要旨
原田哲郎氏(以下、原田):みなさま、こんにちは。本日はお忙しいところご参加いただきまして、誠にありがとうございます。株式会社ドリームインキュベータ代表取締役CEOの原田でございます。
これより、2021年3月期の決算についてご説明します。2021年3月期の決算は、約18億円の純損失を計上し、極めて厳しい赤字決算となりました。この厳しい結果をしっかり受け止め、そして、新型コロナウイルスをきっかけに変革していく社会や産業の中にあって何を変えていかなければならないのか、どのような成長のかたちを描いていくのかなど、本日はそのような点に主眼を置いてお話しします。
2021年3月期の決算は、新型コロナウイルスの影響及び構造改革着手により大幅な赤字となりました。企業の一時的な新規事業意欲の減退、投資先事業の失速、IPOの遅れ、また、新型コロナウイルスの長期化も見据え、ベンチャー投資資産評価や子会社アイペット損保のIT開発方針の見直しに伴い、特別損失の計上を行っています。株主及び投資家のみなさまにはご心配・ご迷惑をお掛けすることとなり、誠に申し訳ありません。
経営体制が変わり、新しい経営陣が追い求めるべきは、新しい成長のかたちとそれに向けた構造改革です。過去の反省も踏まえ、以下の4つを課題と認識し、推進を始めています。
まず「リスク・マネーのボラティリティ・コントロール」、次に「ビジネスプロデュースへの適性投資」、3つ目に「強みをレバレッジする仕組み」、そして「これらのガバナンス」です。構造改革のさらなる加速により株式市場からの信頼を回復し、新たな成長につなげていきたいと考えています。
2021年3月期 連結P/L(保険項目調整後)
まずは2021年3月期決算要旨についてご説明します。連結P/Lですが、当社では連結している保険事業における保険会計特有の処理を考慮し、保険項目の調整前後のP/Lを開示しています。経営の実態を表すのは調整後のP/Lですので、こちらをメインにご説明します。
連結売上高は対前期比22パーセント増の277.7億円です。これは、保険事業の新規契約の増加が主な要因となります。経常損失は2.3億円で、内訳はこの後のセグメント別P/Lでご説明します。
ボトムラインは、主にアイぺット損保の基幹システム開発方針の変更に伴い、特別損失を約14億円計上したことにより、純損失が18億円となっています。
2021年3月期 連結P/L(保険項目調整前)
こちらは保険項目調整前のP/Lです。保険業法に基づく特殊な会計処理が行われた数値になります。
保険会計の調整項目及び調整額
こちらのページでは保険会計の調整内容についてご説明しています。保険業に関する調整は次の2つです。1つ目は、普通責任準備金の算定を、国内損保に一般的に適用されている未経過保険料方式での算定に調整しています。
2つ目は、日本以外の国では用いられていない異常危険準備金への繰入の影響を排除する調整をしています。これによって、より事業の実態に近い数値をお示ししています。
2021年3月期 セグメント別P/L
セグメント別のP/Lです。まずベンチャー投資ですが、新型コロナウイルスの影響を踏まえて減損を上積みしたことと、IPO予定銘柄の延期により獲得ゲインが少額に留まったことが響き、経常損失は14.8億円となりました。
ビジネスプロデュースは、一時的に企業の新規事業意欲が減退したため、売上としては減収ですが、下期に受注が拡張したことと管理コストの見直しを行ったことで利益が改善し、2.9億円と増益を確保しました。
ペットライフスタイルは、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要で保険契約件数が想定以上に増えましたが、在宅時間の増加によって通院頻度も増え、保険金の申請件数も上振れしました。今後の成長も踏まえた時、積み上がっていく保険契約のLTV(Life Time Value)をさらに向上させていくためには、基幹システムを従来のかたちからSaaS型に切り替えていくべきという判断となり、それに伴う固定資産の除却損を特別損失に計上しました。
HRイノベーションは、新型コロナウイルスの影響で計画を下回りましたが、前年比では着実に成長していると言えると思います。
また、今年2月に株式会社枻出版社さんより事業を取得したピークスを、第4四半期より連結範囲に含めています。ピークスは、趣味やライフスタイルに関するメディアIPを保有し、出版業やデジタルマーケティング・デジタルサービスの企画制作などを展開しています。なお、2月以降分のみを連結に取り込んでいます。
2021年3月期 連結B/S
連結B/Sです。2021年3月期末時点の総資産は295億円と、前期末から31億円程度増加しています。要因としては、アイペットにおいて営業キャッシュ・フローが積み上がり、資産運用力が増加しているところが大きいです。また、契約が増える分、負債として保険準備金を積み立てるため増加しています。
2021年3月期 Net Asset Value(NAV)状況
次に、Net Asset Valueについてです。短期的なP/Lだけではドリームインキュベータの企業価値を表しづらいところがあり、機関投資家さまからもご意見を頂戴しているため、参考情報として継続的にNAVを開示しています。ドリームインキュベータの各事業の市場価値を積み上げ、株主が保有しているドリームインキュベータの直近の事業価値の合計を示しているものです。
2021年3月期末時点のポイントは3つです。まず、ベンチャー投資は減損増加による評価損益の影響が大きく、前年同期比で8億円のマイナスとなっています。
ビジネスプロデュースは恣意的な計算にならないように、上場している同業他社各社のPERを採用しています。これが新型コロナウイルスにより一時的に大きく冷え込んでいた昨年3月末に比べて大きく戻ったことで、計測される市場価値も高くなっています。
事業投資はアイペットの株価が昨年3月末と比べて上昇しており、こちらも新型コロナウイルスで1年前に冷え込んでいたものが大きく回復し、当社持分の価値も増加して計測されています。
以上が、2021年3月期決算の概要になります。
社会を変える 事業を創る。
続いて、構造改革の中身についてご説明します。あらためてですが、ドリームインキュベータのミッションは「社会を変える 事業を創る。」です。ドリームインキュベータ自身の事業は、大企業の事業創造を支援するビジネスプロデュースと、ベンチャーを育てるインキュベーションを両輪としており、「持続可能な社会形成」、「新しい産業の創出」、「新時代の挑戦者支援」につなげていくことで、このミッションを実現していくことを目標としています。
構造改革
そのミッション達成のための構造改革です。昨年度、ドリームインキュベータの建業精神を受け継ぐメンバーに経営体制が刷新されました。創業より20年、新しい経営陣が行うべきは、過去の歴史を踏まえ、ミッションを達成しつつ株主のご期待にも応える成長のかたちの飽くなき追求だと考えています。
構造改革としては、以下の4つの課題へのテコ入れを断行する所存です。「投資のボラティリティによるリスクと時間軸のミスマッチ」、「リスク性資産偏重による資源配分の歪みと最大の差別性であるビジネスプロデュースへの投資停滞」、「その差別性をレバレッジ/スケール化する仕組み不足」、「これらを後押し・検証し、必要に応じて軌道修正を行うガバナンス体制」です。
これら4つの課題を克服し、構造改革を推進することにより、「ミッションと利益成長の両立」及び「ボラティリティを抑制しつつインパクト拡大」の両立を実現していきたいと考えています。
これまでの課題と打ち手の方向性
今ご説明した課題に対する、打ち手の方向性です。直近5期を振り返ると、3年前にビジネスプロデュースの利益が大きく減少し、ベンチャー投資のボラティリティとのバランスが悪くなってしまっていることがわかります。
また、ここには記載していませんが、事業投資先である保険事業が安定収益として寄与していますが、それ以外のビジネスプロデュースとベンチャー投資のバランスをしっかり是正することが大事だと考えています。
具体的には、①の過大ボラティリティにおいて、ベンチャー投資の自己資金投資を減らし、ファンド化していくことでボラティリティを下げていきます。
②の投資停滞では、ビジネスプロデュースの機能の増強、人員増強、外部との業務提携により強固な安定収益基盤にしていきたいと考えています。
③のレバレッジ不足ですが、この構造改革は金融機能の応用によるビジネスプロデュースのスケール化を目指します。これにより、社会課題に対して大きなインパクトをもたらし、同時に利益もしっかりと追求できる事業モデルの構築に挑戦していきたいと考えています。
また、④ではコーポレートガバナンスを強化します。取締役会の過半数を社外取締役とし、経営執行責任の監視を強めることで、構造改革を強固に推進していきたいと考えています。
構造改革① 自己資金投入の抑制・ファンド規模拡大
構造改革の1つ目は、ベンチャー投資への自己資金投入の抑制とファンド規模の拡大です。ベンチャー投資は将来的なアップサイドを狙うわけですが、短期的にはロスが先行することが避け難い事業です。また、ダウンサイド・アップサイドともボラティリティが高く、経営によるコントロールが非常に難しいという特性があります。
自己資金の投入は抑制し、ファンドのウェイトを高めることで、投資規模は拡大しつつも安定収益基盤や純資産に見合った財務インパクトとなるよう、コントロールを進めたいと考えています。
構造改革② コア機能であるビジネスプロデュース力の強化
構造改革の2つ目はビジネスプロデュースの増強です。スライド中央のビジネスプロデュースが従来からの注力領域であり、大企業の大きな事業創造の戦略支援にフォーカスした取り組みを行ってきました。これが当社のコアケイパビリティであるわけですが、この拡大に向けて投資を行っていきます。
まず、プラクティスの活用です。スライド左側のインストレーションは、事業創造に付随するお客さまのさまざまな課題への支援を行っていくものです。事業創造戦略の組織への落とし込みや、新しい事業を生み出す仕組みづくり、組織そのものの課題などへ支援内容を拡張していきます。
スライド右側の産業プロデュースは、逆に1つの大企業だけでは解決できないような、業界・官民を超えた枠の構想を描き、社会のエコサイクルを作る取り組みです。従来、R&D的に行ってきたものですが、こちらの収益化も狙っていきます。これらの機能拡張のために人材投資を加速し、さらに外部との業務提携も行い、3年後には売上の倍増を目指します。
拡大加速に向けて電通グループと資本業務提携
ビジネスプロデュースの増強策の一環として、本日開示しましたとおり、電通グループさんと業務資本提携を行うこととなりました。当社は、社会課題を大企業の事業創造につなげていくビジネスプロデュースを強みとしていますが、構想・戦略を策定した後の実行支援を含む、一気通貫での支援ニーズが高まっており、この面を強化したいと考えていました。
一方、ご存知のとおり電通グループはマーケティングコミュニケーション支援のリーディングカンパニーですが、近年ではマーケティングの範囲を超え、お客さまの事業創造ニーズに応えていく組織力の強化を検討していました。
相互の強みや提供価値が補完関係となることから、ビジネスプロデュース支援をパートナーとして推進し、両社の成長につなげていくことで合意しました。今後は、お客さまへの営業やプロジェクトにおいて連携を強化していくことで、当社の収益基盤の増強にもつなげていきたいと考えています。
構造改革③ 金融機能の応用によるビジネスプロデュースのスケール化
構造改革の3つ目は、強みを活かしてミッションを継続的に遂行していくビジネスモデルの進化です。これまでは、大企業やベンチャーに対する個社の支援を行ってきましたが、今ご説明しましたように、スライド下段のビジネスプロデュース・パートナーとも連携しソリューション力を強化するとともに、人員・機能の増強で成長基盤を強化していきます。こちらは短中期の取り組みです。
加えて、中長期の取り組みとして、スライド上段にある社会課題解決につながる大きなビジネスプロデュースにおいて、金融機能を組み合わせて推進するモデルを構築していきたいと考えています。社会のサステナビリティが大きな課題となっており、それを事業で解決していくためには、官民や業界の枠を超えたエコサイクルづくりと、時間や資金規模のギャップを埋めるファイナンスの両面が必要だと考えています。金融の仕組みをビルトインすることで当社の強みのスケール化につなげていき、ESG投資を推進する金融機関との連携を強めていきます。
この2階建てが上下でシナジーとなり、それぞれが外部パートナーとも連携しながらビジネスを推進することで、産業や社会の課題に対して、より大きなインパクトをもたらしながら、当社の安定収益拡大にもつなげていくモデルに進化していきたいと考えています。
構造改革④ 改革を推進するガバナンス体制の強化
構造改革の4つ目は、コーポレートガバナンス体制の強化についてです。今ご説明した方向で戦略を推進していくために、多様な専門性をお持ちの方々3名に新たに社外取締役として加わっていただくことになりました。これにより、取締役会は過半数が社外取締役になります。戦略議論の活発化だけでなく、社外取締役中心の指名報酬委員会を含め、執行責任の監視も強化しながら構造改革を着実に推進していきたいと考えています。
ビジネスプロデュース×金融機能による社会課題解決
ここからは構造改革の1つであるビジネスプロデュースと金融機能を掛け合わせたモデルへの取り組みについてご説明します。
目指す事業領域:日本政府のSDGs「8つの優先課題」との関係
目指す事業領域です。世界の社会課題に対して2015年に国連サミットで採択されたSDGsは17の目標と169のターゲットがあるわけですが、その中から日本政府は8つの優先課題を掲げ、国を挙げて推進しています。その中で当社が取り組んでいる領域についてご説明します。
2番の健康・長寿の達成では、介護予防を目的としたソーシャルインパクトボンドを準備しています。3番の成長市場の創出では、ベンチャー・インキュベーションで取り組んでいるところです。4番もインフラの崩壊防止を目的としたソーシャルインパクトボンドを準備しています。5番の気候変動は、脱炭素ファンドを準備していきたいと考えています。8番の政府・民間連携による途上国開発支援では、アジアインパクト投資ファンドを立ち上げ、準備しています。これらに段階的に取り組んでいきたいと考えています。
取組事例1:本年7月〜、国内SIBの第一号案件開始
介護予防のソーシャルインパクトボンドについては、豊田市において検討することをリリースしていますが、4月に事業開発をする方向で準備がほぼ整いました。高齢者が要介護になることを防ぐためには、社会参画が必要であり、それを自治体において推進することで将来の介護費を削減することを目的とした事業です。
どれだけ社会参画したら将来どれだけ介護費の削減につながるかを、効果測定を行う機関が客観的に評価し、自治体にとっての将来コスト削減分の一定割合を成功報酬としていただくことになります。
長い時間軸を支える資金が必要ですので、そこは金融機関にESGファイナンスとしてファンドに出資していただくことで、官民連携で社会課題解決につなげていける事業モデルです。そのモデルを全国に展開していくべく、複数の地方自治体とも協議を始めています。
今後、介護予防・施設・インフラをコアに展開予定
さらには、ソーシャルインパクトボンドの仕組みを使い、今後、施設・インフラといった分野にも展開していく予定です。
環境・社会分野のプロジェクトも急増中
今ご紹介したファンドは、先ほどご説明した2階建ての事業構造の2階部分ですが、それを進める環境や社会課題の分野で、先ほどの下段の個別の企業の事業戦略支援・事業創造戦略のニーズも増えてきており、そうした個社の戦略支援プロジェクトも増加してきています。
短中期でビジネスプロデュース基盤を強化しつつ、中長期でファンド化を加速していくことがシナジーとなり、さらに多くのビジネス機会を創出していきたいと考えています。
取組事例2:アジアインパクト投資ファンド組成を準備
次に、アジア新興国の経済・社会課題の解決を目的として、アジアインパクト投資ファンドの組成も準備中です。ドリームインキュベータがハブとなり、政府系金融機関や国際機関・政府・NGOとの連携を進めます。こちらも社会課題のインパクトを計測して成功報酬を得るインパクト投資を行っていくものです。
途上国の社会課題解決はテック企業がリードしていくようになってきており、インパクト投資の波が今後アジアにシフトしていく中で、ドリームインキュベータは30件近くのスタートアップ投資実績があるインドを中心に投資支援を行っていきたいと考えています。
途上国の社会課題解決を支援するプロジェクトをJICAと実施中
独立行政法人の国際協力機構さんとは、すでに途上国の社会課題解決を支援する複数のプロジェクトを実施中であり、その領域はアジアのみならず、中南米諸国の医療・農業・教育といった幅広い分野にまで及んでいます。海外についても国内同様、2階建ての2階のファンドづくりと1階の個社支援のシナジーが出始めているところです。
投資については合計123億円の含み益
続いて、インキュベーション事業についてご説明します。インキュベーション事業にはベンチャー投資と事業投資の2種類がありますが、その含み益の合計は現在123億円となっています。さらにバリューアップしつつ、今後着実に回収を行っていくことが重要と考えています。
事業投資:厳選育成中
事業投資は、ドリームインキュベータがすでに知見を持っているペットライフスタイル、HRイノベーション、ファンマーケティングの3領域に絞って厳選投資・育成を行っていく考えです。
ペットライフスタイルのアイペット損害保険は、先ほどご説明したとおり、保険契約件数が引き続き好調に伸びています。今後の成長も踏まえ、積み上がる保険契約のライフタイムバリューをさらに向上させていくために、DX支援を強化しています。
ワークスタイルラボは、フリーのコンサルタントと企業のマッチングを行っていますが、KPIである粗利がしっかりと伸びています。もう少し成長のための投資を継続し、利益寄与できる体制にしていきたいと考えています。
ボードウォークは、コンサートの電子チケットの事業ですが、新型コロナウイルスによりコンサートが軒並み中止になった影響が甚大で、2020年12月期は大幅な赤字となってしまいました。一方、この分野では今年2月に新たな投資を行いましたので、次のページでご説明します。
ファンマーケティング領域での事業拡張投資:ピークス社買収(2021/2)
ピークス社への事業投資についてです。株式会社枻出版社さんより、趣味やライフスタイルに関する24のメディアのIPと、その子会社としてデジタルマーケティングやデジタルサービスを手がけるピークス株式会社の全事業を譲り受けました。譲り受けた事業に、ドリームインキュベータの持つファンマーケティング領域の知見を加えた新たな成長モデルを構築し、バリューアップを進めていきます。
ベンチャー投資:ポートフォリオと含み損益の状況
ベンチャー投資についてです。日本・インドを中心に投資を進めています。減損等、比較的簿価が大きい投資を回収したことで、簿価としては昨年3月末から4億円程度減っていますが、10億円程度の含み益があります。
2021年3月期は新型コロナウイルスの影響でIPOがずれ込んでしまいましたが、進行中の2022年3月期は、現時点で複数のIPO・トレードセールによるゲインの獲得を見込んでおり、さらに次の期以降も継続的に出てくると見込んでいます。
定量目標の目線(経常損益)
経常損益の見込みについて記載しています。特にベンチャー投資は市況等の影響をコントロールできないため、幅のある記載となっている点をご容赦いただければと思います。
ポイントとしましては、短期的にはビジネスプロデュースに集中的に投資を行っていくため、一時的な利益の縮小を見込んでいることと、その間、ベンチャー投資の回収増加を見込んでいますので、これを着実に収益化していく予定です。
中長期的には、ビジネスプロデュースに対する投資効果で利益を回復させ、さらに強固な安定収益基盤としていくこと、さらには金融機能を応用するビジネスモデルが立ち上がり、利益に貢献していくことをしっかりと達成していくことが大事だと考えています。
将来的な規模感は記載のとおりですが、これらを実現していく構造改革を不退転の覚悟で取り組んでいく所存です。以上で、私からのご説明を終わります。ありがとうございました。
質疑応答:「Next Rise Project」などの今後について
質問1:「Next Rise Project」やアジアインパクトファンドなどはすばらしい構想だと思いますが、業績としてはいつごろ、そしてどれくらいの規模になると想定されているのか教えてください。
原田:「Next Rise Project」はすなわち、先ほどの2階建て構造の2階のほうです。社会課題を解決するエコサイクルを取り、それを金融機能と掛け合わせ、ビジネスプロデュースしていくものです。
今、主に想定している金融機能としましては、まずはファンド型が多いのではないかと考えていますが、5年後には数百億円のファンド規模を目指していきたいと考えています。そうなりますと、その管理報酬が毎期数億円から10億円以上の規模になり、さらにパフォーマンス次第では成功報酬がその先に入ってくることになります。将来的には、1,000億円以上の規模のファンドを動かして推進することを目標にしています。
質疑応答:「テーマ」「顧客」「構想」ドリブンの違いについて
質問2:ビジネスプロデュースのところで、「テーマ」ドリブン、「顧客」ドリブン、「構想」ドリブンという記載がありましたが、ここの違いについてもう少し詳しくご説明をお願いします。
原田:これはコア機能であるビジネスプロデュースにおいて、今まではスライド中央の白い部分だけだったのを、左右に広げていくというお話です。
まず、スライド中央のビジネスプロデュースは、ずっとドリームインキュベータがフォーカスして取り組んでいるものです。ここは大企業がこれまで行ってきた事業によって培ってきたアセット(強み)を活かし、次なる大きな事業成長にどうつなげていくのかといった、大きな事業創造の戦略づくりにフォーカスした支援になります。
大企業にとっては「これまで培ったアセットを使って、次の大きな事業をつくっていく」というプロジェクトになりますので、どのような事業テーマになるかはお客さま自体が必ずしもわかっていません。むしろ、どのような事業展開ができるのかをあぶり出していくのが、ドリームインキュベータが行う支援の大きな目的になります。そのため、どのような事業テーマがつくれるのかという意味で、「『テーマ』ドリブン」と記載しています。これがドリームインキュベータの特徴的なプロジェクトであり、差別性でもあります。
課題としましては、顧客にとって「非日常」のプロジェクトになりますので、このようなプロジェクトだけにフォーカスしていると、DIのビジネスを大きくしていくことが難しいところです。そのような意味で、今回スライドにあるように左右に拡張していきます。
スライド左側の「『顧客』ドリブン」についてですが、大きな事業創造戦略を作った後に「実際にそれに取り組んでいこう」となった時、実行していくことがたくさんあるわけです。事業創造を進めていく上で、実行していく部分のお手伝いを行っていくと、実は間接的にもいろいろな課題が出てきます。
事業創造に付随して出てくる、いろいろな課題にも広く寄り添い、顧客の中により入り込んで日常的にさまざまな付随する課題をお手伝いさせていただくことで、プロジェクトの数を増やし、長期間にわたって支援していきます。その結果、売上高の増加にもつながってくるということを目指していきたいと考えており、顧客の課題に寄り添うという意味で「『顧客』ドリブン」と書かせていただいております。
スライド右側の「『構想』ドリブン」は、逆に1つの会社では解決できなくても、複数の企業あるいは業界を超えた連携、官民の連携などの仕組みがあれば、そこに参加する各社がビジネス、本業として収益機会を増やせるというものを描き得る場合があります。
そのようなものを社会課題起点で「どうすればいろいろな参画プレイヤーがビジネスとして儲けられるのか」ということから構想していくというアプローチをしていきます。よって、「『構想』ドリブン」と記載しています。
質疑応答:新型コロナウイルスの影響について
質問3:今期のベンチャー投資やビジネスプロデュースに与える新型コロナウイルスの影響についてどのように考えていますか? また、その影響軽減に向けた対策を教えてください。
原田:新型コロナウイルスの影響と今後への対策ですが、まず、2021年3月期は新型コロナウイルスの影響をかなり受けてしまいました。
ベンチャー投資は、例えば、エンターテイメントのイベントや旅行を前提とするベンチャーなどは、その前提が変わってしまったことで、状況が一気に悪くなってしまいました。今回の減損額のうち、半分近くが新型コロナウイルスの影響によるものです。また、新型コロナウイルスの影響が大きいために、予定されていたIPOスケジュールが見直され、先延ばしになった先もあります。
現在も緊急事態宣言の最中ですが、今後に向けては、コロナ禍がもうしばらく続くことを前提に、影響を追加的に織り込み、ベンチャー投資先の評価はかなり保守的に見込みました。以上が、ベンチャー投資への新型コロナウイルスの影響と、今回行った見直しになります。
ビジネスプロデュースにも、新型コロナウイルスが非常にダイレクトに影響しました。去年の第1四半期、第2四半期では、プロジェクト開始の話をしていた複数のお客さまが「新型コロナウイルスの影響を見極めるまで、新しい事業取り組みについては、一旦待ってください」ということになり、複数のプロジェクトの開始がペンディングになってしまいました。
ただ、今日参加されているみなさまもそうだと思うのですが、だんだんリモートでミーティングすることが普通になってきており、緊急事態宣言が出ても仕事はそこまでペースを落とさずにできるようになってきています。それもあってだと思うのですが、下期になってからは通常モードに戻ったという印象です。前期の第4四半期は稼働がいっぱいになる水準に復調しました。
そのペースは継続しており、新しい期も非常によいかたちでスタートしています。前期はビジネスプロデュースに対する新型コロナウイルスの影響を受けたわけですが、今年はそこまでマイナスの影響なくいけるのではないかと手応えを感じています。
質疑応答:電通グループとの資本業務提携について
質問4:電通グループとの資本業務提携に関してです。例えば、どのようなサービスやコンサルティングの提案ができるようになると考えているのかなど、具体的に列挙できる例がありましたら教えてください。
原田:ドリームインキュベータは、創業した2000年からビジネスプロデュースを推進しています。電通さんはそれまで「営業局」と言っていた営業部隊の名称を2018年に「ビジネスプロデュース局」に変えられ、やはりビジネスプロデュースを推進されています。
ただ、元々の出発点といいますか、基盤となる組織力、ケイパビリティが違うところからスタートしていますので、自ずとその強みも違っています。電通さんの場合は、やはり消費者に対するマーケティングコミュニケーションを通じた支援を強みに、そこから徐々に事業開発やDX等の統合ソリューションに拡張しておられます。
逆に、ドリームインキュベータはもともと戦略コンサルティングを起点としてビジネスプロデュースをしていますので、大きな社会課題や産業、あるいは大企業が長期的につくっていく大きな事業創造といったところから、徐々に具体化して事業戦略・計画に落とし込んでいくというアプローチになります。
ドリームインキュベータは、そこから先、例えばマーケティングにつなげていくところまでを実行するようなプロジェクトを進める場合、ここから先は広告代理店などにお願いしてください、となったり、時にはプロジェクトの中で連携させていただくこともあったわけです。
プロジェクトの進め方としましては、電通さんと連携させていただくことで最上流の構想段階から戦略づくりを始め、それを具体的な事業戦略、事業計画、マーケティングプランにつなげていくことを考えています。さらに、電通グループの中にISIDや電通デジタルがありますので、デジタル化やITソリューションといったところまで一気通貫で支援していくことができるようになるのが、連携することの大きな意義かと思います。
双方のお客さまに対するクロスセル、共同提案も進めていきたいと思っています。さらに、人材の交流や、一緒に組むことで実現できるソリューションの共同開発を行なっていくことを考えています。
質疑応答:アイぺット社の株式の保有方針について
質問5:アイぺット社の株式の保有方針に変化はありますか? 今後どうしたいと考えていますでしょうか?
原田:アイぺット株式の保有方針は基本的には変わっていません。アイペットに対してドリームインキュベータが支援し、価値を高めていく余地がまだあると思っています。かつ、アイペットの企業価値が高まっていく伸び代、ポテンシャルもまだあると思っていますので、腰を据えて今も支援しているところです。
トップラインの高い伸びが続いており、今後も続く見通しです。それとともに保険金請求件数も増えていきますので、積み上がっていく膨大な保有契約へ事務対応可能な業務オペレーションとシステムに変革していく必要があります。今はそのDX支援を行っており、中長期的には企業価値がまだまだ伸びると見ています。
質疑応答:株価の低迷について
質問6:株価が低迷していますが、これをどのように考えていますか? そしてどのように対策していきますか?
原田:株価につきましては、株主のみなさまにはご心配・ご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げます。先ほどご説明しました構造改革についても、最終的に企業価値向上につなげるためにはどうしたらよいのか、というところが常に議論の出発点にあるわけです。
株価を上げていくためには、突き詰めると、利益を上げていく必要があると考えております。利益を上げていくために何をするかというのが、先ほどの構造改革です。数年かかると思いますが、安定的に収益・利益が成長していける体制をつくり、株価へもつなげていきたいと考えています。
質疑応答:ファンドレイズの資金集めの進捗について
質問7:ファンドレイズの資金集めの進捗に関して教えてください。また、課題があればその内容を教えてください。
原田:これは、先ほどの2階建てモデルの2階のお話になります。中長期の目標として、組んでいるところです。先ほどの介護費削減を目的としたソーシャルインパクトボンドについては、今年7月のスタートを目標に最後の調整に入っています。
計画どおりに進めば7月頃にファンドをスタートし、事業を開始できる見込みです。ご出資いただく金融機関の審査も、今のところ順調に最終段階にきています。
将来1,000億円を目指すとお伝えしましたが、まずはこのようなモデルで事業化できることを着実に始め、そこから徐々に大きくしていきたいと考えていますので、最初のスタートは数十億円のファンドとしてスタートします。それを立ち上げ、そのモデルを横展開していくことを考えています。
質疑応答:来期のビジネスプロデュースの減益見込みについて
質問8:30ページに、来期のビジネスプロデュースが減益見込みとありますが、その理由を教えてください。
原田:これは採用・育成の加速が一番大きな要因になります。3年後には売上の倍増を目指そうと考えています。ビジネスプロデュースは人工商売になりますので、売上高を増やすためにはもちろん売る力が必要なのですが、売れた後にそれをデリバリーする力も必要になります。
売る力とともにデリバリーする力を含めて倍増していくということは、体制も倍増していく必要があるということですので、可能な限り採用を前倒しでアクセルを踏んで強化していきたいと考えています。
採用した方が、必ずしもすぐに売上を立てることができるわけではありません。また、前職がコンサルティング・ファームの場合、そこのお客さまをお連れするわけにはいきませんので、まずはドリームインキュベータに入っていただいて、当社のメンバーと一緒に活動して新しい受注につなげていきます。受注拡大につなげていくために、先ほどご説明したように、プラクティスの拡張や、電通さんとの連携も加速していきます。
短期的には、一旦ビジネスプロデュースの利益圧迫要因になるわけですが、部隊が定着してきた時には、このビジネスプロデュースそのものが収益事業として安定基盤になる予定です。
さらに、先ほどご説明しました2階建ての上段、スライドの一番下の濃いピンクで金融機能の組み合わせ部分ですが、この組成・推進を担う部隊も必要になってきます。そのようなところを担う人材の採用・育成投資も進めますので、費用が先行していくということです。
質疑応答:世界的SIB投資の成功事例について
質問9:SIBファンドについて、今までの世界的SIB投資の事例を教えてください。
原田:イギリスを中心に、ヨーロッパでは「ソーシャルインパクトボンド」というスキームで事業が行われており、かなり成長してきています。
一方、日本ではまだほとんどが小規模であり、今回ドリームインキュベータがスタートすれば、日本で初めて多くの官民プレーヤーを巻き込んだ大規模な取り組みとなります。
質疑応答:自社株買いについて
質問10:NAV324億円に対し、時価総額が93億円です。自社株買いを行ったほうがよいのではないでしょうか?
原田:現在の株価を考えると、できるなら行いたいと思うところですが、今回の決算の内容や手元資金、キャッシュ・フローの状況等も踏まえると、残念ながら今はそこに回せないというのが正直なところです。キャッシュに余力があれば自社株買いをしたいところではあります。