Agenda
陣隆浩氏(以下、陣):マーキュリーリアルテックイノベーターの陣です。本日は当社の2024年2月期第2四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。当社の事業概要、2024年2月期第2四半期業績、今後の成長戦略の順にご説明します。
VISION
まず、事業概要についてご説明します。当社のビジョンは「Big Data×Technologyで不動産の未来は私たちが動かす」です。
事業概要
当社は不動産マーケティングソリューションの単一セグメントです。プラットフォーム事業、デジタルマーケティング事業の2つの事業と、その他サービスを運営しています。
売上構成比65パーセントのプラットフォーム事業は、主力商品の「サマリシリーズ」や仲介事業者向け営業支援サービスの「クラウドシリーズ」といったSaaS型の不動産マーケティングシステムを提供しており、大手企業中心の顧客基盤と高い継続率を保持しています。
売上構成比25パーセントのデジタルマーケティング事業は、マンション販売における集客をインターネット広告で支援しています。
売上構成比10パーセントのその他サービスは、ビッグデータやテクノロジーを活用した新規サービスの創出を行っています。
プラットフォーム事業 サービス紹介
プラットフォーム事業のサービス紹介です。「Realnet」は、不動産ビッグデータと最新のテクノロジーを融合した不動産マーケティングプラットフォームです。主に新築マンションのデベロッパー向けのサービス展開を行っている「サマリシリーズ」と、仲介事業者向けの「クラウドシリーズ」の2つを提供しています。
当社の不動産ビッグデータ
当社が所有するビッグデータの特徴をご説明します。当社のデータの強みは、質と量です。当社ではデータのもととなるパンフレットや価格表を、販売担当者との直接的な関係構築により取得しています。
これらのデータ素材は、サービス開始当初より実際にモデルルームへ足を運び、販売担当者と対面して収集しています。また、このデータ素材はマンションの新築販売時にのみ収集可能であるため、30年続けてきた実績で高い参入障壁を築いています。
データに関してこだわっているのは3点です。1つ目は網羅性です。当社は公的な届出情報からデータを取得しているため、計画の変更などを除けばほぼ100パーセント捕捉できています。
2つ目は即時性です。情報取得から実際のサービスに反映されるまでのスピードにこだわっており、情報取得後、約2営業日での運用を継続しています。
3つ目は正確性です。データ開発部という専門の部署でデータ入力・校正といったデータ制作を行っており、正確性を担保した運用オペレーション体制を構築しています。
ビッグデータの活用事例
当社ビッグデータの活用事例です。新築マンション業界では、物件調査や市場調査レポート、事業収支計画書の作成など、用地の仕入れやマーケティング目的で活用されています。
中古マンション業界では、チラシや営業資料の作成など、主に販売部門で活用されています。したがって、新築・中古のどちらの業界でも、日常業務の中で利用されています。
決算サマリー
2024年2月期第2四半期の業績をご説明します。まず、決算サマリーです。売上高は今期累計で前年同期比103パーセントの7億2,500万円となりました。
プラットフォーム事業は、新築マンション領域のARRが伸びたことで売上増となりました。中古マンション領域は前四半期と同水準で推移しています。デジタルマーケティング事業は、前年同期比121パーセントと好調な結果となりました。
その他に関しては、昨年8月まで受注活動を行っていたリフォームを除くと、前年同期比でほぼ横ばいとなりました。
プラットフォーム事業の売上構成
プラットフォーム事業の売上構成です。新築マンション領域はARRが順調に伸長しており、前年同期比6パーセント増の成長となりました。
一方で、中古マンション領域は前年同期比で減収となりましたが、現在開発を進めている新商材のリリースが完了することで売上増加を見込んでいます。
デジタルマーケティング事業の売上高
デジタルマーケティング事業の売上高です。リスティング広告、サイト制作ともに案件数が増加し、前年同期比121パーセントとなりました。
業績の概況
業績の概況です。売上高は前年同期比103パーセントと増加した一方で、売上原価は前年同期比117.3パーセントと大幅に増加しています。その結果、営業利益は前年同期比38パーセントの2,400万円となりました。
売上原価の増加には、人件費および減価償却費の増加が大きく影響しています。人件費の増加は、サービス開発力を強化するため積極的にエンジニア採用を行ったことによるものです。
減価償却費は、正確にはソフトウェア償却です。当社の主力サービスである「サマリシリーズ」のSaaS化開発を継続しており、その結果としてソフトウェアの償却費が前年同期比で1,500万円増加しています。来期までこの水準で推移し、2026年2月期より減少に向かう見通しです。
その理由としては、SaaS化開発が終息することに加え、採用したエンジニアにより内製化比率を高めていくことで、効率的なサービス開発を進めていくことができるようになるためです。
なお、通期業績予想に対する営業利益の進捗率は48パーセントです。
BSの状況
バランスシートです。法人税などの納税と借入金の返済により現預金が減少しましたが、借入金を全額返済し無借金となり、自己資本比率は78.4パーセントと向上しました。今後は事業的にシナジーのある分野へのM&Aを視野に入れています。
事業ごとの売上高
事業ごとの売上高です。プラットフォーム事業、デジタルマーケティング事業ともに前年同期比で増収となりました。今期よりアカウント営業体制に変更し、これまで取引のあったデベロッパーの仕入れ部門から販売担当までがスムーズにつながり、より提案しやすい状況になっています。
今回の体制変更がデジタルマーケティング事業の売上に寄与し、売上高は前年同期比121パーセントとなりました。
プラットフォーム事業(新築マンション領域)の業績
プラットフォーム事業の業績についてご説明します。新築マンション領域の主要KPIである平均顧客単価は、ライセンス追加案件の増加により前年同期比3.9パーセント増となりました。顧客数はすでに高いシェアを占めていることから、引き続き安定傾向です。
新築マンション領域のARRと解約率
ARRは前年同期比7パーセント増と、安定成長を継続しています。解約率を示すレベニューチャーンレートも前年同期比で減少し、低水準で推移しています。
プラットフォーム事業(中古マンション領域)の業績
中古マンション領域の業績です。顧客数は計画どおりに増加しましたが、売上高は前年同期比で6パーセント減となりました。第3四半期以降、すでに事業提携しているタス社をはじめとするアライアンス案件の強化や、サービスラインナップの増加に注力しています。
ビジネスアップデート
今期のビジネスアップデートはスライドに記載の3つです。
1つ目に、会員サービスサイトのリニューアルを実施しました。今回のリニューアルは、主に「サマリシリーズ」の利用促進を目的としたものです。既存会員と良好な関係を構築し、継続的な利用につなげていくことを目指しています。
2つ目に、「RealnetAPI」の最新版となるバージョン2.0.0をリリースしました。このAPIを利用することで、他サービスとのデータ連携が容易になります。今回のリリースによる対応エリア拡大で、より一層の売上と販路の拡大を見込んでいます。
3つ目に、「サマリシリーズ」の機能追加を実施しました。「Google マップ」上の多角形検索機能と、指定した範囲内の検索結果を編集する機能の追加リリースが完了しています。今回のリリースにより、会員のUX向上を実現しました。
新たな取り組み
新たな取り組みをご紹介します。2023年10月2日に発表のとおり、マンション口コミ掲示板「マンションコミュニティ」を運営するミクル株式会社と事業提携契約を締結し、新サービスをリリースしました。
当社と取引のある不動産企業と、ミクル社の有する住まいに関心の高いユーザーをマッチさせることで、双方が最適なコミュニケーションを取れる機会を提供したいという思いが合致し、今回のサービス開発に至りました。
「マンションコミュニティ」は、月間117万ユーザーが訪問する日本最大級のマンション口コミ掲示板で、マンション購入の意思が高いユーザーが多く利用しているサイトです。当社は創業以来、主にデベロッパー向けに事業を展開していることから、ミクル社と組むことで、デベロッパーにとって有益なサービスを提供できると考えたことも提携に至った理由の1つです。
今回リリースしたサービスは、購入意欲の高い顕在層をデベロッパーが運営する物件公式サイトへ直接送客するというこれまでになかったサービスで、資料請求やモデルルームへの来場予約もさることながら、実質的で最適な集客を行うことを目的としています。
取り組み内容
取り組み内容をご説明します。新築マンションに関心のあるユーザーは、主にポータルサイトから物件の基礎情報を取得し、物件の選定を行ってから資料請求などのアクションにつなげるのが一般的です。
今回提供するサービスは、すでに物件の選定を終えており、購入への最終的な意思決定に必要な口コミなどのさまざまなプラスアルファの情報を必要とする顕在層に対し、売主の運営する物件公式サイトへ直接送客できることが特徴です。モデルルームへの来場や購入への最終的な意思決定の後押しにつなげることを目的としています。
当社が強みとするマンションデベロッパーとの取引実績と、ミクル社の有する月間180万ユーザーをマッチングさせ、双方の最適なコミュニケーション創出を目指しています。
ビジネス成⻑に伴う広⼤な市場規模
本サービスの市場規模についてご説明します。まずは第1フェーズとして、当社の営業拠点である三大都市圏の約15.8億円の市場に挑みます。その後、順次全国展開に向けた営業推進を予定しています。将来的には、新築マンション以外の分野へサービスを拡大し、新たな市場を狙って成長していきたい考えです。
先ほどご説明したとおり、当社はプラットフォーム事業とデジタルマーケティング事業の2軸で事業を行っていますが、今回の取り組みによって、デジタルマーケティング事業における収益性の向上が期待できます。
成⻑戦略概観
成長戦略についてご説明します。はじめに成長戦略概観です。今期も引き続き、ビッグデータとテクノロジーを活用したプラットフォーマーとして、不動産マーケティング領域で強固なポジションを確立することを目指し、プラットフォーム事業を拡張させていきます。
新築マンション領域では、売上・利益の最大化を進めていきます。ARRを伸ばし、売上・利益を最大化するために営業部門の組織変更を実施し、アカウント営業に方針転換して営業活動を行っています。
中古マンション領域では、仲介事業者向けに展開してきたビジネスモデルを金融市場に向けて展開することで、新しい市場を開拓します。
新築マンション領域の成⻑戦略
アカウント営業についてご説明します。スライド左側の図は前期までの組織体制で、1つのクライアントに対し、商品ごとにそれぞれの営業担当がアプローチする手法でした。
現在は右側の図のようにアカウント型営業体制に変更し、商品ごとに営業担当を置くのではなく、すべての営業メンバーがすべての商材を取り扱い、一元化してクライアントにアプローチしています。
これにより、これまで出てこなかった課題やニーズを抽出し、多様な提案の実施で引き続き顧客単価の向上を進めていきます。先ほどご説明したミクル社と共同開発した新商材に関してもこのアカウント営業がうまく寄与しており、効率的な営業活動ができています。
新築マンション領域の成⻑イメージ
新築マンション領域の成長イメージです。すでに高いシェアを占めているため、今後の顧客数は微増と予想しています。そのため、利用アカウント数の拡大と顧客単価の上昇を進めていきます。
中古マンション領域の成⻑戦略
中古マンション領域の成長戦略です。今期は引き続きシェア拡大を第一優先として、売上高の増加に注力していきます。あわせて、中古マンション領域のビジネスモデルを、新たに獲得できる可能性のある金融市場に展開することで、市場の拡大を進めていきます。
また、タス社と業務提携を行い、2023年6月にタス社の提供する「TAS−MAP」と当社所有データの連携が完了しました。こちらでの金融市場向け不動産評価業務のサポートを足がかりとし、金融市場へ進出していきます。
引き続きニーズの高い営業支援サービスを追加し、これまでご利用いただいていなかった仲介事業者に対してアプローチしていきます。
中古マンション領域の成⻑イメージ
中古マンション領域の成長イメージです。顧客数を積み上げつつ、売上高を伸ばしていきます。
プラットフォーム事業 売上の成⻑イメージ
プラットフォーム事業の領域別売上成長イメージです。新築マンション領域は、安定収益基盤の「サマリシリーズ」をベースにアップセルによる顧客単価の上昇を図ります。中古マンション領域は、金融市場への展開や営業支援サービスの追加を行い、売上増加に注力します。
会社概要
こちらのスライド以降は参考資料です。会社概要に変更はありません。
サービス⼀覧
サービス一覧です。
その他の業績
その他の業績です。
免責事項
免責事項です。ご了承くださいますようお願いいたします。
質疑応答:社名変更後の変化について
質問者:去年御社のお話をお聞きして、社名が変わるタイミングでどのように変わるのかと思っていました。時価総額も小さいため、変化幅はあるのか注目していました。
しかし、正直、変わらないままという印象を持っています。現状で時価総額は15億円で、上場会社としてはかなり桁が小さいです。これからの新しい展開において、株主の期待を反映するような展開になってもよかったのではないかと思うのですが、なかなかそのようにはなっていません。
社名を変えていろいろと変わっていく中で、どのようなところが変わったのでしょうか? また、社長自身の感覚として、なかなか期待値が反映されない現状に関してどのように感じているのか教えてください。
陣:株価に関しては忸怩たる思いがあり、今後上昇させていかなければならないという使命に燃えています。
その株価に反映させる事業に関しては、以前の説明会で、いろいろな意味で叱咤激励を受けました。仲介市場を伸ばすにあたって、現在も顧客数は増えていますが、新商材のリリースが少し遅れていました。今回、新たにパンフレットの間取り図を改変するシステムをリリースしたため、それを軸に売上を上げていこうと考えています。
また、その他サービスとして、マンションバリューについてオファー機能をリリースしています。こちらはこれから本格的に営業展開していく予定です。今テストマーケティングを行っており、非常に良い反応を得ています。
これにより事業自体を伸ばしていく考えです。仲介市場はもちろん、金融市場も伸ばしていきます。さらに、マンションバリューをもとにC(コンシュマー)向けのサービスも展開していこうと考えています。
質問者:御社の現状の業容から、M&A等をしない場合も含めて売上利益はどれぐらいの規模を見据えているのでしょうか?
陣:売上利益に関して、直近ではエンジニア採用により人件費が上がってしまっていました。採用費もかかりましたが、今後は、今まで外注していた部分のコストが下がっていきます。
また、あと1年ほどで、プラットフォーム事業の「サマリシリーズ」のSaaS化がだいたい落ち着いてきます。それにより償却費も下がり、営業利益で約20パーセントは出すことが可能になります。
さらに、ミクル社と提携している事業も大いに期待できます。こちらについても、我々の売上高が20億円になった場合には、20パーセント以上の営業利益を出すインパクトがあると考えています。
質疑応答:不動産ビッグデータや不動産DXの活用について
質問者:御社を拝見していると、どうしても不動産ビッグデータや不動産DXについて、一時期の期待がだんだんなくなっていく流れになってしまっているように見えます。不動産ビッグデータや不動産DXのステージがどのように変化した時に社会や投資家に受け入れられ、次の期待値に変わるのでしょうか?
陣:私たちが持っているビッグデータの中で、まだまだ活用しきれていない部分がたくさんあります。
例えば、先ほどお伝えした間取りのトレース機能です。こちらは、私たちがもともと持っている間取りデータを簡易化(広告掲載用に変換)することで、仲介業者がお客さまに提案する際に、よりデザインされたかたちでスピーディに提供できます。これは大きなビジネスチャンスだと思いますし、仲介事業者にとっても非常に効率的で有効な手段です。
また、従来は、仲介業者がお客さまにアプローチする方法がポータルサイトやチラシの営業しかなかったのに対し、今後はオファー機能を活用できます。これにより、マンションバリューが大きなうねりを作り上げることを期待しています。