大木の精神

松井秀正氏(以下、松井):大木ヘルスケアホールディングス株式会社代表取締役社長の松井です。本日はお忙しい中、決算説明会にお越しいただきありがとうございます。本日は決算概況についてご説明し、その後に質疑応答へ進みたいと思います。

私が社内外問わずプレゼンテーションする時は、「大木の精神」のスライドを最初に入れています。これは、ヘルスケア卸売業としてインフラを担う当社が業績拡大のためにいろいろな事業を進める中で、忘れてはならない精神的な柱を示したものです。

商品やサービスを通じて、当社一人ひとりの活動がヘルスケアにおける社会貢献になっているかを確認しながら事業を行い、中長期的な成長を目指しています。

大木グループ企業

現在はホールディングカンパニーという形態であるものの、中核会社である卸売業の大木の傘下に各社が入っています。今後は持株会社機能を充実させるため、企業再編を考えています。

大木グループの概要

大木グループの概要です。

中央は中間流通業です。中核の大木は、ヘルスケア商品を中心とした卸売業を行っています。他に、コンタクトレンズやコンタクトケア用品の卸売を行うAIP大木と、化粧品の卸売業を担うイシザワや大木化粧品があります。また、大木オーバーシーズ(OVS)と天馬商事は、中国を含む海外対応を担っています。

この中間流通業を支えるメーカー企画部門として、医薬品製造を手がける大木製薬、医薬品OEMの窓口となる日野薬品工業、健康食品やマスクを取り扱うリブ・ラボラトリーズがあります。

リブ・ラボラトリーズは、看板商品の「リブふわマスク」などを展開しており、マスク販売数は国内トップクラスの会社です。エコファクトリーは、環境対応型の日用品企画会社です。メーカー企画力を使いながら、中間流通業を確立していきます。

小売として、奈良ドラッグがあります。アンテナショップとして、ファミリーマートとドラッグストア・調剤薬局を併設した一体型店舗を奈良県に2店運営しています。

さらに2年前に、女性のヘルスケアリテラシー向上を目的とした情報発信やコンサルティングを行う会社として、LAUGHBASEを立ち上げました。

このように、大木グループ全体でヘルスケア関連商品の市場開拓に注力しています。今後は、商品軸のみならず、各種のサービス提供から、行政、法律や業界慣習などの仕組みに至るまで事業を拡大したいと思っています。

また、医療用医薬品卸大手の東邦薬品、食品卸大手の国分グループ本社、フォレストホールディングス傘下でOTC医薬品卸のリードヘルスケアと業務提携しています。

ヘルスケアとそれに関連するカテゴリー全体をカバーするように、提携会社を通じてサービス提供を行っています。

生活者満足に応える大木のビジネスモデル

当社の特徴として、生活者満足に応える大木のビジネスモデルを挙げています。数年前から取り組んでいますが、「考え方の定義」と「機能の拡大」で展開しています。

中心は中間流通業、卸売機能を持つ大木です。卸売業は納品をする物流企業のように見られますが、ヘルスケアカテゴリーにおいては、ただ物を届けるだけでは機能が足りないと考えています。

当社の考えるヘルスケアカテゴリーはOTC医薬品よりもかなり広く、ヘルスケアに特化して商品カテゴリーを開拓し、確立してきました。既存の商品を届けるだけではなく、小売業者とともに新しいヘルスケアカテゴリーを作っていきます。

例えば、コンタクトレンズをドラッグストアに導入する仕組みも構築していきます。コンタクトレンズは高度管理医療機器に分類されるため、必要となる許認可の取得やロットの管理・保持などを小売企業と共に一緒に支えていきます。

また、ある大手EC企業がOTC医薬品に参入する際に、ただ物を届ける一般流通とは異なるところを当社がカスタマイズし、ともに作り上げてきました。中間流通業ではありますが、機能をコントロールする必要があるため取り組んでいます。

加えて、小売サポート機能です。スライドには「SPB・PB・SB」と記載していますが、PBはプライベートブランド開発、SBはストアブランド開発となります。

PBやSBを開発してナショナルブランド商品の廉価版をお届けすると小売企業には喜ばれますが、市場全体の観点からは、新しい顧客を獲得できなければ、値引きした分だけマーケットがシュリンクしてしまいます。

そこを考えるために、当社はSPB開発を掲げています。「SPB」は、私が勝手に名付けたため業界用語ではありませんが、「ストア・フィロソフィー・ブランド」を意味します。

例えば、ドラッグストアやディスカウントストアやECサイトなどの各企業がもつ価値は、店舗レイアウトやビジネスモデルだけではなく、フィロソフィー、つまり各社の成り立ちや哲学などの強みを商品に落とし込むことにより、当社が各社のヘルスケアカテゴリーをサポートしています。

実はパッケージには当社子会社の名前が記載されており、マツモトキヨシ、Amazon、コストコ、ドン・キホーテなどの各企業さまのヘルスケアカテゴリーにおいて、競争力強化に向けたプライベートブランド開発の受託窓口を担っています。

生活者のヘルスケアニーズが100パーセント充足されることはあり得ませんので、当社と小売企業が協働して企画・開発を行い、メーカーにつないでいきます。市場をシュリンクさせるのではなく、拡大させることにより、企業の付加価値や競争力を高めながら商品の受託開発を進めています。

他にも、小売企業に対しては、広告宣伝、カテゴリーマネジメント、棚割、行政連携、介護施設や病院の施設連携などの提案を含めたサポート業務を行っています。

メーカーに関しては、ロットが大きいヘルスケア商品群はどうしても商品回転率が悪くなる特徴があります。例えば、スーパーやコンビニの場合、「1日に何個売れるか」が通常の評価である一方、ヘルスケア商品群は、サプリメントなどを飲んでいる方はおわかりだと思いますが、1パッケージがだいたい2週間から1ヶ月分ですので、1人のお客さまが買うのは月に1個、あるいは風邪薬や咳止め薬なら1年に数個の購入になります。

したがって、ロットは大きいヘルスケア商品群の購入頻度が低く、回転率の悪い商品となり、データが活かしにくくなります。このため新商品開発が難しくなることから、当社がテストマーケティングや商品開発、製造ロットの管理などを行い、サポートしています。

中でも、現在進めているのは流通チャネル戦略サポートです。例えば、あるメーカーが新しい成分や新しい商品を上市するとします。その時に、ドラッグストア、ディスカウントストア、あるいはEC企業のどこで流通し、情報発信するか、ドラッグストアであっても都市型とリージョナル型のどちらで発信するか、など悩みどころはさまざまです。

加えて、日本のヘルスケア流通は複雑化しており、メーカーだけで進めることはなかなか難しいため、当社がそのサポートをしていこうと思っています。

他の卸売企業は中間流通機能だけが多い中、ヘルスケア流通は、特に小売サポートとメーカーサポートが大事になります。このサポートがなければ、市場を新しく創ることも、市場を維持することもできないと理解した上で、大木グループはこれらの機能を強化しています。

大木のロジスティック・ネットワーク

当社は、ロジスティック機能に対しても投資や改廃に取り組んでおり、北海道から沖縄まで全国に流通網をもっています。

他の卸売企業は、積載量の効率を重視して、ダンボールよりもパレット、パレットよりもトラックやコンテナというように、梱包サイズは大型化します。

しかし、ヘルスケア商品群を扱う当社は、風邪薬やビタミン剤を1店舗に1ケースずつ届けなければ店頭に商品を置けませんが、サイズが小さいためケースにたくさん入るため、ダンボールに入る風邪薬の発送単位は100個や200個になります。

当社では、これを少量・多品種・多頻度に特化して流通させています。もちろん、配送効率も求めているため、ケースピッキングと比べて特段に物流経費が高いわけではありません。

経費を低く抑え、少量・多品種・多頻度をローコストで運営しています。ここは他社と比べても負けないところです。

ピース単価が400円から500円の商品を数個単位、中には1個単位で納品しています。この独自のノウハウを構築するために中型・小型のセンターを全国に蜘蛛の巣状に配置し、商品をお届けする仕組みを構築しています。

センターあたりの人員を小規模で運営しているため、採用は他の卸売業より良いほうです。それでも当社も人材確保には苦労していますので、オリコンの組み立てやパレットの変更などの機械化・省人化だけではなく、昨年からは重機やトラックの改良、返品センターの仕組み化・効率化も実施しています。

小売企業との間では、EDIが進んでいます。小売企業からの発注に対して、当社が「この商品はいつ届きます」と事前出荷データを送ると、小売企業は検品なしで自動的に商品とデータを格納する仕組みがほぼできています。

一方で、メーカーとの間のEDIは進んでいません。通常はメーカーからお金をいただいて行うところですが、当社自身も投資しながら、電子化を進めています。

また、昨今はトラックの待機時間も課題となっているため、当社が主導して物流センターの荷受けや出荷窓口の予約制の仕組みを導入し、トラック事業者の時短を進めています。

当社のロジスティック機能に対する投資の特徴として、通常は大規模センターを立ち上げる大規模投資を行いますが、当社はオペレーションコストの範囲で改廃を行います。新設や改廃は3ヶ月くらいの頻度で行っています。

これは環境の変化に対応する柔軟性を確保するためです。例えば、小売企業の物流センターの改廃や届け先が変更されること、あるいは、物量が大きく変わることもあります。当社が「センターをここに立ち上げる」と決めるのではなく、小売企業の物流センターや店舗展開に合わせて、当社の物流センターをフレキシブルに改廃できるような仕組みになっています。そのため、投資ではなく、オペレーションコストの範囲内で改廃しています。

OTC医薬品市場における大木のポジション

「セルフメディケーションを進めましょう」ということで、OTC医薬品は伸びていますが、もともと1兆円くらいあった市場が徐々に低迷していく中で、当社は売上を伸ばしています。

当社はOTC医薬品卸からヘルスケア卸へと業態を変えています。OTC医薬品だけではなく、健康食品や化粧品、マスクやオーラルを中心とする日用品まで、ヘルスケアカテゴリーを大きく捉え、ドラッグストアを中心とする店頭を通じてヘルスケア市場を創造しています。

売上が一時的に落ち込んでいるのは収益認識に関する会計基準変更によるものです。したがって、大木グループは20期以上の増収基調を維持しています。

大木の商品開発力

当社の商品開発力を示すスライドですが、小売店のSB・PB、メーカーとの取り組み商品、メーカーからブランド自体を預かって一般流通している商品を含め、アイテム数は整理中の関係で横ばいとなっているものの、売上高は順調に増加しています。

2020年度の売上は、コロナ禍の際にある企業でマスクを非常に多く売っていただいたことが寄与しています。マスクは現在でも枚数ベースで国内ナンバーワンです。

2025年3月期 決算概要

決算概要は、2025年3月期の単体売上高は3,472億1,300万円、連結は3,494億5,300万円で、増収を達成できました。営業利益は、連結では27億6,800万円と増益になりましたが、単体は25億6,500万円と前年度を少し下回っています。

環境は厳しいですが、先行投資しつつ、営業利益率1パーセントを目指して中期経営計画を推進していきます。卸売業単体では厳しい環境であることを認識し、先行投資と卸売業の補完で、大木グループとして安定的な売上と利益を達成していきます。

先行投資

先行投資の内訳です。3年連続で賃上げを実施し、同業種でも見劣りしない賃金水準を確保することができました。また、優秀な人材の確保に加えて、人材教育が大事だと考えています。特に、卸売業はもともとマーケットのデータや数字を扱っていますので、当社がデータの意味や理解を深め、自分たちの営業活動をさらに高いところまで引き上げていくために、専門家に任せるのではなく、AI・データ分析の社内人材教育に注力しています。

米国視察研修は、新入社員研修として行っていましたが、この数年は2年目から3年目の少し経験を積んだ社員を連れていき、今の米国の状況、ドラッグストアが衰退し、新しい業態や新しいサービスが生まれている状況を目の当たりにして、当社自身が変わるモチベーションとする研修を、私自身が行っています。

システム投資は、顧客管理や情報共有化、受発注システム構築やネットワーク再構築などの分野に投資しています。

ロジスティクス投資は、センターの立ち上げ・立ち下げはオペレーションの範囲内ですが、労働環境改善、効率化のための機械導入、物流機器開発等は投資としています。また、いろいろなサービスや能力を持った企業にマイノリティ出資しながらノウハウ共有を行っていますのが、これも投資としています。

また、前期は子どもへの投資も行いました。当社だけではなくスポンサーと組み、子どもの健康に資するために、子ども向けビタミン剤「パパーゼリー」の大きな寄付を行いました。

このように約10億円の先行投資をしながら営業利益は微減にとどまったということです。投資家のみなさまからは「もう少しで増益になったのではないか」と言われるかもしれませんが、先行投資を優先したとご理解ください。

カテゴリー別売上高(単体)

当社のカテゴリー別単体売上高です。OTC医薬品が約40パーセントです。当社はもともと家庭薬卸が出自のため、かつてはOTC医薬品売上がほとんどでしたが、この数年で新しいカテゴリーが大きくなっています。

健康食品、化粧品、衛生医療と、1つのカテゴリーだけではなく、ヘルスケアを広く捉えて、カテゴリーのリスクヘッジを行っています。

納入先についても、いわゆる調剤薬局だけではなく、ドラッグストア、スーパーマーケット、ディスカウンター、EC企業など、業態にかかわらず、ヘルスケアを扱っている企業すべてを対象とし、特に新しい業態の企業からはヘルスケアをお任せいただいています。

ヘルスケアを扱う企業、業態、業種をフルカバーすることにより、リスクヘッジを行っています。

商品別売上高の前同比(単体)

カテゴリーごとの伸び率です。昨年までは新型コロナウイルスの感染症対策商品群の反動マイナス影響があったのですが、今年は前年比でもマスク市場が安定してきています。

今日お持ち帰りいただく商品にも入っていますが、「モフらし」という歯ブラシの商品がヒットしています。朝のテレビ番組でも取り上げられる予定ですが、年間100万本程度の売上となっています。

OTC医薬品、健康食品、化粧品、オーラル、その他も含めて、前年比で増収となっています。

事業部別売上高

事業部別売上高です。

販管費(単体)

販管費についてご説明します。かつては、センターフィーとリベートは売上高に含めていましたが、収益認識の変更に伴い、値引き扱いで売上高から差し引いています。センターフィーは、小売企業の物流センター運営費の一部を負担しています。リベートは、小売企業本部の値引きになります。

センターフィーとリベートが横ばい、もしくは減少しているように見えますが、2024年問題により物流費や配送費が高騰しており、業界全体では大きく増えています。当社の数字が減っているように見えるのは、小売企業の構成比の変化と小売企業からの商品開発受託が大きくなってきているためです。

開発受託の商品は、センターフィーとリベートを除外しています。今後も、センターフィーとリベートを除外する商品群や、適切なコスト負担を小売企業やメーカーにお願いすることも進めようと考えています。

人件費に関しては、社員の給料を大きく上げたため増加していますが、売上高比率はほぼ横ばいとなっています。

キャッシュフロー(連結)

キャッシュフローに大きく動きがあったため、ご説明します。営業キャッシュフローが約90億円のマイナスとなりました。

この要因は2点です。1つは、下請法施行に伴い、商品開発受託に関する中小メーカーの支払サイトを短縮した影響です。もう1つは、欠品防止対策として在庫を積み増した影響です。欠品の原因は、メーカーの事情もあれば、当社が扱うロングテール商品群の欠品はある程度仕方ないという側面もありますが、小売企業のチェーンオペレーションを崩す要因にもなり得ますので、欠品対策に注力しています。

欠品対策として、システム化と一時的な人員増強に投資しており、システム化の結果が出るまで物理的に在庫を増やしていますが、今後は売上0.6ヶ月ベースに戻す予定です。

投資キャッシュフローは約31億円のマイナスですが、これは新本社ビル取得によるものです。現在の本社は築100年を超えており、建て替えを検討するタイミングでした。数年前から新本社ビルを探していましたが、前期に良い物件が見つかりましたので取得に至りました。今年の秋から半年程度かけて本社機能を移す予定です。

配当に関するお知らせ

配当については、安定的に売上と利益を上げることができましたので、前期から2円増配の1株当たり26円としました。

中期経営計画について

今回、中期経営計画を策定しました。ここでは数値計画についてご説明します。

2028年に当社は創業370周年を迎えますが、先行投資をしながら、3年後に連結売上高4,000億円、連結営業利益40億円を達成したいと考えています。

売上に関しては、「かなり保守的ではないか」とご指摘をいただくかもしれません。しかしながら、現状はビジネスモデルを変革するタイミングでもあり、先行投資しながら収益の中身を変えて40億円を確保することは、私としてもチャレンジングな中期経営計画を立てたつもりです。

あらためて、ヘルスケア市場において、当社が力を発揮するための投資原資として利益を使わせていただきたいと考えています。同時に、投資家のみなさまにも評価をいただける企業価値を実現していく所存です。

商品紹介

今回お持ち帰りいただくものとして、マスクの取扱数がもっとも日本で多いリブ・ラボラトリーズの商品、女性のデリケートゾーン用ソープ、フェムケア商品、非常に柔らかい毛の歯ブラシ「モフらし」、その歯ブラシ用除菌剤、そして二酸化塩素商材等を用意しています。

当社が新しい価値提案をしている象徴的な商品たちですので、ぜひお使いいただければと思います。

質疑応答:フェムケア商品について

質問者:御社は女性の健康管理に非常に力を入れています。カテゴリー別売上高のうち、フェムケア、つまり女性対象の用品はどこに入るのでしょうか?

昨年、米国ドラッグストアで非常に売れている生理用品が日本に入ってきて、期待されているという話を聞きました。そのようなフェムケア商品について、御社ではこれからどのように取り組まれていきますか?

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