ぐらいは成長投資に向けていきたいと思っています。

その多くは、新規不動産の取得に向けていきたいと思っています。そういうことで取得した資産、物件に対して開発をかけていきます。

それから、投資とは別に、財務に影響を与えないかたちでREITに売却した売却益を資金として不動産開発を行うのも併せて行っていきます。こうした4つぐらいの構えで、不動産を推進したいと思っています。

質問者:全体の規模感は?

山村:今、次期中計でこのあたりの投資と、どういった事業が具体的に展開されるか、アイデアを集めて集計をしているので、それによって規模感が出てくると思います。当面は、おそらく鉄道が何割、不動産が何割というような感じではなく、まずはできるところをどんどんやってみて、その積み上がりを大きくしていこうというスタンスです。

質疑応答:安定株、成長株、どちらで見てほしいのか

質問者:今回、個人投資家さんを中心に人気が高い銘柄になったかなと思います。比較的安定株だと言われていますが、御社としては、安定株として見てもらいたいのか、それとも成長株として期待してほしいのか、またそれに対してどういうふうに色を出していくかというところを教えてください。

山村:事業、収益、利益からして、鉄道中心であるということが、現段階の状況です。それで、首都東京の中心にあるという強みがあるので、いわば鉄道需要というのはこれからもある一定程度、強みがあると見ています。

これからも強みがあると言っているのは、理想ではありますが、東京圏は2035年ぐらいまでは人口が成長していくと。それから都市開発が活発であること、インバウンドなど好調な需要があること、これらを踏まえると、やはり鉄道も安定であり、かつ、ある程度成長していく。

メトロポイントやクレジットカードでタッチして利便性を高める、あるいはお出かけの目的地をもっと私たちがご案内して提供していくような「シティ・ツーリズム」、こういったことで鉄道も成長させていきたいと思っています。

それからもう1つが、不動産や流通・広告などの非鉄道の成長ですね。鉄道は652万人のお客さまがいらっしゃるので、そのことを鉄道外のビジネスの糧として、相互にシナジー効果を持っていくというのが1つのスタイルです。

例えば、虎ノ門ヒルズにステーションタワーができ、虎ノ門ヒルズ駅と直結すると、そこでも権利を買って、土地、不動産を取得しているので、不動産賃貸収入にもなります。

また、駅鉄道の運輸収入も増える、それから広告が増えると、けっこう大きく広告収入が増えるという展開があるので、鉄道シナジーを図りながら、非鉄道のほうを伸ばしていくということも考えています。

先ほどの不動産の話も、4つぐらいの方向で厚みを増していきたいと考えているので、安定株ではありつつも、成長を目指すというのが私たちの方針です。

質疑応答:都営地下鉄との一元化について

質問者:これまでもずっと議論されてきた都営地下鉄との一元化について、あらためて今後の方向性を教えてください。

山村:2021年に交通政策審議会の答申が出されて、今回の株式上場と新線建設を不可分一体に進めていきましょう、これが東京メトロの役割と定義をされているわけですが、この議論の中では、都営地下鉄との一元化についてはまったく触れられていません。

それから、売り方について、売り出し人の東京都からは、基本的な考え方が出されていますが、それにおいても、都営地下鉄との一元化については触れられていません。したがって、現段階では都営地下鉄との一元化はテーマになっていないと我々は考えています。

質問者:御社と都営の場合、財務基盤がまったく違って、なかなか相容れないところがあるのかなと思いますが、それが御社にとって、経営一元化の足かせになっている、要因になっていると見ていいでしょうか?

山村:コロナ禍を経て、鉄道会社は影響をかなりこうむったので、直接のお答えにならないかもしれませんが、当社は当社で経営の改革を進めているし、都営地下鉄さんは都営地下鉄さんなりのお考えがあると思います。それぞれ企業体としてがんばっていくという段階にあると思います。

質問者:今回の上場をもって、この議論は遠のいたと見ていいのか、それとも平行線なのか、そのあたりはどう見たらいいですか?

山村:これについては、先のことはよくわかりません。現段階では、先ほど申し上げたように、テーマになってないという認識です。

質疑応答:政府系の株式保有率について

質問者:国と都が、当面50パーセント持ち続けるというところで、その後どうするかというのは、交通政策審議会の答申で、国と都の当事者で協力するとなっているかと思います。社長ご自身は、新線の整備がある程度落ち着いた折には、政府系の保有比率は徐々に減っていくのが望ましいと考えているのでしょうか?

山村:お答えは繰り返しになりますが、交政審で方向づけられている枠組みがあるので、それに則って考えていくことになると思います。

質疑応答:幹部社員の受け入れについて

質問者:当面、フリートなどが半分を持ち、加えて、東京地下鉄株式会社法も維持されるというところで、代表取締役の選解任であったり、あるいは新株の発行は、大臣の認可がこれからも必要になると理解しています。

先ほど、上場を機に経営の自主性を高めていったり、あるいはガバナンスを向上させていくとおっしゃいましたが、そういう観点で、今後、幹部社員の受け入れなど、そういった人事面も含めて、国と都の関係性はどう変わっていくのか。ないし、その上で民間の投資家とどう付き合っていくのかというところを、おうかがいしたいと思います。

山村:2023年6月の株主総会で、もともと1名でしたが、3名増えて社外取締役が4名になりました。上場会社の社長経験者と上場会社の工務部門の執行役員、それから公認会計士の専門家です。かなり自由闊達な議論が、取締役会でも行われています。

取締役ないし監査役の役員に関しては、それぞれの方が持つ見識・専門性を重視していきたいと思っています。なので、国・東京都かかわらず、行政経験も踏まえて、高い見識・専門性を持っていらっしゃれば、経営陣に加わっていただくというのは当然だと思っています。

したがって、さまざまな方たちの見識や専門性を取締役会の中で活かしていくことは、むしろ重要なことだと考えています。

質疑応答:サービスの一体化について

質問者:市民としては、東京メトロに求めるサービスは、企業価値の向上だけではなく、やはり利用者としてのサービスの使いやすさがあると思います。

東京メトロが少しずつ民営化に向かっていく中で、逆に都営地下鉄は都営で続けると、企業としてのキャラクターがだんだん離れていってしまって、イチ住民としてそれがどういうサービスが供与できるのかが、ちょっとわからないんですけど。そのあたりをおうかがいできますか?

山村:サービスの一体化は進めていますし、これからも進めていきます。つまり、都営地下鉄を使っても、東京メトロを使っても、例えば、使用している券売機のスペックは同じ。案内サインも共通化して、両路線を乗り渡る時のエレベーター、エスカレーターの整備は積極的に促進する。多言語放送なんかもそうですね。

サービスの一体化はこれまでも進めてきましたし、これからも進めていく。つまり、ご利用者がサービス上、困ることのないように、これからもテーマを決めて、サービスについては共通化していくということは、推進していきたいと思っています。

質問者:企業としてのカラーは、少しずつ離れていくという感じになるのでしょうか?

山村:それはわかりません。

質疑応答:上場への思いについて

質問者:上場で新たなステージに行かれたわけですが、ここに至るまでの道のりは、かなり長かったと思います。先ほどの都営地下鉄一元化の議論がかなり盛り上がったり、コロナ禍で落ち込んだりしたこともあったかと思いますが、そのような経緯を踏まえて、今日上場の鐘を鳴らされた際、感慨深いものがあったかと思います。そのような思いについて、聞かせていただければと思います。

山村:そうですね。今この時点では、上場は1つのきっかけであって、これから一層の経営改革に努めていくということを、先ほど申し上げましたが、そこに経営者として注力していこうという気持ちでいっぱいです。

これまでの経緯もいろいろありますが、これから先、東京メトロをよくしていくことが、東京をよくしていくことであり、日本にとってもよいことである。あるいは、まちづくりや、地域社会にとってもいいことである。

「すべてのステークホルダーに」ということを、いつも念頭に置いています。お客さまからは、やはり安全やサービスの充実が、これからさらに求められると思います。

それから、社員に関しては、エンゲージメントを高めたり、人的資本の充実に、やはりお金が必要なので、そういった意味では、企業価値の向上や成長は重要ですね。それから、まちづくりを通じて地域社会に貢献していくことが必要ですね。

すべてのステークホルダーにこれから貢献していくために、収益性や成長性を高めていく。そのためには上場ということで、一層の経営改革を推進していくんだろうという思いでいっぱいです。どちらかというと、過去のことはあまり考えず、これからのことを考えていきたいと思います。

質疑応答:売り出し価格について

質問者:2点目です。初値について、売り出し価格よりもかなり高い価格がつきました。売り出し価格自体が低い水準で設定されてしまったのではないかというお考えはお持ちでしょうか?

山村:売り出し価格については、売り出しと、主幹事の証券会社との相談の中で決めていったことだと思います。なので、そういう意味では、私どもから特にコメントをすることはない状況です。

質疑応答:今後の経営面における工夫について

質問者:この会見でも、ステークホルダーに対してや、経営面での今後に向けてのお話がありました。株主問わず、利利用されるみなさんに対して、今回の上場をきっかけに、経営面のどういう工夫をしたり変えていきたいと思っているのか、そのあたりをおうかがいできますか?

山村:はい。「たゆみなき『安全』の追求とお客様視点に立った質の高い『サービス』」と先ほど申し上げましたが、安全であり、サービスであり、安心してご利用いただくということは、当社の企業基盤の基本だと思います。

鉄道を強みとしつつ、さまざまな事業をこれから強化していくと申し上げましたが、その前提も、やはり安全であり、サービスが充実していることだと思います。

上場を契機に、鉄道会社の場合は、一般的に沿線をご利用の方たちが株主になるケースも多いので、直接、株主総会などで安全・サービスについて、ご意見を経営陣に対して寄せられると思います。我々も、そのことを会話として、コミュニケーションとして汲み取って、これを活かしていくという。直接的には、安全・サービスへのモチーフと言いますか、動機として強いものが、これから強く発揮されると。そして、それを我々も大事にしていく。

成長していく過日も、安全・サービスの投資や維持管理にやはり使っていくべきなので、そういう意味では、経営改革、経営効率性を一層高めていくということも、ひいてはご利用者にもプラスになることにしていかなければならないと思っています。

質疑応答:利用者が実感できるメリットについて

質問者:利用者の方が実感できるメリットという意味では、路線の延伸とか、あるいは、商業施設の充実とか、そういう面で、具体的にもう少しいかがでしょうか?

山村:1つの取り組みである新線建設は、南北線は品川方向に、品川駅に延びますし、それから有楽町線は、豊洲から住吉方向に延びますので、言ってみれば、両エリアのアクセス性向上につながりますし、もちろんまちづくりも進んでいくと思います。

今まで地下鉄がなかったところに地下鉄が通ると、一気に街にいろいろな人たちが訪れ、いろいろな試みが始まるので、まちづくりが促進されるということは、ご利用者のみならず、沿線エリア、地域社会にとってもプラスだと思います。

商業につきましても、不動産事業もそうですが、駅直結、あるいは駅近くでのビジネス展開をこれから強化していきたいと思っています。

諸外国と比べると、東京は鉄道が作った街である傾向が強いと言われています。鉄道駅を中心に街が形成されているので、駅近くにさまざまな機能が集結しています。

これからも、駅近く、あるいは駅構内で商業開発を行うことによって、お客さまの「こんなものがあったらいい」「ああいうものがあったらいい」というニーズに応じて、強化していきたいと考えています。

質疑応答:パートナー企業との連携について

質問者:意思決定、スピード感、あるいはパートナー企業との連携も、上場したことによって、より柔軟にスピード感を持ってやっていきたいという理解でよろしいでしょうか?

山村:おっしゃるとおりです。例えば、リンクティビティという会社に出資をしたのですが、リンクティビティは、私たちにない、オンライントラベルエージェンシーとのパイプが世界的に非常に強いです。

特にインバウンド向けのチケット「Tokyo Subway Ticket」の販売強化につながったり、あるいは東京を巡る、新しいチケットを開発するとか、そういったことを連携していく。 パートナーとの連携を図るという意味は、この上場を契機に、さらに強くなっていくので、そこはメリットだと思います。

それから、やはり上場企業として、さまざまな経営指標が見える化されて、公開されていくので、意思決定を早くしなきゃいけないというのがあります。意思決定の促進は、やはりステークホルダー、特にお客さま、地域社会にとって、あるいは投資家にとってもちろん有用なことですし、そうしていかなきゃいけないと思っています。

質疑応答:私募REITにおける投資家の想定について

質問者:1点目は私募REITについてです。私募REITを購入される投資家さんは、どのような層を想定していますか?

2点目が、JR東日本さんはこの間、金融事業に進出されたということで、御社も将来的に、そういうことを考えているのかなというところをおうかがいしたいです。

山村:1点目の私募REITにおける投資家の想定ですが、私募REITに売却する上では、私募REIT側に出資や融資をしてくださる方を募集しなければならず、けっこう好調だと聞いています。

数字はちょっと把握していませんが、ある程度、利回りがいいと聞いています。具体的な投資家像については把握はしていませんが、銀行をはじめ、さまざまな出資者、あるいは融資先を募っていて、好調であると聞いています。

それから、金融事業など、さまざまな成長分野に対するアイデアを今、2025年、2026年、2027年の3ヶ年の中計に込めています。アイデアを募集中です。来年の、年度が変わったところで発表できると思いますが、前例に囚われないアイデアが、いろいろ出ています。

この中で、金融事業があったかどうかは定かではありませんが、そういったことも、今までの先入観なしに取り組んでいければと思っています。アイデアを社員から募っていきたいと思います。社員にとっても、自分がアイデアを持って言ったことが、経営の中に取り込めたというところで、エンゲージメントの向上になるので、先入観なく、いろいろ考えていきたいと思っています。