目次
佐鳥浩之氏(以下、佐鳥):佐鳥電機株式会社代表取締役社長の佐鳥浩之です。本日はご多用のところ、当社の2024年5月期第2四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日ご説明する内容は、スライドの目次のとおりです。最初に財務状況に係る、2024年5月期の業績ハイライト、上期の実績概況と通期の業績予想についてご説明します。
次に、現在当社が取り組んでいる「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について、「中期経営計画2026フレーム」に基づく取り組み内容をご説明します。なお、「中期経営計画2026」の詳細に関しては、今年の7月に説明を予定しています。
第3項については、SMエレクトロニクス社取締役のYashoranjan、Vinay Manjunathよりご説明します。
2024年5月期 連結決算 ハイライト
2024年5月期の業績ハイライトです。2024年5月期上期は、前年同期比で売上高は減収となったものの、営業利益は増益となりました。
通期の業績は、前年度比で営業利益24パーセント増と、大きく増加する見込みです。期初予想との比較においても、為替影響を除いたベースで、年度営業利益を達成する見込みです。
配当については、業績見込みの上方修正に伴い、年間70円から80円への増額を見込んでいます。
2024年5月期上期 セグメント別売上前年同期比 増(減)要因
2024年5月期上期のセグメント別売上増減要因です。スライドのグラフのとおり、モビリティセグメントでは、SMエレクトロニクス社の子会社化による増加や、車載市場の拡大に伴い、車載向け半導体の売上が順調に増加しました。
しかしながら、全体としては、調達マネジメントサービスの売上減やコロナ特需の反動によって、PC需要減となり、それに伴い電子部品の売上が大きく減少しています。その結果、全体の売上高は前年同期比1.5パーセント減の741億円となりました。
2024年5月期上期 営業利益増(減)主要因
2024年5月期上期の営業利益増減要因です。車載向け半導体の売上増に加え、SMエレクトロニクス社の子会社化により、モビリティセグメントでは5億4,000万円増加しました。モビリティ以外のセグメントでは、自社製品の利益改善等があったものの、調達マネジメントサービスの売上減等により、5億3,000万円減少しました。
また、為替の影響が1億8,000万円ありました。その結果、営業利益は前年同期比3.5パーセント増の26億7,000万円となりました。
2024年5月期通期 セグメント別売上前年同期比 増(減)要因
2024年5月期通期のセグメント別売上増減要因です。産業インフラセグメントでは、半導体製造装置の生産調整により、同装置用制御機器の減少が見込まれます。
グローバルセグメントでは、PCの生産に関して、通期では減少が見込まれますが、下期は回復傾向となる見込みです。
SMエレクトロニクス社の子会社化や車載向け半導体の売上増により、全体では前年度比1.5パーセント増加の1,485億円を見込んでいます。
2024年5月期 営業利益増(減)主要因
2024年5月期通期の営業利益増減予想です。上期に引き続き、車載向け半導体の売上増加に加え、SMエレクトロニクス社の子会社化により、モビリティセグメントでは6億9,000万円の大幅な増益を見込んでいます。
モビリティ以外のセグメントでは、自社製品の利益改善等が見込まれるものの、調達マネジメントサービスの売上減等により、8,000万円の減少となる見込みです。
為替が136円40銭から145円へ円安となることによる、為替差益3億円も含め、通期の営業利益は前年度比24パーセント増加の47億円を見込んでいます。
2024年5月期 下期営業利益増(減)主要因
前年度下期と今年度下期の営業利益を比較しました。2023年5月期下期の営業利益は12億円でした。一方、2024年5月期下期は20億円の営業利益を見込んでいます。
産業インフラセグメントでは、自社製品の利益改善等により、2億円の増加を見込んでいます。モビリティセグメントでは、車載向け半導体の売上増に加え、SMエレクトロニクス社の子会社化により、2億5,000万円の増加を見込んでいます。
エンタープライズ・グローバルセグメントでは、製品ミックスの変化による収益改善により、2億5,000万円の増加を見込んでいます。そして、為替の影響額は1億2,000万円です。
この結果、前年同期比68パーセント増の20億2,000万円を見込んでいます。
2024年5月期 配当予想
配当予想です。2024年5月期の配当予想は、業績予想の上方修正に伴い、期末配当を1株あたり40円から50円へ増額し、年間配当80円を見込んでいます。
中期経営計画2026フレーム -資本効率を意識した経営の推進-
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてです。まずは、2024年度を初年度とする「中期経営計画2026フレーム」をご説明します。
最終年度の2026年度に売上高1,800億円、営業利益55億円の事業成長を果たしながら、資本効率性においてはROE9パーセント以上を実現させ、さらにはPBR1.3倍を目指していきます。
中期経営計画2026フレーム -売上高
2023年度と最終年度となる2026年度との売上高の増減要因です。2026年度に向けては、4つのセグメントそれぞれで事業成長を図っていきます。
産業インフラでは、今後拡大が期待されている産業DX市場や、半導体製造装置向けビジネスの拡大に着実に取り組みます。
エンタープライズでは、新規の仕入れ先開拓やコト売りへのシフトなどに取り組んでいます。現在、市場は調整局面にありますが、これから回復に向かうことが想定されています。そのため、商材の拡大および市場の回復により、100億円を超える成長を目指していきます。
モビリティについては、後ほどその事業戦略をご説明しますが、SMエレクトロニクス社によるインドビジネスの拡大と、車載向け半導体は順調にデザインインができており、100億円の成長を実現していきます。
グローバルもエンタープライズ同様に、市場の回復と、それぞれの国におけるローカル企業とのビジネスを拡大していくことにより、50億円の成長を目指していきます。
連結ベースでは、2023年度から315億円、21パーセント増の1,800億円を目指します。
中期経営計画2026フレーム -営業利益
「中期経営計画2026フレーム」を営業利益の面から見たスライドです。2023年度は為替の影響を5億円見込んでおり、為替を除くと42億円となります。
2026年度に向けては、収益ドライブ事業である産業インフラセグメントおよびモビリティセグメントを中心に、営業利益の拡大を図っていきます。その結果、為替の影響を除く2023年度比で31パーセント増の55億円を見込んでいます。
企業価値最大化に向けた取り組み
企業価値最大化に向けた取り組みです。攻めとしてのROE向上、守りとしての株主資本コスト低減の両面でそれぞれ施策を実行し、株主資本コスト7パーセントを上回るROE9パーセント以上の実現により、PBR1.3倍以上の達成を目指します。
ROE9パーセント以上を達成するためのROE向上策として、大きく2つの施策を実行していきます。1つ目は、先ほどご説明したとおり、成長戦略において着実に成果を上げていきます。2つ目は、在庫保有月数削減によるCCCの改善といった財務施策にも取り組みます。
そして、株主資本コストを低減させるため、非財務施策として、デマンドクリエーション人財の強化やエンゲージメント改善といった人的資本経営の推進、さらにはスキルマトリックスの徹底といったコーポレートガバナンスの強化に取り組みます。
これらの取り組みにより成果を上げることで、あらゆるステークホルダーの方々に支持される、よりよい会社に変革していきます。
成長戦略 事業ポートフォリオ
当社が目指している事業ポートフォリオについてです。スライドのグラフのとおり、現在のグローバルならびにエンタープライズセグメントについては、モノ売りだけではなくコト売りへのシフトや、今後も成長が見込まれる海外市場や海外の仕入れ先など、海外によりスポットライトを当てていくことで、売上成長を求めていきます。
また、売上成長性だけではなく、DXをより一層活用し、サプライチェーン面でローコストオペレーションを実現し、資本収益性を高めていきます。そして、当社が収益ドライブ事業と位置づけている産業インフラとモビリティを両輪とし、売上成長性と資本収益性を中期的に向上していきます。
成長戦略 トピックス
収益ドライブ事業である産業インフラおよびモビリティにおける、主な成長戦略の紹介です。みなさまもご存知のとおり、人員不足や生産性向上といった社会課題が顕在化しています。
当社では、作業員の方とともに働く、人協働型ロボットを提供していくことで、顕在化している社会課題解決のお手伝いを実行していきます。この人協働型ロボットは、お客さまの状況に合わせてカスタマイズができるため、フレキシブルな生産対応を実現できます。まさにこれからの時代に合ったソリューションです。
モビリティでは、車載用半導体などのモノ売りだけではなく、コト売りとして、エンジニアによる技術サポートや組み込みソフトウェアの開発サポートといった、オートモーティブエンジニアリングサービスの強化を推進していきます。
非財務施策 人的資本経営の推進
非財務施策として、人的資本経営の推進についてご説明します。当社の人財マネジメント方針である「既存ビジネスの変革や新しいビジネスモデルの確立に取り組む人財の育成と輩出」という方針に基づく新人事制度を2024年6月より開始します。
2026年度までのKPIは、スライドに記載の4つです。このKPIの達成に向けた施策として、人財戦略委員会による全社視点での人財育成の実施や、キャリア形成教育の充実、Value人財への報酬アップなど、多岐にわたって取り組んでいきます。
非財務施策 コーポレートガバナンス強化
当社はコーポレートガバナンス強化のため、スライドに記載のとおり、体制の整備をより一層推し進めていきます。
1つ目のスキルマトリックスについては、経営戦略に基づきバックキャストから新たに制定し、役員を選任しました。取締役会では議論の活性化が始まり、コーポレートガバナンスの向上が期待できます。
2つ目は、今年度より、監査等委員が実施していた業務監査を経営監査部に権限委譲し、監査等委員は執行役員に対する監査・監督に集中する体制としました。
3つ目は、2024年6月より報酬制度を改定し、報酬KPIツリーを本格導入した新しい執行役員の報酬制度を開始します。人的資本経営およびコーポレートガバナンス強化の両面により、株主資本コストの一層の低減を図っていきます。
インド経済概況
SMエレクトロニクス社の状況について、取締役のYashoranjan、Vinay Manjunathよりご説明します。
Yashoranjan K V氏(以下、Yashoranjan):みなさま、こんにちは。 SMエレクトロニクス取締役のYashoranjanです。 SMエレクトロニクス部分のプレゼンテーションの前半部分をご説明します。まずは黄金時代を迎えているインド経済についてご紹介したいと思います。
インドのGDP成長は2023会計年度には3.73兆ドルに達すると予測されており、これによりインドは世界経済で第5位に浮上することが見込まれています。また、2022年から2023年のインドのGDP成長率は7.2パーセントでした。
これに加え、インド政府の取り組み、主にMake in Indiaの推進と、PLIスキームと呼ばれる生産連動型インセンティブスキームも要因として挙げたいと思います。これらの2つの計画により、インド経済の成長はさらに倍増する可能性があります。2023年から2024年のGDP成長率は7パーセントと予測されており、過去に予測された6.5パーセントからさらに伸び、高水準の成長を維持しています。
インドの半導体市場は、インドの成長にとって不可欠な市場であり、2028年までに803億ドルに達すると予想されています
SMエレ2026中期経営計画
SMETの中期計画と目標についてご紹介したいと思います。SMETは、65社の製品ラインを取り扱っているインドの現地販売代理店です。
SMETはソリューション販売の強化と新たな重点分野の商材の導入により、2026年度には2023年度比50パーセント増となる270億円の売上高達成を目指しています。ソリューション販売は、顧客への付加価値を高め、市場投入までの時間を短縮するため、非常に重要です。また、実証済みの結果を顧客に提供するため、顧客の開発時間が短縮されます。
またソリューションの正確なコストが提示されるため、顧客はソリューションを改善し、さらに市場投入までの時間を短縮できます。
これに加えて、ソリューションを作成する時は、ソリューションに必要な主要な領域と主要なコンポーネントを知り、これらを製品ラインに追加できます。ソリューション売上の強化により、営業利益水準を現在2023年度の3パーセントから2026年度には4パーセントへ引き上げることを目指します。
これらのソリューションは、一部の主要コンポーネントでより高い粗利率を実現します。通常のデバイス販売の5.5パーセントから7.5パーセントに比べ、主要コンポーネントでは10パーセントから12.5パーセントと高くなります。これにより、2026年度には営業利益率を4パーセントまで高める計画です。
SMエレ独自のセールスアプローチ-ソリューションロードマップ
ソリューションのロードマップと当社独自の販売ポジションについてご説明します。SMETは、オートモーティブ、コンシューマー、インダストリアル、セキュリティの4つの主要セグメントに注力しています。また、それぞれの主要セグメントでいくつかのサブセグメントとエンドアプリケーションを特定しています。
例えば、オートモーティブセグメントではEVを重要なサブセグメントとして選定しました。コンシューマーセグメントでは、HMIディスプレイ(ヒューマン マシン インターフェイス ディスプレイ)、BLDCファン、および音声認識を重要なサブセグメントと選択しました。
インダストリアルセグメントとして、インドではスマートメーター市場が拡大しているため、スマートメーターとともにDCU(データ コンセントレーター ユニット)のゲートウェイを選択しました。
そして4つ目の柱はセキュリティセグメントです。私たちはMNVR(モバイル ネットワーク ビデオ レコーダー)を選択しました。このMNVRは、カメラとともに、バス、電車などの交通機関に使用されます。
私たちは、新たな新興市場とそれらポテンシャルを検討し、これら4つのセグメントを選択しました。これらは非常に新しい市場です。そのため、お客さまは迅速なソリューションを求めており、開発時間を短縮するための実証済みソリューションを求めています。私たちはこれらのソリューションを提供し、お客さまとともにこの機会を掴みたいと考えています。
これらの新しい市場の多くは、政府の政策や投資計画の変更によって生まれています。私たちはそれらを非常に注意深く調査し、そしてこれらのセグメントとサブセグメントを選択しました。
SMエレ独自のビジネスモデル
サブセグメントの1つである列車向けインフォテインメントおよびセキュリティソリューションについてさらに詳しくご説明します。インドでは最近、5つのハイテクの新世代列車を導入しました。これらの列車には、ビデオオンデマンドのモバイルビデオネットワークレコーダー、IPカメラ、WiFiアクセスポイント、PoEスイッチなど、車内インフォテインメント機能を多数備えています。SMETは、これら非常にハイエンドなソリューションを検証済みソリューションとして、付属のソフトウェアと共に提供しています。
これらは非常に特殊なニーズであり、SMETは100パーセント検証済みのソリューションを開発することができ、当社の取扱コンポーネントとともにエンドカスタマーに提供しています。このビジネスモデルにより、幅広い顧客の要件に対応でき、パートナーとして顧客の開発の初期段階から参加することができます。
さらに、これらの複雑なソリューションでは、顧客はソフトウェアとハードウェアについてSMETへの依存度が高く、顧客との長期的なビジネス関係が確立できます。したがって、他の案件が出てきた時も、SMETに依頼する可能性が高くなります。
② EV – 2 Wheeler Solutions
ここからはVinayが引き継ぎ、ご説明します。
Vinay Manjunath氏(以下、Vinay):みなさま、こんにちは。私はSMETの取締役のVinay Manjunathです。プレゼンテーションの後半部分をご説明します。
二輪車市場のソリューションについて、当社は2つの主要なサブセグメントに注目しています。1つは、各種2輪車に適用される350ワットから1.5キロワットの範囲の家庭用充電器です。
SMETは、インドで初めて現地開発の高効率家庭用充電器ソリューションを開発しました。すでに一部の顧客で採用が決まっており、今後3ヶ月以内に量産を開始する予定です。
SMETにはソリューションの部品表の大部分を占めるMOSFETやトランスフォーマーなどの価値の高いコンポーネントを取り扱っており、大きなビジネスとなります。
2つ目の戦略は、二輪車用インストルメントクラスターです。SMETは従来からインストルメントクラスターに非常に強く、LCDとマイクロコントローラを供給していましたが、市場は進化しており、3つの異なるタイプのディスプレイに移行しました。
1つは、ローエンドEPMディスプレイクラスター、そしてハイエンドTFTディスプレイクラスター、そしてAndroidオペレーティングシステムで動作する新しいクラスターです。SMETはこの市場でBOMのほぼ90パーセントのシェアを獲得しており、TianmaTFT、Renesasマイクロコントローラ、QuectelLTEおよびGPSモジュール、Qualcommマイクロプロセッサ、Macronixメモリなど、主要なコンポーネントを広く提供しています。
また、当社はサードパーティとの強力な関係を確立しており、お客さまに手厚いソフトウェアサポートを提供できます。
SMエレ 2023トピックス
そして、2023年はSMETにとって非常に重要な年となりました。2023年の主な成果をいくつか取り上げたいと思います。SMETは、インドのバンガロールで開催された電子展示会に積極的に参加しました。30を超える幅広いソリューションを展示し、ブースには400名以上が来場されました。
当社は、EV充電器、ネットワークビデオレコーダーなど、リリースする予定のソリューションをすべて展示し、多くの顧客とサプライヤーから高く評価されました。当社にとって大きな成功です。
また、これに加えて、当社の主要サプライヤーの1つであるルネサスからは、ゴアで開催された最近の販売代理店大会で、最優秀販売代理店、最優秀製品マネージャー、最優秀FAEを含む多くの賞をいただきました。また、当社が開発した電気自動車充電器とネットワークビデオレコーダーがベストソリューションとして表彰されました。
さらに、Genus、Diotech、Panasonicなど、多くのお客さまやサプライヤーからも賞をいただきました。サプライヤーや顧客からこのような信頼と高評価をいただき、大変光栄に思っています。ありがとうございました。
佐鳥:以上で、2024年5月期第2四半期決算のご説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:業績予想の修正内容の内訳とその理由について
質問者:今期の業績予想の修正内容についてです。期初の計画を事業ごとに見比べると、大きく上方修正されたのはエンタープライズ事業です。マージンもかなり改善されるということですが、どのような見通しの変化があったのでしょうか?
他にもモビリティ事業が少し上方修正された一方で、産業インフラは少し下げており、上も下もある内容になっています。それぞれの事業の内訳を教えていただければと思います。
佐鳥:通期についてのご質問でしょうか?
質問者:おっしゃるとおりです。
諏訪原浩二氏(以下、諏訪原):取締役の諏訪原です。都合上、上期と下期を分けてご説明します。
7月時点で、上期における営業利益は15億円とご説明しましたが、実際には26億7,000万円で着地しました。区分けが少し難しいのですが、当初は上期の為替レートを1ドル125円と予想していたところ、2024年5月期上期の実績レートは145円くらいで推移しています。つまり、営業利益の増減のうち、7億円くらいは為替の影響によるものです。
そして、エンタープライズ事業の営業利益は当初の予想から9億円くらい増えていますが、こちらもその大半は為替の影響です。ただし、調達マネジメントサービスを中心に、数億円規模の売上増もありました。
また、ご指摘のとおり、モビリティ事業も上方修正していますが、こちらは車載向け半導体の売上が当初の見込みよりも増えたことによります。為替の影響により7億円、セグメントの売上高の増加により5億円ほど増加し、全体では合計12億円となっています。
下期に関しては、元々の予想の19億円とニアリーイコールのため、ご説明は省略します。
質疑応答:財務施策の達成見通しについて
質問者:財務施策のところで、在庫の圧縮を進め、株価指標とCCCを改善していくというお話がありました。手元の資料では在庫の回転率しか確認できていませんが、長期的に見ると回転率は下がっていくのがトレンドかと思います。お話にあった財務施策は本当に達成できるのでしょうか? どのようなことを考え、どのあたりまで改善させようと考えているのかを教えてください。
佐鳥:CCCを改善する施策について、在庫の圧縮という点では2つあると思っています。1つは在庫を減らしていくことですが、もう1つは取引先との条件の見直しです。後者はなかなか難しいため、全体ではやはり在庫の効率化が大きなテーマとなります。
ご承知のように、我々の業界はお客さまの生産計画に合わせて在庫を保有し、お客さまにデリバリーすることで売上が成り立ちます。その仕事の精度をITやDXを活用することで高めていく計画です。
特に発注の精度、お客さまのフォーキャストの精度を高めていくために、次の中期計画でIT技術を採り入れ、CCCの在庫圧縮、回転数の向上、保有月数の削減を実現したいと考えています。
質疑応答:SMエレクトロニクス社の業績について
質問者:SMエレクトロニクス社の業績についてです。2023年7月の御社の決算説明会において、2023年度の売上予想は130億円、営業利益は約7億円から8億円、営業利益率は5パーセントから6パーセントを見込んでいるというご説明がありました。
一方で、本日のご説明では2023年度の実績値として、売上高は180億、営業利益率は約3パーセントということでした。売上が増加したにもかかわらず、営業利益率が低下した背景を教えてください。
Yashoranjan:前回の開示と今回の開示の営業利益率の差異についての質問と理解しました。主な理由は3つあります。1つはのれんの償却が7月の開示に含まれていなかったことです。2つ目は事業譲渡手続きによるものです。手続きに多少の遅れがあり、該当する事業から利益を得ることができませんでした。3つ目は、佐鳥電機の子会社として連結するために、合併後の統合に追加の導入コストがかかることです。これらが主な要因となっています。
質疑応答:中期経営計画における前提為替レートについて
質問者:2026年度の中期経営計画について、為替の影響額は5億円程度とありますが、為替の前提はどのくらいで考えられているのでしょうか?
諏訪原:中期経営計画の為替レートは、1ドル140円の前提で作っています。
質疑応答:半導体市況の変化による影響と2026年度に向けての見通しについて
質問者:2026年度に向けて半導体市場の需給は昨今よりも緩み、その影響でASPは鈍化の方向に進む一方で、半導体不足は解消されると思います。これらについて、プラスマイナスの影響をどのように考えていますか?
佐鳥:2026年度に向けての半導体市況について、まず過去2年間にはコロナ禍における特需がありました。例えば、パソコンやスマートフォンが想定以上に多く売れていましたが、現在はそれが落ち着いている状況だと思います。このような特需による影響があったものが、2026年度に向けて再び戻ってくると予想しています。
2つ目には、EVに絡む産業や再生可能エネルギー産業が育ちつつあり、このようなマーケットが確実に大きくなると見ています。世界の半導体のマーケット全体の半分を、いわゆる通信やスマートフォンの部品が占めている中、徐々に自動車に関連するマーケットが育ち始めています。
そして、そのようなマーケットの成長に合わせ、いわゆるAIやデータセンターが育ちつつある状況です。そのような観点から、SoCやメモリといった、今は調整期にあるものが、今後は徐々に回復してくると見ています。
一方で、EVで使われる半導体のマーケットは、引き続き成長すると捉えています。さらに、化合物のシリコンカーバイドやガリウムナイトライド、酸化ガリウムなど、半導体の新素材のマーケットが、2026年度から2030年に向けて着実に成長していくと見ています。
現在、そのようなものを作る半導体製造装置は調整期を迎えていますが、我々のお客さまをいくつか回る中で、今年の後半からまたマーケットが戻ってくると感じています。ですので、それに伴う製造装置、さらにはEV等を使うロボットや工作機械等も、今年の後半ぐらいから需要が戻ってきて、それらに使われる半導体の需要も、今年の後半くらいには戻ると思っています。
質疑応答:SMエレクトロニクス社の今後のビジネスについて
質問者:SMエレクトロニクス社について質問します。インド市場において、特に車載向けの商材はプロミッシングなマーケットだと思います。SMエレクトロニクス社は、2輪や力車など、ローカルにかなり強い企業だと思うのですが、今後日本向けのビジネスも伸ばせる余地があると考えていますか?
佐鳥:当社がSMエレクトロニクス社を買収した当初の目的は、インドのローカル市場に対してビジネスを行うことでした。つまり、日本人だけではなかなか難しいマーケットのため、インド人の力を借りながらインド市場を開拓することを目的に、インドのローカル企業に特に強いSMエレクトロニクス社をパートナーとして選んだ背景があります。
その中で日本のお客さまをどのように捉えているかを、本人たちに聞いてみます。
Vinay:SMETの強みは、当社が需要創出のディストリビューターであり、設計の大部分が三輪車、二輪車市場向けに行われていることです。インドの多くの四輪車メーカーもインドで設計を開始しています。日本企業についてのインドでの懸念は、設計管理が完全に日本で行われており、すべてのコンポーネントをキットにしてインドに輸入しているため、現在インドでコンポーネントの調達や設計に関するすべての意思決定が行われていないことです。
しかし、私たちは日本のOEMに供給するTier2企業からのビジネスの一部の取引があります。例えば、ヘッドライト・テールランプ・モジュールなどの電子機器の一部の意思決定はインド国内で行われています。
質疑応答:事業環境の変化について
質問者:佐鳥社長は、現在までの事業環境の変化を、海外の現地の部分なども含めて、どのように感じられているのでしょうか? この半年前や2023年の1月頃に比べ、2024年、2025年以降の見通しがどのように変わったのかを、もう少し詳しく教えてください。
佐鳥:なかなか難しいご質問ですね。2023年を振り返ってみると、相変わらず想定外の出来事が起こりました。特に後半は、イスラエルのガザ侵攻などもありました。そして、中国のマーケットの停滞がこの半年で着実に顕在化したと思っています。
安全保障の面から、アメリカの政策により中国との分断がある中で、アメリカが好調だったこともあり、地政学リスク等も含めて、中国マーケットについては少し距離を置きました。日本を含めて先進国側はそのようなかたちで分断が進んだのが、この半年ほどだったと感じています。
マーケットについても、この半年は半導体製造装置などが相当スローダウンをした一方で、EVは着実に増えています。
当社への影響をつぶさに見ると、確かにマーケットの好調、不調はありました。しかしながら、我々が行っているビジネス関連では、自動車は順調に成長しました。これはSMエレクトロニクス社を除いても、EV関係のビジネスが着実に売上を伸ばしています。
また、産業インフラ事業でも同じように、我々が狙っていたビジネスは着実に取り込めていると考えています。
そのような中で、SMエレクトロニクス社が属しているインドマーケットは、このような世界の流れとは少し違っています。日本の企業の多くやアメリカが、中国マーケットに影響を受けている中で、インドに限ってはあまりリンクしていないところで着実に成長しているというのが、この半年間の感想です。
彼らのアクティビティを見ていると、この流れはまだ数年は続くと見ており、彼らの中に大きな成長が見込めると感じています。
2024年以降のマーケットを見ると、コストを削減して成長を実現していこうというお客さまも確かにいますが、自分たちの事業を大きくして成長していこうと考えているお客さまのほうが多い状況です。
全体を10とした時に、我々がお付き合いしているお客さまの7割、8割は、やはり成長戦略を中心に事業を進めています。そこに我々のビジネスチャンスがあると思っています。
また、先ほどご説明したように、例えばグローバル事業、エンタープライズ事業の業績は落ちていますが、今は調整局面だと考えています。着実にデザインもできているため、マーケットが戻ってくれば、数字も戻ってくると思っています。
そのための大きなポイントの1つが中国です。中国マーケットがどのようなかたちで、今年変化していくのかに注目しています。
質疑応答:海外の企業とのビジネスを良好に進めるための要点について
質問者:日本のマーケットが縮小していく中で、海外のローカルマーケットを開拓することは、これからいろいろな業界で求められると思います。それに関しては、やはり現地の人たちをうまく使いこなし、マネジメントしていくことが肝になってくるかと思います。
今、まさに通訳をつけずに、ローカルスタッフに参加してもらっている姿を見ると、御社がそれをうまく運んでいることがわかります。いろいろな国がありますが、現地の会社とうまく連携していくポイントとしてどのようなものがあるのかを、佐鳥社長が今実行しているところも含めて教えてください。
佐鳥:ぜひ私も勉強したい、教えてもらいたいと思うことです。ただ1つ言えることは、当社は1947年に会社を作り、1968年に台湾に駐在員を送ってビジネスを始めました。
つまり、我々が最初からお付き合いしている仕入れ先よりも早い段階で、実は海外に出ていました。これは我々のような半導体商社の中で、同業のどの会社よりも早かったと自負しています。
また、海外では日系のお客さまではなく、ローカルのお客さまとビジネスを行っていくことが、我々のもう1つの特徴です。ずいぶんローカルビジネスが減ってしまいましたが、それでもグローバルセグメントの数字の6割から7割ぐらいあります。
例えば、台湾なら台湾企業、韓国なら韓国企業とのビジネスによる売上構成となっています。あとの3割が、日本での日本のお客さまとのビジネスです。
そして、これまで何十年の経験の中で一番痛感しているのは、やはり「ローカルのお客さまにはローカルの人間が対応していくことでビジネスが進む」ということです。
したがって、今もシンガポールや韓国、今度のSMエレクトロニクス社はインドですが、トップは現地の方です。台湾の今の社長は日本人ですが、以前は台湾人の方に社長を務めてもらっていました。その結果、その地域でビジネスが円滑に拡大できると私は確信しています。
「その経営者をどのようにグリップしていくか」については、日本人でもアメリカ人でも変わりません。どのくらいコミュニケーションをとって、その国の価値観を認め合うことができるかにかかっていると思います。
現在、私はインドのSMエレクトロニクス社のM.S. Manjunath社長と一生懸命コミュニケーションをとって、彼がどのようなことを考えているのか、どのような価値観を持っているのか、それをお互いに理解し合うことがベースになると思います。
先ほどお伝えしましたが、シンガポールの社長も、台湾の社長も、韓国の社長も、当社で何十年も働き、当社と日本のことを知っているという理由で、社長になってもらいました。韓国の社長は、当社のプロパーではないものの、長い間付き合ってくれていた会社から来て、社長になってもらった方です。
今回のSMエレクトロニクス社は、なにも知らない中で一生懸命、お互いをわかり合おうとしている段階のため、まだ成功したとは言えません。これからの数年間は、私とM.S. Manjunath社長、そして今日ここにいる諏訪原を含めた役員とSMエレクトロニクス社の役員が、どのくらいお互いを理解し合えるかが、成功できるかどうかの一番のポイントになると思っています。
私もまた来月、再来月インドに行って向こうの社長と時間をかけてお話をするつもりですが、このような取り組みが大事だと考えています。