会社概要

広木太氏(以下、広木):株式会社BeeX代表取締役社長の広木です。リアルタイムでご覧いただいているみなさま、休日の朝から当社のIRセミナーにご参加いただき誠にありがとうございます。

当社について、IT業界の方は何となくイメージがつくかと思いますが、そうでない方には、「何を行っている会社かよくわからない」という点もあるかと思います。少しでも当社のことを知っていただけるよう、本日はご説明させていただきます。

会社概要です。当社は2016年3月に創業し、現在は従業員数169名の会社です。事業内容は、クラウド関連の導入・保守・管理事業およびソフトウェア、アプリケーション開発を行っています。

当社の大きな特徴は、クラウドを専業にしているところです。同様のIT業界のシステムインテグレーターは、クラウドから従来型のオンプレミスまで幅広く行っている会社が多いですが、当社はクラウドに特化しています。

そのためクラウドに関して非常に高い専門性を持っており、IT業界の中でもユニークな立ち位置となっています。

BeeXビジネス領域

広木:スライドに示すとおり、クラウドにはさまざまな形態があり、大きく3つに分類されます。スライド下段のIaaS(Infrastructure as a Service)は、ハードウェアユニットやデータストレージ、ネットワークなど、コンピューターのシステムを動かすための一番基礎となる部分をサービスとして提供しています。

スライド中段のPaaS(Platform as a Service)は、IaaSよりも上のレイヤーで、データベースなど、いろいろなアプリケーションを動かすミドルウェアをサービスとして提供しています。

スライド上段のSaaS(Software as a Service)は、必要なソフトウェアをサービスとして提供しています。例えばSalesforceは営業を管理するためのサービスを、Sansanは名刺を管理するためのサービスを提供しています。

このように、クラウドといった時に一番わかりやすいのがSaaSになります。しかしながらIaaSやPaaSといった、いわゆる部品を提供しているサービスも非常に大きな市場となっています。当社ではこのIaaSとPaaSを扱っており、これも大きな特徴となっています。

当社は、すでに出来上がっているサービスや特定のサービスを提供するのではなく、IaaSやPaaSという部品を使ってシステムを最適なかたちを構築し、運用していくビジネスになります。

クラウドベンダー市場動向

広木:IaaSやPaaSにはいろいろなプラットフォーマーがいますが、世界ではすでに勝負がついており、次の3つにほぼ集約されています。

Amazonが提供している「AWS(Amazon Web Services)」、Microsoftが提供している「Azure」、Googleが提供している「Google Cloud」です。この3社が市場の63パーセントを占めています。

ナンバーワンはAWSで、そのあとをMicrosoftとGoogleが追いかけている状況です。

BeeXのマルチクラウド対応力

広木:BeeXはこれらのどこかに特化しているわけではなく、現在お客さまに選ばれている「AWS」「Azure」「Google Cloud」の3つすべてに対応しています。

もともとは「AWS」が中心でしたが、お客さまのクラウド利用が進むにつれ、「このシステムは『AWS』を使いたいが、こちらはMicrosoftのほうが良さそうだね」「データ分析は、Googleが良いみたい」など、徐々に企業の中で使い分けが進んできました。

したがって、1つだけに特化しているとお客さまのニーズに対応できないことが増えてきたため、この主要な3つを取り扱うことになりました。

一方で、当社は以前から「AWS」を取り扱っており、一番長いパートナーでもあります。サービスパートナーに関しても、スライドに示すとおり細かく記載がありますが、「AWS」に関しては、「プレミアティアサービスパートナー」という最上位のランクに位置づけられています。

現在日本では、15社が「プレミアティアサービスパートナー」に認定されています。多くは大手SIerであり、例えば当社にも出資していただいているNTTデータやTISなど大手が中心となっています。

その中で200人に満たない規模の当社が認定されたということは、多くの実績とお客さまからの評価を「AWS」にも認めていただいたということになります。大手に負けない実績とノウハウを持っていることをAWSにもお墨付きいただいたということになります。

また当社は、SAP認定パートナーでもあります。SAPについてはIT業界にいないとなじみがないと思いますが、ERPと呼ばれるパッケージを提供しているドイツの会社になります。ERPとは、企業会計や受発注、生産管理、人事管理など、企業のリソースをすべて管理するパッケージです。

当社はSAPの認定パートナーとなり、SAPをクラウドと組み合わせて提供しています。このように企業の基幹システムと呼ばれる重要なシステムを取り扱っている点は、クラウド専業のインテグレーターの中でも大きな特徴であると思っています。

kenmo氏(以下、kenmo):SAPの領域に進出していったタイミングやきっかけを教えてください。

広木:私は現在、社長という肩書でビジネスをしていますが、もともとはSAP関連のコンサルタントをしていました。そしてSAPからのコンサルタントが集まってできたのがBeeXです。

2016年頃は、「SAPをクラウドで動かすなんて、とんでもない」「このような重要なシステムを、クラウドという不安定なところで動かすのか?」と思われるような時代でした。

それに対して我々は「クラウドで動かすことによって、お客さまのバリューが出てくる」というところに特化して、ビジネスを展開していくことになりました。そして仲間が集まってできたのがBeeXということもあり、SAPに関しては実は事業のスタートになっています。

事業内容

広木:事業内容をご説明します。スライドに示すとおり、当社では3つの事業を展開しています。1つ目が「クラウドインテグレーション」で、いわゆるシステムの構築です。お客さまのクラウド導入時にコンサルティングを行い、実際のシステムの構築・導入、あるいは従来のオンプレミス型のものから移行するといったインテグレーションを行っています。

2つ目は「クラウドライセンスリセール」で、クラウドのライセンス販売を行っています。ライセンス販売というと、例えば「1,000万円のパッケージを売って終わり」といった一過性のビジネスをイメージされがちです。しかしこちらは、電気代や携帯電話代のように、毎月お客さまの利用状況に応じて対価をいただくという、いわゆるストック型のビジネスとなっています。

3つ目は「マネージドサービスプロバイダー(MSP)」で、いわゆる運用・保守を行っています。こちらは、クラウドインテグレーションでシステムを作った後のサービスになります。

このMSPでは、SAPのような企業の重要なシステムを監視しています。夜間などにトラブルが発生してしまうと、お客さまの事業に大きなダメージを与えてしまいます。そのため24時間365日監視して、なにかあった場合には障害対応するというサービスになります。

またクラウドは、どんどん新しい機能が出てきたり、昨日できなかったことが今日できたりと日進月歩で進化しています。そのためお客さまに対して、「新機能が出たため、このような運用改善ができます」といった提案やサービスを提供しています。こちらも毎月の対価をいただくストック型ビジネスです。

このように、クラウドインテグレーションがフロー型、クラウドライセンスリセールとMSPがストック型となっています。安定したストックがある上で、さまざまなクラウドインテグレーションができていることが、我々のビジネスモデルの強みです。

お客様の基幹システムクラウド移行支援

広木:先ほどSAPについてご説明しましたが、このクラウドインテグレーションに関しても、多くのパートナーがいらっしゃいます。BeeXの得意分野や、他社との違いについてご説明します。

まず1つ目に、当社は基幹システムのクラウド移行支援を大きな強みとしています。中でもSAPのような、企業にとって重要なシステムの移行に関しては、他社にはないノウハウを持っています。

クラウドは、サービス提供開始当初は、どちらかというとゲームなどエンタメ系を中心に利用されてきた部分があります。しかし我々は完全に企業の重要なシステムに特化しているという点が特徴になります。

クラウドインテグレーションに伴い、クラウドライセンスリセールとMSPの部分も非常に大きなものになるというのも、当社の強みになります。

豊富な導入実績 (基幹システムSAP)

広木:2つ目の強みは、大手企業を中心とした顧客基盤を持っている点です。SAPというシステムは、かなり高額なパッケージソフトです。日本でもかなり多くの大企業で導入されていますが、中小企業に導入していただくには、ライセンス費用や導入費用も含めて、なかなか敷居が高いものになっています。

そのため、当社のお客さまはいわゆる大企業あるいは中堅企業が中心になります。スライドに当社のお客さまを記載していますが、大企業が中心です。名のあるお客さまと直接のリレーションを図れており、しっかりとした顧客基盤があるところが、我々の非常に大きな強みになります。

従業員数が200人に満たない、そしてまだ創業から10年も経っていない会社が、このような大企業と直接お付き合いできていることは、なかなかないと思います。この部分が我々の非常に大きな強みになっています。

マルチクラウドリセール&マネージドサービス

広木:3つ目の強みは、ストック型のビジネスです。クラウドインテグレーションで、お客さまから「このようなシステムを作ってほしい」というリクエストをいただき構築するというフロー型のビジネスを繰り返しているだけでなく、ストック型の安定した売上があるという状態が続いています。

当社ではストック型の売上が7割程度あります。したがって安定した売上と安定した利益を得ているところも我々の大きな強みであり、特徴的なビジネスモデルでもあります。

豊富な導入実績 (基幹システムSAP)

kenmo:豊富な導入実績のご説明の際に、小規模な会社でありながら大手企業と取引ができているというお話がありました。

同業他社がいらっしゃる中で大手企業と対等に勝負できるというのは、技術力の高さが背景にあると思います。御社の組織としての技術力の源泉、企業風土、教育体制、技術承継など、そのあたりについて詳しく教えていただけますか?

広木:繰り返しのお話になってしまいますが、当社はSAPなどの基幹システムを中心に手掛けており、さらにクラウドを専業にしていることもあり、クラウドと基幹システムの組み合わせで言えば、日本でもトップクラスのスキルを持っていると思っています。

例えば当社のお客さまの中には、「他社にクラウドに関して相談をしたところ、保守的な提案をされた」という方もいらっしゃいます。やはり企業の重要なシステムを扱うということで、そのような対応をされたのだと思います。

そこで「これは正しい提案なのだろうか?」といった疑問を持ったお客さまが、我々に相談にいらっしゃいます。「我々ならば、例えば他社が2年で行うところを1年ぐらいでできます」という、技術力やクラウドに特化した攻めの姿勢に多くの高評価をいただいています。

社員に対しても、そのような攻めの姿勢を大事にするようにと伝えています。一方で、我々は企業の基幹システムという重要なシステムを扱っています。したがって、この攻めの姿勢と守りの姿勢の両方を大切にしていく必要があります。

我々は「For カスタマー」ではなく、「With カスタマー」と社員に伝えています。これは「お客さまと一緒に成長し、変革していこう」というマインドを徹底するためです。その部分が、お客さまにも姿勢として伝わっていると思っています。

kenmo:小規模であるがゆえ、スピード感があるということですね。

広木:おっしゃるとおりです。そこが高く評価されている点になります。

業績推移 売上高・経常利益

広木:業績推移についてご説明します。スライドは創業以来の売上高・経常利益の推移です。売上高は、創業以来右肩上がりで成長しています。経常利益も若干凸凹はあるものの、基本的に右肩上がりの増益基調となっています。

特に2024年2月期においては、売上高・経常利益ともに、非常に大きく成長することができました。

業績サマリ 前年同期比較

広木:スライドは、直近である2025年2月期第1四半期の業績です。売上高は前年同期比34.2パーセント増、営業利益は前年同期比36.9パーセント増と、継続して高い成長を実現しています。

サービス別売上高

広木:サービス別の売上高です。スライドのグラフの点線で囲われた部分がストック型の部分になります。グラフに示すとおり7割近くがストック型で占めており、順調に積み上がっています。

新規のお客さまがクラウドインテグレーションでクラウドに移行すると、ライセンスリセールやMSPなどがついていくため、売上も随時上がっていきます。このビジネスモデルが我々の強みとなっています。

kenmo:今期第1四半期のクラウドインテグレーションの業績について、非常に伸びている印象です。これは特需的なものがあったのでしょうか? それとも別の要因があるのでしょうか?

広木:こちらは特需的なところがありました。官公庁向けのかなり大規模な案件があり、それが第1四半期の売上となりました。1プロジェクトで1億円規模という、我々の会社としては非常に大きな規模だったため、特需的に売上増となりました。ただ、SAPの大型案件も含めて、昨年から他の案件もしっかりと伸びてきた影響も併せてあるかと思います。

kenmo:2022年度にクラウドインテグレーションが比較的落ち込んだタイミングがあると思いますが、この要因は何だったのでしょうか? 

広木:これは2022年度が落ち込んだというより、その前年度の2021年度に大規模案件があったことが要因となっています。この時の売上規模は今と比べてかなり低かったのですが、1プロジェクトで年間5億円という、かなり大規模なSAPのプロジェクトがあり、その影響もあり非常に伸びていました。翌期はその影響で少し伸び悩みましたが、その後はまた引き続き成長しています。

kenmo:直近ではクラウドインテグレーションが非常に伸びている印象です。この好調の背景についてお聞かせください。 

広木:1つはSAPの移行です。クラウド化と併せて、現在「2027年問題」とも言われている、新しいバージョンへのアップグレード・コンバージョンに市場として取り組まなければいけないのですが、その需要が非常に大きくなっています。こちらについては後ほど、成長戦略などでもお話しします。

他には、最近のDXの流れでクラウド化のニーズが非常に高くなっており、この点でも売上が伸びています。

クラウドライセンスリセール売上の推移

広木:スライドのグラフは、クラウドライセンスリセールの売上推移です。グラフに示すとおり、右肩上がりで成長し続けています。前期の第4四半期のみ、クラウドライセンスの長期契約によるボリュームディスカウントの影響で一瞬へこんだものの、その後は再度成長を続けています。

クラウドライセンスリセールビジネスアカウント数推移

広木:クラウドライセンスリセールのビジネスアカウント数です。こちらは顧客数ではなく、ライセンスの契約数です。こちらもグラフに示すとおり、しっかりと契約数が伸びています。

マネージドサービスプロバイダー売上、ユーザー数の推移

広木:スライドのグラフは、同じくストック型のマネージドサービスプロバイダーの売上と顧客数の推移です。こちらも売上が順調に伸びており、顧客数も増えてきています。

このようにストック型ビジネスがしっかりと伸びており、その上でクラウドインテグレーションも好調という状況です。

2025年2月期 業績予想

広木:2025年2月期の業績予想です。売上高は前期比23パーセント増、経常利益は前期比5.3パーセント増と予想しています。

売上に関しては、ストック型のクラウドライセンスリセールは引き続きしっかりと伸ばしていける見込みであることと、さらにクラウドインテグレーションも好調であることから、予想の水準程度は伸ばせるだろうと考えています。

2025年2月期 業績予想のポイント

広木:「売上に対して利益が低いのではないか」と思われるかもしれませんが、我々としてはスライドに示した2点について、今年はしっかりと投資していきたいと思っています。これは来年度以降の成長のための投資となります。

1つ目はマーケティング戦略です。我々はクラウドインテグレーターと位置づけられていますが、SAPの領域で我々の名前が知られ始めたところもあり、いろいろなお客さまからお引き合いいただいています。しかしながら、それ以外の部分やクラウドライセンスリセールなどに関しては、まだまだ知名度が低いのが現状です。まずは我々を知っていただくための投資をしていきたいと思います。

特にここ数年はコロナ禍のため、なかなかリアルイベントができませんでした。しかしながら対面でお客さまと接するイベントは重要だと考えており、今年はリアルイベントを積極的に行いたいと考えています。

2つ目が人材採用・育成戦略です。特にクラウドインテグレーションでは、優秀なエンジニアの採用と教育が重要となってきます。どの会社も人材不足の状況のため、優秀なエンジニアを採用し育成していくことについては、現在非常に競争が激しくなっています。我々もエンジニアの採用や採用後の教育にしっかり投資していき、来年度以降の成長に備えたいと考えています。

2025年2月期 業績予想 進捗状況

広木:業績予想に対する直近の進捗率です。今第1四半期は、売上高は23.8パーセント、各段階利益はすでに30パーセント超となっており、順調に推移していると考えています。

SAPシステムのクラウド化・S/4HANA化支援

広木:最後に、成長戦略についてお話しします。まず1つ目は、基幹システムのクラウド化/モダナイズ化です。先ほど「2027年問題」について触れましたが、現在日本の多くのお客さまが「SAP ERP 6.0」というバージョンを利用しています。

「SAP ERP6.0」の後継バージョンとして「SAP S/4HANA」という新しいバージョンがありますが、まだ新バージョンへのアップグレードが進んでいない状況です。しかしながら、2027年にこの標準サポートが終了してしまいます。お金を払えばサポートを延長してくれるものの、それも2030年に終了することになっています。

「2027年にはまだ3年ある」と思うかもしれませんが、SAPの導入は短期間で実装できる方法でも1年以上、お客さまによっては3年かかる場合もあります。今から始めても2027年に終わるかどうかという状況であり、今年や来年が非常に重要になると考えています。

実際のところ、私は終わらないと思っています。2030年でもすべてのお客さまが終わるかどうか微妙であるという状況の中、現在非常に多くの引き合いをいただいています。お客さまは新バージョンの「S/4HANA」にアップグレードするか、あわせてクラウド化するかといった選択に迫られています。

「S/4HANA」への移行が特需的であるため、「2030年以降のBeeXは終わりなのか」といったことも聞かれます。しかしながら「S/4HANA」は、移行した後もアップグレードしなければいけないというシステムになっています。

「S/4HANA」は2016年からリリースされていますが、古いバージョンは「S/4HANA」内のアップグレードが必要になります。ベンダーの事情ではあるものの、新バージョンへ更新した後も、さらなるアップグレードが必要になるため、ここをしっかりと伸ばしていかなければいけないと考えています。

日本の多くの大企業が導入しているため、ある意味では社会課題の1つと言えるかもしれません。したがって、人材を揃えて伸ばしていける領域であると考えています。そのため先ほどの人材採用も含めて、ここはしっかりと伸ばしていく必要のある領域だと考えています。

kenmo:SAPの「2027年問題」は非常に関心が高いと思います。直近のお客さまの状況としては、すでにクラウド化を進めているところが多いのか、まだまったく手がついていないのか、お客さまの温度感を教えていただけますか?

広木:日本の企業のクラウド化については、我々の創業時に比べるとかなり進んでいるものの、まだオンプレミスで動いているものがかなり多い状況です。またクラウド化したものの、新バージョンの「S/4HANA」への移行ができていないというお客さまがほとんどです。

kenmo:この先、ニーズがどんどん増え、多数の受注があると思います。その中で御社は、どのような組織体制を構築して対応していくのか教えてください。

広木:最も厳しい部分ではありますが、1つはエンジニアの採用を継続して進めていきます。即戦力のみの採用は厳しい部分もあり、やはり人の育成が重要だと考えています。例えば、今までSAPを手掛けてこなかったエンジニアをSAPのエンジニアにするといった育成にも努めています。

しかしながら社員だけでは厳しい部分もあるため、パートナーの開拓も重要です。今も多くのビジネスパートナーと一緒に仕事していますが、信頼関係を構築して一緒に取り組んでいただけるパートナーを、さらに開拓できるかを重要視しています。

このように、採用・教育・ビジネスパートナーの開拓という3点に、引き続き力を入れていきたいと考えています。

kenmo:SAPの人材は世の中的にも圧倒的に不足しているかと思います。御社内ではSAP人材の育成もされていますか?

広木:行っています。創業当時はお客さまに迷惑をかけないように即戦力の採用を重視していましたが、最近は即戦力採用だけでは難しいため、他のIT経験やクラウドの基礎知識を持っている第二新卒などの人材を採用して、SAPに関する教育を行っています。

また、効率化についても力を入れています。工数を最小化して顧客のニーズに答えることも重要だと思っており、それも合わせて取り組んでいます。

SAP サラウンドソリューション

広木:SAPサラウンドソリューションについてご説明します。マイクロソフトも取り上げているキーワードですが、当社も力を入れています。特にデータ活用について、SAPをクラウドに上げても、そこには企業の基幹システムで非常に重要なデータが残っているわけです。

このようなデータを集める、あるいはSAPだけではなく、工場や生産ラインのデータはSAPの中に入っていないこともあるため、そのようなデータを集めて分析する基盤を作り、いわゆるデータドリブンな経営に変えていくことに、今は非常に力を入れています。

SAPサラウンドソリューションではクラウドに上げて終わりではなく、よりデータを活用・推進していくことが、重要な肝になると思っています。ここが、成長分野としてさらに力を入れている分野です。

デジタルトランスフォーメーション市場

広木:デジタルトランスフォーメーション(DX)市場です。スライドに示すように、DX市場は今後も非常に成長し続けていくと見込んでいます。

デジタルトランスフォーメーションとは?

広木:コロナ禍でDXが注目された時、日本では働き方改革のほうに力を入れていました。それももちろんDXではありますが、本筋である攻めのDXではないところがありました。

本物のDXとは、「データとデジタル技術を活用して新しい変革をしていこう」というものです。この「データ活用」が非常に重要になります。単純なIT化やクラウド導入は、あくまでも「デジタル化」であり、「デジタルトランスフォーメーション」ではありません。

これまで人間の勘や経験に頼っていた部分を、いかにデータに基づいて変革していくかが重要だと言われています。これは今後の人口減ともリンクしますが、ここが「企業の文化を変えていくということが重要である」と言われているところです。いわゆるデジタルトランスフォーメーションとは、ITだけではなく企業の文化も変えていかなければいけないものなのです。

データプラットフォーム構築/アプリケーション開発

広木:我々がそこに対して何を行っているかについてご説明します。先ほどのSAPでも触れましたが、まずはデータドリブンに変えていくために、データを見えるようにしています。今まで散らばってたり、捨てていたデータなどをしっかりと貯めて、そこから新しいインサイトを得るための基盤作りや、文化作りのお手伝いをしています。

もう1つは、モダンアプリ開発という、新しいアプリケーション開発を行っています。DXのために新しいビジネスを作ると、必ずITを使ったシステムの開発が発生します。そのような、新しいクラウドを活用したアプリケーション開発を行っています。

また、DXではお客さま自身が内製化できるようにすることが大事です。日本でDX化が遅れているのは、我々のようなインテグレーターにすべての開発や運用を委託することが多いことが一因と言えます。

例えばアメリカでは、お客さま自身がまずいろいろなものを作り、自分たちでできないところを外部に頼むというかたちになっています。しかし日本ではすべてをインテグレーターに頼む傾向があります。そのため私たちが儲かっている面もありますが、DXにとってはあまりいい方法ではありません。

そのため当社では、お客さま自身が内製化して、例えば「これを試してみたい」といった時に、素早く対応できるようなノウハウ提供もしています。

バイモータルの対応力

広木:今の話と重複しますが、数年前からバイモータルという話が出てきています。ガートナー社が以前から唱えており、私はこの言葉が好きなためよく使っています。これはものを作る時には、2つのモードがあるということです。

モード1が、従来型のいわゆるウォーターフォールと呼ばれる、川上から川下へと工程を守って作る方法です。道路工事やビル建設はしっかりと工程を守らないと危険なため、これはこれで正しい方法であり、日本人が得意としています。

一方、最近のDXアプリなどのもの作りは、モード2でなくてはいけません。モード1のように工程を守っていると、いつまでも完成しないためです。ある程度まで作ってリリースし、フィードバックを得て直していくという方法です。スマホのアプリはまさにそのような工程で作られています。

日本人は、このモード2があまり得意ではありません。工程を守るほうが得意で、ポッと作ってフィードバックをもらうといった方法は、日本人の体質にあまり合っていない部分があります。だからこそ、モード2にも取り組まなければいけません。

一方で「モード1からモード2にしなければいけない」という言い方をすることもありますが、そうではなく、両方が必要です。バイモータルのため、両方をしっかりできるようにすることが重要です。SAPはどちらかというとモード1の世界ですが、DXのためのアプリケーションなどはモード2です。

クラウドはモード2が主軸であるため、我々は両方できる会社です。両方を含めてお客さまにいろいろな内製化支援を行っている点が、我々のポイントです。

豊富な導入実績 (デジタルトランスフォーメーション)

広木:代表的な事例をご紹介します。ロッテさまは「さまざまな開発を内製化したいが、方法がわからない、また最適なアーキテクチャになっているか不安である」とのことでした。私たちはクラウドインテグレーターとして、アーキテクチャの設計方法や開発の仕方を提供しながら、ともに成長するよう支援しています。

ENEOSさまについては、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の開発に参画しています。ENEOSはご存知のとおり石油化学の会社ですが、新しいエネルギーマネージメントビジネスに参入しています。そのためのマネジメントシステムの開発を内製化支援というかたちで支援しています。

AGCさまについては、「デジタルツイン」と呼ばれる物理で起きていることをデジタル上で再現するという領域のご支援をおこなっています。こちらも内製化支援という形で支援させていただきています。

このように、新しいビジネス展開やデータドリブンへの移行を私たちがすべて行うのではなく、お客さまとともに取り組んでいくことに力を入れています。

安全かつ効率的な生成AI環境構築支援サービスを提供開始

広木:そのほか、DXで外せないのは生成AIです。まだ多くのお客さまがさまざまなものを試している状況であり、この段階でビジネスとして積極的に外向けにシステムを作っている会社は少ないと思います。

ここで特に重要になるのが、セキュリティ面です。企業の重要なデータが外部に漏洩してしまう可能性があるため、セキュリティを担保して生成AIをどのように利用していくかについて、基盤作りや仕組み作りをパッケージ化するなどして、今年度から提供を開始しています。

マルチクラウド対応マネージドサービス

広木:最後に、ストック型ビジネスについてご説明します。先ほどお話ししたように、当社ではクラウドライセンスリセールとMSPを展開しています。

公共部門での認定を取得

広木:クラウドライセンスリセールについては、従来、我々のシステムはどちらかというとエンタープライズ企業向けでしたが、先ほど第1四半期の好調の要因としてお話ししたように、最近は官公庁向けの案件も扱っています。

このような公共部門に関しても、ライセンスを販売する時にはAWSの許可が必要です。私たちは「AWS公共部門ソリューションプロバイダー認定」により、企業だけでなく、今後は公共部門への販売拡大を模索するための新しい取り組みを行っています。

AWSクラウド伴走支援サービス

広木:内製化支援についても、さまざまなお客さまに対応してきました。この支援をより活用しやすくできるように「サブスク化」して提供するなど、いかに企業の内製化支援を私たちのストックビジネスに転換していくか、チャレンジしています。

セキュリティソリューションの提供

広木:セキュリティについてです。クラウドはインターネット上にあるため、やはりセキュリティ的な問題が起きる可能性があります。

今までのオンプレミスはシステムが企業の中にあるため、初めにしっかり設計しておけば、そこまで大きな事故は起きませんでした。一方クラウドは、誰かがなにか間違った設定を行うと、そこからデータが漏洩する可能性があります。

「予防統制」「発見統制」という言葉がありますが、今までは予防に力を入れておけばなんとかなったものが、今はより早く問題を発見しなければいけません。これは人間の力では限界があるため、AIなどを活用しながら、自動的に見つけて自動的に修正するようなサービスが必要です。

企業は次々とクラウドに移行しているため、クラウドを安心・安全に使うセキュリティ部分も合わせて開発することに力を入れています。

マネージドサービスの推進

広木:MSPも、従来型は「モニタリング」と言われ、なにか問題が起きた時にいち早く見つけて対応するものが中心でした。新しいストック型ビジネスとして、問題が起きる前に発見して手を打つようなオブザーバビリティサービスを提供しています。

また、先ほどお伝えした内製化支援の伴走型サービスについてもサブスク化して提供するなど、MSP自体も従来型から新しいかたちへ進化させながら、お客さまの業務改善に役立っていきたいと考えています。

Our Vision

広木:この3つの成長戦略のうち、企業の基幹システムをモダナイズ化し、新しいデータドリブンのかたちに変えていくことが重要だと思っています。そこに新しい生成AIや従来型のAIを活用していき、我々のビジネスモデルとして、フロー型の一過性ではなくストック型で伸ばしていきます。

私からのご説明は以上です。ありがとうございました。

質疑応答:社員の年齢構成の背景について

kenmo:まず、人材が一番の肝かと思いますが、御社は社員の平均年齢が約40歳とうかがっています。グロース企業にしてはかなりベテラン人材が多い印象を受けるのですが、このような年齢構成になっている背景を教えてください。

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