目次
上田桂司氏(以下、上田):よろしくお願いいたします。本日は、このような順番で説明させていただきます。
会社概要
上田:当社は愛知県名古屋市に本社を置いており、2013年に設立しました。2019年に現在の社名であるASNOVAに変更し、昨年4月に名古屋証券取引所のネクスト市場に上場しました。
主要事業は足場のレンタル事業です。現在は営業所数が5つ、お客さまに足場を入出庫あるいはお渡しするための機材センターが19拠点あります。
足場は工事現場をはじめ様々なシーンで使用されています。
上田:足場について少しだけご説明します。足場は工事現場以外にもさまざまなシーンで使用されていますが、最後は撤去されてしまうため、どうしても印象に残りづらいです。
しかし、どの現場でも必要とされ、非常に社会性があり、なくてはならないものだと考えています。最近では、例えばイベント等の工事現場以外の場所でも使用されており、その領域を拡大しながら、ますます可能性を広げています。
くさび式足場の特徴
上田:また、足場といってもさまざまな種類がありますが、当社が取り扱っている足場は、「くさび式足場」というものです。主に住宅や低中層の建物で使用され、ハンマー1本で簡単に組み立てができるのが特徴です。
特に大きな3つの特徴として、「施工効率が高い」「運搬効率が高い」「保管効率が高い」という点があげられます。輸送コストも、従来の足場に比べて3分の2程度に抑えることができます。
ポジショニング(仮設業界)
坂本慎太郎氏(以下、坂本):くさび式足場以外には、どのような種類があるのでしょうか?
上田:例えば、スライドの一番上に記載されている「枠組足場」や「次世代足場」などがあります。これらの足場は、特に大手のレンタル会社が使用しているもので、どちらかというと高層マンション等の現場で使われる傾向があり、主な取引先は大手ゼネコンやスーパーゼネコンです。
対して、当社が取り扱っているくさび式足場は、比較的事業規模が小さな足場施工会社や工務店などで使用されることが多く、あらゆる業種のお客さまが利用しています。
ビジネスフロー
上田:ビジネスフローを簡単にご説明します。
まず、施主からリフォーム依頼が届くと、リフォーム業者は足場の施工をする必要があるため、足場施工業者を手配しますが、足場施工業者が足場を保有していない、または足らないといった場合に、当社ASNOVAに足場レンタルの依頼が入ります。そして、現場が完了したら、ASNOVAに足場が返却されるというフローとなっています。
坂本:こちらは御社が配達するのではなく、足場施工業者に機材センターまで取りに来ていただくのでしょうか?
上田:おっしゃるとおりです。大半のお客さまは取りに来られますが、中には運搬手配することもあります。
坂本:その場合は、運送会社などに依頼するのでしょうか?
上田:そのとおりです。
坂本:どちらかというと、御社のビジネスモデルとしては事業所を持ち、貸すことをメインとしているのでしょうか?
上田:おっしゃるとおりです。
なぜくさび式足場をレンタルをするのか
上田:なぜ当社がくさび式足場に特化してレンタルを行っているかと言いますと、マンションだけに限っても、約685.9万戸のストックのうち実に94.6パーセントが、くさび式足場を使用する低中層マンションであるからです。
それ以外にも住宅や商業施設、高さ45メーターまでのビルでも主に使用されており、くさび式足場に特化することで、幅広いニーズに応えることができています。
坂本:レンタルする側の意義にはどのようなものがありますか? 例えば、お客さまにはたくさん足場を使う現場をお持ちの工務店や塗装屋などがいるかと思いますが、そういった方がレンタルする意義を教えていただけたらと思います。
上田:現場にはどうしても繁忙期と閑散期があるため、繁忙期のためだけに足場を保有するというのは、やはり非効率でコストがかかります。そこで、繁忙期の材料が足らない時期にだけレンタルをするというパターンのニーズがあります。
さらに、足場施工会社として独自に足場を保有していたとしても、それだけのストックヤードが必要になるため、大きなコストがかかります。そのため、ある一定以上の需要がある際には、レンタルするという傾向があります。
坂本:借りる側の頻度はまちまちかと思いますが、御社は閑散期と繁忙期でレンタル価格の調整はされていますか? それとも、業界や業種によって繁忙期が違うため、一定の価格なのでしょうか?
上田:繁忙期や閑散期でレンタル価格を変動させることはありません。現状は通期でも平均70パーセント以上の稼働率があります。
上田:先ほどもご説明しましたが、ポジショニングとしては、大手のレンタル会社とは違い、しっかり棲み分けができています。競合となる同業他社は、くさび式足場を取り扱っているレンタル会社ですが、すべて非上場会社です。
参入障壁と優位性
上田:参入障壁と優位性についてです。大手のレンタル会社とは棲み分けができており、また、同業他社である非上場の他社、例えばスライドに記載しているA社と当社を比べると、拠点数は倍以上であり、足場の量も圧倒的に当社の方が多く保有しています。
さらに、当社独自の管理ノウハウを構築しています。四半期に1回足場在庫の棚卸を行い、在庫とどのくらいの差異があるかを示す棚卸差異率というものがあり、業界平均は約3パーセントと言われています。しかし当社では大きくとも0.002パーセント以下に抑えており、これが他社の新規参入の一番の障壁になっていると考えています。
坂本:差異というのは「なくなる」「不出」のイメージがあります。つまり、棚卸差異率というのは、御社に機材が返ってこない率のことでしょうか?
上田:おっしゃるとおりです。
業績予想の上方修正について
上田:今期の業績については、昨年上方修正を行いましたが、売上高は31億9,800万円、営業利益は2億2,400万円を予測しています。今期は、例年と比べて10パーセントほど高い機材の稼働率が続いており、理由としては、リフォーム需要や自然災害の増加があげられます。これらの理由もあり、足場の需要はどんどん増えています。また、今期は前期の2倍以上である約24億円の足場投資を計画していることも、好調な業績の理由です。
株主還元について
上田:株主還元についてです。いまだ投資フェーズであるため、足場の投資を優先したいと思っていますが、毎年少しでも増配し続けることを考えながら株主還元の強化も行ってまいります。
投資フェーズと回収フェーズにおける収益構造
上田:収益構造についてご説明します。今期の通期予想の営業利益率は約7パーセントになりますが、投資フェーズでは営業利益率はおよそ7パーセントから19パーセントへと推移します。その後、回収フェーズに移ると、営業利益率は49パーセントと大幅に高まると考えています。
足場の減価償却は5年間ですが、実際の足場は20年から30年と長く使用することが可能です。そのため、投資フェーズである現在の営業利益は、売上高が伸長した分のみとなりますが、いずれ回収フェーズに移って減価償却費がどんどん減少すると、大幅に営業利益率が高まっていきます。
また、足場の減価償却費以外の売上原価である製造経費や労務費を低く抑え、効率的なセンター運営を行っているため、投資フェーズである現在においても、業界では高い営業利益率で推移することができています。その理由については、次のスライドでご説明します。
投資フェーズにおける売上原価の特徴
上田:足場の減価償却費を除けば、原価を抑えたセンター運営ができています。その理由として、大半の機材センターを3人から5人ほどの少人数で運営していることが挙げられます。そのため、今後19拠点から25拠点へ増えたとしても、大幅な労務費の上昇はありません。
また、19拠点のうち13拠点の機材センターは市街化調整区域といった安い土地を購入しているため、賃貸料が発生しません。今後も新センターの開設の際には比較的安い土地を購入するため、製造経費の多くを占める賃貸料が増加する予定はありません。
さらに、足場は屋外で保管しているため工場などの設備投資の必要がなく、事務所もトレーラーハウスを利用するなど原価を抑えたセンター運営ができます。そのため、投資が一巡して回収フェーズに移れば、足場の減価償却費を除いた売上原価はおよそ25パーセントほどに収まると考えています。
回収フェーズにおける減価償却費の特徴
上田:回収フェーズにおける減価償却費の特徴です。現在は10期になり、期末には約107億円の足場を保有することになると思っています。仮に13期まで足場の投資を15億円続け、足場の保有額を150億円でストップした場合、その後は減価償却がどんどん進んでいくため、18期には営業利益率は48パーセントを超えます。
先ほどお見せした製造経費と労務費はほぼ横ばいで推移し、回収フェーズに移って足場の減価償却費が進めば、一気に営業利益率が高まっていきます。
ちなみに現在は約101億円ほどの足場を保有していますが、すでに償却済みの足場が85億円から90億円ほどあります。あくまでもシミュレーションのため、足場投資を150億円でストップした場合となりますが、いずれ償却済みの足場が収益をあげるという収益構造です。
坂本:新規出店についておうかがいします。スライドはイメージ図のため、こちらに細かく突っ込んでも仕方ありませんが、おそらく減価償却が終わったものが利益をかなり生むということを示しているかと思います。しかし、普通に考えると、13期で足場保有額が横ばいになっているため、新規出店をしない前提のシミュレーションになっていると認識します。
現状で御社の方向性、つまり将来どうなるかわからなくともよいのですが、13期で新規出店を打ち止めることで、成長というよりもキャッシュをたくさん稼ぐ会社になりたいと考えているのかどうかを教えてください。
上田:後ほどご説明しますが、自社で新規出店する機材センター以外の拠点に関しては、パートナーを通じて30拠点、50拠点と増やしていこうと思っていますが、自拠点に関しては現在の19拠点から25拠点くらいまでと考えています。
仮に自拠点で出店した場合、どうしても機材センターに置けるだけの材料しか保有できませんので、それを踏まえると150億円ほどになるのではないかと考えています。
坂本:30拠点から40拠点のFCができるということは、最初は自拠点で行って、5期から6期あるいは13期をかければ、さらなるキャッシュを生み出せるという考えもあるとは思いますが、キャッシュは直営の部分である程度稼ぎ、FCはバランスよく展開するイメージでしょうか?
上田:おっしゃるとおりです。ただし、国内においてのお話となると少し事情が変わりますので、そちらについては後ほど詳しくご説明します。
投資フェーズと回収フェーズにおける収益構造(再掲)
上田:あらためてご説明しますと、投資フェーズであっても、売上が伸長した部分は営業利益も同様に伸長します。その後、投資が一巡して回収フェーズに移ると、足場の減価償却費が大きく減少していくため、さらなる営業利益が見込めるといった収益構造となっています。
顧客がレンタル会社を選定する際に重要視する項目
上田:当社のビジネスの特徴と優位性についてご説明します。
お客さまが足場のレンタル会社を選定する際に、最も重要視される項目は「いつでも」「近くで」「安心して」借りたいという3点です。毎年お客さまからアンケートを取っていますが、必ずこの3つを重要視しているとの声があがってきています。
これらの3つの声にお応えするために、当社が何をしているかについてご説明します。
いつでも/足場機材への投資
上田:1つ目の「いつでも借りたい」というお声に対して、当社は足場の保有量にこだわっています。現在、新規顧客の増加とセンター出店に伴い、年間10億円以上の足場投資を行っており、昨年9月末時点で約101億円の足場を保有しています。
一般的に、レンタル事業におけるくさび式足場の機材センターでは、1拠点あたり約5億円程度の足場機材を保有しているといわれています。そのため、他社の機材センター数から推測される保有量と比較しても、当社のくさび式足場の保有量は強みであると考えています。この保有量の多さが、いつでも借りたいときに借りることができる理由になっています。
くさび式足場に限れば、当社は業界ナンバーワンの保有量だと考えています。特に今期は、大規模修繕工事や自然災害の増加、新センターの出店もありましたので、大幅に投資を増やし、例年の2倍にあたる24億円の投資を行う予定です。
いつでも/AI予測を用いた需要予測
上田:また最近は、AIを用いた需要予測を取り入れることで、前もって必要な機材を揃えることができています。これまでのレンタル事業で培ったデータをもとに、AIでおよそ3ヶ月から1年先の需要を予測することで、必要なときに必要な量を借りられる体制を作っています。
これらの点から「いつでも借りることができる」を実現していきます。
近くで/新規出店
上田:2つ目の「近くで借りたい」というお声にお応えするために、当社は全国に19拠点の機材センターを展開しています。
中部に5拠点、関東に7拠点、関西に4拠点、中国・東北・九州地方にそれぞれ1拠点の機材センターを構えています。今期は19拠点の機材センターを構えており、幅広いエリアをカバーすることができています。
近くで/ASNOVA STATION(パートナーを通じた地方展開)
上田:また、さらに近くで借りたいというお声には、パートナーを通じた地方展開「ASNOVA STATION」を行うことでお応えしたいと思っています。
現在19拠点の機材センターを展開していますが、いち早く社会課題を解決するためには、日本全国に機材センターを拡大することが必要だと考えています。より多くの地域に足場レンタルサービスを提供するために、パートナー企業を通じたレンタル事業に挑んでいきたいと思っています。
増井麻里子氏(以下、増井):質問します。まず、御社の直営のセンターについて、需要の多いエリアにはどのような特徴がありますか?
上田:マンションのストック戸数が多い地域や人口減少が比較的少ない地域、基幹産業の多い地域、足場施工会社が多く展開している地域には、今後積極的に出店していきたいと思っています。現在19拠点に展開していますが、残り5拠点から6拠点くらいの出店を考えています。
増井:また、パートナー企業について、フランチャイズや同業他社などいろいろな形態があると思いますが、関係性としてはどのようなものになりますか?
上田:フランチャイズとは若干違い、いわゆる「名板貸ビジネス」と呼ばれる、ASNOVAの商標やノウハウ、足場のみをパートナーの方にお貸しして、パートナー企業には機材センターや人員を用意していただくというビジネスモデルになります。
足場としてはだいたい1億円から1億5,000万円分が保有でき、それくらいの保有量ですと通期で60パーセントから70パーセント程度の稼働率となります。現在我々が展開している地域では5億円から10億円分ほど保有していますが、ある程度需要の大きな地域はすでに押さえましたので、「ASNOVA STATION」では、それ以外の「需要は小さいが足場が必要な地域」に細かく展開していきます。
増井:ありがとうございます。
安心して/お客様からの信頼
上田:3つ目の「安心して借りたい」というお声に応えるために、品質や正確さなどの対応力にこだわっています。
スライド左側の図には、お客さまからのASNOVAに対するアンケートの結果および評価を記載していますが、品質や迅速さ、誠実さなどにおいて、非常に高い評価をいただいています。年間150社以上の新規顧客のうち、大半が既存のお客さまからのご紹介であることが、この評価を裏付けています。現在は、2,300社を超えるお客さまとお取引をさせていただいています。
また、お客さまの特徴としては、1度契約した後は長く安定して借りていただけることが多いため、ストック型のビジネスと考えています。1社あたりの平均売上高は年間約100万円とあまり大きくはありませんが、特定のお客さまに依存していませんので、リスクが分散され安定した収益となっています。
安心して/WEB受発注システム
上田:さらに安心して借りていただくために、今後はスライドに記載しているように、レンタルの受発注をWebで行えるサービスを始めていきたいと考えています。
足場レンタル需要の拡大
上田:当社を取り巻く市場環境と社会課題についてご説明します。
足場レンタルの需要は年々拡大しています。主な理由としては、スライドに記載のとおり、老朽化したマンションの増加によるマンションリフォーム需要の増加、中古住宅への関心の増加や国のバックアップによる住宅リフォーム需要の増加、自然災害による復興・復旧のための足場需要の増加の3点が挙げられます。これらの市場拡大により、足場レンタルの需要や社会性は年々増加しています。
これら3点について、詳しくご説明します。
高経年マンション増加
上田:まずは、老朽化しているマンションの戸数増加についてです。こちらは大きな社会課題となっており、約20年後には、築30年以上の分譲マンションストック戸数は現在の約2.4倍に増加すると予測されています。
このような分譲マンションは、長期修繕計画に基づいて12年周期で計画的に修繕が行われますので、リフォーム市場の拡大が見込まれています。
分譲マンション大規模修繕需要
上田:スライド左側のグラフは、足場を使用した分譲マンションの大規模修繕工事の市場規模を表しており、年々増加していくことがわかります。
また、右側の円グラフは大規模修繕工事の内訳を表していますが、過半数は足場を必要とする工事であることがわかります。
住宅リフォーム市場
上田:次に、住宅リフォーム市場についてです。新築の住宅着工件数はどんどん減っていますが、昨今は外出自粛やテレワークの普及により住宅への関心が高まっていることに加え、国のバックアップがあることから、中古住宅への関心が高まっています。そのため、住宅リフォームの市場規模も堅調に推移していくと予測されています。
スライド右側のグラフの上位2つに記載されている外壁と屋根の修繕工事には、どちらも足場が必要とされますので、今後、足場のレンタル需要もますます拡大していくと予想しています。
自然災害の増加
上田:そして、自然災害の増加についてです。自然災害の影響は年々非常に大きくなってきており、2020年には、消費者物価指数に屋根修理費が追加されました。今後も、災害後の復興や復旧、建物の老朽化対策のために、ますます足場が必要とされるのではないかと考えています。
成長戦略について
上田:当社がさらに成長していくための、今後の取組みや戦略についてご説明します。経営基盤を強化することで既存事業の拡大を図り、新規事業にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
ここからは主に、新規事業と、それらを支える経営基盤の強化にどう取り組んでいるかについて詳しくご説明します。
ASNOVA VIETNAM
上田:まずは、1つ目の新規事業である海外展開「ASNOVA VIETNAM」についてご説明します。
著しい成長を誇るベトナムでくさび式足場のレンタル事業を開始し、昨年10月に現地法人を設立しました。ベトナムという国は、2014年から2019年までプラス6パーセント以上の経済成長率を維持しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響によって一時は停滞していましたが、今はロックダウンが解除され一気に工事が再開されています。
ベトナムにおける日本製品の品質、安全性、信用力
上田:実は、2017年から足場を600トンほど輸送し、約5年間テストマーケティングを続けてきました。その結果、建設市場でのレンタルニーズが非常に高いことと、なによりも品質面で、日本製はベトナム製よりも非常に高い信頼を得ていることがわかってきました。
償却の終わった足場を日本から輸送していますが、このくさび式足場に対して、非常に高い信用を得ています。ベトナムで製造されている足場は品質が良くないため、5年程度で買い替えが必要となりますが、日本の足場は、20年から30年以上と長く使用することができます。今後も、品質や安全性の高い機材を提供していきたいと考えています。
坂本:日本とベトナムでは足場の価格差がけっこうあると思うのですが、その点については、償却が終わったものを持っていくことによってある程度調整できるというかたちでしょうか?
上田:おっしゃるとおりです。主に20年以上使った足場を輸送していますが、実は今ベトナムで提供している足場のほうが、日本よりも多少価格が高いです。
坂本:そうすると、何でもとは言いませんが、輸送コストを差し引いてもまったく問題ないということでしょうか?
上田:はい。そのため、いずれはベトナムで新しい材料を直接調達する時期がくるのではないかと考えています。
坂本:20年経過した足場を持っているということは、御社も中古の足場を購入してきたということでしょうか?
上田:そのとおりです。
坂本:なるほど。中古の足場だと1年から2年で償却が終わりますか? 5年以上過ぎているものに関しては相当短いのでしょうか?
上田:おっしゃるとおりです。
坂本:意外と、中古品のマーケットもあるのでしょうか?
上田:大きなマーケットがあります。当社が保有している足場には、長くて30年経過したものがありますが、実際は20年から30年使えると言いながらも、一番古いもので30年ですので、もしかしたら今後35年、40年と使える可能性があると考えています。
坂本:30年というのは、足場の構造が変わったために経過したものですか? そうではなく、本当に耐久や耐用が30年程度と言われているということでしょうか?
上田:耐久や耐用が30年程度ということです。
坂本:構造自体は昔から変わらないのでしょうか?
上田:変わっていません。
坂本:なるほど。ありがとうございます。
シェアNo.1を目指す
上田:現在、すでに1,000トン近くの足場をベトナムに輸送していますので、今後もこの足場の投資を積極的に進め、ベトナムでナンバーワンのシェアを目指していきたいと考えています。
詳しくはYouTubeでも公開していますので、是非ご覧ください。
ASNOVA STATION(パートナーを通じた地方展開)
上田:2つ目の新規事業として、先ほども少しお話しした「ASNOVA STATION」について詳しくご説明します。当社は現在19拠点の機材センターを展開していますが、先ほどご説明した社会課題をいち早く解決するためには、まだまだ日本全国に機材センターを拡大する必要があると考えています。
より多くの地域に足場レンタルのサービスを届けるために、パートナー企業を通じてレンタル事業に挑みたいと思っています。「ASNOVA STATION」サービスを展開することで、「いつでも、近くで、安心して借りられる」を実現することができると考えています。
坂本:すでに手を挙げているところがあるかもしれませんが、現状ではどのような企業がパートナーになるのでしょうか? まったくの素人ですと、できなくはありませんがなかなか難しいのではないかと思いますので、地場の工務店などになるのでしょうか?
上田:現状はやはり、すでにある程度の資材置き場や、フォークリフトおよびそれを運転できる従業員を持つ足場施工会社が多いです。そのため、基本的に新たな投資をしなくてよい企業にパートナーとなってもらい、当社のシステムを使っていただくことをイメージしています。
坂本:なるほど。
上田:余った資材ヤードがあれば、当社の提供する足場をそちらに置かせていただきます。ノウハウやシステムも提供しますので、新たな採用を行わずに今ある人員で運営するかたちで、お互いに長く収益をあげながら続けられる環境を作っていければと考えています。
坂本:それでは、現在の拠点と地域がかぶっていない足場屋がメインになるということですね。また、足場ヤードの話もありましたが、足場は屋外で保管しますか? 錆びないのでしょうか?
上田:保管は屋外になりますが、定期的に塗装を行えば錆びることはありません。
坂本:ということは、あまりメンテナンスも必要ないのでしょうか?
上田:そのとおりです。そのため、機材センターをオープンしても設備投資の必要がありません。事務所は簡易的なトレーラーハウスを使用していますし、特に自社の機材センターは市街化調整区域で安く土地を購入しているため、賃貸料も発生しません。基本的には、3人から5人の少人数で運営するための労務費と、足場の減価償却費が終われば、いわゆる工事にかかる減価償却費もないというビジネスになります。
坂本:なるほど。脱サラして挑戦したいという人がいるかもしれませんね。
上田:そうですね。確かにいらっしゃいます。
坂本:このビジネスモデルであれば、できますよね。
上田:そのため、現在多くの方に手を挙げていただいており、来期のスタート時点でパートナーとして10拠点は出せるかと考えています。
将来的には、パートナー拠点だけで50ヶ所ほどを予定しており、自拠点の20数ヶ所を合わせると70から80ぐらいの拠点数となりますので、全国のシェアはほぼ達成できるというイメージです。
坂本:ありがとうございます。
私たちは「ASNOVA WAY」を通して、パーパスを体現していきます。
上田:新規事業や既存事業を支える経営基盤強化として、人事制度には非常にこだわっています。人材への投資は、成長戦略やパーパスを体現するために最も重要なことの1つであると考えています。
スライドの図は、現在軸となっている6つの制度の全体像です。この6つは、経営幹部や事業責任者、業務のスペシャリストを志す社員などに向けて、幅広いゴールを支援するとともに、新規事業の創出も見据えて設計しています。教育制度を充実させることで個々人が成長し、その個々人の成長の総和が会社の成長につながると考え、今後も「人への投資」を積極的に行っていきたいと考えています。
その結果、現在は毎年1つから2つほど新規事業が生まれている状況です。
足場レンタルで循環型社会へ貢献
上田:足場レンタルは足場をシェアする循環型ビジネスであり、今後さらに注目されるビジネスになると考えています。世の中の多くのビジネスモデルは、「大量生産、大量消費、大量廃棄」といった、「資材を調達して物が生産され、消費、廃棄される」直線型ビジネスです。
今までの足場ビジネスも、どちらかというと直線型ビジネスの側面がありました。しかし、世界レベルで直線型ビジネスは深刻化しています。そのような社会課題に対処するために、物をみんなでシェアするというビジネスモデルへの転換がますます必要になってくると考えています。
そのため、当社が足場レンタルビジネスを普及させることで、これらの社会課題を解決しながら、循環型社会の実現に貢献していきたいと考えています。以上が、今期の戦略についてのご説明となります。ありがとうございました。
増井:ありがとうございました。
質疑応答:足場のリサイクル処理について
坂本:よく機関投資家や個人投資家からされる質問として、SDGsに関するものがありますが、御社はすでに「循環型社会」に貢献するシェアビジネスを行っていることである程度SDGsには貢献しているかと思います。
足場について、折れたり曲がったりして使えなくなるものが出てきた場合、リサイクルなどは行えるのでしょうか? どのような処理をされているのか教えてください。
上田:修復できる範囲のものは修復していますが、やはり安全性を重要視するため、どうしても使えなくなった足場に関しては、廃棄せざるを得ないというのが現状です。今後は、そのような材料もリサイクルできる仕組みを考えていきたいと思っています。
質疑応答:名証に上場した理由について
坂本:「いずれは東証への上場も考えていますか? また、名証に上場した理由があれば教えてください」というご質問です。
上田:時期は、なかなかお伝えするのが難しいです。
坂本:もちろん、時期はお答えいただかなくてけっこうです。東証上場への意思があるか、どちらかというと「なぜ名証から上場したか」というご質問からお答えいただいたほうがよいかと思います。
上田:もともとは、コロナ禍前に東証スタンダード市場への申請を準備していましたが、コロナ禍で初めて業績が赤字になってしまいました。そこで諸々の基準を踏まえ、このまま東証に上場するよりも今の会社の器にふさわしい市場に上場しようと考え、名証を選んだ経緯があります。
しかし、当然ながら1日でも早く次の市場へステップアップしていきたいと考えていますので、現在はその準備をしています。
質疑応答:資材高騰の影響について
坂本:「資材高騰の影響による新規に仕入れる足場価格の上昇はありますか? また、値上げを含めた価格転嫁は行っているのでしょうか?」とのご質問です。
上田:仕入価格は4割ほど上がりました。ただ、今まで足場を購入されていた方がレンタルへシフトする傾向があります。
坂本:購入費用が高いからですね。
上田:その影響もあり、例年と比べてレンタルニーズが非常に高まりました。一方で、我々の仕入価格も上がっていますので、お客さまには申し訳ありませんが、レンタル価格としては2割ほどの値上げをお客さまに協力していただいておりますが、ほぼご意見をいただいたことはありません。
坂本:買うよりはぜんぜん安いからですね。反対に、購入していたものを売却して、レンタルにシフトする方も出てくるかもしれないですね。
上田:そうですね。
増井:市況は変動すると思いますが、安い時には少し多めに仕入れるのでしょうか?
上田:この資材高騰は特別な状況であり、今まで足場の価格は一定程度の価格で推移していました。そのため、今回は我々にとって非常にチャンスであると考えています。というのも、一度弊社からレンタルすると、良さを理解していただけるからです。
今まで「レンタルより購入したほうがよい」と言っていた購入一辺倒の方も、レンタルを一度使っていただけると「今後は、購入とレンタルのバランスをうまくとりながら会社経営をしていくほうがよい」と感じてもらうことができます。
仮に今後、仕入価格が下がり購入できるタイミングがきたとしても、一度レンタルを経験したことで良さを理解していただいているので、非常によいチャンスだったと考えています。
坂本:レンタルの良さというのは、バランスシート上の問題以外にもありますか? 例えば、工務店の職人が「自分の現場からいちいち現場に持っていくのが面倒くさいと思っていたのが解消した」というようなお話も含めて教えてください。
上田:足場を購入されると、閑散期に足場を保管する資材ヤードが必要になります。
坂本:ヤード問題ですね。
上田:はい。ヤードは広ければ広いほどよいというわけではなく、結局は動いていない足場を置く場所です。そのため、極論を言うと稼働率が100パーセントを超えていれば、資材置き場は必要ないわけです。
坂本:なるほど。現場から現場へ移動するかたちになるからということですね。
上田:そのとおりです。当然ながら稼働には波があり、一番低い時に足場を保管すると、人件費などいろいろなコストがかかってきます。また、ほとんどのお客さまは資材置き場を賃貸で借りているため、賃貸料もかかってきます。
坂本:そのコストも削減できるということですね。
上田:おっしゃるとおりです。そのため、お客さまにとっては自社で持っている足場をいかに高稼働率で回すかが最大のポイントになります。ある一定の需要を超えるものに関してはレンタルしたほうが、自社の足場機材の稼働率は大幅に高まるので、ヤード問題の解決につながります。しかし、実際にレンタルしていただくまでは、その点を理解していただくのはなかなか難しいところです。
質疑応答:棚卸し管理ノウハウ流出の懸念について
坂本:「御社の大きな強みは、競合他社の100分の1以下の棚卸差異率だと思いますが、『ASNOVA STATION』によって棚卸管理ノウハウが流出して競合他社を育ててしまう懸念はないのでしょうか? 償却の終わった足場の利益率は5割近くと非常に高く、他社の参入を阻む大きな障壁が棚卸の管理だと聞いたので、このあたりをどのように管理しているか教えてください」とのご質問です。
上田:当社としてもそのような懸念はありました。このビジネスは、先ほどもお話ししたとおり、フランチャイズではなく「名板貸ビジネス」です。そこで、ノウハウの流出などがないように、名板貸ビジネスに強い弁護士と1年半から2年ほど徹底的に議論をして、それなりに準備を行いました。
坂本:その点に関しては、しっかりと練られているということですね。
上田:そのとおりです。管理ノウハウを伝えていくことは、当然ながら経験があるので難しくないのですが、ノウハウ流出のような部分に関しては専門家の弁護士としっかり準備したつもりです。
坂本:この業界は意外と、新型足場の特許が固まっていたりするのですね。
質疑応答:AI導入による稼働率向上について
坂本:「先日IRで『AIの導入で稼働率が向上した』とありましたが、足元の9割近い稼働率は、何割がAIのおかげで何割が需要拡大の恩恵でしょうか? また過去の説明会では『稼働率が7割になるように足場の新規投資を行う』と社長がおっしゃっていましたが、AIによる稼働率の押し上げによって、今後の目安が75パーセントや80パーセントになることはあるのでしょうか?」というご質問です。
上田:AIの需要予測に関しては、過去3年間の入出庫履歴等のデータをインプットして、導入先のパートナーと一緒に行っています。どのような情報をAIの需要予測につなげているかについては口外が難しいですが、準備そのものは1年ほど前から進めており、昨年4月の稼働率は75パーセントでスタートしました。
4月は閑散期のため、例年ではだいたい60パーセントから65パーセントの稼働率からスタートしますが、昨年4月は約10パーセント高い稼働率でスタートしました。ただ、このすべてがAIによる需要予測によるものかと言われると、はっきりそうだと言いづらいところもあります。
今までは、機材センターの経験と勘によって材料の発注をしていました。当然ながら、材料をたくさん入れたほうがお客さまからのクレームは少ないため、どうしても「材料が足りない」という声の大きいセンター長の機材センターに材料がいく傾向がありました。
しかし、今回からしっかりとしたデータを使うことで、本社側が「この地域やこのセンターに機材を入れることが適切」と把握しながら運営することができたことが、非常に大きなポイントとなりました。とはいえ、最後の決断は一番状況を理解している現場が行いました。
坂本:その点は、人が少し担保するということですね。
上田:現場の人間を信用していないわけではありませんが、今期に限ってはあくまでもAIの判断基準を用いたかたちで行いました。現場の人間もより信用して、AIの予測を見ながら発注できたことは大きな結果につながったと考えています。実際に、社内の無駄な移動運賃は大幅に削減できました。
坂本:けっこう重いため動かすのも大変で、大きなトラックも必要だと思います。
上田:おっしゃるとおりです。
質疑応答:足場の仕入れ先について
坂本:「御社は多くの足場を保有されているかと思いますが、足場の製造をしているメーカーは1社だけなのですか? 何社もあるのでしょうか?」という購買についてのご質問です。
上田:仕入れ先は4社から5社あります。
坂本:なるほど。その中から条件や納期を見て、購入の判断をされているのですね。
上田:そのとおりです。