2023年9月期第2四半期決算説明
司会者:みなさま、こんばんは。本日は、投資Webのオンラインセミナーにご参加いただき誠にありがとうございます。
今回は、本日5月15日に今期の営業利益を21パーセント上方修正し、最高益予想を上乗せするという強い決算を発表したばかりの、株式会社ツナググループ・ホールディングスの決算当日のセミナーとなっています。
まず、米田社長に足元の決算についてお話をうかがい、決算をひもとく上で重要なツナググループ・ホールディングスのビジネスについて社長からお伝えいただきます。次に、米田社長に決算について詳しくお話をうかがっていきたいと思います。最後は、質疑応答の時間です。
それでは、ご紹介します。株式会社ツナググループ・ホールディングス代表取締役社長の米田光宏さまです。米田社長、どうぞよろしくお願いいたします。
米田光宏氏(以下、米田):よろしくお願いいたします。
ハイライト 2023年9月期 第2四半期
司会者:今回の決算ですが、スライドに「四半期業績として、売上高・営業利益・営業利益率が創業以来過去最高」と記載があります。米田社長から見て、今回の決算は率直にどのような感想をお持ちでしょうか?
米田:後ほど詳しくお伝えしたいと思っていますが、我々の事業内容・事業モデルを一言で言いますと、非正規雇用を中心とした現場スタッフのみなさまの採用を支援する仕事です。例えば、飲食店、ホテル、観光業、物流ドライバーや倉庫のピッキング作業等を行っている方の採用を支援しています。
そのような意味では、2020年以来続いていたコロナ禍の中で、物流・サービス業の状況が大きく変わり、人手不足という構造的社会課題が明らかになってきているという印象です。我々はお客さまを中心に採用をしっかりと支援することに努めてきた結果、今回の決算になったと考えています。
司会者:アフターコロナとなったことに伴ってインバウンド需要が生じてくる他、人手不足という社会問題は今後も続く見込みです。これらの外部環境によって今回の業績が叩き出されたといいますか、そのような強い数字だったと思います。この業績は続いていく見通しなのでしょうか?
米田:トップラインに関しては、期初事業計画でも非常に高い数字を見込んでいました。これは、アフターコロナや日本が抱える構造的課題としての人口減少、働き手不足をしっかり捉え切るという意志です。
今回、営業利益と営業利益率が良い結果でしたが、この結果に至るまで当社も非常に苦しみました。我々はサービス業のお客さまが多く、コロナ禍で経済が止まり、我々も大きく業績に影響を受けました。そのため、構造改革をしっかり進めなければなりませんでした。
結果として、非常に筋肉質な体質、仕組み化、構造へと進化したことにより、トップラインの伸びとともにしっかりとした利益を出すことができたのが1つの大きなポイントではないかと思っています。
ご質問の「この業績は続いていく見通しなのか?」といった部分に関しては、特にサービス業を中心とした現場の人手不足はおそらく今後も続くと思っています。そのような意味では、我々が果たすべき役割は継続していくと考えています。こちらについては、また後ほどお伝えします。
司会者:今後の見通しについて簡単にまとめていただきました。増収の背景や、どのようなところに注目していけばよいのかについては、後ほど詳しくおうかがいしたいと思います。
ハイライト 2023年9月期 通期業績予想(修正)
司会者:決算をご覧いただき、成長性について気になっている方も多いと思いますが、通期の業績予想を発表しており、利益が上方修正されました。そちらについて簡単に教えてください。
米田:営業利益の通期業績予想に対し、今回進捗率が77.3パーセントとなりましたので、上方修正させていただきました。営業利益を3億3,000万円から4億円に上方修正しており、上方修正後の進捗率は63.9パーセントです。
FY23 第2四半期業績 収益構造四半期推移
米田:ご質問にありました増収の背景については、決算説明の中で一部ご紹介しますが、先ほどお話しした構造改革がしっかりと進んだことが収益力の改善に一番寄与していると考えています。
スライドをご覧のとおり、特に固定費率の低下が非常に大きいです。変動費化に努めた結果、売上高は成長し、固定費は低下しました。そのギャップの中で営業利益率が向上し、営業利益額が膨らんだとご理解いただければよいと考えています。
司会者:「四半期業績として、売上高・営業利益・営業利益率が創業以来過去最高を達成したとのこと、おめでとうございます」というコメントをたくさんいただいています。
先ほど「第2四半期までの進捗率が63.9パーセントもある」とお話がありましたが、もう一度上方修正があるかもしれないという期待感もあります。もちろんまだリリースがない状態ですので、みなさまにしっかり見極めていただきたいと思います。
社会課題への取り組み ツナググループとは
司会者:「人手不足は深刻ですね」「飲食業の人手不足はかなり感じます」「特にサービス業の人手不足は深刻ですよね」という感想もいただいています。
御社の成長性をひもとく上で、人手不足というワードは外せないと思っています。人手不足という社会課題に対して、人材関連ビジネスとしての今後の成長性をうかがいたいと思います。
米田:まず、人手不足がなぜ起こるのかという背景が1つの大きなポイントと考えています。例えば、今年4月に定年退職を迎える方は65歳の方が中心だと思います。65歳の方が生まれたのが1958年で、この年の出生数は約165万人です。2023年4月に新社会人になった方は2000年生まれで、出生数は約119万人でした。
約46万人の差があるということです。兵庫県西宮市の人口は約48万人で、鳥取県の人口は約57万人です。今、1つの大きな都市や県が1年でなくなるほどの人口減少が日本で起こっており、大きな社会課題となっています。
2040年になると、新社会人になる方は2017年生まれで、出生数は約94万人です。それに比べて、2040年に65歳になる方はまさに第2次ベビーブームの1975年生まれで、出生数は約190万人ですので、その差は約95万人となります。
これから毎年、いわゆる労働力人口は1つの政令指定都市に近い状態でなくなっていきます。これが今日本で起こっている大きな社会課題です。
現在、日本全国でサービス業に従事されている方は約78パーセントと言われています。つまり、人口減少がダイレクトに影響するのがまさにサービス業です。当然、省人化・省力化・DXという言葉は叫ばれていますが、サービス業ではなかなか進んでいません。
ここの人手不足解消は、さまざまな手法を使って日本が取り組まなければいけない社会課題として認識しています。
社会課題への取り組み 「労働力需給GAP」は2030年644万人の見通し
米田:ツナググループ・ホールディングスは、アルバイト・パートの採用に特化した事業体です。1つの企業の採用難に関してあらゆる手を使って労働力不足を解消するとともに、日本では2030年に約644万人分の人手不足が発生すると言われていますので、そこに対してもいろいろな手法を使って社会に解決手法を提供していきたいと考えています。
司会者:ツナググループ・ホールディングスのビジネスについての言及もありました。投資家としてはもちろん売買益も狙っていきたいところですが、社会貢献を行う企業に投資することにより自分も貢献していきたいということで銘柄を探している方や、社会課題に興味がある方も、今回のセミナーをぜひ見逃さないで最後までご覧いただきたいと思います。
事業概要 主な顧客企業
司会者:人材不足という社会課題に取り組んでいる企業ということはおわかりいただけたかと思いますので、ここからは具体的にどのようなビジネスに取り組んでいるのかも含めてうかがっていきたいと思います。
2007年の創業当時も、人手不足の中で必要と考えてビジネスを始めたとうかがっています。どのようなビジネスなのかを教えてください。
米田:我々がどのような企業の採用を支援しているかをご覧いただければ理解しやすいと思いますので、スライドをご覧ください。
司会者:実績がすごいですね。
米田:スライドに記載の企業のアルバイトやパートの採用を我々が支援しています。例えば、世界最大のコンビニエンスストアであるセブン-イレブンは、北は北海道から南は沖縄までお店があります。例として、すすき野のとあるお店でアルバイトが急に辞めてしまい、明日のシフトが回らないという時は、まず我々にご連絡いただくかたちになっています。
アルバイトがさっぽろ雪まつりの時だけ必要なのか、レギュラーのアルバイトが必要なのかをお聞きした上で、最適な採用の在り方と手法を提示します。レギュラーで採用したいという要望であれば「アルバイト北海道という媒体を使って週3日という打ち出し方をすれば、一番効果が高いのでは」ということを過去実績や当社のナレッジから導き出し、我々が店長の代わりに媒体会社と交渉します。
また、忙しいからアルバイトを募集するという状況のため、応募の電話が鳴っても店長は取れません。そこで我々が代わりに応募者からの電話を取り、メールの受付を行い、面接会場まで案内します。
現在、日本全国で10万事業所を超える支援実績があり、店長の代わりにアルバイトや派遣の人をアサインするなどの採用活動を行っています。冒頭のご説明と重なりますが、スライドをご覧いただくと「確かにここは人手不足だろうな」と実感いただけるのではないかと思います。
飲食業や販売店、物流企業、倉庫業、ドラッグストアなどのさまざまな現場のスタッフの採用を、どのような人が必要なのかから、どのような手法が必要なのかまでをコンサルティングし、採用活動のアウトソーシングを行うというのが我々の本業です。
司会者:とてもわかりやすかったです。これらの企業を支援しているということで「知っている企業ばかりだ」というお声もいただいていますが、選ばれる理由を教えてください。
米田:先ほど2007年当時のお話がありました。私は2007年に創業する前は、リクルートという会社に勤めていました。リクルートは今も当然ナンバーワン企業ですし、当時もナンバーワン企業でした。一方で、2007年当時も今と同じく、有効求人倍率が1倍を超えて人手不足でした。
私はナンバーワンのプロダクトメーカーにいながら、「八王子駅前のこの居酒屋だったら、リクルートの商品よりは地元の折り込みチラシのほうが人が来るのにな」と思ったり、「花火大会がある時だけ人手が不足しているのであれば、採用ではなく派遣で対応するほうがよいのにな」「ラインをそのまま請負で回したほうが、安定した事業成長を見込めるのにな」と思うことがありました。お客さまサイドに立った感覚と、プロダクトメーカーとして唯一無二の正義である自社のメディアを販売することとのギャップがまさにビジネスチャンスとなるのではないかと考えました。
つまり、プロダクトナンバーワンだから人が来るのではなく、お客さまはどのような時にどのようなことであれば良いのかを一番知りたいのだろうと思いました。
金融業界で例えると、保険の窓口がわかりやすいかもしれません。自分に合った一番良い保険は何かなど、相談したいことにニーズがあり、テレビCMを一番多く流しているところがよいとは思わないのと同じです。
いわゆるプロダクトを売るのではなく、お客さまの立場に立って、一番良いポートフォリオ、金融において最大利回り、採用業界での最大効果をコンサルティングする、IFAのようなことを目指しました。結果として、大手企業を中心にニーズが高い市場だったということです。
例えば、居酒屋1店舗の求人であれば採用人数もそれほど多くないため、テレビCMを流している求人メディアにお願いすることで、採用が充足する確率は高いと思います。
しかし、100万人、200万人を雇用している会社の年間の離職率はアルバイトで約4割・80万人くらいだと言われていますので、その80万人を採用しようと思うと、1社や1つのメディアだけでの求人や、直接雇用というだけではなかなか解決できません。
そのような潜在的・顕在的なニーズに対し、特に大手といわれるエンタープライズ企業の採用支援を行うことから成長が始まったとご理解いただければよいかと思います。
司会者:顧客目線と提案力が選ばれている理由ということですね。
米田:あとはモデルですね。どこにも属していない独立性という観点は、唯一無二のポジションだと思っています。
FY23 第2四半期業績 業績概要
司会者:このような強みを持つツナググループ・ホールディングスの決算について、米田社長より詳細をお話しいただきます。ツナググループ・ホールディングスは東証スタンダードに上場しており、証券コードは6551、本日の終値は715円です。
米田:それでは、本日開示の2023年9月期第2四半期の決算資料を中心にご説明します。四半期業績として、売上高ならびに営業利益・営業利益率が創業以来過去最高となりました。
背景として、1月、2月、3月の人の入れ替わりという季節要因に加え、構造的な人手不足が挙げられます。コロナ禍以降、サービス業の雇用ニーズの高まりをしっかりと受け止められたことが増収につながったと考えています。
また、コロナ禍において我々も構造改革を進め、固定費を削減して変動費化することにより、収益性が大幅に改善されました。その結果、過去最高の営業利益額ならびに営業利益率につながったと考えています。
FY23 第2四半期業績 収益構造四半期推移
司会者:今回の決算の注目ポイントは、課題とされていた利益率の改善だと思います。その背景を詳しく教えてください。
米田:まず、収益構造の四半期推移をご覧ください。コロナ禍において固定費の削減に取り組みました。具体的には今流行りのDXで、日本語で言いますと仕組み化です。
当社は固定費の中でも人件費比率が比較的高い事業モデルです。コロナ禍以前から人件費を削減せずに仕組み化するチャレンジを行っていましたが、うまくいきませんでした。
コロナ禍でリストラはしなかったものの、いったん採用をストップしたことで人件費の自然減がありました。それをデジタルで仕組み化したことが怪我の功名となり、1つ前進できました。
現在は売上高がコロナ禍前まで戻ってきていますが、労働力を変動費化した結果、限界利益率も上昇したことは大きなポイントだと考えています。
司会者:収益構造の四半期推移を見ると、そこが読み解けるということでしょうか?
米田:おっしゃるとおりです。限界利益率はどうしても季節変動がありますが、固定費率が低下している点はご理解いただけると思います。
FY23 第2四半期業績 貸借対照表
司会者:財務状況も改善されているようですが、そちらについてもお願いします。
米田:スライドの貸借対照表をご覧ください。コロナ禍前の2019年は、自己資本比率はおよそ40パーセントでした。コロナ禍の業績悪化を受けて、今期中に35パーセントまで戻すことを目標に財務戦略を立てています。
業績の回復を図りながら、短期・長期借入金の減額を進めたり、サービスのビルド&スクラップを進めることで手元資金を増やしたりする取り組みを行っています。
2023年度3月末時点の財務状況は、自己資本比率が30.7パーセント、D/Eレシオは0.77倍となり、大きく進展しました。自己資本比率35パーセントを目指して、この下半期もしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
司会者:安定した財務状況を実現するために、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?
米田:まず、昨年にシステムの一部譲渡を行いました。我々は売り手として残り、システム自体はシステムを主力としている会社にお譲りしました。
さらに現在は、新規事業として派遣事業の展開を進めています。東証プライム企業でもある日総工産と合弁会社を作ることで、第三者割当によって我々の資産が増えました。
そのような財務戦略とともに、先ほどもお伝えした短期・長期借入金の減額に取り組んでいます。コロナ禍で大きく借入を進めたものを、業績回復に伴ってコンシャスに適正化することで、自己資本比率が一気に改善したと考えています。
FY23 通期業績予想(修正) 営業利益・経常利益を上方修正
司会者:営業利益・経常利益の上方修正についても、あらためてうかがえますでしょうか?
米田:売上高は当初予想どおりですが、営業利益の進捗率がすでに業績予想の77.3パーセントに達しています。これを受けて、通期予想を3億3,000万円から4億円に上方修正しました。スライドの表に記載のとおり、当初予想との差異は前年比186パーセントの7,000万円です。
司会者:186パーセントというのは、大きな数字ですよね。
米田:2022年9月期は、コロナ禍でしっかりと構造改革した結果、利益が出せました。今回は売上高で前年比プラス15.6パーセントと2桁成長の事業計画を組んでいます。
2020年9月期までの構造改革以降に売上が上がっていますので、増分の粗利率が非常に高い状態になっています。これを受けて、今回の前年比186パーセントという上方修正を発表するに至りました。
株主還元
司会者:最後に、株主還元について教えてください。
米田:当社はどちらかといいますとストック型のビジネスモデルですので、投資家のみなさまにはぜひ長い目でお付き合いいただければと思います。我々の株主還元施策としては、配当を重視しています。
我々の業績回復を見届けてくださった投資家のみなさまには、増配というかたちで還元したいと考えています。2022年9月期の年間配当金は5円としましたが、今期は増配し、1株あたりの年間配当金を8円としています。
司会者:今回の決算について米田社長からのご説明は以上です。米田社長、ご講演ありがとうございました。
米田:ありがとうございました。
質疑応答:インバウンド需要復活の影響について
司会者:「賑わいを取り戻しつつある飲食・小売業や、宅配需要が増加している物流業など、多くの業界で人手不足が深刻化する中でニーズは増加する一方ですね」というコメントをいただいています。
また、「中国からのインバウンドがこれから続々と戻ってきて、さらに需要がありそうですね」というコメントもいただいています。インバウンド需要やサービス業の賑わいからも恩恵がある銘柄と考えてよいのでしょうか?
米田:おっしゃるとおりです。年間の訪日観光客数の推移として、2019年は3,188万人でした。当時の安倍内閣も、国策としてインバウンド観光を促進していました。それがコロナ禍の2021年には、なんと24万人まで落ち込みました。
司会者:非常に伸びていたところから、ほぼゼロに近いところまでぐっと落ちたのですね。
米田:そのとおりです。訪日観光客のみなさまは日本でホテルに泊まって外食していましたが、コロナ禍でその需要がなくなり、日本の飲食業や観光業からお客さまが3,000万人以上減ってしまいました。しかし、今後は2021年の24万人から1,000万人単位でお客さまが増えることになります。
司会者:そうなると、御社にも追い風が吹くということですね。
米田:そのとおりです。例えば飲食店やホテルの収益構造は、スタッフ1人当たりの売上×人数です。しかし、スタッフ1人が見られるお客さまの数には限界があります。
我々にもホテル業界のお客さまがいますが、インバウンド利用が中心のホテルは、稼働率が約8割となっています。スタッフが足りずに残りの2割を稼働できていません。ベッドメイクなどにも手が回らないわけです。今のサービス業のほとんどは人さえいれば業績が伸びるという状況です。
ただ単に人手不足を解消するだけではなく、我々がしっかり支援して人が採用できればその企業の業績も伸びていきます。ここが大きなポイントで、人手不足は仕方ないとして終わらせずに、何とか知恵を絞って工夫します。
観光客数はこれから確実に増えますので、スタッフの人数を確保すれば業績は必ず伸びるというビジョンをお客さまと共有し、それを叶えていきたいと思っています。我々の事業成長と、飲食業や観光業などのサービス業のみなさまのこれからの復活のどちらも実現したいと考えています。
質疑応答:AIによる省人化の影響について
司会者:「AIの技術が進み人員が削減されている中、まだ人手が必要な仕事があるのですね」というコメントをいただいています。その人手が必要な業界で、御社がしっかりとシェアを取っているということでしょうか?
米田:おっしゃるとおりです。今まさにChatGPTなどのAIを活用した省力化・省人化が進んでいます。これは我々の「ツナグ働き方研究所」の調べですが、ホワイトカラーとオレンジカラーと言われるサービス業では、自動化による省人化率が異なります。ホワイトカラーに比べて、オレンジカラーは省人化率が非常に低いです。
そういった状況はみなさまにも想像いただけるかと思います。例えば無人のコンビニエンスストアが出てきた時もありましたが、今はほとんどありません。
司会者:確かにニュースで取り上げられたことがありますが、それが広がっていくという流れにはならなかったですね。
米田:「あのコンビニは無人だから行こうか」というお客さまは、それほどいないのですよね。
販売業で売上を増やすには、やはり人の力が必要になってきます。清掃や品出しなどの業務はロボットで自動化できても、売上業績を伸ばすという意味では、オレンジカラーの自動化・省人化はなかなか進んでいないのが現状です。
一方、ホワイトカラーの一般事務職や、専門知識を要する会計職、弁護士、司法書士、税理士などは、AIによる省人化が非常に進んでいます。
先ほどお見せした我々の顧客企業では、売上を上げるにあたってまだまだ人の活躍が期待されている部分がありますので、人手不足解消の需要は引き続き高いと考えています。
質疑応答:過去最高の業績を達成した背景について
司会者:「過去最高の営業利益の背景や成長性について、あらためて教えてください」というご質問です。
米田:ポイントを絞ってお伝えします。まず背景として、日本の抱える構造的な人手不足があります。これは2023年よりも2030年、2030年よりも2040年と、今後もずっと続いていきます。そのような状況に我々がしっかりとソリューションを提供していることが、売上業績の伸長につながったと考えています。
特に2023年の1月、2月、3月はコロナ禍が収束し始め、人手不足感の増大が求人倍率からも明らかになってきています。人が入れ替わる時期という季節性もあいまって、今回の業績につながったと考えています。
営業利益に関しては、過去の営業利益推移をご覧いただくとわかりやすいかと思います。スライドのグラフは5年間の利益業績推移ですが、コロナ禍は非常に苦しい状況でした。
この時期に我々が行ったことは、1つはターゲット業界のピボットです。サービス業の中でも飲食業や小売業を中心に事業を伸長させてきましたが、コロナ禍においてはそのような業界での事業展開が厳しくなり、物流業にターゲットを絞りました。
巣ごもり需要の高まりで宅配事業が非常に伸びたため、ドライバーや倉庫のピッキング作業者の採用支援に注力した結果、新たなお客さまを獲得できたということです。
好決算の要因として固定費の削減も挙げられます。この利益業績の中、構造改革をしっかりと進め、固定費率は2021年度第2四半期に34.2パーセントだったところを、2年間で6.8ポイント下げることができました。
売上の伸長と合わせて固定費を削減したことで、収益性が改善され、構造的に利益が出る体制ができました。このような背景から、今回の好決算および業績予想の上方修正に至っています。
質疑応答:季節要因による業績の偏りについて
司会者:「労働集約型のビジネスという面があると思いますが、季節要因で期によって偏りが出るのでしょうか?」というご質問です。
米田:我々はアルバイトやパートなど常時雇用の採用を支援していますので、基本的には年間を通してあまり変わらない状態です。しかし、やはり1月、2月、3月は人が入れ替わる時期ですので、我々にとっても繁忙期ではあります。
売上高の業績推移をご覧いただくと、あまり山谷がないことをおわかりいただけるかと思います。期ごとの大きな偏りはありませんが、第2四半期は我々の一番の稼ぎ時で、お客さまの期待に一番応えられる時期かと考えています。
司会者:第2四半期が稼ぎ時というのは、投資を検討される方は押さえておくといいかもしれないですね。
質疑応答:競合との違いについて
司会者:「競合との違いについて教えてください」というご質問です。
米田:これはよくご質問いただくのですが、実は競合というものがありません。先ほど我々の主なお客さまをご覧いただきました。
司会者:大変有名な企業が多いです。
米田:おそらく投資家のみなさまも、これを見て「この会社はリクルートしか使っていないな」「この会社はマンパワーでしか派遣を使ってないな」とは想像されないと思います。
「いろいろな人材系の企業とお付き合いし、採用活動を行っている」と思われるのではないでしょうか。同様に、我々は人材系といわれるセクターに所属している企業のみなさまのほぼ全部とお付き合いがあります。
現在、求人媒体だけでも2,800媒体ほどあります。我々はその2,800媒体のすべてと契約を結んでおり、お客様の課題により媒体をご紹介することができます。したがって、我々に競合はなく、すべての人材企業は、お客さまの採用課題を解決するパートナーになっているのです。
強いて挙げるとすると、エンタープライズ系企業の人事のみなさまが競合であると言えます。我々のような知見を持って企業の人事を行うと、我々がいらなくなるからです。
司会者:自社で解決されると入れないため、人事部が競合ということですね?
米田:そのとおりです。ただし、そのような企業はほとんどないと思います。
質疑応答:顧客獲得について
司会者:「サービス企業とほぼつながっている」というお話がありました。ここからさらに顧客が増えていくことはありますか?
米田:HR領域とはヒューマンリソースのことですが、この業界は今どんどんHC(ヒューマンキャピタル)という業界に変化しています。なぜかといいますと、ヒューマンリソースの「リソース」とは資源のことで、石油などと同じです。基本的にはかけ流しといいますか、使っていくものをいかに最大効率で使っていくかがHRの考え方です。
これはまさにコロナ禍前の考え方、もしくは人口が増えていく時の考え方です。これが今どんどんヒューマンキャピタルという考え方になっています。
司会者:どのように変わったのでしょうか?
米田:「キャピタル」とは、資本です。「石油をプラスチックにして商品にする」は、まさに投資です。人材を「リソース」として考えるのではなく、「投資対象」として人材に投資することによって資本化し、成長させていくサービスモデルです。
例えば、タレントマネジメントと言われるような領域で、研修したり最適配置を行うことで個人の可能性を伸ばし、業績を伸ばすという考え方です。
5年前、テレビCMやタクシーのサイネージを見た時に出てくる人材系のコマーシャルというと、だいたい派遣会社もしくは「バイトル」「リクナビ」のような媒体がほとんどだったと思います。
しかし今、テレビCMやタクシーのサイネージを見ると、「人の最適配置を実現して売上を伸ばしましょう」「研修やe-ラーニングで人を成長させましょう」というのがどんどん増えていると思います。
今まで我々の協力パートナーは、基本的に人集めの方々が中心でした。人手不足のため、パートナーのみなさまとはこれからも協働を行います。
それに加え、HRテックと言われるような、タレントマネジメントやリスキリングで一人ひとりの生産性を高めていくことに取り組んでいる協業パートナーのみなさまとも組むことにより、お客さまの最適配置、最適ソリューションを実現していきたいと考えています。
質疑応答:特定技能、技能実習の制度見直しと事業の関連について
司会者:「政府の有識者会議で、技能研修や特定技能の制度見直しを検討しているとニュースで見ました。政策関連にも期待しています」とコメントいただいています。政策に関連する銘柄と考えてよいでしょうか?
米田:我々が今大きく取り組もうとしているのが、グローバル人材の活躍です。644万人の人手不足が明らかになっている中で、どれだけドメスティックな潜在労働力を活用しても足りないというのが日本の構造的な問題です。
そのような意味で、外国人人材の活躍は人手不足の解消やサービス業の企業成長に切っても切り離せないものだと考えています。
ご質問にあった、特定技能や技能実習の見直しは、まさにそれに沿ったかたちです。今までの技能実習は、技能を習得して母国に戻っていただくことが前提であり、実は人手不足解消の目的ではありませんでした。
今回の議論では、技能実習や特定技能の習得により、日本の人手不足に対して活躍していただくことが基本の発想に変わりつつあります。ですので、我々のお客さまも外国人の活用・活躍が望まれるのは、火を見るよりも明らかです。
したがって、我々も今、W.I.N.(Work In Nippon)という外国人登用プログラムをお客さまに提供しています。これをさらに伸長させるとともに、新たな新規事業としてグローバル人材の活躍・活用を次の矢として放っていきたいと考えています。
質疑応答:仕事のやりがいについて
司会者:「このお仕事のやりがいを教えてください」というご質問です。
米田:やはりお金を稼ぐだけ、ビジネスを伸長させるだけではなく、日本の社会課題の解決に直接的に関われるのは、非常に大きなやりがいです。
繰り返しになってしまいますが、今年よりも来年、来年よりも5年後、5年後よりも10年後のほうが、さらに人手不足が進みます。GDPの観点からも、総消費は総所得であり総生産といういわゆる三面等価の原則があります。
したがって、働く人が活性化していかないと、日本は元気になりません。今、人口が減少する中で、社会課題をいかに解決するかというところに携われることは、非常に大きな喜びであり、やりがいであり、ある種の責任感もあると考えています。
2007年の創業以来、CAGRが非常に大きく成長してきました。それは何よりも、日本の社会課題の解決というメガトレンドに我々のサービスが乗っているからだと考えています。コロナ禍で求人需要が落ち込んだ時に我々の売上も落ち込んだのは、まさにそれが一致しているためだと考えています。
今後も人手不足や社会課題の解決とともに、引き続き事業成長を実現していきたいと考えています。
質疑応答:社長の夢と会社のビジョンについて
司会者:「社長の今後の夢をうかがいたいです」「今後の会社のビジョンを教えてください」というご質問です。
米田:2030年の労働需給ギャップは、およそ644万人と言われています。我々は手前のビジョンとして、そのギャップの解消を目指すソリューションカンパニーになりたいと常日頃社内外に発信しています。これは私個人もそうですし、会社として目指すべき場所と捉えていますので、日本の社会課題を解決する一助になりたいと考えています。
個人的にも、日本に生を受け、このようなかたちでみなさまの前でお話しさせていただいているのは、やはり日本という国がしっかりと在り方としてあり、何らかのかたちで成長しているからだと思っています。
因果応報的にいいますと、日本が崩れると私自身の成り立ちも崩れてしまいます。社会課題解決にしっかりと取り組んで日本が元気になっていき、私がビジネスマンとして終わる時に「このような仕事で日本が元気になった。1つになったんだな」と思えるようになりたいと考えています。
質疑応答:今の株価について
司会者:「今の株価を見て一言お願いします」というご質問です。
「コロナ禍がかなり厳しかった」というお話がありました。コロナ禍は株価も軟調で、2022年に底打ちして今上昇トレンドという株価です。そのような状況で、ここから成長性とともに上値を追っていくイメージだと思いますが、いかがでしょうか?
米田:営業利益率の推移をご覧ください。「2021年に株価が底打ちした」と言っていただいたように、238円の最安値となりました。スライドのグラフと株価推移をご覧いただくと、我々の株価と業績は連動しているということがご理解いただけるかと思います。
私も、しっかりと業績を上げることがそのまま株価につながっていると理解しています。基本的に利益は売上−経費ですので、売上がしっかり伸びていき、世の中の期待に応えきることができれば、株価が上がると考えています。
繰り返しになりますが、今後、世の中から求められる範囲は、日本のメガトレンドとして避けて通れません。しっかりそれに応え続け、業績を伸ばすことで、株価が上がります。
したがって、ご質問の答えとしては、今の株価はある種適正だとは思っていません。なぜかといいますと、人手で困っている企業はまだたくさんあり、我々は応えきれていないからです。応えきれれば、さらに違う株価をつけていただけるのではないかと考えています。
質疑応答:成長戦略のための重点投資戦略について
司会者:「成長戦略のための重点投資戦略を教えてください」というご質問です。
米田:我々の成長戦略は、大前提として祖業のRPO(リクルーティング・プロセス・アウトソーシング)というビジネスで、しっかりと社数を伸ばしていくことです。
我々はコンサルティングで入り、さまざまなサービスを組み合わせていくことができます。RPOというビジネスは、先ほどご覧いただいた支援先の企業をどれだけ増やしていけるかが、1つ大きなポイントだと考えています。
その上で、644万人の需給ギャップを解消する大きなソリューションとしてあるのが、スポットワークだと考えています。「今日だけ働く」「この時間だけ働く」というニーズがあります。
「1958年生まれの人と2000年生まれの人で出生数にギャップがある」とお話ししたとおり、今後、週5日、1日8時間働く層はどんどん減っていきます。ですので、これからはシニアの方などの労働参画が労働需給ギャップを解決する1つの大きなポイントになります。
しかし、68歳や70歳の方に「週5日、1日8時間以上働いてください」というのはなかなか難しいです。
飲食店の就労事業者は約400万人ですが、実はこの数字はコロナ禍でもあまり変わっていません。一番大きく変わっているのは、追加就労希望者です。飲食で働いている人の数は変わらないが、シフトを半分に減らされた人が280万人もいるのです。
シフトを増やしたい主婦の方や、セカンドキャリアとしてシニアの方が働く時に、レギュラーではなかなか働けません。そのような時に、この日だけ・この時間だけ・この場所だけで日払いで働くという方はどんどん増えていきます。今の我々の予測では、今年中に500万人を超えると考えています。
我々のサービスである「ショットワークス」を中心に、この日だけ働くというスポットワークの就業機会を増やすことで、直接的に644万人の需給ギャップに寄与できます。ですので、我々の大きな成長戦略として、スポットワークビジネスを大きく伸長させたいと考えています。
米田氏からのご挨拶
米田:本日は長い時間、誠にありがとうございました。我々のビジネスの根幹は、まさに日本全国の特に現場で働かれている方やエッセンシャルワーカーの方、物流を支えている方、飲食店や小売業で働かれている方が、いかに働く場所をたくさん見つけられるのかにあります。
また、そのようなことを生業としている企業のみなさまがいかに成長できるかについて、採用を通してお手伝いしたいと考えています。
これからの日本の社会課題である、人口減少における働き手不足にまさに直接ヒットするのが、そのような働き方をされている方やそのような事業を行っている方です。今後、我々はそこに対してしっかりとしたコンサルティングとソリューションを提供することにより、大きく成長していきたいと考えています。
ぜひ、ご支援のほどよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。