2025年3月期の概況

斉藤雅也氏:取締役副社長兼CFOの斉藤です。2025年3月期の連結決算の概要についてご説明します。

当期の国内経済は、雇用や所得環境の改善により個人消費は若干持ち直しましたが、物価高が続くことで消費者の節約志向が高まり、本格的な景気回復には至っていないと認識しています。

そのような状況の中で、当社はお客さまのニーズに合った商品提案、インバウンド需要の増加や円安の影響に加え、新たに株式を取得したシンガポールのEu Yan Sang社やオーストリアのモノ社を連結の範囲に含めたことにより、大幅な増収となりました。

利益面では原価率の上昇に加え、研究開発費や新規連結に伴う人件費や減価償却費などの販売費及び一般管理費が増加した結果、残念ながら減益となりました。

国内は、サプリメントの「ロートV5」、新製品が好調なリップクリームや「肌ラボ」、新製品のヘアマスク「Gyutto」、「ケアセラ」、日やけ止め、高額目薬などが好調に推移しました。インバウンド需要も、訪日外国人客の増加に伴い増加しました。さらに、子会社のロートニッテンも増収に貢献しました。

一方、利益は原価率の上昇に加え、広告費は減少したものの研究開発費やシステム関連費など販売費及び一般管理費の増加により減益となりました。

海外事業は、各地域で2桁の大幅な増収増益となりました。アジアはEu Yan Sang社、ヨーロッパはモノ社の損益計算を下期より半年分、連結の範囲に含めたことも寄与しています。

連結損益

連結の損益計算書です。売上高は3,086億2,500万円です。円安の影響に加え、Eu Yan Sang社とモノ社を連結範囲に含めた効果もあり、前年比14.0パーセントの大幅な増収となりました。

しかし、第4四半期に日本の天候不順の影響や、そちらに関連して花粉が想定よりも飛ばなかったことなどにより季節商品が伸び悩みました。加えて、アジアでは中国、香港、シンガポール市場が減速した影響を受け、想定ほどの増収には至りませんでした。

売上総利益率は56.7パーセントと、前年よりも1.4ポイント減少しました。主な要因としては、日本における主力工場のイノベーションや、売上高が計画から下振れたことによる操業度の低下、減価償却費、労務費の増加が挙げられます。

営業利益は、第4四半期に販促費や広告費、研究開発費が減少しましたが、想定よりも売上高が伸びなかったことや、その影響で売上原価率が十分に改善しなかったこと、新規連結により、人件費等の販管費が大幅に増加した結果、389億3,900万円と前年比2.8パーセントの減益となりました。

経常利益は404億3,000万円で、前年比4.7パーセントの減益、親会社株主に帰属する当期純利益は310億600万円で、前年比0.2パーセントの増益となりました。

為替レートは、前期の1USドル143.31円に対して、当期は152.61円と、6.5パーセントの円安になっています。USドル円を含む為替変動により、売上高が約77億円、営業利益が約8億9,000万円増加する影響がありました。

連結営業利益の変動の構成 (前年比較)

スライドに掲載しているグラフは、営業利益への寄与を表したものです。日本では、売上原価率が上昇したことなどによる売上総利益へのインパクトが、マイナス42億9,000万円ありました。しかし、増収効果によるインパクトがプラス219億4,300万円あったことから、売上総利益が176億5,300万円増加しました。

一方、広告販促費などの費用のコントロールに努めたものの、新規連結により人件費やのれん代、店舗リース代が増加したことなどにより、販管費が187億6,200万円増加し、差し引きで営業利益は減益となりました。

報告セグメント別売上

エリア別では、すべての地域で増収となりました。特に、海外ではすべての地域が2桁の成長となっています。

報告セグメント別営業利益

営業利益は、日本では下半期は増益となりましたが、想定よりも伸ばせず通期では減益となりました。海外は、すべての地域で増益となりました。

日本 増収減益

報告セグメント別にご説明します。日本は、売上高が1,649億8,800万円で、前年比5.2パーセントの増収となりました。個人消費の緩やかな回復と、インバウンド需要の増加に加え、お客さまのニーズをいち早くキャッチした商品提案と効果的なマーケティングにより、アイケア、スキンケア、内服、その他すべてのカテゴリーで増収となりました。

商品別では、引き続きサプリメントの「ロートV5」や、新発売の唇をぽってりツヤツヤにする、今流行りのプランパーリップなどが大人気です。また、「肌ラボ」や、発売と同時に品切れとなった新ブランドのヘアマスク「Gyutto」が、12月に増産体制を整えたことで好調に推移しました。

9月に新発売した先行バリア乳液が順調に推移している「ケアセラ」や、今シーズン新製品を4品投入し注力中の日やけ止め、高額目薬なども増収に寄与しました。また、ロート製薬単体だけでなく、子会社のロートニッテンが、主力商品の販売拡大により増収に貢献しました。

営業利益は、広告費などマーケティング費用をコントロールしたものの、主力工場のリノベーションや売上高の下振れによる操業度の低下、労務費、減価償却費の増加により、原価率が上昇したこと、子会社で薬価下落により原価率が上昇したことに加え、システム関連費や人件費などの販管費が増加し、224億5,300万円で前年比8.1パーセントの減益となりました。

インバウンド需要過去最高を更新

今年度は訪日外国人旅行者が増加し、消費額は過去最高を記録しました。中国からの旅行客も戻り、当社のインバウンド売上も、推計ですが前年から15パーセント程度増加しました。しかし、期待には届きませんでした。

商品別では、従前から変わりなく目薬や「肌ラボ」「メラノCC」、各種リップクリームなどが人気です。

アジア 大幅な増収、増益

海外事業で最大のアジアは、売上高1,003億3,600万円で前年比27.4パーセントの大幅な増収となりました。

中国と香港は引き続き厳しい市場環境が続いていますが、ベトナムやインドネシアなどの東南アジアが現地通貨で2桁成長と、好調を持続しています。マレーシアも、第2四半期以降は回復傾向にあります。

特にインドネシアは、日やけ止めや「セルサン」「肌ラボ」、目薬などほぼすべての主要ブランドが2桁成長しました。外資系大手が軒並み現地企業や中国、韓国企業との厳しい競争で苦戦を強いられる中、当社は早くから現地小売チャネルやEコマースの開発を進めたことで、堅調に売上を拡大できています。

ベトナムは9月に北部を直撃したスーパー台風11号の影響や、目薬が前年同期の結膜炎流行の反動減などが重なり、第四半期では一時的に減速しました。しかし、輸出の伸びや外国人旅行者の増加が経済を下支えしており、通年では「肌ラボ」、日やけ止め、「アクネス」、リップクリームなどの主要ブランドが2桁成長を維持し、過去最高の売上高を更新し、今年に入っても引き続き好調を持続しています。

下期よりEu Yan Sang社の損益計算の連結への取り込みを開始しましたが、売上の3分の2を占める香港とシンガポール市場の減速の影響を受けて、計画から下振れの結果となりました。

ミャンマーでは輸入規制の厳格化の影響を受けて、原材料や製品の輸入が困難になる状況が続き、大幅な増収減益となりました。商品別では、新規ユーザーの獲得が続く「肌ラボ」、東南アジアや中国、香港でも好調な「セルサン」、「アクネス」、リップクリームなど、主力ブランドが好調に推移しました。

利益面は、Eu Yan Sang社ののれん償却費約11億円と、取得にかかる一時的な手数料の約3億円に加え、ミャンマーが減益になった影響がありました。一方、ベトナムやインドネシアの増収でカバーし、営業利益は122億8,900万円と前年比2.2パーセントの増益となりました。

アメリカ 大幅な増収増益

アメリカは、売上高が207億6,900万円で前年比11.9パーセントの大幅な増収となりました。目薬「Dual Light Relief」を新発売するなど、OTC目薬が引き続き順調に推移しました。

また、医療用消毒薬等を製造販売するハイドロックス・ラボラトリーズ社の生産能力増強により、増収に寄与しました。「肌ラボ」などのスキンケアが伸びているブラジルの連結子会社も好調に推移し、増収に貢献しました。

営業利益も、ハイドロックス・ラボラトリーズ社やブラジルの連結子会社の増収効果により、15億4,200万円、前年比27.9パーセントの大幅な増益となりました。

ヨーロッパ 大幅な増収、増益

ヨーロッパは、売上高が191億6,300万円で前年比38パーセントの大幅な増収となりました。主力の外用消炎鎮痛剤が、中東向けの出荷時期のずれの影響などで減少したものの、下期には改善傾向にあります。

ポーランドのダクス・コスメティクス社の「Perfecta」という自社ブランドの化粧品事業や、「Hadalabo Tokyo」が好調に推移しました。「Hadalabo Tokyo」は英国やポーランド市場に加えて、トルコでの大手小売Gratisとの販売促進や、スペイン市場や南アフリカ市場での展開など、新規市場の伸びが成長ドライバーとなっています。

下期より、オーストリアのモノ社の損益計算の連結取り込みを開始しました。2021年より欧州で展開を進めている点眼剤「ロートドライエイド」も、モノ社のルートを使ってオーストリアで新発売するなど、販路を拡大しています。

利益面では外用消炎鎮痛剤の減収により原価率が上昇しましたが、ダクス・コスメティクス社の増収が寄与し、14億2,500万円で前年比2.9パーセントの増益となりました。下期は、モノ社の損益を連結範囲に含めたことや、外用消炎鎮痛剤の出荷の回復により大幅な増収増益となっています。

業績見通しのポイント

2026年3月期の業績予想についてご説明します。国内は物価上昇の継続により、節約志向の高まりが懸念されるものの、賃上げや設備投資の拡大、インバウンド需要の増加などを背景に、緩やかな持ち直し基調を想定しています。

一方、海外ではトランプ政権による関税問題など厳しい状況が続くと想定しています。当社を取り巻く環境も、競合状況が一層厳しくなることが懸念されます。

また、円安から円高へのシフトによりマイナス影響が大きくなりますが、来期も過去最高の売上を更新する見込みです。利益についても為替のマイナス影響が大きくなりますが、増益を確保する見込みです。

業績見通し

売上高は3,345億円と対前年8.4パーセント増、営業利益は390億円で対前年0.2パーセント増、経常利益は405億円で対前年0.2パーセント増、当期純利益は311億円で対前年0.3パーセント増を見込んでいます。EBITDAマージンは、16.7パーセントとなる予定です。為替は、1USドル142円、1中国元19円と円高が進むと想定しています。

報告セグメント別売上予想

日本は、後ほどご説明する中長期成長戦略に基づき、中長期の持続的成長に向けて事業基盤の強化を進めていきます。インバウンド需要は増加するものの、国内消費は手堅く推移すると想定し、売上高1,712億円で対前年3.8パーセント増と、堅調に推移すると見込んでいます。

アジアは、為替の影響がマイナス100億円ほど出るものの、売上高は1,160億円で対前年15.6パーセント増と、大幅な増収を見込んでいます。

中国と香港は厳しい市場環境が続きますが、増収に転じる計画です。加えてベトナムやインドネシアなどの東南アジアは、現地通貨で2桁成長と引き続き牽引する予定です。また、Eu Yan Sang社の業績が、今期は半期から、来期は通期で組み込まれる影響も、増収の大きな要因となっています。

アメリカは為替の影響でマイナス20億円を見込み、売上高202億円で対前年2.7パーセント減を予定しています。

ヨーロッパはダクス・コスメティクス社が高成長を持続することや、モノ社の業績が今期は半期、来期は通期で連結に組み入れられる影響もあり、売上高238億円で対前年24.2パーセントの大幅な増収を予定しています。

報告セグメント別営業利益予想

営業利益は、日本はクオリテックファーマ等子会社の減益予定の影響もあり、217億円で対前年3.4パーセントの減益を見込んでいます。

アジアは為替のマイナス影響を12億円見込んでいるものの、大幅な増収効果により128億円で対前年4.2パーセント増、アメリカは14億円で対前年9.2パーセントの減益、ヨーロッパは20億円で対前年40.3パーセントの増益を見込んでいます。

22期連続増配予定

配当に関しては、事業活動から得られる成果を株主のみなさまに安定的かつ継続的に還元することを基本方針としています。当期の配当は年間36円、配当性向26.4パーセントとなる見込みです。

来期の配当は、中間・期末各21円、年間42円と6円の増配を予定します。こちらにより、配当性向は30.5パーセントとなる見込みで、22期連続増配となります。

中長期成長戦略 2025-2035

瀬木英俊氏:常務取締役兼CSOの瀬木です。中長期成長戦略についてご説明します。当社が中長期成長戦略を外部に発表するのは、初めてになると思います。

昨今の健康意識の高まりは、当社にとって成長を続ける追い風である一方、社会情勢や市場環境が大きく変化し、不確実性も高まってきている今、当社が描く戦略を示し、将来の解像度を上げ、みなさまへ戦略を示すことは大変重要であると考えています。

タイトルを「中長期成長戦略 2025-2035」として、10年後を描きながら現状を踏まえ、2030年度までの業績予測を示します。

目次

本日は、ロート製薬の未来に向けた成長戦略について、基本方針と業績予測、主要事業戦略、資本政策と株主還元についてご説明します。

パーパス・経営理念

当社の存在意義は、商品やサービスを通じて健康をお届けし、すべての人や社会を「Well-being」へと導くことです。こちらにより、明日の世界をより元気にすることを目指します。

経営理念には、長期視点での経営と価値創出に努めること、社会の公器として社会課題を解決することが明確に掲げられています。こちらの精神は、創業から126年という長い歴史の中で一貫して守り続けてきたものであり、事業活動の核となっています。社会やお客さまの期待に応え、持続可能な未来を築くために挑戦を続けていきます。

ビジョン2030 “Connect for Well-being”

2019年に、2030年を見据えた「ロートグループ総合経営ビジョン2030 “Connect for Well-being”」を制定しました。このビジョンのもと、事業活動を通じて世界中の人々の「Well-being」に貢献し、健康で幸せに過ごせる持続可能な社会を実現していきます。

さらに、2024年には新たなコーポレートスローガン「ロートは、ハートだ。」を掲げました。このスローガンには、変化が激しく先行きが見えにくい時代だからこそ、社員一人ひとりの想いや人間らしさを大切にしながら、お客さまや患者さまの心を動かし、社会をより良い方向へと導いていくという決意が込められています。

10年間の連結業績 売上・利益とも倍増

過去10年間は、厳しい市場環境の中でも、コア事業を中心に国内やアジアでお客さまとの輪を広げてきました。その結果、売上高は倍増し営業利益は約3倍に成長することができました。

しかし、2024年度の決算では売上高が3,086億円と増収を達成した一方、営業利益は389億円と減益となり、進行期の2025年度の見通しも厳しい状況です。このような状況を踏まえ、今後6年間で成長するための戦略を示したいと思います。

中長期成長戦略 基本方針

ロート製薬の中長期成長戦略の基本方針です。次世代のロートサイエンスを磨き、セルフケアをコアにプロフェッショナルケアへと「Well-being」の輪を広げることを目指し、3つの課題に取り組んでいきます。

1つ目は、事業収益力の強化です。セルフケア事業をグローバルに展開し、アイケアやスキンケア分野で革新的な価値を提供します。また、ヘアケア・フェムケアといった新分野にも注力し、事業全体の拡大と収益性向上を図ります。

2つ目は、技術商品力の深化と拡充です。独自のサイエンスを活かし、「Well-being」なライフスタイルを提供していきます。Eu Yan Sang社との連携やフィトサイエンス研究を通じて、植物由来の素材を活用した画期的なサプリメントの開発に取り組んでいきます。

胃腸ケア製品の開発、回復期の健康を支える予後ケア分野にも挑戦し、内服・食品事業を成長させ、より多くのお客さまの日々の健康をサポートしていきます。

3つ目は、メディカル事業の基盤構築です。当社にとって、メディカル事業は高品質と高機能を活用した製品を、自社だけでなく他社にも提供する非常に重要な分野です。CDMO事業では、クオリテックファーマ社が取り組んでいる低分子・ケミカル分野から、バイオや細胞加工分野への拡大を進めていきます。

眼科事業では、国内外のグループ会社間の連携を強化し、皮膚科では再生医療技術を活用した皮膚科向け化粧品開発に取り組んでいきます。さらに、医療用眼科では近視抑制、再生医療分野では膝軟骨再生や肝硬変治療などに向けた新薬開発にも注力し、治療を待つ患者さまに希望を届けていきます。

これらの戦略を通じ、コア事業の競争力を高め、当社が持つ可能性を最大限に引き出します。そして、科学的アプローチを進化させ、明日の世界をもっと元気にすることを目指します。サイエンスベースの企業としてさらに進化することが、ロートの大きな方向性です。

ここでいう「サイエンス」では、ケミカルやバイオ、メディカルの枠を超えて、データIT、営業戦略、生産・経営管理まで、あらゆる領域で科学的なアプローチを磨き、企業価値を高めていきます。

中長期成長戦略 連結業績予測

連結業績予測についてご説明します。3年後の2027年度に売上高3,650億円、営業利益460億円、6年後の2030年度には売上高4,150億円、営業利益540億円に達すると見込んでいます。加えて営業利益率は13パーセント、EBITDAマージンは18.2パーセントという水準を予測しています。

今後の3年間は、コア事業であるアイケアやスキンケアのさらなる成長に注力します。昨年買収したEu Yan Sang社とのシナジーを最大限に活かし、事業を拡大していきます。

次の3年間では、ヘアケアやフェムケアといった新分野の成長で新たな市場を作り出していくとともに、サプリメントや食品事業、眼科・皮膚科向けのビジネスを拡大していく予定です。

2030年度以降は、医療用眼科や再生医療の新薬が承認されることで、高収益を生み出す成長事業として、売上と利益の大きな柱になると期待しています。海外売上比率は、2030年度に全体の53パーセントに拡大すると見込んでいます。

中長期成長戦略 売上予測(カテゴリー別)

カテゴリー別の売上予測です。アイケアとスキンケアが堅実に成長を続けるとともに、アジアを中心とした内服・食品事業が大きく成長することで、構成比が現在の16パーセントから20パーセントに上昇する見込みです。

こちらにより、バランスの取れた事業ポートフォリオを実現していきます。また、M&Aからの売上も、約200億円を見込んでいます。

アイケア事業について

主要事業ごとの戦略についてご説明します。当社は、アイケア事業で圧倒的な生産能力を誇り、国内においては新しい需要を獲得し、海外ではアジアを中心に、さらにEU市場での拡大を進めていきます。

医療用を除くアイケア製品の売上は、2027年度に457億円、2030年度に525億円に達すると見込んでいます。ロート独自の技術と、スイッチOTCなどを活用した新しい価値を生み出していきます。

EUでは、Sigma社を通じてドライアイ市場への参入を進めており、より多くのお客さまに新たな使用機会を提供していきます。不確実要素が大きい10年後の2035年度の売上ですが、650億円から800億円が、現時点で想定している規模のレンジとなります。

アイケア事業での強み

当社の最大の強みは、年間1億5,000万個以上の目薬を供給できる、世界トップクラスの高品質な生産能力です。現在、世界中に7つの工場を持っており、生産力を基盤に国内外での開発・販売力をさらに強化していきます。

この圧倒的な競争力を活かし、世界の一般用アイケア市場におけるリーディングポジションを維持し、さらに拡大していきます。

スキンケア事業について

スキンケア事業についてご説明します。スキンサイエンスを活用した高付加価値商品の開発を進めるとともに、これまで培った研究知見や技術を応用し、ヘアケア事業に本格的に参入していきます。

これにより、スキンケア事業全体で、売上高は2027年度に2,064億円、2030年度に2,236億円を見込んでいます。国内では年間約2億個の販売を通じたお客さまとの接点を活かし、スキンサイエンスのさらなる加速を図ります。「Gyutto」をはじめとするサイエンスを基盤としたヘアケアブランドの強化、高付加価値スキンケア商品のクリニック市場への参入を目指します。

海外では「Hadalabo Tokyo」のEUや中東市場への展開、「セルサン」「50の恵」といったヘアケア事業の拡大、女性の「Well-being」を応援するフェムケアなど、新しい領域にも積極的に挑戦していきます。2035年度の想定売上は、2,700億円から2,900億円のレンジになります。

スキンケア事業での強み

スキンケア事業の強みは、サイエンスファーストで裏打ちされた技術力と、多くのお客さまからの支持と信頼です。数量ランキングや、パテントスコアでNo.1を獲得しているブランド力や技術・素材力の高さ、独自の製品開発力で、当社の最大カテゴリーであるスキンケアのさらなる成長と拡大を進めていきます。

内服・食品事業について

内服・食品事業では、フィトサイエンスを活用した機能性サプリメントの導入、Eu Yan Sang社とメンソレータム社のシナジーを最大限に活かし、売上高は2027年度に627億円、2030年度に680億円を見込んでいます。

具体的には、「ロートV5」ブランドのさらなる拡大、Eu Yan Sang社やフィトサイエンスで研究された植物由来の素材を活用したサプリメントの導入を進めます。

腸内環境研究をもとに、胃腸ケア製品、予後ケア食へも挑戦していきます。Eu Yan Sang社と当社グループとの連携により、食事業や販路拡大を進めていきます。2030年度の想定売上は800億円から900億円のレンジになります。

内服・食品事業での強み

内服・食品事業の強みは、Eu Yan Sang社が持つ生薬や漢方素材、フィトサイエンス領域での高度な専門知識、藻類を含む多彩な機能性素材の研究開発力と安定供給の体制です。これらを活かし、革新的で高付加価値な製品を市場に提供し、さらなる成長を実現していきます。

メディカル事業について

メディカル事業についてご説明します。CDMOを中心に医療事業の基盤を強化し、バイオ・細胞技術をコアに据えた成長戦略を進めていきます。

こちらの分野では、自社販売とライセンスアウトで収益化を図り、売上高は2027年度に300億円、2030年度に328億円を見込んでいます。具体的には、医療向けCDMO事業のさらなる拡大に取り組んでいきます。

これまでの低分子・ケミカル分野の技術を基盤としつつ、バイオ細胞加工分野へ展開を加速させていきます。また、眼内レンズや涙道チューブ、オートロジェルシステムといった医療機器の開発にも注力していきます。

再生医療技術から高機能化粧品といった周辺分野への応用も進め、幅広いメディカルニーズに応える製品を展開していきます。国内のロートニッテン社や海外のオフサルモス社、Sigma社と、医療眼科事業における連携を強化し、培地の海外展開も進めます。

2030年度以降の医療用医薬品の承認後は、事業がさらに拡大することを見込んでおり、2035年度の想定売上は550億円から650億円のレンジになります。

医療用パイプラインの進捗

医療用のパイプラインとしては、「ROH-001」による近視抑制の医療用眼科薬が現在フェーズⅡのステージにあります。近視人口は世界で50億人いるといわれており、大きな社会課題に対応するため、開発を進めていきます。

ADRを中心に、膝軟骨や肝硬変、心不全といった再生医療等医薬品も開発中です。肝硬変や心不全は、すでにフェーズⅡのステージに進んでおり、承認申請に向けてさらに開発を加速させていきます。

これらの開発を通じて、治療を待つ患者さまに1日でも早く新しい医薬品や新しい治療方法を届けられるよう、努力していきます。

研究開発基盤

成長戦略を支える研究開発基盤についてご説明します。当社はこれまで、多岐にわたる領域で基盤技術を展開し、確固たる技術力を築いてきました。

しかし、急速に進化する技術市場や価値観の多様化、デジタルシフトが押し寄せる中で、これまでの延長線にとどまらない新しいコア技術の開発に挑戦し続けていきます。

当社の研究開発体制の最大の特徴は、柔軟性と創造性にあります。1つの分野にとらわれることなく、サイエンスと異分野技術を融合させることで、オリジナル技術を生み出していきます。

具体的には、ケミカル、バイオ、細胞、機器といった幅広い技術分野を掛け合わせ、境界を越えた技術革新を実現していきます。異分野融合のアプローチは、単なる技術の寄せ集めではありません。それぞれの分野の強みを最大限に活かし、これまでにない新しい価値を創出することを目的としています。

このような多様性と革新性を活かし、市場や消費者ニーズを迅速かつ的確に捉え、未来を切り拓く「ロートサイエンス」に変えていきます。

資本政策 キャッシュアロケーション(2025-2030の6年間)

資本政策とキャッシュアロケーションについてご説明します。当社は2025年から2030年までの6年間にわたり、キャッシュ創出力を一層強化するとともに、成長投資に積極的に取り組み、安定的な配当を通じて、株主のみなさまへの還元を継続していきます。

今後6年間の営業キャッシュ・フローは2,400億円で、研究開発費控除前では3,300億円を見込んでいます。

さらに、追加資金として200億円の調達を予定しており、これらの資金を成長投資及び株主還元に配分していきます。

具体的な資金の使途については、まず設備投資に1,000億円を予定しています。これは、現行施設のメンテナンスや改良・需要拡大に対応する海外生産設備の増強、本社工場のリノベーション、中国アイケア生産の増強などの分野に充てられます。これらの投資を通じて、さらなる競争力強化と国際市場への対応を図ります。

研究開発費には、900億円を投資します。この金額は売上高の5パーセント以内を目安として、コアビジネスのさらなる加速や素材開発力、ロートサイエンス力の強化、再生医療や医療用点眼など、次の成長の柱となる分野へ投資していきます。これらを通じて、技術力をさらに高め、未来の成長を支える基盤を構築します。

また、DX/IT投資には、300億円を計画しています。これにより1人当たりの生産性を高め、効率的かつ強力な経営基盤を構築します。加えて、M&Aや出資には500億円を投資する予定で、既存事業とのシナジー効果、新規分野への参入を図り、さらなる事業拡大を目指します。

株主還元は、今後6年間で総額800億円を分配する予定です。安定的な配当を継続しつつ、株主のみなさまへの利益還元をさらに強化していきます。

株主還元

株主還元においては、配当性向30パーセント以上、DOE3.5パーセント以上を掲げ、株主のみなさまに安定的な還元を提供していきます。

当社の株主還元政策は、安定と成長の両立を基本方針としています。一時的な利益の変動に左右されることなく、長期的な視点に立った企業成長を支える投資を行いながら、安定かつ継続的な株主還元を実現していきます。

また、安定性を重視する一方で、利益成長に応じた増配を図ることで、株主のみなさまに将来性を感じていただけるよう努めていきます。

ROHTO

今お伝えした中長期成長戦略を着実に実行し、成長投資と株主還元を両立させながら、持続可能な企業価値の向上を目指していきます。

私たちは、豊かで幸せな生活を支える「心身の健康」に貢献し続けることを最大の責務と捉え、その実現のために長期視点での経営と価値創出に全力を尽くしていきます。

また、ロート製薬は「社会の公器」としての使命を強く自覚しています。すべてのステークホルダーのみなさまと協働しながら、社会課題の解決に取り組んでいきます。

そして、この取り組みを通じて得られた成果や便益をみなさまと共有し、ともに未来を創り上げることで、社会に求められる企業であり続けたいと考えています。

ロート製薬はこれからも革新を続け、みなさまの期待に応える存在であり続けたいです。引き続き、温かいご理解とご支援を賜りますようお願いします。本日は誠にありがとうございました。