目次
村田力氏:みなさま、こんにちは。株式会社放電精密加工研究所、代表取締役社長の村田です。
本日はまず、2025年2月期の決算概要についてお話しします。次に2026年2月期の通期業績予想および株主還元について、最後に「中期経営計画2027」の施策の進捗についてご説明します。
本資料のポイント
本資料のポイントはスライドのとおりです。2025年2月期について、売上高は前期比6.1パーセント増の128億円、営業利益は前期比199.4パーセント増の6億8,900万円となりました。主な要因は、放電加工・表面処理セグメントの生産量増加や、収益性の改善です。
親会社株主に帰属する当期純利益は、繰延税金資産の回収見込み分を計上したことなどで法人税等の税負担が軽減され、前期比2.5倍の5億8,300万円となりました。
2026年2月期の業績予想と「中期経営計画2027」の進捗状況は、後半でご説明します。
2025年2月期 決算概要(連結)
2025年2月期の決算概要はスライドのとおりです。前期比で増収増益となりました。また、2024年10月3日に公表した計画比では減収増益となっています。
2025年2月期 利益の変動要因
最終利益の変動要因です。スライド上段が前期比、下段が計画比で、緑色が増益要因、赤色が減益要因となります。
まずは前期比です。売上高は、放電加工・表面処理の売上増加により増収となりました。売上原価は経費抑制を行いましたが、増収により増加しました。また、販売管理費は、賞与支給などの人件費が増えたことで増加しています。
次に計画比です。売上高は、放電加工・表面処理が増収となったものの、金型・機械装置等セグメントの減収に伴い未達となりました。売上原価は、減収および修繕費等の設備計画の見直しにより固定費が抑えられたことで減少しました。販売管理費も原価と同じく、費用の見直しにより減少しています。
事業概要
事業概要をご説明します。当社のセグメントは、放電加工・表面処理、金型、機械装置等の3つで構成されています。また、事業分野は航空・宇宙、交通・輸送、環境・エネルギー、住宅、機械設備の5つに分類されています。
これらの売上構成比率はスライドのとおりです。環境・エネルギー分野が前期比で5ポイント増加したことにより、放電加工・表面処理セグメントの構成比が67パーセントになりました。
2025年2月期 セグメント別概要
セグメントごとの売上高と営業利益はスライドのとおりです。
セグメント別詳細:放電加工・表面処理
セグメント別に事業状況を詳しくご説明します。放電加工・表面処理セグメントは、前期比・計画比ともに増収増益となりました。事業分野別に見ると、航空・宇宙分野は、前期比では防衛装備品を含む航空・宇宙分野部品の需要増により増収となりました。
計画比では、航空機エンジン部品において、増員の遅れにより新モデルの生産が想定を下回り、未達となりました。
交通・輸送分野は、前期比では自動車関連の表面処理部品が価格改定により増収となりました。計画比では、おおむね計画どおりに進捗しています。
環境・エネルギー分野では、前期比・計画比ともに電力需要の増加によりガスタービン部品が増収となりました。また、石油・ガス産業の精製需要の増加により、遠心圧縮機部品が増収となりました。
営業利益は、前期比では生産量の増加や価格改定による採算性の改善により増益、計画比でも増益となりました。
増益の主な要因は、修繕費や設備投資の見直し、増員計画の遅れによる固定費の減少です。
セグメント別詳細:金型
金型セグメントは、前期比・計画比ともに減収減益となりました。事業分野別に見ると、住宅分野では、前期比では価格改定の実施により国内向けアルミ押出用金型の売上は前期並みに推移したものの、海外子会社からのタイ国向けアルミ押出用金型の受注が減少し、減収となりました。計画比については、おおむね計画どおりに進捗しています。
交通・輸送分野では、前期比・計画比ともに、中国市場の低迷および排ガス規制の遅延や緩和により、製品構成が変化し、セラミックスハニカム押出用金型が減収となりました。
営業利益は前期比・計画比ともに、減収および高付加価値製品が減少したことにより減益となりました。
セグメント別詳細:機械装置等
機械装置等セグメントは、前期比・計画比ともに減収減益となりました。事業分野別に見ると、機械設備分野では、前期比ではプレス機の販売の落ち込みにより減収、計画比では計画変更に伴う納入延期や付帯設備の需要減少により未達となりました。
交通・輸送分野では、前期比では自動車関連プレス部品が自動車市場の低迷を受け減収となりました。計画比については、おおむね計画どおりに進捗しました。
営業利益は、前期比では固定費の圧縮に努めましたが、減収により減益となりました。計画比では、機械販売の遅れの影響により未達となっています。
連結貸借対照表とキャッシュ・フローの状況
連結貸借対照表とキャッシュ・フローの状況です。流動資産および流動負債の減少要因は、ともに短期借入金の返済です。
2026年2月期通期業績予想(連結)
2026年2月期の業績予想についてご説明します。2026年2月期の通期業績予想はスライドのとおりです。航空機エンジン部品や防衛装備品の売上増加、成長分野への先行投資を見込んでいます。
売上高は144億円、営業利益は7億1,400万円、営業利益率は5パーセントとなる見込みです。
2026年2月期 利益の変動要因
2026年2月期の利益の変動要因です。売上高は全セグメントで増収を見込んでいますが、特に放電加工・表面処理の売上増加が顕著であると見ています。
売上原価は、増収に加え、ガスタービン部品や防衛装備品の増員および設備導入などの先行投資により、増加する見込みです。販売管理費は、研究開発費および先行投資に伴う出張費や、採用費の増加を見込んでいます。
法人税他は、2025年2月期に繰延税金資産の回収見込み分を計上したことなどにより、法人税等の税負担が軽減されましたが、2026年2月期は通常の税率に基づく法人税等の税負担が発生する想定で、増加する見通しです。
2026年2月期セグメント別概要予想(連結)
セグメントごとの売上高と営業利益はスライドのとおりです。スライドの米印2ヶ所は、2026年2月期にセグメント間の組み替えを行ったことで、増減幅が大きくなっています。
放電加工・表面処理セグメントの環境事業の一部を、機械装置等セグメントの機械設備分野へ移管しています。これはプレス事業と混合溶融技術を軸とした装置事業を統合したことによるもので、後ほど詳しくご説明します。
2026年2月期セグメント別概要予想(連結)
放電加工・表面処理セグメントについて、航空・宇宙分野は、航空機エンジン部品と防衛装備品の生産量が増加することで、増収となる見込みです。交通・輸送分野は、自動車産業の成長鈍化の影響で横ばいと見ています。エネルギー分野では、ガスタービン部品の先行投資を実施します。立ち上げ時は一時的に生産が停滞することから、生産量は前期並みを見込んでいます。
以上により、セグメント全体では増収増益を見込んでいます。
金型セグメントでは、市場環境を保守的に見ています。他分野への営業を強化するとともに、生産の効率化で収益性の改善を図り、増収増益を見込んでいます。
機械装置等セグメントでは、プレス機については前期に納入延期となった設備の売上を見込んでいますが、さらに受注の積み上げを注視していきます。また、当セグメントに組み替えた環境事業は、混合溶融機の販売などで増収増益の見込みです。交通・輸送分野のプレス部品は、体制の最適化など収益改善を継続します。
その他、全社単位でDX化推進や自動化への展開を図り、業務改革を推進していきます。
2026年2月期|設備投資・償却費・研究開発費
設備投資と研究開発費の主なものは、スライドのとおりです。中期経営計画の2年目までは、ガスタービン部品、航空機エンジン部品、防衛装備品の生産体制の再整備を中心に投資を行っていきます。
研究開発では専門チームが中心となり、自動化・省人化や工法改善による生産の効率化に加え、環境事業に関する開発を進めていきます。
主な設備投資の進捗
主な設備投資の進捗はスライドのとおりです。ガスタービン部品は顧客との協議の結果、当面の分担生産がほぼ決まり、体制整備のための設備投資が進んでいます。
昨年4月の発表では、工場の増設を進めるとお話ししましたが、顧客の増産時期が前倒しになったことや工場建設納期が延びていることなどから、プランを見直し、工場を増設せずに今年4月より生産を開始しました。今後は、スライドの2拠点の生産能力を増強していきます。
航空機エンジン部品は、小牧事業所の設備増強が完了し、前期下期より増産対応を開始しています。防衛装備品については、当社での生産アイテム、生産量などの具体的な詰めに入ってきており、生産対応能力の確認および再構築を進めていきます。
株主還元について
株主還元についてご説明します。当社は長期的な視野に立ち、堅実な成長を続けることを目指しています。株主のみなさまに対する安定的かつ継続的な利益還元を、経営上の最重要課題と位置づけています。
これを実現するために、中期的な視点に基づいた成長投資を優先しつつ、配当性向30パーセントを目安に安定配当を目指していきます。
なお、2025年2月期の配当は、昨年4月に公表した予想から5円増額し、1株あたり12円に修正します。2026年2月期の配当予想は15円とします。
中期経営計画2027 重点方針
ここからは、「中期経営計画2027」の進捗についてお話しします。当社は2024年4月に「中期経営計画2027」を発表しました。重点方針として、スライドの4項目を掲げています。2025年2月期は中期経営計画の初年度となり、特に改革推進と収益基盤の2つに注力してきました。
具体的な取り組み
具体的な取り組みはスライドのとおりです。改革推進では、本社機能を強化した組織で成長分野の投資計画の支援やコスト意識の浸透を図り、収益基盤を強化しました。専門知識を持つキャリア採用で成長分野の能力増強計画を着実に推進し、人事制度も刷新するなど、成長への組織改革と人的資本投資への取り組みを行いました。
収益基盤強化の取り組みでは、全社の収益性意識の浸透に努め、当社のリソースを最大限に活用することで社外流出を抑制しました。
これらの活動が収益改善に大きく寄与し、業績を大幅に改善することができました。今後もこの活動を継続・進化させることで、収益体制をより盤石なものにしていきます。
中期経営計画2027 事業の方向性
今中期経営計画では、事業の位置づけを明確にし、資源の最適配分を図ることにも注力しています。特に成長が期待されるエネルギー分野と航空・宇宙分野においては、売上の拡大と収益性の向上を目指し、これらの分野を当社の主要な事業の柱へと成長させていきます。
その他、アルミ押出用金型は、安定した収益に貢献する事業として位置づけています。また、セラミックスハニカム押出用金型やプレス機事業は、競争優位性を高め、新たな市場分野でお客さまとともに成長・発展できるビジネスを目指していきます。
中期経営計画2027 2年目以降の方向性
初年度は順調に進捗しましたが、収益基盤の盤石化・経営の安定性を維持向上させるためには、まだ課題があると認識しています。
外部環境に左右されない内部環境を整備するため、利益創出体制を一層強化していきます。成長分野は先ほどご説明したとおり、業容拡大へ向けた投資を順次実施していきます。
また、昨年1月に三菱重工業株式会社との資本業務提携を行ったことにより、シナジー効果も今後現れてくるものと見ています。資本業務提携によってコミュニケーションの機会が増え、営業情報のレベルが高まっていると感じています。独立性を維持しつつ、対話を深めることで経営の安定性につながっていくと考えています。
事業分野別の外部環境認識
ここからは、各事業の進捗についてご説明します。まず、事業別の外部環境認識についてです。「中期経営計画2027」においては、ガスタービン部品、航空機エンジン部品、防衛装備品の需要が順調に伸びると見ています。
特にエネルギー分野では、電力需要を背景に、電力を安定的かつ効率的に供給するガスタービン発電の需要が高まっており、成長を支える要因となっています。
航空・宇宙分野は、コロナ禍から回復し、正常化が進むと見ています。また、国の安全保障政策により、防衛関連の需要が増加する見込みです。
機械装置分野は物価高の長期化が懸念されますが、一方で、生産の効率化を目的とした補助金が投資を後押しすると考えています。
環境分野は、プラスチックの循環利用への期待が一層高まり、価値の高い製品開発が進むと見込まれます。住宅、交通・輸送分野は、少子化や中国経済の影響があるため、保守的に見ています。
業績推移
業績の推移はスライドのとおりです。初年度は収益性を重視した施策により、利益創出体制を強化した成果が見られました。
2年目である2026年2月期は先行投資を行うため、一時的に利益率が停滞します。売上高は144億円、営業利益は7億1,400万円、営業利益率は5パーセントを見込んでいます。収益創出体制を一層強化するとともに、最終年度の目標達成に向けた準備を着実に進めていきます。
なお、「中期経営計画2027」の最終年度の目標値は、2024年4月9日に公表したとおりです。
放電加工・表面処理セグメントの進捗① エネルギー分野
ここからは、セグメントごとの進捗についてご説明します。まずはエネルギー分野です。スライド左側のグラフは、世界の発電設備と発電電力量の予測となります。
当社の主力事業であるガスタービン部品は、グラフのピンク色の天然ガスを燃料とした発電システムの需要にかかわっています。安定した電力供給を実現する天然ガス火力発電において、堅調な事業機会が得られると認識しています。
また、再生可能エネルギーへの移行が進む中でも、天然ガス火力発電はバックアップ電源としての需要が期待される見込みです。さらに、当社の既存技術を活用することで、水素混焼などのカーボンニュートラルへの対応も可能となります。
我々は、持続可能なエネルギーの未来に貢献できる体制を整えていきます。具体的には、設備の導入や他事業のリソースを活用するなど、生産能力を増強していきます。また、業界での経験が豊富な人材の確保や、教育によるスキル向上など、生産の質を高める体制を構築し、競争力を一層高めていきます。
放電加工・表面処理セグメントの進捗② 航空・宇宙分野
次に、航空分野と防衛分野です。航空分野では、新型コロナウイルスの影響から、大型旅客機の需要回復に時間がかかっていました。
今後は生産量の回復と同時に、低燃費エンジンへの機体入れ替え需要の高まりやメンテナンス需要の増加も予想されており、高い水準で一定量を維持するものと見ています。
防衛分野では、防衛力整備事業費の予算が大幅に増額されています。それに伴い、効率的で持続可能な装備品のサプライチェーンの構築が求められると考えています。
当社の航空機エンジン部品事業は、コロナ禍で売上が半減していましたが、生産量が回復し、今後3年間で事業立ち上げ当初の予想を上回る生産ボリュームが計画されています。
収益面では、生産量の増加とともに、燃料コスト上昇などを加味した適正価格を維持・継続し、健全な収益基盤の拡大を目指していきます。
防衛装備品は需要の急拡大に備え、サプライチェーンを強化するなど、社内外の体制を強化していきます。
放電加工・表面処理セグメントの施策の進捗
主力事業の主な設備投資計画はスライドのとおりです。当初の予定どおりに進捗しており、本格的な投資回収は3年目後半を予定しています。
この投資により、2024年2月期に対して大幅な拡大を見込んでいます。特に航空・宇宙分野では、防衛装備品が牽引役になると見ています。
主力事業の中期的な売上イメージ
スライドは、昨年10月にご説明した内容を一部更新したものです。脱炭素化や安全保障意識の高まりなどの外部要因が追い風となり、順調に進捗していくと見ています。
航空・宇宙分野は、昨年4月の発表時、2027年2月期は、2024年2月期に対して売上高が1.5倍に成長するとしていましたが、2026年2月期に前倒しとなる予定です。
要因として、航空機エンジン部品がコロナ禍前の高い水準を維持しつつ、新モデルへの切り替えが発生することや、防衛装備品の大幅増産などがあります。
ガスタービン部品は、2026年2月期に先行投資を実施します。立ち上げ時期は生産量を一時的に落とすため、前期に比べて売上が若干落ちると見込んでいますが、2027年2月期は、2024年2月期に対して売上高が1.3倍に成長すると見ています。
金型セグメントの進捗
金型セグメントの施策の進捗についてご説明します。こちらには主に2つの事業があります。アルミ押出用金型は、海外子会社の受注減少もあり、当面は大きな伸びがないものと見ています。
一方で、顧客にとってなくてはならないものであることから、採算性を確保しつつ供給を続けていくために、最新のデジタル技術を活用した工法の大改革を推進中です。
セラミックスハニカム押出用金型は、自動車向け排ガス浄化用装置の部品製作に使用されていますが、近年のカーボンニュートラルの達成に向け、CO2の回収やガスの分離など、新たな用途への展開が始まっています。そのため、当社では専用設備の開発と工法の見直しを行い、顧客とともに技術の実証を推進しています。
主な用途開発に向けた技術開発や革新には、既存技術の高度化が必要となるため、一定の時間を要します。新分野における業績への寄与は、次期中期経営計画からになると見ています。
機械装置等セグメントの進捗
機械装置等セグメントでは、2025年3月にプレス事業と混合溶融技術を軸とした環境事業を統合しました。双方の技術力を結集し、より高度な技術開発や製品開発等でシナジー効果を発揮する環境を整えます。
この統合により、お客さまが抱える課題に対して、より幅広く対応できるコトづくりの場を提供し、お客さまとともに成長発展するビジネスモデルを目指します。
主力のデジタルサーボプレス機は、これまでは自動車関連の業界を中心に活用されてきましたが、自動車業界の100年に一度の大改革に伴い、その活用にも変化が出てきています。
当社は1990年代から、大手自動車メーカーへの燃料電池開発に協力してきており、近年のカーボンニュートラルの流れに伴い、開発に拍車がかかっています。当社のサーボプレス機は、燃料電池の複数の製造工程での実証が進んでおり、金属のみならず複合素材の活用も進んでいます。
環境事業では、産学官と連携し、プラスチックの再生や食品残渣の再資源化など、資源循環型社会に向けた活動を推進しています。
トピックス
最後にトピックスです。昨年12月にリリースしたとおり、4月13日より開幕した2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で、経済産業省が出展する日本政府館のファクトリーエリアへ、共創プロジェクトの1社として参画しています。
こちらでは、日本の伝統と最先端の技術を融合した「循環型ものづくり」をテーマとする展示制作に協力しました。今後も、資源循環型社会に向けた活動を推進していきます。
以上で私からの説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。