第8回 個人投資家向けIRセミナー&講演会(第3部)
出雲充氏(以下、出雲):みなさまこんにちは、ユーグレナの出雲です。今日は本当にお足元の悪いなか、これほど大勢のみなさまに会社の概要と決算、事業の進捗についてご説明させていただく機会を作ってくださった事務局のみなさま、そして何よりも会場にお越しの大勢のみなさまに貴重なお時間をいただきまして、そのことにまず、全地球上のミドリムシを代表して厚く御礼申し上げます。
(会場笑)
今日は本当にお忙しいなかありがとうございます。みなさまの貴重なお時間をいただいているので、今日はポイントを絞って、それぞれの事業セクターで1番お伝えしたい大事なことをお話しさせていただきたいと思っています。
株式会社ユーグレナの紹介
まず、スライド10枚でサッと会社の自己紹介を行います。
当社は、2005年12月16日に世界で初めて屋外で大量にユーグレナ(和名:ミドリムシ)を育てる技術を発明したベンチャー企業です。ミドリムシはみなさまの身近なところにいます。水溜、池、川、湖、海にも生活しています。
しかし、大量に育てるのが非常に難しいという特徴があります。ここがポイントです。当社がミドリムシを必要なだけ大量に育てる技術を発明した2005年から、間も無く15年が経とうとしています。
現在もユーグレナを研究している大学や企業は世界中にございますが、商品としてみなさまに出荷してお使いいただけるぐらい大量に屋外でミドリムシを育てることができるのは、15年経っても当社のみです。ここが、ユーグレナ社の1番のユニーク・セリング・ポイントになると思います。
ユーグレナ研究のきっかけ
なぜミドリムシなのかについてです。20年前、私は大学生のときにバングラデシュにいきました。そこで、大勢の子供たちが栄養失調に悩んでいるのを見て、栄養素が豊富なミドリムシを届けて元気になってもらいたいと思ったことが当社の原点です。
微細藻ユーグレナとは
ミドリムシには、なぜそこまで栄養素が豊富なのでしょうか。なかなか写真でお伝えするのは難しいので、このスライドは今日1番ご注目いただきたいスライドです。
ミドリムシが写っています。大きさは約0.1ミリ弱で、みなさまの髪の毛より少し細いため、肉眼では見えません。顕微鏡でようやく見ることができる微生物で、緑色をしています。植物の葉と同じく、葉緑素で光合成する植物です。
ミドリムシは自力で動くことができます。みなさまの身の回りの植物は絶対に動きません。
でも、ミドリムシは植物なのですが、動きます。植物と動物の両方の遺伝子があり、人間が生活するために必要な植物由来と動物由来の59種類もの栄養素を含んでいます。これがミドリムシの最大のメリットであり、特徴です。
しかし、良いところばかりではありません。当然、ミドリムシの栄養には古くから大勢の人が気付いていました。ですが、増やすことができないのです。培養ができない。
私が在学中には、教科書にも「ミドリムシを増やす方法はない」と書かれていました。なぜなら、ミドリムシはみなさまと正反対の存在だからです。みなさまは人間で、食物連鎖のピラミッドの頂点にいます。何でも食べます。
一方ミドリムシは食物連鎖の底辺です。ミドリムシがほかの生き物を食べることはありません。そして、雑菌もバクテリアもプランクトンもカビも酵母も昆虫もミドリムシを食べます。
ミドリムシを大量に育てようとすると、いろいろな害虫がミドリムシを食べてしまうため、増やすことができません。もしくは非常にコストがかかってしまいます。
世界初、ユーグレナの屋外大量培養技術の確立
その状況を変えたのが当社です。2005年12月から、沖縄県石垣島の工場でミドリムシを大量に育てる事業を行っています。
ビジネス領域と事業開発パートナー
ミドリムシを社会実装するにあたっては2つの方法があります。1つがヘルスケア事業で、みなさまに健康に美しくなっていただく仕事です。そして2つ目はエネルギー・環境事業で、地球に綺麗に健康になっていただく仕事です。
この2つの仕事をミドリムシによって成し遂げるための会社のミッションは「人と地球を健康にする」です。
人を健康にするのがヘルスケア事業で、地球を健康にするのがエネルギー・環境事業です。
ユーグレナ食品の強みー栄養素
それぞれ事業の特徴を、ヘルスケア事業から順にご説明します。世の中に食品は数多ございますが、その中でもミドリムシしか持たない特徴が2つあります。
ゴマンとある素材の中で、ミドリムシにしかない特徴が2つもあるというのが、当社がミドリムシに注目している理由です。
1点目は、ミドリムシが59種類もの植物と動物の栄養素を非常に幅広く含んでいるという点です。
ユーグレナ食品の強みーパラミロン
2点目として、ミドリムシが独自に合成するパラミロンという非常に特殊な食物繊維があります。この食物繊維がみなさまの健康にどのようなベネフィットをもたらすのか、この点について研究開発を行い、成果をみなさまに発信するということも当社の仕事です。
脂肪やコレステロールの吸収を抑え、プリン体の体内への吸収を抑える機能に、パラミロンが関与しているということを示唆するエビデンスを取得して、順次発信、発表しています。
ヘルスケア事業のビジネスモデル
59種類の幅広い栄養素と、パラミロンというミドリムシにしか含まれない特徴的な栄養成分の2つをお客さまに訴求して、3つのルートで商品をお届けしています。
当社の現在の事業売上としては直販が7割を超える状態になっているため、実質的にはECや新聞、チラシからご注文いただきお客さまにお届けする直販が主力のビジネスとなっています。
2019年9月期本決算概要
ここからは決算について説明します。当社は9月決算の会社で、11月にまさに本決算が終わったところであり、クリスマス前の定時株主総会で株主のみなさま方にご報告させていただこうと思っています。
売上高は140億円です。(2019年9月期は)ベンチャー企業として2005年に設立してから初めて減収で着地しました。この点はまず真っ先に、率直にお詫びしなければならない点だと深く反省しています。
一方で、それではこの状態になった原因が一体どこにあるのかを考えます。病気になったときに、病気になった理由がわからないと、元に戻れないというわけです。
理由がしっかりわかっているかどうかが大事です。今後はどのように立て直していくのか、本当にしっかり元にもどって急ピッチで成長できるのか、ヘルスケア事業については直接ご説明させていただきたいと思い、本日はこのセミナーに参加しています。
売上高推移
P/Lです。売上と広告宣伝投資だけをわかりやすく抜粋して書いています。ここでご覧いただきたいのは、ヘルスケア事業は黒字、エネルギー・環境事業が赤字だということです。
この両輪を回していくことによって、会社が夢を叶える前に、飛行機を飛ばす前に、突然潰れてしまうことがないように最新の注意を払って経営しています。
1番コントロールしやすく、正常に経営できているかどうかを投資家のみなさまに見ていただくための重要な指標は広告宣伝費率です。
ですが、売上高は2017年9月期の売上高とほぼ同じ水準で、140億円です。(2017年9月期と比べて)微増ですが、2年前の広告宣伝費は37億円でした。
2019年9月期はたった30億円の宣伝で140億円のお客さまがいるわけです。効率的な広告宣伝でロイヤルカスタマー(良いお客さま)をしっかり確保する手法が存在することは私が口で申し上げているだけではないということが、数値でもしっかりおわかりいただけるようになっています。
セグメント別損益
その結果として、ヘルスケア事業ではしっかり黒字を出すことをお約束していましたが、営業キャッシュ・フローはプラスで着地しています。
一方、実証プラントなどによってエネルギー・環境事業に係るR&Dのコストは拡大していて、営業損益は約7億円の赤字に着地しています。
研究開発費用を一括計上で特別償却しているのですが、その64億円を加えると、合計で75億円も赤字を出していることになります。
「売上が140億円で75億円も赤字が出ているのでは、本当に会社が潰れてしまうのではないか。ミドリムシで飛行機を飛ばす前に会社がなくなってしまったら、どうしようもないだろう」というご指摘・ご心配の声を非常に多くいただいています。
以上のようなご意見はもちろんごもっともですが、そのようなことはないことを次のスライドでご説明します。
現預金、純資産の推移
ここでお伝えしたいことは、2つです。1つ目は、純資産ベースで100億円(を維持しているということです)。今回の一括費用計上は約64億円です。これは現金で64億円支払っているということではなく、従前より建設仮勘定計上しています。
研究開発費としてすべての支払いが終わって、75億円を一括費用計上したあとでも会社の純資産が100億円残っています。また、会社のグループ連結現預金残高も前期末で78億円あるため、問題ない水準と考えています。
営業キャッシュフローベースではプラスですから、しっかり回っています。現在はバイオジェット燃料の研究開発のために投資しているため、フリー・キャッシュ・フローはポジティブではありません。
ですが、営業キャッシュフローベースでは、ポジティブでプラスです。純資産が100億円あり、現預金でも78億円確保してあり、営業キャッシュフローがプラスですから、バイオジェット燃料を入れた飛行機を飛ばす前に会社が倒産するようなことは想定していません。
当然、体力をしっかりと見極めています。「その割にはずいぶんと巨額の投資をしているではないか」と言われるかもしれませんが、現在はミドリムシで飛行機を飛ばすための最終段階まできているため、設備投資に1番お金がかかっているのです。
お金こそかかっていますが、これで無理な投資をして、会社がなくなってしまうということはありません。ヘルスケア事業と営業キャッシュフローの現状を含め、まずそのことをご理解いただきたくご説明申し上げました。
ヘルスケア事業:売上構造推移
ここからはヘルスケア事業をもっともっとしっかり成長させていくための戦略と、エネルギー・環境事業の進捗についての報告をします。
先ほどご説明差し上げましたように、ヘルスケア事業は直販が売上の7割に拡大している状況です。
ヘルスケア事業の課題と方向性
ヘルスケア事業が直面している課題は、ミドリムシの食品としての需要が低迷しているということです。そのため、2019年9月期は(創業以来)初めて減収に終わっています。
なぜこうなっているのか、原因を深掘りしてわかったこととして、株式会社ユーグレナという会社、ミドリムシそのもの、当社が作っている商品がバラバラに発信されてしまっている(ということがありました)。
例えば「ミドリムシジュース」「ミドリムシ由来のバイオジェット燃料」「株式会社ユーグレナ」「ミドリムシ」が、現在はバラバラに発信されてしまっているため、お客さまにしっかり届いていません。
これを立て直せば非常に大きな伸びしろがあるので、もう一度成長路線に戻していくことができると十分に確信しています。
課題=成長機会①―ユーグレナ食品需要の低迷
「伸びしろがまだこんなにある」ということは、スライド18ページのグラフでお伝えできると思います。当社は2012年にマザーズに上場し、2014年12月には東証一部に市定変更させていただきました。
株主数は8万8,000人です。大変多くのみなさま方にお支えいただき、応援していただいています。商品を使ってくださる方は、現在23万人を超えています。
これほどの短期間にここまで多くのお客さまと株主さまに応援していただけるようになった会社は他にはありません。
しかし、今日このように会場に来てくださる投資家の方や、現在このセミナーをライブ配信でご覧いただいている方に「ミドリムシをご存知ですか」とお聞きすると、100パーセント知っていらっしゃいます。ミドリムシのことを飲んだことがある、もしくは飲んだことがなくても知っているとおっしゃってくださいます。
そこで、世の中の方々はミドリムシのことをどのくらいご存知なのか、しっかりと調査し直しました。その調査により、ミドリムシのことをご存知の方は全然いらっしゃらない、ということがわかりました。
はっきり申し上げれば、(現顧客層は)5パーセントです。がんばってるのですが、5パーセントなのです。95パーセントの方はミドリムシなんて、そもそも聞いたことがない。
見たことも聞いたこともないものは買うことも応援することもないわけであるため、95パーセントの人が知らないということが最大の問題であり、同時に伸びしろだと思っています。
野菜ジュースのことを見たことも聞いたこともない人は1割しかいません。7割の人は野菜ジュースを知っていて、見たことがある、もしくは飲んでいるとお答えになっています。
機能性ヨーグルトは約60パーセントの方が認知しています。しかし、ミドリムシのことを認知しているという方は約1パーセントです。(ミドリムシのことを)知っている、聞いたことがある、1回試したことがある、しかし自分の周りのスーパーやドラッグストアには置いていないため、手に入らずに注文できないから買うのをやめたという方は4パーセントいます。残りの95パーセントは、(ミドリムシの商品を)見たことも聞いたこともない状態です。
課題=成長機会②―企業/素材/商品ブランドの連携不足
これを真摯に受け止め、時間はかかりますが、株式会社ユーグレナと、ミドリムシという生き物そのものと、当社の商品を、95パーセントの方に向かって丁寧に発信し、お伝えしていくことによって、ヘルスケア事業をしっかり増収体制に持ち直していきます。
そして、95パーセントの人に伝わっていない2つ目の原因として、十分に商品の棚取りができていないということもあります。株式会社ユーグレナという会社と、ミドリムシという生き物のことをもっともっと丁寧に発信していかないといけません。
今行っているのは個別商品の広告だけなのです。個別商品の広告に30億円投資しているのですが、スーパーに行っても商品がなく、身近な環境で見たことや聞いたことがないとなれば、お客さまも認知のしようがないため、相当効率が悪くなっています。
急がば回れです。遠回りかもしれませんが、ミドリムシという生き物そのものを知っていただくための仕掛けを実行することと、ミドリムシを大量に培養して商品化し、市場に投入することができるのは、ユーグレナ社だけです。まずは、そのような会社があるんだということを認知していただきます。今年から、このマーケティングにとにかく注力していきます。
課題=成長機会③―獲得チャネル/顧客層の偏り
現在は、オフラインの新聞やチラシによって当社の商品を知ってくださっている方が8割(を占めています)。その結果として、当社の主要なお客さまの60パーセントを60歳以上の方が占めています。
広告宣伝をデジタルに拡大し、若い人にもっと発信していきます。それも、商品の話だけをするのではなくて、ミドリムシという生き物、素材そのものと、株式会社ユーグレナについても訴求します。
ヘルスケア事業の中長期成長に向けて
人と地球を健康にする株式会社ユーグレナの存在を認知していただくための企業ブランド作りと、素材のミドリムシという生き物自体のマーケティングの2つは、今まで行ってきませんでした。
これらを実行することによって、会社と素材と商品の3本柱をお客さまの頭の中でリンクさせて広げていくということに地道に取り組んでいきたいと思っています。
これがヘルスケア事業の、次なる成長のためのメインストーリーです。
バイオ燃料製造実証プラント建設の軌跡
そして最後に、エネルギー・環境事業の進捗についてです。当社は、国内のバイオ燃料事業化が各国と比較し遅れているという現状からどんどん広げていこうという取り組みを宣言して出発した会社です。
2019年9月期の実施例―環境問題に対する活動
ユーグレナ由来のバイオディーゼル燃料について説明します。実用化を終えたバイオディーゼル燃料を使っていただいても、既存のバイオ燃料だと、長く使っているうちにエンジンにダメージがかかり、メンテナンスコストが上がってしまうのです。
そのため、車を持っている方がなかなか使いたがりません。(ダメージを抑えるためにはバイオ燃料を)5パーセントまでしか混ぜることができない状況にあるのですが、当社のバイオ燃料は26パーセント使っていただいてもまったく問題がありません。
車にもダメージがありませんし、排ガスも法律に適合していることを確認し、実用化が完了したと申し上げて差し支えないと思います。
マクロ環境の追い風①ー国際的な規制の動向
最後のチャレンジはジェット燃料です。ジェット燃料に関する外部環境はスライドのとおりです。2020年以降は飛行機をたくさん飛ばしたいかもしれませんが、全世界の飛行機セクターから出るCO2の量は、2020年を上限としてこれ以上排出してはいけないというルールが導入されることが決まっています。
マクロ環境の追い風②ーバイオジェット燃料使用状況
これはICAOで決定されたため、世界中でバイオジェット燃料の運用トライアルが始まっています。
しかし、世界中で20万回以上の商業飛行が行われているのですが、日本においては0回です。
これもまた、ミドリムシを知らない人が95パーセントであるのと同じで、日本においてはバイオジェット燃料を商用で供給出来る会社がないのです。
マクロ環境の追い風③ー国内でのバイオ燃料需要の顕在化
日本は、COP21の約束で、2030年にはCO2を26パーセント削減すると世界に発信しています。
現在、日本の航空業界が1年間に使用するジェット燃料は約1兆円です。この非常に大きなマーケットがガラ空きです。ここになんとしてもユーグレナ社として入っていこうと考えて、エネルギー・環境事業において国産バイオジェット燃料(の開発)を進めています。
本来であれば私もこのセミナー会場で、ミドリムシのバイオジェット燃料がASTM認証を取得しましたご報告したかったのですが、ASTM認証は未だ取得出来ておりません。
ASTM認証取得の遅延と現状①:ASTM認証取得までの流れ
「ASTM認証は取得できると言いながら、なぜ取れていないのか。現在はどこのステップにいるのか」というのはもっともなご質問です。今ご覧いただいているのが、アメリカのバイオジェット燃料として認められるためのASTM D7566認証取得プロセスです。
飛行機に入れてもいいジェット燃料の規格が定められています。大きく分けて、この表のように3つのフェーズがありまして、それぞれに試験項目が決められています。
ASTM認証取得の遅延と現状②:ASTM認証取得までの流れ
今ユーグレナはどこまできているかというと、ここまできています(スライド上で完了と書かれている部分を示す)。
フェーズ3の最終審査では全会一致で委員会に賛成をいただかないといけません。そこで、クレイムに対する追試に必要なデータを全部取得して、ライセンサーへの提出も完了しました。
私としてもいつ結果が出るかは申し上げようがありませんが、可能な部分での対応はすべて完了しています。
バイオ燃料の実用化に向けた進捗
当初の予定に比べると遅れていますが、2020年のできるだけ早い時期にASTMの認証を受けます。認証を受けたものは飛行機の燃料として使用できるため、飛行機に入れて、日本で初めての商業飛行の実用化を実現していきたいと思っています。
今日は当社の会社概要とヘルスケア事業の進捗について説明しました。創業以来初めて減収に終わりましたが、何が問題点なのかご説明しました。
そして、ミドリムシのことを見たことも聞いたこともないという方がまだまだ95パーセントもいらっしゃいますので、そのような方に会社と素材と商品を宣伝していきます。今までは商品だけをブランディングしてきたのですが、今年からは、会社、ミドリムシ、商品の3つをしっかりブランディングしていくことを着実に行っていきます。
そして、2020年に国産のバイオジェット燃料による初フライトを目指しています。日本においては0が1になるというはじめての試みであるわけですが、0を1にするために必要な、飛行機の燃料として使用できるという認証のフェーズ3、最終試験の追試に必要な手続きがすべて完了しています。
ASTMの委員会から認証を取得次第、速やかにみなさまに発表して、2020年のフライトに向けた準備に本格的に取り組みます。現在、エネルギー・環境事業はそのようなステージに来ています。
以上です。ご清聴ありがとうございました。
坂本慎太郎氏より質問
八木ひとみ氏(以下、八木):出雲さん、ありがとうございました。ではこのまま質疑応答に移らせていただきます。まずは坂本さんの質問からお願いします。坂本慎太郎氏(以下、坂本):ご説明ありがとうございました。ユーグレナのファンドマネージャーとしても、当然見所と夢がありますし、みなさまからもジェット燃料に関する質問が多くあがっています。
また、ミドリムシはまだ5パーセントの人にしか認知されていないという話がありましたが、このことはこの事業の拡大可能性を非常に評価するものだと思ってます。
18ページを見ると、2012年9月期に15億円だった売上が2018年9月期には150億円に拡大しているわけですから、かなりのご苦労もあったのかと思います。
逆に、まだ5パーセントからしか認知されていないということなので、ここからさらにミドリムシの食品や美容など、国内だけでなく当然国外へもいろいろと販路が拡大する可能性があり、この辺りも期待して見ているところです。
私からの質問は、やはり燃料に関係する質問が多いです。バイオジェット燃料の事業についてお聞かせいただきたいと思います。
競合の存在を教えていただきたいのですが、国内についてはないというお話でした。国外の競合と、国外の競合の現在の生産販売量を教えていただければと思います。
また、今後の商業化についての展望ですが、スライドの中にデンソー、伊藤忠などのアライアンスの名前がございました。
海外実証事業は先ほど詳しく教えていただきましたが、競合他社の研究がどこまで進んでいるのかと、デンソーや伊藤忠との協業について教えてください。よろしくお願いします。
出雲:ありがとうございます。1番多いご質問として、海外で20万回行われているバイオ燃料での商業飛行は、何を原料としているのかよく聞かれます。
「ミドリムシじゃないとしたら、何を原料にしてジェット燃料を作っているのですか」という話ですが、海外では天ぷら油などの廃食油を原料にしています。
彼らは海外で20万回バイオジェット燃料の商業飛行を行うため、危険性も考え、空港でもいろいろな関係者に慣れてもらう意味合いもあって、海外の先行事例ではほとんどすべての場合で廃食油を使用しています。
当社でも廃食油を使います。バイオジェット燃料はとにかく膨大な量が必要になるので、最終的には廃棄物からジェット燃料を作るのではなく、バイオマスからジェット燃料を作るということに着手しなければ大きい産業にはならないわけです。
生産性の問題でもミドリムシのほうが有利ですし、作る油の質からしてもミドリムシが有利です。当社は2段階で考えているのですが、まずファースト・ステップはとにかく日本です。日本式のバイオジェット燃料がアメリカの規格を合格しないと、飛行機に入れられないのです。
そのため、どんなに苦しくても、当社は64億円を実証プラントの建設に投資して1年間で12万リットル作ります。
今回は一括費用計上していますが、投資家のみなさまならお分かりのとおり、これを仮に10年で減価償却すると、1年間で6億円のコストが発生します。
工場の運転費、OPEXは年間で6億円です。ということは、ざっくり申し上げると、当社の鶴見の工場はバイオジェット燃料が12億円で12万リットル生産できる工場だということです。1リットルに換算すると1万円です。
高価だということはわかっていますが、まずはミドリムシでバイオジェット燃料を作る当社の方法をASTMに合格させ、飛行機に入れて、0を1にするのが最初の仕事です。
あと最後の1段階しか残っていませんが、次はミドリムシを巨大な培養槽で生産します。
海外の日当たりの良いところで作るため、当社が伊藤忠とトライアルしているのが、インドネシアとコロンビアでの実証事業です。両国のサポートをいただきながら進めています。ヒマワリ、トウモロコシ、サツマイモ、ジャトロファなどという高等植物のバイオマスではなく、生産性の高いミドリムシからバイオジェット燃料を作るためには、工場を1,000倍大きくしないとダメです。1,000倍大きくするのが本当にできるのか、私も心配でした。
機関投資家の方もここを気にされていましたが、当社が工場を1,000倍にしていろいろ失敗するのは、あまりよろしくない。デンソーは遥かに大きい工場をマネジメント、オートメーション化した経験のある会社です。
当社は農学部がバックグラウンドである人間がほとんどです。ここからは、工業のエンジニアリングの技術で100倍、1,000倍と大きい工場を運用して、コストを下げていかなければならないのですが、これを自社単独で行うのではなくて、デンソーと協業します。
パートナーが決まったため、1,000倍大きくしてコストを100分の1に下げます。しっかり緻密にシュミレーションして、エネルギーとコストの両面でLCAを計算すれば十分可能だということです。
ただ、そこに到達するためには、まずなんとしてもファーストステップを乗り越えないといけないため、これを2020年に完了させます。
自動車の大量生産もそうですし、太陽光パネルなどを工業品にしてたくさん作り、コストを削減するという今までやってきた一連のプロセスに乗せるだけなので、このような2ステップで2030年には非常に大きなマーケットに入っていこうという戦略です。
質疑応答:バイオ技術に関する特許の取得について
八木:お時間が迫ってきてるのですが、最後にみなさまからいただいた質問から1つ伺いたいと思います。バイオ技術に関して特許などを取っていますか、他社に同様の技術を真似される可能性はありますか、とのことです。こちらについて、簡単にお答えいただけますでしょうか。
出雲:ありがとうございます。簡単に結論を述べますと、上流工程である培養の方法はブラックボックスです。下流工程については、特許を取得しています。ミドリムシビジネスを展開する可能性のある国については、すべて知的財産として確保しています。
つまり、「ミドリムシのバイオジェット燃料」という商品そのものがパテントによって保護されています。ミドリムシの機能性、効果効能についても特許で確保されています。
どのようにミドリムシを大量に育てているのか。この製造プロセスについては、特許にするときに明細書にかなり細かく書くこと自体が潜在的な競合に対するヒントになり得るため、上流の培養工程はブラックボックスになっています。
それで15年間営業してきました。商品の機能性や商品そのものについては、パテントとして抑えているため、潜在的な競合に対しては二重の意味で対抗できています。
もし作れたとしても、商品になった時点で当社の特許に抵触することはうたえないという参入障壁があります。ブラックボックスと特許を活用して、競合に対する対策を順次行っています。
八木:ありがとうございました。改めまして、ご説明いただいたのは株式会社ユーグレナ代表取締役出雲充さんでした。みなさま大きな拍手をお願いします。