2024年3月期 決算のポイント
田中伸明氏:みなさま、こんにちは。株式会社ヒップ代表取締役社長の田中です。2024年3月期決算についてご説明します。
業績の概要です。外部環境において、製造業を中心とした顧客企業は、製品開発の積極姿勢を維持しています。当社への技術者需要は引き続き堅調に推移しました。
業績の概況・トピックスは4つあります。1つ目は、売上高は稼動人員の増加、技術料金の上昇により増収となりました。
2つ目は、社員の処遇改善を図ったことで売上原価は増加し、利益面では減益となっています。
3つ目は、2023年7月に金沢営業所を新設しました。現在は採用と営業を強化しています。
4つ目は、創業者逝去にかかわる繰延税金資産(退職慰労引当金)と特別損失(特別功労金)を計上しました。
2024年3月期 決算概要
決算概要についてご説明します。売上高は56億6,000万円で前期比プラス3.4パーセントとなっています。売上原価は43億6,500万円で前期比プラス4.9パーセント、営業利益は5億5,400万円で前期比マイナス4.1パーセント、当期純利益は3億8,800万円で前期比マイナス3.2パーセントとなりました。
技術者に対する処遇改善を行いました。新たな手当を設け、賞与を増額支給した結果、売上原価は前期比プラス4.9パーセントとなっています。
ただし、全体の数字を見ると最終的な営業利益は構成比9.8パーセントを確保しており、当期純利益も6.9パーセントとなっています。今後も社員の処遇改善等をしっかりと推進しながら、利益も十分に確保していきたいと考えています。
稼働率(2022年4月〜2024年3月)
稼働率は、全技術者に対する稼働技術者数の割合を示しています。2024年3月期の稼働率は94.1パーセントで前期比マイナス1.1ポイントとなりました。主な要因は昨年と比べて新卒入社数が増加したことです。
特に第1四半期の4月、5月、6月では、稼働率は若干低く推移しました。しかし、しっかりと教育研修を実施した結果その後の稼働率は向上しました。最終的に3月時点では96.8パーセントと、前期を上回るかたちで終えることができました。
技術者の需要は非常に大きいため、今後もしっかりと教育研修を実施することでお客さまにご提案ができる状況を維持していきます。
技術料金
技術料金は4,090円で前期比プラス88円となりました。スライドには3年前からの数字を示しており、順調に単価が伸びています。
我々は年に1回の契約更新時に、お客さまと交渉を行います。技術者の価値をしっかりとご説明し、ご理解いただいた上で技術者の単価アップを実施しています。
加えて、新たなお客さまへご提案する際には当社の価格表に基づいて契約を進めるため、交渉が順調である結果、平均単価も上昇したと考えています。
技術者数
技術者数は748名で前期比プラス14名となりました。主な内訳は4月新卒59名、10月新卒5名、中途20名の入社となっています。
前期比1.9パーセントの伸びとなりました。当社は一人ひとりの求職者に対して、しっかりと会社や会社方針の説明を行うことで仲間を増やしています。
私も採用に携わっていますが、会社の方向性を示して多くの方に共感いただき、今回の入社につながったと考えています。引き続き積極的な採用姿勢をとっていきます。
稼働時間
1日の稼動時間は8.67時間という結果となりました。前期比ではマイナス0.02時間と若干減少しているものの、おおむね8.6時間から8.8時間の間を推移しており、今後も大幅に減少することはないと想定しています。お客さまのプロジェクトの進捗状況等にもよりますが、引き続き同水準で推移していくと考えています。
売上高 上位10社 比率
売上高の上位10社の比率です。今年度の上位10社の売上高は25.3パーセントで前期比マイナス0.6ポイントとなっています。
当社は特定のお客さまに偏ることなく、幅広いお取引を目指しています。メリットは2つあり、1つ目は経営が安定することです。特定のお客さまや業種に偏ると、業績や開発スケジュールに影響を受ける割合が高くなるため、幅広いお客さまや業種とのお取引は経営の安定につながると考えています。
メリットの2つ目は、技術者の実戦におけるスキルの向上です。技術者がお客さまのプロジェクトに参画して実践を積むことが、本当の意味でスキルを身につけることにつながり、仕事の幅を広げることになります。そのような選択肢を少しでも広げるためには、さまざまな業種やお客さまとの取引が重要と考え、取引先を増やすことを目指してきました。
10年前には、上位10社比率が34パーセント程度でした。そこからさまざまなお客さまに提案を続け、現在は25.3パーセントになっています。引き続きこのような展開で多くのお客さまに提案できるよう営業活動を行っていきます。
事業分野別売上高
続いて事業分野別売上高です。自動車関連は概ね輸送用機器に含まれていますが、非常に高い需要が続いています。
売上高の構成比は、輸送用機器が31.8パーセントでそのうち自動車が大半を占めています。続いて情報処理・ソフトウェア分野で23.8パーセントです。
このように割合が高くなっている要因の1つは自動車メーカー各社が取り組んでいるEV開発です。従来の内燃機関エンジンを中心とした開発、さらにはハイブリッド開発など、カーメーカーは多方面にわたる開発を積極的に行っており、多くの受注をいただいています。
また、情報処理・ソフトウェア分野においても、輸送用機器が高い割合を占めています。それは、現在開発に取り組んでいる自動運転・安全走行技術のボリュームの大きさが影響しています。
ただしそれ以外の電気電子機器や情報通信、機械においても積極的な開発を行うことに変わりありません。若干の増減はあるもののお客さまからの要請は高く、当社の技術者もさまざまな開発に携わるべく幅広いお客さまと取引しています。
来期に向けてもこの割合は大きく変わらないものと思っています。各社は非常に積極的に開発を進めているため、我々もしっかり提案していきたいと考えています。
これからのHIP ~創立30周年に向けて~
続いて、当社の目指す「ありたい姿」についてご説明します。まず、当社のこれまでの歩みを振り返ります。我々は、これまで安定した経営基盤の構築に向け取り組んできました。
当社は創業社長が技術者のための会社を作りたいとの思いから起こしました。そのために徹底した技術者中心の姿勢を貫いてきました。フォロー体制や社内制度の構築、安定的な待遇なども、すべてこの考えに基づいています。
現在、全国に9拠点を展開しています。一番近くで技術者をフォローし、お客さまに対応でき、求職者の方が地元で働ける会社を目指して拠点を作っています。そのような取り組みの中で1社1社のお客さまから信頼をいただき、現在は200社ほど取引先を持っています。
また、より安定した経営のため、固定資産の取得も同時に行ってきました。本社ビルに加え、全国に4つの社員寮も設けています。
このように、景気の波にできるだけ影響を受けない基盤をしっかり作ろうと取り組んできました。そして我々は、2025年9月の創立30周年に向けて新たなステージへ歩みを進めたいと考えています。
これからのHIP ~創立30周年に向けて~
新たなステージへのチャレンジとして、技術者と顧客に選ばれる強い会社を目指します。これまでの人材派遣企業からキャリア形成を支援する企業へと、その一歩を踏み出したいと思っています。
人材派遣企業としてはいかに人を増やすか、拡大していくか、取引先を増やしていくかという量的な部分が求められると考えていました。これからの時代は社員一人ひとりに寄り添い、技術者それぞれが成長していけるキャリア形成を支援する企業こそ、真の意味で社員から選ばれ、最終的にはお客さまから選ばれる強い会社になると考えています。
これからのHIP ~創立30周年に向けて~
我々の描くキャリア形成支援企業として、技術者のベネフィットの追求が必要だと思っています。技術者は「成長できる環境で働きたい」「さまざまな開発設計に携わりたい」「組織のしがらみなく働きたい」などの思いから、我々の業種を選んでいます。
社員一人ひとりが活躍でき成長性のある環境で開発ができる現場を提供していくことと、プロとしてお客さまに提案しプロジェクトの一員となって実現していくことが、我々の求められているところであり目指すべきところだと考えています。
技術者が集まる企業でプロの技術者として育成し、その能力を最大限発揮できる環境を提供していく姿を思い描いています。具体的には、まずキャリア形成として教育があります。毎年新卒者が入社しますが、設計や開発に携わりたい新卒や未経験の方たちに、ベースとなる教育をしっかり行うことが重要です。
すでに今年その試みはスタートしており、我々の現役の技術者が社内で教育担当者として第一線で活動しています。単にすぐ即戦力になることがメインではなく、まずは長期的な視野において技術者が成長していけるベースを作ることが重要です。そのために、2024年4月からすでに教育も実施しています。
また、お客さまのさまざまなプロジェクトにつきながらスキルを伸ばしていく必要があります。営業担当者が一人ひとり技術者に寄り添い、今後の方針や新たに取り組みたい業界や分野をもとに、しっかりと足並みを揃えてスキルを伸ばして幅を広げていく活動を行っていきます。
すでに取り組みは行っているものの、働き方の部分で経済的メリットは必要です。そのために新たな手当や賞与を増やしたこともあります。昇給等もしっかりと行った上で経済的メリットも出していくことが目標です。働く場所も希望に沿えるような提案や営業活動、受注活動を行っています。
こうした業界独特ですが、一人ひとりがさまざまなお客さまのところで日々仕事しており、つながりやサポートを強化することも大事です。これからの施策の中でつながりをより強化できるよう、これまでの同好会などの活動に加え、新たな取り組みも実施していきます。
我々はこのようなことを進めながら、技術者中心の会社として仕組みを作ります。これから我々の仲間になる方にも当社の魅力や考え方をしっかりアピールし、採用活動を実施していきたいと考えています。
これからのHIP ~創立30周年に向けて~
まずは当社の技術者の価値を上げ、それがお客さまの価値を高めることにつながります。そして最終的には社会価値や企業価値の向上を図り、株主のみなさまへ還元するという流れが大切だと思っています。
そのために、これから30周年に向けてまずは技術者価値を上げることに全力で取り組み、その施策や体制作りを行っていきます。
2025年3月期 通期業績予想
2025年3月期の通期業績予想についてご説明します。技術者要請は引き続き底堅く続いていき、その中でさらに技術者需要が高まってくると考えています。
そして我々は、今年度を新たなステージに向けた挑戦の年と位置づけ、技術者を中心に置いた施策を進め、社員一丸となって力強い会社を作っていくと考えています。
業績としては、売上高は58億8,200万円で前期比プラス3.9パーセント、営業利益は5億5,400万円、経常利益は5億5,100万円と、前年比で同等の数字となっています。また、当期純利益は3億7,200万円とマイナス4.1パーセントを想定しています。
数字としては保守的に見ているところがあるものの、引き続き技術者や社員への投資を続けようと思っています。教育などの体制作りも行いながら、利益もしっかりと確保していこうと考えています。
業績予想の前提条件
業績予想の前提条件についてご説明します。まず稼働率は94.7パーセントと若干プラスに見ています。稼働時間は8.67時間と前年と同等、そして採用数は86名です。新卒は4月に48名入社しており、中途計画としては38名の採用を目指しています。
そして2025年4月の新卒入社は70名を想定しています。これらをしっかりと遂行し、先ほどの業績や売上目標を達成していこうと考えています。
配当金について
最後に配当金についてご説明します。基本方針に変更はありません。株主のみなさまへの安定的な利益還元を継続していきます。2024年3月期は前期比10円増配の50円とする予定です。また2025年3月期は1円の増配を行い、51円を予定しています。
過去を振り返ってみると、2014年以降安定的に配当を出しています。配当性向も20パーセントから30パーセント台で推移していたのですが、今期から50パーセントの配当性向で株主のみなさまに還元していこうと考えています。今後も引き続き累進的配当を考えており、来年は1円増配の51円を予定しています。
株主のみなさまにしっかりと還元しながら会社を成長させていくことを考えています。
我々は来年の30周年に向け、今一度ビジネスモデルを再構築したいと思っています。社員一丸となって知恵を出し合い、アイデアを持ち寄って新しい体制を作っています。社員のためにも会社を伸ばしていけるよう、一生懸命経営に努めていきたいと考えておりますので、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。
本日はご清聴いただき誠にありがとうございました。