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杉本眞氏(以下、杉本):レシップホールディングス株式会社、代表取締役社長の杉本です。本日は、当社の2025年3月期通期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日は、ご覧いただいている順にご説明します。

2025年3月期:通期業績の要約

2024年7月に新紙幣が発行され、当社の主要なお取引先であるバス・鉄道事業者さまより、新紙幣対応関連のご注文を大変多くいただきました。

お客さまの利便性を考慮し、当初の計画を前倒しして対応することをご希望される事業者さまも多くいらっしゃいました。こうした需要への迅速な対応が、当期の業績を大きく牽引する要因となりました。

また、下期以降は新紙幣以外にも、移動需要の回復・増加を背景に、設備投資意欲が高まりました。その結果、カラーLED式行先表示器やICカードリーダライタなどの売上が増加したほか、米国鉄道市場ではニューヨーク市地下鉄向け製品の納入も順調に進捗し、業績に寄与しました。

2025年3月期:通期業績の要約

2025年3月期通期の決算数値についてご説明します。

連結業績については、売上高は前期比14.3パーセント増の259億3,100万円、営業利益35億3,100万円、経常利益34億8,300万円、親会社株式に帰属する当期純利益は22億5,500万円となりました。

2025年3月期:通期売上高の増減要因

売上高の増減要因を、各市場別の売上増減およびその他要因にブレークダウンしますと、ご覧いただいているとおりです。

輸送機器事業では、自動車市場が減少したもののバス市場・鉄道市場が増加し、増収となりました。

産業機器事業では、2024年3月に事業譲渡を行った高電圧変圧器事業の売上などが減少し、減収となりました。

2025年3月期:通期営業利益の増減要因

続いて、営業利益の増減を、各要因にブレークダウンしますと、ご覧いただいているとおりです。

原価要因については、商品構成が変化したことによるもの、販管費要因については、人件費、事務用経費の増加によるものです。

輸送機器事業:通期業績

輸送機器事業の業績推移はご覧いただいているとおりです。

輸送機器事業:通期業績

輸送機器事業における各市場別の状況についてご説明します。

バス市場については、新紙幣発行に伴う運賃箱の改造・ソフト改修、また、運賃箱の買い替えによる運賃箱そのものの売上が増加しました。

鉄道市場については、ニューヨーク市地下鉄車両用灯具の納入が順調に進行しており、売上の増加に大きく寄与しています。

自動車市場については、自動車用LED灯具の売上が減少し、減収となりました。

損益面については、増収に加え、製品構成の変化による原価率の低下により、黒字となりました。

産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業):通期 業績

産業機器事業の業績推移はご覧いただいているとおりです。

産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業):通期業績

電源ソリューション市場については、物流市場の活況により、バッテリー式フォークリフト用充電器の需要が底堅く推移しています。

一方、高電圧変圧器事業の事業譲渡に伴い、関連製品の売上が減少し、減収となりました。EMS市場については、自動車向け基板実装売上が増加しました。

損益面については、減収および原材料価格上昇に伴う原価率の悪化に伴い減益となりました。

連結損益計算書

連結損益計算書の状況は、こちらのページに記載のとおりです。

連結貸借対照表

連結貸借対照表の状況は、こちらのページに記載のとおりです。

研究開発費、設備投資、償却費の推移

研究開発費と設備投資の状況についてご説明します。

研究開発費については、通期は、主に、キャッシュレス対応、観光DX、デジタルサイネージシステムの開発などに充当しました。来期も同様の開発に対し、6億5,000万円の投資を予定しています。

また、設備投資については、2025年1月に稼働が開始したレシップ電子の新工場や機械装置、金型などに充当しました。

今期も引き続きレシップ電子に関する機械装置などへ投資を継続するほか、基幹システムの更新などに対し、7億円の投資を予定しています。

2026年3月期:通期業績予想

2026年3月期通期の業績予想と配当について、ご説明します。

26年3月期の業績見通しは、売上高が前期比7.4パーセント減の240億円、営業利益11億円、経常利益11億円、親会社株主に帰属する当期純利益8億円を見込んでいます。

北米子会社におけるAFCの大型案件の売上計上が、業績に大きく貢献する見通しです。しかしながら、国内市場において新紙幣対応需要が一巡することに伴い、運賃箱や関連システムの改修売上を中心とした売上減少により、減収となる見込みです。

損益面では、この減収に加え、製品・サービスの構成比変化に伴う原価率の上昇が見込まれることから、減益となる見込みです。

前年度までの新紙幣関連需要の剥落に伴い、減収・減益とはなるものの、当社は、中期経営計画「RT2026」達成に向け、国内では新規領域の拡大、海外では米国市場でのシェア拡大を両輪として、成長に向けた活動を加速します。

現状分析 ー 資本収益性

次に、2025年5月26日に開示した資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてご説明します。

当社の資本収益性の現状分析です。

ROEの推移をご覧ください。2024年3月期以降、移動需要の増加に伴い、バス・鉄道事業者さまの設備投資意欲が回復し、新紙幣関連の売上も増加したことで、業績は大きく改善しました。

株主資本コストは7パーセントから8パーセントとして認識していますが、2025年3月期のROEは26.6パーセントであり、ここ2年は株主資本コストを大きく上回って推移しています。

現状分析 ー 市場評価

一方でPBRは足元で1倍を割り込む状況にあります。PBRはPERとROEの積で表されますが、当社の場合はPERの影響が大きいと認識しています。

これまでの業績のボラティリティの高さもあり、当社の収益性や将来の成長性に対する市場の評価が不安定であることが課題と捉えています。安定した成長とその成長ストーリーの情報開示の充実が不可欠であると考えています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた方針

現状分析として、株主資本コストは7パーセントから8パーセント程度、PBRは1倍割れ、業績のボラティリティが高いという認識のもと、市場からの評価を得るためには、「安定的な売上・利益の創出」と「積極的な情報開示」が必要であると考えています。

これをふまえた方針として、「事業ポートフォリオの変革」「株主還元の強化」「IR活動の強化」の3点を掲げています。

具体的な対応① 成長戦略の実行

事業ポートフォリオの変革に関する成長戦略の実行においては、中期経営計画RT2026の中で、資料に記載の内容を通して安定した収益基盤の構築を目指し、安定的な売上・利益を生み出す事業構造へのシフトを進めています。

キャッシュ・アロケーション(RT2026 3か年累計)

こちらの資料では中計期間におけるキャッシュアロケーションを記載しています。

中期経営計画「RT2026」の3ヵ年累計での営業キャッシュフロー約50億円を原資に、成長投資として約25億円、競争力強化投資として約25億円を計画しています。

成長投資は、海外事業の確立、新規領域の拡大、M&Aを含む企業価値向上への投資に充当します。

競争力強化投資は、レシップ電子の新工場建設に充当した他、ITインフラ投資、設備更新投資などに充当します。

株主還元としては、DOE2パーセントを目安とした配当に加え、自己株式取得も機動的に検討し、8億円水準で計画しています。

具体的な対応② 株主還元方針

次に株主還元の強化についてご説明します。

3月に発表したとおり、純資産配当率DOE2パーセント以上を配当方針としています。稼いだ利益は配当として株主のみなさまにしっかりと還元したいと考えています。

1株当たり配当金の推移はスライドのとおりです。

2025年3月期は、普通配当11.5円に加え、特別配当8.5円を実施し、合計20円としました。2026年3月期は13.5円を予想しており、普通配当部分においては、今後、純資産の増加とともに増配基調となる見込みです。

具体的な対応② 株主還元方針

当社のビジネス・戦略についての理解を促進することで、期待値の向上と不安の払拭に努め、市場からの評価を高めていきます。

具体的な対応策としては、開示情報の増加と充実、投資家さまとの対話の促進、認知度の拡大に取り組んでいきます。

四半期ごとの決算説明資料の開示や統合報告書の発行、機関投資家さまとの積極的な面談などを実施していきます。

具体的な対応③ IR活動の強化

中長期的な成長イメージ

最後に、中期経営計画の進捗についてご説明します。

これまでの説明のとおり、コロナ禍や新紙幣需要といった短期的な変動要因もありましたが、中期経営計画「RT2026」期間においては、海外事業の確立や新規ビジネスの投資・育成を進めています。

そして、VISION2030の達成に向け、海外市場や観光DXといった新規市場の獲得と、後ほどご説明する「MoveLe」による既存ビジネスの拡張を進め、持続的な成長を目指していきます。

海外事業の確立:米国で公共交通機関向けバス用運賃収受システムを2件受注

「海外事業の確立」の具体的な進捗として、米国での公共交通機関向けバス用運賃収受システムの受注についてご説明します。

カリフォルニア州オレンジ郡のOrangeCountyTransportationAuthority(OCTA)さま、およびフロリダ州コリアー郡のCollierAreaTransit(CAT)さまより、新たに運賃収受システムを受注しました。

2件合わせてバス用運賃箱約600台を含む運賃収受システムの納入という大型の案件です。これは、当社の「実績」「プロジェクト体制」「製品の高い品質」が高く評価された結果です。

米国の路線バスにおけるAFC市場について

当社では米国の路線バス市場は約6万5千台のAFCの市場規模があると推定しており、現在当社は約3パーセント程度のAFCシェアを有しています。

この市場では、Genfare社という競合が存在しますが、当社の強みである製品への高い信頼性と柔軟な顧客対応で差別化を図っています。

米国のAFC市場にはまだまだ大きな成長余地があると捉えています。これまでに積み上げた実績を基に2030年にはマーケットシェア10パーセントを目指し、継続的な案件獲得を進めていきます。

新規領域の拡大:観光DXによる課題解決 ー 静岡県富士登山事前登録システム

世界遺産である富士山では、近年、オーバーツーリズムによる混雑や環境負荷、登山者の安全確保といった課題が深刻化しています。

そこで当社は、これらの課題解決に貢献すべく、登山の事前登録から入山料等の決済までをオンラインで完結できる「富士登山事前登録システム」の開発を静岡県さまより受託し、導入いただきました。

このシステムは、これまで当社で開発を進めてきた「LECIP CMP(コンテンツ・マネジメント・プラットフォーム)」というシステムを核とし、7言語対応の多言語機能や、登山ルール・マナーの事前学習機能も備え、国内外の登山者の利便性と安全性の向上を図ります。

このシステムの導入により、富士山の持続可能な観光の実現、登山者の安全確保、そして将来的には収集データを活用した地域DXの推進といった効果が期待されます。

システムは、クラウドサーバーを基盤に、当社の管理プラットフォーム「LECIPCMP」、登山者向けの専用アプリ、現地スタッフ用アプリなどで構成されています。

そして、この富士山での開発資産を今後、全国の観光地が抱える同様の課題解決に向けたスマートツーリズムソリューションや、MaaS連携へと横展開を進めていきます。

国内公共交通市場の現状と未来

「国内公共交通市場の現状と未来」についてです。

国内の公共交通市場は、人口減少や地方の交通網維持といった課題に直面していますが、デジタル変革の加速、サステナビリティへの意識の高まり、交通インフラ整備、新たな移動ニーズへの対応といった成長ドライバーも存在します。

当社は、長年培ってきたハードウェアの技術力を活かしつつ、ソフトウェアやサービスを組み合わせることで、お客さまにとってより価値の高いソリューションを提供し、「モノ+コト」への転換を進めていきます。

モノ+コトビジネスの開発:公共交通事業者向けの統合ソリューション「MoveLe」

続きまして、「モノ+コト」ビジネスの開発について、具体的なソリューションを交えてご説明します。

公共交通事業者向けの統合ソリューション「MoveLe(ムーブル)」をご紹介します。

「MoveLe」は、レシップのトップシェアのポジションとコア技術を結集し、バス業界の持続可能な未来を共創することを目指すソリューションの提供を目指し今期より活動をスタートしました。

運行管理の効率化、収益向上支援、乗客の利便性向上といった価値を提供し、運行コストの削減、業務効率化による労働環境の改善、利用者満足度の向上などを実現します。当社の最大の特長である運賃箱等のハードとデータを融合できる強みを生かし、「モノ+コト」で実現するPDCAソリューションを提供していきます。

MoveLeの開発によりアプローチするバス用ソリューション市場

「MoveLe」がアプローチするバス用ソリューション市場についてご説明します。

2030年度にかけ、バス業界のIT投資額は各公表データなどから約415億円と推計されます。そのうち、当社がカバー可能なソリューション市場は約166億円、さらに当社がアプローチして獲得を目指す市場規模は、中長期的な市場獲得目標シェア30パーセントを乗じて約50億円と試算しています。

バス業界の構造課題に対し、「MoveLe」は当社のハード・ソフト統合力でDXを牽引し、拡大するソリューション市場の獲得を目指します。

バス市場での多くのトップシェアのポジションを活かし、機器と連携したソリューションを順次展開

「MoveLe」の具体的なソリューション展開イメージです。バス市場における当社の多くのトップシェア製品、例えば運賃箱、乗務員支援システム、行先表示器などと連携したソリューションを順次展開していきます。

運行管理・乗務員支援、企画・計画、利用者安全、労務管理、収入管理といった幅広い領域のカバーを目指します。

2025年3月期のソリューション関連の売上構成比は約5パーセント程度ですが、今後の成長領域として育成していきます。

事例①:収入集計システム~ データ活用でバス事業の効率化と収益改善を支援 ~

具体的なソリューション事例として、「収入集計システム」をご紹介します。これは、運賃箱からの売上・乗客情報、運行実績、外部データなどを自動で取り込み、集計・分析・可視化するシステムです。

導入事例として、先行導入いただいている会社さまでは集計時間が10分の1に、人件費も約90パーセント削減という効果が出ています。

データの一元管理、利用実態の可視化、業務効率化、意思決定支援といった価値を提供し、データに基づいた戦略的な路線・ダイヤ編成を実現します。

事例②:ダイヤ編成システム~業務効率化とコスト削減を実現~

もう1つの事例として、「ダイヤ編成システム」をご紹介します。これは、路線・系統・車両・乗務員計画に基づき、効率的な路線バスダイヤを編成するシステムです。

岩手県交通株式会社さまでは、ダイヤ改正関連作業の効率化や、GTFSフォーマットへのデータ更新負担の軽減といった効果を実感いただいています。将来的にはEVバスの普及を見据え、充電計画も含めた開発を推進していきます。

中長期的な成長イメージ

以上の戦略に基づき、事業構造の変革を進め、持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでいきます。引き続き、みなさまのご理解・ご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。

質疑応答:トランプ関税の影響について

司会者:「アメリカの子会社で運賃箱の受注が連続していますが、トランプ大統領の関税政策はどのように影響しているのでしょうか?」というご質問です。

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