増収増益の「博展」、成長戦略とその進捗 ~FY25中期経営計画についてのスペシャル対談~

原田淳氏(以下、原田):みなさま、こんにちは。株式会社博展 代表取締役社長の原田です。今回もマーケットリバー株式会社 代表取締役の市川さんをお招きして、博展の中期経営計画の進捗を対談形式でお送りします。市川さん、よろしくお願いします。

市川祐子氏(以下、市川):よろしくお願いします。さっそくですが、2025年度は中期経営計画の最終年度ということで、進捗のポイントを教えてください。 

原田:今回のポイントは3点です。1つ目、2024年度は業績計画を上回る着地となりました。2025年度も計画を上方修正し、増配を継続想定です。2つ目、採用人数を増加しつつ、一人当たりの生産性を拡大しました。3つ目、世界的アワードでグランプリを受賞するなど、対外的にも博展の強みが評価されました。

市川:今回の進捗も順調そうですね。それでは詳しくお話をうかがいたいと思います。

事業成長の推移

市川:まずは3ヶ年の中期経営計画の2年目の進捗状況について、業績は上方修正ということですが、詳細を教えてください。 

原田:2024年度は過去最高の売上高となりました。業界の平均成長を上回る成長率を維持できています。

市川:業界の平均成長率が3.7パーセントのところ、博展は10.6パーセントと、本当に高い成長率ですね。

業績計画の進捗状況

市川:利益面はいかがですか? 

原田:営業利益、純利益ともに過去最高益となり、当初の計画を上回る着地となりました。

市川:計画を大きく上回った主な要因は何ですか? 

原田:事業ユニット戦略において、顧客市場ごとに特化した活動の進捗の成果だと思います。

市川:2025年度の計画も今回は上方修正していますね。

原田:2024年度の結果と、現在進捗中の営業の状況を鑑みて、当初の計画より上方修正しています。

事業概要

市川:あらためて、博展の事業について教えてください。 

原田:当社は人の心を動かす体験を軸に、展示会出展やイベントプロモーション、商談会などのマーケティング活動の場において、ブランドエンゲージメント、認知拡大・話題づくり、顧客関係深耕・理解促進といった顧客のマーケティング課題の解決を実現しています。

市川:まさに効果的な体験マーケティングをお届けしているのですね。

市場概況

市川:市場環境について教えてください。 

原田:関連市場は主に、広告業界イベント領域市場、ディスプレイ業市場、インターネット広告市場です。広告業界イベント領域市場とディスプレイ業市場は、コロナ禍の影響から完全に回復しています。また、インターネット広告市場では、デジタルの事業領域が拡大基調です。オンラインイベントやイベントとの連携で成長させていきます。

市川:各業界の類似企業を教えてください。 

原田:イベント領域では、電通や博報堂のグループ会社さま、フロンティアインターナショナルさま、テー・オー・ダブリューさまです。商環境領域は乃村工藝社さまと丹青社さま、デジタル領域はサイバーエージェントさまなどです。

市川:なぜ3つの領域が重なるExperience Marketingが拡大していくと考えているのですか? 

原田:マーケティング課題が日々複雑化する中で、その解決手法もまた多様化しています。それぞれの課題に対して、より深く踏み込み、個別の状況やニーズに焦点を当てて向き合うことが求められるようになっています。従来のように広く一律にアプローチするマーケティング活動だけでは、もはや十分な効果を得ることが難しくなってきていると感じています。

市川:従来の大衆向けのマーケティング活動だけでは課題解決が困難という背景から、Experience Marketingの成長が見込まれているのですね。また、その効果が企業に認められ、博展が中期経営計画の初年度から準備したことが今、花開き始めているのですね。

競合優位性

市川:同業他社に比べて、博展の競合優位性を教えてください。 

原田:クリエイティブ、制作・施工管理、サステナビリティを掛け合わせて体験価値を共創していることに独自性があると考えています。それぞれを強みとする会社はあると思いますが、これら3つを社内に保有し、強みとしている会社は多くありません。

市川:体験価値が、他社と異なる付加価値をつくっているのですね。

競合優位性の事例

市川:この3年で特に強みを実感していることは何ですか? 

原田:大きく4つあります。1つ目は世界的アワードで最高位のグランプリを受賞したことです。これは3つの強みが重なり合った体験が評価された結果だと受け止めています。2つ目は、商環境領域の実績の拡大です。商環境領域は、ショールームやミュージアム、オフィスなど常設空間のプロデュース事業を対象としています。3つ目は、注力しているサステナビリティ領域の実績が着実に広がっていることです。4つ目は、地域や教育業界といった領域でも体験価値の重要性が高まりつつあり、当社の強みを発揮できるフィールドが拡大してきている点です。

市川:どれも印象に残るクリエイティブで本当に素敵だと思います。こうした取り組みが業績にしっかりつながってきているのですね。

成長戦略と成果指標の進捗 「対 社会・市場」

市川:成長戦略の進捗を教えてください。 

原田:中期経営目標に対して、「対 社会・市場」「対 人・組織」の両輪を回すことで経営を推進しています。まずは「対 社会・市場」に関する取り組みの進捗についてです。

事業ユニット戦略

原田:市場・顧客のカテゴリごとに提供価値を追求する事業ユニット戦略を引き続き推進しています。

顧客数/顧客単価

市川:関連する指標の顧客数、顧客単価の進捗はいかがですか? 

原田:顧客数、顧客単価ともに順調に拡大しています。

市川:右肩上がりですね。まだまだ伸びていきそうですか? 

原田:市場・顧客のニーズに寄り添うことでさらに伸長させていきます。事業活動を通じて感じるのは、まだ当社の認知度が低いという現実です。より一層、当社の存在を知っていただくための発信に力を入れていきたいと考えています。

FY2024 実績

市川:みなさまにもっと知っていただくためにも、具体的な実績を教えてください。 

原田:スライドの左上の写真は東京ドームシティのウィンターイルミネーションです。2023年度末に、森ビルさまの麻布台のクリスマスマーケットのプロジェクトに携わりましたが、それを起点とした営業活動が実り、2024年度は数々のクリスマスイベントのプロジェクトを手がけました。

左下の写真は商環境領域の実績です。エイチ・アイ・エスさまの店舗リニューアルにおいて、体験型の店舗を納品しました。商環境の部隊は各事業ユニットに点在していましたが、今年度より商環境事業部を新設しさらに強化していきます。

スライド中央下の写真は、同業界の船場さまと共同開催した、エシカルデザインウィークという参加型のイベントです。このような共催イベントなどを通じて、サステナビリティ領域の実績もますます積み上がってきています。

スライド右下の写真は、かえつ有明中・高等学校さまとの共創プロジェクト「Kumoo(クモー)」です。「主体性や探求心などを育む教育」への転換が進む学校教育現場に向けた体験型コミュニケーションツールを提案し、納品した実績で、教育分野へ貢献の範囲を拡大しています。

市川:商環境分野では横展開ができており、一方で新しい教育分野にも進出しているとお見受けしました。

体験価値の追求 体験の価値を証明する取り組み

原田:当社には、社会課題を体験デザインで解決するラボチームがあります。足元の事業よりもう少し未来に対しての取り組みをしているチームですが、新しい体験デザイン領域の確立に取り組み、これまでにない取引や新規顧客の獲得など、新しい市場の開拓につなげています。

市川:R&Dの取り組みが、新規顧客の獲得という実績につながってきているのですね。

体験価値の追求 サステナブルなイベントへの取り組み

市川:サステナビリティ関連の実績にも触れられていましたが、そちらの進捗はいかがでしょうか?

原田:環境配慮型のイベントの開発と実装に、専門部隊が中心となって取り組んでいます。今年1月には、その組織で「ISO 20121(イベントサステナビリティ・マネジメントシステム)」(*)を取得しました。

このISOの取得により、個別プロジェクトの対応だけでなく、組織として推進力を高めていきます。顧客からのニーズはますます増えており、サステナビリティ関連の売上も堅調に推移しています。

市川:サステナビリティの対応は、特にグローバル企業にとって、取引の必須条件と言っても過言ではありません。サステナビリティの取り組みが、単に良いことというだけではなく、しっかり競争戦略となり、実績そして売上につながっているところがすばらしいと思います。

(*)「ISO 20121(イベントサステナビリティ・マネジメントシステム)」とは、イベント運営における環境・経済・社会への影響を管理し、イベント産業の持続可能性を支えるマネジメントシステム規格

成長戦略と成果指標の進捗 「対 人・組織」

市川:「対 人・組織」に関しての戦略進捗はいかがでしょうか? 

原田:人材戦略関連では人事部門の強化を行い、研修制度の体系化など、制度設計を整えました。

市川:人材も順調に獲得できていますね。

原田:今年4月には2025年度の新卒が多く入社しました。

「対 人・組織」に関する戦略

市川:スライドの写真は今年の新卒社員ですか? 

原田:入社式の集合写真です。博展単体で63名、グループ全体では67名が入社しました。本当にいきいきとしていてバイタリティがあり、博展らしい素直で本当に良い社員が入ってくれたと思っています。

市川:これまでの新卒社員や、最近入社したキャリア採用の方たちの重要なポジションへの登用は進んでいますか? 

原田:当社は若手を重要な場所に抜擢する文化があり、今現在も継続しています。今後はキャリア採用の方たちの獲得と重要ポジションへの登用が重要だと考えています。

最近では、特にIRや広報、そして情報セキュリティ部門などの専門性のある知識や経験のある方々に入っていただき、それぞれが重要な役職に就いて活躍してくれています。

従業員数/一人当たり売上総利益額

市川:人の生産性は高まっていますか?

原田:一人当たりの売上総利益額が伸長し、生産性も向上しています。

市川:人的資本投資の効果が出ていますね。

経営基盤戦略

市川:経営基盤についての取り組みの進捗はいかがでしょうか?

原田:人材、仕組みとともに着実に整いつつあります。2024年度は基幹システムの入れ替えによる業務改善や、ITインフラの仕組みの強化と見直し、また情報セキュリティの教育に力を入れました。

そして、さらに投資家の方々に注目していただけるよう、IRサイトのリニューアルや決算説明会等の充実化による開示強化も行っています。

市川:まさに基盤が整いつつあると私も感じています。IRサイトも非常に見やすくなったと思います。推進中の戦略で完了したこと、そして今期の課題はいかがでしょうか? 

原田:当初企画したものは概ね実行に移っています。次の段階はPDCAのCとAの部分であり、実行したものをチェック、ブラッシュアップし、次の行動に移していきます。

現中期経営計画の位置づけ

市川:現在の中期経営計画はいよいよ最終年度の3年目となりましたが、将来に向けた長期的な計画はどのようにお考えでしょうか?

原田:現中期経営計画では、将来の成長に向けた足場づくりとして、現事業を追求し、収益性や基盤づくりに力を入れています。

次期計画では、価値提供シーンを拡張するために事業規模、そして領域をさらに拡大していく戦略を立てる予定です。

資本政策

市川:投資家の方が気になる株主還元方針について教えてください。

原田:将来の事業成長に向けた投資と株主還元をバランスさせていく方針に変わりなく、引き続き、年間配当性向30パーセントをめどに、安定的な配当を実施していきます。

株主還元(配当)

市川:具体的な配当金額について教えてください。

原田:2024年度は当初計画比で2円の増配を行いました。2025年度は中間10円、期末10円の合計20円の配当を想定しています。

市川:配当が安定的にしっかり増えていますね。

株主還元(株主優待)

市川:株主優待についてはいかがでしょうか?

原田:100株以上、6ヶ月以上保有の方に「JCBプレモカード」を贈呈しています。より使いやすくするために「JCBプレモカード」を採用しましたが、引き続きより良いものに見直し、改善していきたいと考えています。

また、1,000株以上、1年以上保有の方には、博展グループの体験コンテンツに直接触れていただける機会を抽選で提供します。

市川:今年度の体験コンテンツは、「JAPAN MOBILITY SHOW 2025」の入場チケットを予定していますね? 

原田:まさにモビリティ業界は変革期を迎えており、みなさまにとっても大変興味深いイベントになると思っています。

株価推移

市川:最後に、株価についてはいかがでしょうか?

原田:2025年4月23日の終値は517円、時価総額は83億6,800万円です。より一層企業価値を向上させていきたいと考えています。

市川:配当利回りは4パーセント弱、優待を含めて5パーセント弱ですので、博展は優待や配当のみを見ると安定株のように見えますが、まだ安定株ではなくて成長株でもあると思います。そのあたりを伝えていきたいと思います。

スタンダード市場への移行についても準備されているという発表もありましたが、進捗はいかがでしょうか? 

原田:スタンダード市場への移行は目的ではなく、手段の1つです。あくまでも企業価値を向上させていくためのステップであり、ガバナンス体制を整えていくための大きなきっかけと捉え、トライしようと考えています。

しかしながら、移行準備の発表を行った時と比べると、現在の外部環境はかなり不安定です。適切な時期を見定めていきたいと考えています。

市川:スタンダード市場への上場準備は、グロース市場よりも一段高いガバナンスが求められています。一方で成長性については、今回の中期経営計画で成長戦略を示し、上方修正の実施により、その実行力についてはお示しできたと思います。

マーケットの方向性はどのようにあっても、成長とガバナンスの両輪を備えつつあるのではないかと思っています。

原田:ご視聴いただいたみなさま、ありがとうございました。引き続き、ぜひ、博展グループをよろしくお願いします。