米国利下げの可能性と経済指標への影響
須貝茉彩氏(以下、須貝):みなさま、こんばんは。本日は「広木隆のMonday Night Live」をご視聴いただきまして、ありがとうございます。MCを務めます、須貝茉彩です。さて、本日もご質問につきましてはお1人さま1つとさせていただきます。また、不適切と思われる投稿をされたご視聴者さまについては、それ以降、投稿を制限させていただきます。ご了承ください。
そして、1つお知らせですが、来週、6月17日、そして再来週、6月24日の「Monday Night Live」はお休みとなります。次回は7月1日月曜日を予定しています。
さあ、ということで先週末、アメリカの雇用統計を通過しまして、今週は日米の金融政策ウィーク、そしてCPI(消費者物価指数)の発表もありますが、注目どころがたくさんありますね。
広木隆氏(以下、広木):そうですね。本当に今週は、大きな材料が目白押しですね。
そういう中で、まずは「FOMC」がどうなるかというね。焦点は、利下げの回数ですね。年初からずっと、「今年は3回」というふうに来ていたんですが、もう年半分終わっちゃって6月ですからね。まだいつ利上げ、利下げが開始できるかが見通せないということになると、当然、年3回の予想はもう結果的に修正しなきゃいけないということで、1回減って年2回という見方が多かったんですが、「FedWatch」で言うと、直近では、もう年1回くらいになっちゃっているんですね。
だから当然、この6月はなくて、7月もスキップ、9月もスキップ、11月に1回利下げがあると、0.25パーセント、という見通しが今、メインシナリオじゃないかなと(思います)。雇用統計とかを見ていると、今から3ヶ月後の9月にやるというのも、なかなか考えにくいですよね。なので、おそらく年1回くらいになるんじゃないかなと(思います)。
FedWatchではもう、そうは言っているけれど、今までのドットチャートが年3回の見通しだったものが、一気に年1回になった場合、マーケットではどういう反応が出るか。これはちょっとやっぱり怖いな、見ものだなと思います。そのあたりが、週前半の最大のポイントでしょうね。
世界に逆行する日本の金融政策
次は、日銀の金融政策決定会合についてです。さすがに6月は追加利上げはありませんが、利上げに関しては、7月という説も、だいぶマーケットでは言われているので、そこへの布石みたいなものが出てくるかどうかということが1つ。
あと、今回の6月の会合では、国債買い入れの減額についての、なにかしらの決定ないしアナウンスがあるんじゃないかと思います。今は、月6兆円くらいやっているんですが、それを5兆円くらいに減らすんだろうと。別にそれ自体は、本格的なQTの開始にはまだならないので、「そのくらいだったらいい」とは言われていますけれど。
逆にじゃあ、QTに向かうための、また一歩、布石を打つとなると、量的な緩和も縮小して、金利のほうもまたマイナス金利解除してと、7月に次へのステップとなると、本当に着実に、この環境下で金融引き締めの方向に動いています。
世界の先進国の中央銀行がみんな今、利下げモードに入っている中で、先週(※動画公開当時)はECBが、約4年9ヶ月ぶりにやりました。カナダ中銀もやるなど、世界がみんな利下げモードになっている中で、日銀だけが真逆の方向なんですよね。
それが本当にどうなんだろう? というのが、実は僕が今日アップした「ストラテジーレポート」に書いたことです。
たぶん、今日いっぱいいろいろな質問が来ていると思うんですが、それの答えは、はっきり言って全部これです。全部、日本の金融政策が世界に逆行している。まあ、世界に逆行しているのは、別に構わないんですよ。今まで、インフレを抑制するためにみんなが利上げしている時に、日銀だけがずっと異次元緩和を維持していたから、別に他と同じことをする必要はまったくないんです。
その姿勢を貫くというのは、すごくすばらしいことだから、それはそれでぜんぜんいいんです。
ただ、日本の経済の現状に逆行した金融政策は、おかしいだろうということなんですね。つまり、利上げをするのであれば、これまで海外の中央銀行がやっていたように、「景気が過熱してインフレがぜんぜん抑制できない」「だから利上げをしてインフレを抑制するんです」という明確な経済の状況があって、それに応じた金融政策をとるというのであれば、これはいいわけです。ただ、日本はまったくそんな状況にないじゃないですか。
それなのに、単に金融政策の正常化ということだけで、そっちの方向にガンガンガンガン進んでいくのは、明らかに政策がおかしいと僕は思っているので。そういうおかしい金融政策をとる国の株価は、基本的には上がらないという見え方なんですよ。
じゃあ日経平均はどうかと言うと、これまで結局いろいろなことを言われていますが、やっぱりすごく値嵩株主導の非常にいびつな指数なので、3万9,000円を回復だとかなんだとかと言うのは、あまり僕は意味があることではないと思っているんですね。アメリカの株価が再び最高値を更新する中で、別に4万円にはまだ戻っていないわけです。だから、たぶんこれが答えなんだと思うんです。
この後、いっぱい個別銘柄の質問が来ると思いますが、基本的にこういう環境では日本の株価は上がらないんです。よっぽど何か材料がある株であれば上がるけれど、そうじゃない株は上がらない。だから弱いという、この一言に尽きるので。全部の質問をまとめて、後でその一言で答えてもいいんだけど、とりあえず最初にこういう頭出しをしておきます。
須貝:なるほど。わかりました。ありがとうございます。今週はパウエル議長、そして植田総裁の発言にも注目ですね。
日経平均株価の最高値更新に必要な要因とは?
須貝:では、さっそく今日の質問に入ってまいります。まず、今、お話がありましたが、サウスローレルさんから、「日経平均4万円をつけてから足踏み状態が続き、3万8,000円台で足踏みが続いています。今後、最高値を更新するにはどんな要因が必要だとお考えでしょうか?」という質問が来ています。
広木:やはり一番大きいのは、株価のファンダメンタルズなので、企業業績が一番のドライバーになると思います。企業業績がもう1回、力強く増えるという見通しが、日経平均が4万円にいく一番の支援材料です。やはり株価というのは、企業業績を反映して動く、というのが原則論なので。
ところが今、足元に出ているのは、「今期は業績があんまり伸びません」「ぱっとしません」というものです。トヨタ自動車の要因などいろいろありますが、事実は事実なので。これまで3年連続で最高益を更新してきた日本の上場企業の業績が、今年度は足踏み、踊り場ということの今、見通しになっているわけですね。
そういう時って、当たり前ですが大概株価も踊り場になるんですよ。「ずっと上がってきました」「これまですごく上がってきた」と、年度初めに4万円をつけたわけですが、そこでいったん踊り場になっても何もおかしくはないです。企業業績がそのまま踊り場になっちゃえば、ということだと思うので。
今は、若干ながら減益の予想です。たぶんこれは修正されて、結局、横ばいなんだと思うんですよね。2桁増益という感じには、一気にはならないとは思います。これまで引っ張ってきた為替がガンガン円安にいく感じではない。企業が想定しているほど円高にも巻き戻らないとは思うのですが、その為替の支援材料が抜けるというのが1つあります。
これから、例えば人件費が上がるとか、コストプッシュの要因がいろいろあります。実際問題、年初から、自動車の品質不正問題によって操業停止とかになっちゃっているんですが、ダイハツの時はあれでもう鉱工業生産が落ち込んで、GDPもマイナスになりました。
今回はトヨタとかホンダとかマツダとかヤマハとか、だーっと広がってどうなることかと思ったけれど、実際は、工場を止めたりとか、生産を止めたりとかしていないので、実はそれほど影響は大きくないんですよね。
ただ、自動車産業は、本当に産業の裾野が広いのでこれも本当にどうなるかはわかりません。
いろいろな影響があると、実際作れなかったり売れなかったりするのはやはり事実ですから。そういうのが、しわ寄せとしてじわじわじわじわ来るのも、やはり企業業績だとか日本の景気だとかに対して爆発力をもたらさないですよね。
そう考えると、企業業績がすごくガーンと伸びるという見方が、何によってサポートされるか、まだぜんぜん絵が描けないですよ。
為替はまずないでしょ、と今、言いました。国内の景気とか、リーディング産業である自動車とかのいろいろな問題が出てきちゃっているということ。もう1つは、世界の景気が、これからスローダウンに向かうという話です。なぜなら冒頭で言ったように、世界の中央銀行はこれから利下げをしようとしているからですね。景気が過熱してなくて、インフレが収まってきたからできる、いやそうしなきゃいけないと、みんななってきているんですね。
そっちの方向へ向かってるわけだから、世界景気だってぜんぜん強くはない。世界景気に敏感な日本の製造業とかも、別にそんなに稼げる状況にないと考えちゃうと、どこで企業業績を増やしますか? という絵がまだぜんぜん描けない中で厳しいわけですね。
最初からずっとこだわっていますが、日銀が政策としてもう一度緩和を長く続けるんですと言ってくれないと、株はちょっと上がりようがないなと思うんですね。
鉄道株の株価動向
須貝:続いて、ヒロキセイメンジョさんからの質問です。鉄道株のご質問なんですが、本日はもう1件来ているので、こちらを取り上げます。「鉄道株が3月配当日以降、売られています。大口投資家が鉄道セクターをアンダーウエイトしていることはあるのでしょうか? それともJR東日本・西日本の株式分割の影響なのでしょうか?」ということです。
広木:株式分割は別に株価には影響を与えません。むしろ株式分割をすれば買いやすくなるので、それで株価が上がらないとはおかしな話ですね。
分割すれば当然株価は下がりますが、それは名目上というか、テクニカル的に下がるだけであって、いわゆるパフォーマンス的な悪化があるわけがないですよね。そうなったら、誰も株式分割なんかしないので、株式分割の影響はありません。
冒頭に言ったように、今の状況だったら株は下がるのが当たり前で、材料がなかったら買われません。今これだけ何にも材料がないんですから、鉄道株なんて買われるわけがないでしょ。しかるべき位置にあるので、当然の株価がついてるなという感じじゃないでしょうかね。
国内の景気がぱっとするわけでもないし、何かしら金利が下がるわけでもない。みなさんがどこにお住まいかは知りませんが、東日本の系列で言えば、JRって、なんて言ったらいいんだろうな、どこで稼ぐんですかって話なんですよね。
例えばJR東海は、東海道新幹線というドル箱の路線があるから、要はビジネス需要で、景気にかなり連動するんですよ。
首都圏のJRって、鉄道を動かしてその運賃、鉄道運賃が収入源であるのは間違いないんですが、それ以外に、アトレとか、ルミネとか、そういう駅ビルがやはり彼らの象徴であり、半分もう不動産業に近い感じなんですよね、沿線に莫大な不動産を持っていますから。そういうものを活用しているわけです。
今不動産会社って、この金利上昇局面で売られているじゃないですか。なので、そういうところに連動しちゃっている部分もあるんじゃないかなと。JRや鉄道各社が、鉄道の運賃で食っているというんだったら、もうまったくのディフェンシブ株で、成長のしようがないわけですよね。だって、日本って人口がどんどん減っていくわけだから。
それを言うんだったら、首都圏に人が流入してるから、JR東は別だよというロジックも成り立つけれど、JR東って、東北まで全部カバーしてるわけです。そういうことを考えちゃうと、結局、不採算路線だっていっぱいあるわけで、もはやJRは鉄道だけで食っているわけじゃなくて、先ほど言ったとおり、ルミネとかアトレとかの不動産会社みたいな色彩があるわけです。
Suicaのような電子マネー、今ものすごいじゃない。Suicaなんて、スマホにも入っていたり、いろいろな活用方法があります。じゃあ、ああいう電子マネーやああいう情報を使って、何かデジタルDXの部分でビジネスを起こせているかというと、ぜんぜん起こせていないですよね。
何にも金になるものをやっていない。あれだけのものすごい情報を持っていて、ポテンシャルはあっても、何かビジネスでマネタイズ、金に変えることができるかというと、ぜんぜんノーアイデアでしょ。
だとすると、買う材料がまったくないんですよね。これは鉄道株だけじゃないんですよ。先ほども言いましたが、日本の株を買う材料がこういう環境ではないんですよ。鉄道なんてのは、その最たるものだろうということです。
須貝:わかりました。
NTT株の今後の展望
須貝:続いてはコトブキさんです。こちらはNTTについてのご質問ですが、本日は、ミッチャンさんからもいただいているので、こちらを取り上げさせていただきます。「NTTが、かなり下げています。今後についての意見を聞かせてください」ということです。
広木:日経新聞のスクランブルって、本当に株式相場欄の名物コラムですが、明日の朝刊か、もうすでに日経電子版では公開されています。
「NTT株、踏ん張れるのか」というテーマなんですね。本当にこれだけずっと下げてきて、要はNTT株下げ止まらないよと。一時150円も割り込んじゃって、年初来安値だという、話なんです。これについて、いろいろ書いてあります。
NISAの期待も多いし、個人もあれだし、というような話なんですが、要は業績が下方修正されて、それをきっかけにという話です。
これが僕が言った、日本株は買えないよねということの象徴だと思うんですよ。NTTと言えば、ある意味、日本株を代表する銘柄ですよ。これだけ株式分割していて、個人が買いやすくて、誰でも知っていて、NTTドコモのキャリアもあって、マネックスさんにしてもすごく関連の深い会社で、ある意味、もう日本の通信のトップ会社で、日本を代表する会社なんですよ。それが年初来安値をずっと更新してる、ずっと売られてるというのは、あるべき姿なんだと思うんです。
日経平均とか見てもわからない。TOPIXを見ていても、最近の金利上昇で銀行株とかが買われちゃっていてTOPIXも意外にしっかりしていると。指数とかを見ちゃうと、わからないんですが、中身を見たら、日本を代表する超一流企業であるNTTの株が上がっていない。個人投資家がこれだけみんな支持していて、株式分割をやっているから、個人の株主もすごく増えている中で、株が下げ続けているっていうのが実態なんです。なので、ぜんぜん不思議なことじゃないです。当たり前でしょ。
株価というのは、業績と金利の関数で、NTTは業績を下方修正したので悪いです。そして日銀は金利を上げます。この株が買われる理由はまったくないです。なので、この状況が変わらないかぎり、株は上がりはしないでしょうね。
ただ下げ止まるというのはあるでしょう。この間も、その配当で買えるところの水準まで来てるからと言ったのですが、今もう配当利回りが3.4%ですからね。下げたと言っても、ほぼ150円で横ばいという感じなので、底値圏には達していると思うんですよ。配当利回りが3%超えてますから。そういった意味では、そろそろいいところではある。
だけど、上がりはしないです。それこそ日本の景気が上向いて、日本株全体がガーッと買われる時とか、外国人がガーッと買いにくる時とか、そういう時じゃないと、たぶん買われない。
やはり一番のファクターは、日銀の姿勢が変わることです。それで金利上昇が止まるってことです。そうなると、この利回りでもぜんぜん買えるし、日本のこういう大型企業に買いが向かうには、とにかく日本の金利がピークアウトする、それを待たないと、NTTの復活はないだろうなとは思います。
オリエンタルランド株の今後の展望
須貝:それにまた似ているのかもしれませんが、カブコゾウさんから「オリエンタルランドの株価が冴えませんが、今後はどうでしょうか?」という質問です。
広木:オリエンタルランドの場合は、自力の成長と言うのかな、要は、単なる金利要因じゃない部分があるけれど、そうは言っても、目先これだけの好材料が出て今の位置なので、やはり日本株全体の弱さに引っ張られちゃっているところはあると思います。
ただ、上がらないだけで、下げ止まってはいると僕は思っているんですよ。今、横ばい圏、底値圏に入っていると思うんですよね。5月にガーンと下がってから、1ヶ月、横ばいが続いていますから、もうそろそろいいところだろうとは思います。この1ヶ月間は横ばいで、下がってはいないので、そろそろ寝頃感も出てきてはいると思いますよ。ただこの株、要はバリエーションで買えるものではまったくないので、そういった意味では本当にドタ勘でしかないわけですけれどね。
4月末の決算発表でガーンと下がって、それを割り込んでいないので、横ばいという感じではある。東京ディズニーシーでは、アナ雪とか新しいエリアができて、材料はこれだけ出たので、あとは結局、ここから新しい集客で顧客満足度を高めていくとか、そういうようなメッセージが会社からどんどん出て、それが市場に認知されてと、そういうことに尽きるのかなという感じはします。
ただ結局、PERが60倍だとか、そういう会社の適正な株価はわからないので、しばらくは見守るしかないんじゃないかなという気がします。
エムスリー株の復活はいつになるのか?
須貝:では続いて岩越さんです。エムスリーについてのご質問なんですが、ハナコ2433さんからもいただいています。「グロースを買っていいのかどうか悩みます。エムスリーの復活はいつになりますか? アメリカの利下げが始まらないと、グロースの復活は難しいのではないでしょうか?」と。
広木:アメリカの利下げ、世界的なそれでグロースの復活はあるかもしれないんと冒頭から言っていますが、日本は逆に利上げでしょ? そうすると結局、日本のグロースも無理で、そもそもエムスリーはここまで来ると、もうグロースという感じではなくなってきちゃっていると思うんですよね。ここまでだめだと、もう投げたほうがいいんじゃないかなと思います。
20倍ぐらいまでPERが上がってくるとね、おそらくもうグロースじゃないもんね。
須貝:はい。
Apple株は利下げにより230ドルを超えると予想
須貝:続いて、えみさんからのご質問です。「Appleの株価が上がってきました。今年中に230ドルを超えるとお考えでしょうか?」ということです。
広木:Appleはキャッシュも資産も莫大にあってなんだってできるので、そこぐらいはいくんじゃないですかね。
やはりマーケット全体がね、ぜんぜん違うし、逆にもうAppleとかは本当に安定性成長銘柄という感じで、ぜんぜんグロースとか関係ないし。
これだけでかくなっちゃうと、もう成長云々という話じゃないですから、あとはもうマーケットなりという感じでいけると思います。アメリカも、今の見通しだと11月ぐらいに利下げという感じなので、それを織り込む過程でもう一段米株が上がって、それで当然Appleも上がるという感じじゃないでしょうか。
半導体株への投資のおすすめは?
須貝:続いてルサルカさん、「半導体株に投資したいのですが、値嵩株が多く、個別株では難しく感じます。半導体に特化したETFか投信を考えていますが、日米どちらが良いでしょうか?」ということです。
広木:この間、半導体指数に連動するETFができましたよね。日経半導体指数に連動するETFを野村証券さんが作ったというニュースを聞いたので、そういうのを買えばいいんじゃないでしょうかね。
須貝:ありがとうございます。
トヨタ株の今後の動向は?
須貝:先ほども自動車関連でトヨタのお話がありましたが、走り屋さんからのご質問です。「トヨタの株価はまだ下がるでしょうか、それとも底値でしょうか?」ということです。
広木:今回のニュースでという意味ですが、別にそんなに下がっていないでしょ。要は日本株の指数と同じように4月ぐらいにピークを打って、そこからずっと下がっているってことですよね。
今日の放送が始まった時に最初に、こういう状況じゃ日本株は上がりませんよと言いました。日本企業の全体の業績は、今までずっと増益増益できていたけれど、今期は頭打ち・横ばい・踊り場、業績は伸びませんと。株価が上がる一番の理由は業績ですから、業績は伸びませんと。
トヨタ自動車がどうかと言うと、今期は2割減益ですからね。トヨタが2割も利益が減ると言っているんですから。
景気がいいとか物が作って売れないとかじゃなくて、いろいろなものに投資して金かけちゃうからだ、みたいなこと言っていたんだけれども、それをはねのけて業績を上げるのが事業会社なんですよね。そんなことも端から放棄しちゃっているぐらいに、「もう今期2割減益です、ごめんなさい」みたいなことを言っちゃって、これじゃあね、株価なんか上がるわけがないですよ。
今回の品質不正がどうのこうのという話じゃなくて、そもそも業績に対してコミットしていないんだから、この段階でだめでしょ。
トヨタは日本一の時価総額の会社で、ザ・ジャパンみたいな、外国人が日本株買う時は当然トヨタ自動車を買うわけだけど、日本の中央銀行が世界に逆行して、日本の景気や企業業績に逆行して、金融引き締めやっていますとなると、そんな国の株価は買えませんよねということになって、金利が上がるわけです。
中央銀行が引き締めによって、業績が2割減る中で金利が上がるみたいな中で日本の株なんか上がるわけがないじゃないですか。日本の株価の代表はトヨタ自動車なんです。
一番良かったのはこの春先で、そこからずっと右肩下がりなんです。これはもう当然の結果だと言っているわけですね。他の銘柄も全部そうだし、まさにトヨタはザ・日本株ですから、こういう状況です。
どこまで下がるかはわかりませんが、まだ下がってもおかしくはないし、この会社はPER10倍ぐらいまであったので、そういう意味ではまだまだ下値もあるでしょう。例の品質不正のどうのこうの以外でも、ファンダメンタルズからもっと下がるだろうと。下がるかどうかはわかりませんが、下げ余地はあるでしょう。下げ止まったとはぜんぜん言えないと思います。
須貝:わかりました。
変わろうとしているJTC株は買われる
須貝:では最後の質問にさせていただきます。ワルノリさんです。「日立製作所が無敵の強さを示しています。強い企業であることはわかっていますが、NVIDIAのような破壊力があるわけではなく、実力以上に将来性を買われているような気がしますが、どう思われますか?」ということです。
広木:日立みたいなのは買われます。日本株全部はだめです。だけど日本株の中でも買える銘柄は当然あって、それの最たるものは、今までだめだったオールドエコノミー、JTC、ジャパン・トラディショナル・カンパニー。古い日本の会社が今ガーッと変わろうとしている。
そういうところはぜんぜん買える。日立なんてその最たるものです。
でも本当にあれだけの大企業で、いっぱい系列抱えていたのを全部解きほぐして、親子上場なんて気づいたら1社もなくなっていて、これからの成長をAIと従前のインフラに集中と選択で特化して、人事制度もどんどんジョブ型雇用に変えていくなど、あれだけ古い日本のオールドエコノミーの大企業だった日立が、これだけ変わってきてるわけです。こういうのは当然のように買われます。
こういう企業は買われるんです。だけどそうじゃない、本当にもう十把一絡げのような日本企業はぜんぜん買われないだろうなと。だから日本株全体が買われてガーっと上がるような、要はマクロ的な買いが入ってこない限りはだめなんですけど、日立とかは、本当に数少ない日本の、個別で投資したいと思うような会社の代表じゃないでしょうかね。
NVIDIAのような破壊力なんかぜんぜんなくてもいいんです。着実に着々と上がってくるじゃないですか。こういうのが最高の株だと思うんですよ。
須貝:わかりました。ありがとうございます。それではお時間になりましたので、本日はここで質問を終了させていただきます。本日も「広木隆のMonday Night Live」をご視聴いただきましてありがとうございました。それでは広木さん、本日もありがとうございました。
広木:どうもありがとうございました。
須貝:また次回お目にかかりましょう。
広木:さようなら。