2024年2月期第2四半期決算説明
古川保典氏(以下、古川):代表取締役CEOの古川でございます。本日はお忙しい中、当社の2024年2月期第2四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。本日は、決算補足説明資料に基づいてご説明させていただきます。
2024年2月期上半期実績
決算概要です。第2四半期はイスラエルのライコル社の損益計算書が連結されています。第2四半期は、予想に対して売上高、営業利益はともに計画を下回りました。上半期で見ると、予想に対して売上高は1億7,600万円のマイナス、営業利益はおよそ5,000万円のプラスとなりました。
なお、積極的な設備投資やM&Aに伴い、減価償却費とのれん償却費が売上高に対して10パーセントを超える水準となっているため、投資判断に有益な情報としてEBITDAを掲載しています。上半期のEBITDAは実績が2億5,600万円となり、予想の2億2,200万円を上回りました。
【半導体】上半期実績
事業ごとの現状についてご説明します。半導体事業においては、2023年2月期第3四半期から発生している一部部材の不具合の影響が残っています。その結果、2024年2月期第2四半期の売上高は低調に推移し、上半期の進捗率は82パーセントとなりました。
【半導体】通期の見通し
みなさまに大変ご心配をおかけした、部材不具合への具体的対応の状況についてご説明します。当社が主体的に不具合の原因究明に取り組み、第2四半期において不良原因の物理的メカニズムを解明しました。
現在は、その知見をもとに、材料と構造を大幅に見直した合格率の高い改良版をベンダー側で試作し、試作品の長期信頼性評価を当社で進めています。また、重要部材のマルチベンダー化も同時並行で進めてきましたが、セカンドベンダーでの委託開発が成功しました。
今後の見通しについてです。その合格率の高い改良製品が当社に入荷する時期は、2024年2月期第4四半期以降となります。このため、第3四半期は第2四半期に引き続き部材不具合の影響は継続し、第3四半期に予定していたレーザの売上が第4四半期以降にシフトする見込みです。
第4四半期から計画どおりに改良品が納入されると大幅に売上高が伸長しますので、通期では予想に近づく見込みです。なお、セカンドベンダーからの合格率の高い製品購入は、第4四半期以降となります。
【半導体】受注高および受注残高
半導体事業の売上高および受注残高です。部材不具合の問題があるものの、ユーザーからの引き合いは依然強く、受注高および受注残高は堅調に推移しました。上半期末の受注残高は約32億円となります。
【ヘルスケア】上半期実績
ヘルスケア事業についてご説明します。2024年2月期第1四半期の売上高は低調でしたが、第2四半期は持ち直し、上半期は計画を27パーセント上回りました。通期売上高は予想どおりと見込んでいます。
【ヘルスケア】頭部専用PETの動向
頭部専用PETの動向についてです。エーザイ社のアルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ」は7月にアメリカで正式承認され、日本でも9月に承認されました。12月下旬を目途に薬価が定められる方針です。
政府有識者会議において「投与するには、事前にPETか脳脊髄液の検査でアルツハイマー病の原因物質の1つとされるアミロイドベータの蓄積を調べる必要がある。国内で検査できる施設は60ヶ所ほどに限られ、地域にも偏りがある」とのコメントがありました。
このため、今後は頭部専用PETの普及が加速されることが期待されます。実際に、頭部専用PETの当社シンチレータ単結晶に対する引き合いは、今期に入り増加傾向にあります。
【新領域】上半期実績
新領域事業についてご説明します。2023年3月にライコル社を子会社化し、新領域事業に宇宙・防衛、美容、エネルギーの3つの分野が加わりました。ライコル社の売上は新領域事業に含まれています。新領域事業の2024年2月期上半期の売上高は、予想を5パーセント上回りました。
新領域事業における2つの注力分野についてご説明します。スライド下段中央をご覧ください。1つ目は、NEDOグリーンイノベーション補助事業で取り組んでいる、パワー半導体SiC単結晶です。これまでは名古屋大学の育成装置を用いて開発を進めてきましたが、当社内にも装置を設置し、現在は10台体制となりました。今後、研究開発を加速していきます。
2つ目は、量子分野です。ライコル社の素子技術と当社のモジュール実装技術を融合し、量子暗号通信での実用化が期待される「量子もつれ光源モジュール」の開発を進めています。こちらは、2023年10月25日から幕張メッセで実施される「量子コンピューティングEXPO」に展示予定です。
株主のみなさまから問い合わせをいただいている、ライコル社の状況についてご説明します。10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃から始まった武力衝突は、依然として続いています。現時点ではライコル社での物的・人的損失はなく、事業は継続しています。同社の業績に与える影響がわかり次第、必要に応じて適時開示します。
【中長期事業ポートフォリオ】
中長期の事業ポートフォリオについてです。2023年4月に「事業計画及び成長可能性に関する事項」で開示したとおり、既存の半導体事業とヘルスケア事業を拡大成長させるとともに、新領域のSiCと量子分野にも注力していきます。
【研究開発費・人員計画】
研究開発費と人員計画についてです。半導体事業の次世代レーザ、SiC単結晶、量子光源モジュールに、集中的に研究開発費と人員を投入しています。上場した2022年2月期と比べ、研究開発費は約3倍、従業員数は約2倍となっています。
【設備投資】
設備投資についてご説明します。当社は、将来大きな成長が期待される深紫外レーザとSiC単結晶に重点的に投資しています。
半導体事業におけるレーザの増産に対応する第4工場は、2023年2月期に3億8,000万円、2024年2月期上半期に5億5,000万円を投資し、2023年3月に第1期工事が完了しました。今年9月には、深紫外レーザのメンテナンスを開始しています。
また、NEDOのグリーンイノベーション補助事業に取り組んでいるSiC単結晶については、2023年2月期に3億4,400万円、2024年2月期上半期に6億円を投じ、第5工場を建設しました。
2022年2月期までの半導体事業とヘルスケア事業への投資がこれまでの当社の成長に大きく寄与したように、2024年2月期の設備投資も着実に成果へと結びつけていきたいと考えています。引き続きよろしくお願いします。私からのご説明は以上となります。
質疑応答:半導体事業の利益について
質問者:半導体事業の利益は2023年2月期第3四半期に減少し、2024年2月期第1四半期は計画比で上振れ、第2四半期は下振れであったと思います。こちらについて、どのようなことが起こっていて、どのように利益に効いているのかを教えてください。
山本正幸氏(以下、山本):まず、第1四半期では、2023年2月期第3四半期より発生した部材不具合への対応策として、前もって必要量より多くの部材を調達したことが功を奏し、四半期売上高として過去最高額を達成しました。予想を上回ったこの売上高が、利益にも反映されたと考えています。
続く第2四半期では、事前に調達した部材の在庫が払底した状態に近づき、また、新規調達部材の合格率も厳しい状況となりました。
そのため、第2四半期は売上、利益ともに計画を下回る結果となりました。
質疑応答:連結・単体の利益内訳について
質問者:2024年2月期第2四半期の業績予想は、単体が1億4,400万円の黒字、連結は9,000万円の黒字と開示されています。第2四半期の営業利益は4,000万円の赤字に着地しましたが、こちらの単体・連結の内訳について教えてください。
山本:第1四半期では連結と単体を開示しましたが、第2四半期以降は連結ベースによる開示を基本としています。ご質問いただいた内訳については、概要をお伝えします。
まず、連結の損益に関して、のれんの償却費が7,000万円弱あり、PMI費用と併せて8,000万円から9,000万円程度を負担しています。また、株式報酬制度において税務当局等とのやり取りに時間を要しているため、計画を下回りました。
一方、単体の利益としてはライコル社の単体の業績はほぼ計画どおりとなっています。連結での営業利益が計画を下回った主因はオキサイドの半導体事業の下振れであると考えています。
質疑応答:量子もつれ光源モジュールの展開について
質問者:新領域事業では、量子もつれ光源モジュールに明確に注力していくということでしたが、どのようなお客さま向けにどのようなタイミングでビジネスになっていくものなのでしょうか?
藤浦和夫氏(以下、藤浦):これまで、オキサイドとライコル社で結晶の量子もつれ光源の共同開発を進めてきましたが、今回、オキサイドの実装技術とライコル社の結晶の技術を融合することによって、モジュール化に成功しました。
量子暗号通信分野では、セキュリティレベルの高い量子もつれを使った通信システムが、ようやくスタートアップをはじめ多くの企業で製品化されつつあります。今後、当社としては、そうしたスタートアップを通じた社会実装、もしくは、国の研究所をはじめシステム導入の主導的な立場にある組織へ光源モジュールの販売を行い、事業展開を図っていきたいと考えています。
質問者:時間軸ではどのように見ておけばよいでしょうか?
藤浦:ここ数年は引き続き開発ベースで、それぞれの研究機関において実証実験が行われ、その後、具体的な導入が進んでいくことを想定しています。各国政府は、これら実証実験を始めとする研究開発に対しても、大規模な投資を行っています。すでに、当社においても、量子もつれ光の発生に必要な結晶やチップレベルで数億円の売上を達成しています。今後、より付加価値の高い量子もつれ光源モジュールを提供していくことで、さらに桁の違うビジネスになると考えています。
質疑応答:半導体の通期見通しについて
質問者:半導体事業の通期見通しについてです。期初の数字から減額して44億9,000万となっていますが、新領域事業は約3,000万円の増額、ヘルスケアは計画どおりということですので、合計が御社の通期予想87億7,000万円と合いません。半導体事業の減額分が通期予想と異なる点について、どのように見たらよろしいでしょうか?
山本:ご質問の点は、半導体事業の下振れが売上計画の全体へ影響を及ぼしていることによるものと考えます。今回、計画の修正開示は行っていませんが、これは、部材の不具合を解決した改良品の納入が第4四半期から売上に寄与するという見通しを持っており、現時点では修正開示の基準に達していないためです。
しかしながら、この見通しの売上は、これから入荷する改良部材を搭載したレーザ製品の出荷量に左右されるため、この数値が上振れ、場合によっては下振れする可能性もあると考えています。
質問者:もう1点、ヘルスケア事業の売上が下期に見通しより上乗せとなる可能性はあるのでしょうか?
山本:こちらは、当社のメインのお客様の動向次第であると考えています。世界的なマーケットの中で、中国市場は2割から3割程度と大きな割合を占めており、昨年より当社のビジネスにも、この中国市況の影響が徐々に出始めています。そのため、下半期は計画よりもやや慎重に考える必要があると見ており、少し弱含みで見通し計画を立てています。ヘルスケア事業においては、まずはこの計画値を達成することが第一であると考えています。
質疑応答:頭部専用PETの売上動向について
質問者:ヘルスケア事業の頭部専用PETについて、今期はどのくらいの売上になると考えていますか? また、来期以降は加速的に売上が増えるのでしょうか?
古川:今期に入り、頭部PET用のシンチレータ単結晶の引き合いが増えてきており、今期の頭部PET用の売上は、ヘルスケア事業の10パーセント超を予想しています。全身PETにおける結晶の売上は、1台あたり約4,000万円程度です。
一方、頭部PET装置は、全身用PET装置に比べてサイズが小さいため、使用される単結晶量は全身PETの3分の1程度です。単結晶の使用体積が減るからと言って、売上高が全身PETの3分の1と低くなるわけではなく、サイズが小さく複雑で、加工コストは高くなるため、頭部PET用のシンチレータ単結晶の利益率は高いです。
今後、装置台数が増えると、売上高も大きくなっていくと見ています。今後、市場がどれくらい成長していくのかは、病院への頭部PET導入の進展など検査需要によると考えています。
質疑応答:ライコル社の売上の寄与と事業構成比について
質問者:ライコル社の新領域事業について、実際のところ第2四半期にはどのくらい寄与したのでしょうか? また、ライコル社の4つの事業分野の構成比を教えてください。
山本:ライコル社の売上高について、当初計画では、第2四半期からの寄与、つまり3四半期分で、約15億円前後を見込んでいます。第2四半期のライコル社の売上高は、約4億5,000万円前後であり、当初計画と大きく変わりはありません。
また、ライコル社の4つの事業分野の構成比は、宇宙・防衛が50パーセント前後、美容、量子がそれぞれ20パーセント前後、エネルギーが10パーセント程度となっています。
質問者:そうしますと、ライコル社の売上の影響があっても、結果的に21億円の通期見通しは当初計画とあまり変わらないということですか?
山本:10月7日からイスラエルで発生している武力衝突の影響が、10月以降の売上にどのように影響するのか、現時点では不透明な部分があります。現状、生産能力に関する心配はありません。ですが、ライコル社から予備役に招集されている従業員もおり、当社にとっても影響がないとは言い切れないため、今後注視していく必要があると考えています。
質疑応答:宇宙・防衛分野における特需の可能性について
質問者:イスラエルとハマスの軍事衝突による武力衝突が広がった場合、宇宙・防衛分野への特需が起きる可能性はありますか?
古川:宇宙・防衛分野は、ライコル社の売上高の約50パーセントを占める分野です。現状、上半期に予定した受注のうち、未受注となっているものもあり、武力衝突の影響で、それらが下期に集中する可能性があるという話も出ています。そういった点が売上に対しプラスに寄与する可能性もあると思います。ただし、今は国全体が非常に混乱しているため、現時点での見通しは難しいと考えています。
質疑応答:半導体事業におけるメンテナンス売上について
質問者:半導体事業において、メンテナンスの売上を半期ごとに開示いただけるはずだったと思います。今回は開示がないようですが、どの程度の金額になっているか教えてください。
山本:上半期での半導体事業でのメンテナンス売上高は約2億円で、予想を若干下回る結果となりました。この背景には、部材の不具合問題を踏まえ、主要顧客との間でレーザ製品の新規販売を優 先することで合意し進めてきたということがあります。引き続きメンテナンス需要は高いため、9月から稼働した第4工場を中心に、今後生産能力を上げることで対応していきます。
質疑応答:新規部材の調達について
質問者:マルチベンダー化により第4四半期から合格率の高い部材が納入されるということですが、こちらはセカンドベンダーから入ってくるという理解でよろしいでしょうか?
藤浦:合格率の高い改良製品は、従来のベンダーとセカンドベンダーの2社からの納入を予定しています。
従来のベンダーについては、不良原因の物理的メカニズムが解明されたため、その対策を行った改良品が第4半期以降に納入される予定です。また、セカンドベンダーについては、従来のベンダーと同様の対策を行った改良品の委託開発にすでに成功しており、従来のベンダーとほぼ同時期の第4四半期以降に納入される予定です。
したがって、合格率の高い部材は2社からの調達を可能としています。
質疑応答:ライコル社の状況について
司会者:「ライコル社の状況を教えてください」というご質問です。
古川:ライコル社が所在するイスラエル中部のロッシュ・ハーアイン市は、現在紛争が起こっているガザ地区からは約80キロメートル、レバノンの国境からは約110キロメートル離れています。
ハマスによる攻撃が起きた直後はかなり混乱していたものの、ライコル社は10月10日より操業を再開しています。また、従業員については、その家族も含め全員の無事が確認できています。報道のとおり、イスラエルでは30万人の予備役の招集がありライコル社の従業員約15名が招集されています。
ライコル社の業績に与える影響については、判明次第、必要に応じて適時開示を行います。
質疑応答:半導体の部材不具合解消に向けた主体的な取り組みについて
司会者:「半導体事業の部材不具合問題の解消に向けて、御社が主体的に取り組んだ内容を具体的に教えてください」というご質問です。
藤浦:当社の行った主体的な取り組みとは、大きく、部材不具合の物理的メカニズムの解明とその対応策の策定です。
これまで、不具合が発生した部材の仕入れ先である海外ベンダーと議論を重ねてきましたが、製造ノウハウに関わる製造プロセスを開示してもらえないことや、当社以外の用途では不具合が発生していないことが背景にあり、なかなか根本的な原因究明に至りませんでした。
現状のままでは不具合問題の解決の見通しが立たないため、本質的な解決を図ることを目的に、発生している物理現象の解析を当社が主体となって行い、物理的メカニズムの解明に至りました。この結果を基に、良品を生産するための材料、構造の両面から具体的な改善策を明らかにし、それを当社からベンダーへ提示しました。現在は、当社とベンダーの両方で原理検証を完了し、その試作品の長期信頼性評価を当社で行っている状況です。
これらの取り組みによって今後合格率の高い部材が納入されるようになり、第4四半期以降、当社の半導体事業の売上が伸長し、通期の予想に近づく見込みです。