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チーフ・外国株コンサルタントの岡元兵八郎氏による「ハッチの米国株教室」第1回。高まる米国株投資への関心に応え、40年近い経験から米国株の強さやS&P500の長期投資の魅力を解説します。初めての株式投資や失敗談など、投資初心者にも役立つエピソードを交え、アメリカ市場の本質に迫ります。(※2025年10月31日収録のマネックス証券YouTube動画に基づく内容です)

ハッチの米国株教室 #1

荻野仁美氏(以下、荻野):フリーアナウンサーの荻野仁美です。この番組ではマネックス証券のハッチさんをお迎えして、「ハッチの米国株教室」と題して豊富な経験をもとに米国株投資についてわかりやすく教えていただきます。今回が第1回目です。岡元さん、よろしくお願いします。

岡元兵八郎(以下、岡元):マネックス証券のハッチこと岡元兵八郎です。よろしくお願いします。

荻野:岡元さんは社会人になって以来、一貫して外国株、中でも米国株に携わって来られました。10年のアメリカ駐在経験もお持ちで、また33ヶ国以上の証券取引所や上場企業の経営陣も訪問されています。そして現在マネックス証券のセミナーでは、毎月市場動向の解説や注目銘柄の紹介を行って米国株の魅力発信もされています。

ということで、さっそく岡元さんから米国株の魅力を教えていただこうと思います。

米国株との出会いは「運命」

荻野:岡元さんが米国株に携わられて、もう40年近くということですが、そもそも最初に米国株に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

岡元:運命みたいなものがありました。就職活動の時に受けたのがアメリカの証券会社でし、その面接の時に「何をやりたいんだ」と聞かれたのです。当時は正直なところ、金融のことはそんなにわかっていませんでした。

「トレーダーに向いてると思います」と申し上げたら、「なんでだ」と言われて、「僕は血液型がO型ですごく楽観的なので、トレードで損してもくよくよしないと思うのです」と伝えたところ、「馬鹿野郎、お前は営業向きだ」と言われました。

たまたま高校でアメリカとカナダに行っていたため英語が少しできたということで、入社したらアメリカの株式の機関投資家営業をやることになりました。そこからですね、米国株との縁が始まったのは。仕事として携わる中で、実際に株式投資をするとなるとやっぱり米国株が良いなということで、投資を始めたのがきっかけです。

ブラックマンデーを乗り越えて実感した米国株の「強さ」

荻野:当時、米国株は世間からどのように見られていたのでしょうか?

岡元:僕がアメリカの証券会社に入社した年は、米国株がガンガン上がっていた年でした。テレビのニュースでも「昨日のニューヨークダウはこれだけ上がった」などと話題になっていたし、日本の証券会社の店頭で「上がってるニューヨークダウってやつを買いたいんだけど」という投資家の方がいらした話もありました。

しかし、当時はETFなどの指数連動商品もなくて、ニューヨークダウに投資できませんでした。そんな時代だったので、個人投資家の方々が米国株に対して個別銘柄を買うという時代ではなかった印象ですね。

荻野:注目され始めているというか、「良いらしいぞ」と噂が広まってきた頃だったのでしょうか?

岡元:株のマーケットは、上がっているとみんなが興味を持つでしょう。「米国株が上がっている」と話題になったから、興味を持ち始める人も出てきたのではと思います。

補足しておくと、1987年10月にアメリカではブラックマンデーがあり、1日でニューヨークダウが22パーセント下落ということがありました。当時僕はニューヨークで研修を受けていたのですが、周りのトレーダーが1人ずついなくなって、「やっぱりアメリカの会社は厳しいんだな」というのを体感しました。僕の仕事もどこかでなくなるのかなと思っていたのですが、その後は時間の経過とともにまた株価が上がり始めたのです。

「アメリカはだめだ」と言われていたものの、何のことはない、先進国の中で一番最初に米国株が回復して、上昇を継続したということです。今振り返ってみて、米国株の強さをあらためて感じています。

桁違いのリターンと世界を席巻する企業たち

荻野:入社1年目からブラックマンデーを経験され、30年以上米国株に携わってこられて、米国株の魅力はずばりどのようなところだと思われますか?

岡元:リターンが大きいというのはポイントだと思います。これは過去の話ですが、僕が1987年3月末に社会人になってから今までの米国株の上昇率について、S&P500は2,239パーセント上がっているのです。一方で、最近は日経平均が上がっていますが、こちらは138パーセントしか上がっていません。

荻野:桁が違いますね。

岡元:それから、S&P500は配当金を出しています。株のパフォーマンスを見る時に、配当金の再投資を含むトータルリターンを確認するのですが、それで見ると5,193パーセントになります。ですから、配当金を再投資するのはとても大切なことです。

なぜそうなったのかですが、アメリカの特徴として、例えばAppleなど、世界的に有名になった企業が非常に多いことが挙げられます。荻野さんはiPhoneを使っていますか?

荻野:はい、使ってます。

岡元:そうですよね。Web検索する時はGoogleを使うでしょうし、Metaが展開するFacebookも使っているかと思います。オンラインショッピングの時は何を使いますか?

荻野:Amazonを使いますね。

岡元:ですよね。言わせてしまいましたが(笑)、我々は当たり前のようにアメリカの会社のプロダクトを買ったり、サービスを使ったりしています。我々だけではなく、おそらく多くの日本人がそうであり、世界中の人たちも同じように利用しています。

これだけ多く使われているというか、世界的に有名なプロダクト・サービスを作っているのは、やはりアメリカの会社なのだと思います。最近ですと、AI・人工知能関連で、NVIDIAの時価総額が5兆ドルになりました。5兆ドルはおよそ760兆円で、これは日本のGDPを超えています。そのような規模の会社は他の国にはないでしょう。

また、先進国では基本的に人口減少が見られるのですが、アメリカだけは例外で、これからも増えるだろうと言われています。これはなぜかというと移民によるもので、移民人口とも言われます。移民の人たちが一番行きたい国が、アメリカなのです。

「アメリカンドリーム」とは言いますが、「ジャパニーズドリーム」とはあまり言いませんよね。やはりアメリカはいろいろなチャンスがある国であり、先ほどお話ししたiPhone、Amazonのようなイノベーションを生みやすい国なのだと思います。ですから、アメリカのマーケットに投資をするということは、イノベーションに投資ができるということで、それが米国株投資の魅力なのではないかと思います。

最初の投資は「楽勝」だと思った大学生時代

荻野:岡元さんご自身が最初に投資した銘柄を覚えていますか?

岡元:1984年当時、僕が大学生の時ですが、イギリス政府が国営企業の民営化を行ったことがありました。当時、ブリティッシュテレコム(現・BTグループ)というイギリスの通信会社、日本のNTTのような会社があり、それが上場するということで世界的に投資家を募りました。

日本の新聞にもその広告が出ていて、「ブリティッシュテレコムが民営化されます。株式の購入を希望される方はご連絡ください」という趣旨でした。学生ながらになぜか興味を持って連絡して、当時アルバイトで貯めた20万円を使ってブリティッシュテレコムの株主になりました。

その後、ブリティッシュテレコムはロンドンの株式市場に上場して、数ヶ月という短い期間で株価が4割ぐらい上がったのです。「株式市場、楽勝じゃん!」と思いました。後にそうではないということがよくわかったのですが、1回目にこのような成功体験があって、そこから株に興味を持つようになりました。

多くの経験からたどり着いた、長期投資の神髄

荻野:初めて買う時には、いろいろと調べましたか?

岡元:当時はあまり情報がなかったのですが、おもしろい銘柄を探そうと思って、投資系の雑誌などを読んで勉強していました。最初はなかなかうまくいかなかったのですが、それは短期目線で物事を見ていたからだったと思います。

先ほどお話ししたブリティッシュテレコムの場合、数ヶ月間で4割上がったので、「株って意外と簡単なんじゃないか?」という大きな誤解があったわけです。実際に投資を始めてみるとそうはいかなくて、だいたい「買うと下がる」ということになりました。

だんだんと経験を積んでいくうちに、やはり長期的な目線が大切だということと、人が「良い」と言っているから買うのではなくて、自分なりに「この会社はどうやって売上を出しているか?」を考えるようになりました。おそらく一般的には、それを考えずに投資をしているケースが多いのではないかと思っています。「YouTubeで誰々さんが良いと言っていたから」などの理由です。

自分の大切なお金を使って投資をするわけですから、その会社がどうやって儲けているか、何をやっているかという基本的なことをまず理解することが大切ですし、目先の利益、いわば短期的なリターンを追うよりも、長期投資をするのが最もリターンが見込めると思っています。

荻野:「誰かが良いと言ったから買ってはいけない」というのは耳が痛いお話でした。

トランプ氏のプレゼンと、忘れられない失敗談

荻野:岡元さんが投資をされてきた中で、失敗談はありますか?

岡元:印象に残っている失敗談があります。1995年、僕がニューヨークの証券会社で働いていた時です。

IPOなどの際、会社説明会がホテルで行われて、そこにプロの機関投資家がやってきてプレゼンテーションを聞いて、投資をするかどうかの判断をします。当時、トランプ・エンターテインメント・リゾーツというカジノ運営会社がIPOするということで、僕もその説明会に参加しました。そこでプレゼンしたのはドナルド・トランプ氏で、当時、彼は50代ぐらいだったと思います。

前のほうのテーブルに行ったら、2メートルもないくらいの近い距離にトランプ氏がいらっしゃいました。話しかけようかなと思ったのですが、ちょっと固い顔をされていて、近づきにくい雰囲気がありました。

プレゼンテーション自体は非常にうまくて、僕も2,000ドルほど株式を買ったのですが、けっきょく倒産しちゃいました。失敗はたくさんありますが、それが印象に残っている失敗談の1つですね。

荻野:トランプ氏が大統領になって、良い話のネタになったかもしれないですね。

今回は岡元さんに米国株の魅力、そしてご自身の初めての米国株の投資経験などについても教えていただきました。ありがとうございました。

次回は、米国株の特徴や銘柄の探し方について解説予定です。ぜひご視聴ください。

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