エグゼクティブ・サマリー

羽生満寿夫氏(以下、羽生):本日はご多用のところ、弊社の2025年3月期決算説明会に多数の方の出席を賜り、厚く御礼を申し上げます。代表取締役社長の羽生満寿夫です。

はじめに、本日の説明会のポイントについてご説明します。弊社を取り巻く事業環境は、米国における中国等諸外国への高い相互関税がサプライチェーンに与える影響を予測することが困難な状況であり、今後の受注動向に関して、依然として予断を許さない状況が続いています。

自動車市場においては電気自動車の販売が失速していますが、全体としては堅調に推移し、今後も継続する見通しです。生活家電市場においては、在庫調整が一巡し、回復が見込まれます。産業機器市場では半導体関係は需要が増加したものの、FA機器関連や設備投資関連は在庫調整が継続しています。

このような環境の中、2025年3月期の業績実績は、全市場向けで順調に推移しました。特にAV機器市場はミラーレス一眼レフカメラを中心に売上が伸び、自動車電装市場やアミューズメント市場向けも堅調に推移したことで、売上高は前期比で約10パーセント増加し、営業利益も約75パーセント増加しました。

次に、2026年3月期の業績予想です。為替相場が円高に推移することを前提に試算した結果、売上高は増収となりますが、営業利益については減益見込みとなっています。ただし、この為替の影響を除くと、売上高、営業利益は前期比で増加の見通しです。

最後に中期経営計画の進捗です。2026年3月期は中期経営計画最終年度となります。今期の業績予想を着実に実行することで、5ヶ年計画は売上高、営業利益累計において達成する見込みです。

配当金については、今中計期間中は下限60円を設定していますが、業績が堅調に推移したことから、増額を継続しています。

目次

本日は、こちらの目次のとおり、最初に弊社の特徴と強み、次に2025年3月期業績実績と2026年3月期業績予想、最後に中期経営計画の進捗と取り組みについてご説明します。

弊社の特⻑と強み① - 一貫生産

弊社の特徴と強みの1つ目です。弊社はお客さまからのご要望に応じたカスタム製品から汎用電子部品まで、幅広くご要求に応えるべく、独自のフィルム印刷と成型・プレス加工の技術をコアに、製品設計、金型設計と加工、アセンブリまで一貫生産で対応できます。

一貫生産で対応できるからこそ、パートナー企業が抱える課題をさまざまな過程から一緒に解決し、製造コストも抑え、付加価値を加えた提案を行うことができます。

また、弊社はBtoBの企業で電子部品メーカーのため、弊社の製品が直接みなさまの目に触れることはありませんが、培った技術力を駆使し、パートナー企業とともに製品を作り上げています。みなさまの日常生活をより快適にするイノベーションを届けているという認識です。

弊社の特⻑と強み② - エレメント技術からの市場展開

次に、弊社の特徴と強みの2つ目として、エレメント技術があります。エレメント技術とは、例えば電気製品の電気の流れを制御する抵抗体で、その抵抗体をベース基板に印刷する技術も含まれています。

この技術により創業当時から生産している可変抵抗器や固定抵抗器が弊社の製品の原点です。その技術の進化により、前面操作ブロックや各種センサが開発、製品化され、さまざまな市場で採用されています。

このセンサの使用例として、ポジションセンサはアミューズメント機器や一眼レフカメラのレンズに、透明電極はタッチスイッチに、非接触センサは静電容量式で水分検知などに使われています。

既存市場では、高性能化への改良や価格競争力アップによりシェアを広げる努力を行い、また新たな市場にも常に目を向け、弊社のビジネスチャンスを探る動きを行っていきます。

弊社の特⻑と強み③ - コア技術を活かした製品展開

弊社製品についてご説明します。印刷技術などのコア技術を活かした製品展開として、1つは前面操作ブロックといわれるICB製品があります。これは、お客さまからのご要望一つひとつに対応するカスタム製品です。2つ目は、可変抵抗器や固定抵抗器、スイッチなどの汎用電子部品であるディスクリート製品です。

カスタム製品のICBと、汎用電子部品のディスクリートの2つの製品群に分かれており、そこで生み出されたさまざまな製品を多くの取引先に販売しています。

過去業績と26/3期予想(累計ベース)

2025年3月期業績実績と2026年3月期の業績予想についてご説明します。スライドは過去の実績と今期の予想における売上高と営業利益の推移です。

2025年3月期は、為替相場が想定より円安に推移したことと、事業の状況が変化したことに伴い、第1四半期と第3四半期でそれぞれ通期業績予想の修正を発表しました。この結果、2025年3月期については、売上高は約167億円、営業利益は約16億円、営業利益率10パーセントの着地となりました。

次に、2026年3月期の業績予想です。上期は2025年3月期下期からの堅調な状況が続く想定ですが、下期は市場によって若干減速することを予想しています。この結果、売上高は170億円、営業利益は15億円、営業利益率は8.8パーセントを見込んでいます。

25/3期の利益増減要因分析(前年同期比較)

2025年3月期の営業利益増減要因分析についてご説明します。2024年3月期に対し、2025年3月期は資材価格の高騰による材料費の増加により2億3,100万円、人件費や各種経費の増加により2億4,800万円のコスト増加等のマイナス要因がありました。

一方で、売上増加により6億2,600万円の営業利益貢献と、製造工程の自動化および省人化と、販売価格へのコスト転嫁の効果により4億2,000万円、さらに期を通して円安に推移したことによる1億4,000万円のプラス要因もありました。結果として、営業利益は7億1,600万円の増加となり、16億6,300万円となっています。

経常利益は前期比5億6,800万円増の21億2,700万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比6億4,700万円増の20億900万円という結果です。

26/3期の利益増減要因予想(通期前年比較)

2026年3月期の利益増減要因予想について、2025年3月期と比較してご説明します。まず、計画策定の前提である為替レートは、1USドルを140円としました。

2026年3月期の営業利益の見通しとしては、資材価格の高騰による材料費の増加により2億4,400万円、人件費や各種経費のさらなる増加により4億2,600万円のコスト増加の要因があります。

これらのコスト増加を、売上増加による5億6,000万円の営業利益貢献と、製造工程の自動化および省人化による自助努力と販売コストへのコスト転嫁の効果も加えた1億9,800万円で吸収する見通しです。

しかし、為替レートを円高に想定した結果、為替の影響により2億5,100万円のマイナス影響を想定しており、結果として営業利益は1億6,300万円減少し、15億円の計画としました。

経常利益については、2025年3月期で計上した為替差益や固定資産売却益などの特殊要因がなくなることにより、5億2,700万円減の16億円、親会社株主に帰属する当期純利益は、主に2025年3月期で発生した税効果会計の分類見直しにより、7億900万円減の13億円を計画しています。

電子部品セグメントにおける市場別売上高 - 通期前年比較

スライドは、市場別の売上高について、2024年3月期と2025年3月期の実績の比較です。

2025年3月期も各市場ともバランスの良い売上構成となっています。AV機器が前期から2ポイント増加し24パーセントになり、代わりに自動車市場向けが2ポイント減の20パーセントとなっています。ただし、これは自動車市場向けの売上が減少しているわけではなく、売上高は増加しています。

電子部品セグメントにおける市場別売上高の25/3期実績と26/3期予想

市場別売上高について、2025年3月期の実績と2026年3月期の予想の金額推移をご説明します。

2025年3月期で、カメラ向け製品の売上高が大幅に増加したAV機器は、2026年3月期は前期比では減少するものの、引き続き高い売上高を維持する見通しです。次に自動車向けは、新製品の採用などのプラス要因もあり、2026年3月期も継続して順調に推移する見通しとなっています。

一方で、2025年3月期に好調だったアミューズメント向けは、受注数量が落ち着いていることから、2026年3月期は前期比では減少する見通しです。

家電、産業機器、医療・ヘルスケア市場向けは2025年3月期において堅調に推移し、2026年3月期もこの傾向は続くと見ています。

新領域向けでは、研究開発を続けながら積極的な売り込みを行い、試作品での売上を積み重ねることで、将来の1つの柱として売上貢献につなげていきたい考えです。

製品別売上高 - 通期前年比較

スライドは、製品別の売上高について、2024年3月期と2025年3月期の実績を比較した資料です。それぞれの割合は前期比でそれほど変化はありませんが、ほぼすべての製品で売上高が増加しています。

製品別売上高の25/3期実績と26/3期予想

製品別売上高の2025年3月期の実績と2026年3月期の予想です。従来の主力製品であるICBと、中期経営計画策定時に将来の増収の柱として考えていたセンサが、2025年3月期、2026年3月期で同等のレベルとなってきています。このことから、センサが弊社の主力製品の一翼となったことがわかります。

また、その他の製品が2025年3月期に増加しています。これは環境対応の緩衝材の製造販売が伸びたことが貢献しています。

可変抵抗器、固定抵抗器、機構部品の製品は、2026年3月期も前期に引き続き堅調に推移する見込みです。

現状認識(株価・PBR・ROE)

続いて、中期経営計画の進捗についてご説明します。まずは、5月27日に開示した資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてです。

スライドは現状認識として、株価・PBR・ROEの推移です。株価については、今中期経営計画を発表した当初の株価は1,200円前後でしたが、企業価値向上に向けた取り組みを継続し、現在は2,000円を超える株価を維持しています。

これに連動するかたちでPBRも右肩上がりとなり、1倍に近づいています。これは弊社の知名度が向上し、さらに弊社について良いイメージを持っていただいているおかげと考えています。

ROEについては、2025年3月期に特殊増益要因があった影響で、目標とする8パーセントに近い7.4パーセントになりました。2026年3月期は4.7パーセントを予想しています。

企業価値向上に向けた方針

現状認識で示したとおり、株価は徐々に上昇してきているものの、PBR・ROEは目標値を下回っています。このことから、資本収益性の向上および市場評価の改善に向けて、各種施策を実行していきます。

1つは「収益力の向上」です。成長戦略として、弊社のエレメント技術をさらに進化・向上させることにより、さまざまな市場への拡販と新規事業分野への進出にチャレンジします。これにより事業規模を拡大させ、売上増加と利益率の改善を図っていきます。

2つ目は「資本の最適化」です。財務戦略として、配当性向や自己株式取得など、バランスシート上の資本の最適化に向けた取り組みを継続していきます。

3つ目の「マルチプル向上」については、IR戦略として、弊社のさらなる知名度のアップに向けて、積極的な情報開示による資本市場との対話を拡充させます。同時に、サステナビリティへの取り組みも継続していきます。

今中期経営計画と⻑期ビジョン

今中期経営計画と長期ビジョンについてご説明します。

今期は中期経営計画最終年度のStep3にあたり、「新領域の拡大」に向けて医療・ヘルスケア等における成長戦略を実行しています。また、さらなる資本効率の改善を行い、中長期的には株主資本コストを上回るROE8パーセントの達成を目指しています。

今中期経営計画期間中の4年間の実績を振り返ると、営業利益は2022年3月期と2023年3月期は計画を上回りましたが、2024年3月期は若干下回っています。直近の2025年3月期は業績予想を上回ったことで営業利益も確保し、ROEは7.4パーセントと、今中期経営計画期間中では高い水準となりました。

しかし、我々が目指すROE8パーセントにはまだまだ至らないことから、事業ポートフォリオの拡大と、これに伴うグローバルでの拠点連携強化や拡大など、中長期的に取り組みを継続していきます。

中期経営計画概要分析(修正版中期経営計画達成率)

中期経営計画の概要分析です。2025年度については、売上高、営業利益ともに計画値を仮に実績値に置き換えて表示しています。

スライドに記載のとおり、2021年度と2022年度はコロナ禍における特定市場の需要が旺盛であったことから計画値を上回りましたが、2023年度後半から2024年度前半は、その反動で特定市場の需要が低迷しました。

中期経営計画最終年度である2025年度の計画達成をもって、5ヶ年計画の売上高、営業利益の累計進捗率は100パーセントを超える見込みです。したがって、今期2025年度事業計画を着実に実行することで、中期経営計画最終年度目標達成に向けて、売上高、営業利益の確保に努めていきたいと考えています。

中⻑期的な事業成⻑に向けた基本戦略

事業戦略についてご説明します。中長期的な事業成長に向けた基本戦略として、今中期経営計画では「既存領域の拡大」「顧客ニーズを捉えた新製品展開」、チャレンジ分野である「新領域の確立」に取り組んでいます。

これらを軸に、技術面ではコア技術の活用による新製品開発をはじめ、ソフト・回路・微細加工などの新技術領域の構築に取り組みました。販売・生産面では新領域分野への開拓と拡販強化や品質管理、生産性の向上などの取り組みにより、売上高、収益改善を図ってきました。

今中期経営計画での取り組み強化と実績は次期中期経営計画にもつながるものと考えており、さらなる収益力の向上を目指していきます。

成⻑戦略における基本方針

成長戦略における基本方針として、弊社のコア技術であるエレメント技術の進化により、スライドに掲載しているイラストのとおり、さまざまなセンサを研究開発してきました。

弊社のコア技術とは、抵抗体を印刷する工法や印刷された抵抗体そのものであり、抵抗インクの調合や調整技術なども含まれています。

弊社はここ数年の間に、独自技術の活用によって多くのセンサを開発・商品化し、販売実績を積んできました。

この先、100年企業を目指して事業を成長させるために、この技術のさらなる高度化と技術革新が不可欠となります。そのためにも、より高度な研究開発施設をはじめ、研究設備や製造インフラが必要だと考えています。以前発表した新たな本社・研究開発棟建設はその一環です。

次期中期経営計画以降の成⻑領域の目標

弊社のエレメント技術をもとに、将来の柱と考えている自動車電装、医療・ヘルスケアなどの新領域分野で成長を加速させ、スライドのグラフに示している売上目標を目指しています。

自動車電装市場ではEV自動車向けに、医療・ヘルスケア市場では電気化学センサ等への商品化へ、さらには新領域であるアグリビジネス等への進出を果たすことで、売上目標を目指していきたいと考えています。

事業成⻑に向けた設備投資の拡充

売上目標を達成するためには、本社・研究開発棟の建設だけではなく、新製品開発に必要な研究開発設備や、開発した製品を製造するインフラへの投資も必要であると考えています。

特に製造インフラについては、より高度な製品を製造し、安定した品質管理体制の強化やクリーン環境での生産体制を図るため、生産工場に対してもインフラ投資を積極的に行っていきます。

最新技術の投資進捗①(画像処理技術による自動化・省人化)

ここからは、最新技術の投資進捗についてです。導入した設備をご紹介します。紹介する資料は、弊社製造工場で発生している課題解決のための設備投資についてまとめたものです。

近年、工場課題として少量多品種の製品製造が増えており、製造工程は人手に頼る工程が多く、品質検査のばらつきや検査コストが増加しています。この課題解決に向けて、弊社生産技術部門では、画像処理技術の活用についての研究開発を重ね、自前で自動化設備を設計製作することで、品質の安定と生産性の向上を図っています。

また、弊社の自動化設備や少量多品種に対応できるよう、汎用性の高い生産設備を設計・検討し、導入しています。

最新技術の投資進捗②(画像処理技術による自動化・省人化)

導入例の1つ目として、作業者による目視検査工程を画像処理技術を応用して自動化しました。検査工程の自動化を図ることによる品質の安定、製造コストの削減、生産性の向上を目的としています。

この装置は、特殊な透明電極シートの印刷パターン検査も可能です。また、他工場への横展開の可能性もあることから、さらなる設備投資とコスト削減が図れるものと考えています。

最新技術の投資進捗③(画像処理技術による自動化・省人化)

導入例の2つ目として、基板印刷工程に画像処理技術を加えた印刷装置を導入しています。エレメント技術の高度化に伴い、印刷精度の向上や多品種小ロットによる段取り替え時間の短縮、メンテナンス性を改良した最新技術の印刷装置を導入することで、品質の安定と生産性の向上を図っています。

自動車分野における研究開発

水野伸二氏:開発統括の水野です。私から、研究開発の取り組みについてご説明します。はじめに、自動車電装への取り組み例です。こちらは、先ほどお伝えした弊社の特徴と強みであるエレメント技術を応用したものになっています。

左からドアミラーセンサ、オートエアコン用のHVACアクチュエータセンサ、プリチャージ・ディスチャージ抵抗、透明電極シートです。

2つ目のHVACアクチュエータセンサは、オートエアコンに必須の部品で、車両のEV化に関係なく、1台あたりに搭載する数が年々増えています。

いずれもライバルとの差別化を図るべく、高精度化、耐久性向上を目指して研究を続けています。

医療分野における研究開発

医療・ヘルスケア分野における取り組みです。こちらは生体用電極と呼ばれるもので、心電図・筋電図・脳波などを測定するものです。最適な測定ができるように、インクや導電ゲルを開発しています。

現在、導電ゲルは大学との共同研究を進めています。今年は脳波測定の応用から、睡眠時無呼吸症候群のPSGでの治療に向けた製品を立ち上げる準備をしています。

医療分野での施策:電気化学センサ(ナトリウムカリウムセンサ)

電気化学センサの一例をご紹介します。自宅でも簡単に健康診断ができる、通称POCT(Point of Care Testing)と呼ぶ電気化学センサで、臨床現場即時検査を狙っています。

スライドに掲載している例は、ナトリウム・カリウム比を測ることで、塩分取りすぎなどの注意信号が即座に数値化できるものです。電気化学センサは、血液・唾液・尿などに含まれる数千を超える種類のタンパク質などの情報から、成人病や、自分ではわからないうちに進行している体調の変化を、自覚症状が出る前に知らせてくれます。

現在、ナトリウム・カリウム比の測定器の商品化だけではなく、心臓機能をチェックするクレアチニンや、腸内環境をチェックするセンサなども進めています。

新領域の確立:漏水センサ(水族館の水漏れ...etc)

新領域の確立として、チャレンジ分野の取り組みをご紹介します。以前からお話ししている水漏れ検知のセンサは、水族館との共同研究のかたちをとっています。水漏れを職員にリアルタイムに「LINE」で通知するシステムです。

これらの商品や仕組みだけではなく、ノウハウを次世代の商品化・実用化につなげていくことで、新領域としての開発範囲を拡大していく方針です。

目指すべきバランスシート

丸山睦雄氏:業務統括の丸山です。私からは、財務戦略に関してご説明します。まず、目指すべきバランスシートについてです。

2025年3月期のバランスシートは、2024年3月期と比較して、資産の部における総資産は約14億円増加の335億円、うち手元流動性は約8億円増加の131億円となりました。これは、主に政策保有株式の売却によるものです。

負債は約4億円増加の51億円となりました。純資産は約10億円増加の284億円となり、自己資本比率は83.1パーセントという結果でした。

利益剰余金が約12億円増加しましたが、昨年度は自己株式取得に加え、従業員還元を目的に、株式給付信託(J-ESOP)を用いた株式給付制度を導入した結果です。2026年3月期は、資本収益性のさらなる向上を図りたいと考えています。

さらに、中長期的には、資本収益性と財務健全性を両立した適切なB/Sコントロールを実施し、自己株式取得の追加検討など、株主還元も含め、純資産の増加抑制に取り組む方針です。

そのために、有利子負債の残高をコントロールしつつ、財務健全性を優先するとともに、株主還元を通じた純資産の増加抑制等に取り組むことを予定しています。

キャッシュアロケーション

キャッシュアロケーションです。将来の成長に必要な投資を優先的に実施することで、利益の増大や、安定的かつ継続的な株主還元の実施による中長期的な株価上昇を目指していきたいと考えています。

2021年5月よりスタートした今中期経営計画は、今年度が最終年度となります。先ほど羽生よりお伝えしたとおり、売上高、営業利益に関しては、今中期経営計画期間の累計は達成する見込みです。

今中期経営計画期間累計のキャッシュアロケーションの見込みとしては、キャッシュインは手元現預金などを活用しつつ、政策保有株式などの資産売却でおよそ29億円を見込んでいます。営業活動で得る営業キャッシュ・フローは133億円です。

キャッシュアウトとしては、設備投資等で76億円、研究開発で27億円、株主還元で47億円を使用する予定です。また、次期中期経営計画を見据えて、その活動資金として21億円を来期以降に回したいと考えています。

来期以降は、将来的な成長につながる投資と株主還元の充実による資本効率を重視し、次期中期経営計画に向け検討していきます。先ほどお話しした21億円に加え、資産売却をさらに進めていきます。

具体的には、現在保有している政策保有株式を、2027年度までに連結純資産比で10パーセント以下まで縮減を図る計画です。

また、成長戦略を実現させながらトップラインを上げ、着実に営業キャッシュ・フローを積み上げていきたいと考えています。

その資金を使用し、さらなる成長投資と経営基盤に活用したいと考えており、現在、本社・研究開発棟の建設にも着手していますが、将来、さらに高度な製品生産が可能な工場などの増設も検討していく予定です。

また、純資産の過度な増加を抑えるべく、次期中期経営計画にて株主還元の質を落とさずに実施していきたいと考えています。

株主還元

株主還元についてです。財務健全性や必要投資とのバランスを考慮の上、資本効率を意識した株主還元を実施していきます。

配当実績に関しては、業績に応じた配当を継続的に行うことを基本に、投資や財政状況等を総合的に勘案しながら、積極的に株主に利益還元する方針のもと、2024年度は弊社創立80周年の年であり、普通配当70円に記念配当30円を加えて、合計で1株あたり100円としました。

2025年度においても、記念配当分を減少させることなく、1株あたり100円を予定しています。来期以降は、次期中期経営計画にて株主還元方針の見直しを検討しています。その第1弾として、来期以降の連結配当性向は50パーセント以上を目安に実施していく方針です。

本社・研究開発棟建設計画

羽生:私から、新本社・研究開発棟の進捗についてご説明します。

第1次解体工事については、スライドに掲載している写真のとおり、地上にあった建物の取壊しがすでに完了しています。現在、地下の解体工事を開始しており、この場所にスライドに示したイラストのような新棟が建設される予定です。また、老朽化した建物についても、随時解体を進めています。

全体のスケジュールについては、現在のところ、当初計画どおりに進捗しています。

資本市場との対話

最後に、IR戦略についてご説明します。IRの基本的な方針に変更はありません。前回の説明会でもお話しした、弊社創立80周年誌を今年1月に発売しました。

また、東京証券取引所からの要請である「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の進捗も、5月27日に発表しています。近年、機関投資家との面談も増えてきており、IRにおける関係人員の増強など、IRの実績向上に向けた対応を進めていきたいと考えています。

弊社としては2026年3月期の計画達成を実現し、今中期経営計画の達成とあわせ、事業成長に向けた取り組みを継続して進めていきたいと考えています。今後とも、ご支援のほどよろしくお願いします。