決算ハイライト
上田輝久氏:それでは、2019年3月期の通期の決算についてご説明させていただきます。こちらのスライドは、決算のポイントをまとめたものです。大きく申しますと、まず過去最高業績を更新したということで、6期連続の増収増益になります。
さらに、売上高・営業利益・経常利益・純利益の4項目につきまして、4期連続で過去最高を更新しました。この背景としては、やはり計測機器と産業機器が牽引したかたちで、今期は4つの事業セグメントのうちこの2つが全体的に好調でした。
計測機器につきましては、とくに戦略機種である質量分析計が、環境あるいは食品安全で拡大しました。また、とくに中国で、環境規制に伴い水質モニターの需要がかなり堅調にありました。
産業機器は、従来のターボ分子ポンプは半導体関係で後半苦戦しましたが、ほかの製品、とくにセラミックス・超硬工具に向けた真空熱処理炉が大幅に拡大し、この半導体市況の悪化で停滞したターボ分子ポンプをカバーするかたちになりました。
(スライドの)3つ目に、「高収益性が持続」と書いてありますが、営業利益率は11.4パーセントで、前期と同じです。基本的には、冒頭に申しましたように、6期連続の増収増益、4期連続の過去最高を更新したということです。
損益計算書
次に、損益計算書です。売上高は3,912億円です。これは、前年差で147億円の増加で、前年比で申しますと4パーセントの増加になります。営業利益は445億円で、前年差で17億円のプラスで、こちらも前年比では4パーセントの増加です。
(スライドの)右側の水色の枠内に為替の影響についての記載がありますが、売上高でマイナス方向に6億円、営業利益でマイナス方向に1億円ということで、為替の影響はほぼなしと考えていただければけっこうです。
(スライドの表の)「業績」の下に「為替」とありまして、さらにその下に「主要投資」とありますが、こちらには基本的に、研究開発投資と設備投資、そして設備投資の中でも利益に影響を与える減価償却費が、前期に比べてどれだけ増加したかが書いてあります。研究開発費は11億円増の166億円、設備投資は45億円増の217億円、それに伴う減価償却費は115億円で、9億円の増になりました。
その下には、主な指標としてEPSとROEを書いてあります。EPSは(前期比で)9円増加しました。ROEにつきましては、11.7パーセントを維持しています。
営業利益 増減要因(2018.4-2019.3)
営業利益の増減の要因をまとめました。基本的には実質的な増収、利益増による61億円と、採算率改善による利益増が15億円あって、76億円プラスの方向にいくのですが、為替のマイナス1億円のほか、実質費用増の影響で59億円マイナス側にいきます。この中には、人件費を含まない投資性の費用として31億円が含まれています。
その結果、当期の純利益は、前期の428億円から445億円に改善しています。以上が営業利益の増減要因になります。
事業セグメント別 損益
次に、事業セグメント別の損益です。計測・医用・産業・航空という4つのセグメントがありますが、基本的には航空を除く3セグメントで増収となりました。
(スライドの表の)真ん中の列が営業利益ですが、ここは明暗が分かれまして、計測と産業が利益増になった反面、医用と航空は減益となりました。
その結果、利益率につきましても、計測と産業は利益率も改善しましたが、医用と航空は利益率が悪化しました。
計測は、基本的には6期連続で増収増益で、好調を維持しました。医用は、日本と欧州が好調で増収となったものの、北米での先行投資により、残念ながら減益となりました。
産業につきましては、4期連続の増収増益です。営業利益率も、以前は10パーセントを目指すと申し上げて、5~6パーセントの時代もありましたが、現在は10パーセントに近い状況になりました。利益の面では、(スライドの表の)営業利益の列を見ていただきますとお分かりのように、計測に次いで産業が伸びてきています。
医用は増収減益、航空は減収減益になりました。航空につきましては、民航と防衛という2つの事業を行っておりまして、後ほどご説明しますが、基本的には収益改善ということで……当社の中期経営計画の3年目になりますけれども、この中の再構築事業ということで、中身をいろいろ見直している時期ですので、今期は残念ながらこのようなかたちになりました。
計測機器/サブセグメント売上高
次にセグメント別の業績ということで、計測からご説明していきます。まず、(スライドの)左下の棒グラフは、3年間の推移です。濃い青のところが重点機種でして、液体クロマトグラフとガスクロマトグラフ、そして質量分析計の3つが当社の重点機種になっております。それ以外にも7つの業種がありまして、ここ(スライド)に写真のを載せてありますが、こういった製品が2018年度は好調でした。
いろいろな分析計測の製品がありまして、内部では、あるものが伸びたり、あるいはあるものがちょっとマイナスになったりという凹凸があるのですが、トータルでは伸びてきています。
重点機種につきましては、(売上高が)1,275億円で、前年からプラス38億円の増となりました。基本的には、まず質量分析計が伸びたという状況の中で、ガスクロマトグラフも新製品が寄与しました。「GC-2030」という機種で、(スライドの右下の)「重点機種」の写真の右から2つ目のものです。こういったものが伸びた一方で、液体クロマトグラフは(2019年)3月に新製品を投入することもあり、残念ながら横ばいに推移したかたちになりました。
その他の業種につきましては、環境汚染のモニターということで、(スライドの右下の)その他の一番左側の水質分析計が伸びました。また、その隣の非破壊検査システムが、日本において、とくに自動車関係で伸びました。さらに、赤外分光光度計、あるいは蛍光X線分析装置などが、中国をはじめとした地域で伸びています。
この結果、海外売上高比率は59パーセントと、約60パーセントになってきています。主力である液体クロマトグラフ、質量分析計ではもう70パーセントを超える状況になっておりますが、計測機器全体を平均しますと、だいたい60パーセントで、これは前期から2ポイントの増になります。
アフターマーケットの売上高は733億円で、(前期比で)プラス92億円、14パーセントの増ということで、結果的に、アフターマーケット比率も2ポイント増加し、30パーセントとなりました。液体クロマトグラフのカラム等、いろいろな消耗品のラインナップを拡充したということで、比率が向上しました。
海外売上高比率のところですが、日本では1パーセント増、海外では7パーセント増ということで、基本的には海外で伸びています。後ほどお話ししますが、これまではずっと、中国を中心に二桁の成長を遂げてきたのですが、現在ではどちらかというと欧米が伸びています。中国は、金額はかなり大きいのですが、伸び率としては一桁台に留まってしまっている状況です。
計測機器 地域別売上高
計測の地域別の売上高をまとめた表です。いま申し上げたような、日本の増と海外の増が書いてあります。一番上が日本で、前期から11億円増の997億円です。もうすぐ1,000億円になります。その次に増加額が多いのが、中国・北米です。増減率で見ますと、中国が7パーセントの増、北米が10パーセントの増、欧州も10パーセントの増です。
いま、英国のEU離脱ですとか、いろいろなことがありますが、基本的には、欧州の経済環境自体は決して悪くありません。ブレグジットがいつ起こるかによって、予算の執行が遅れたりということはありますが、最近では離脱の延期といったことも起こる中で、決して経済環境は悪くないというのが、我々の業績に出ているものです。
その他アジアのところは、東南アジアでは14パーセントの増でしたが、インド等で2パーセントの減です。韓国あたりもあまりよくなかったということで、東南アジアで伸びた分を、ほかのところで食い潰してしまったようなかたちになりまして、基本的にはその他アジアの伸びはあまり大きくありませんでした。
いずれにしましても、計測は主たる地域ですべて増収になったということで、売上の拡大は質量分析計を中心に、いろいろなかたちで進んでいるということです。
計測機器 市場別売上高比率
こちらのグラフは、計測機器の市場別の売上高比率をまとめたものです。大きくいいますと、健康に関係する市場であるヘルスケアは前年から4パーセント増え、31パーセントを占めるようになりました。
一般産業関連は、新素材の開発の市場が成長しておりまして、前年の21パーセントから2ポイント増加して23パーセントとなりました。
大学・官公庁は、日本でもとくに東大を中心に、研究開発費がかなり偏った配分になっているという話がございますけれども、残念ながらその影響が出まして、日本を中心に予算の執行があまり芳しくなかったということで、比率は低下しています。
一方で、その他といわれている部分では、分析機器を使っていろいろな製品を改良するというお客さまが、大手だけではなく中小にもどんどん広がっており、裾野が拡大していることもありまして、このところずっと増加を続けている状況です。
以上が市場別(売上高比率)ですが、やはりヘルスケアと呼ばれる、人の健康に関わる部分は堅調に推移していると考えていただければけっこうです。
医用機器/サブセグメント売上高
次に、医用機器です。医用機器も、(スライドの)左下のグラフで、X線関係の装置を濃い青で、その他を薄い黄色で分けて示しています。また、その右側に、どういう製品があるかをまとめています。おおむね、ここに挙げた製品が業績に寄与したことになります。
売上につきましては、当期は691億円で、前期の659億円から5パーセントの増加になりました。X線機種が10億円の増で、その他の装置が22億円の増です。
海外売上高比率は、日本は10パーセント増加して非常に好調だったんですが、残念ながら海外は、欧州が非常に好調であった一方、北米と中国が低調であったことから、2パーセントの減になりました。その結果、海外売上高比率は(前期比で)3ポイント減の42パーセントとなりました。
アフターマーケット売上高は若干増えましたけれども、比率としては30パーセントとほぼ一定で、計測と同じアフターマーケットの比率になってきました。
この部分が医用の大きな収益源でもあるのですが、全体的に見ますと、売上自体は欧州を中心に拡大した一方で、中国の現地メーカーの優遇策といったもの、あるいは中国政府のいろいろな政策変更に伴う予算執行の遅れから、我々にとってはあまりよい事業環境ではなかったことになります。
北米につきましても、(これまでは)デジタル化推進という一つの大きな追い風がありました。アメリカ政府によって、従来のアナログフィルムから、いまのデジタルの一般撮影装置、あるいはX線のTVといったものへの移行が、かなり推進されてきたわけなんですが、その需要が一服して、当期の場合は市場としては若干シュリンクしまして、その影響を受けたかたちになっています。
医用機器 地域別売上高
医用機器の地域別(売上高)です。いま申し上げたように、それぞれの地域で増減があったということで、基本的には日本・欧州・その他アジアでプラスになったものの、中国と北米で減少になりました。
減少の理由は、(スライドに)記載してあります。逆に伸びたのは日本と欧州なんですが、日本は診療所向けにX線の撮影装置システムが非常に好調であったということと、がんの治療などに使う放射線治療装置用動体追跡システムが拡大したこともあって、増加につながりました。
欧州は、X線関係の主要機種……X線撮影システム、血管撮影システム、そしてX線TVシステムの3機種すべてで増収になったということで、欧州に関しては計測同様、医用も非常に好調でした。
産業機器 サブセグメント売上高
次に、産業機器です。(スライドの)左下にありますように、大きくターボ分子ポンプ、油圧機器、そしてそれ以外に分かれています。(スライドの)右下には、写真が少し載せてあります。
ターボ分子ポンプはいろいろなモデルがありますけれども、基本的には真空ポンプということで、半導体製造装置に使われるものです。その右隣に、油圧ギアポンプ、あるいはコントロールバルブの写真がありますけれども、このあたりが当社の産業機器の主力製品になります。その他のところには、真空熱処理炉、高速スパッタリング装置、あるいはバランサがありますが、当期はこういうものが伸びました。
ただ、先ほど申しましたように、ターボ分子ポンプ(TMP)は残念ながら、前期から17億円減、9パーセント減となりました。半導体製造装置向けが減少した一方、コーティング装置向けは増加しています。あるいは、現在、このターボ分子ポンプ(TMP)のサービスに力を入れておりますけれども、これが増加したことによって、利益に関しては持ちこたえたかたちになっています。
油圧につきましては(前期比で)4億円の増です。油圧ギアポンプは、非常に静かでほとんど音がしないということが顧客から非常に高く評価されている部分でありまして、日本および中国で増収になりました。とくに物流関係で、フォークリフトなどに使われる部分が増加しています。
その他のところでは、真空熱処理炉……これは工業炉ともいいますが、先ほど申し上げたような超硬工具の需要増で、現在こちらが大きく伸びてきています。
航空機器
次に、航空機器です。こちらはいま、民間航空機を伸ばしていこうということと、新規事業として航空機の試験検査事業を立ち上げようとしています。
そういう状況の中で、民航についてはボーイング関係の部品の売上増があり、(前期比で)19パーセント増となりました。一方、防衛関係では前期に一括納入があったため、今期は残念ながらその反動から減収になりました。
ご覧のように、防衛が大きな比率を占めていますけれども、現在、民航をもっと伸ばしていくことに力を入れております。そういう意味では、冒頭に申し上げましたように、事業の再構築を進めており、辞めるものと継続するものをかなりメリハリをつけて進めているところです。
以上が、2018年度の決算の概要になります。これから、2019年度の通期予想についてお話させていただきます。
FY2019 業績予想
まず、通期の業績予想です。我々の基本方針としては、研究開発力の強化をすることと、それに伴う設備投資を行っていくことです。これは日本だけではなく、海外でもということになります。
それを行いながら、7期連続の増収増益と、5期連続の過去最高業績の更新をしようということで、このような計画を出しております。売上高は4,000億円を超え、4,100億円です。これは前年から188億円の増となります。
(スライドの表の)中段に為替の欄があります。当社はいつも、だいたい米ドル105円で見ていますが、(2018年度の)実際のレートは111円ということで、為替の影響が出てきます。(スライドの表の)一番右側に、その為替の影響というものを記載しています。
営業利益は470億円で、2018年度からは25億円の増となります。これは、6パーセントの増ということになります。為替の影響を除きますと、11パーセントの増を見込んでいることになります。営業利益率は0.1ポイント改善し、11.5パーセントです。
経常利益も、営業利益同様に470億円です。当期純利益も340億円で、いずれも前期から15億円の増を計画しています。
(スライドの表の)一番下の主要投資については、研究開発費が190億円で、前期から24億円の増です。設備投資額は23億円の増、減価償却費は15億円の増いうことを計画に入れ、このような業績を達成しようということで進めています。
FY2019通期予想(セグメント別)
セグメント別で見た場合の予想です。基本的には、主要セグメントすべてで増収増益を目指すというものです。計測は7期連続、産業は5期連続の増収増益を目論んでいます。産業の営業利益率は、中期目標の10パーセント以上を計画しています。
ここで、(スライドの表の真ん中の列の)営業利益を見ていただきますと、航空のところの率が大きいように見えますが、金額にしたらそんなに大きい金額ではありません。
2018年度は1億円の営業利益にとどまりましたが、その前の期は5億円くらいで、そんなに無理をしているようなことではありません。民航を中心に、いろいろと改善を図っていくということから、このような予算にしています。率が大きく見えるので、気になさる方もおられるかもしれませんが、額はそんなに大したことないということです。
むしろ計測・医用・産業のところでしっかり伸ばしていくというのが、我々にとって非常に大事で、航空はあくまでも再構築をしていくこと、事業をきちんと立て直していくことを進めているというものです。
配当
そういう状況の中で、最後に配当について触れさせていただきます。(スライドのグラフの)一番左の2013年度は通期で9円となっていましたが、2018年度は中間期が13円。期末はもともと13円を計画していたのですが、業績がよかったということを鑑みて15円ということで、合計28円といたします。
前期あたりから、期末には公表値からプラスアルファしておりますが、来期もそれができるようにしたいと考えています。
2019年度の重点事業戦略
次に、2019年度の重点事業戦略ということで、いろいろなことに取り組んでいく中で、それぞれの4つの事業セグメントで重要な点について少し触れさせていただきます。ここ(スライド)には、計測機器・医用機器・産業機器・航空機器ということでまとめていますが、基本的にはそれぞれの項目についてお話ししていきます。
(スライドの)右上にヘルスケアR&Dセンターの写真があります。当社の田中耕一が質量分析研究所の所長をやっていますが、彼も含めてこのヘルスケアR&Dセンターに入りまして、分析と医用の技術を融合させることによって、先端医療の取り組みをもっともっと進めていこうということで、それに関連する部門がヘルスケアR&Dセンターに集約されました。ここの1階はオープンイノベーションということで、いろんなお客さまと共同していくという場になっていきます。
(スライドの)右下の写真ですが、けいはんな(学研都市)の基盤技術研究所の新棟を建てる計画を進めています。これは2019年度ということではありませんが、来年度に向けて、こういった基盤技術の研究開発能力を拡充するということを進めています。
計測機器:LCの新製品展開
それでは、まず計測機器です。一番大きいのが、やはり液体クロマトグラフ(LC)、そして質量分析計の新製品の展開です。
(スライドの)右上に写真がありますが、新「Nexera」シリーズと称して、「LC‐40」というものを発売しました。いま、アメリカ・ヨーロッパを中心に早くから受注が始まっていますが、これが今期のLCの非常に大きな業績向上のポイントになります。
これ以外にも、最近「LC‐Mikros」であったり、あるいは分取LCというものを出していますが、もう一つ、一体型LCの「i‐Series」という製品があります。これがいま、製薬業界で非常に好調であります。
もともとはインドから始まって、インドの製薬メーカーがアメリカに拠点を増やしていくという状況の中で、アメリカでもかなり増えるようになり、ヨーロッパにも飛び火しまして……ロシアだとか、アジアでいいますとバングラデシュの製薬業界で、この一体型LCが伸びています。
いま申し上げましたように、「Nexera」シリーズと一体型LCという大きな2つの柱がありますが、一体型LCは、どちらかというといろんな研究開発に使われるもの、ある意味でルーチン分析に使われるようなものと考えていただければけっこうです。
この2つがあるというのが当社の強みですが、これからは、例えばAIをこういう分析機器にも搭載しまして……液体クロマトグラフ(LC)および質量分析計は、それぞれ非常に賢い装置になってきていますが、いい方を変えますと、いままでは分析をする人が装置のメンテナンスを一生懸命やる、装置の世話をするみたいなかたちがありましたが、これからは逆に、装置がいろんなかたちで分析者にアドバイスを与えていくような機能をどんどん搭載していくということが、1つの大きなポイントになります。
それともう1つは、(スライドの)右下にありますように、そこで使われるいろいろな消耗品、さらにはアプリケーションシステムというもので、いろいろな分析に簡単に使っていけるような状態にするということになります。
このアプリケーションの拡大というのは、いまある1つの事例でいいますと、時々話題になります、アメリカでのカナビスです。最近では「ヘンプ」といういい方も出てますが、いってみれば合法大麻ということになりまして、とくに医療用あるいは健康用ということで健康成分をしっかり分析する、あるいは、重金属などの有害物質や、それ以外の残留農薬といったものが入っていないかどうかを確認するということで、いまどんどん増えてきています。
アメリカだけでなく、ヨーロッパ・アジアにも飛び火していってるということで、これから市場拡大が見込まれる部分です。これはLCの重要なポイントということになります。
計測機器:MSの新製品展開
次に、質量分析計(MS)です。ここ(スライド)にありますように、ラインアップを強化してきたというのが、これまでの1つの事業戦略です。
(スライドに)写真が4つありますが、上(の2つ)がLCMSとGCMSというもともとの主力製品で、市場でも多く使われていました。
右下はDirect MSです。最近、LC・GCといったクロマトグラフを使わないような質量分析計が、スクリーニング用途として使われるようになってきました。このようなラインアップを増やしたことによって、プラスアルファで業績に関与しています。
左下は四重極LCMS、左上はQ‐TOF型です。Q‐TOF型は、どちらかというと高精度の質量分析計です。左下のLCMSは、トリプル四重極といいまして、どちらかというと高感度な質量分析計となります。
こういうものを両方持つことによって、いろいろな分野に対応できるということで……従来は、中国の食品安全を中心に、残留農薬の分析がいろいろな地域で行われまして、当社の業績に大きく貢献してきたという部分がありますが、食品だけではなく、環境・香料・化学という分野もどんどん伸ばしていこうと(考えています)。
あるいは、最近伸びているのが、法医学、あるいはドーピング(検査)です。こういった分野で伸ばしていくというのが、このMSの新製品の展開になります。
非常に高度な開発能力を要求されるのですが、単にハードを開発して終わるのではなく、いろいろな分野に展開していくということを、いま力を入れて進めているところです。
現在、このMSはずっと右肩上がりに伸びていまして、液体クロマトグラフ(LC)に次ぐ大きな柱になってきました。この2019年度も、質量分析計が業績の軸になっていくと考えています。
計測機器:ITソリューション、AM強化
次に、ITソリューションです。「AM」とは、アフターマーケットのことです。やはり分析機器も、ソフトウェアを使っていろいろなデータの処理をするという時代に既になっているのですが、IoT・AIを使った様々な賢い機能をもっと搭載していこうということで、(2019年)2月からITソリューションビジネスユニットというものを発足しまし、ネットワークシステムを中心としたソフトウェア製品のマーケティングと開発企画を一体化した開発体制を作りました。
これによって、IoT・AIの活用というものを推進していくということで、クロマトグラフ・質量分析計が中心になりますが、それだけではなく、分析計測の製品全般に対して、今後はソフトウェアの開発、あるいはIT技術の取り込みというものの方向性を付けていこうとしています。
もう1つは、消耗品ビジネスユニットというものを、(2019年)4月から発足しました。こちらは、とくに試薬・消耗部品のマーケティングおよび新規開発で、独自のラインアップを拡充していこうというものです。
(スライドの)右側に、試薬キットや、非常に吸着の少ないバイアル、あるいは分離管であるカラム管というものの写真が載せてあります。2017年6月に、アルザシムという安定同位体を開発・製造している会社を買収し、現在はとくに質量分析計関連の試薬の売上拡大というものを進めていますが、こういうハードウェア・ソフトウェアだけではなく、消耗品に関しても開発に注力・投資していこうとしています。
計測機器:協業の推進
次に、協業の推進ということで、先ほど少し触れましたが、ヘルスケアR&Dセンターというものを今年(2019年)2月に竣工しまして、京都の本社にライフサイエンスの技術部門を集約しました。
ここでは、いろいろな共同研究を進めていくことになりますが、その事例というのがその(スライドの)下に少し書いてあります。基本的には、分野としてはやはりライフサイエンスなので、医療・がんと書いてありますが、これ以外にも、認知症やうつ病といったものを、血液検査あるいは尿検査で早期診断をしていくということ。そして、できるだけ早く治療できるようにしていくための新しい技術開発ということが、医療・がん分野での1つの重要なテーマです。
2つ目は食品分野ですが、これは従来の食品安全、フードセーフティということだけではなく、最近の機能性成分といわれるものです。健康にいい成分をたくさん含むような食品の開発というものがどんどん進んでいますが、そういうところも協業していくというものです。
さらには、細胞関連です。これは再生医療にも繋がりますが、そういうところも協業していくということで、この事例を挙げています。
このヘルスケアというのは、ある意味で開発投資がかかるものであり、薬事(許可)をとるとなりますと、どうしても期間も必要になる部分があります。基本的には参入障壁の高い事業領域でありますので、当社としてもこういうところには力を入れていきたいと考えています。
計測機器:中国での取組み
やはり、中国が今後どうなるかというのは我々にとっても非常に大きなテーマであります。よって、この中国での取り組みというのは、(スライドの)一番上にありますように、いま伸びている分野に注力しようということで、大学における「双一流」……要は、中国の大学を世界でトップレベルにするということで、分析器とくにハイエンド製品の需要が増えています。
そして、人口14億人の中国で、臨床分野において質量分析計を使うという取り組みがどんどん進んでいますので、そこでの拡大。さらに、受託分析は、従来中国政府が行ってきた受託を民間に委託するということが進んでいますが、そこの市場拡大。
また、環境においては水分野というのがずっとありましたが、いまはVOC、いわゆる揮発性の有機化合物の分析というものが、これからの環境規制の一番重要なポイントになってきますので、こういう需要を取り込むということです。
それ以外にも、新しい液体クロマトグラフ(LC)、あるいはガスクロマトグラフ(GC)での石油化学分野のシェア向上。そして、中国に向けた拠点を整備するということで、分析センターを増やしており、現在は(中国全土で)7ヶ所となりました。顧客へよりきめの細かいサービスを提供していくということで、これはアプリケーションサービスになりますが、このような取り組みによって事業を拡大していこうとしています。
ここ(スライド)には書いてありませんが、中国に開発センターというものを持っていまして、中国現地向けの製品開発を行っています。(開発センターは)上海にありますが、それ以外にも、北京に中国の質量分析センターというものを持っています。ここでは、いわゆる法規制に関わるような分析に関わっていこうとしています。
このように、現在、(中国には)開発拠点を2つ持っていますが、今後はそういうところで重要なテーマというものを設定し、中国との関係をさらに強化していこうと目論んでいます。
医用機器:収益性向上の取組み強化
次に、医用機器です。医療機器につきましては、収益性の向上が最重要課題であり、基本的にはアフターマーケット事業を拡大するということと、やはり市場の大きい北米において、直販・直サービスを行うとともに、北米での事業強化に必要な製品・新製品のラインアップを拡充していくというものです。
(スライドの)左側には、IoT、ネットワークを使ったサービスの仕組み(を示しています)。右側は、北米事業の強化ということで、現在開発中の新製品……これは近接操作式X線TVというものですが、この市場が大きいということもありまして、ここにテコ入れしていきます。
この2つを大きなテーマとして、医用機器の収益性向上を図っていきます。これ以外にもいろいろと取り組みますが、主なものとしてはこの2つだと考えていただければけっこうです。
産業機器:収益性向上の取組強化
次に、産業機器です。やはり収益性の向上ということで、ターボ分子ポンプ……これは、おおむね2018年度の第1四半期頃までは非常に堅調に来たのですが、第2四半期あたりから伸びが鈍化したかなと(思います)。第3四半期頃から前年割れを始めて、第4四半期はなかなか厳しい状態になりました。
こちらも、(2019年度の)下期頃からは、また回復基調に戻るであろうと(考えています)。これは、5GやIoT・AIというところで需要が回復するというように見ていまして、ターボの事業もさらに強化していくということで、サービスを含めて取り組む予定です。
もう1つは、いま真空熱処理炉というものが伸びていますので、超硬工具だけではなく、新しい分野にも展開していこうということで、現在いくつかの新事業を手掛けているところです。
航空機器:事業再構築(新事業の立上げと民航事業の拡大)
次に航空機器です。基本的には、収益の改善というのは、この(スライドに挙げた)2点がポイントになります。
まず、試験検査ビジネスを立ち上げるということで……やはり、航空機の検査というのは、まだまだ人に依存している部分が多く、いろいろな事故も起こっています。このような状況の中で、航空機の会社さん自体は、これからこの試験検査というものを非常に強化していきたいと考えておられます。
当社は分析計測事業を行っていますし、基盤技術研究所で新しい分析の開発もしていますので、そういうところを活用して新製品を開発しながら、この試験検査ビジネスを立ち上げるというのが、この(スライドの)左側の部分になります。
(スライドの)右側は、民航事業の拡大ということで、現在、中型機あるいは小型機というものがどんどん増えてきていますが、そこに必要とされる様々なものを提供していくということ。さらに、アフターマーケット事業ということで、交換部品を定期的に提供していくということで、現在計画を進めています。
事業を通じたSDGsへの貢献
最後になりますが、当社の社会貢献ということで、当社のいろいろな事業を通じて、SDGsに対して貢献していこうとしており、社会課題の解決ということを、現中期経営計画の1つの大きな課題にしています。
この(スライドの)左側のグラフは、縦軸が社会への貢献度、横軸が事業(活動での実績)ということになります。この「3」の健康に関わる部分が、我々にとって非常に大きい部分で、こういうかたちでプロットしてあります。
(グラフの)右上に持っていけるような事業というものをいろいろと考えながら、単に製品を開発して販売するということだけにとどまらず、外部の共同相手とともに、どうやって社会のいろいろな課題の解決の仕組み作りに組み込んでいくかということに取り組んでいくことで、事業を拡大しつつ社会貢献し、最終的には企業の価値を高めたいと考えています。
以上、2019年3月期の決算の内容と、2020年3月期の見込みと計画、そしてそれに対する重要施策ということでお話しさせていただきました。どうもありがとうございました。