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先濵一夫氏(以下、先濵):みなさま、こんにちは。蝶理の先濵です。本日は決算説明会に会場・Webから多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございます。
先日発表したとおり、私は6月の株主総会をもって退任します。本日のご説明は、後任に内定している取締役経営政策本部長の迫田が後段を担当します。迫田は、現中期経営計画の策定委員会の委員長及び先月設置したサステナビリティ推進委員会の準備委員会の委員長も務めていたため、適任と考えています。ご了承ください。
それではご説明に入ります。私からは2024年3月期通期決算概要についてご説明します。
決算概要のポイント
決算概要のポイントです。スライド上段の「POINT」欄に記載しているとおり、「Chori Innovation Plan 2025」 初年度において各段階利益は計画を上回る着地となり、経常利益、税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに、3期連続で過去最高益を更新しています。
業績概要として、減収となってはいるものの、採算性向上を主因に増益ということで、繊維事業は利益が大幅に伸長しており、最高益を大きく更新しています。
化学品事業は2023年3月期が最高益で、2024年3月期は減収減益ではあるものの過去2番目の利益規模となっています。
財務基盤は、自己資本比率が57.2パーセントと高水準を維持しています。ROE及びROICも、現時点で現中期経営計画の最終年度の目標値を上回る水準にあります。
株主還元については、期末配当を2円増配して60円としたため、年間配当は118円となりました。
トピックスとして、3年前から手がけている全社業務変革プロジェクトにおいて基幹システムの入れ替えに取り組んでいます。2025年4月からの本格稼働ということで、現時点では順調に進んでいます。
業績内容(前期比)
業績内容についてご説明します。先ほどお伝えしたとおり、前期比で減収となったものの、各段階利益は増益となりました。
税金等調整前当期純利益の主な増減要因
税金等調整前当期純利益の主な増減要因をブリッジチャートでお示ししています。まず減収の影響でマイナス25億円、益率向上でプラス40億円と、益率が1.3パーセント上昇しています。
販管費削減でプラス7億円です。前期にあった17億円強の貸倒引当金の計上がなくなったため、そのような意味では通常の販管費として人件費を中心に約10億円増加しています。
持分法による投資損益はマイナス4億円です。投資有価証券の売却益は昨年より少なくマイナス2億円、営業外損益・特別損益はプラス3億円となり、結果的に前年比プラス19億円となりました。
四半期の業績推移をご覧いただくと、2024年3月期第4四半期は事業としてかなり弱含んでおり、若干心配していたものの、新年度に入り順調にスタートできています。
繊維事業
事業ごとにご説明します。繊維事業は増収増益となりました。現在、原料、資材、製品の3つの事業ポートフォリオで事業を展開していますが、3事業とも非常に順調に進捗しました。繊維事業のセグメント利益は、2023年3月期に51億円と最高益となりましたが、2024年3月期は最高益を大幅に更新しています。
化学品事業
化学品事業です。大幅な減収減益となっているものの、利益規模は過去2番目にあります。化学品事業は市況に左右される部分があり、中国の影響を受けたため、1年間を通じて価格が上がらず、需要が増えなかったのが減収の主要因です。
その中で過去2番目の利益規模が維持できたのは、ファインケミカル・ライフサイエンスが堅調に推移したためです。医農薬中間体並びに、飼料、食品添加物などのさまざまなファインケミカル分野を堅調に伸ばすことができたため、利益を拡大できています。
一方で、市況に左右されやすい有機・無機の事業については調子が良くはなかったものの、さまざまな新しい取り組みを行っています。コロナ禍でも努力・工夫して現場で作り上げてきた新しいサプライチェーンが収益につながってきていることが表れていると思います。
機械事業
機械事業です。売上高は17億円ですが、実態としては500億円程度の事業となります。みなさまもご存知だと思いますが、2024年3月期は滞留債権の問題があり、その関係で、やや堅めに事業を進めたこともあり、400億円弱の規模感で機械事業を展開しています。
2年間と長期にわたる滞留債権に苦しんだものの、これまで開示していたとおり、NEXI(日本貿易保険)の保険をかけていたため、NEXIとも確認して、3月末にNEXIから保険金で債権の90パーセントをいただいています。
このようなかたちになりましたが、2年間苦しんだ不良債権がなくなり、2025年3月期は新しくゼロからスタートしています。
形態別売上高
形態別売上高です。すべての形態で減収となりました。繊維事業は好調であったものの、中国事業・化学品事業が減収となりました。
トピックスとして、輸入のマイナス56億円に関しては、化学品事業に加え繊維事業では良い意味で売上高を落としています。3年前にM&Aを行ったSTXは、現在収益が急回復していますが、3年間の構造改革の中でビジネスの見直しを行い、輸入においてSTXで約40億円売上を落とすかたちとなりました。
財政状態
財政状態です。自己資本比率は50.4パーセントから57.2パーセントへと上昇しています。総資産は前期末より中身は入れ替わっていますが、規模は結果的には変わっていません。
ROE・ROICは冒頭お伝えしたとおり、ROAはやや足りていないものの、中期経営計画の最終年度に向けて、収益性及び資本効率は良い水準にあります。
財政状態 連結B/S
連結B/Sです。利益の積み上げを主因として、純資産はプラス99億円となりました。また減収に伴い売上債権、在庫、仕入債務は減少しています。
キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況です。現金及び現金同等物は211億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、増益によりプラス97億円です。投資活動によるキャッシュ・フローは、基幹システムの導入に伴う無形固定資産の取得等により、マイナス27億円となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い28億円、借入金返済24億円等によりマイナス54億円となりました。
結果として、現金及び現金同等物の期末残高は211億円となりました。
2025年3月期業績予想
2025年3月期の業績予想です。初年度は着実にスタートしています。中期経営計画「Chori Innovation Plan 2025」の2年目の予想をスライドにお示ししていますが、繊維事業が増収減益を計画しているため、若干の違和感があるかもしれません。
繊維事業については、お客さまからお話をうかがう中でも、コロナ禍が明けた2024年3月期のリベンジ消費、オケージョン需要などが若干落ちるのではないかという見立てもあります。このあたりは全社的な数値の考え方等もあるため、4月26日の決算発表時に記者会見でもお伝えしましたが、達成可能な数字としています。
「Chori Innovation Plan 2025」の位置づけとして、「VISION2030」では2030年に売上高4,000億円、税金等調整前当期純利益200億円という定量的な目標を設定していますが、中期経営計画3年間においてはそこに向けての基盤作りが重要だと考えています。
「Chori Innovation Plan 2025」では着実にクリアする数値目標を掲げつつ、基幹システムの入れ替えや組織改革などの準備をしっかり行っていきます。
また、スライド中央に記載のとおり、「親会社株主に帰属する当期純利益は100億円への到達を臨む」ということで、新たな収益力をお示しできるという規模感になるかと思います。
配当金
配当金です。2024年3月期の年間配当は118円になりました。2025年3月期は、配当方針の連結配当性向30パーセント以上というところから、業績予想の親会社株主に帰属する当期純利益100億円より、年間配当で122円と予想しています。
以上で私からの説明を終わります。
VISION2030 ありたい姿
迫田竜之氏(以下、迫田):6月18日の株主総会以降となりますが、社長に内定している迫田です。本日はどうぞよろしくお願いします。私からは中期経営計画の進捗についてご説明します。
まず「『VISION2030』 ありたい姿」ということで、私どもが持続的に成長できる企業像を描いた図として、「Sustainable」「Well-being」「Innovation」をバランスよく組み合わせることによって、企業としての格を向上させていくことを目指しています。
基本方針と基本戦略
基本方針と基本戦略については、次のスライドから個別にご説明します。
財務・非財務目標の進捗
財務・非財務目標の進捗です。2024年の3月期の計数的な部分は、先ほど先濵からお伝えしましたが、中期経営計画最終年度である2026年の3月期は、売上高3,600億円を計画しています。現状の実績からすると若干背伸びをしているように見えるかもしれませんが、化学品事業の市況が回復すると、このあたりも十分達成可能な範囲であると考えています。
私どもの課題はROE・ROICの2つです。これらは将来的な課題と据えるべきだと思いますが、もう少しレバレッジを利かせた経営も視野に入れていきたいと考えています。
非財務目標における一番の課題は、管理職に占める女性の割合です。現状、非常に低いパーセンテージとなっていますので、継続的に採用活動を行っていきます。
2024年3月期は、採用者のうち50パーセントがキャリア採用で、特に管理部門においては、約30パーセントをキャリア採用が占めているのが現状です。
グローバルな持続的成長の実現
グローバルな持続的成長の実現についてです。スライドには私どもの海外拠点をお示ししています。全30拠点のうち海外現地法人は18拠点です。2024年3月期の海外現地法人の税金等調整前当期純利益は32億円と、2023年3月期とほぼ同等でした。2024年3月期においては、特に中国での化学品事業が非常に苦戦し、それを補うようなかたちでアジア圏のベトナム、タイでの繊維事業が好調に推移しました。
事業別戦略 繊維事業:2024年3月期総括
事業別戦略についてご説明します。まずは繊維事業についてです。スライドの上から3つ目の青丸部分に記載していますが、SDGs商材の取扱いが拡大しており、連結売上高は前期の150億円から190億円まで拡大しています。また、STXもしっかりと収益を上げています。
事業別戦略 繊維事業:2025年3月期方針
2025年3月期の方針です。「BLUE CHAIN」関連商材の強化については、現状、大きな利益が出ているものではありません。ただし、将来を見据えて事業を進展させていく中では欠かせない事業と考えています。
グループシナジーの追及、最適化については、STXの他に、自動車の内装材を取り扱っているアサダユウ、香港にあるMCC Industry、こちらは海外、特にグローバルスポーツメーカーへの出口というかたちで期待しています。
事業別戦略 繊維事業
繊維事業のSWOT分析です。2024年3月期は、もちろん市況が良かったこともありますが、スライド左上のStrength(強み)がいかんなく発揮された年でした。
また、日本において「繊維」と聞くと、若干衰退産業的なイメージを持つ方もいるかと思いますが、私どもは決してそのような考えは持っていません。左下のOpportunity(機会)に記載のとおり、世界人口については、現在の約80億人から2050年には100億人に増加するということで、グローバルではまだまだ成長できる事業であると考えています。
繊維事業 SDGs商材
SDGs商材についてです。私どもの「BLUE CHAIN」は、現在約140社のパートナーに協賛いただいており、連携しながら事業を展開しています。直近では「B-LOOP」「ECOSOL」が加わっています。
事業別戦略 化学品事業:2024年3月期総括
化学品事業です。蝶理は国内の出口というのはそれほど強くありませんが、海外の商材については強みを持っています。グループ会社であるミヤコ化学、小桜商会、蝶理GLEXはいずれもM&Aで子会社化した会社になりますが、この3社による国内の売上高は600億円から700億円ありますので、今後はこれらを活かした展開に期待しています。
事業別戦略 化学品事業:2025年3月期方針
化学品事業の2025年3月期の方針です。今お話しした連結子会社に加え、矛盾したかたちに見えるかもしれませんが、中国ビジネスを拡大していきます。中国発の日本ではなく、中国発のアジアということで、私どもは長年中国メーカーと親密に取引をしています。その延長線上として、中国メーカーが海外へ進出する際のお手伝いができると捉えています。
一方で、地政学リスクを踏まえたサプライチェーンの構築も考えていく必要があると思っています。
事業別戦略 化学品事業
化学品事業のSWOT分析です。2024年3月期はスライド右下に記載のThreat(脅威)がまさしく具現化したと捉えています。特に、市況混乱に伴う需要供給バランスの崩れが表面化したと実感しています。
一方で、高機能商材はしっかりと展開できていますので、収益的なマイナスも限定的であったと判断しています。
化学品事業 SDGs商材
化学品事業のSDGs商材については2つ掲げています。1つ目は、チリ・リチウム化合物製造プロジェクト参画です。こちらは、コロナ影響でプロジェクトの立ち上げがなかなかうまく進まなかったため遅れていますが、引き続きしっかり取り組んでいきます。私どもは現地企業としっかりとした関係を築いていますが、昨年、新たにパナソニックエナジーとも出口について手を握り展開しています。
2つ目は、生分解性樹脂です。スライドには農業用を記載していますが、こちらは農業の効率化や省力化につながります。高齢の農業従事者も多いですが、そのあたりの手助けとしても貢献できる商材であると考えています。
ESG経営の推進 進捗 E:環境、S:人的資本
ESG経営の進捗です。「E」のTCFD提言に基づく開示では、1.5度シナリオ、4度シナリオのいずれにおいても、当社の事業への影響は限定的と見ています。一方、環境商材拡販の可能性が高まるという点で、比較的プラスの見方をしています。
「S」の人的資本については、私どもの事業は人材で成り立っているため、社内では最も重要な事項としており、風通しのよい企業風土、健全な企業体質を意識しながら経営しています。
ESG経営の推進 進捗 G:ガバナンス
「G」のガバナンスについては、次のスライド以降でご説明します。
サステナビリティ推進委員会の設置
サステナビリティについて当社は若干遅れをとっていましたが、2023年7月から2024年3月までサステナビリティ推進準備委員会を設置しました。
持続的な企業価値の向上を目的として、専門家からさまざまなアドバイスをいただきました。2024年4月末には、マテリアリティやサステナビリティの基本方針について開示しました。
マテリアリティ特定プロセス
マテリアリティ特定プロセスについてです。重要なのは、外部の専門家にも入っていただいたというところと、またもう1つ、相当数の社員を巻き込んで取り組んだことです。全社アンケートも取ることで、社員への意識付けも同時に行うことができました。
サステナビリティ基本方針・マテリアリティ
結果として、サステナビリティ基本方針と4つのマテリアリティ、14個の重点テーマを定めました。
株主・投資家との対話実施状況
株主・投資家との対話実施状況についてです。本日の決算説明会もその1つですが、さまざまなIR活動の中でみなさまからご意見をいただいています。頂戴した意見については、一つひとつ検討し、会社として誠実に対応していきます。
対話の実例と当社の対応状況についてはスライドをご参照ください。
DXによるビジネス変革・経営変革
DXによるビジネス変革・経営変革ということで、SAP導入プロジェクトは、現時点では順調に進展していますが、スライドに記載のとおり、今後は全社員を巻き込んでいくテスト段階となります。ここからが最も重要なステージであると認識していますので、引き続き、新しいシステムであるSAP導入プロジェクトを進めていきたいと考えています。
大阪本社移転
2024年9月に大阪本社移転を予定しています。移転の狙いは、「ステークホルダーのウェルビーイングの実現」で、ステークホルダーは社員を意味しています。オフィスの移転により社員の満足度を高められたらと考えていますが、決してそこが最終目的ではなく、幸福度を高めてもらえるようなきっかけの1つになればと考えています。
当社株価推移
当社株価の推移です。2024年5月9日時点の株価は3,640円です。5月10日前場においては、最高値を更新しました。
私からのご説明は以上となります。
質疑応答:社長業で最も印象に残っている点と新社長に期待する点について
質問者:先濵社長にご質問です。これまでの社長業の中で最も印象に残っていることと、迫田新社長に期待していることについて教えてください。
先濵:社長業として一番印象的だったのは、全社一丸となって目指した新たなステージとしての経常利益100億円台の達成です。その後、100億円台が常態化するような収益基盤を作っていこうと取り組んだことも印象深いです。
迫田に期待することは、「VISION2030」の実現です。この実現に向け、過去の取り組みに捕らわれない、さまざまな意識改革や仕組み改革を期待しています。「VISION2030」の実現に向けては、これまで築いてきた基盤をさらに変革していく必要性があると社員一同認識しています。迫田は2024年3月期においてサステナビリティ推進準備委員会の委員長を務める等、非常に適性がありますので期待しています。
質疑応答:迫田新社長のこれまでの経験と今後の抱負について
質問者:迫田新社長にご質問です。新社長に至るまで、さまざまな役職や役割を担ってきたと思いますが、今後の社長業に活かせるような経験や抱負を教えてください。
迫田:私の年齢からわかるかと思いますが、入社して35年が経過しています。基本的には管理系出身ですが、管理系と言っても純管理以外に従事していた期間が15年以上あります。
海外の事業会社で7年間、繊維事業の企画部門に7年間、さらに国内の化学品の事業会社に2年間いました。いろいろな経験をさせていただいた会社に感謝していますし、このようないろいろな経験が社長業に活かせると考えています。
抱負についてです。特に直近3年間、毎年のように最高益を更新してきた中で、それを受け継いでスタートを切ることになり、現在、会社としては追い風が吹いている状態ですので、まずはその追い風をしっかりと受けとめて、風に乗り続けていこうと考えています。
一方で、今は社会の変化のスピードが非常に速く激しい時代です。当社は160年を超える歴史がある会社ですが、長く苦難の時代を過ごしてきた会社です。その中で特に重要なのは、持続的に成長できる会社に変化し続けることだと考えています。
また、商社という事業形態の性質上、私どもの事業は人の上に成り立っていますので、当社にふさわしい人材が集まる、選ばれる会社を目指していきたいと思います。
そのためには社員が幸せに働くことができる会社でなければいけませんし、事業においても取引先に選ばれる会社になり、結果として、将来にわたって収益を拡大できる好循環を社員全員と共有していきたいと考えています。
質疑応答:「BLUE CHAIN」の売上高と大阪本社移転の意味合いについて
質問者:2024年3月期の「BLUE CHAIN」の売上高実績と、2025年3月期の見通しについて、加えて、45年ぶりに大阪本社を御堂筋に移転するとのことですが、東西の従業員の比率と大阪本社移転の持つ意味合いを教えてください。
先濵:2024年3月期の「BLUE CHAIN」の売上高は連結で190億円です。2025年3月期は約250億円と見込んでいます。
大阪本社は、私が入社する直前までは御堂筋の本町4丁目にあり、おっしゃるように45年ぶりに御堂筋に帰ることになります。意味合いとしては、基幹システムや組織を変えるだけでなく、大事なステークホルダーである社員のWell-being、職場環境や働き方を大きく変えることにあります。
今回、大阪本社を移転しますが、東京本社でも、決まっていることは何もありませんが、数年後には働く環境を大きく変えるなど、社員にさらなる意欲を持って働いてもらえる環境を整備したいと思っています。
質問者:東京のほうが多いと思いますが、大阪と東京の従業員の比率についてはいかがでしょうか?
先濵:概ね50対50の割合です。繊維本部の主力は大阪にあり、大阪と東京の人数はそれほど変わりません。
質疑応答:地政学リスクを踏まえたサプライチェーンの構築について
質問者:スライド25ページで、「地政学リスクを踏まえた化学品事業のサプライチェーン構築等」の話がありました。おそらく中国以外になるかと思いますが、今後、具体的に中長期的にどのような手を打っていくのか教えてください。
先濵:蝶理というと中国に強いというイメージをお持ちの投資家の方がいらっしゃいますので、地政学について質問される機会が多くあります。
中国リスクが言われていますが、各社各様、ビジネスの構造によって異なると考えています。
グローバルな経済活動の中で、中国を避けて通ることはできません。一方で、お客さまからは他のサプライチェーンもという要望が多くあります。
コロナ禍の時期も含めたこの4年間、トレーディングビジネスにおける商社としての機能が非常に発揮しやすく、あらためて我々のサプライチェーンの対応力、機動力、構築力等の強みを確認できました。それが業績に表れているとご理解ください。
中国リスクの意識を持つと同時に、お客さまとしっかり話し合いながら、第2、第3のサプライチェーン作りに取り組んでいくことを考えています。
質疑応答:蝶理の強みと課題について
質問者:迫田新社長におうかがいします。蝶理の強みと課題を教えてください。
迫田:長らく商売を行っていますが、「蝶理らしさ」とは、おそらく人だと考えています。現在、キャリア採用に若干比重があるという話もさせていただきましたが、業績を安定的に伸ばすことができるようになってきた一方で、社会・環境の変化に応じ、これまで社内で対応できていなかった分野にも対応していかなければなりません。キャリア採用による人材の拡充を行いながら、蝶理らしさを伸ばして成長していくことが重要だと考えています。
質疑応答:他商社と比べての強みについて
質問者:蝶理らしさというのは、一言で言うと「人にある」というお話でしたが、他商社と比べて、強みはありますか?
迫田:先濵のもと、約10年間にわたって事業を伸ばしてきた中で、飛躍的に伸びたのが収益力です。社員には独自性・独立心があり、自分のよいところをしっかりと伸ばすことができる強さがあります。これにより、結果として、それぞれの商売の中で生き残ることができていると考えています。
質疑応答:東レとの今後の方向性について
質問者:御社の筆頭株主は東レで、東レの子会社という立場ですが、現在、御社の株価が上がっている理由の1つに親子上場が挙げられます。親子上場について、今後の方向性などお話しいただけることはありますか?
先濵:東レとは具体的にそのような話はしていません。コーポレートガバナンス・コードでも親子上場会社については言われていますし、新聞紙上にもよく出ていきますので、東レ、蝶理ともに意識していると思います。必要があれば適時、適切に対応しますが、現時点では方向性などはありません。
質疑応答:代表取締役の異動の詳細と時期について
質問者:先般の「代表取締役及び役員の異動に関するお知らせ」で、異動の理由として、経営体制の変更のためとありますが、詳細とタイミングについて、可能な範囲でご説明をお願いします。
先濵:社内では、コーポレートガバナンス・コードに従い、CEOの後継者育成と継承プロセスをガバナンス委員会の中で毎年話し合っており、それを踏まえ迫田を後継者として指名しました。
退任時期については、私自身10年という節目で考えており、この時期での退任となりました。幸い、業績が好調な中、よいかたちで後任にバトンを渡せたと考えています。