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岡垣浩志氏:みなさま、こんにちは。株式会社たけびし代表取締役社長の岡垣です。本日はご多用のところ、ご出席いただき誠にありがとうございます。
こちらが本日のアジェンダです。会社概要、2025年3月期実績、2026年3月期予想に続いて、現在取り組んでいる中期経営計画「T-Link1369」についてご説明します。
会社概要
はじめに、会社概要についてです。当社は、京都に本社を置く三菱電機系の技術商社です。設立は1926年で、来年で100周年を迎えます。当社の特長として、非常に多くの仕入先および販売先とのネットワークを有している点が挙げられます。
資料の表紙とスライド右側の写真は、本社所在地と同じ京都市右京区西京極にある陸上競技場「たけびしスタジアム京都」です。2019年より命名権を取得しており、毎年12月に開催される全国高校駅伝や、1月に開催される全国女子駅伝の会場となっています。
ネットワーク(拠点・関係会社)
次に、当社のネットワークについてです。国内は7支店・1営業所に加え、グループ会社が6社あります。グループのフジテレコムズ社では、携帯電話販売とモバイルアプリの開発を行っています。また、同社の子会社であるファーストブレイン社では、携帯電話の基地局の設計を行っています。同じく子会社のアーバンエココンサルティング社は、昨年M&Aを実施した会社で、アスベストの分析事業を行っています。そのほか、空調工事を行うTSエンジニアリング、倉庫業を行う竹菱興産、電子部品の販売を行う梅沢無線電機、以上の6社が当社の国内グループ会社です。
海外には4社のグループ会社を有しており、当社の直営拠点は中国の上海・香港およびタイにあります。また、2021年にM&Aを実施したシンガポールのLe Champ(リチャンプ)社では、電子部品や実装機を販売しており、シンガポール本社のほか、インド、マレーシア等8ヶ国に計16の拠点があります。
売上高構成比と主要取扱製品
当社の売上高構成比と主要取扱製品についてご説明します。前年度の売上高は1,010億円で、そのうち産業機器システムが40パーセント、半導体・デバイスが33パーセント、社会・情報通信が27パーセントとなっています。今後も、この4対3対3というバランスを保った安定経営を目指していきます。
また、海外の売上高比率は全体の23パーセントとなっています。今後、さらに海外ビジネスを拡大させ、この数字を伸ばしていく方針です。
なお、取扱製品はスライドに記載のとおりです。
2025年3月期 実績
2025年3月期の実績です。売上高は下期534億円、通期1,010億円であり、経常利益は下期22億円、通期38億円となりました。下期は売上高、経常利益ともに過去最高の実績です。なお、上期には政策保有株式の一部売却益が含まれています。
セグメント別売上高 実績
セグメント別売上高の実績です。
「産業機器システム」は、半導体や蓄電池向けの装置ビジネスが大幅に伸長しました。一方で、産業機器、特にFA機器は顧客の在庫調整が長期化し、停滞している状況です。その結果、前年同期比では15億円の減少となりました。
「半導体・デバイス」は、電子部品の実装機や住宅設備向けのデバイス品が増加しました。さらに、当社子会社であるLe Champ社のインドでの事業も伸長しています。一方で、半導体・電子部品の供給不足緩和により市場流通品の販売が減少したことから、トータルでは前年並みの実績となっています。
「社会インフラ」は、旺盛な更新需要を背景に、放射線がん治療装置が堅調に推移しました。
「情報通信」は、子会社であるフジテレコムズ社で高価格帯端末の販売が堅調だったことに加え、M&Aを行ったアスベスト分析事業の伸長により成長しました。
2025年3月期 営業利益(前年比)
こちらは、営業利益の推移を表す滝グラフです。2025年3月期はLe Champ社を中心に円安の影響を受け、為替で4,000万円のプラスとなりました。また、全体の売上高は減少したものの、装置システムでの高付加価値案件やアスベストの分析事業により、2億3,000万円のプラスとなりました。
一方で、在庫の滞留による評価損が1億5,000万円増加したほか、販管費についても、人件費の増加やM&A費用の発生などにより、4億4,000万円増加しています。
その結果、2025年3月期の営業利益は、前年比で3億1,000万円の減少となりました。
2026年3月期 予想
次に、2026年3月期の予想についてご説明します。売上高は上期491億円、下期529億円、通期1,020億円を計画しており、通期売上高は過去最高の計画となっています。
経常利益については、上期16億円、下期22億円、通期38億円を計画しています。当期利益は前年比減となっていますが、これは前年度に政策保有株式の売却益が発生していたためです。
売上高と経常利益については、前年比増収増益を目指した計画としています。なお、これらの計画には、米国の関税、あるいは為替の影響を若干見込んでいます。
セグメント別売上高 予想
セグメント別売上高の予想です。
「産業機器システム」は、FA機器の在庫消化が遅れており、若干厳しい状況が続いています。しかし、再エネ関連機器等の増加により、トータルでは前年並みを予想しています。一方、装置システムでは労働人口の減少に伴う顧客の工場DX化需要を見込んでおり、全体としては増加する見込みです。
「半導体・デバイス」は、インド向けビジネスが引き続き堅調に推移するものの、関税や為替の影響により減少する見込みです。
「社会インフラ」は、注力している放射線がん治療装置の更新需要が順調であることから、増加する見込みです。
「情報通信」は、Windows10のサポート終了によるパソコンの買い替え需要や、昨年M&Aを実施したアスベストの分析事業により増加する見込みです。
全体では、前年比で10億円の増加を計画しています。
中期経営計画 『T-Link1369』
続いて、中期経営計画についてご説明します。本計画は2024年3月期よりスタートし、当社が100周年を迎える2027年3月期へ向けて、売上高1,300億円、NEWビジネスプラス300億円、経常利益60億円、ROE9パーセントを目標としています。
特に、「グローバル」「メディカル」「オートメーション」「オリジナル」の4つの成長戦略の進化に注力し、事業の強化を図ります。
中期経営計画進捗
中期経営計画の進捗です。現在、計画期間としては折り返し地点を通過しましたが、全体の進捗については停滞している状況です。主な要因として、基幹ビジネスであるFA機器での在庫調整や産業メカトロニクス分野での大口案件の剥落が挙げられます。
一方で、今後はAIや半導体関連のFA・デバイス需要やデータセンター等インフラ分野の需要拡大が見込まれており、当社としては、これらの需要を確実に取り込んでいく方針です。
また、4つの成長戦略のうち「メディカル」「オートメーション」は順調に伸長しており、当社の業績を牽引しています。今後は「グローバル」の部分で、インド市場への注力やASEAN地域での組織体制強化を通じて、さらなる売上拡大を目指します。
4つの成長戦略の進化
成長戦略の1つ目「グローバル」についてご説明します。2021年に実施したLe Champ社のM&Aにより、当社の海外ビジネスは大きく成長しましたが、ASEAN地区におけるEMSの回復遅れが影響し、全体の売上は停滞しています。一方、成長市場であるインドでは需要が着実に増加しており、当社もビジネス拡大に注力しています。また、マレーシアでは三菱電機製FA機器のビジネスを展開し、新規開拓を推進しています。
今後のアクションについてご説明します。当社は、これまでも海外のデバイス商材開拓や国内への展開を進めてきましたが、今後は竹菱香港の統括のもと、上海・タイ・ベトナム拠点の連携を強化し、ASEAN全体での顧客対応力と商材発掘力の最大化を図ります。
また、Le Champ社を中心に、インド市場でのローカル顧客向けビジネスを展開していきます。今後、インドに進出する日系顧客は増加見込みであり、Le Champ社、竹菱香港、たけびし国内拠点の連携を強化することで、商談の発掘に取り組んでいきます。
4つの成長戦略の進化
成長戦略の2つ目は「メディカル」です。医療ビジネスは着実に伸長しています。日本は高齢化に伴い、がんの罹患率が高まっていることから、身体への負担が少ない放射線治療は今後さらに需要が拡大すると考えています。
これまで、当社の放射線がん治療装置の販売エリアは近畿地方のみでしたが、2025年4月からは商圏エリアを中国・四国地方全域に拡大しました。今後は、新商圏エリアを含めた更新需要の確実な刈り取りのほか、放射線がん治療装置以外の診断装置の商談にも注力し、全体の規模を拡大していきたいと考えています。
また、外科、脳外科向けの装置や、放射線情報システム、AIを活用した医療システム等の販売を推進し、ビジネスの拡大に努める方針です。
4つの成長戦略の進化
成長戦略の3つ目は「オートメーション」です。当社では2021年にスマートファクトリーを推進する専任部隊が発足し、全社の自動化ビジネスを牽引してきました。
経済産業省の「ものづくり白書」によると、2000年以降、新規学卒者のうち製造業に就職する人の割合は減少しています。また、2020年からは就業者数自体も減少しているため、今後ますます製造業の人口は減少が予想されます。このような状況から、製造業における自動化・省人化の需要はさらに増加していくと考えられます。
当社としては、特に半導体、脱炭素、カーボンニュートラルの分野において、新規顧客の開拓に努めます。併せて、非製造業における自動化ビジネスも拡大していきます。
また、当社は「つなぎ」の部分を非常に得意とする技術商社であるため、ITベンダーとの連携で工場の一括自動化提案を推進し、全体の規模拡大を目指していきたいと考えています。
4つの成長戦略の進化
成長戦略の4つ目は「オリジナル」です。当社のオリジナル製品は、技術商社の中でも非常にユニークな特徴を持っています。
主力製品をスライドの左下に示しています。「DXPサーバー(デバイスエクスプローラ OPCサーバー)」は、「OPC」という世界標準規格でITと工場現場のデータを連携するソフトウェアです。1998年から開発・販売を行っており、世界72ヶ国で累計5万本以上の販売実績があります。また、このソフトウェアをデバイスに組み込み、IoTゲートウェイとして提供するビジネスも展開しています。
子会社のフジテレコムズ社では、携帯ショップ向けスマートフォンアプリ「compass(コンパス)」を提供しています。最近では、自動車販売業者やサイクルショップ等、異業種への展開にも注力しています。
今後のアクションとしては、Le Champ社との連携を強化し、「DXPサーバー」等主力製品のインド市場での販売を強化していきます。
また、三菱電機のシーケンサにAIを組み込んだソリューションを創出し、現在、実証実験を積み重ねています。今後はこのようなソリューションを広く展開し、製造現場の課題解決とともに、ビジネス規模の拡大を目指していきます。
総合商社を目指したビジネスモデルの変革
次に、「変革」についてです。こちらは、これまでにご紹介した4つの成長戦略以外で新しく取り組んでいる分野です。売上高プラス50億円を目標とし、「モビリティ」「マテリアル」「エネルギーソリューション」「DX推進」の4分野でNEWビジネスの創出を進めています。
「マテリアル」では、当社の主力ビジネスである電機とは直接関係しない新分野として、磁石や加工品のビジネスを展開しています。
「エネルギーソリューション」では、従来の太陽光発電システムの拡販に加え、当社が導入を計画している電力自己託送システムを顧客にも展開し、商材の幅を広げていくことを検討しています。
「DX推進」については、近年、上下水道分野では、インフラの老朽化に伴いメンテナンスコストが増加傾向にあります。従来は専業ベンダーによる専用ソフトウェアでのシステム開発が主流でしたが、当社のオリジナル製品を活用した汎用的なシステムを提供することで、コスト削減を実現しています。現在は地方自治体向けに展開しており、今後、他自治体への横展開を通じて、事業規模の拡大を図っていきます。
財務 資本効率を重視した経営の実践
次に、「財務」についてご説明します。
まず、「成長投資」についてです。中期経営計画の達成に向けては、M&Aが必要だと考えています。当社グループとのシナジーが見込める案件があれば、積極的に取り組んでいく方針です。
また、創立100周年、そしてその先の未来を見据え、次世代基幹システムへの刷新を進めています。現行のシステムは20年前に導入されたものであり、今回の刷新は、今後の事業規模拡大に対応できる体制の構築を目的としています。さらに、生成AI等の技術を組み合わせることで、業務効率の向上も図っていきます。
加えて、ロジスティクス強化の一環として、倉庫の建て替えを計画しています。これにより、物流の安定化を実現していきます。
次に、「株主還元強化」についてです。当社は、累進配当および配当性向40パーセント以上を目標としており、今年度の配当金は前年度から4円増の66円を計画しています。
今後も、中長期的な投資と株主還元のバランスを重視し、持続的な企業価値の向上に取り組んでいきます。
非財務 サステナビリティ経営の高度化
次に、「非財務」についてご説明します。まず、スライド左上の「環境への取り組み」については、太陽光発電設備を積極的に採用し、自己託送等の仕組みを構築することで、環境への配慮を実現していきます。また、蓄積したノウハウを顧客に展開することで、新たなビジネスを創出することも想定しています。
次に、スライド左下の「人的資本経営・エンゲージメント向上」についてです。当社の特長として、離職率が非常に低く、従業員間のつながりが強いことが挙げられます。今後も、クラブ活動や社内イベント等への支援を継続し、従業員同士のコミュニケーションを促していく方針です。
展示会情報
最後に、展示会の情報です。まず、毎年恒例の「たけびしソリューションフェア」について、今年は7月17日から18日の2日間にわたり開催を予定しています。展示ブースは「ファクトリー」「グローバルデバイス」「スマートシティ」の3つのゾーンに分かれており、来場者の方々に当社のソリューションをわかりやすくご提案できるような内容となっています。来場者数は、2日間で1,500名を見込んでいます。
また、その他の展示会として、今年も「FOOMA JAPAN」に出展します。食品業界向けに新たなソリューションを展開することで、NEWビジネスの創出に積極的に取り組んでいきます。
さらに、海外では、インドの電子産業展示会「electronica India」にLe Champ社が出展します。こちらでも、新たな顧客の需要開拓を進めていく考えです。
このように、国内外のさまざまな展示会への出展を通じて、商談機会の獲得および当社ブランド力の強化を推進していきたいと考えています。
以上で説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。