第23回定時株主総会
古川保典氏(以下、古川):みなさま、こんにちは。代表取締役社長の古川です。本日はご多用のところご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。当株主総会では、当社定款第13条の定めにより私が議長を務めます。どうぞよろしくお願いします。
ただいまより、株式会社オキサイド第23回定時株主総会を開会します。本総会の議事進行・整理については、議長である私の指示に従っていただきますよう、みなさまのご理解とご協力のほどよろしくお願いします。
本日の議事の進め方として、株主さまからのご発言・ご質問等に関しては、報告事項の報告、決議事項の各内容説明が終わった後に、一括してお受けしたいと考えています。その上で、各議案について採決させていただきたいと思います。
なお、招集通知38ページに記載の「12.収益認識に関する注記」の1の表において、誤りがありました。日本と米国についてのみ記載していましたが、正しくは、本日受付にて配布している「第23回定時株主総会招集ご通知の一部訂正について」に記載のとおりです。誠に申し訳ございません。修正事項については、2023年5月22日に当社のWebサイトおよび東京証券取引所のWebサイトに掲載しています。
最初に、ご出席株主数およびその議決権の可否についてご報告します。当総会において、議決権を有する株主数は5,944名、その議決権の数は4万9,691個です。
本日ご出席の株主数は、書面またはインターネットにより議決権を行使された株主さまを含め1,566名、その議決権の数は2万8,466個です。したがって、本日のすべての議案について、審議に必要な定足数を満たしていることをご報告します。
続いて、報告および議案の審議に先立ち、監査役による監査報告を行います。
中嶋豪氏:常勤監査役の中嶋です。各監査役の合意に基づき、私からご報告します。当監査役会は、第23期事業年度における取締役の職務の執行全般について、監査を行ってきました。
監査結果については、招集通知46ページおよび47ページの監査役会の監査報告書謄本のとおりです。事業報告およびその付属明細書は、法令および定款に適合しており、会社の状況を正しく示しているものと認めます。
取締役の職務の執行に関する不正の行為、または法令もしくは定款に反する重要な事実は認められませんでした。内部統制システムに関する取締役会の決議内容は相当であると認めます。また、内部統制システムに関する事業報告の内容および取締役の職務の執行についても、指摘すべき事項は認められませんでした。
次に、計算書類等について、招集通知43ページから45ページの会計監査人の監査報告書謄本のとおり、報告および説明を受け、監査しました。
その結果、会計監査人である太陽有限責任監査法人の監査の方法および結果は相当であり、指摘すべき事項はありません。また、会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制についても、指摘すべき事項は認められません。
最後に、本総会に提出されている議案および書類に関しても、法令および定款に適合しており、指摘すべき事実は認められませんでした。以上、ご報告します。
古川:ありがとうございます。監査報告は以上となります。続いて、報告事項についてご報告します。事業報告については、ナレーション付きスライドを準備しましたので、まずはこちらをご覧ください。
(動画が流れる)
ナレーション:当事業年度における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴う資源・エネルギー価格の高騰、インフレーション抑制に向けた米国・欧州各国の政策金利引き上げ、加えてゼロコロナ政策による中国経済の一時的な失速により、停滞が鮮明となりました。
一方、日本経済は、新型コロナウイルス感染症による経済への抑制効果が軽減し、経済活動の正常化が進展、内需を中心に持ち直し傾向にあります。当社の当事業年度は、ロシア・ウクライナ情勢や世界的なインフレ懸念の影響は軽微でした。
また、急激な円安の影響は最小限にとどまっていますが、一方で、半導体事業における外部からの調達部材の一部に不具合が発生したために、第3四半期の売上が停滞しました。通期では20パーセント超の増収は確保したものの、追加部材費用や研究開発費などを吸収しきれず、営業利益は減益となりました。
しかし、経常利益以下各段階利益は、子会社株式取得資金の支払いに伴い設定した為替予約により、時価評価益を1億9,200万円計上したことが寄与し、プラスに転じました。当社は光学事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略していますが、製品の市場別に売上高の状況等をご説明します。
光計測・新領域事業においては、単結晶技術、光学分野でのコア技術の新用途・新製品を立案・開発し、試作・開発ベースでの小規模案件を中心にビジネスを進めています。当事業年度は、量子技術分野におけるデバイス開発を開始しました。当事業年度における同事業の売上高は増収基調で推移し、前期比プラス27.9パーセントの7億4,100万円となりました。
半導体事業においては、先端ロジック半導体の需要が前年度に引き続き好調であったことから、ユーザーである半導体ウエハ検査装置メーカーなどからの当社製品への引き合いおよび受注状況は増勢で推移しています。顧客からの増産要求に対応するため、横浜事業所の増床および第4工場建設などの設備投資を行い、生産キャパシティの拡大を進めています。
一方で、第3四半期に発生した外部からの調達部材の一部の不具合については、根本的な原因解明、再発防止策等を策定し、安定した調達体制の構築を進めています。当事業年度における同事業の売上高は、前期比プラス31.4パーセントの32億3,900万円となりました。
ヘルスケア事業においては、PET検査装置の世界需要はおおむね堅調に推移しました。従来同様、ユーザーにおける当社のシェアアップへの取り組みを継続する一方で、原材料費上昇分の製品価格への転嫁による増収確保を進めました。
第3四半期まではおおむね順調に推移しましたが、2023年初頭より、主力ユーザーでの在庫調整などから当社への発注が停滞し、当事業年度の売上高の伸びは限定的となりました。当事業年度における同事業の売上高は、前期比プラス3.5パーセントの17億7,200万円となりました。
その結果、当事業年度の売上高は前期比プラス20.9パーセントの57億5,200万円、営業利益は前期比マイナス10.0パーセントの5億3,700万円、経常利益は前期比プラス14.8パーセントの6億8,700万円、当期純利益は前期比プラス12.4パーセントの5億5,700万円となりました。
対処すべき課題としては、「各種研究開発の促進」「優秀な人材の採用」「財務体質の健全化」の3つです。まず、各種研究開発の促進についてご説明します。
1つ目に、当社が推進する光技術の応用範囲は世界規模で拡大しており、NoT(Network of Things)やAI、ビッグデータといったイノベーションを支える半導体の微細化、医療機器の高度化等に伴い、当社の製品への需要も拡大基調にあります。
一方、パワー半導体向けの超高品質・大口径のSiC単結晶開発や、レーザによる加工やセンシングといった新領域・新用途への的確かつスピーディーな開発・製品化が求められてもいます。このような展開には各種研究開発の推進が不可欠であり、また、当社の独自性・技術的な優位性を保つ上でも同様です。
研究開発の推進には、社内の人的および資金的資源に加え、東京大学、大阪大学、東北大学、理化学研究所などの大学、研究機関との研究連携や、政府機関の研究開発補助などの資金面での支援も積極的に活用しています。
2つ目に、優秀な人材の採用についてご説明します。これらの当社製品への需要増や開発促進に対応するため、即戦力の技術者の採用とともに優秀な若手技術者の採用や人材開発が大きな経営課題になっていると認識しています。
新卒採用については、国内の大学や研究室との継続的な連携を進めることや、学生の履修状況に応じた製品製造・開発の実体験型インターンシップなどの実施により卒業生の採用につなげ、採用難の状況の中でも計画に沿った実績を重ねています。過去3年の新卒採用の実績は、2021年4月に7名、2022年4月に15名、2023年4月に22名となっています。
中途採用については、優秀な人材について年々採用のハードルが高まる中、各地各所で開催される企業説明会や人材紹介会社を通じて、当社の魅力やマーケットでの製品優位性を効果的にアピールし、業務拡大に対応できる即戦力の確保に成果を上げています。
過去3年の正社員の中途採用実績は、2021年2月期に31名、2022年2月期に33名、2023年2月期に41名となっています。
人材開発については、適材適所を考慮した配置や各階層に応じたレベルアップ研修・フィードバックを継続的に実施するとともに、次世代の中核となる技術者の育成を見据えて社会人博士号の取得支援などの施策を重層的に進めています。
3つ目に、財務体質の健全化についてご説明します。当社は、当社製品の需要増に対応するために、既存設備の増強と継続的な研究開発が必要と考えています。一方で、これら設備投資または研究開発投資を支える財務基盤の確保も重要な課題の1つと認識しています。
具体的には、自己資本比率等の指標および各種キャッシュ・フローの水準により財務体質の健全性を確認しながら、各投資のタイミングと投資額について検討しています。
続いて、損益計算書の内容についてご説明します。当事業年度は、各事業ともに前事業年度比で増収となりました。全社の売上高は、前期比プラス20.9パーセントの57億5,200万円です。
営業利益は前期比マイナス10.0パーセントの5億3,700万円、経常利益は前期比プラス14.8パーセントの6億8,700万円、当期純利益は前期比プラス12.4パーセントの5億5,700万円となりました。
貸借対照表の内容についてご説明します。流動資産は54億7,200万円、固定資産は53億1,900万円、資産の部の合計は107億9,100万円、流動負債は30億4,000万円、固定負債は25億2,200万円、負債の部の合計は55億6,300万円、純資産の部の合計は52億2,800万円です。
最後に、株主資本等変動計算書についてご説明します。新株予約権の行使により、資本金および資本剰余金がそれぞれ4,200万円増加しました。利益剰余金合計は当期純利益により5億5,700万円増加しました。これらにより、当期末の純資産の部の合計額は52億2,800万円となりました。計算書類の詳細については、招集通知25ページから42ページをご覧ください。
3か年中期経営計画(連結ベース)
古川:今後の展望について、私からご説明します。当社は今年4月に、今後3ヶ年の中期経営計画を発表しました。今期2024年の売上高は、ライコル社を含めた連結ベースで前期比52.5パーセント成長の87億7,300万円を計画しています。売上高は、2025年には創業以来初めて100億円を超えると予想しています。
売上高成長率は、2026年にかけて毎年前期比20パーセント以上を見込んでいます。今期はライコル社の連結に伴う費用が発生しますので、営業利益率は一時的に減少しますが、2026年には経営指標としている10パーセントを超える見込みです。
注力分野
この中期経営計画を実現するため、今期2024年2月期は5つの分野に注力していきます。1つ目はライコル社とのシナジー、2つ目は半導体事業の増産投資、3つ目はヘルスケア事業の新用途への展開、4つ目は量子分野の研究開発の加速、5つ目はパワー半導体分野の量産開発です。
注力分野① ライコル社とのシナジー
まず、1つ目のライコル社とのシナジーについてご説明します。みなさまご存じのとおり、当社は今年3月にイスラエルのライコル社を子会社化しました。これにより、当社の事業分野を拡張することができます。
当社の「半導体」「ヘルスケア」事業に加え、新たに「宇宙・防衛」「美容」「エネルギー」の分野へ参入します。これらを新領域事業に取り込み、それぞれが成長していく事業ポートフォリオを描いています。両社が持つ技術を融合させ、特に量子と半導体の分野で研究開発と事業成長を加速させていきます。
注力分野② 半導体業界の動向
2つ目の半導体事業の増産投資について、半導体業界の動向からご説明します。半導体業界は、みなさまもご存じのように、これまで約4年ごとに好不況の波を繰り返してきました。ここ数年は、コロナ禍においてもオンライン会議やデータセンター向けなどで急成長してきましたが、昨年より市況に変化が見られています。
PCやスマートフォン向け半導体が減速しているのに対し、EVなどの車載向けパワー半導体は底堅く、需要の二極化が進んでいます。
当社のレーザあるいは単結晶の最終顧客である半導体トップのインテル、台湾積体電路製造(以下、TSMC)、サムスン電子から、先日決算発表がありました。各社とも今期は減収減益を予想していますが、来期以降の増産への対応が視野にあり、最先端の検査装置向けの設備投資は高い水準を維持すると発表されています。
注力分野② 米中対立など地政学的リスクの回避が重要
これに加え、米中の対立など地政学的なリスクを回避することが重要となっています。アメリカ、ヨーロッパ、日本でも、巨額の補助金で半導体メーカーを国内に誘致しています。日本では、トヨタ自動車、ソニー、NTTなどがラピダスを共同設立しました。
ここでは、線幅2ナノメートルから3ナノメートルという最先端の半導体分野の製品開発に取り組み、失われた日本の半導体シェアの奪還を目指しています。このラピダスに対し、日本政府は3,300億円の補助金を支援すると報道されています。
注力分野② 半導体事業の増産投資
このような世界的な動きが当社の半導体事業の増産投資につながっており、今期の売上高が前期を上回る増収となることを見込んだ背景となっています。当社は前期も生産能力を上回る注文を受け、受注残高が積み上がっています。
今期は横浜事業所のクリーンルーム増床に加え、3月に竣工した山梨第4工場が稼働し、生産能力が増強されます。これにより、今期の半導体事業は前期比50パーセント以上の増産を目指します。
注力分野③ ヘルスケア事業の新用途への展開
3つ目の注力分野は、ヘルスケア事業の新しい用途への展開です。当社のヘルスケア事業のシンチレータ単結晶はがん診断用PET装置に搭載されていますが、この単結晶がアルツハイマー型認知症の診断にも用いられる脳PETにも利用されます。
アルツハイマー治療薬の登場に伴い、脳PETによる認知症診断の需要が増加しています。今後、脳PETはがん診断用PETと同じくらいの市場へと拡大すると予測されています。脳PET向けシンチレータ市場が、今期の売上に寄与するものと期待しています。
そして、将来的にはヘルスケア事業におけるがん診断用と認知症診断用の2つの柱へと育てていきたいと考えています。
注力分野④ 中長期的な成長が期待される量子分野
4つ目の注力分野は、中長期的な成長分野として期待される量子分野です。量子分野は、量子コンピュータ、量子暗号通信、量子センサの3つの応用分野があります。昨年、量子分野では量子もつれの技術によりノーベル物理学賞が授与されました。
現在、産業界でも世界的に量子分野での開発競争が激化しています。日本においても、理化学研究所が国産初の量子コンピュータを本格稼働させるというニュースが3月に発表されました。日本政府も、今年4月に「量子未来産業創出戦略」を発表し、開発を加速させています。
これまで当社で開発してきた波長変換素子が、量子の分野でも注目されるようになってきました。私たちはこれを大きなチャンスと捉え、新しい量子分野事業へ展開しようと積極的に取り組んでいます。
注力分野④ 横浜国立大学発スタートアップ LQUOM社への出資
その一貫として、当社は横浜国立大学発のスタートアップであるLQUOM社に出資しました。LQUOM社は、量子中継器を用いた長距離量子通信システムの開発において世界をリードしています。
そのシステムでは波長の異なる光信号を利用しており、多くの波長変換素子が利用されます。当社では、波長変換素子として、PPLN、PPLTと呼ばれる素子を製品販売していますが、ライコル社は材料が異なるPPKTPと呼ばれる素子を製品販売しています。
このたび、ライコル社を子会社化したことにより、量子通信技術分野で使用されるほとんどの波長変換素子を当社が提供することができるようになりました。量子通信技術は、量子コンピュータの実用化に不可欠な技術です。
その市場は部品だけでも数千億円規模と予測されており、今後大きく拡大する分野となっています。当社の製品が必要とされる分野でもありますので、世界各国の技術動向を注視し、かつユーザーと提携した研究開発に取り組んでいます。
注力分野⑤ 急成長が見込まれるパワー半導体
5つ目の注力分野は、急成長が見込まれるパワー半導体です。パワー半導体は半導体の一種で、電力の制御や変換を行うデバイスのことです。小さな電力から大きな電力まで供給できますので、電子機器でいうと心臓や筋肉に該当します。そのサイズは、クッキーくらいの大きさから弁当箱くらいの大きさまで、さまざまなものがあります。
ちなみに、先ほどご説明した当社の紫外レーザや単結晶が使用されるのは、主にパワー半導体ではない通常の半導体です。通常の半導体では、数値の計算やデータの保持などの用途に使われており、電子機器でいえば脳に該当します。そのサイズは非常に小さい数センチくらいで、非常に小さな電力で動作します。
パワー半導体の応用分野は、データセンターのサーバ電源といった情報通信分野、太陽光発電などのエネルギー分野、充電スタンドや電気自動車などの電装分野で、急速に市場が拡大しています。
注力分野⑤ シリコンパワー半導体市場 vs. SiCパワー半導体市場
パワー半導体は、現在はシリコンと呼ばれる単結晶を用いるのが主流です。世界市場規模は、2035年には昨年比5倍の13兆4,000億円に拡大すると予想されています。この高い成長率は、再生可能エネルギーの普及や自動車の電動化の進展によるものです。
このような中で今後の市場拡大が見込まれているのが、SiCと呼ばれる単結晶を用いるパワー半導体です。現在の主流のシリコンよりも高効率で使用できますので、2035年には昨年比31.2倍の5兆3,300億円の市場規模になると予測されています。
注力分野⑤ パワー半導体分野:SiCデバイスと単結晶市場
スライドの円グラフは、SiCデバイスとSiC単結晶の市場シェアを示しています。左側のSiCデバイスでは、日本企業が40パーセントを占めています。一方、右側のSiC単結晶は大部分を欧米企業が占めており、日本企業のシェアはほとんどありません。
デバイスは強いのですが、その重要な鍵となる素材が弱いという現状の問題を改善するために、日本政府は国策としてSiC単結晶の国産化を積極的にサポートしています。
注力分野⑤ 高品質SiC単結晶の社会実装を目指す
このような背景を踏まえ、当社は高品質のSiC単結晶の社会実装を目指しています。従来よりも欠陥の少ない高品質の単結晶開発を進めているところです。高品質のSiC単結晶を育成するためには、名古屋大学で開発された溶液法と呼ばれる新しい技術が有望です。
ただし、素材の開発には非常に長い時間がかかりますので、私たちは開発を加速するためにAIを活用したプロセス技術を開発しています。名古屋大学の持つこのような技術に、当社の持つ単結晶技術を融合させることにより、SiC単結晶の量産技術開発を推し進めています。
当社は経済産業省のグリーンイノベーションファンドを活用し、9年間で約90億円の開発費を投入し、開発に取り組んでいます。
創業からの理念:「研究成果を社会に還元する」
当社の創業からの理念は「研究成果を社会に還元する」ことであり、ディープテック分野のスタートアップ支援を重要な使命の1つと捉えています。その一環として、国立研究所である物質・材料研究機構発のスタートアップへ経営ノウハウを伝授し、研究成果の社会実装を支援することとなりました。世の中の優れた研究成果を社会に還元し、より良い未来へ貢献したいと考えています。
結晶と光で社会に貢献する
21世紀は光の時代です。私たちの想いは「結晶と光で社会に貢献する」ことです。そして、後に続く研究者や製造業のベンチャーに、夢と希望を与えるような存在になっていきたいと考えています。
以上、第23期事業報告および計算書類、ならびに今期の注力分野についてご説明しました。
続いて、決議事項の各議案についてご説明します。まず、第1号議案である取締役7名選任についてです。取締役全員は本総会終結時をもって任期満了となります。それに伴い、取締役7名の選任を一括してお願いするものです。取締役候補者は、招集通知48ページから51ページをご覧ください。
続いて、第2号議案である取締役に対する業績連動型株式報酬制度導入についてです。招集通知52ページをご覧ください。当社の取締役の金銭報酬額は、2019年5月31日開催の当社定時株主総会において、年額3億円以内とご承認いただいています。
今般、役員報酬制度の見直しを行うこととし、当社の中長期的な企業価値向上に向けた取り組みをより強化し、株主のみなさまとの一層の価値共有を進めることを目的として、社外取締役を除く当社の取締役に対して、既存の報酬枠とは別枠で新たに業績連動型株式報酬制度を導入したく、本議案の承認をお願いするものです。
割当株式数および金銭額の算定方法などの詳細は、招集通知52ページから54ページをご覧ください。以上が決議事項の説明です。
それでは、ここでこの後の進行方法について、おうかがいします。まず、すでに提出している報告事項および決議事項について、株主のみなさまから審議に関するご質問をお受けします。その後、決議事項につき採決のみ行います。こちらの方法にご賛同いただける株主さまは、拍手をお願いします。
(会場拍手)
古川:過半数のご賛同を得たため、こちらの方法で進めます。ご質問のある株主さまは挙手をお願いします。なお、ご質問は1回につき1問としますので、ご理解くださいますようお願いします。
質疑応答:ライコル社について
質問者:注力分野のトップに挙げていたイスラエルの会社について、発表から約4ヶ月経ちました。海外企業の買収は決して簡単ではありません。連邦的な経営をイメージされているのか、それとも支配的な経営をされるのか、PMIの進捗やスケジュールも含めて教えてください。また、宇宙・防衛分野は非常におもしろいと思いますが、命に関わる仕事のため、そこに関するお考えを教えてください。
古川: せっかくの機会ですので、ライコル社買収の背景についてお話しします。ライコル社の買収は、昨年先方から「ライコル社で扱っている材料に興味はないか」とお話があったことからスタートしました。ライコル社で扱っている材料には非常におもしろいものがあり、私たちの半導体事業にも関連があるため、前向きに考えていました。
ただし、ライコル社に興味を持っていたのは私たちだけではなかったため、「まずは現地で実態をみて判断したい」と思い、昨年6月にライコル社に赴いたところ、先方から「ジョイント・ベンチャーを作らないか」と提案されました。
4日間の滞在中にいろいろ議論しました。ライコル社のことをよく理解し、先方にもオキサイドを理解してもらいました。私がイスラエルを出国する直前に「ジョイント・ベンチャーではなく、オキサイドがライコル社を買収して一緒に取り組まないか」という提案を受けました。おもしろいと思い、その後社内で検討することになりました。それが昨年8月でして、今年1月にM&A合意の発表を行ったということで、数ヶ月で急速に展開した次第です。
しかし、相手はイスラエルの会社ですし、ご存知のように非常にスマートな人たちが多く、交渉もタフになるため担当役員や関係者は苦労しました。
ライコル社とオキサイドは同じ結晶業界の会社なので、PMIについてはやりやすいです。ライコル社はLBOやBBO、KTPなどの波長変換の結晶を扱っており、当社と非常に似た結晶を製造販売している会社ですが、なぜか競合する顧客や分野はほとんどありません。
当社は半導体分野とヘルスケア分野に、ライコル社は美容や宇宙・防衛、エネルギーの分野に長けています。そのため、買収後も支配というより、ライコル社として引き続き独立して取り組んでもらう予定です。
ライコル社は世界各国にいろいろな営業チャネルを持っており、当社の製品のクロスセルもできます。これからシナジー効果による発展も期待できます。
宇宙・防衛分野に関しては、社内でも議論はありますが、現在の状況においては非常に重要な分野です。例えば最近の米中の対立や台湾問題、ロシアによるウクライナ侵攻が起こる中、日本でも「防衛をどうするか」と積極的な議論が進んでいます。そこで、このような事業を進めるのは、当社の重要な役割の1つだと考えています。
質疑応答:円安の影響について
質問者:このところ、為替市場で非常に円安が進行しています。これが今期以降の御社の業績に与える影響についてご説明をお願いします。
古川:ここ数日で1ドル140円と急速に円安が進んでいます。当社は売上の7割近くを海外に販売していますが、主要なお客さまとのビジネスは円建てで行っているため、売上に関しては為替の影響はあまり受けません。今期業績に関しても、ある程度計画のとおり見込めると思います。
一部の部品にドル建てで購入しているものもあるため、原材料費の高騰にもつながりますが、お客さまにご理解いただき製品の値上げなどに努めています。今のところ為替の影響はできるだけ受けないような経営体制・方針としています。CFOの山本からも補足でご説明します。
山本正幸氏(以下、山本):山本です。古川の説明に加えてご説明します。このたびライコル社が連結に加わり、2024年2月期の第2四半期から連結を開始する予定です。そうしますと、為替の影響を受ける度合いは以前よりも高くなると認識しています。
イスラエルの通貨は新シェケルという単位です。一般にはほとんど知られていないと思いますが、こちらは、米ドルとユーロにほぼ連動して評価がなされると言われています。買収するにあたり、当社でもそちらの相場推移をいろいろと調べており、おおむねそのように理解しています。
連結する際には、先方の通貨建てを円建てで表示することになるため、影響は避けられないと思っています。ライコル社の売上高は、当社の売上高に対しておよそ20パーセントの比率です。為替変動に応じて、特に売上高が影響を受けるほか、損益も同じような影響を受けることになると思います。
また、ライコル社が持っている資産等にも影響するため、為替リスクをゼロにすることは不可能であると考えます。そのため、できる限りリスクを低減させる実効性のある枠組みを作るため、いろいろな検討を進めています。
質疑応答:半導体事業における調達部品の不具合について
質問者:技術関連のお話は詳しくわかりませんが、大変夢のある事業をたくさん抱えていて、今後が大きく期待できると思っています。
先端的な技術を確立されていることは承知していますが、今年の春先に、半導体分野で外部から調達している材料に不具合が発生したと資料に記載されています。その後ある程度改善し、対策されているとのことですが、原因がまだ完全なかたちで解明されていないと認識されています。
極めて精緻な技術で、開発の精度はかなりのレベルにあることはわかりますが、大変重要な技術のため、不具合が出た時にわからないと、ユーザー側も不安だと思います。新しい技術ですし、他の技術や材料と組み合わせた場合にも諸問題が出る可能性はゼロではないと思います。この対策や考え方について、もう少しわかりやすいご説明をお願いします。
古川:昨年発表した半導体事業における調達部品の不具合に関して、ユーザーはもちろん株主のみなさまにもご心配をおかけし、大変申し訳ないと思っています。こちらに対しては第一優先で取り組んでおり、不具合の原因はほぼわかってきましたが、まだ完全には解決していない状況です。
なぜ今回のようなことが起きたかをご説明します。当社のレーザ装置は、波長が非常に短い266ナノメートルの紫外線のレーザを出すもので、これは世界で最先端の技術です。このレーザのエネルギーは非常に高く、人間が紫外線に当たると日焼けするのと同じように、自身の出す紫外線レーザに当たっていろいろな部品が日焼けします。
そのため、レーザの寿命を長くするのは非常に難しく、市販されているレーザは持って1ヶ月、長くても数ヶ月持たない状況でした。そのような中で、当社が得意とする技術を活かして、紫外線を出す非常に良い結晶を作り、寿命が1年以上持つようなレーザを作り上げました。
当社のエンドユーザーであるインテルやサムスン電子、TSMCといった半導体の工場は、24時間365日連続して運転しています。当社のレーザを用いた検査装置を止めると大変なことになってしまいます。寿命の長い安定したレーザの開発に成功したことが、当社のビジネスの急成長につながりました。
もともとこの分野は、当社の競合であるCoherent社という世界トップのレーザメーカーがシェアをほぼ独占していましたが、当社が最先端のレーザを作り出してからシェアをどんどん上げ、現在は30パーセントくらいまできていると思います。
世の中で普通に販売されている部品を買ってそのまま組み合わせてレーザを作ることは比較的簡単にできますが、最先端の製品を生み出すには、開発中のものや、やや不完全な部品も採用し、特に最高性能のものを組み合わせる必要があります。100パーセント保証された完成部品を購入して使用すれば良いと思われるかもしれませんが、それでは海外企業と全く同じ製品しかできません。調達部品の不具合を解明することに時間がかかったのは、このように最先端の開発部品や技術も取り入れているためです。
当社が提携している企業の中に、時価総額を非常に上げて急成長した企業がありますが、最先端の製品を作る時には、開発中のものを使いながら進めていくのが必要だと何度も教えていただいており、当社もそれを参考に取り組んでいます。
質疑応答:第2号議案について
質問者:第2号議案についておうかがいします。現在、御社はまだ配当をしておらず、スタートアップのために内部留保を優先しているとのことです。赤字ではないため、そちらに関しては良いと思いますが、配当もしていないのに役員だけストックオプションを要求するのはWin-Winの関係ではないのではと思います。そのあたりのお考えをお聞かせください。
古川:実際に当社はまだ配当しておらず、先ほどお伝えしたとおり、今は企業価値を上げるのが大切ということで、利益を研究開発や設備投資に当てています。しかし、こちらをずっと続けるわけではなく、ある程度内部留保が貯まってきたら、将来的には配当を考えていきたいということをまずお伝えいたします。
私を含め役員はもちろん、従業員も「企業価値を上げる」をキーワードとして取り組んでいます。他の企業と比べるわけではありませんが、役員の報酬がそれほど高く推移してきたとは考えていません。
役員のモチベーションを上げるために、現金報酬を上げるよりも業績に連動した株式報酬制度を導入したほうが良いと考えました。株主のみなさまに審議いただくのは役員向けの株式報酬だけですが、承認をいただいた後は社員全員に株式報酬を準備しています。特に幹部社員に関しては、役員と同じように業績に連動した株式報酬を計画しています。そのような意味で、今回の株式報酬の導入は、社員全体のモチベーションを上げるために非常に良いものだと思っています。
結果的には、株主のみなさまの期待に応えるようにしたいと考えています。本件に関する制度を検討している山本からも、追加でご説明します。
山本:役員向けの株式報酬制度に関しては、期間が過ぎれば自動的に受け取ることができる設計ではなく、いくつかの閾値を超えることを条件にしています。会社の企業価値を上げ、株主のみなさんに満足いただいた上で、弊社役員が株式報酬を受け取る設計です。そのため、古川からもご説明したとおり、結果的に株主のみなさまとも価値観や目線を共有したかたちで企業価値向上に臨めるものと認識しています。
質疑応答:ライコル社買収のメリットについて
質問者:ライコル社はKTPやPPKTPが非常に有名だと思いますが、PPLN、PPLTをメインで扱ってきた御社との関係と言いますか、特にKTPは非線形光学定数的にLTと同じくらいだと思います。技術的な戦略や棲み分けはどのように考えていますか?
古川:量子の分野ではレーザの光を使いますが、光を作る時に半導体からの直接の光ではなく波長変換素子という素子を使い、システムで利用したい波長の光を作り出しています。そのため、必ず波長変換の素子が必要とされます。波長変換素子の中にはPPLN、PPLT、PPKTPの3種類があり、どれを選ぶかはお客さまのシステムによって違います。
当社のPPLNやPPLT素子があると、マーケットの半分くらいは取れますが、残りはライコル社のPPKTP素子が必要とされます。そのため、当社とライコル社が組んで、その3種類のすべてを揃えることにより、お客さまが量子分野で必要とする波長変換素子をほぼワンストップで提供し、ビジネスチャンスを広げることが一番の戦略となっています。
もう少し技術的な内容として、波長変換素子はどのような棲み分けがあるか、どのように異なる波長を利用するかという内容に興味をお持ちだと思いますので、Co CTOの藤浦から詳しくご説明します。
藤浦和夫氏:技術担当の藤浦です。古川からお伝えしたとおり、PPLN、PPLT、PPKTPは、主に量子分野で大きく発展すると期待されている素子です。
当社が製造販売しているPPLNやPPLTは、比較的波長の長い光の発生を得意とする波長変換素子です。その波長の中でも特に重要なのは、通信で利用されている1.55ミクロンという赤外の波長帯です。PPLNやPPLTはその波長の光を効率よく発生することができる素子です。
一方で、ライコル社が製造しているPPKTPは、比較的波長の短い、いわゆる可視光を効率よく発生できる素子です。量子コンピューティングに利用される方式は複数ありますが、いくつかの方式では可視光を利用します。その際に使われるのが、ライコル社のPPKTPという材料です。
今後そのような量子コンピュータを通信でつなぐ技術が重要になると言われており、その量子通信システムの開発をしている企業が先ほどご紹介したLQUOM社です。
量子コンピュータをつなぐ通信システムでは、通信波長帯の光を利用する必要があるので、当社が得意とするPPLNやPPLTが使われることになります。このように可視光から通信波長まで幅広い波長を利用することで、今後量子の技術は発展すると考えられており、今回そのすべての材料を獲得できたことは非常に重要な成果であると考えています。
質疑応答:取引先企業の比率について
質問者:先ほど、全体の売上の7割が海外で、円建てとうかがいましたが、上位の株主であるニコン、レーザーテック、島津製作所などとは、もうそれほど取引がないのでしょうか?
古川:いずれの会社とも取引があり、取引額も増えています。株主になっていただいたのは今から十数年ほど前で、以来コンスタントに取引は続いていますが、他の企業との取引が伸びてきたため、それらの国内企業との比率が相対的に下がってきたということです。
質疑応答:人材採用の基準と成長への考え方について
質問者:事業報告の対処すべき課題の中から、優秀な人材の採用という切り口で質問します。昨年末に、役員を除く全社員の給与を一律で毎月3万円アップという、社員のモチベーションを上げる大英断をされたことが山梨でも脚光を浴び、新聞にも掲載されました。他の企業はせいぜいインフレ手当として一時金を出す程度にとどまりますが、この御社の取り組みは株主としても大変誇りに思っています。
一方で、株主の本音としては、人件費が上がるということは固定費が上がるということで、その意味では利益追求型で固定費を抑えて、利益を計上して内部留保を充実させてほしいという思いもあります。
そのような中で一連の説明をうかがい、やはり目先の利益を追求するよりも、将来を見据えて、社員のモチベーションアップに主眼を置いた経営を進めていく考えであることが大変よく理解できました。上場後は社員数も増えていますが、優秀な人材を確保する際に、どのような点を基準として採用しているのでしょうか?
それに関連して、採用した優秀な人材が新しいものを生み出して会社を成長させていくためには、どのようなところに主眼を置いて育成するのか、さらに、その人材がどのように成長して会社に貢献するのか、いわゆる定性面の質問にはなりますが、社長の考えをお聞かせください。
古川:昨年末の従業員の給与を一律毎月3万円アップするという人的資本への投資が業績に与える影響の大きさと、長期的な施策としての採用人材の育成の方法、社員にどのようなことを期待しているのかについて回答します。非常に重要なご質問かと思います。
まず昨年末に、役員を除く全社員に対して一律3万円の給与アップという投資を行いました。1人につき年間で36万円のアップですから業績にもインパクトは大きいですが、一方で社員のモチベーションはかなり上がったと思います。日々の仕事に取り組むのは従業員一人ひとりであり、パートを含めた全社員が自分自身の価値を上げることに注力することが、ひいては企業価値のアップにつながります。
この賃上げで今年の新入社員の給与も上がり、高卒の場合は年代に応じてですが、初任給が18万円から21万円になりました。高卒で21万円は全国でもかなり高いレベルです。学部卒は22万円から25万円に、修士卒は27万円、博士卒では30万円以上となり、来期の新卒採用にも非常に効果が出ています。
昨年も一昨年もそれぞれ20名近く採用していたのですが、上場したからといってすぐに優秀な人材が入ってくるわけではありませんでした。毎週のように面接しても、ほとんどの学生は他の大企業を10社、20社と受けており、そちらと比較しているのです。内定を出してもすぐには決まらず、実は昨年の今頃はまだ1人も内定がありませんでした。
今年は、現時点で、有名国立大学の博士卒・修士卒というような非常に優秀な方が、すでに4〜5名内定しています。会社の業績が影響しているのか、IR活動などで認知度も上がってきたのか、あるいは報酬を上げたからか、さまざまな理由があるかとは思いますが、報酬アップもインパクトが大きかったのだと思います。
私自身はもともと公務員で、23年前にいきなり会社を興したため、経営のことはまったくわからない素人でした。いろいろな本を読んで経営の勉強をした時に、ある本で「会社の規模は社長の器で決まる」ということを知り、非常にショックを受けました。
「自分の大好きなこのオキサイドという会社が、私の器で決まってしまったらどうすればよいのだろう」と考えた末、私が出した答えは「自分より優秀な人材を集めればよいのだ」ということでした。
したがって、人材採用の際は、常に「この人はどのようなところが私よりも優れているのか?」「私にはないどのような能力を持っているのか?」という点を基準に判断するようにしています。そのため、入社していただいた方一人ひとりが、必ず私にはない能力やより優れた能力を持っているため、会社の成長に大きく貢献してくれています。
社員全員が、すべての仕事を同じくこなす金太郎飴のような人ではなく、中には社長として使いにくいと感じる人や、専門分野に特化した強いこだわりを持つ人もオキサイドには多いです。ある分野において優秀な人、能力を発揮できる人の集合体がオキサイドだと思っています。
採用した人材がどのように成長してほしいかについてもご説明します。毎月初めに行っている会社の昼礼で、「自分自身の価値を上げて、他社からスカウトされるような人材になってください。例えば、野球のプロなら大谷翔平選手やイチロー選手など。私たちは結晶のプロ、レーザのプロ、あるいは経理のプロになりましょう」と伝えています。社員全員が、会社の仕事を通じて、会社をうまく利用して、世界で通用するプロの人材に成長してほしいと願っています。
IPOやライコル社の買収などを通じて、当社はどんどん状況が変わってきています。会社自体がどんどん進化していますから、仕事を通じて新しい課題解決にチャレンジしながら経験を積んでほしい、一人ひとりが自分の価値を上げて、他の会社からスカウトされるようになってほしいと、従業員のみなさんに伝えています。
ただ、本当に他社にスカウトされてしまうと困ります。その人の給料を上げる場合もありますし、給料を上げなくても仕事で学ぶことがあれば残ってくれる場合もあります。実際にスカウトされて大手企業に転職してしまった人や、大学の先生になった人もいますが、その後もずっと関わりがありますし、また当社に戻ってきてくれる人もいます。
入社式や昼礼で、社長が「他の会社からスカウトされる人材になってください」などと言うので驚かれますが、私の気持ちは社員全員が理解してくれていると思っています。結果的に、そのような意識が一人ひとりの価値を上げ、ひいては会社の価値を長期的に上げることにつながってきたのだと思います。
また、昼礼で、ロシアの有名な小説家トルストイの言葉を何度か紹介しています。人は死ぬ時にどのようなことを思うか? と言いますと、もっとこうすればよかった、もっと家族を大切にすればよかった、もっと仕事をすればよかったなど、誰もが「もっと◯◯すればよかった」と後悔するらしいのです。
オキサイドは創業から私が社長を務めていることから私が会社の主役のようにも見えますが、従業員一人ひとりにとっては、その人それぞれが、人生のヒーローであり、ヒロインであるわけです。何かの縁があってオキサイドに集まったからには、一人ひとりの従業員が「自分の人生をオキサイドとともにしてよかった」と思えるような会社にしていきたいと思っています。
質疑応答:工場見学について
質問者:御社が上場した2021年に工場見学を希望したのですが、危険な箇所もあるという理由で断られました。ところが昨年、北杜市から毎月出ている会報に、武川小学校の生徒たちが工場見学に訪れたという記事が載っていたのです。
もしよろしければ、工場見学できるようにしていただけるとありがたいのですが、いかがでしょうか?
古川:工場見学をぜひ企画してほしいというご希望と受け取りました。アフターコロナに向けてWebでのイベントを開催していますし、工場見学も現在検討中です。新型コロナウイルス感染症の位置付けも2類から5類に移行しましたので、政府の動向にも注意しながら、株主のみなさまとの貴重な機会を企画していきたいと考えています。
機関投資家の方や個人の株主さまからも同様のご要望をいただいているため、今後そのような機会も持てるのではないかと思っています。経営企画担当の内田から補足でご説明します。
内田誠二氏:内田です。工場見学に関しては、本当にたくさんの株主の方からご依頼いただいており、なんとか実現に向けて調整を進め、前向きに検討したいと思います。見学が可能になりましたら、当社ホームページ等でご紹介します。
第4工場、第5工場、第6工場と、新設された工場もあるため、ぜひご見学いただければと考えています。よろしくお願いします
質疑応答:M&Aのクロスボーダー案件について
質問者:先日、浜松ホトニクス社からデンマークの企業を買収しようとして却下されたという発表がありましたが、あらためて今、光やレーザはおもしろいテーマとして広がりがあると思っています。
御社はM&Aをマネージしていますが、クロスボーダー案件が安全保障上難しくなっているのではないかという印象を持っています。その点について、古川社長の所感や、光・レーザのこれからのおもしろさについてお話しいただけますでしょうか?
古川:これから当社が企業価値を向上させていくためのM&Aを実施するに際して、海外企業に対しては規制の影響で非常に難しくなっているのではというご質問だと思います。
実際に、難しくなると思います。私たちの株主の会社が、イスラエルの企業を買収しようとして却下されたこともありますし、他にも世界中で他国の企業を買収しようとする動きはありますが、特に最近の地政学的リスクの影響でクロスボーダーM&Aは難しくなるのではないかと考えています。
ただし、浜松ホトニクス社のデンマークの案件に関しては、各所で報道されているように、デンマーク政府がウクライナ問題の現状に対してナーバスになりすぎている面もあると思います。両社がデンマーク政府にクレームを申し立てるとしており、結果がどうなるかはわかりません。
私たちからは、「いつこのようなM&Aを行う」と具体的にはお伝えできないのですが、これから企業成長を進めていく上で、海外のM&Aはイスラエルの一件だけではなく、企業価値を上げるために必要であれば、今後も検討していきたいと思います。
さまざまな規制の有無、あるいは本当にそれが企業価値を上げることにつながるかどうかもしっかりと検討しながら進めたいと思います。
質疑応答:NTTグループとの関係性について
質問者:1号案件の社外取締役はお2人ともNTT出身で、大株主にもNTTアドバンステクノロジとNTTファイナンスが名を連ねています。社外取締役は会社を分けるのが一般的ではないかと思うのですが、こちらのお考えをお聞かせください。
また、NTTグループは最近、6Gなどの分野に力を入れてきています。資料に記載されていたかもしれませんが、御社はそのようなビジネスチャンスも視野に入れているのかを教えてください。
古川:まず、社外取締役の2名について、中村二朗は現在もNTTアドバンステクノロジに勤めています。私たちもNTTとは取引がありますが、取引内容はごく通例的なもので、取引額も相互の会社の売上規模に対して非常に小さく、売上高の1パーセント未満となっています。そのようなことから、社外取締役として活動を妨げるものではないと考えています。
もう1名の社外取締役である為近恵美は、NTTアドバンステクノロジの元社員ですが、退職後すでにかなりの期間が経過しています。その後、横浜国立大学の教授となっており、横浜国立大学とも私たちは取引があります。ただし、その取引額は0.1パーセント以下であるため、こちらも社外取締役としての活動を妨げるものではないと考えています。
オキサイドとNTTグループに一番大きく関係するのは「IOWN(アイオン)」だと思います。今後、次世代のさまざまな高速通信はすべて光技術が関わってきて、そこには私たちにとって多くのビジネスチャンスもあります。
当社の結晶やデバイスが将来の「IOWN」の一部に使われることになれば、私たちのビジネスも広がり、株主であるNTTアドバンステクノロジ、NTTファイナンスにも喜んでいただけると思っていますので、いろいろと検討を進めていきたいと考えています。
質疑応答:SiC市場への参入について
質問者:パワー半導体のビジネスについて、スライドの円グラフで示されていたように、日本企業のシェアはゼロに等しい市場に参入していくということですが、目標シェアは10パーセント程度と決して高くなかったように思います。御社が高いシェアを取れるビジネスに入っていく中で、そこに比較的慎重な目標を定めた狙いを教えてください。
また、SiCrystal社はロームグループですので、正確には、日本企業と無関係とは言えないのではないかと思います。そちらについても考えをお聞かせください。
古川:SiC市場への参入に際して10パーセントの目標が低すぎるのではということ、SiC単結晶の分野ではロームグループがいるため、市場はゼロではないのではということに関してご質問いただきました。
まず2つ目のご指摘については、円グラフのように欧米企業が90パーセント以上を占めていますが、「その他」にローム社が入っています。そのような意味では、日本企業は「ゼロ」ではなく「若干」というのが正確なところです。そちらについてはおっしゃるとおりですので、訂正いたします。
実は、この欧米企業が市場のほとんどを占めている現状が、大きな問題となっています。いくつかの日本企業は、欧米企業から結晶を買ってデバイスを作っています。
ところがある話では、一番良い結晶は欧米企業で使われてしまうため、日本企業に必ずしも高品質のものが来るとは限らず、やや品質の劣る結晶が来る場合もあり、デバイスメーカーで苦労して使っているということを聞きます。
ビジネスである以上、まったくSiCウエハを海外から購入できないということにはならないと思いますが、米中問題やウクライナ問題から、サプライチェーンは非常に重要だと認識されています。日本のデバイスメーカーが、欧米から高品質なSiCウエハを将来も継続して買えるのか、かなり心配なところではないかと思います。 かねてから日本メーカーはSiC市場に参入したいと考えていましたが、SiC結晶そのものも、今から20年ほど前、新日鉄(現・日本製鉄)社などが開発していました。当時、日本の技術は世界をリードしていたのですが、新日鉄社の売上規模からすると当時のSiCマーケットは非常に小さく、その規模ではビジネスにならないということで止めてしまいました。その技術がアメリカに渡り、現在はツーシックス社やウルフスピード社などが量産製造しています。
日本が先駆けていた技術であったにもかかわらず、このような状況なってしまったのは残念です。今はアメリカに加えて欧州や中国のメーカーもどんどんSiC結晶を製造しており、新たに数十社が参入しているという噂もあります。
今のSiC結晶の製造は、すべて昇華法と呼ばれる技術を使い、気体を介して結晶を作っています。結晶は固体ですので、通常は原料を溶かし液体にして、その液体を固めて作っていますが、今のSiC市場で使われている技術はほぼ100パーセント昇華法です。
私たちがこれから昇華法を用いて市場に参入しても勝てる見込みはないと考えています。勝てるとしたら溶液法しかありません。溶液法は液体から固体を作るため、結晶の品質が格段に上がるのです。実際に、名古屋大学の宇治原徹教授が溶液法で作ったところ、格段に結晶の品質が上がりました。ただしそれは大学の研究であり、まだ量産技術になっていません。
これからがんばれば、私たちも溶液法で大型結晶を作ることができると思います。しかし、本当に市場に参入するなら、すでに先行しているような欧米の昇華法に対して勝てるかどうかがポイントとなります。SiCには「高品質であれば価格が高くても買う」という用途と「安くなければダメ」という用途があり、私たちが狙うのは前者の用途です。そのマーケットは全体の1割程度ですが、まずはその1割のところを狙っていくのが私たちの戦略です。それがうまくいけば、将来そこから展開することも可能です。まずは量産技術を立ち上げられるかどうかが勝負だと思っています。
採決
特記事項および決議事項に関して十分審議を尽くせたかと思います。これをもってすべての審議を終了し、議案の採決に移ります。ご賛同いただける株主さまは拍手をお願いします。
(会場拍手)
ありがとうございます。過半数のご賛同を得ましたので、各議案の採決に移ります。まず、第1号議案、取締役7名選任の件について、議案にご賛成いただける株主さまは拍手をお願いします。
(会場拍手)
ありがとうございます。書面またはインターネットにより議決権を行使された株主さまを含め、過半数のご賛成を得ましたので、本議案は原案どおり承認、可決されました。
続いて、第2号議案、取締役に対する業績連動型株式報酬制度導入の件について、原案にご賛成いただける株主さまは拍手をお願いします。
(会場拍手)
ありがとうございます。書面またはインターネットにより議決権を行使された株主さまを含め、過半数のご賛成を得ましたので、本議案は原案どおり承認、可決されました。
以上で、本日の目的事項をすべて終了しました。これにて株式会社オキサイド第23回定時株式総会を開会します。
株主のみなさまのご協力により、滞りなく進行できましたことに厚くお礼申し上げます。引き続き変わらぬご支援をよろしくお願いします。本日はご多用のところ、多数ご出席いただきまして、誠にありがとうございました。