会社概要

楠元健一郎氏(以下、楠元):みなさま、こんにちは。代表取締役社長の楠元です。本日はお忙しい中、多数の方にご視聴いただき、本当にありがとうございます。

本日は2025年3月期決算説明を行いますが、説明会に初めてご参加いただいた方も多いとうかがっていますので、最初に私から会社の概要を簡単にお伝えした後、前期決算についてご説明します。

当社は設立が1948年と大変古く、もともとは印刷会社でした。1990年代に入り、印刷業界は構造不況といわれる時代になりました。そこで、印刷会社時代の前オーナーが事業改革に踏み切り、印刷業とは異業種の、すかいらーく創業一族の横川4兄弟に資本支援と構造改革をお願いしたことが外食業参入のきっかけとなりました。

当時は資本を支援していましたが、印刷業は門外漢であったため、もう1つ事業の柱を作り、2本柱で支えるかたちで印刷業を改革しようと、横川兄弟が得意とする外食業を始めました。外食業と印刷業という2つの事業の柱を持って、2001年にやきとり屋チェーンの扇屋をフランチャイズで始めたのがきっかけです。

その後、スライドに記載のとおり、森永製菓の子会社であったエンゼルフードシステムズを前身とするフードリーム、紅とん、一丁、一源など多くのグループ会社を順に買収し、今の外食事業を立ち上げました。

2013年には祖業の印刷業を大手印刷会社に譲渡し、ヴィア・グループは外食業の専業業態として再スタートを切りました。2025年3月末現在、全国に305店舗(直営276店舗、FC29店舗)を展開しています。

店舗展開

本当は47都道府県と言いたいところですが、現在35都道府県に30のブランド、305店舗を展開しています。半数強の157店舗が関東地方で、残りは全国というかたちになっています。

ブランド紹介(扇屋/パステル)

主なブランドを4つほどご紹介します。「やきとりの扇屋」は名前のとおりやきとり居酒屋で、全国に174店舗あります。したがって、「扇屋」で直営の6割以上をカバーする、当社グループのメインブランドです。焼き師が焼き上げる本格炭火やきとりで、備長炭の強火と遠赤外線でしっかり焼いています。チェーン店では珍しい、本格的な炭火やきとりを展開しています。

もう1つの特徴は、居酒屋でありながら郊外ロードサイド型がメインである点です。もちろん、飲酒運転防止のオペレーションをしっかり行い、お酒も飲めて、ファミリーレストランのような使い方もできる、変わった立地、変わった業態として展開しています。

スライド右側の「Pastel」は、「なめらかプリン」という非常に強い商品を持っており、ご存じの方も多くいらっしゃると思います。数年前に買収し、当社グループの一員となっています。

基本的にはレストラン業態のみですが、「Pastel」の「P」が表すパスタ・ピザ・プリンの3つの「P」を中心に、主にイオンやマルイなどのショッピングセンター内のレストラン街に出店するビジネスモデルで展開しています。

ブランド紹介(紅とん/一丁)

スライド左側は「日本橋紅とん」です。「とん」と付いているとおり、こちらは焼きとん業態です。「働くみんなのエネルギー源!」をコンセプトに、1店舗を除いては東京の23区内に店舗があります。ただし、1店舗は吉祥寺ですので、ほぼ23区といえます。山手線内の駅の周辺に集中する、完全にビジネスパーソンを相手にした都市型の事業モデルです。

スライドに「ディナータイムの客単価は約2,500円」とありますが、これは平均の客単価で、平均値のお客さまは少なく、中心価格帯は2,800円から2,900円程度とほぼ3,000円に近くなっています。

スライド右側は「うおや一丁」です。「うおや」の名のとおり、海鮮を中心とした大型の刺身居酒屋です。もともとは北海道の札幌でスタートした業態でもあり、現在も北海道を彷彿させるメニューを数多く取り揃えています。

宴会ができるような大型店で、都心部のビジネスパーソンをメインのお客さまに設定しています。こちらも「ディナータイムの客単価は約3,500円」とありますが、これは平均値で、4,000円ぐらいの価格帯が中心となっています。

業態ポートフォリオ

メインのブランドを4つご紹介しましたが、その他に、埼玉県を中心に展開し、ファミリーレストランプラス居酒屋、いわゆる「総合居酒屋」といわれる「いちげん」や、中華レストラン「虎包(フーパオ)」も展開しています。洋風居酒屋「Bella Bella(ベッラベーラ)」は、昼間は洋風レストランで、夜はお酒が飲めます。

「ぼちぼち」は、本格的な大鉄板で焼くお好み焼きの店舗です。このようなブランドを中心に、屋号として30ブランドを展開しています。居酒屋75パーセント、レストラン25パーセントの比率での飲食チェーンです。

業績サマリー 連結決算

羽根英臣氏:経営推進本部長兼CFOの羽根です。2025年3月期の連結決算についてご説明します。当連結会計年度における外食産業では、インバウンドを含め需要は回復傾向にあるものの、円安における原材料価格の高騰に加え、2024年問題の物流の制約や労働人口の減少による人手不足など、厳しい経営環境に置かれています。

このような状況で、当社グループでは、人手不足やコストの高騰、事業環境の変化といった課題へ対応するために、収益構造改善に注力しました。

また、客数の増加を大きなテーマに、各業態のメインアイテムの品質向上と、そのための技術の再構築といった本質回帰に徹底して取り組むとともに、新規顧客の集客のための施策や、SNSを利用した認知度アップの実験も進めました。

店舗数については、「備長扇屋」発祥の地である愛知県名古屋市の名古屋駅前に、新たな業態をモデルとして「備長扇屋名古屋本店」を出店し、売上高・利益ともに順調に推移しています。不採算店舗や契約更新できなかった店舗は閉店し、前期末時点と比べ、店舗数は7店舗減少しました。期末時点の店舗数は305店舗、うちFC店は29店舗となっています。

これらの結果、既存店の売上高は客数・客単価とも前年比100パーセントを上回り、当連結会計年度の売上高は、前期と比べて3億9,000万円増加の173億円となっています。

営業利益はコストの高騰影響を受け、前期比1億2,000万円の減益となり、1億9,000万円の利益です。経常利益についても、前期比1億2,000万円の減益となり、1億2,000万円の利益となりました。

また、店舗の閉鎖に伴う特別損失なども計上しましたが、税金等調整前の当期純利益は黒字を確保しています。税金費用を差し引いた当期純利益はマイナス1,000万円と、若干の赤字が残る決算となりました。

業績サマリー 連結業績推移

連結業績の推移です。スライドのグラフで示したとおり、6期前の2019年3月期は売上高が267億円と、当連結会計年度の約1.5倍の売上高がありました。

店舗数も、直営店が438店舗と現在の約1.4倍を有していましたが、経常利益はマイナス8億円と、この期から赤字への転落が始まりました。その後、新型コロナウイルス感染症等の影響もあり、2023年3月期まで5年連続で経常利益が赤字になっています。

そのような中で、当社グループでは2021年4月のADR手続きで事業再生計画を策定しました。事業の仕組みを抜本的に見直し、事業再生に向けた構造改革を着実に実施しました。これにより、前年の決算では実に6年ぶりに黒字化を達成し、今期は増収を達成できています。

当社グループでは、これまでの黒字化に向けた再生フェーズから再成長フェーズへと歩みを進めるため、適正な規模に向けたリストラクチャリング中心の店舗戦略から、業態のリモデルや新しいコンセプトの業態の開発に対する投資を行うとともに、人的資本への投資にも注力し、社員の教育や研修制度の充実を図り、外国人の採用を強化します。

また、今後もダイバーシティへの対応を進めながら、再成長に向けた戦略へ大きな転換を行い、着実に進めていく所存です。

既存店舗 売上高推移

楠元:ただいまご説明したように、前期決算、前々期決算と、売上高も含めて営業利益、経常利益までは手堅く、再生から成長への移行を遂げてきている状況です。ここで足元の事業の状況と今後の取り組みについてお話しします。

スライドのグラフは、ブルーの線が前年比、黄色の線がコロナ禍が始まる直前の2019年度との比較です。2024年3月期はすでに新型コロナウイルスが2類から5類に移行していることから、アフターコロナ初年度とし、2025年3月期は2年目と仮に定義します。

2025年3月期のブルーの線を見ていただくと、コロナ禍が明けた2024年3月期の売上高よりも、常に100パーセントを上回っている状態で推移しています。そのような意味で、当社が順調に再成長に向かって動き始めたことは間違いないと思っています。

事業動向

事業会社別に分解します。先ほどご紹介した4つの業態では、まず「扇屋」が174店舗あり、全体の6割の店舗数を持っているメインの業態です。昨年度を見ていただくと、2019年のコロナ禍前の水準を大きく取り戻し、100パーセント以上で推移しています。

右側に主な動向を記載しています。基本的にやきとり居酒屋ですので、まずは1杯目の生ビールです。その後に焼酎や日本酒、ウイスキーなど、いろいろなお酒をお客さまに飲んでいただきますが、その2杯目、3杯目のスピードや、提供と品質に徹底的にこだわり、メイン業態として、やきとり居酒屋の本質を磨き上げることに専念してきました。

一方で、コストがどんどん上がっていくため、抜本的な収益構造改革も必要です。当社グループのメイン業態であるため、まずは「扇屋」が元気でなければ、会社全体の連結が良くなっていかないということもあり、徹底的に収益構造の見直しを行ってきました。

「Pastel」もなかなかコロナ禍前を超えられなかったのですが、昨年度後半になり、ようやく100パーセントを超えるようになりました。

ショッピングセンター中心の出店では、ショッピングセンターのお客さまの集客動向によって変化があり、営業のかけ方がなかなか難しいのです。それでも、モーニングやランチタイム、ティータイム、夕食など、一日中幅広い使い方をしていただける業態ですので、時間帯別、あるいは店舗・エリア別に、同じブランドでも店ごとにこまめに工夫を変えていく方法を徹底して行っている最中です。

その結果として売上が100パーセントを超えてきましたので、今後もしっかりと伸ばしていきたいと思います。

事業動向

焼きとんの「紅とん」です。こちらは首都圏の東京23区内に出店していることもあり、コロナ禍が明ける前後から非常に早く回復しました。

コロナ禍が明け、新型コロナウイルスの影響を少しずつ排除しながら、客足の戻りというのは、やはり大都会を中心にだんだん地方へ広がっていきます。地方では新型コロナウイルス後遺症とでもいうのか、人とのディスタンスを取ることに慣れてしまい、客足が戻ってくるのが難しい部分もありましたが、東京では非常に早く、「紅とん」は一気に回復しました。

したがって、現在当社グループで先頭を切って、次のステージで何を始めるのか実験し、果敢にチャレンジしてくれている業態になっています。「紅とん」で行ったことすべてを他の業態に応用編として広げるという経営スタイルで、先ほどの「扇屋」と同様に、メインの焼きとんとドリンクの品質をしっかり磨き上げ、「来て良かった」と思っていただける店を目指します。

先ほどから「コスト増」という言葉が出ているとおり、水道光熱費から食材から、何もかもが一気に値上がりしている時代です。新しい時代にどのようなフォーマットのお店がしっかり収益を上げていけるかという大きな実験を、すべて「紅とん」で行っています。

スライドに「内外装のメンテナンスを実施」とあります。お客さまの数を増やしながら、価値に見合ったお金を払っていただきながら、満足していただきながら、人口減少もあり少ない人数でどうやってオペレーションしていくか実験しながら、新規出店、新業態にチャレンジしながら、次世代のフォーマットを一生懸命出しています。

「一丁」も都心の大型店です。大型店が新型コロナウイルスで一番痛手を受けました。宴会がまったくなくなったためです。現在でも、宴会で使っていただいていますが、やはり20人、30人規模の、会社挙げて、部を挙げての宴会というものは少なくなってきています。

ある意味で、飲み方が変わってきました。あるいは、なかなか誘いづらくなってきたこともあります。コロナがなくなったわけではなく、インフルエンザなどの流行もあるということで、あまり大人数で密になることは避けるという流れは現在もあります。したがって、宴会自体は戻ってきているものの、なかなか厳しい状況です。

都心部のビジネスパーソンのみなさまに大変ご利用いただいており、こちらも100パーセントを大きく超えている状態で推移しています。一方で、いろいろな原価が上がっていく中でも、気候変動の一番大きな影響を受けているのは、おそらく海洋環境だと思います。

「家計を助けているのはイカだ」といわれた時代が20年前、30年前はありましたが、現在はイカは本当に獲れないのです。水温が上がってしまったことで、イカ釣り漁船の糸が届かない深海までイカが沈んでいってしまったという状況があります。そのようなことも含め、海洋環境が非常に変わってきており、なかなか原価が読めないこともあります。

新しい時代の新しい原価、新しいコストに対して、どのように収益構造を変えていくかという意味では、「一丁」が大きな実験台になっています。「ここで成功すれば他でもうまくいく」というぐらい、価格のつけ方、商品の出し方など、いろいろなことで工夫をしており、新しい収益構造改革の実験としての、非常に重要な業態位置を占めています。

事業動向 成長ロードマップ

スライドは2020年の、新型コロナウイルスが始まった1年目からのフェーズを示しています。もともと当社グループは、新型コロナウイルスの拡大前から、やや業績が低迷し始めていました。先ほどもご説明したとおり、2024年3月期は、営業利益、経常利益、当期利益すべてが黒字というのは、実に7年ぶりでした。

コロナ禍の2年ぐらい前から赤字になりがちな業態で、それに新型コロナウイルスが重なったということです。新型コロナウイルスはいつ明けるかわからない上、アフターコロナはコロナ禍前のとおりには戻ってこないという読みも当然ありました。

もともと業績不振だった理由も含め、すべて吹き飛んでしまったのであれば、コロナ禍が明けた時に、しっかりと利益が出る業態、収益構造、人財構造に作り変えることができます。コロナ禍前の問題も、当然反省し、振り返らなければいけないのですが、それを乗り越えた新しい収益構造ができるのではないかと考えました。

そして2021年からフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3と置いて、2025年3月期でコロナ禍が明けていたと仮定した時に、どのような収益構造の会社になっているかを組み立ててきました。先ほどご説明した2025年3月期が、ちょうどフェーズ3の最終年度ということで、新たな収益構造の安定化と、新経営システムへの移行と資本デザインにかなう取り組みや実験をしてきました。

事業動向 第3フェーズ

第3フェーズの新たな取り組みで象徴的なものをいくつかご紹介します。まずは「大衆食事処 みよちゃん食堂」です。ロードサイドにある「やきとりの扇屋」は立地的に今後伸びていくのが難しいのですが、ファミリーレストランのように利用してくださるお客さまがたくさんいるため、このエリアで戦える業態を開発しようと考えました。

そこで、お酒を飲まなくても食動機で利用してもらえる食堂スタイルの実験をしています。試行錯誤し、2年かかって2025年3月期に黒字化を達成しました。今年度からはその黒字額をしっかり伸ばしながら横展開し、他店舗の次なるリモデル店舗として使えるような業態に育てていこうと思っています。

事業動向 第3フェーズ

「やきとりの扇屋」は夜は居酒屋として活況なのですが、ランチタイムや食動機での利用客に夜も飲めることを知ってもらうために、新たな業態として「宅麺」に挑戦しています。「宅麺」とは、有名店のラーメンを再現して提供しようという取り組みです。

スライドには「麺処びぎ屋」と「濃麺海月(こいめんくらげ)」の例を記載していますが、このようなものを数ヶ月単位でどんどん入れ替えながら、さまざまな有名店のメニューを味わっていただこうと取り組んでいます。現在、50店舗まで拡大しています。

このような取り組みも、「やきとりの扇屋」を知っていただく、あるいは居酒屋以外の売上と利益を取っていくための実験となっています。こちらはけっこう育てていけるのではないかと思っています。

事業動向 第3フェーズ

先ほど、「日本橋紅とん」は東京23区内だけに出店してきたとお伝えしましたが、一昨年に初めて23区外となる吉祥寺に出店しました。店舗の見た目は、既存の「日本橋紅とん」と変わらないような造りになっていますが、フードやお酒のラインナップは大きく変えています。低温調理で加熱した肉刺など、やきとりの次の柱になるようなメニューをいろいろ考えています。

既存の「日本橋紅とん」は基本的にビジネスパーソンの強い味方というスタイルを取っていますが、吉祥寺にはサラリーマンの方々だけでなく、休日になると老若男女が幅広く集まります。「日本橋紅とん」の新しい客層を発見するために、あえて吉祥寺に出店して、新しいメニュー構成の中で実験しています。

こちらは開店からずっと黒字を維持しており、今後、都心部にまた新たな出店をする時の1つの武器として、ビジネスパーソンだけではないターゲット層のお店も十分戦えるのではないかと評価しています。

また、新たな出店の準備もしています。スライドには、2024年7月に西葛西店をオープンと記載しましたが、既存の西葛西店が工事で撤退しなければいけなくなったため、近隣に新たな打ち替えをしました。

そのため、お店としては目新しいエリアではないのですが、中身は吉祥寺店の実験をうまく利用した新しいメニューをラインナップし、どんどん上がっていくコストも吸収しきれるような価格帯を設計しています。これにより、既存の西葛西店よりも高い売上と利益を取れています。

このようにコスト構造をうまく吸収しながらも、実験として成功しているお店だと思っていますので、今後は新たな出店展開、あるいは既存店の収益構造改革につなげていきたいと考えています。

事業動向 第3フェーズ

「日本橋紅とん」は焼とん屋ですので、生の豚の内臓を扱っています。これまで「魚の刺身も出してほしい」という要望がとても多かったのですが、衛生面でのリスクも踏まえ、その声に応えることはあえて取り組んできませんでした。そこで、魚の専門店を作ってみたらどうだろうと、工事で徹底することが決まっていた西葛西店にて2年間限定で「魚とん」という新しい業態を立ち上げてみました。

今後、都心に出店していく時に「日本橋紅とん」では厳しくても、「魚とん」はさらにしっかりとしたラインナップで、客単価もより引き上げたものになるような実験を行っています。西葛西という立地にあまりマッチしていないかもしれませんが、あくまでも2年の期間限定です。既存の立地で新しい業態を打ち出し、営業しながらメニューを塗り替え、収益構造もどんどん作り変えながら、都心部に出ていける店作りを行っています。

基本的に「魚とん」では大きな利益は出ていませんが、少なくとも投資を回収できるだけの利益を上げながら、いろいろな実験を行っています。都心で戦える新店として完成形に近いものが出来上がっていますので、今年度に少なくとも1店舗はまったくの新店を都心部に作っていきたいと思っています。

このように「魚とん」で実験したことで、2つの業態を兼ね備えたハイブリッドの「日本橋紅とん」を出店できる状態になってきています。2025年8月には、この新生「日本橋紅とん」を都内に出店予定です。まだ開示はできないのですが、山手線の内側で物件が決定しています。

名前を「日本橋紅とん」と銘打つかはこれから決めますが、現在は物件を多く抱えていますので、今年度中に同様の店舗を2軒から3軒は出店したいと考えています。こちらは本当に新しい収益構造を持った業態です。

事業動向 第3フェーズ

同じように「Pastel」も今後どんどん強化していきたいと考えています。ショッピングセンターの中に出していくのか、あるいは路面店にスタンドアローンで出していくのかも含めて、それにつながるような実験として、昨年12月に「海老名マルイ」内に「PASTEL Dining」をオープンしました。

「Pastel」はもともとオールデイでご利用いただけますが、こちらはオールデイダイニングとして、モーニングからディナーまで常にしっかりとした食事を取ることができます。その間にはティータイムだけの利用動機にもなるような、おしゃれでコンセプトショップ型の店舗です。

今後、同一の店舗を展開していくかどうかよりも、コンセプトショップを持つことで、その良いところをそれぞれの立地に見合ったものにアレンジして、インストールしていくことができるように実験しています。

海老名駅から「海老名マルイ」まではペデストリアンデッキでまっすぐつながっており、そのアプローチの途中にあるお店ですので、そのような駅前立地をうまく利用していきます。例えば地元で採れた卵を使ったプリンを作るなど、地産地消を打ち出していきながら、

地域のコミュニティに開かれたいろいろなイベントを実施し、「海老名マルイ」主催のイベントにも積極的に参加しながら、コンセプトショップのオペレーションをしっかりと完成させたいと考えています。

同じようなコンセプト、あるいは企画を既存の店にどんどんインストールすることで、新しい価値を生んでいけます。そのような実験がかなり成功していると思っていますので、今後こちらが展開できることを私も楽しみにしています。

事業動向 第3フェーズ

メインブランドの「総本家 備長扇屋」は176店舗展開しています。もともと岐阜県で創業し、実は愛知県名古屋市という大商業地を持っていますので、我々は名古屋に育てられたと言っても良いほどです。そこで、「再出発は名古屋の中心地で」という思いから、名古屋駅から徒歩2分の好立地に、6年ぶりの「扇屋」ブランドの新店を今年2月に出店しました。こちらはオープン当初から絶好調です。

そのような立地ですので、多くのお客さまがいらっしゃいますし、周りにも競合他社がたくさんひしめいているエリアです。ここで戦える業態を作っていかなければいけないのですが、既存店ではロードサイドでファミリーレストランのような使い方をされる居酒屋など、変わったタイプの居酒屋を多く持っています。

そこに新しい価値を吹き込んでいくにあたり、既存のお客さまに「変わってしまった」と言われるくらいであれば、新店でいろいろな実験をしていきたいと考えています。そのため、コスト高の時代でもモモ肉を使ったやきとりを1本100円という価格を維持してがんばっています。

他にも、銘柄鶏のやきとりを1本250円で提供し、100円と250円の串を食べ比べるスタイルで営業しています。お客さまからは「それぞれ違っておいしい」と言っていただいており、このように新しい価値を提供しながら、「扇屋」ブランドが出店可能な立地のタイプをどんどん広げていきます。

既存店の改革と新店との両輪で、コスト高を乗り切り、新しい収益構造を持ったお店をどんどん展開していくための実験として、「総本家 備長扇屋」名古屋本店を今後もしっかり育てていきたいと思っています。

事業動向 第3フェーズ

このような実験は行っていますが、収益構造はこれからもまだまだ変化しそうな気配です。コストもまだまだ上がっていくのだろうと思っています。したがって、引き続き収益構造改革を行いながらも、生産性を変えていくだけで対応するのは難しいと考えています。

そこでDXやロボットなど、いろいろなテクノロジーの話にどうしても目が行きがちですが、我々は基本的に対面で営業していますので、それを活かすも殺すも人財がすべてです。そのため、一人ひとりの人財が今の1.2倍、1.5倍、2倍にできることを増やします。それを私たちは「『CAN』を増やしましょう」と表現しています。「CAN」を増やした人財を育成していくことにより、新しい収益構造に向けた改革を実現していきたいと考えています。

直近の3年間は、人財育成を中心に取り組んできました。スライド右下に記載のとおり、「社内独立制度」では4人の合格者を出しています。また、「新たな雇用形態制度」や「ミドルポジション層強化」など、現場に経営の声がしっかり届くようなミドルポジションの人財をより厚くし、ミドル・シニア層の働き方を充実させてきました。

それを見た若年層が「将来のキャリアには多様な選択肢がある」と感じることで、定着率の向上を図ったり、採用面における多様性の高い人事制度を充実させたりしている途中です。今後、このような人的資本への投資にもっと力を入れていきたいと思っています。

株主優待

一方で、長年コストが厳しかったため、株主優待制度を少しずつ縮小してきました。ここまでがんばって会社を存続させ、再成長の軌道になんとか乗ってきましたので、ここから先は株主をもっと増やしていきたいと考えています。

3月末には株主優待制度を改善しました。ぜひ多くの株主にご参加いただき、株主優待制度をご利用いただきたいと思っています。

これまでの中期経営戦略 未来計画(FY2021-FY2024)

2025年3月期、コロナ禍が明けていると思われる頃をどのような状態で迎えるかを計画したのが中期経営戦略です。狙いどおりに、しっかり黒字体質を持った会社に生まれ変わることができました。フェーズ3となった現在、2025年4月からの3年間を乗り切るために「未来計画“Next”」を策定しましたので、簡単にご説明します。

直近の3年間は、コロナ禍が明けた時の状態を想像できませんでした。ただし、3年前からわかっていたのは、2025年度から大きな人口減少時代が来るということです。もちろん、人口は長い時間をかけてゆっくり減ってきていますが、15歳から64歳までの生産年齢人口が急速に減り始めるのはこれからの3年間で、2030年には1970年の高度経済成長期後半の生産年齢人口まで減るということは明らかでした。

そのため、先ほどの人財投資など、まずは一人ひとりの生産労働性を上げながら、人口減少の時代に対する準備をしっかり行ってきたつもりです。ここから先は労働人口が減る、あるいは消費者人口が減っていく時代に突入するため、放っておけばマーケットはどんどん縮小していきます。その縮小自体を戦略的に捉えて、利益を倍にするような新しい成長モデルを作ろうというのが「未来計画“Next”」の根底に流れているベースです。

これまでの中期経営戦略 未来計画(FY2021-FY2024)

直近3年間の「未来計画」では、収益構造改革や本質回帰に取り組み、やきとりやドリンクを本当に良い品質で提供してきました。そして、人財のビルドアップとして、今後の労働人口減少時代に備えた人財構造と教育システムをしっかり作り上げることに取り組みました。

今後に待ち受ける環境変化、大人口減少時代、物価上昇・賃金上昇の時代に対応すべく、収益構造をさらに改革していかなければなりません。

異常気象で真夏が暑すぎて海にも行けない、プールにも行けないという時代です。その中で、本当にビールを飲む気になるでしょうか。もしかすると、お客さまが私どものお店に来ていただく動機や時期が、今までとは少しずつずれてくるかもしれません。

そのようなことも考えながら、売れる時期の変化に対応していくことが非常に大事になるため、「未来計画“Next”」では「新ビジネスモデル」への大胆な投資と転換を行っていくことを大命題に掲げています。

重点戦略1 収益構造モデル

経営の中で「新ビジネスモデル」を捉え直すと、3つのモデルに分解できると思っています。1つ目は、収益構造モデルです。まずは大胆な収益構造の転換を行いたいと考えています。既存店と高収益店をしっかり両立することに加え、スライド右下にあるとおり、「バリューアップ」を掲げて、価値向上につなげていきます。

それを実現するためには人財力を上げていきますが、人財力でまかなえないところ、あるいは逆に人財力をうまく活用するために、テクノロジーも駆使します。それがDXなのか、ロボットなのか、新しい調理機材なのかはわかりませんが、人口減少時代に見合った新しいテクノロジーを融合させながら、しっかり取り組んでいきたいと考えています。

重点戦略2 業態モデル

2つ目は、業態モデルです。収益構造モデルあるいは業態モデルで一番大事なのは本質回帰だと考えています。

やきとり屋はやきとりがおいしい、焼きとん屋は焼きとんがおいしいのは当たり前です。その上で、天然の備長炭を使い続け、機械で焼くことを目指さずに人の手でしっかり焼いていくという価値を、我々は最後まで守り抜きます。これを本質だと仮定します。

人口減少時代に合わせてどのように価値を高めていくか、次世代型の本質をどのように探していくかをしっかり議論しながら、スライド右下にあるとおり、お客さまにわかりやすい価値をしっかり伝えていきます。そして、それに見合った対価を払っていただくことで収益構造を変えていくという業態モデルの改革を早急に進めています。

先ほどご紹介した取り組み事例はすべて、基本的には本質に立ち返るための実験だと位置づけています。

重点戦略3 人財総活躍モデル

3つ目は、人財総活躍モデルです。今いる人財ができないことを目指しても仕方ありません。思いきり背伸びをして、なんとか手の届く範囲で、できることを組み立て直します。その上で、ジャンプすればもう少し上に手が届く、もう少し学べばさらに上に手が伸びるという状態を目指し、「CAN」を増やすことで労働生産性を成長させるモデルを作っていきます。

スライドには「働き方の選択肢拡大」「バランス経営」などと記載していますが、人の手でできることを増やして、リスキリングと呼ばれるスキルを再構築しながら、テクノロジーをうまく融合させ、「ロジック見直し」を行っていきます。

この3つのモデルのバランスをしっかり取りながら収益構造を改革していき、コスト高かつ人口減少時代の中で、我々だけはきちんと生き残っていくことを実現する3年間だと思っています。

2026年3月期 連結業績予想(前期比)

このようなことに取り組みながら、今年度は売上も利益も昨年度より確実に増収増益になるような会社にしていきたいと思っています。

前期は一昨年の収益を受けて、上期は調子が良かったものの、下期は物流費や人件費、食材原価が一気に値上げしてきたことで収益を非常に圧迫しました。

今年度はスライドのような決算目標を掲げていますが、上期は収益構造改革を行いながら取り組むため、かなり厳しい半年を過ごすのではないかと思っています。その間になんとか収益構造改革を実行し、年末年始を含む下期で挽回して、開示した業績予想を確実なものにしていく1年になるのではないかと思います。

当グループの店舗の近くにお出かけした際には、私どものことを思い出していただき、実際に味わっていただいて、私がご説明したことが本当に行われているかどうか確かめていただければと思います。なにかご意見がありましたら、ホームページからお寄せいただけますとありがたく思います。よろしくお願いします。

ご説明は以上です。ありがとうございました。